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  • 特許-PARPインヒビタを含む医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】PARPインヒビタを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/502 20060101AFI20240409BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240409BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61K31/502
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/44
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021526623
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2019118714
(87)【国際公開番号】W WO2020098774
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】201811363490.6
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】徐 佳佳
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 昊
(72)【発明者】
【氏名】王 旭
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516979(JP,A)
【文献】特表2013-535491(JP,A)
【文献】特表2018-507896(JP,A)
【文献】特表2013-537530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される化合物と担体材料を含み、前記担体材料は、ポリビニルピロリドンを含む、固体分散体。
【化1】
【請求項2】
式Iで表される前記化合物は、アモルファス形である請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
前記固体分散体は、式Iで表される化合物と担体材料であるポリビニルピロリドンからなる請求項1に記載の固体分散体。
【請求項4】
前記ポリビニルピロリドンに対する前記式Iで表される化合物の重量比は、1:0.1~1:10である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の前記固体分散体と、単数又は複数の医薬的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項6】
式Iで表される前記化合物の含有量は、0.1mg~1000mgである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
式Iで表される前記化合物の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて0.01%~50%である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、更に、充填剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記充填剤は、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、マンニトール、アルファー化澱粉、ラクトースの単数又は複数を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記充填剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて5%~90%である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は、更に、崩壊剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、澱粉、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、クロスポビドンの単数又は複数を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記崩壊剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて1%~20%である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物は、更に、潤滑剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、硬化植物油、微粉シリカゲル、タルク、シリカの単数又は複数を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム及び/又はシリカを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記潤滑剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて0.5%~5%である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
以下を有する医薬組成物であって、

