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▶ グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】免疫原性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/116 20060101AFI20240409BHJP
   A61K 39/10 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 39/05 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61K39/116 ZNA
A61K39/10
A61K39/08
A61K39/05
A61P37/04
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K39/39
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021523667
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019080120
(87)【国際公開番号】W WO2020094580
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】18204691.2
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コントルニ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ピッツァ,マリアグラツィア
(72)【発明者】
【氏名】ゾイベルト,アーニャ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/155294(WO,A1)
【文献】特表2016-510056(JP,A)
【文献】特表2016-527294(JP,A)
【文献】ROLIN, O. et al.,Infect Immun,2013年,Vol. 82, No. 2,pp. 491-499
【文献】SEUBERT, A. et al.,Expert Rev Vaccines,2014年,Vol. 13, No. 10,pp. 1191-1204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイド及び(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、前記OMVが、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌(Bordetella pertussis)株に由来する、前記免疫原性組成物。
【請求項2】
OMVが、突然変異R9K及びE129Gを含むように改変されたS1遺伝子を含み、且つ、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
OMVが、ArnT遺伝子がノックアウト又は欠失されている百日咳菌株に由来する、請求項2記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有する、請求項1~3のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
無細胞百日咳抗原が、(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)及び(iii)ペルタクチン(PRN)から成る群より選択される、請求項1~4のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
無細胞百日咳抗原が、PT、FHA及びPRNを含む、請求項5記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
PTが、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドである、請求項6記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
PT、FHA及びPRNが、16:16:5の比(重量で測定される)で存在する、請求項6又は7記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
ジフテリアトキソイドが、
i. 4~8Lf/ml、若しくは0.5ml用量あたり4Lf;又は
ii. 20~50Lf/ml、若しくは0.5ml用量あたり25Lf
の濃度で存在する、請求項1~8のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
破傷風トキソイドが、0.5ml用量あたり5~10Lfの濃度で存在する、請求項1~9のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドとが、
i. 1より大きいか、2:1~3:1(Lf単位で測定される)であるか、若しくは2.5:1である、ジフテリアトキソイド:破傷風トキソイド比;又は
ii. 1より大きいか、1.5:1~2.5:1(Lf単位で測定される)であるか、若しくは2:1である、破傷風トキソイド:ジフテリアトキソイド比、
で存在する、請求項1~10のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
アジュバントを含有する、請求項1~11のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
アジュバントが、アルミニウム塩アジュバントである、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
薬剤としての使用のためのものである、請求項1~13のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
免疫応答を上昇させるための、請求項1~14のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
免疫応答が、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、破傷風菌(Clostridium tetani)及び百日咳菌に対する免疫応答である、請求項15記載の免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ワクチン、すなわち、ワクチンの投与が1つより多い病原体に対して被験体を同時に免疫することができるような、1つより多い病原体に由来する免疫原の混合物を含有するワクチンの分野にある。より具体的には、本発明は、ジフテリア、破傷風および百日咳のための追加(ブースター:booster)ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
単回用量内に1つより多い病原性生物に由来する抗原を含有するワクチンは、「多価」または「混合」ワクチンとして知られる。混合ワクチンは、患者に、受ける注射回数の減少の利益を提供し、コンプライアンスの増大の臨床利益をもたらすことができる(例えば、参考文献1のチャプター29を参照されたい)。ジフテリア、破傷風および百日咳に対して防御するための三価ワクチンを含む、様々な混合ワクチンがEUおよびUSAにおけるヒトでの使用について認可されている。そのようなワクチンを、DTaPおよびTdapと呼ぶことができる。DTapおよびTdaPは両方とも、ジフテリア、破傷風、および百日咳に対する混合ワクチンであるが、DTaPワクチンは、初回免疫化のために使用されるのに対して、TdaPワクチンは、その後の追加ワクチン接種に使用される。初回ワクチン組成物と追加ワクチン組成物との違いは、投与量にある。より具体的には、追加ワクチンに関しては、一般的にはこれらのワクチンは、より低用量の一部の抗原成分を含み、例えば、BOOSTRIXのジフテリアトキソイド含量は、INFRANRIXのそれよりも10倍少ない。これは、より少量のジフテリアトキソイドを指す小文字「d」の使用によって示される。
【0003】
抗原性成分の比を変更することもできる。例えば、ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドとの比は、INFRANRIXでは2.5:1であるが、BOOSTRIXでは1:2である。かくして、これらの追加ワクチンは、絶対量においても、破傷風トキソイド含量と比較しても、ジフテリアトキソイドの用量の大きな減少を示す。
【0004】
しかしながら、近年では、百日咳菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる疾患の再流行が、ワクチン接種率が高い国においても観察されている。この再流行の正確な理由は不明であるが、潜在的原因としては、免疫の衰えおよび循環株の疫学的変化が挙げられる。
【0005】
したがって、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、破傷風菌(Clostridium tetani)および百日咳菌(Bordetella pertussis)に対して保護するためのさらなる改良された混合ワクチンを提供することが、本発明の課題である。また、以前に小児期の予防接種を受けた、成人、青年および4歳以上の小児における追加ワクチンとしてのヒトでの使用にとって好適なさらなる改良されたTdaPワクチンを提供することも、本発明の課題である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、百日咳菌に由来する外膜小胞(OMV)を含む混合(組合せ)ワクチンの研究に基づくものである。本発明者らは、これらの混合ワクチンが、種々の抗原間の免疫学的干渉がほとんどなく、または全くなく、対応する抗原に対する特異的抗体力価を惹起することを見出した。百日咳菌由来OMVの存在は、ボルデテラ(Bordetella)に対する改善された抗体応答をもたらし、驚くべきことに、組成物中の他の抗原に対する抗体応答も改善する。
【0007】
かくして、第1の態様では、(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが百日咳菌に由来する、免疫原性組成物が提供される。特に、OMVは、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドを発現する百日咳菌株に由来する。より具体的には、OMVは、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する。
【0008】
かくして、本発明は、(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが遺伝的に解毒された百日咳トキソイド、特に、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物を提供する。
【0009】
本発明はさらに、(a)遺伝的に解毒された百日咳トキソイド、特に、PT 9K/129Gを含む百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物を提供する。
【0010】
本発明はさらに、(a)OMV中のリピドAがコア構造の遠位リン酸基上のグルコサミン(GlcN)置換を欠く改変された構造を有する、遺伝的に解毒された百日咳トキソイド、特に、PT 9K/129Gを含む百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物を提供する。
【0011】
PT-9K/129Gの遺伝的に解毒された百日咳トキソイドは、S1サブユニット内に2個のアミノ酸置換、具体的には、R9KおよびE129Gを含む(例えば、EP0396964を参照されたい)。かくして、さらにより具体的には、OMVは、突然変異R9KおよびE129Gを含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する。さらにより具体的には、外膜小胞中の百日咳トキソイドの100%が、遺伝的に解毒されたPT、特に、PT 9K/129Gである。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明と共に使用される百日咳菌OMVは、コア構造の遠位リン酸基上のグルコサミン(GlcN)置換を欠く改変されたリピドA構造を有する。いくつかの実施形態では、OMVが得られる百日咳菌株は、ArnTのノックアウト、特に、ArnTをコードする遺伝子の欠失(ΔArnT)を含む。かくして、本発明と共に使用され、そのような株に由来するOMVは、コア構造の遠位リン酸基上のグルコサミン(GlcN)置換を欠く改変されたリピドA構造を有してもよい。
【0013】
特に、本発明と共に使用されるOMVは、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素またはその組合せで処理されていない。より具体的には、本発明と共に使用されるOMVは、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素またはその組合せを用いる処理によって化学的に解毒されていない。
【0014】
好適な無細胞百日咳抗原としては、解毒された百日咳毒素(PT)、繊維性ヘマグルチニン(FHA)、ペルタクチン(PRN)、線毛タンパク質2(FIM2)、線毛タンパク質3(FIM3)およびその組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、無細胞百日咳抗原は、解毒された百日咳毒素(PT)、繊維性ヘマグルチニン(FHA)、ペルタクチン(PRN)、線毛タンパク質2(FIM2)、線毛タンパク質3(FIM3)からなる群から選択される少なくとも2つ、例えば、少なくとも3つの抗原を含む。本発明における使用のための無細胞百日咳抗原の特定の組合せとしては、(1)PT、FHAおよびPRN;(2)PT、FHA、PRN、FIM2およびFIM3;(3)PTおよびFHAならびに(4)PT、FHA、FIM2およびFIM3が挙げられる。
【0015】
特に、免疫原性組成物は、ワクチンである。より具体的には、ワクチンは、ヒトへの投与のためのものである。ワクチンは、初回免疫化のためのものであってもよい。さらにより具体的には、ワクチンは、追加ワクチンとしての、例えば、2回目の免疫化における使用のためのものである。さらにより具体的には、ジフテリアトキソイドは、約4Lf/ml~約8LF/mlの濃度で存在する。より具体的には、ジフテリアトキソイドは、約2Lf/0.5ml用量、約2.5Lf/0.5ml用量、約3Lf/0.5ml用量、約3.5Lf/0.5ml用量または約4Lf/0.5ml用量の濃度で存在する。破傷風トキソイドは、約5Lf/0.5ml用量の濃度で存在してもよい。
【0016】
