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特許7469319変化する組成又は流量を有するガス流からガス成分を分離するための装置及び膜プロセス
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  • 特許-変化する組成又は流量を有するガス流からガス成分を分離するための装置及び膜プロセス 図1
  • 特許-変化する組成又は流量を有するガス流からガス成分を分離するための装置及び膜プロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】変化する組成又は流量を有するガス流からガス成分を分離するための装置及び膜プロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240409BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D61/58
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021543472
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020051497
(87)【国際公開番号】W WO2020156902
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】62/800,168
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン クリスティアン ペダーセン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック ダーク ホービング
(72)【発明者】
【氏名】マルクス プリスケ
(72)【発明者】
【氏名】カー ペング リー
(72)【発明者】
【氏名】ノーバート クルツラー
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0000355(US,A1)
【文献】特開2000-033222(JP,A)
【文献】特表2016-505354(JP,A)
【文献】特開昭59-130520(JP,A)
【文献】特開平02-021920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガス成分と第2ガス成分とを含むガス流(1)を分離する装置であって、
(a) 供給導管(3)を介して前記ガス流を受ける第1膜分離ユニット(2)であって、前記第1膜分離ユニットは、前記第2ガス成分に対してよりも前記第1ガス成分に対して高い透過度を有するガス分離膜を含み、前記第1ガス成分に富む第1透過流と第1保持流を与える、第1膜分離ユニット(2)と、
(b) 前記第1膜分離ユニット(2)に接続され、前記第1透過流を受ける第1透過導管(4)と、
(c) 前記第1膜分離ユニット(2)に接続され、前記第1保持流を受ける第1保持導管(5)と、
(d) 前記第1保持導管(5)に接続され、前記第1保持流を供給物として受ける第2膜分離ユニット(6)であって、前記第2膜分離ユニット(6)は、前記第2ガス成分に対してよりも前記第1ガス成分に対して高い透過度を有するガス分離膜を含み、第2保持流及び第2透過流を与える、第2膜分離ユニット(6)と、
(e) 前記第2膜分離ユニット(6)に接続され、前記第2保持流を受ける第2保持導管(7)と、
(f) 前記第2膜分離ユニット(6)に接続され、前記第2透過流を受ける第2透過導管(8)と、
(g) 前記第2保持導管(7)に接続され、前記第2保持流を供給物として受ける第3膜分離ユニット(9)であって、前記第3膜分離ユニット(9)は、前記第2ガス成分に対してよりも前記第1ガス成分に対して高い透過度を有するガス分離膜を含み、第3保持流及び第3透過流を与える、第3膜分離ユニット(9)と、
(h) 前記第3膜分離ユニット(9)に接続され、前記第3保持流を受ける生成導管(10)と、
(i) 前記第3膜分離ユニット(9)に接続され、前記第3透過流を受け、前記供給導管(3)の第1回収供給点(12)に接続された第1回収導管(11)と、
(j) 前記第1回収供給点(12)と前記第1膜分離ユニット(2)との間の前記供給導管(3)に配置された、又は前記第1回収導管(11)に配置されたガスコンプレッサ(13)と、
(k) 前記供給導管(3)にある、又は前記第1回収導管(11)にある第2回収供給点(15)に接続された第2回収導管(14)であって、前記第2回収供給点(15)は、前記ガスコンプレッサ(13)の上流に位置し、前記第2回収導管(14)は、前記第2透過導管(8)に接続され、前記第2透過流の全部又は一部を受ける第2回収導管(14)と、
) 前記第2回収導管(14)に渡される前記第2透過流の一部を制御し、前記第2透過流の残りを排出導管(17)に渡す制御装置(16)と、
を具備する、ガス流を分離する装置。
【請求項2】
前記第1透過導管(4)及び前記排出導管(17)は、共同排出導管(18)に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
記排出導管(17)に逆止弁(19)が配置されており、前記第1透過導管(4)から前記第2回収導管(14)への第1透過流の通過を防止する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1膜分離ユニット(2)は、前記第2ガス成分に対する前記第1ガス成分の20℃における純ガス選択度が高く、かつ、前記第2膜分離ユニット(6)によって構成されるガス分離膜よりも前記第1ガス成分の20℃における透過度が低いガス分離膜を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2膜分離ユニット(6)は、前記第2ガス成分に対する前記第1ガス成分の20℃における純ガス選択度が高く、かつ、前記第3膜分離ユニット(9)によって構成されるガス分離膜よりも前記第1ガス成分の20℃における透過度が低いガス分離膜を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1回収導管(11)に、前記第2回収供給点(15)の上流に配置され、前記第3膜分離ユニット(9)の透過物側に大気圧以下の圧力を与える第1真空ポンプ(20)をさらに具備する、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記排出導管(17)の上流の前記第2透過導管(8)に配置され、前記第2膜分離ユニット(6)の透過物側に大気圧より低い圧力を与える第2真空ポンプ(21)をさらに具備する、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第3保持流のガス特性を決定するために前記生成導管(10)に接続されたガス分析器(22)をさらに具備し、