ここで、前記医薬組成物の総重量に基づき、前記充填剤は、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、マンニトール、アルファー化澱粉、及び、ラクトースの単数又は複数から選択され、前記崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、澱粉、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、及び、クロスポビドンの単数又は複数から選択され、前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、硬化植物油、微粉シリカゲル、タルク、及び、シリカの単数又は複数から選択される、医薬組成物。
【化2】
【請求項19】
前記充填剤はラクトースであり、前記崩壊剤はカルボキシメチル澱粉ナトリウムであり、前記潤滑剤はステアリン酸マグネシウム及び/又は二酸化ケイ素である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~4のいずれか一項に記載の固体分散体を調製する方法であって、式Iで表される化合物と、ポリビニルピロリドン及び任意の賦形剤とを、溶融押出装置内で混合する工程と、混合物を加熱混合し、最終的に固体分散体製品を押出する工程とを含む方法(1)、又は、
式Iで表される化合物と、ポリビニルピロリドン及び溶媒とを混合する工程と、前記溶媒を除去する工程とを含む方法(2)、を含む方法。
【請求項21】
前記溶媒の除去の方法は、ロータリー蒸発、噴霧乾燥、凍結乾燥、膜蒸発の単数又は複数から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項5~19のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製する方法であって、請求項20又は21に記載の固体分散体を調製する工程と、前記固体分散体を単数又は複数の薬学的許容可能な賦形剤と混合する工程とを含む、方法。
【請求項23】
請求項1~4のいずれか一項に記載の固体分散体又は請求項5~19のいずれか一項に記載の医薬組成物の癌の治療用薬剤の製造における使用。
【請求項24】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、すい臓癌、前立腺癌、肝臓癌、又は、結腸癌を含む、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月16日の中国特許出願CN2018111363490.6の優先権を主張する。この中国特許出願の内容はここに参考文献として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、医薬製剤の分野に属し、具体的には、PARPインヒビタを含む医薬組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ポリアデノシン二リン酸リボシル化活性を特徴とするポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARPs)は、18の核及び細胞質酵素を含むスーパーファミリーを構成する。このポリアデノシン二リン酸リボシル化は、目的のタンパク質の触媒活性とタンパク質間相互作用を調節し、DNA修復、細胞死、ゲノム安定性など、多くの基本的な生物学的プロセスを制御する(D'Amours et al. Biochem, J. 1999, 342, 249(非特許文献1)を参照)。
【0004】
PARP-1活性は、全細胞内PARP活性の約80%を占め、PARP-1に最も類似するPARP-2と共に、DNA損傷を修復する能力を持つPARPファミリーのメンバーになる。PARP-1は、DNA損傷のセンサー及びシグナル伝達タンパク質として、DNA損傷の部位をすばやく検出してそれに直接結合し、DNA修復に必要な複数のタンパク質の凝集を誘発して、DNA損傷を修復できるようにする。PARP-1が細胞に不足している場合、PARP-2はPARP-1の代わりにDNA損傷を修復することができる。
【0005】
研究は、正常な細胞と比較して、固形腫瘍においてPARPタンパク質の発現が一般的に増強されていることが示されている。更に、BRAC-1又はBRCA-2等のDNA修復関連遺伝子の欠損を伴う腫瘍(乳房腫瘍、及び、卵巣腫瘍)はPARP-1インヒビタに対して極度の感受性を示し、このことは、このいわゆるトリプルネガティブ乳がんの治療における単剤としてのPARPインヒビタの潜在的利用を示唆している(Plummer, E.R. Curr. Opin. Pharmacol. 2006, 6, 364(非特許文献2);Ratnam, et al; Clin Cancer Res. 2007, 13, 1388(非特許文献3)を参照)。同時に、DNA損傷修復メカニズムは、それによって、腫瘍細胞が化学療法剤とイオン化放射線療法に対する耐性を発達させる主要なメカニズムであるため、PARP-1は新たながん治療法を開発するための有効なターゲットと見なされる。
【0006】
CN102372698A(特許文献1)は、下記に示すような、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARPs)の強力な抑制と補助がん治療を示す新規なフタラジノン誘導体(式I)を開示している。
【化1】
【0007】
従来技術は、PARPインヒビタを含むいくつかの組成物とそれらの調製方法を報告している。CN102238945A(特許文献2)は、オラパリブの固体分散体を含む医薬組成物を記載しており、ここで、前記固体分散体のための担体材料は、コポビドンであり、この固体分散体は、PVPが担体材料として使用される場合、安定性が悪いことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許出願公開第102372698号