具体的には、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドは、1.5:1~2.5:1(Lf単位で測定される)、例えば、約2:1(Lf単位で測定される)の破傷風トキソイド:ジフテリアトキソイド比で存在する。
【0017】
免疫原性組成物は、アジュバント、特に、アルミニウム塩アジュバントを含んでもよい。
【0018】
本発明の第2の態様では、患者に、本発明による免疫原性組成物を投与するステップを含む、患者における免疫応答を上昇させる方法における使用のための免疫原性組成物が提供される。
【0019】
本発明の第3の態様では、外膜小胞(OMV)を含む第1の成分と、無細胞百日咳抗原、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドを含む第2の成分とを混合することを含む、本発明による免疫原性組成物を調製するためのプロセスが提供される。本発明の第3の態様のある特定の実施形態では、第1の成分中のOMVは凍結乾燥され、第2の成分は水性形態の抗原を含む。かくして、プロセスは、第2の成分の水性抗原と共に、第1の成分中の凍結乾燥されたOMVを再構成するステップをさらに含んでもよい。
【0020】
本発明の第4の態様では、OMVを含む第1の成分と、無細胞百日咳抗原、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドを含む第2の成分とを含み、2つの成分が別々の容器中にある、本発明による免疫原性組成物を調製するためのキットが提供される。本発明の第4の態様のある特定の実施形態では、第1の成分中のOMVは凍結乾燥され、第2の成分は水性形態の抗原を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】W28 9K/129Gワクチン株と比較したW28 9K/129GΔarnTのin vitroでの反応性。図1(a)は、W28 9K/129G (Bp WT)およびW28 9K/129G arntKO (Bp ΔarnT)を用いたhTLR4活性化に関するルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイの結果である。異なる濃度の細菌を使用して、HEK293細胞を刺激し、PBSと比較した誘導倍率を報告した。図1(b): 異なる濃度の細菌を用いた刺激後のヒトPBMC上清中でのIL-6検出のためのELISA。
図2】ワクチン株から調製されたOMVは、FHA、69KおよびPT無細胞百日咳抗原を含有する。抗FHA;抗69Kおよび抗PT抗血清で免疫染色した、W28 PT 9K/129G (WT)およびW28 PT 9K/129G arnTKO(Δarnt)株に由来する1μgのOMVと共に示された量でロードされた精製されたFHA、69KおよびPT無細胞百日咳抗原サブユニットの滴定標準のウェスタンブロット。
図3-1】OMVを用いた免疫化は、マウスにおいて低レベルの抗aP抗原抗体をもたらす。マウスを、3週間隔で3回、W28 PT 9K/129G (Bp-OMV (WT))およびW28 PT 9K/129G arnTKO (BP-OMV(ΔArnt))に由来する2.5μgのOMVで腹腔内的に免疫した。1回目の免疫化の後では、抗69K抗体のみを検出することができたが、Luminexアッセイによると、第2および第3の用量後には低レベルの3種全部の抗原(FHA、69K、およびPT)が検出可能であった。図3(a):抗FHA IgG力価;図3(b):抗69K IgG力価;図3(c):抗PT IgG力価。
図3-2】図3-1の続きである。
図3-3】図3-2の続きである。
図4-1】OMVと組み合わせたTdaPを用いた免疫化は、TdaPのみと比較して、多くのワクチン抗原に対する有意により高いレベルの抗体をもたらす。マウスを、W28 PT 9K/129G arnTKO株に由来する2.5mgのOMVの組合せを含む、または含まないTdap(1/5ヒト用量)で筋肉内的に免疫し、2回の免疫化の後、血清を収集および分析して、LuminexアッセイによってそれぞれのTdaP抗原に対する抗体のレベルを測定した。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図4-2】図4-1の続きである。
図4-3】図4-2の続きである。
図5】OMVは、wPワクチンと同様に、in vitroで上皮細胞への百日咳菌の付着を阻害する抗体を惹起する。OMV(W28 9K/129G arntKO由来)、全細菌(W28 9K/129G arntKO由来)、TdaPワクチンまたは対照としての水酸化アルミニウム(nil)のいずれかで免疫した、1群あたり10匹のマウスに由来する血清をプールし、感染培地中で連続希釈し、標識された野生型百日咳菌BP536と共に1時間インキュベートした。次いで、A549細胞を、細菌/血清混合物に1時間感染させ、大規模に洗浄して、未結合の細菌を除去した後、細胞に結合した細菌を、Ex/Em 485/535 nmでの蛍光読取りによって定量した。結果は、3回反復でそれぞれ実施した3つの独立した実験の1つの代表の平均+/-S.D.を表す。
図6】OMVは、Kendrick試験において百日咳菌の頭蓋内チャレンジに対するwPワクチン標準と類似する強力な防御応答を惹起する。マウスを、全細胞ワクチンまたはOMV製剤で腹腔内的に1回免疫し、頭蓋内投与された百日咳菌株18323の懸濁液を用いた免疫化の2週間後にチャレンジした。Kendrickの頭蓋内チャレンジ効力試験によるチャレンジの2週間後に、マウスの生存を報告する。ワクチン製剤は、ヒト用量の1/10、1/50および1/250のwP全細胞百日咳ワクチン(標準)と、示された用量のW28 9K/129G株(OMV)に由来するOMVとを含む。
図7-1】FHA特異的全IgG(図7(a))およびIgG2c(図7(b))血清力価は、OMVワクチン用量に比例する。チャレンジの日に免疫したマウスの血清中に存在するFHA特異的抗体を、ELISAによって分析した。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、n.s.=有意でない。図7(c):OMVを用いた単回免疫化は、百日咳菌特異的Th1/Th17応答を促進する。ワクチン接種されたC57BL6マウスに由来する脾臓細胞(2x106個/mL)を、超音波処理された百日咳菌(SBP、5μg/mL)の存在下で培養した。72時間後、上清中のIFNγ(TH1の指標)、IL-13(TH2の指標)、およびIL-17(TH17の指標)の濃度を、ELISAによって分析した。***p<0.001。
図7-2】図7-1の続きである。
図7-3】図7-2の続きである。
図8】肺からの百日咳菌のクリアランス速度は、OMVワクチン用量に正比例する。C57BL6マウスを、PBS、wP、OMV 0.4、OMV 2、またはOMV 10で、チャレンジの3週間前に免疫した。次いで、マウスを、百日咳菌の毒性株(Bp338)に感染させ、示された時点で連続希釈された肺ホモジェネート上でCFU計測を実施することにより、肺中の細菌量を評価した。破線は、検出限界を示す。***p<0.001 wP対OMV 0.4、###p<0.001、#p<0.05 wP対OMV 10、◆◆◆p<0.001、p<0.05 wP対OMV 2。
図9】OMVと共に製剤化されたaPは、FHA特異的血清IgG2cを促進する。チャレンジの日に免疫したマウスの血清中に存在するFHA特異的抗体を、ELISAによって分析した。***p<0.001、*p<0.05。
図10-1】wP、aP、aP+OMVおよびOMVのみを用いた免疫化は、百日咳菌チャレンジに対する保護を付与する。C57BL6マウスを、PBS、wP、aP+OMVまたはOMVのみで、チャレンジの3週間前に免疫した。次いで、マウスを、百日咳菌の毒性株(Bp338)に感染させ、示された時点で連続希釈された肺ホモジェネート上でCFU計測を実施することにより、肺中の細菌量を評価した。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。
図10-2】図10-1の続きである。
図11】aPワクチンへのOMVの付加は、好ましいTH1応答を駆動する。ワクチン接種されたC57BL6マウスに由来する脾臓細胞(2x106個/mL)を、超音波処理された百日咳菌(SBP、5μg/mL)の存在下で培養した。72時間後、上清中のIFNγの濃度を、ELISAによって分析した。**p<0.01、***p<0.001。
図12】aP+OMV追加ワクチンは、aPでプライミングしたマウス中で抗原特異的IFNγ産生を促進する。ワクチン接種されたC57BL6マウスに由来する脾臓細胞(2x106個/mL)を、FHA(2μg/mL)、PRN(2μg/mL)、超音波処理された百日咳菌(SBP、5μg/mL)または培地のみの存在下で培養した。72時間後、上清中のIFNγ、IL-17およびIL-13の濃度を、ELISAによって分析した。*<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、百日咳菌に由来する外膜小胞(OMV)を含む組成物の研究に基づくものである。本発明者らは、OMVと、無細胞百日咳抗原などの抗原との両方を含む免疫原性組成物が、OMVのみ、または無細胞百日咳抗原のみのいずれかを用いた免疫化後に見られるものよりも高い免疫応答を誘導することができることを見出した。さらに、OMVはまた、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドなどの他の非ボルデテラ抗原に対する免疫応答を改善する。用語「由来する」の使用は、百日咳菌を起源とするOMVの供給源、すなわち、OMVが産生されるか、または生じる細菌株を指す。そのため、本発明は、(a)百日咳菌OMV、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物を提供する。
【0023】
用語「免疫原性組成物」は、組成物中に存在する抗原に対する、抗体または細胞性免疫応答などの免疫応答を惹起するために投与することができる任意の組成物を広く指す。かくして、本発明の組成物は、免疫原性である。免疫原性組成物が、被験体からの疾患を防止する、改善する、軽減する、または除去する場合、そのような組成物を、ワクチンと呼ぶことができる。本発明によるワクチンは、好ましくは、予防的である(すなわち、感染を防止する)。予防的ワクチンは、患者が抗体を生じる場合であっても、免疫系が感染と闘うことができる前にラグまたは遅延があり得るため、疾患からの完全な防御を保証するものではない。したがって、疑いを避けるために、予防的ワクチンという用語はまた、例えば、そのような感染の重症度または持続期間を減少させることによって、将来の感染の効果を改善するワクチンを指してもよい。用語「感染に対する防御」および/または「防御免疫を提供する」とは、被験体の免疫系が、免疫応答を誘発し、感染を撃退するためにプライミング(例えば、ワクチン接種による)されていることを意味する。特に、誘発される免疫応答は、異なる株の細菌などの、いくつかの病原体に対する感染を撃退することができる。ワクチン接種された被験体は、かくして、感染し得るが、対照被験体よりも良好に感染を撃退することができる。
【0024】
OMV
OMVは当業界で周知であり、細菌によって培養培地中に自発的に放出される。OMVは、培養される細菌の細菌外膜のタンパク質および脂質成分などの成分を含有する。「天然OMV」(「nOMV」[2])、および界面活性剤抽出されたOMV(dOMV)は、全て本発明の一部を形成し、本明細書ではOMVと総称される。用語「膜抗原のための一般化されたモジュール」を、突然変異細菌から得られたOMVを指すために使用することもできる。本発明のいくつかの実施形態では、OMVは、天然OMVである。
【0025】
OMVを、百日咳菌の培養物から取得することができる。OMVは、培養された細菌の外膜から調製される。細菌の外膜の破壊またはそれからの天然の「ブレブ形成」によって、それに由来する小胞を形成させることによって小胞を取得することができる。
【0026】
それらを、例えば、培養培地から細菌細胞を分離すること(例えば、濾過による、もしくは細胞を沈降させるための低速遠心分離による)、細胞を溶解させること(界面活性剤を用いない)、および細胞質分子から外膜画分を分離すること(例えば、濾過による、外膜および/もしくはOMVの示差的沈降もしくは凝集による、外膜分子を特異的に認識するリガンドを使用する親和性分離法による、または外膜および/もしくはOMVを沈降させる高速遠心分離による)によって、ブロスまたは固体培養培地中で増殖させた細菌から取得することができる。
【0027】
また、OMVを、例えば、界面活性剤処理(例えば、デオキシコレートもしくはサルコシルを用いる)を使用して、または非界面活性剤手段(例えば、参考文献3を参照されたい)により、百日咳菌から人工的に調製することもできる。OMVを人工的に形成させるための技術は、界面活性剤を沈降させないように十分に高いpHで、胆汁酸塩界面活性剤(例えば、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ウルソコール酸などの塩と共に、デオキシコール酸ナトリウム[4&5])で細菌を処理することを含む[6]。超音波処理、ホモジェナイゼーション、マイクロ流体化、キャビテーション、浸透圧ショック、粉砕、フレンチプレス、混合などの技術を使用して、実質的に界面活性剤[3]の非存在下で、他の技術を実施することができる。
【0028】
OMV調製のための有用なプロセスは、参考文献7に記載されており、むしろ高速遠心分離の代わりに、未精製のOMVの限外濾過を含む。プロセスは、限外濾過を行った後の超遠心分離のステップを含んでもよい。
【0029】
本発明において使用されるOMVの調製物は、一般に、生きているにしろ、死んでいるにしろ、全細菌を実質的に含まないであろう。小胞のサイズは、それらを、例えば、典型的には、濾過滅菌のために使用される、濾過によって全細菌から容易に分離することができることを意味する。
【0030】
OMVは、哺乳動物に投与された場合、百日咳菌に対する免疫応答を惹起することができる。免疫応答は、細胞性または体液性免疫応答であってもよい。特に、免疫応答は、抗体応答である。さらにより具体的には、免疫応答は、百日咳菌の感染および/またはビルレンスを中和することができるT細胞免疫応答である。OMVによって惹起される免疫応答は、OMV中に存在する1つ以上の百日咳菌タンパク質抗原に対するものであってよい。
【0031】
分泌型毒素であるにも拘わらず、百日咳毒素はOMV中に存在し、例えば、ペリプラズム空間に由来する。結果として、当業界で使用されるOMVを、ホルマリンなどの化学的薬剤で処理して、PTを化学的に解毒した。残留ホルマリンを除去する問題に加えて、化学的処理は、例えば、タンパク質架橋によって、OMVの免疫原性に負に影響し得る。
【0032】