前記ガス特性は、前記第1ガス成分の含有量、前記第2ガス成分の含有量、及び発熱量から選択され、
前記ガス分析器(22)は、前記制御装置(16)に接続され、前記ガス特性に関する情報を送信し、
前記制御装置(16)は、前記第2回収導管(14)に渡される前記第2透過流の割合を制御することによって、前記ガス特性を目標値に維持するように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第3膜分離ユニット(9)は、並列に配置された少なくとも2つの膜モジュール(9a、9b)と、膜モジュール(9b)への流れを断つ少なくとも1つの遮断弁(23)とを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
第1ガス成分と第2ガス成分とを含むガス流(1)を分離するためのプロセスであって、
前記ガス流(1)を、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置の供給ライン(3)に、ガスコンプレッサ(13)の上流側に供給することと、
前記第2ガス成分に富んだ生成ガス流として、第3保持流を生成導管(10)から引き出すことと、
前記第1透過流を前記第1ガス成分に富んだオフガス流として第1透過導管(4)から引き出すこと、又は、共同排出導管(18)が存在する場合には、前記第1透過流を排出導管(17)に渡された第2透過流の残りと組み合わせることによって得られる流れを、前記第1ガス成分に富んだオフガス流として共同排出導管(18)から引き出すことと、
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記第1ガス成分が二酸化炭素であり、前記第2ガス成分がメタンである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第2回収導管(14)に渡される前記第2透過流の割合が、前記ガス流(1)の流量が減少すると増加し、前記ガス流(1)の流量が増加すると減少する、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2回収導管(14)に渡される前記第2透過流の割合は、前記ガス流(1)中の前記第1ガス成分の割合が減少すると増加し、前記ガス流(1)中の前記第1ガス成分の割合が増加すると減少する、請求項10~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第3保持流のガス特性が分析器(22)によって監視され、前記ガス特性は、前記第1ガス成分の含有量、前記第2ガス成分の含有量、及び発熱量から選択され、前記第2回収導管(14)に渡される前記第2透過流の割合は、前記ガス特性を一定に保つように制御される、請求項10~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第3膜分離ユニット(9)は、並列に配置され、個別に流れを断つことができる多数の膜モジュールを有し、
前記ガス流(1)の流量が減少したときに、前記第3膜分離ユニット(9)の膜モジュールが流れを断つ、請求項10~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ガス流は、埋立地、廃水処理、又は嫌気性消化槽からのバイオガスである、請求項11~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化する組成又は流量を有し、第1ガス成分と、よりゆっくり透過する第2ガス成分とを含むガス流を、膜プロセスによって分離し、本質的に一定の組成を有する第2ガス成分に富む生成ガス流を与えることに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分離のための膜プロセスは、ガスの液化、固体への吸収又は液体への吸収を用いたガス分離プロセスよりも、プロセス化学物質、機械装置の動き及びエネルギーが少なくて済むため、広く応用されている。先行技術の膜プロセスは、本質的に一定の組成と流量を有するガス流を分離するには非常に効率的であるが、組成や流量が変化するガス流を分離するには欠点がある。バイオガスからバイオメタン(再生可能な天然ガスとも呼ばれる)を生成する場合や生の天然ガスからパイプライングレードの天然ガスを生成する場合のように、膜プロセスが、指定された限度以下の高速透過性ガス成分の含有量を有する低速透過性ガス成分に富む生成ガスを与えるために使用される場合、膜分離装置は、予期される最大ガス流量及び高速透過性ガス成分の最大含有量で要求される仕様を与えるように寸法設定されなければならない。さもなければ、このような装置を、増加したガス流量で、又は高速透過性ガス成分の高い含有量を有するガス流で作動させると、生成ガス中の高速透過性ガスの濃度が規定の限界を超えて増加することにつながりうる。しかしながら、たまにしか発生しない最大可能ガス流量に合わせて膜分離装置の寸法を決めると、膜の投資コストが高くなりうるだけでなく、最大流量よりも低いガス流量で装置を運転すると、透過速度の遅いガス成分の回収が下がりうるという欠点がある。ガス生成率が1日のうちに、そして最大で1シーズンのうちに変化する嫌気性消化槽や埋立地からのバイオガスの場合、運転時間のほとんどがこれに該当しうる。
【0003】
国際公開第2014/075850号は、供給流分離ユニット、保持物分離ユニット及び透過物分離ユニットを有する2ステージ・2ステップの膜分離装置を開示しており、保持物分離ユニットでの透過圧力の制御、及び透過物分離ユニットでの保持圧力の制御を用いて、ガス供給物の組成又は流量が変化しても生成流の組成を一定に保つ。しかしながら、この概念は1ステージの膜分離装置には適用できない。
【0004】
国際公開第2014/183977号は、供給ガス流の流量又は組成、あるいは生成ガス流の組成に基づいて、第1分離ステップでの透過圧力の制御を用いる、1ステージ・2ステップの膜分離装置を開示している。
【0005】
ガス流量又は組成に対する反応の変化に反応して透過圧力を調節するには、ガス流量又は高速透過ガス成分の含有量の増加に対して作用できるようにするために、ほとんどの時間、必要以上に高い透過圧力で装置を運転する必要がある。
【0006】
バイオガスの供給ガス流量又は組成の変化を補償するために、マルチステップ・マルチステージプロセスでの流れの分割を用いた代替概念が、4つの韓国特許で提案されている。
【0007】
韓国特許第1840337号は、第1ステップの透過物中のメタン含有量に応じて、第1ステップ・第1ステージで得られた透過物の変化する割合を第2膜ステージに指示する制御装置を用いる3ステップ・2ステージプロセスを開示している。第2ステージ・第1ステップからの保持物は、第1ステージ・第1ステップからの保持物と組み合わせられて、第1ステージ・第2ステップへの供給物を与える。