【文献】中国特許出願公開第102238945号
【非特許文献】
【0009】
【文献】D'Amours et al. Biochem, J. 1999, 342, 249
【文献】Plummer, E.R. Curr. Opin. Pharmacol. 2006, 6, 364
【文献】Ratnam, et al; Clin Cancer Res. 2007, 13, 1388
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の内容
本開示の目的は、式Iで表される化合物を含む固体分散体と、薬物の治療効果の改善のための医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一つの態様は、式Iで表される化合物を含む固体分散体と、前記ポリビニルピロリドンを含む担体材料、とを含む固体分散体を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、式Iで表される前記化合物は、アモルファス形である。
【0013】
前記ポリビニルピロリドンに対する式Iで表される前記化合物の重量比は、1:0.1~1:10、好ましくは1:0.1~1:7、より好ましくは1:0.5~1:5、そして、最も好ましくは1:3とすることができる。
【0014】
前記ポリビニルピロリドンは、PVPK12、PVPK15、PVPK17、 PVPK25、PVPK30、PVPK60及びPVPK90などのK値に基づいて分類可能なもの、或いは、2,500~1,200,000の分子量を有する架橋ポリマーに基づいて分類可能なものであり、製剤において汎用されるタイプのポリビニルピロリドンとすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記固体分散体は、更に、他の担体材料を含むことができ、ここで、前記ポリビニルピロリドンの比率は、前記固体分散体の総重量に基づいて40%、50%、60%、70%、又は、それ以上とすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記固体分散体は、式Iで表される化合物と担体材料であるポリビニルピロリドンとから成る。
【0017】
前記固体分散体は、更に、錠剤、カプセル剤、注射剤、注射用の凍結乾燥粉体等の、経口製剤、注射製剤、吸入製剤、又は、局所製剤のような、式Iで表される前記化合物を含む医薬組成物を調製するために使用することができる。
【0018】
本開示の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、注射剤及び注射用の凍結乾燥粉体等の、経口製剤、注射製剤、吸入製剤、又は、局所製剤とすることができる。
【0019】
本開示の固体分散体は、溶融押出、噴霧乾燥、溶媒蒸発等の当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。
【0020】
例えば、前記方法は、式Iで表される化合物を、ポリビニルピロリドン及び任意の賦形剤と、溶融押出装置内で混合する工程と、前記混合物を加熱混合し、最終的に固体分散体製品を押出する工程とを含む。前記混合物は、当該混合物を溶融するのに十分高いが、活性成分を劣化させないように十分低い、温度にまで押出成形機によって加熱される。
【0021】
あるいは、前記方法は、式Iで表される化合物を、ポリビニルピロリドン及び溶媒と混合する工程と、前記溶媒を除去する工程とを含む。前記固体分散体は、必要に応じて、追加の賦形剤と混合することによって調製することができる。溶媒除去の方法は、ロータリー蒸発、噴霧乾燥、凍結乾燥、膜蒸発、等とすることができる。前記溶媒は、ケトン溶媒及びアルコール溶媒であってよく、ここで、前記ケトン溶媒は好ましくはアセトンであり、前記アルコール溶媒は、好ましくはエタノールである。
【0022】
本発明の別の態様は、式Iで表される前記化合物と、単数又は複数の医薬的に許容可能な賦形剤とを含む固体分散体を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態において、式Iで表される前記化合物の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて0.01%~50%、好ましくは、1%~40%(4%、22%等)である。
【0024】
いくつかの実施形態において、式Iで表される前記化合物の含有量は、0.1mg~1000mg、 例えば、1mg~500mg、例えば、5mg~200mg、例えば、10mg、40mg、100mgである。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、充填剤を含む。前記医薬組成物の医薬的に許容可能な賦形剤の一つは充填剤とすることができる。本開示の充填剤は、非限定的に、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、マンニトール、アルファー化澱粉、ラクトースの単数又は複数、好ましくは、ラクトースを含むことができる。前記充填剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて5%~90%(例えば、81%)とすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、崩壊剤を含む。前記医薬組成物の前記薬学的許容可能賦形剤の一つは、崩壊剤とすることができる。