遺伝的に解毒された百日咳トキソイドを発現する百日咳菌株に由来するOMVの使用は、したがって、有利であり、当業界では提言されていない。遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来するOMVが特に有利である。特に、本発明における使用のために、本発明者らは、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株からOMVを単離した。かくして、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せなどの化学物質を用いた処理によるOMVの化学的解毒は、必須ではない。具体的には、本発明のOMVは、化学的に解毒されていない、より具体的には、本発明のOMVは、化学的に解毒されていない、ならびに/またはホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せを用いて処理されていない。
【0033】
ArnT遺伝子がノックアウトされたか、または欠失された百日咳菌株の使用も有利である。そのような株に由来するOMVは、コア構造の遠位リン酸基上のグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有するリピドAを含む。結果として、これらのOMVは、機能的なArnT遺伝子を有する株に由来するOMVと比較した場合、低下したレベルのTLR4活性化を示す。
【0034】
本発明の免疫原性組成物は、OMV成分(a)と、無細胞百日咳抗原成分(b)との両方を含む。外膜小胞成分(a)は、例えば、少量のPT、FHAまたはペルタクチンなどの、膜と結合した、またはOMV内に含まれる多くのタンパク質を含む。しかしながら、これらのOMVに結合した成分は、一般的には、例えば、単離された組換えタンパク質抗原として、精製された形態でOMVから別々に提供されるであろう、以下に記載される、無細胞百日咳抗原成分(b)であると解釈されるべきではない。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)に由来するOMVを含む組成物は、本発明から除外される。
【0036】
ジフテリアトキソイド
ジフテリアは、グラム陽性の非胞子形成性好気性細菌であるジフテリア菌によって引き起こされる。この生物は、最早毒性ではないが、依然として抗原性を保持し、注射後に特異的抗毒素抗体の産生を刺激することができるトキソイドを得るために処理することができる(例えば、ホルムアルデヒドを使用する)、プロファージによりコードされるADP-リボシル化外毒素(「ジフテリア毒素」)を発現する。ジフテリアトキソイドは、参考文献8のチャプター13により詳細に開示されている。好ましいジフテリアトキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって調製されるものである。ジフテリアトキソイドを、ウシ抽出物を添加してもよい増殖培地(例えば、Fenton培地、またはLinggoud & Fenton培地)中で、ジフテリア菌を増殖させた後、ホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈降を行うことによって取得することができる。次いで、トキソイド化された材料を、滅菌濾過および/または透析濾過を含むプロセスによって処理することができる。
【0037】
ジフテリアトキソイドの量を、国際単位(IU)で表すことができる。例えば、NIBSC[9]は、アンプルあたり160IUを含有する、「Diphtheria Toxoid Adsorbed Third International Standard 1999」[10、11]を供給する。IU系の代替手段として、「Lf」単位(「凝集単位」、「境界凝集用量」、または「凝集限界」)は、1国際単位の抗毒素と混合した場合、最適に凝集する混合物を産生するトキソイドの量と定義される[12]。例えば、NIBSCは、アンプルあたり300Lfを含有する「Diphtheria Toxoid, Plain][13]、アンプルあたり900Lfを含有する「The 1st International Reference Reagent For Diphtheria Toxoid For Flocculation Test」[14]を供給する。IUとLf系の間の変換は、特定のトキソイド調製に依存する。
【0038】
ウシ材料がジフテリア菌の培養において使用される場合、それらを、ウシ海綿状脳症(BSE)または他の感染性海綿状脳症(TSE)を含まない供給源から取得するべきである。
【0039】
本発明の免疫原性組成物中のジフテリアトキソイドは、典型的には、投与された場合に免疫応答を惹起することができる量で存在する。理想的には、ジフテリアトキソイドは、防御免疫応答を惹起することができる。本発明の免疫原性組成物中のジフテリアトキソイドの量は、典型的には、1~50Lf/用量である。青年および成人のための追加ワクチンは、典型的には、4Lf/ml~8Lf/mlのジフテリアトキソイド、例えば、0.5ml用量あたり、2.5Lf、好ましくは、4Lfを含有する。小児用ワクチンは、典型的には、20~50Lf/mlのジフテリアトキソイド、例えば、0.5ml用量あたり10Lfまたは25Lfを含有する。
【0040】
小児用混合ワクチンについては、ジフテリアトキソイドの破傷風トキソイドに対する比は、典型的には、1より大きく(すなわち、小児用ワクチンは通常、過剰のジフテリアトキソイドを有する)、一般的には、2:1~3:1(Lf単位で測定される)、例えば、2.5:1である。対照的に、青年または成人(通常、ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドとを含む少なくとも1つの小児用混合ワクチンを受けたことがある)に投与される追加ワクチンについては、破傷風トキソイドのジフテリアトキソイドに対する比は、典型的には、1より大きく(すなわち、追加ワクチンは通常、過剰の破傷風トキソイドを有する)、一般的には、1.5:1~2.5:1、例えば、2:1である。ジフテリアトキソイドは、典型的には、コンジュゲートされていない。
【0041】
ジフテリアトキソイドの総量は、1~50Lf/用量に等しくてもよく、例えば、追加ワクチンでは、4Lf/ml~8Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり2.5Lfまたは0.5mlあたり4Lfの濃度;小児用ワクチンでは、20~50Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり10Lfまたは0.5mlあたり25Lfの濃度であってもよい。化学的に解毒されたジフテリアトキソイドが存在しない特定の実施形態では、存在する、遺伝的に解毒されたジフテリアトキソイド、特に、CRM197の量は、1から50Lf/用量に等しくてもよく、例えば、追加ワクチンでは、4Lf/ml~8Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり2.5Lfまたは0.5ml用量あたり4Lfの濃度、および小児用ワクチンでは、20~50Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり10Lfまたは0.5ml用量あたり25Lfの濃度であってもよい。
【0042】
ジフテリアトキソイドを、水酸化アルミニウムアジュバント上に吸着させることができる。
【0043】
典型的には、ジフテリアトキソイド抗原を含む免疫原性組成物は、水銀保存剤を実質的に含まない。
【0044】
破傷風トキソイド
破傷風は、グラム陽性の胞子形成性桿菌である破傷風菌によって引き起こされる。この生物は、最早毒性ではないが、依然として抗原性を保持し、注射後に特異的抗毒素抗体の産生を刺激することができるトキソイドを得るために処理することができる、エンドペプチダーゼ(「破傷風毒素」)を発現する。破傷風トキソイドは、参考文献1のチャプター27により詳細に開示されている。好ましい破傷風トキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって調製されるものである。破傷風トキソイドを、増殖培地(例えば、ウシカゼインに由来するLatham培地)中で破傷風菌を増殖させた後、ホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈降を行うことによって取得することができる。次いで、材料を、滅菌濾過および/または透析濾過を含むプロセスによって処理することができる。
【0045】
破傷風トキソイドの量を、国際単位(IU)で表すことができる。例えば、NIBSC[15]は、アンプルあたり469IUを含有する、「Tetanus Toxoid Adsorbed Third International Standard 2000」[16、17]を供給する。IU系の代替手段として、「Lf」単位は、1国際単位の抗毒素と混合した場合、最適に凝集する混合物を産生するトキソイドの量と定義される[18]。例えば、NIBSCは、アンプルあたり1000LFを含有する「The 1st International Reference Reagent for Tetanus Toxoid For Flocculation Test」[19]を供給する。IUとLf系の間の変換は、特定のトキソイド調製に依存する。
【0046】
ウシ材料が破傷風菌の培養において使用される場合、それらを、ウシ海綿状脳症(BSE)または他の感染性海綿状脳症(TSE)を含まない供給源から取得するべきである。
【0047】
本発明の免疫原性組成物中の破傷風トキソイドは、典型的には、投与された場合に免疫応答を惹起することができる量で存在する。理想的には、破傷風トキソイドは、防御免疫応答を惹起することができる。本発明の免疫原性組成物中の破傷風トキソイドの量は、典型的には、1~20Lf/用量である。青年および成人のための追加ワクチンは、典型的には、0.5ml用量あたり5Lfの破傷風トキソイドを含有する。小児用ワクチンは、典型的には、0.5ml用量あたり5~10Lfの破傷風トキソイドを含有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、破傷風トキソイドは、遊離(非コンジュゲート)形態とコンジュゲート形態の両方で、または主にコンジュゲート形態で存在してもよく、すなわち、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%を超える破傷風トキソイドが、コンジュゲート形態で存在する。かくして、本発明の免疫原性組成物中の破傷風トキソイドの量は、非コンジュゲート化破傷風トキソイドのみ、コンジュゲート化破傷風トキソイドのみ、または非コンジュゲート化とコンジュゲート化の破傷風トキソイドの合計を指してもよい。しかしながら、好ましくは、破傷風トキソイドは、遊離しており、コンジュゲート化されていない。好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組成物中の破傷風トキソイドの量は、非コンジュゲート化破傷風トキソイドのみを指す。
【0049】
破傷風トキソイドを、水酸化アルミニウムアジュバント上に吸着させることができるが、これは必須ではない(例えば、0~10%の総破傷風トキソイドの吸着を使用することができる)。
【0050】
典型的には、破傷風トキソイドを含む免疫原性組成物は、水銀保存剤を実質的に含まない。
【0051】
無細胞百日咳抗原
百日咳菌は、グラム陰性の非胞子形成性好気性細菌であり、百日咳を引き起こす。参考文献1のチャプター21により詳細に記載されたように、百日咳菌に対するワクチンは長年利用可能であり、2つのカテゴリー:細胞性(wP)および無細胞性(aP)に分類される。細胞性ワクチンは、殺傷および不活性化された(例えば、ホルマリンおよび/または加熱を用いた処理による)全百日咳菌細胞を含むが、無細胞性ワクチンは、天然の細菌から精製された、または組換え宿主中での発現後に精製された、特定の精製された百日咳菌抗原を含む。
【0052】
本発明は、単一のワクチン中の、1つより多い無細胞百日咳(aP)抗原、例えば、以下の周知かつよく特徴付けられた百日咳菌抗原:(1)解毒された百日咳毒素(百日咳トキソイド、または「PT」);(2)繊維性ヘマグルチニン(「FHA」);(3)ペルタクチン(「PRN」、「69キロダルトン外膜タンパク質」または「69K」としても知られる)のうちの、少なくとも2つまたは少なくとも3つを使用してもよい。これらの抗原の3つ全部を使用するべきなのが最も好ましい。これらの3つの抗原は、好ましくは、例えば、改変されたStainer-Scholte液体培地中で増殖させた、百日咳菌培養物からの単離によって調製される。PTおよびFHAを、発酵ブロスから(例えば、ヒドロキシアパタイトゲル上への吸着によって)単離することができるが、ペルタクチンを、熱処理および凝集(例えば、塩化バリウムを使用する)によって細胞から抽出することができる。抗原を、連続クロマトグラフィーおよび/または沈降ステップで精製することができる。PTおよびFHAを、疎水性クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製することができる。ペルタクチンを、イオン交換グロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製することができる。PT、FHAおよびペルタクチンの精製のための方法は、当業界で公知である。
【0053】
FHAおよびペルタクチンを、本発明による使用の前にホルムアルデヒドで処理してもよい。PTを、ホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドを用いる処理によって解毒することができる。この化学的解毒手順の代替手段として、好ましい実施形態では、PTは、突然変異誘発[20](例えば、9K/129G二重突然変異体)によって酵素活性が低下した突然変異PTであってもよい。遺伝的に解毒されたPTが含まれる場合、減少した量を使用することができる。例えば、組成物中の遺伝的に解毒された百日咳トキソイドの濃度は、5μg/ml以下、例えば、4、3、2.5、2、1μg/ml未満などであってもよい。したがって、典型的な0.5mlの単位用量の容量では、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドの量は、2.5μg未満、例えば、2、1.5、1、0.5μg未満、例えば、約0.5μg~約2.5μgである。
【0054】
使用することができるさらなる無細胞百日咳抗原としては、線毛(例えば、アグルチノゲン2および3、FIM2およびFIM3とも呼ばれる)が挙げられる。
【0055】
aP抗原を、非吸着状態で使用することができるが、好ましくは、それらを使用前に1つ以上のアルミニウム塩アジュバント上に吸着させる。aP抗原を、好ましくは、水酸化アルミニウムアジュバント上に吸着させる。
【0056】
典型的には、aP抗原を含む免疫原性組成物は、水銀保存剤(例えば、チメロサール)を実質的に含まない。
【0057】