【0008】
韓国特許第1840340号は、供給流中のメタン含有量に応じて、第1ステージ・第2ステップで得られた保持物の変化する割合を第1ステージ・第3ステップに指示する第1制御装置と、この保持物中の二酸化炭素含有量に応じて、第2ステージ・第1ステップの保持物の変化する割合を第2ステージ・第2ステップに指示する第2制御装置とを用い、第2ステージ・第1ステップは、供給物として第1ステージ・第2ステップの透過物を受ける、3ステップ・2ステージプロセスを開示している。
【0009】
韓国特許第1840343号は、第1制御装置を用いず、かつ、1ステージ・2ステップの保持流を分割しない、韓国特許第1840340号の3ステップ・2ステージプロセスを開示している。
【0010】
韓国特許第1863058号は、第2制御装置を用いず、2ステージ・1ステップの保持流を分割しない、韓国特許第1840340号の3ステップ・2ステージプロセスを開示している。
【0011】
4つのプロセスは、すべて、2ステージで少なくとも5つの膜ユニットを備えた装置を必要とする。
【0012】
米国特許第6,197,090号は、第1ステップの透過物の一部が供給流に回収される2ステップ・1ステージの膜分離プロセスを開示しており、その割合は、第1ステップの透過物中の高速透過ガス成分の濃度に基づいて、又は供給流の圧力を一定に保つために制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2014/075850号
【文献】国際公開第2014/183977号
【文献】韓国特許第1840337号
【文献】韓国特許第1840340号
【文献】韓国特許第1840343号
【文献】米国特許第6,197,090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の発明者らは、ガス流の組成又は流量の変動を補償して、プロセス内の圧力を変化させる必要なく、高速透過性ガス成分に関して本質的に一定の純度を有する低速透過性ガス成分に富む生成ガスを与えることができること、供給流に回収される第2ステップの透過物の割合を変化させることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
供給流に回収される第2ステップの透過物の割合を調整して、第3ステップの保持物の目標組成を維持することで、例えば、液体が膜モジュールに入ったり、ガス成分が膜上で凝縮したりした場合に生じる膜の汚染や、中空糸膜モジュールの繊維のブロッキングなどによって生じる膜効率の変化を追加的に補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、制御装置(16)に接続されたガス分析器(22)を用いて、第3保持流のガス特性を維持するために回収される第2透過流の割合を制御する、本発明の装置及びプロセスの一実施形態を示す図である。
図2図2は、追加の真空ポンプ(19、20)が、第2膜分離ユニット(6)及び第3膜分離ユニット(9)の透過物側に大気圧より低い圧力を与えるために使用される、本発明の装置及びプロセスの実施形態を示す図である。
図3図3は、第3膜分離ユニット(9)が、2つの膜モジュール(9a、9b)と、分離されるべきガス流(1)の流量が閾値以下に減少したときに膜モジュール(9b)を流れから外すための遮断弁とを備える、本発明の装置及びプロセスの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の装置は、第1ガス成分及び第2ガス成分からなり、組成又は流量が変化しうるガス流(1)を分離することを意図している。本発明の装置は、3つの膜分離ユニットと、ガスコンプレッサと、これらを接続している導管と、特定のプロセス流の分割を制御する制御装置と、を有する。
【0018】
本発明の装置は、供給導管(3)を介してガス流(1)を受け、第2ガス成分に対してよりも第1ガス成分に対して高い透過度を有するガス分離膜を備える第1膜分離ユニット(2)を有する。この第1膜分離ユニット(2)は、第1透過流と第1保持流を与える。第1透過導管(4)は、第1透過流を受けるために第1膜分離ユニット(2)に接続されており、第1保持導管(5)は、第1保持流を受けるために第1膜分離ユニット(2)に接続されている。
【0019】
ここで、透過物(透過)(permeate)との用語は、膜分離ユニットに供給されたガス混合物のうち、膜を横切る分圧の差による、ガス分離膜を通過したガス成分からなるガス混合物を指す。また、保持物(保持)(retentate)との用語は、透過物を構成するガス成分がガス分離膜を通過した後に残る混合ガスを指す。ガス分離膜は、第1ガス成分の透過度が第2ガス成分の透過度よりも高いため、透過物は第1ガス成分に富み、保持物は第1膜分離ユニット(2)に供給された混合ガスと比較して第1ガス成分に乏しくなる。
【0020】
透過度(permeance)は、膜を通過する時間単位、面積、差圧あたりのガス流量と定義され、通常、体積流量に基づいたガス透過単位(GPU、10-6cmcm-2-1cm(Hg)-1)で求められる。特定の膜とガス成分のGPUでの透過度Pは、純ガスの透過実験から、P=106*Q/(RTΔp)として決定され、Qは基準条件でcm/sでの膜を通過する規格化されたガス流量、Rはガス定数、Tは温度、Δpはcm(Hg)での膜を横切る圧力差である。
【0021】
第2ガス成分に対する第1ガス成分の膜の純ガス選択度(selectivity)Sは、S=P/Pとして定義され、Pは第1ガス成分の透過度、Pは第2ガス成分の透過度である。
【0022】
膜分離ユニットの分離能力は、膜分離ユニットの総膜面積と、膜分離ユニットで用いられている膜の透過度との積として定義される。
【0023】
適切なガス分離膜が先行技術から知られている。ガラス状ポリマー、すなわち、膜分離ユニットの動作温度以上の温度にガラス転移点を有するポリマーの分離層を含むガス分離膜は、通常、異なるポリマータイプの分離層を有する膜よりも高い選択度を与えるので、好ましい。ガラス質ポリマーは、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリスルホン又はポリイミドであってよく、ガス分離膜は、好ましくは、ポリイミド又はポリイミドの混合物を少なくとも80重量%含んでいる。
【0024】