前記崩壊剤は、非限定的に、クロスカルメロースナトリウム、澱粉、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、クロスポビドンの単数又は複数、好ましくは、カルボキシメチル澱粉ナトリウムを含むことができる。前記崩壊剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて1%~20% (例えば、2.2%及び11.9%)とすることができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、潤滑剤を含む。前記医薬組成物の医薬的に許容可能な賦形剤の一つは、潤滑剤とすることができる。前記潤滑剤は、非限定的に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、硬化植物油、微粉シリカゲル、タルク、シリカの単数又は複数、好ましくは、ステアリン酸マグネシウムとシリカの単数又は複数を含むことができる。前記潤滑剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて0.5%~5%(例えば、1.3%、3%)とすることができる。
【0028】
その他の適当な賦形剤には、接着剤、懸濁剤、甘味料、香味料、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、発泡剤等を含む。これらの賦形剤は当該技術分野において周知である。
【0029】
本開示の別の態様は以下を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
【0031】
前記医薬組成物の総重量に基づき、前記充填剤は、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、マンニトール、アルファー化澱粉、ラクトースの単数又は複数、好ましくは、ラクトースから選択され、前記崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、澱粉、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、クロスポビドンの単数又は複数、好ましくは、カルボキシメチル澱粉ナトリウムから選択され、前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、硬化植物油、微粉シリカゲル、タルク、シリカの単数又は複数、好ましくは、ステアリン酸マグネシウム及び/又は二酸化ケイ素から選択され、前記潤滑剤がステアリン酸マグネシウム及び二酸化ケイ素である場合に、前記シリカに対する前記ステアリン酸マグネシウムの質量比は10:1~1:1、好ましくは、7:1~2:1である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物中の式Iで表される化合物の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて4%~22%である。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物中の前記ポリビニルピロリドンの含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて12%~64%である。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物中の前記充填剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて0%~80.3%である。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物中の前記崩壊剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて2.2%~11.9%である。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物中の前記潤滑剤の含有率は、前記医薬組成物の総重量に基づいて1.3%~3%である。
【0037】
本開示の別の態様は、上述した式Iで表される化合物、上述したポリビニルピロリドン、上述した充填剤、上述した崩壊剤、及び、上述した潤滑剤からなる医薬組成物を提供する。
【0038】
本開示の別の態様は、式Iで表される化合物と、ポリビニルピロリドンと、充填剤と、崩壊剤と、潤滑剤とを含む医薬組成物であって、好ましくは、前記医薬組成物の総重量に基づき、式Iで表される化合物を1%~40%、ポリビニルピロリドンを1.1%~85%、充填剤を0%~90%、崩壊剤を1%~20%、及び、潤滑剤を0.5%~5%含む医薬組成物、好ましくは、前記医薬組成物の総重量に基づき、式Iで表される化合物を4%、ポリビニルピロリドンを12.1%、ラクトースを80.3%、カルボキシメチル澱粉ナトリウムを2.2%、シリカを0.2%、ステアリン酸マグネシウムを1.2%含む医薬組成物、又は、式Iで表される化合物を21.3%、ポリビニルピロリドンを61.8%、カルボキシメチル澱粉ナトリウムを11.9%、二酸化ケイ素を1%、及び、ステアリン酸マグネシウムを2%を含む医薬組成物、を提供する。
【0039】