無細胞百日咳抗原は、典型的には、投与された場合に免疫応答を惹起することができる量で本発明の免疫原性組成物中に存在する。理想的には、無細胞百日咳抗原は、防御免疫応答を惹起することができる。無細胞百日咳抗原の量は、典型的には、マイクログラムで表される。ワクチン中のPTの濃度は、通常、5~50μg/mlである。典型的には、PT濃度は、5μg/ml、16μg/ml、20μg/mlまたは50μg/mlである。ワクチン中のFHAの濃度は、通常、10~50μg/mlである。典型的なFHA濃度は、10μg/ml、16μg/mlまたは50μg/mlである。ワクチン中のペルタクチンの濃度は、通常、5~16μg/mlである。典型的なペルタクチン濃度は、5μg/ml、6μg/mlまたは16μg/mlである。例えば、青年および成人のための追加ワクチンは、典型的には、0.5ml用量あたり、2.5~8μgのPT、4~8μgのFHA(例えば、4~8μgのFHA)および2.5~8μgのペルタクチン(例えば、2.5~8μgのペルタクチン)を含有する。典型的には、追加ワクチンは、0.5ml用量あたり、4μgのPT、4μgのFHAおよび8μgのペルタクチン、より好ましくは、5μgのPT、2.5μgのFHAおよび2.5μgのペルタクチンを含む。小児用ワクチンは通常、0.5ml用量あたり、7μgのPT、10μgのFHAおよび10μgのペルタクチンを含む。
【0058】
水性成分がPT、FHAおよびペルタクチンのそれぞれを含む場合、それらの重量比は変化してもよいが、例えば、約16:16:5、約5:10:6、約20:20:3、約25:25:8、または約10:5:3(PT:FHA:PRN)であってもよい。
【0059】
本発明の特異的免疫原性組成物
本発明の具体的に想定される免疫原性組成物は、
・(i)百日咳菌OMV、(ii)ジフテリアトキソイド、(iii)破傷風トキソイド、(iv)無細胞百日咳抗原、
・(i)百日咳菌OMV、(ii)ジフテリアトキソイド、(iii)破傷風トキソイド、(iv)解毒された百日咳毒素、(v)繊維性ヘマグルチニンおよび(vi)ペルタクチン、
・(i)百日咳菌OMV、(ii)ジフテリアトキソイド、(iii)破傷風トキソイド、(iv)遺伝的に解毒された百日咳毒素、(v)繊維性ヘマグルチニンおよび(vi)ペルタクチン、
・(i)百日咳菌OMV、(ii)ジフテリアトキソイド、(iii)破傷風トキソイド、(iv)解毒された百日咳毒素、(v)繊維性ヘマグルチニン、(vi)ペルタクチン、(vii)ポリオウイルス1型株に由来する抗原、(viii)ポリオウイルス2型株に由来する抗原および(ix)ポリオウイルス3型株に由来する抗原
を含む。
【0060】
本発明の免疫原性組成物は、増強されたTH1応答および増強されたTH2応答、すなわち、IgG1とIgG2aの両方の産生の増加を惹起する。より具体的には、組成物は、OMVのみ、またはTdaPのみを用いた免疫化と比較して、TH1免疫応答の増加および/またはTH2免疫応答の増加を惹起する。
【0061】
製薬方法および使用
本発明の免疫原性組成物は、製薬上許容し得る担体をさらに含んでもよい。典型的な「製薬上許容し得る担体」は、組成物を受ける個体にとって有害な抗体の産生をそれ自身では誘導しない任意の担体を含む。好適な担体は、典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース[21]、トレハロース[22]、ラクトース、および脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)などの、大きい、ゆっくりと代謝される高分子である。そのような担体は、当業者には周知である。ワクチンはまた、水、塩水、グリセロールなどの希釈剤を含有してもよい。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が存在してもよい。滅菌された発熱源非含有のリン酸緩衝生理食塩水が典型的な担体である。製薬上許容し得る賦形剤の完全な考察は、参考文献23で利用可能である。
【0062】
本発明の組成物は、水性形態(すなわち、溶液もしくは懸濁液)または乾燥形態(例えば、凍結乾燥されている)にあってもよい。乾燥ワクチンが使用される場合、それは注射前に液体媒体中で再構成されるであろう。ワクチンの凍結乾燥は、当業界で公知であり、例えば、Menjugate(商標)製品は凍結乾燥形態で提供される。本発明の免疫原性組成物が凍結乾燥成分を含む場合、その成分を別々に調製し、混合した後、凍結乾燥するのが典型的である。凍結乾燥中に抗原を安定化するために、非活性成分を、例えば、安定剤として、凍結-乾燥の前に添加することができる。含有のための好ましい安定剤は、ラクトース、スクロースおよびマンニトール、ならびにその混合物、例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物などである。凍結乾燥された材料の水性再構成によって得られる最終的なワクチンは、かくして、ラクトースおよび/またはスクロースを含有してもよい。凍結乾燥ワクチンを調製する場合、非晶質賦形剤および/または非晶質緩衝剤を使用するのが好ましい[24]。
【0063】
組成物中に、例えば、1mg/ml~30mg/ml(例えば、約25mg/ml)の糖アルコール(例えば、マンニトール)および/または二糖(例えば、スクロースもしくはトレハロース)を含むことが好ましい。
【0064】
組成物を、バイアル中に提供するか、またはそれらを充填済みシリンジ中に提供することができる。針を含む、または含まないシリンジを供給することができる。シリンジは、単回用量の組成物を含むであろうが、バイアルは単回用量または複数回用量を含んでもよい。
【0065】
本発明の組成物は、好ましくは、0.5mlの単位用量で患者に投与される。0.5ml用量に対する参照は、通常の相違、例えば、0.5ml+0.05mlを含むと理解されるであろう。複数用量の状況については、複数用量の量を抽出し、単一の容器中に一緒に、例えば、10回用量の複数用量容器については5ml(または10%の過充填を含む5.5ml)をパッケージングする。
【0066】
本発明の水性組成物はまた、凍結乾燥形態から他のワクチンを再構成させるのにも好適である。本発明の組成物をそのような即興での再構成のために使用しようとする場合、本発明は、注射前にバイアルの内容物を再活性化するために使用されるシリンジの内容物と共に、2つのバイアルを含んでもよい、または1つの充填済みシリンジと1つのバイアルとを含んでもよいキットを提供する。
【0067】
また、2つの成分を一緒に混合することによって使用の時点で即興的にワクチンを調製することができる形態で、ワクチンを調製することもできる。そのような2成分の実施形態は、例えば、水性材料と、凍結乾燥された材料とを混合することによる、液体/液体混合および液体/固体混合を含む。
【0068】
かくして、本発明にとって有用なキットは、2つの成分が別々の容器(例えば、バイアルおよび/またはシリンジ)中にある、OMV成分を含む第1の成分と、(a)無細胞百日咳抗原、(b)破傷風トキソイド、(c)ジフテリアトキソイドを含む第2の成分とを含む。第1の成分中のOMV成分を、凍結乾燥してもよい。いくつかの実施形態では、第1の成分は、アジュバントを含まない。第2の成分は、水性抗原を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第2の成分は、アジュバント、例えば、アルミニウム塩アジュバントを含む。
【0069】
本発明はまた、OMVを含む第1の成分と、(a)無細胞百日咳抗原、(b)破傷風トキソイドおよび(c)ジフテリアトキソイドを含む第2の成分とを混合することを含む、本発明の免疫原性組成物を調製するためのプロセスも提供する。第1の成分中のOMVを、凍結乾燥してもよい。第2の成分は、水性抗原を含んでもよい。プロセスは、第2の成分の水性抗原と共に、第1の成分中の凍結乾燥されたOMVを再構成するステップをさらに含んでもよい。第1の成分は、アジュバントを含まなくてもよい。第2の成分は、アジュバント、例えば、アルミニウム塩アジュバントを含んでもよい。
【0070】
本発明の組成物を、単位用量形態または複数用量形態にパッケージングすることができる。複数用量形態については、バイアルが、充填済みシリンジよりも好ましい。有効用量の容量を、日常的に確立することができるが、組成物の典型的なヒト用量は、例えば、筋肉内注射については、0.5mlの容量を有する。
【0071】
組成物のpHは、好ましくは6~8、好ましくは、約7である。好適なpHを、緩衝剤の使用によって維持することができる。患者に投与される水性組成物は、最適な安定性のために、5.0~7.5、より典型的には、5.0~6.0のpHを有してもよい;ジフテリアトキソイドおよび/または破傷風トキソイドが存在する場合、pHは、理想的には、6.0~7.0である。
【0072】
本発明の免疫原性組成物は、典型的には、リン酸二水素カリウム緩衝剤を含む。リン酸二水素カリウム緩衝剤は、約1~10mM、例えば、1.25mM、2.5mMまたは5.0mMのリン酸二水素カリウムを含んでもよい。組成物が水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝剤を使用するのが好ましい[25]。組成物は、無菌性および/または発熱源非含有であってもよい。本発明の組成物は、ヒトに関して等張性であってもよい。
【0073】
本発明の組成物は、免疫原性であり、より好ましくは、ワクチン組成物である。本発明によるワクチンは、予防的(すなわち、感染を防止する)または治療的(すなわち、感染を処置する)であってもよいが、典型的には、予防的であろう。予防的ワクチンは、患者が抗体を生じる場合であっても、免疫系が感染と闘うことができる前にラグまたは遅延があり得るため、疾患からの完全な防御を保証するものではない。したがって、疑いを避けるために、予防的ワクチンという用語はまた、例えば、そのような感染の重症度または持続期間を減少させることによって、将来の感染の効果を改善するワクチンを指してもよい。
【0074】
用語「感染に対する防御」および/または「防御免疫を提供する」とは、被験体の免疫系が、免疫応答を誘発し、感染を撃退するためにプライミング(例えば、ワクチン接種による)されていることを意味する。特に、誘発される免疫応答は、異なる株の細菌などの、いくつかの病原体に対する感染を撃退することができる。ワクチン接種された被験体は、かくして、感染し得るが、対照被験体よりも良好に感染を撃退することができる。ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的有効量の抗原、ならびに必要に応じて、任意の他の成分を含む。「免疫学的有効量」とは、単回用量での、または一連の用量の一部としての、個体へのその量の投与が、処置または防止にとって有効であることを意味する。一般に、望ましい結果は、病原体に対して被験体を防御することができる、またはそれに寄与する抗原(例えば、病原体)特異的免疫応答の産生である。この量は、処置しようとする個体の健康および身体状態、年齢、処置しようとする個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、望ましい防御の程度、ワクチンの製剤、医学的状況の処置する医師による評価、ならびに他の関連する因子に応じて変化する。量は、日常的な試験によって決定することができる比較的広範囲に入ると予想される。
【0075】
本発明の組成物を、様々な形態で調製することができる。例えば、組成物を、液体溶液または懸濁液としての、注射剤として調製することができる。組成物を、肺投与のために、例えば、微細粉末またはスプレーを使用する、吸入剤として調製することができる。組成物を、坐剤またはペッサリーとして調製することができる。組成物を、例えば、スプレー、液滴、ゲルまたは粉末として、経鼻、経耳または点眼投与のために調製することができる[例えば、参考文献26&27]。肺炎球菌糖[28、29]、Hib糖[30]、MenC糖[31]、およびHibとMenC糖コンジュゲートの混合物[32]の経鼻投与に関する成功が報告されている。
【0076】
本発明の組成物は、特に、複数用量形式でパッケージングされる場合、抗微生物剤を含んでもよい。
【0077】
本発明の組成物は、界面活性剤、例えば、Tween 80などのTween(ポリソルベート)を含んでもよい。界面活性剤は一般に、低レベル、例えば、0.01%未満で存在する。
【0078】
本発明の組成物は、等張性を得るためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含んでもよい。10±2mg/mlのNaClの濃度が典型的である。いくつかの実施形態では、4~10mg/mlのNaClの濃度、例えば、9.0、7.0、6.75または4.5mg/mlを使用することができる。
【0079】
組成物は、一般的には、200mOsm/kg~400mOsm/kg、好ましくは240~360mOsm/kgのオスモル濃度を有し、より好ましくは、280~320mOsm/kgの範囲に入るであろう。オスモル濃度は、ワクチン接種によって引き起こされる疼痛に対する影響を有しないと以前に報告されているが[33]、それにも拘わらず、オスモル濃度をこの範囲に保持することが好ましい。
【0080】
本発明の組成物は、一般的には、緩衝剤を含むであろう。リン酸緩衝剤が典型的である。
【0081】
本発明の組成物を、他の免疫調節剤と共に投与することができる。特に、組成物は、1つ以上のアジュバントを含んでもよい。そのようなアジュバントは、限定されるものではないが、ミネラル含有組成物を含む。
【0082】
本発明におけるアジュバントとしての使用にとって好適なミネラル含有組成物は、アルミニウム塩およびカルシウム塩(またはその混合物)などのミネラル塩を含む。カルシウム塩は、リン酸カルシウム(例えば、参考文献34に開示された「CAP」粒子)を含む。アルミニウム塩は、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などを含み、塩は任意の好適な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)をとっている。これらの塩への吸着が好ましい。ミネラル含有組成物を、金属塩の粒子として製剤化することもできる[35]。
【0083】
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして知られるアジュバントを使用することができる。これらの名称は従来通りであるが、いずれも存在する実際の化合物の正確な説明ではないため、便宜上用いられるに過ぎない(例えば、参考文献36のチャプター9を参照されたい)。本発明は、アジュバントとして一般的に使用される「水酸化物」または「リン酸塩」のいずれかを使用してもよい。「水酸化アルミニウム」として知られるアジュバントは、通常は少なくとも一部結晶性である、典型的にはオキシ水酸化アルミニウム塩である。「リン酸アルミニウム」として知られるアジュバントは、典型的には、少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)を含有することも多い、ヒドロキシリン酸アルミニウムである。それらを沈降によって取得することができ、沈降中の反応条件および濃度は、塩中のリン酸のヒドロキシルへの置換の程度に影響する。
【0084】