好ましい実施形態では、第1膜分離ユニットのガス分離膜は、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデンジフタル酸二無水物、及びこれらの混合物から選択された二無水物を、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジイソシアネート、及びこれらの混合物から選択されたジイソシアネートと反応させることによって調製されたポリイミドを少なくとも50重量%含む。二無水物は、好ましくは、3、4、3’、4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、又は、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物の混合物である。ジイソシアネートは、好ましくは、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの混合物、又は、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート及び4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートの混合物である。このタイプの適切なポリイミドは、エボニック・ファイバーズ社からP84(登録商標)タイプ70という商品名で入手でき、CAS番号9046-51-9で、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と、64mol%の2,4-トリレンジイソシアネート、16mol%の2,6-トリレンジイソシアネート、20mol%の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートの混合物から調製されたポリイミドである。4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、商品名P84(登録商標)HTは、CAS番号134119-41-8で、60mol%の3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と40mol%の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物の混合物と、80mol%の2,4-トリレンジイソシアネートと20mol%の2,6-トリレンジイソシアネートの混合物とから調製されたポリイミドである。本実施形態のガス分離膜は、本発明のプロセスの長期的な安定性を向上させるために、国際公開第2014/202324号に記載されているように、不活性雰囲気中で熱処理されていることが好ましい。
【0025】
ガス分離膜は、平膜であっても中空糸膜であってもよく、好ましくは、多孔質支持体上に緻密なポリイミド層を形成してなる非対称性中空糸膜である。ここで、「緻密な層(緻密層)」との用語は、層を貫通するマクロポアが本質的に存在しない層を指し、「多孔質支持体」との用語は、支持体を貫通するマクロポアを有する支持体材料を指す。非対称中空糸膜は、多孔質中空糸にポリイミドをコーティングして、支持体上に緻密なポリイミド層を形成することによって調製されることができる。好ましい実施形態では、非対称中空糸膜は、環状の2成分紡糸ノズルを用いて紡糸し、環状の開口部にポリイミドの溶液を通過させ、中央の開口部にポリイミドの非溶媒を含む液体を通過させることにより、相反転プロセスで調製された膜である。これにより、同じポリイミドで構成された多孔質支持体上に緻密層が形成された非対称型の中空糸膜が得られる。
【0026】
ガス分離膜は、好ましくは、ゴム質ポリマーの追加の高密度層で被覆されたガラス質ポリマーの高密度分離層からなり、ゴム質ポリマーは、ガラス質ポリマーよりも高いガス透過性を有する。ポリイミド分離層からなる好ましいガス分離膜は、好ましくは、ポリジメチルシロキサンエラストマーで被覆されている。
【0027】
本発明の装置は、第1保持導管(5)に接続されて第1保持流を供給物として受ける第2膜分離ユニット(6)をさらに備える。この第2膜分離ユニット(6)は、第2ガス成分に対してよりも第1ガス成分に対して高い透過度を有するガス分離膜を有し、第2保持流及び第2透過流を与える。第2保持導管(7)が第2膜分離ユニット(6)に接続されており、第2保持流を受けて、第2透過導管(8)が第2膜分離ユニット(6)に接続されており、第2透過流を受ける。
【0028】
本発明の装置は、第2保持導管(7)に接続されており、第2保持流を供給物として受ける第3膜分離ユニット(9)をさらに備える。この第3膜分離ユニット(9)は、第2ガス成分に対してよりも第1ガス成分に対して高い透過度を有するガス分離膜を有し、第3保持流及び第3透過流を与える。生成導管(10)は、第3膜分離ユニット(9)に接続されており、第3保持流を受ける。
【0029】
3つの膜分離ユニットの各々は、並列に配置された複数の膜モジュールから構成されることができ、直列に配置された複数の膜モジュールから構成されていてもよい。ガス分離膜が平らな膜である場合、膜分離ユニットは、好ましくは、平らな膜を含む1つ又は複数の螺旋状に巻かれた膜モジュールを有する。ガス分離膜が中空糸膜である場合、膜分離ユニットは、好ましくは、それぞれが中空糸膜の束を含む1つ又は複数の膜モジュールを有する。膜分離ユニットが直列に配置された膜モジュールから構成されている場合、ある膜モジュールから与えられた保持物は、供給物として一連の膜モジュールの後続の膜モジュールに渡され、一連の最後の膜モジュールが膜分離ユニットの保持物を与え、一連の中のすべての膜モジュールの透過物は、膜分離ユニットの透過物を与えるために結合される。膜分離ユニットが直列に配置された複数の中空糸膜モジュールからなる場合、膜モジュールは、好ましくは、国際公開第2016/198450号に詳細に記載されているように、共通の圧力容器内にカートリッジのチェーンとして直列に配置され、中央の透過物収集管によって互いに接続された取り外し可能な膜カートリッジである。
【0030】
3つの膜分離ユニットは、同じタイプのガス分離膜であることができる。この場合、第2膜分離ユニット及び第3膜分離ユニットは、第1膜分離ユニットについて付け加えて上述したように、同じタイプのガス分離膜を有する。
【0031】
好ましい実施形態では、第1膜分離ユニット(2)は、第2膜分離ユニット(6)によって構成されるガス分離膜よりも、第2ガス成分に対する第1ガス成分の20℃における純ガス選択度が高く、かつ、第2膜分離ユニット(6)によって構成されるガス分離膜よりも、第1ガス成分の20℃における透過度が低いガス分離膜を有する。そして、第3膜分離ユニット(9)は、第2膜分離ユニット(6)と同じガス分離膜を有してもよいし、異なるガス分離膜を有してもよい。好ましくは、第1膜分離ユニット(2)のガス分離膜は、メタンに対する二酸化炭素の20℃における純ガス選択度が、同じ温度で同じガス成分について測定した、第2膜分離ユニット(6)によって構成されるガス分離膜の純ガス選択度の1.05~2倍である。第1膜分離ユニット(2)が、上述したような二無水物とジイソシアネートから調製された好ましいポリイミドガス分離膜を有する場合、第2膜分離ユニット(6)は、好ましくは、国際公開第2015/091122号の6ページ20行目から16ページ4行目に記載されているようなブロックコポリイミドを少なくとも50重量%含むガス分離膜を有する。ブロックコポリイミドは、好ましくは、5~1000、好ましくは5~200のブロック長を有するポリイミドブロックを少なくとも90重量%含む。