本開示の別の態様は、式Iで表される化合物と、ポリビニルピロリドンと、充填剤と、崩壊剤と、潤滑剤とを含む医薬組成物であって、好ましくは、前記医薬組成物の総重量に基づき、式Iで表される化合物を1%~40%、ポリビニルピロリドンを1.1%~85%、充填剤を0%~90%、崩壊剤を1%~20%、及び、潤滑剤を0.5%~5%含む医薬組成物、好ましくは、前記医薬組成物の総重量に基づき、式Iで表される化合物を4%、ポリビニルピロリドンを12.1%、ラクトースを80.3%、カルボキシメチル澱粉ナトリウムを2.2%、シリカを0.2%、及び、ステアリン酸マグネシウムを1.2%含む医薬組成物、又は、式Iで表される化合物を21.3%、ポリビニルピロリドンを63.8%、カルボキシメチル澱粉ナトリウムを11.9%、二酸化ケイ素を1%、及び、ステアリン酸マグネシウムを2%含む医薬組成物、を提供する。
【0040】
本開示の別の態様は、本開示の式Iで表される化合物を含む医薬組成物を調製する方法を提供し、ここで、前記方法は、本開示の固体分散体を、単数又は複数の医薬的に許容可能な賦形剤と混合する工程を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、注射剤、注射用の凍結乾燥粉体等の、経口製剤、注射製剤、吸入製剤、又は、局所製剤に調製することができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記医薬的に許容可能な賦形剤は、充填剤、崩壊剤、及び、潤滑剤の単数又は複数を含み、ここで、前記充填剤、前記崩壊剤、及び、前記潤滑剤のタイプ及び量は、上述したものと同じである。
【0043】
他の適当な賦形剤には、接着剤、懸濁剤、甘味料、香味料、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、発泡剤等が含まれる。これらの賦形剤は当該技術分野において周知である。
【0044】
前記調製方法は、当該技術分野における一般的方法であってよく、例えば、前記経口製剤を調製する場合には、その製品は、乾式造粒装置造粒、高速せん断造粒、流動床ワンステップ造粒等によって前記医薬組成物の顆粒を調製する工程と、任意に、他の賦形剤と混合する工程と、その後、打錠(コーティング)又はカプセルを充填して、錠剤、顆粒剤又はカプセル剤に調製する工程で、顆粒剤等として調製することができる。
【0045】
本開示の別の態様は、担体材料中に分散させた式Iで表される化合物と、単数又は複数の医薬的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、前記式Iで表される化合物はアモルファス形である。
【0046】
前記式Iで表される化合物の含有率は上述したものと同じである。前記担体材料の含有率とタイプは上述したものと同じである。前記賦形剤の含有率とタイプは上述したものと同じである。
【0047】
担体材料中に式Iで表される化合物を分散させる方法は、本開示の固体分散体を調製する方法と同じである。
【0048】
いくつかの実施形態において、本開示の固体分散体は、25℃、60%RHで12カ月間保持され、前記固体分散体の総重量に基づき、式Iで表される化合物の含有率は、93%以上であり、例えば、その含有率は、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、又は、それ以上、好ましくは、95%以上、より好ましくは97%以上であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示の固体分散体は、40℃、75%RHで6カ月間保持され、前記固体分散体の総重量に基づき、式Iで表される化合物の含有率は、93%以上であり、例えば、その含有率は、93.5%, 94%, 94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、又は、それ以上、好ましくは、95%以上、より好ましくは97%以上であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、Dissolution Test, Method 2(Paddle)Appendix, Volume II, Chinese Pharmacopoeia 2015に従って、以下の、溶出媒体として、0.5% Tween水溶液、好ましくは1000ml、を使用し、37±0.5℃で50rpmのパドル速度で溶出する、工程で、溶出試験に供される。式Iで表される化合物の溶出は、60分間以内で90%を超え、好ましくは、93%、より好ましくは、94%、そして、最も好ましくは95%を超える。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、40℃、75%PHで6カ月間保持され、前記固体分散体の総重量に基づき、式Iで表される化合物の含有率は、93%以上であり、例えば、その含有率は、93.5%, 94.5%, 95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、又は、それ以上、好ましくは、95%以上、より好ましくは97%以上、そして最も好ましくは98%以上であり得る。
【0052】
本開示の別の態様は、本開示の式Iで表される化合物を含む固体分散体又は医薬組成物の、癌の治療用薬物の調製における利用を提供する。前記癌は、乳癌、卵巣癌、すい臓癌、前立腺癌、肝臓癌、結腸癌等から選択される。
【0053】
本開示は、担体としてポリビニルピロリドンを使用することによって固体分散体を調製するものであり、その最終的に得られる医薬組成物は、良好な溶出特性を有する。更に、前記組成物の安定性と溶出性は、長期保存後も良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、実施例5~7のカプセル剤の溶出プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
実施例の詳細説明
【0056】
実施例1:
General Notices, Volume II, Chinese Pharmacopoeia 2010に基づく試験に言及すると、微細な粉体へと粉砕された式Iで表される化合物を秤量し、特定量の溶媒(25℃±2℃)に移し、5分毎に30秒間、激しく振とうした。薬物の溶出を30分間以内に観察した。その後、溶液をろ過し、最初のろ液を捨て、それに続くろ液の濃度を試験した。溶解度を計算した。
【0057】
【表1】
【0058】
試験結果に示されるように、式Iで表される化合物は、アセトンとテトラヒドロフランにはわずかに溶解し、無水エタノールには難溶であり、そして、従来の水性溶媒には実際上不溶性であり、原材料に対する界面活性剤の溶解作用は限定的であったことから、従来の手段によって製剤を調製することは不可能である。
【0059】
実施例2~3:
【0060】
【表2】
【0061】
規定量のコポビドンS630又はPVPK30を添加し、エタノールに溶出させた。規定量のアセトンを添加し、攪拌して、よく混合した。式Iで表される化合物を上述の前記溶液に添加した。溶液を60℃まで加熱し、式Iで表される化合物が完全に溶出するまで攪拌した。前記溶液を噴霧乾燥した後、得られた粉体を60℃で乾燥させて固体分散体を得た。
【0062】
実施例4:
加速条件下にける実施例2と3の二つの固体分散体の高温(40℃と60℃)、湿度(25℃、RH75±5%、25℃、RH90±5%)での物理的安定性と化学的安定性とを、それぞれ調べた。時計皿中において結晶形態の前記二つの固体分散体における外観と変化を比較した。更に、前記二つの固体分散体の残留触媒を試験した。
【0063】
前記残留触媒の試験方法:ガスクロマトグラフィー、DB-5キャピラリーカラム(30m×0.53mm×1.0μm)と水素炎イオン化型検出器(FID)を使用し、溶媒としての水を使用した。
【0064】
活性物質と総不純物の含有率の試験方法(下記を参照):Phenomenex Luna C18カラム(4.6mm×200mm、5μm)、移動相:0.02mol/L、リン酸二水素カリウム溶液/アセトニトリル、検出波長:254nm、及び200nmにて、高速液体クロマトグラフィーシステムを試験のために使用した。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
コポビドンから調製された固体分散体は、PVPよりも吸湿性であり、RH90±5%で、5日後に潮解し、30日後には粘着したのに対し、PVPから調製された固体分散体はその外観においてより安定的であった。更に、PVPから調製された固体分散体は、残留溶媒が少なかった。加速度条件下で1か月後、PVPから調製された固体分散体の不純物含有量の増加はより少なく、コポビドンから調製された固体分散体の不純物含有量の増加はより大きかった。
【0069】
実施例5~7:
【0070】
【表6】
【0071】
実施例2の式Iで表される化合物の固体分散体、ラクトース(実施例5)、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、シリカ、及び、ステアリン酸マグネシウムの一部をよく混合した。この混合物を乾式造粒のために乾式造粒機に投入し、造粒後、残留ステアリン酸マグネシウムとよく混合し、カプセルに充填しカプセル剤を調製した。
【0072】
実施例8:
実施例5~7のカプセル剤の溶出、Dissolution Test Method 2(Paddle) Appendix, Volume II, Chinese Pharmacopoeia 2015に従って試験した。実施例5、6及び7のカプセル剤の溶出試験は、それぞれ、溶出媒体として0.5% Tween水溶液1000mLを使用して、37±0.5℃で、50rpmのパドルスピードで行った。溶出プロファイルを図1に示す。溶出の結果は、異なる強度のすべてのカプセル剤が急速かつ完全に溶出されたことを示した。
【0073】
実施例9:
実施例2のサンプルを、12カ月間、長期条件(25℃/60%相対湿度)下で、そして、6カ月間、加速条件(4℃/75%相対湿度)下で、包装材料(乾燥剤とアルミホイルパウチを備える医薬的な低密度ポリエチレンバッグ中にシール)中で保存し、活性物質の含有率、不純物、見かけの溶解度(0.5%ポリソルベート80水溶液中での溶解度)、及び、結晶化を試験するべく、定期的にサンプルを採取した。その結果を以下の表に示す。
【0074】
【表7】
【0075】
結果に示されるように、PVPによって調製された固体分散体は、長期保存後に安定しており、その溶出も維持することができる。
【0076】
実施例10:
実施例7のカプセル剤を、固体医薬用の塩化ポリビニールシートと医薬包装用のアルミホイル中に入れ、ヒートシール後、医薬包装用の複合フィルムバッグで包装し、次いで、ヒートシール後、カートンに入れた。活性物質の含有率、不純物及び溶出を試験するために(45mmで、実施例8と同じ溶出試験方法で)、それぞれ、サンプルを40℃±2℃及びRH75%±5%で6カ月間の保存後に定期的に採取し、そして、サンプルを30℃±2℃及びRH65%±5%で6カ月間の保存後にサンプルを定期的に採取した。その結果を以下の表に示す。
【0077】
【表8】
【0078】
サンプルに対して40℃±2℃/RH75%±5%と30℃±2℃/RH65±5%で6カ月間の、加速試験と長期試験を行った後、各パラメータにおいて有意な変化は観察されず、安定性は優秀であった。
【0079】
本開示の詳細な実施形態を上述したが、当業者は、これらの実施形態は具体例に過ぎず、本開示の原理及び要旨から逸脱することなく、多くの変更又は改変を行うことが可能であることを理解するであろう。従って、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1