繊維形態(例えば、透過型電子顕微鏡写真において見られるような)は、水酸化アルミニウムアジュバントにとって典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には、約11であり、アジュバント自体が生理的pHで正の表面電荷を有する。pH7.4でAl+++1mgあたり1.8~2.6mgのタンパク質の吸着能力が、水酸化アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0085】
リン酸アルミニウムアジュバントは一般に、0.3~1.2、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.95±0.1のPO4/Alモル比を有する。リン酸アルミニウムは一般に、非晶質であり、特にヒドロキシリン酸塩についてはそうである。典型的なアジュバントは、0.6mgのAl3+/mlで含まれる、0.84~0.92のPO4/Alモル比を有する非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは、一般に、粒子状(例えば、透過型電子顕微鏡写真において見られるように、平板状の形態)である。粒子の典型的な直径は、任意の抗原吸着後に0.5~20μm(例えば、約5~10μm)の範囲にある。pH7.4でAl+++ 1mgあたり0.7~1.5mgのタンパク質の吸着能力が、リン酸アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0086】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、リン酸のヒドロキシルへの置換の程度と反比例し、この置換度は、沈降により塩を調製するために使用される反応物の反応条件および濃度に応じて変化してもよい。PZCはまた、溶液中の遊離リン酸イオンの濃度を変化させることにより(より多くのリン酸=より酸性のPZC)、またはヒスチジン緩衝剤などの緩衝剤を添加することにより(PZCをより塩基性にする)、変更される。本発明に従って使用されるリン酸アルミニウムは一般に、4.0~7.0、より好ましくは5.0~6.5、例えば、約5.7のPZCを有するであろう。
【0087】
本発明の組成物を調製するために使用されるアルミニウム塩の懸濁液は、緩衝剤(例えば、リン酸またはヒスチジンまたはTris緩衝剤)を含有してもよいが、これは常に必要というわけではない。懸濁液は、好ましくは、無菌性かつ発熱源非含有である。懸濁液は、例えば、1.0~20mM、好ましくは5~15mM、より好ましくは約10mMの濃度で存在する、遊離水性リン酸イオンを含んでもよい。懸濁液はまた、塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0088】
本発明は、水酸化アルミニウムと、リン酸アルミニウムとの両方の混合物を使用することができる。この場合、水酸化物よりもリン酸アルミニウムが多く存在し、例えば、少なくとも2:1、例えば、5:1以上、6:1以上、7:1以上、8.1以上、9:1以上などの重量比であってよい。
【0089】
患者への投与のための組成物中のAl+++の濃度は、好ましくは、10mg/ml未満、例えば、5mg/ml以下、4mg/ml以下、3mg/ml以下、2mg/以下、1mg/ml以下などである。好ましい範囲は、0.3~1mg/mlである。0.85mg/用量の最大値が好ましい。
【0090】
典型的なアジュバントであるリン酸アルミニウムアジュバントは、0.6mgのAl3+/mlで含まれる、0.84~0.92のPO4/Alモル比を有する非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムである。低用量のリン酸アルミニウム、例えば、用量あたり50~100μgのAl3+を用いる吸着を使用することができる。
【0091】
アルミニウム塩アジュバントの使用が特に好ましく、抗原は一般に、そのような塩に吸着される。本発明の組成物では、いくつかの抗原を水酸化アルミニウムに吸着させるが、他の抗原をリン酸アルミニウムと結合させることが可能である。しかしながら、一般的には、両方ではなく、単一の塩のみ、例えば、水酸化物またはリン酸塩を使用することが好ましい。全ての抗原が吸着される必要はない、すなわち、一部または全部が溶液中で遊離していてもよい。
【0092】
処置(治療)方法
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における免疫応答を上昇させるのに使用するための免疫原性組成物を提供する。免疫原性組成物は、好ましくは、哺乳動物における免疫応答を上昇させることができる。免疫応答は、好ましくは防御的であり、好ましくは、抗体を含み、より好ましくはワクチンである。いくつかの実施形態では、ワクチンは、初回ワクチン接種における使用のためのものである。免疫原性組成物は、追加応答を上昇させてもよい。本発明の組成物は、好ましくは、0.5ml用量で患者に投与される(上で考察された通り)。
【0093】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における免疫応答を上昇させるための方法も提供する。免疫応答は、好ましくは防御的であり、好ましくは抗体を含む。方法は、追加応答を上昇させてもよい。本発明の組成物は、好ましくは、0.5ml用量で患者に投与される(上で考察された通り)。
【0094】
哺乳動物は、好ましくはヒトである。ワクチンが予防的使用のためのものである場合、ヒトは、好ましくは小児(例えば、幼児もしくは乳児、特に、新生児)またはティーンエイジャーである。小児について意図されたワクチンを、成人に投与して、例えば、安全性、用量、免疫原性などを評価することもできる。処置のためのヒトの好ましいクラスは、出産可能年齢(例えば、ティーンエイジャー以上)の女性である。別の好ましいクラスは、妊娠女性である。
【0095】
いくつかの実施形態では、患者は、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体で予め免疫されている。他の実施形態では、患者は、破傷風トキソイドまたはその誘導体で予め免疫されている。いくつかの実施形態では、患者は、ジフテリアトキソイドまたはその誘導体と、破傷風トキソイドまたはその誘導体との両方で予め免疫されている。
【0096】
本発明はまた、薬剤としての使用のための本発明の組成物も提供する。
【0097】
本発明はまた、哺乳動物における免疫応答を上昇させるための薬剤の製造における本発明の組成物の使用も提供する。
【0098】
これらの使用および方法は、好ましくは、ジフテリア菌、破傷風菌および百日咳菌のうちの1つ以上によって引き起こされる疾患の防止および/または処置のためのものである。ジフテリア菌はジフテリアを引き起こし得る;破傷風菌は破傷風を引き起こし得る;百日咳菌は百日咳を引き起こし得る。
【0099】
疾患が防止される被験体は、本発明の免疫原性組成物を受ける被験体と同じでなくてもよい。例えば、免疫原性組成物を女性(妊娠前または妊娠中)に投与して、子孫(いわゆる、「母体免疫」[37~39])を保護することができる。妊娠女性の免疫化は、受動母体免疫を介して乳児に対して抗体媒介性免疫を提供する。受動免疫は、母親由来抗体が胎盤を介して胎児に移行する時に自然に生じる。乳児はいかなる能動的に獲得された免疫も持たずに生まれるため、受動免疫は乳児にとって特に重要である。妊娠女性への本発明の組成物の投与は、女性における免疫を増強し、抗体は胎盤を介して新生児に移動し、乳児に対して受動母体免疫を付与する。しかしながら、乳児における受動免疫は一時的なものに過ぎず、人生の最初の数週間、または数ヶ月間の後は減少し始める。受動免疫は一時的なものに過ぎないため、乳児にとっては、受動免疫が減少する前に、本発明の組成物の投与を受けること、乳児において能動免疫を誘導することが重要であり得る。誕生後の乳児への第2の免疫原性組成物の投与は、乳児において能動免疫を誘導し、妊娠中の母親から移った免疫を拡張する。
【0100】
本明細書で使用される場合、乳児は、1歳より下の個体(例えば、1日齢、1週齢、2週齢、3週齢、4週齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、4ヶ月齢、5ヶ月齢、6ヶ月齢、7ヶ月齢、8ヶ月齢、9ヶ月齢、10ヶ月齢、11ヶ月齢未満、12ヶ月齢未満)である。
【0101】
妊娠女性に、彼女の妊娠中の任意の時間に本発明の組成物を投与してもよい。例えば、組成物を、妊娠の第1、第2または第3の3ヶ月間に女性に投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、妊娠の最後の6~12週(例えば、妊娠28週、妊娠29週、妊娠30週、妊娠31週、妊娠32週、妊娠33週、妊娠34週、妊娠35週、妊娠36週、妊娠37週、妊娠38週、妊娠39週)に女性に投与される。特に、本発明の組成物は、乳児の出産の少なくとも4週前に妊娠女性に投与される。いくつかの実施形態では、1用量レジメンが、妊娠32~36週の間に妊娠女性に投与される。他の実施形態では、2用量レジメンが、妊娠女性に投与され、第1の用量は妊娠約32週で投与され、第2の用量は、妊娠約36週で投与される。
【0102】
乳児に、人生の最初の年の間の任意の時点で、必要に応じて、その後、組成物を投与することができる。一般に、組成物は、乳児に、人生の最初の1年の間に1回、2回、3回、4回以上投与されるであろう。例えば、本発明の組成物を、乳児に、誕生時、2週齢、4週齢、6週齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、4ヶ月齢、6ヶ月齢、9ヶ月齢、および12ヶ月齢から選択される1以上の回数、投与することができる。特に、本発明の組成物は、母親由来抗体が非防御力価まで減少する前の時点で乳児に投与される。その後の投与は、任意の所望のスケジュールで行ってもよい。
【0103】
一実施形態では、ジフテリア菌、破傷風菌および百日咳菌のうちの1つ以上によって引き起こされる疾患に対して乳児を防御する方法であって、(a)本発明の組成物を、前記乳児を妊娠中の女性に投与するステップ;および(b)必要に応じて、本発明の組成物を、妊娠から生まれる乳児に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0104】
かくして、ジフテリア、破傷風および百日咳のうちの1つ以上に対して乳児を防御する方法であって、(a)本発明の組成物を、前記乳児を妊娠中の女性に投与するステップ;および(b)必要に応じて、本発明の組成物を、妊娠から生まれる乳児に投与するステップを含む、方法も提供される。
【0105】
好ましい本発明の組成物は、許容し得るパーセンテージのヒト被験体についてそれぞれの抗原性成分に対する抗体保有に関する基準より優れている、患者における抗体力価を付与することができる。宿主が抗原に対して血清変換されると考えられる上記の関連する抗体力価を有する抗原が周知であり、そのような力価は、WHOなどの機関によって公開されている。好ましくは、80%を超える、より好ましくは90%を超える、さらにより好ましくは93%を超える、最も好ましくは、96~100%の統計的に有意な被験体の試料が血清変換される。
【0106】
本発明の組成物は一般に、患者に直接投与されるであろう。直接送達を、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、もしくは組織の間質腔に)によって、または直腸、経口、経膣、局所、経皮、鼻内、眼、経耳、経肺もしくは他の粘膜投与によって達成することができる。大腿部または上腕への筋肉内投与が好ましい。注射は、針(例えば、皮下注射針)によるものであってもよいが、無針注射を代替的に使用してもよい。典型的な筋肉内用量は、0.5mlである。
【0107】
本発明を使用して、全身および/または粘膜免疫を惹起することができる。
【0108】
本発明の免疫原性組成物を、単回または複数回用量で投与することができる。単回用量の投与が、本発明においては好ましい。あるいは、さらなる1つの単位用量の後の第1の単位用量が有効であり得る。典型的には、第2(または第3、第4、第5など)の単位用量は、第1の単位用量と同一である。典型的には、本発明の免疫原性組成物は、3つの単位用量で投与される。典型的には、本発明の免疫原性組成物は、筋肉内的に、例えば、大腿部または上腕への筋肉内投与によって投与されるであろう。
【0109】
複数用量を、初回免疫化スケジュールおよび/または追加免疫化スケジュールにおいて使用することができる。初回用量スケジュールの後、追加用量スケジュールを行ってもよい。初回用量の間(例えば、4~16週)、および初回と追加との間の好適なタイミングを、日常的に決定することができる。
【0110】
完全な有効性を有するためには、典型的な初回免疫化スケジュール(特に、小児のため)は、1より多い用量を投与することを含んでもよい。例えば、用量は、0&6ヶ月(時間0は第1の用量である);0、1、2&6ヶ月;0日目、21日目、次いで、6&12ヶ月の間の第3の用量;2、4&6ヶ月;3、4&5ヶ月;6、10&14週;2、3&4ヶ月;または0、1、2、6&12ヶ月であってもよい。小児用組成物を、例えば、人生の2年目の小児のための、追加用量として使用することもできる。
【0111】
組成物を、例えば、人生の2年目の小児のための、追加用量として使用することもできる。本発明の青年用追加ワクチン組成物は、10歳以上の人に単回用量で投与される。本発明の免疫原性組成物を、ジフテリアと破傷風との両方に対して、好ましくは、百日咳に対しても以前にワクチン接種された患者に、追加ワクチンとして投与することができる。以前のワクチンに対する免疫記憶応答を有することによって、これらの患者と、一般的な集団とを区別することができる。患者は、本発明のワクチンを受ける少なくとも5年前に、その最も最近のジフテリアおよび/または破傷風ワクチンを受けていてもよい。ワクチンを受ける患者は、4~65歳、例えば、11~64歳、10~18歳などの年齢であってもよい。
【0112】
任意の好適な投与経路を使用することができる。例えば、組成物を、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、または皮内投与することができる。必要に応じて、組成物を、経口、鼻内、膣内、および直腸内などの粘膜内経路によって投与することができる。妊娠女性および乳児への投与は、同じ経路または異なる経路によるものであってもよい。本発明の組成物を、例えば、腕または脚への筋肉内注射によって投与することができる。
【0113】
本発明によって生産されるワクチンを、別のワクチンと同時に、例えば、PREVNAR(商標)などの肺炎球菌コンジュゲートワクチンと同時に、インフルエンザワクチンと同時に、ロタウイルスワクチンと同時に、MMRワクチンと同時になど、患者に投与することができる。
【0114】
本発明の組成物がアルミニウムに基づくアジュバントを含む場合、成分の沈降が保存中に起こってもよい。したがって、組成物を、患者への投与前に振とうするべきである。振とうされた組成物は、白濁した懸濁液であろう。
【0115】
実施形態