【0032】
上述の実施形態と組み合わせられることができる他の好ましい実施形態では、第2膜分離ユニット(6)は、第3膜分離ユニット(9)によって構成されるガス分離膜よりも、第2ガス成分に対する第1ガス成分の20℃における純ガス選択度が高く、かつ、第3膜分離ユニット(9)によって構成されるガス分離膜よりも、第1ガス成分の20℃における透過度が低いガス分離膜を有する。好ましくは、第2膜分離ユニット(6)のガス分離膜は、メタンに対する二酸化炭素の20℃における純ガス選択度が、同じ温度で同じガス成分について測定された、第3膜分離ユニット(9)によって構成されるガス分離膜の純ガス選択度の1.05~3倍である。第3膜分離ユニットはまた、好ましくは、国際公開第2015/091122号の6ページ20行目から16ページ4行目に記載されているようなブロックコポリイミドを少なくとも50重量%含むガス分離膜を有する。第2膜分離ユニットで使用される膜と比較して高い透過度は、異なるポリマーブロックを選択するか、異なるブロック長を用いることによって与えられることができる。
【0033】
本発明の装置はまた、第3膜分離ユニット(9)に接続されており、第3透過流を受ける第1回収導管(11)を備え、第3透過流を回収するために供給導管(3)にある第1回収供給点(12)に接続されていることを特徴とする。
【0034】
本発明の装置は、さらに、第1回収供給点(12)と第1膜分離ユニット(2)との間の供給導管(3)に配置されているか、第1回収導管(11)に配置されているガスコンプレッサ(13)を有する。ガスコンプレッサ(13)は、分離されるべきガス流(1)が周囲圧力又は周囲圧力よりもわずかに高い圧力で受け取られ、第1膜分離ユニット(2)を動作させるために使用される圧力に圧縮される必要があるときに、第1回収供給点(12)と第1膜分離ユニット(2)との間に配置される。分離されるべきガス流(1)が、第1膜分離ユニット(2)を動作させるのに十分な圧力で受け取られるとき、回収されるべきガスのみが圧縮される必要があり、ガスコンプレッサ(13)は、第1回収導管(11)に配置されることができる。ガス流(1)の成分と互換性のある任意のガスコンプレッサ、例えば、ターボコンプレッサ、ピストンコンプレッサ、又は好ましくはスクリューコンプレッサを使用することができる。スクリューコンプレッサは、乾式のコンプレッサであっても、水又は油で冷却される流体冷却式のコンプレッサであってもよい。油冷式コンプレッサが使用される場合、好ましくは、装置は、ガスコンプレッサ(13)と第1膜分離ユニット(2)との間に、油滴が第1膜分離ユニット(2)に入るのを防ぐための液滴分離器も含む。好ましくは、ガスコンプレッサ(13)と第1膜分離ユニット(2)との間の供給導管(3)に冷却器が配置されて、第1膜分離ユニット(2)に入る前の圧縮ガスを冷却する。冷却器はまた、水分又は他の凝縮可能な成分を凝縮させるための凝縮器を含んでもよく、膜分離ユニットのガス分離膜上での凝縮可能なガス成分の凝縮を防止するために、この凝縮器と第1膜分離ユニット(2)との間に追加のヒーターを配置してもよい。
【0035】
本発明の装置はまた、第2透過導管(8)に接続されており、第2透過流のすべて又は一部分を受け、それが受ける第2透過流の一部分を回収するために、供給導管(3)にある、又は第1回収導管(11)にある第2回収供給点(15)に接続された、第2回収導管(14)を有する。第2回収供給点(15)は、ガスコンプレッサ(13)の上流に位置しており、これにより、余分な設備なしに第2透過流のすべて又は一部を回収することができる。制御装置(16)は、第2透過流を第2回収導管(14)に渡す割合を制御するように構成されている。第2透過流の残りは、排出導管(17)に渡される。制御装置は、三方分岐弁を動作させることにより、又は第2回収導管(14)内の第1弁と排出導管(17)内の第2弁である2つの別々の弁を動作させることにより、第2透過流を第2回収導管(14)に供給される割合と排出導管(17)に供給される残りの割合に効果的に分けることができる。この目的のためには、装置を操作する際の圧力や流量の変動を防止するために、切替弁よりも制御弁が好ましい。
【0036】
制御装置(16)は、第2回収導管(14)を介して回収される第2透過流の割合のフィードフォワード制御を行うように構成されることができる。これは、分離されるべきガス流(1)の流量及び/又は組成を決定するために、第1回収供給点(12)の上流の供給導管(3)に流量計及び/又はガス分析器を設け、制御装置(16)を流量計及び/又はガス分析器に接続し、第2透過流を、第2回収導管(14)に供給される分と、排出導管(17)に供給される残りの分に分割するための制御弁を設定するように制御装置(16)を構成することによって達成されることができる。この実施形態では、第2透過導管(8)、第2回収導管(14)、排出導管(17)、又はそれらの任意の組合せにおける追加の流量計が使用されることができ、これらの流量計は、分離されるべきガス流(1)の流量及び/又は組成に応じて第2透過流のための所望の分割率を設定するために、制御装置(16)に接続される。
【0037】
代わりの好ましい実施形態では、制御装置(16)は、第2回収導管(14)を介して回収される第2透過流の割合のフィードバック制御を行うように構成されている。この目的のために、ガス分析器(22)が、第3保持流のガス特性を決定するために生成導管(10)に接続され、ガス分析器(22)が、ガス特性に関する情報を送信するために制御装置(16)に接続され、制御装置(16)が、好ましくは制御弁によって、第2回収導管(14)に渡される第2透過流の割合を制御することによって、ガス特性を目標値に維持するように構成される。ガス分析器(22)によって決定されるガス特性は、好ましくは、第1ガス成分の含有量、第2ガス成分の含有量、又は発熱量である。
【0038】
好ましい実施形態では、第1透過導管(4)及び排出導管(17)は、共同排出導管(18)に接続されており、この共同排出導管は、第1透過流及び第2透過流のうち回収されない部分の両方を受ける。これは、装置から排出される透過流に、監視すべきガス成分が含まれている場合や、例えば熱酸化器による有機成分の除去など、透過流のさらなる処理が必要な場合に有利である。共同排出導管(18)による第1透過導管(4)と排出導管(17)との間の接続がある場合には、第1透過導管(4)から第2回収導管(14)への第1透過流のいかなる通過も防止するために、逆止弁(19)が生成物排出導管(17)に配置されていることが好ましい。
【0039】