実施形態1:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが百日咳菌に由来する、免疫原性組成物。
【0116】
実施形態2:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物。
【0117】
実施形態3:無細胞百日咳抗原が、(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される、実施形態1または2に記載の免疫原性組成物。
【0118】
実施形態4:無細胞百日咳抗原が、PT、FHAおよびPRNを含む、実施形態3に記載の免疫原性組成物。
【0119】
実施形態5:PT、FHAおよびPRNが、16:16:5の比(重量で測定される)で存在する、実施形態4に記載の免疫原性組成物。
【0120】
実施形態6:ジフテリアトキソイドが、4Lf/ml~8Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり4Lfの濃度で存在する、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0121】
実施形態7:ジフテリアトキソイドが、20~50Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり25Lfの濃度で存在する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0122】
実施形態8:破傷風トキソイドが、0.5ml用量あたり約5Lfの濃度で存在する、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0123】
実施形態9:破傷風トキソイドが、0.5ml用量あたり5~10Lfの濃度で存在する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0124】
実施形態10:ジフテリアトキソイドと、破傷風トキソイドとが、1より大きいジフテリアトキソイド:破傷風トキソイド比で、例えば、2.5:1などの2:1~3:1(Lf単位で測定される)で存在する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0125】
実施形態11:ジフテリアトキソイドと、破傷風トキソイドとが、1より大きい破傷風トキソイド:ジフテリアトキソイド比で、例えば、2:1などの1.5:1~2.5:1(Lf単位で測定される)で存在する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0126】
実施形態12:アジュバントを含有する、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0127】
実施形態13:アルミニウム塩アジュバントを含有する、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0128】
実施形態14:注射可能液体溶液または懸濁液である、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0129】
実施形態15:凍結乾燥される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0130】
実施形態16:保存剤を含まない、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0131】
実施形態17:ワクチンである、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0132】
実施形態18:ヒトへの投与のためのものである、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0133】
実施形態19:薬剤としての使用のためのものである、前記実施形態のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0134】
実施形態20:患者に、前記実施形態のいずれか1つに記載の組成物を投与するステップを含む、患者における免疫応答を上昇させるための方法。
【0135】
実施形態21:患者に、(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む組成物を投与するステップを含む、患者における免疫応答を上昇させるための方法。
【0136】
実施形態22:外膜小胞(OMV)を含む第1の成分と、無細胞百日咳抗原、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドを含む第2の成分とを混合することを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の免疫原性組成物を調製するためのプロセス。
【0137】
実施形態23:第1の成分中のOMVが凍結乾燥される、実施形態22に記載のプロセス。
【0138】
実施形態24:第2の成分が水性抗原を含む、実施形態22または23に記載のプロセス。
【0139】
実施形態25:プロセスは、第2の成分の水性抗原と共に、第1の成分中の凍結乾燥されたOMVを再構成するステップをさらに含む、実施形態24に記載のプロセス。
【0140】
実施形態26:第1の成分が、アジュバントを含まない、実施形態22~25のいずれか1つに記載のプロセス。
【0141】
実施形態27:第2の成分が、アジュバント、例えば、アルミニウム塩アジュバントを含む、実施形態22~26のいずれか1つに記載のプロセス。
【0142】
実施形態28:OMVを含む第1の成分と、無細胞百日咳抗原、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドを含む第2の成分とを含み、2つの成分が別々の容器中にある、実施形態1~19のいずれか1つに記載の免疫原性組成物を調製するためのキット。
【0143】
実施形態29:第1の成分中のOMVが、凍結乾燥される、実施形態28に記載のキット。
【0144】
実施形態30:第2の成分が水性抗原を含む、実施形態28または29に記載のキット。
【0145】
実施形態31:第1の成分が、アジュバントを含まない、実施形態28~30のいずれか1つに記載のキット。
【0146】
実施形態32:第2の成分が、アジュバント、例えば、アルミニウム塩アジュバントを含む、実施形態28~31のいずれか1つに記載のキット。
【0147】
実施形態33:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが遺伝的に解毒された百日咳トキソイド、特に、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0148】
実施形態34:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0149】
実施形態35:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0150】
実施形態36:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0151】
実施形態37:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0152】
実施形態38:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有する、免疫原性組成物。
【0153】
実施形態39:(a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0154】
実施形態40:(a)外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0155】
実施形態41:(a)外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが化学的に解毒されていない、免疫原性組成物。
【0156】
実施形態42:(a)外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0157】
実施形態43:(a)外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0158】
実施形態44:(a)外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが化学的に解毒されていない、免疫原性組成物。
【0159】
実施形態45:(a)外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0160】
実施形態46:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、遺伝的に解毒された百日咳トキソイド、特に、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0161】
実施形態47:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0162】
実施形態48:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0163】
実施形態49:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMVが、化学的に解毒されていない、免疫原性組成物。
【0164】
実施形態50:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0165】
実施形態51:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有する、免疫原性組成物。
【0166】
実施形態52:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現し、ArnT遺伝子がノックアウトまたは欠失されている、百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有する、免疫原性組成物。
【0167】
実施形態53:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0168】
実施形態54:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現し、ArnT遺伝子がノックアウトまたは欠失されている、百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0169】
実施形態55:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0170】
実施形態56:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが化学的に解毒されていない、免疫原性組成物。
【0171】
実施形態57:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現し、ArnT遺伝子がノックアウトまたは欠失されている、百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0172】
実施形態58:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、免疫原性組成物。
【0173】
実施形態59:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)、(c)破傷風トキソイドならびに(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが化学的に解毒されていない、免疫原性組成物。
【0174】
実施形態60:(a)百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが、R9KおよびE129G突然変異を含むように改変されたS1遺伝子を含み、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現し、ArnT遺伝子がノックアウトまたは欠失されている、百日咳菌株に由来し、OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有し、OMVが、ホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、過酸化水素およびその組合せまたは誘導体で化学的に解毒されていない、および/または処理されていない、免疫原性組成物。
【0175】
実施形態61:(a)遺伝的に解毒された百日咳トキソイドを含む百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物。
【0176】
実施形態62:(a)OMV中のリピドAがコア構造の遠位リン酸基上のグルコサミン(GlcN)置換を欠く改変された構造を有する、遺伝的に解毒された百日咳トキソイド含む百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物。
【0177】
実施形態63:(a)遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを含む百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物。
【0178】
実施形態64:(a)OMV中のリピドAがコア構造の遠位リン酸基上のグルコサミン(GlcN)置換を欠く改変された構造を有する、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを含む百日咳菌外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物。
【0179】
実施形態65:外膜小胞中の百日咳トキソイドの100%が、遺伝的に解毒されたPTである、実施形態61~64に記載の免疫原性組成物。
【0180】
実施形態66:外膜小胞中の百日咳トキソイドの100%が、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gである、実施形態61~65に記載の免疫原性組成物。
【0181】
一般