他の好ましい実施形態では、本発明の装置は、第1回収導管(11)に配置された第1真空ポンプ(20)をさらに備えており、第3膜分離ユニット(9)の透過物側に大気圧以下の圧力を与える。これにより、ガス分離膜の圧力差を大きくして第3膜分離ユニット(9)を動作させることができ、第3膜分離ユニット(9)に必要な膜面積を小さくすることができる。第1真空ポンプ(20)は、容積型ポンプであってもよいし、ブロワであってもよい。追加の第1真空ポンプ(20)は、好ましくは、排出導管(17)内の圧力が周囲圧力以下に低下しないように、第2回収供給点(15)の上流に配置される。
【0040】
前述の実施形態と組み合わせることができる他の好ましい実施形態では、本発明の装置は、排出導管(17)の上流の第2透過導管(8)に配置された第2真空ポンプ(21)をさらに備え、第2膜分離ユニット(6)の透過物側に大気圧以下の圧力を与える。これにより、ガス分離膜を横切るより高い圧力差で第2膜分離ユニット(6)を動作させることができ、第2膜分離ユニット(6)で必要とされる膜面積を低減することができる。
【0041】
他の好ましい実施形態では、第3膜分離ユニット(9)は、並列に配置された少なくとも2つの膜モジュール(9a、9b)と、1つ又は複数の膜モジュール(9b)を流れから外されるための少なくとも1つの遮断弁(23)とを備える。本実施形態では、流れを断たれる膜モジュール(9b)は、好ましくは、膜モジュール(9b)への供給導管内に遮断弁(23)を備える。膜モジュール(9b)のガス分離膜を介した生成導管(10)から第1回収導管(11)への逆流を防止するために、逆止弁を、流れを断たれる膜モジュール(9b)からの保持物を受ける導管に配置してもよい。好ましい代替案では、同じ結果が、流れを断つべき膜モジュール(9b)からの透過物を受ける導管内の第2遮断弁によって達成される。本発明の装置が流れを断たれる膜モジュール(9b)を備える場合、装置は、分離されるべきガス流(1)の流量を決定するための第1回収供給点(12)の上流の供給導管(3)上の流量計と、分離されるべきガス流(1)の流量に応じて膜モジュール(9b)を流れに乗せる又は流れから外すための遮断弁(23)を開閉するように構成された追加の制御装置とを備えることが好ましい。
【0042】
本発明の装置の膜分離ユニットの分離容量は、好ましくは、第2透過流の80%~100%を第2回収供給点(15)に回収しながら装置を運転する際に、装置が設計されているガス流(1)の流量(別の言い方をすれば公称容量とも称される)である装置のルーチン負荷において、第3保持流の指定された目標組成と、第3保持流で第2ガス成分を回収するための指定された回収率とを与えるように選択される。好ましくは、膜分離ユニットの分離能力は、第2透過流の回収を一切行わずに装置を動作させたときのルーチン負荷よりも高い特定の最大負荷を与えるように選択され、回収率は低いものの、第3保持流の目標組成と本質的に同じものを与えるように選択されることが好ましい。適切な分離能力は、プロセスシミュレーションソフトウェアを使用して、膜の透過度及び選択度について実験的に決定された値に基づいて、膜分離のシミュレーションを実施して決定されることができる。
【0043】
第1ガス成分と第2ガス成分とを含むガス流(1)を分離するための本発明のプロセスが、本発明の装置において実施される。本発明のプロセスは、ガス流(1)を本発明の装置の供給ライン(3)に、好ましくはガスコンプレッサ(13)の上流に供給することと、第2ガス成分に富んだ生成ガス流として第3保持流を生成導管(10)から引き出すことと、第1ガス成分に富んだオフガス流を引き出すこととを含む。オフガス流は、第1透過流を第1透過導管(4)から引き出すことによって、又は、共同排出導管(18)が存在する場合には、第1透過流を排出導管(17)に渡された第2透過流の残りと組み合わせることによって得られる流れを共同排出導管(18)から引き出すことによって、引き出される。
【0044】
本発明のプロセスは、好ましくは、第1ガス成分としての二酸化炭素と、第2ガス成分としてのメタンとを含むガス流(1)を用いて実施される。そして、ガス流(1)は、天然ガス又はバイオガスであってもよく、好ましくは、メタン及び二酸化炭素の合計含有量が90体積%以上であり、すなわち、メタン及び二酸化炭素以外の成分の含有量が10体積%未満である。ガス流(1)は、好ましくは、埋立地、廃水処理又は嫌気性消化槽からのバイオガスである。
【0045】
本発明のプロセスでは、第2回収導管(14)に渡される第2透過流の割合は、好ましくは、ガス流(1)の流量が変化したとき、又はガス流(1)の組成が変化したとき、あるいはその両方の場合に調整される。好ましくは、第2回収導管(14)に渡される第2透過流の割合は、ガス流(1)の流量が減少したときに増加し、ガス流(1)の流量が増加したときに減少する。代替的に、又は組み合わせて、第2回収導管(14)に渡される第2透過流の割合は、ガス流(1)中の第1ガス成分の割合が減少すると増加し、ガス流(1)中の第1ガス成分の割合が増加すると減少する。第2回収導管(14)に渡される第2透過流の割合は、第2透過流の全てが排出導管(17)に渡されることを意味する0の割合から、第2透過流の全てが第2回収導管(14)に渡されることを意味する1の割合まで変化させることができ、0と1の間の任意の値が可能である。
【0046】
膜分離プロセスの透過生成物が通過しなければならない最小数の膜ユニットを膜ステージとして数え、膜分離プロセスの保持生成物が異なる組成の透過物を与えて通過する最小数の膜ユニットを膜ステップとして数えるという慣例を適用した場合、第2透過流の回収割合が0と1の間である本発明のプロセスは、1ステージ・3ステップの膜分離プロセスである。ただし、回収割合が0の場合は、第1膜分離ユニットと第2膜分離ユニットからの透過物が組み合わせられるため、実質的に第1ステップの膜面積が大きい1ステージ・2ステップの膜分離プロセスとなり、回収割合が1の場合は、第2膜分離ユニットと第3膜分離ユニットからの透過物が組み合わせられるため、実質的に第2ステップの膜面積が大きい1ステージ・2ステップの膜分離プロセスとなる。
【0047】
本発明のプロセスの好ましい実施形態では、第3保持流のガス特性が分析器(22)によって監視され、第2回収導管(14)に渡される第2透過流の割合が、ガス特性を本質的に一定に維持するように制御される。分析器(22)によって監視されるガス特性は、好ましくは、第3保持流中の第1ガス成分の含有量、又は、第3保持流中の第2ガス成分の含有量、又は、第3保持流の発熱量である。第1ガス成分又は第2ガス成分の含有量は、好ましくは、目標値から0.5体積%未満の偏差となるように一定に保たれ、発熱量は、好ましくは、目標値から2%未満の偏差となるように一定に保たれる。
【0048】
上述の好ましい実施形態と組み合わせることができる本発明のプロセスの他の好ましい実施形態では、第3膜分離ユニット(9)が、並列に配置され、個別に流れを断つことができる多数の膜モジュールを有し、ガス流(1)の流量が減少したときに第3膜分離ユニット(9)の膜モジュールを流れから断つ本発明の装置が使用されている。好ましくは、プロセスがガス流(1)の最大流量で運転するとき、すべての膜モジュールが流れに乗っている。膜モジュールは、ガス流(1)の実際の流量の測定に基づいて、流れから外されてもよい。あるいは、膜モジュールは、第3保持流の二酸化炭素の濃度が予め設定された第1閾値よりも低くなったときに流れから外され、第3保持流の二酸化炭素の濃度が予め設定された第2閾値よりも高い値に増加したときに流れに戻されてもよい。
【実施例
【0049】
実施例1
メタンに対する二酸化炭素の純ガス選択度が約55である膜分離モジュールについて、埋立地からのバイオガスの分離がプロセスシミュレーションソフトウェアを用いて計算された。メタン58.7vol-%、二酸化炭素40.0vol-%、窒素1.0vol-%及び酸素0.3vol-%を含むバイオガス1260Nm/hの分離が、図1に示すような装置で、第1膜分離ユニット(2)に21の膜モジュール、第2膜分離ユニット(6)に22の膜モジュール、第3膜分離ユニット(9)に95の膜モジュールを用いた3ステージ膜分離で計算された。
【0050】
第1膜分離ユニット(2)への供給物は、13.1バールに圧縮され、3つの膜分離ユニットは、すべて、透過物側の圧力を1.03バールの圧力で運転される。第2透過流の84%を第2回収供給点(15)に回収し、残りの16%を第1透過流と組み合わせると、メタン97.0vol-%、二酸化炭素1.1vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.3vol-%を含む742Nm/hの第3保持流が得られる。第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの97.3%を含み、このプロセスでは171Nm/hのガスを圧縮する必要がある(36%の二重圧縮)。
【0051】
第3保持流のメタン含有量は、第2透過流の回収量を少なくすることで、1400Nm/hまでのバイオガスの高い流量に対して同じ値に維持することができる。第2透過流を一切回収せずに、同じバイオガス1400Nm/hを分離すると、メタン97.0vol-%、二酸化炭素1.2vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.2vol-%を含む804Nm/hの第3保持流が得られる。第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの95.0%を含み、このプロセスでは1636Nm/hのガスを圧縮する必要がある(17%の二重圧縮)。
【0052】
1000Nm/hのバイオガスの減少したガス流を分離し、第2透過流のすべてを第2回収供給点(15)に回収すると、メタン97.7vol-%、二酸化炭素0.4vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.2vol-%を含む582Nm/hの第3保持流が得られる。この第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの97.0%を含み、このプロセスでは1359Nm/hのガスを圧縮する必要がある(36%の二重圧縮)。
【0053】
比較例1
膜分離ユニット2aから回収せずに運転される米国特許第6,197,090号の図3に示す装置は、膜分離ユニット2aが本発明装置の第1及び第2膜ユニットの組合せと同じ数及び種類の膜モジュール(すなわち43の膜モジュール)を含み、膜分離ユニット2bが本発明の装置の第3膜ユニットと同じ数及び種類の膜モジュール(すなわち95の膜モジュール)を含む場合に、第2透過流を一切回収せずに運転される本発明の図1の装置と同じ分離効果を与える。したがって、1400Nm/hの最大流量で、回収流G7なしで運転すると、実施例1の装置と比較可能な米国特許第6,197,090号の図3に示す装置は、本発明の装置で得られる第3保持流と同一の生成流G7を与える。
【0054】
公称容量流量1260Nm/hで同じ装置の同じバイオガスの分離をシミュレーションするには、生成流G6に97.0vol-%の同じメタン含有量を与えるために、回収流G7で回収率を28%に調整する必要がある。そして、生成流G6は、メタン97.0vol-%、二酸化炭素1.1vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.3vol-%の組成で、735Nm/hの流量で得られ、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの96.4%を含む。このプロセスでは、1718Nm/hのガスを圧縮する必要がある(36%の二重圧縮)。
【0055】
同じ装置で1000Nm/hのバイオガスの減少したガス流を分離すると、回収流G7の64%の回収率で97.0vol-%の同じメタン含有量が得られる。そして、生成流G6は、メタン97.0vol-%、二酸化炭素1.0vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.3vol-%の組成で、595Nm/hの流量で得られ、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの98.3%を含む。そして、このプロセスでは、2032Nm/hのガスを圧縮する必要がある(103%の二重圧縮)。
【0056】
実施例1及び比較例1は、本発明のプロセスが、先行技術のプロセスよりも公称容量において優れたメタン収率を与え、バイオガスの流量が公称容量よりも低下したときに、メタン収率のわずかな損失だけで、必要な圧縮エネルギーがはるかに少ないことを示している。
【0057】
例2
埋立地からのバイオガスの分離を、図2に示すような装置を用いて分離するためのプロセスシミュレーションソフトウェアを用いて計算した。ただし、第2真空ポンプ(21)を欠いている。計算は、3つの膜分離ユニットで使用される3つの異なる膜タイプについて行われ、メタンに対する二酸化炭素の純ガス選択度が56である膜タイプAが第1膜分離ユニット(2)で使用され、メタンに対する二酸化炭素の純ガス選択度が50であり、二酸化炭素の透過度が膜タイプAの2倍である膜タイプBが第2膜分離ユニット(6)で使用され、メタンに対する二酸化炭素の純ガス選択度が25であり、二酸化炭素の透過度が膜タイプAの4倍である膜タイプCが第3膜分離ユニット(9)で使用されている。第1膜分離ユニット(2)、第2膜分離ユニット(6)及び第3膜分離ユニット(9)は、総膜面積が2:1:1の割合である。第1膜分離ユニット(2)への供給物は、13.5バールに圧縮されている。第1膜分離ユニットと第2膜分離ユニットは、透過物側の圧力が1.0バールになるように運転され、第3膜分離ユニットは、第1真空ポンプ(20)によって生成された透過物側の圧力が0.6バールになるように運転される。
【0058】