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、さらなる何か、例えば、X+Yを含んでもよい。単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。いくつかの実施では、用語「含む(comprising)」は、製薬業界で公知のように、記載されるポリペプチドなどの示された活性薬剤の含有、ならびに他の活性薬剤と、製薬上許容し得る担体、賦形剤、皮膚軟化剤、安定剤などの含有を指す。いくつかの実施では、用語「本質的にからなる(consisting essentially of)」とは、唯一の活性成分が、示された活性成分、例えば、抗原であるが、しかしながら、製剤を安定化する、保存するなどのための他の化合物が含まれていてもよいが、示された活性成分の治療効果に直接関与しない、組成物を指す。移行句「から本質的になる(consisting essentially)」という移行句は、特許請求の範囲が、請求項に記載されている特定の材料またはステップ、ならびに特許請求された発明の基本および新規の特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものを包含するものと解釈されるべきであることを意味する。In re Herz, 537 F.2d 549, 551-52, 190 USPQ 461, 463 (CCPA 1976)(原文では強調)を参照されたい;MPEP§2111.03も参照されたい。かくして、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、本発明の請求項において使用される場合、「含む(comprising)」と同等であると解釈されることを意図しない。用語「からなる(consisting of)」およびその変形は、別途明示的に特定されない限り、限定を意味する。ある特定の領域では、用語「からなる活性成分を含む(comprising an active ingredient consisting of)」を、「本質的にからなる(consisting essentially)」の代わりに使用することができる。数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%、x±5%、x±4%、x±3%、x±2%、x±1%を意味する。単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、単語「実質的に」を、本発明の定義から省略してもよい。方法が、例えば、(a)、(b)、(c)などとして投与のステップを指す場合、これらのものは連続的であることを意図される、すなわち、ステップ(c)は、ステップ(a)に次ぐ、ステップ(b)の後である。抗体は、一般的には、その標的に特異的である、すなわち、それらはウシ血清アルブミンなどの無関係の対照タンパク質に対するよりも標的に対するより高い親和性を有するであろう。
【0182】
具体的に記述しない限り、2つ以上の成分を混合するステップを含むプロセスは、特定の順序の混合を必要としない。かくして、成分を、任意の順序で混合することができる。3つの成分が存在する場合、2つの成分を互いに混合した後、混合物を第3の成分などと混合してもよい。
【0183】
抗体は一般に、その標的に特異的であろう。かくして、それらは、ウシ血清アルブミンなどの無関係の対照タンパク質に対するよりも標的に対するより高い親和性を有するであろう。
【0184】
成分がアジュバントに「吸着される」と記載される場合、少なくとも50%(重量で)、例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%以上のその抗原が吸着されるのが好ましい。成分が全体として吸着される場合、遠心分離後に組成物の上清中には何も検出されるべきではない。
【0185】
担体の選択に起因する変動を避けるために、コンジュゲートの量は一般に、糖の質量を単位として与えられる(すなわち、全体としてのコンジュゲートの用量(担体+糖)が、記述される用量よりも高い)。
【0186】
動物(特に、ウシ)材料が、細胞の培養において使用される場合、それらを、感染性海綿状脳症(TSE)を含まない、特に、ウシ海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から取得するべきである。
【実施例
【0187】
材料および方法
TdaPワクチン
市販のTdaPワクチンを使用した。TdaPワクチンは、水酸化アルミニウムでアジュバント化されており、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイドおよび無細胞百日咳抗原(PT、FHAおよびペルタクチンまたはPRNとも呼ばれる69K)を含有する。
【0188】
細菌株および増殖条件
この試験では、以下の百日咳菌を使用した:遺伝的に解毒された百日咳毒素および以下に記載のように生成されたarnT遺伝子を欠くそのarnTノックアウト(KO)誘導体を担持するW28 PT 9K/129G(Pizzaら、1989)。一般的に、細菌を、Gasperiniら、2018に記載のように、および以下に簡単に述べるように保存し、増殖させた:細菌を80℃で保存し、37℃で3日間、15%(v/v)ヒツジ血液を添加した、Bordet-Gengou (BG) 寒天プレート上に播種することによって回収した。次いで、細菌を、0.4%(w/v)のL-システイン一塩酸塩、0.1%(w/v)のFeSO4、0.2%(w/v)のアスコルビン酸、0.04%(w/v)のニコチン酸、1%(w/v)の還元型グルタチオンを添加したStainer-Scholte培地中、0.05~0.1の初期600nm光密度(OD600)で接種した。培養物を37℃で回転振とう器中で増殖させた。組換えDH5大腸菌(E.coli)株を80℃で保存し、37℃で16時間、20g/mlのクロラムフェニコールを添加したLB寒天プレート上に播種することによって回収した。液体培養のために、細菌を、20g/mlのクロラムフェニコールを添加したLB培地中に接種し、37℃で16時間、回転振とう器中で増殖させた。
【0189】
arnT KOの構築
Geurtsenら、2009に記載されたものと同様の、百日咳菌arnT突然変異株を構築するために、本発明者らは、EcoRIおよびBamHI部位(下線)を含有する、プライマー5′- ATAGAATTCACGCGGTGCGGCGCCAGCGC -3' (配列番号1)および5'- ATAGGATCCGCCAGGACCTGGCCTGGCC -3' (配列番号2)を使用することによって、百日咳菌株W28 PT-9K/129GからarnTの上流のDNAの一部を増幅させた。さらに、arnTの下流のDNA断片を、BamHIおよびHindIII部位(下線)を含有する、プライマー5'- ATAGGATCCGGACGAAGCCTTCAAGGGGC -3' (配列番号3)および5'- ATAAAGCTTCGTCCAGGCGCGCCAGCGC -3' (配列番号4)を用いるPCRによって取得した。両方のPCR産物を、両末端にBamHI部位を含有するカナマイシン耐性カセット(KanR)と一緒にpUC19中にクローニングした。得られるプラスミドpUC19-arnTup-KanR-arnTdownを、EcoRIおよびHindIII制限酵素で消化し、得られるEcoRI-HindIII断片を、EcoRI-HindIII制限自滅ベクターpSORTP1中にライゲーションした。pSORTP1-arnTKOと命名された最終構築物を使用して、アレル交換により百日咳菌(株W28 PT 9K/129G)arnT突然変異体を構築した。形質転換体を、種々のプライマーセットを使用するPCRによってスクリーニングした。
【0190】
OMVの精製
OMVを、W28 PT 9K/129GおよびそのarnTKO誘導体から生成した。百日咳菌の液体培養物を、250mLのバッフル付フラスコ中に3日間の増殖後に回収した。液体-空気体積比はOMV生産収率にとって重要であり、1:5の比に保持した。次いで、5,000xgで30分間の遠心分離によって、細菌を沈降させた。無細胞上清を回収し、0.22μmのStericupsフィルター(Millipore)を通して濾過した。175,000xgで2時間の超遠心分離の後、得られたOMVペレットを、Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)で洗浄し、175,000xgで2時間、さらに超遠心分離し、最終的に100μlのD-PBS中に再懸濁した。OMVを、製造業者の指示書に従って、総タンパク質含量についてLowryアッセイ(DC Protein Assay、BioRad)により定量した。
【0191】
結果
2つの百日咳菌解毒ワクチン株、遺伝的に解毒された百日咳毒素を発現するW28 PT 9K/129G株、およびArnTコード遺伝子の欠失により、コア構造の遠位リン酸基上のグルコサミン置換を欠く遺伝的に解毒されたリピドA構造を有するW28 PT 9K/129G arnTKO 株の誘導体から、外膜小胞調製物を調製した。W28 PT 9K/129G(Bp-Δarnt)のarnT KO突然変異体は、10倍少ないTLR4結合を示し(図1(a))、W28 PT 9K/129G (Bp-WT)株よりもPBMCからの有意に少ないIL-6分泌を誘導する(図1(b))。
【0192】
W28 9K/129G (Bp WT)およびW28 9K/129G arntKO (Bp ΔarnT)ワクチン株に由来する両方のOMVは、少量のFHA、69Kおよび百日咳毒素成分を含有することが示された(図2)。そして、両方のOMVで免疫したマウスは、3つ全部の無細胞百日咳成分に対する検出可能なレベルの抗体を惹起した(図3)。
【0193】
マウス抗血清の生成のためのマウスの免疫化
BALB/cマウス(メス、6週齢)(Charles River Laboratories International Inc., Wilmington, MA)に、100μlの製剤(50μL/脚)を用いて、3週間隔で3回の腹腔内(IP)免疫化または4週間隔で2回の筋肉内(IM)免疫化を投与した。血清を、それぞれの免疫化の2週間後に収集した。OMVを、2mg/mLのAl(OH)3中、それぞれの試験について示された用量で製剤化した。混合製剤のために、OMVを、2mg/mLのAl(OH)3中、100μlの総量のヒト用量の1/5のTdaP抗原(以下を参照されたい)を含む0.1、0.5および2.5μg用量の用量で製剤化した。
【0194】
マウス抗血清上でのLuminexイムノアッセイ
全てのワクチン抗原に対する総IgG力価を、記載のような(Agnolonら、2015)、かつ以下のようなLuminex penta-plexイムノアッセイによって分析した。力価は、高免疫参照抗血清による登録された蛍光強度中央値(MFI)の変換から得られる、1mlあたりの相対Luminex単位(RLU/ml)として表される。MagPlexミクロスフェアに基づくLuminex penta-plexイムノアッセイを製造業者の指示書に従って開発して、マウス血清中の抗TdaP抗体力価を定量した。抗原に結合したミクロスフェアを、希釈した血清(1:10000、ポスト-1;1:20000、ポスト-2)と共にインキュベートした後、個々の動物中でIgG力価を決定した。フィコエリトリンコンジュゲート二次抗体を、検出のために使用した(1:400)。Bio-Plex Manager 5.0ソフトウェア(Bio-Rad、Hercules、CA)を使用して、Luminex FLEXMAP 3D分析装置(Luminex Corporation, Austin, TX)上で蛍光強度中央値(MFI)としてIgG測定値を決定した。それぞれの抗原に特異的な抗血清を、RLU/ml(相対Luminex単位)の総IgGのMFI値を変換するための参照として使用した。アッセイの定量限界(LOQ)を、それぞれの抗原について決定し、陽性の結果に関する閾値と考えた。結果を、図4に示す。
【0195】
接着阻害アッセイ
百日咳菌接着阻害アッセイのために、液体培養物中で16h、細菌を増殖させた後、8000xgで5分間沈降させ、OD6000.5でd-PBS中に再懸濁した。次いで、百日咳菌細胞の蛍光標識化のために、445μlの容量の細菌懸濁液を、50μlの1m NaHCO3および5μlのAlexa Fluor 488カルボン酸、スクシンイミジルエステル(Life Technologies, Waltham, MA)と混合し、37℃で15分インキュベートした。室温で5分間、8,000xgで遠心分離した後、上清を除去し、ペレットを1mlのd-PBSで1回洗浄して、未結合の染料を除去し、最後に細菌をOD6000.2でF12-K培地中に再懸濁した。プールしたマウス血清を、1%(v/v)のナイーブなマウス血清を含有するF-12K培地中で4倍連続希釈し、1:1の比で37℃で1時間、標識された百日咳菌と共にインキュベートした。100μlの細菌/血清混合物を、播種されたA549細胞上に3回反復で移した。感染した細胞を、37℃で1時間インキュベートした。大規模に洗浄して未結合の細菌を除去した後、Tecan Infinite F200PROマイクロプレートリーダーにより励起/放射485/535nmで蛍光を測定した。
【0196】
wPまたは3つの異なるOMV用量でのマウスの免疫化は、A549上皮細胞のin vitro細胞培養物に接着する百日咳菌の能力を阻害することができる抗体の誘導をもたらした。不活化された全細菌で免疫したマウスに由来する血清は、最高レベルの細菌接着阻害を有し、OMVワクチンにより誘導された細菌接着阻害は、抗原用量に比例していた。TdaPワクチンは、蛍光標識された細菌の接着を阻害するマウスにおいて高レベルの抗体を誘導せず、低い血清希釈率のみ(1/40以上)が、アッセイにおける蛍光の減少をもたらした。10μgの最も高い用量のOMVは、最高レベルの細菌接着阻害を付与するワクチン接種時に抗体を誘導することが見出され、全細菌対照によって誘導されるものと同等であった(図5)。
【0197】
Kendrickの頭蓋内チャレンジ効力試験
CD1マウス(6週齢)に、500μLワクチン製剤を腹腔内(i.p.)に1回ワクチン接種し、免疫化の2週間後、頭蓋内投与される百日咳菌株18323の30μlの懸濁液でチャレンジし、マウスの生存を、Kendrickの頭蓋内チャレンジ効力試験(Kendrickら、1947)に従って、また、欧州薬局方の指針に従って、チャレンジ後、2週間にわたって追跡する。3つの用量(1/10、1/50および1/250ヒト用量)のNIBSC標準を陽性対照として使用し、OMVを、2mg/mLのAl(OH)3中、0.4、2および10μg用量で製剤化した。
【0198】
大脳内マウス防御試験(Kendrick試験)は、全細胞百日咳ワクチンの効力を決定するのに有効であり、小児における防御との相関を示した唯一の試験である(Xingら、2014[40])。増大する用量(0.4、2および10μg用量)でのOMVによるマウスの免疫化は、百日咳菌による頭蓋内チャレンジに対して増大するレベルの防御を付与し(図6)、これはwP NIBSC標準と同等であった。OMVワクチンにより誘導された防御は、抗原用量に比例し、強力な防御応答の惹起の成功は、wPのものと同等であった(図6)。
【0199】
エアロゾルチャレンジ
C57BL/6マウス(メス、10週齢)に、100μlのワクチン製剤を腹腔内(i.p.)に1回ワクチン接種し、以前(Misiakら、2017a)および以下に記載のように、3週間後にチャレンジした。全細胞百日咳(wP)ワクチンを、示されたように1/5または1/10のヒト用量で陽性対照として使用した。OMVを、2mg/mLのAl(OH)3中、示された0.4、2および10μgの用量で製剤化した。混合製剤のために、OMVを、2mg/mLのAl(OH)3中、100μlの総量のヒト用量の1/5のTdaP抗原(以下を参照されたい)を含む2.5μg用量で製剤化した。