第2透過流を第2回収供給点(15)に完全に回収して、実施例1と同じバイオガスを1000Nm/h(公称容量)分離すると、メタン97.1vol-%、二酸化炭素0.9vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.3vol-%を含む591Nm/hの第3保持流が得られる。第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの97.7%を含み、このプロセスでは、圧縮された1455Nm/hのガスを圧縮する必要がある(46%の二重圧縮)。
【0059】
同じ装置を、1145Nm/hのバイオガス供給の最大容量で、第2透過流を第2回収供給点(15)に回収しないで運転すると、メタン97.2vol-%、二酸化炭素1.0vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.2vol-%を含む641Nm/hの第3保持流が得られる。第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの92.8%を含み、このプロセスでは、1370Nm/hのガスを圧縮する必要がある(20%の二重圧縮)。第3保持流のメタン含有量は、第2回収供給点(15)に回収される第2透過流の割合を調整することにより、公称容量と最大容量の間の任意のバイオガス流量に対して一定の値に維持されることができる。
【0060】
実施例3
第2膜分離ユニット(6)に膜タイプCを使用し、第1膜分離ユニット(2)、第2膜分離ユニット(6)及び第3膜分離ユニット(9)の合計膜面積が2:0.6:1の比率であることを相違点として、実施例2の計算が繰り返された。
【0061】
第2透過流を第2回収供給点(15)に完全に回収して1000Nm/h(公称容量)を分離すると、メタン97.3vol-%、二酸化炭素0.8vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.3vol-%を含む589Nm/hの第3保持流が得られる。第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの97.7%を含み、このプロセスでは1518Nm/hのガスを圧縮する必要がある(52%の二重圧縮)。
【0062】
第2透過流を第2回収供給点(15)に回収しないで、1200Nm/hの最大容量で装置を運転すると、メタン97.3vol-%、二酸化炭素0.7vol-%、窒素1.7vol-%及び酸素0.2vol-%を含む626Nm/hの第3保持流が得られる。この第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの86.6%を含み、このプロセスでは1411Nm/hのガスを圧縮する必要がある(18%の二重圧縮)。
【0063】
例4
第2膜分離ユニット(6)に膜タイプAを使用し、第1膜分離ユニット(2)、第2膜分離ユニット(6)、第3膜分離ユニット(9)の膜面積の合計が2:2:1であることを相違点として、実施例2の計算を繰り返した。
【0064】
第2透過流を第2回収供給点(15)に完全に回収して1000Nm/h(公称容量)を分離すると、メタン97.2vol-%、二酸化炭素0.9vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.3vol-%を含む591Nm/hの第3保持流が得られる。第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの97.7%を含み、このプロセスでは1454Nm/hのガスを圧縮する必要がある(45%の二重圧縮)。
【0065】
第2回収供給点(15)への第2透過流の回収を行わずに、1145Nm/hの最大容量で装置を運転すると、メタン97.2vol-%、二酸化炭素1.0vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.2vol-%を含む644Nm/hの第3保持流が得られる。そして、第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの93.2%を含み、このプロセスは1369Nm/hのガスを圧縮する必要がある(20%の二重圧縮)。
【0066】
実施例4と実施例1及び3とを比較すると、第3膜分離ユニット(9)に、第2膜分離ユニット(6)で使用される膜よりも二酸化炭素の選択度は低いが透過度が高い膜を使用すると、公称容量以上の流量でより良好なメタン回収が可能になることがわかる。
【0067】
実施例2及び実施例3と実施例4とを比較すると、第2膜分離ユニット(6)において、第1膜分離ユニット(2)で使用される膜よりも二酸化炭素選択度が低いが透過度が高い膜を使用すると、より少ない総膜面積で装置を運転することができ、同じ生成純度及び公称容量でのメタン回収量を達成できることがわかる。
【0068】
実施例5
装置の第3膜分離ユニット(9)が、図3に示すように流れから外されることができる追加の膜モジュール(9b)を有し、追加の膜モジュール(9b)が第3膜分離ユニット(9)において追加の50%の膜面積を与えることを相違点として、実施例2の計算を繰り返した。
【0069】
第2透過流を第2回収供給点(15)に完全に回収し、追加の膜モジュール(9b)を流れから外して、装置を公称容量で運転すると、実施例2と同じ分離結果が得られる。
【0070】
第2透過流を第2回収供給点(15)に回収せず、追加の膜モジュール(9b)を流れに乗せた状態で、装置を最大容量の1400Nm/hで運転すると、メタン97.3vol-%、二酸化炭素0.9vol-%、窒素1.6vol-%及び酸素0.2vol-%を含む797Nm/hの第3保持流が得られる。第3保持流は、装置に供給されたバイオガスに含まれるメタンの94.3%を含み、このプロセスは、1772Nm/hのガスを圧縮する必要がある(27%の二重圧縮)。
【0071】
実施例5と実施例2とを比較すると、分離されるガスの流量に応じて一部が流れに乗ったり、流れから外れたりすることができる並列な膜モジュールを含む第3膜分離ユニットを備える装置は、より高い最大容量で必要な生成純度を与えることができ、公称容量以上の流量でより優れたメタン回収を行うことができることがわかる。
【符号の説明】
【0072】
1 分離すべきガス流
2 第1膜分離ユニット
3 供給導管
4 第1透過導管
5 第1保持導管
6 第2膜分離ユニット
7 第2保持導管
8 第2透過導管
9 第3膜分離ユニット
9a、9b 第3膜分離ユニット(9)の膜モジュール
10 生成導管
11 第1回収導管
12 第1回収供給点
13 ガスコンプレッサ
14 第2回収導管
15 第2回収供給点
16 制御装置
17 排出導管
18 共同排出導管
19 逆止弁
20 第1真空ポンプ
21 第2真空ポンプ
22 ガス分析器
23 遮断弁
図1
図2
図3