【0200】
血清および脾臓を、チャレンジの1日前に、ワクチン接種の3週間後に免疫したマウス(1群あたり4匹のマウス)から収集した。脾臓細胞および血清抗体による抗原特異的サイトカイン産生を、ELISAによって分析した。次いで、残りのマウスを、以下に記載のような百日咳菌の毒性株でチャレンジし、肺CFUを、感染の1、3、7および14日後に評価した。
【0201】
マウスを、PARI TurboBOY SXネブライザーを使用して、百日咳菌エアロゾル(BP338株;1x109CFU/ml)に10分間曝露した後、10分間休止することによって、マウスの呼吸器感染を実施した。チャレンジ後の間隔で3~4匹のマウスの群に由来する肺に対してCFU計測を実施することによって、百日咳菌感染の経過を追跡した。肺を無菌的に取り出し、1%カゼインを含む1mlの滅菌生理食塩水中でホモジェナイズした。個々の肺に由来する、希釈していない、および連続希釈したホモジェネート(100μl)を、Bordet-Gengou寒天プレート上に2回反復で播種し、37℃で6日間のインキュベーションの後、細菌コロニーを計数した。
【0202】
以前に記載のように(Misiakら、2017b)および以下のように、ELISAによって抗体力価を測定した。プレートに結合したFHA(1μg/mL)、ビオチンコンジュゲート抗マウスIgG1またはIgG2aおよびペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ)を使用するELISAによって、FHA特異的抗体を定量した。抗体レベルを、非免疫血清について得られたバックグラウンド値の2SE上への滴定曲線の線形部分の外挿によって決定される、平均終点力価±SEMとして表す。
【0203】
wPおよび3つの異なるOMV用量でのマウスの免疫化は、百日咳菌特異的抗体産生の誘導をもたらした。wPは最も高い抗FHA総IgG力価を促進し、これは3つ全部のOMV用量と比較して有意に高かった(図7)。wPによるワクチン接種は、最も高いTH1応答、したがって、最も高い抗FHA IgG2c力価を促進することが見出された(図7)。抗FHA IgG2cが、それぞれ、OMV2およびOMV10の1/4および3/4の血清において検出された。OMV0.4で免疫したマウスにおいては、FHA特異的IgG2cは検出されなかった。FHA特異的応答の差異は、wPと比較した場合、OMV中のはるかにより少ないFHA含量を示唆する。
【0204】
TH1応答の誘導と共に、高い防御抗体力価が、百日咳菌に対する防御の鍵である。wP、OMV0.4、OMV2およびOMV10を用いた単回用量免疫化は、百日咳菌の呼吸器チャレンジに対して異なるレベルの防御を付与した(図8)。wPワクチンで免疫したマウスは、最高レベルの防御を有し、それらの大部分はチャレンジ後、7日目までに感染を消失させた。さらに、wPで免疫したマウスは、試験した3つ全ての濃度でOMVワクチンを受けたマウスと比較して、感染後の3つ全部の時点で有意に低いCFU計数を有していた。OMVワクチンにより誘導された防御は、抗原用量に比例していた。しかしながら、OMV10により誘導された防御は、wPワクチン接種によって誘導されたものほど有効ではなかった。クリアランス曲線下面積により、wPが百日咳菌エアロゾルチャレンジに対してマウスを防御するのに最良であることが確認された。10μgの最も高い用量のOMVは、百日咳菌チャレンジのマウスモデルにおいて最高レベルの防御を付与することが見出された。しかしながら、wPワクチンよりも依然として有意に有効性が低いことが見出された。また、FHA特異的IgG2c応答は、wPワクチンを受けたマウスにおいて最も高いことも見出され、FHA特異的血清IgG2cはOMVワクチン用量と共に増加した。
【0205】
ここに提示されるデータは、OMVワクチンにより付与される防御のレベルが、使用される抗原用量に正比例することを示す。また、選択された最も高い用量であっても、OMVワクチンはwPほど防御しないことも強調する。
【0206】
無細胞百日咳製剤と組み合わせて添加した場合にOMVが有し得る百日咳菌チャレンジに対する防御効能を比較するために、エアロゾルチャレンジモデルを、陽性対照としての全細胞ワクチンと共に、ミョウバンまたはミョウバン+OMVと共に製剤化された無細胞百日咳ワクチンと共に使用した。wP、aPおよびaP+OMVを用いたマウスの免疫化は、高い総抗FHA IgG力価を誘導した(図9)。さらに、高い総IgG力価が、OMVのみの群において検出された。有意な差異は、4つのワクチン群間で観察されなかった。高い抗FHA IgG1力価が全てのワクチン群において検出され、最も高いIgG1力価は、aPおよびaP+OMVワクチン接種マウスの血清中で検出された(図9)。しかしながら、群間で有意差は検出されなかった。FHA特異的IgG2cは、wPの2/4、aP+OMVの4/4およびOMVワクチン接種マウスの1/4の血清中で検出された(図9c)。抗FHA IgG2cは、aP群において検出されなかった。aPのみに対するIgG2c応答は、OMVの添加によって有意に増大した。
【0207】
wP、aP、aP+OMVならびにOMVのみによるマウスの単回用量投与は、百日咳菌を用いた呼吸器チャレンジに対する防御を付与することが見出された(図10)。wPワクチンで免疫したマウスは、最高レベルの防御を有し、チャレンジ後、7日目までに感染を消失させた。aPおよびOMVワクチン接種は、同様のレベルの防御を付与した。しかしながら、これらのワクチンは、wPワクチンよりも有意に有効性が低かった。対照的に、aP+OMVの組合せは、wPワクチンによって誘導されたものと同等の防御レベルを付与することが見出された。試験したいずれの時点でも、これらの2つのワクチン間で有意差は検出されなかった。クリアランス曲線下面積により、wPおよびaP+OMVが試験したワクチンの中で最も強力であることが確認された。
【0208】
かくして、1/5ヒト用量の試験した全てのワクチン製剤による単回免疫化は、C57BL6マウスにおいて百日咳菌に対する防御免疫を誘導した。OMVのみを用いた免疫化も、有意な防御を付与することが見出され、aPワクチンにより誘導されたものと同等であった。
【0209】
強力なTh1応答は、wP、aP+OMVおよびOMVのみにおいて検出可能であったが、aPワクチン接種されたマウスにおいては検出不可能であった。aPワクチンを受けたマウスと比較してaP+OMVワクチン接種マウスにおける増強されたTh1応答は、高い抗FHA IgG2c力価と相関し、aPで免疫したマウスにおいては実質的に存在しなかった。ここで提示されるデータは、aPワクチンへのOMVの添加は、初回ワクチン接種と追加ワクチン接種の両方の間に、その防御効能を強く増強し、抗FHA IgG2c産生およびTH1応答へのスイッチを誘導することを示す(図11)。
【0210】
追加ワクチン接種
以前の実験において、ナイーブなマウスを免疫化のために使用した。これは、初回ワクチン接種(すなわち、小児用ワクチン)と同様である。さらに、後年、追加ワクチン接種も必要であり、先進国の多くの被験体は、より高いTH2-prone応答を誘導する現在市販されているワクチンを受けているであろう。1回目の(初回)免疫化のための市販の小児用ワクチン(Infanrix Hexa)および2回目の免疫化のための、TdaP+OMVを含む、異なる市販の、または実験的な追加製剤を使用して、この状況を模倣した。
【0211】
TdaPワクチンへのOMVの添加は、TH1応答を有意に増強したが、TH1誘導アジュバント(ミョウバン-TLR7)の存在下であっても、異なるTdaP+OMVワクチンはTHバランスを変化させなかった(図12)。
【0212】
結論
調査したワクチン製剤の免疫原性に関して以下の観察を行った:
・OMV、ジフテリア、破傷風および百日咳ワクチンは、全ての調査した製剤で免疫したマウスにおいて、対応する抗原に対する特異的抗体力価を惹起した。
・OMVと、破傷風/ジフテリア/百日咳混合ワクチンとの間に、免疫学的干渉は観察されなかった。
・OMV/ジフテリア/破傷風/百日咳抗原の組合せによるワクチン接種に対するIgGおよび機能抗体応答は、OMVまたはTdaPワクチンのみによるワクチン接種後に観察されたものよりも有意に高い力価をもたらした。
・aPワクチンへのOMVの添加は、抗FHA IgG2c産生へのスイッチを誘導し、Th1応答はwP、aP+OMVおよびOMVのみにおいて検出可能であったが、aPワクチン接種マウスにおいては検出不可能であった。
【0213】
混合ワクチン中のaPワクチンへのOMVの添加は、単独で投与した場合のOMVまたはaP防御応答に関してその防御機能を強く増強する。結論として、調査されたワクチンのいずれの間でも強い干渉の証拠はなかった。OMVのみによる免疫化は、Kendrickの効力試験およびエアロゾルチャレンジモデルにおいて有意な防御を付与することが見出された。無細胞百日咳ワクチンへのOMVの添加は、aPまたはOMVワクチンのみよりも高い防御をもたらす。理論によって束縛されることを望むものではないが、これは、初回または追加ワクチン接種の両方における、小胞中に含有されるさらなる防御抗原および/または好ましいTH1プロファイルの誘導に起因し得る。
【0214】
以下、本発明の実施形態を示す。
[1](a)外膜小胞(OMV)、(b)無細胞百日咳抗原、(c)破傷風トキソイドおよび(d)ジフテリアトキソイドを含む免疫原性組成物であって、OMVが遺伝的に解毒された百日咳トキソイド、特に、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT 9K/129Gを発現する百日咳菌(Bordetella pertussis)株に由来する、免疫原性組成物。
[2]OMVが、突然変異R9KおよびE129Gを含むように改変されたS1遺伝子を含み、且つ、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドPT-9K/129Gを発現する百日咳菌株に由来する、[1]に記載の免疫原性組成物。
[3]OMVが、ArnT遺伝子がノックアウトまたは欠失されている百日咳菌株に由来する、[2]に記載の免疫原性組成物。
[4]OMV中のリピドAが、コア構造の遠位リン酸基上にグルコサミン(GlcN)置換を含まない改変された構造を有する、[1]~[3]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[5]無細胞百日咳抗原が、(i)解毒された百日咳毒素(PT)、(ii)繊維性ヘマグルチニン(FHA)および(iii)ペルタクチン(PRN)からなる群から選択される、[1]~[4]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[6]無細胞百日咳抗原が、PT、FHAおよびPRNを含む、[5]に記載の免疫原性組成物。
[7]PTが、遺伝的に解毒された百日咳トキソイドである、[6]に記載の免疫原性組成物。
[8]PT、FHAおよびPRNが、16:16:5の比(重量で測定される)で存在する、[6]または[7]に記載の免疫原性組成物。
[9]ジフテリアトキソイドが、約4~約8Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり4Lfの濃度で存在する、[1]~[8]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[10]ジフテリアトキソイドが、約20~約50Lf/ml、例えば、0.5ml用量あたり25Lfの濃度で存在する、[1]~[8]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[11]破傷風トキソイドが、0.5ml用量あたり約5~約10Lfの濃度で存在する、[1]~[10]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[12]ジフテリアトキソイドと、破傷風トキソイドとが、1より大きいジフテリアトキソイド:破傷風トキソイド比で、例えば、2.5:1などの2:1~3:1(Lf単位で測定される)で存在する、[1]~[11]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[13]ジフテリアトキソイドと、破傷風トキソイドとが、1より大きい破傷風トキソイド:ジフテリアトキソイド比で、例えば、2:1などの1.5:1~2.5:1(Lf単位で測定される)で存在する、[1]~[11]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[14]アジュバントを含有する、[1]~[13]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[15]アルミニウム塩アジュバントを含有する、[1]~[14]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[16]注射可能液体溶液または懸濁液である、[1]~[15]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[17]凍結乾燥される、[1]~[15]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[18]保存剤を含まない、[1]~[17]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[19]ワクチンである、[1]~[18]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[20]ヒトへの投与のためのものである、[1]~[19]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[21]薬剤としての使用のためのものである、[1]~[20]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[22]患者に、[1]~[21]のいずれか一に記載の組成物を投与するステップを含む、患者における免疫応答を上昇させる方法における使用のための、[1]~[21]のいずれか一に記載の免疫原性組成物。
[23]ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、破傷風菌(Clostridium tetani)および百日咳菌に対する、患者における免疫応答を上昇させる方法における使用のための、[22]に記載の免疫原性組成物。
本発明をほんの一例として説明してきたが、本発明の範囲および精神の中に依然としてありながら、改変を加えることができることが理解されるであろう。
【0215】
参考文献
【0216】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
【配列表】
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