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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】二重管の成形方法及び成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/00 20060101AFI20240409BHJP
   B21D 7/022 20060101ALI20240409BHJP
   B21D 9/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B21D7/00 Z
B21D7/022
B21D9/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022027105
(22)【出願日】2022-02-24
(65)【公開番号】P2023123187
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-167015(JP,A)
【文献】実開平02-087512(JP,U)
【文献】特開昭57-032831(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00268891(EP,A1)
【文献】特開2007-118052(JP,A)
【文献】特開2000-210722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/00
B21D 7/022
B21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重管の成形方法であって、
所定の曲率で前記二重管を曲げて前記二重管に曲げ部を形成することと、
前記曲げ部における前記曲げ部の中心軸を含む平面を挟んだ両側の外面のうち第1側の外面を成形するための第1成形面を有する第1成形型における、前記第1成形面前記曲げ部の曲率半径方向内側の部分と離間し、かつ、前記第1成形面の前記曲げ部の曲率半径方向外側の部分と接する位置に、前記曲げ部を配置し、前記両側の外面のうち第2側の外面を成形するための第2成形面を有する第2成形型で、前記第1成形型に配置された状態の前記曲げ部を押圧することと、
を備える、二重管の成形方法。
【請求項2】
請求項に記載の二重管の成形方法であって、
前記第1成形型は、前記第1成形面における前記曲げ部の曲率半径方向外側の部分の高さが内側の部分の高さよりも高い、二重管の成形方法。
【請求項3】
二重管の成形方法であって、
所定の曲率で前記二重管を曲げて前記二重管に曲げ部を形成することと、
前記曲げ部における前記曲げ部の中心軸を含む平面を挟んだ両側の外面のうち第1側の外面を成形するための第1成形面を有する第1成形型における、前記第1成形面に対して前記曲げ部の曲率半径方向外側に偏った位置に、前記曲げ部を配置し、前記両側の外面のうち第2側の外面を成形するための第2成形面を有する第2成形型で、前記第1成形型に配置された状態の前記曲げ部を押圧することと、
を備え
前記第1成形型は、前記第1成形面における前記曲げ部の曲率半径方向外側の部分が内側の部分よりも前記第2側に突出するように構成される、二重管の成形方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の二重管の成形方法であって、
前記曲げ部は、前記第1成形面に対して前記曲げ部を位置決めする位置決め部材を用いて、前記第1成形型に配置される、二重管の成形方法。
【請求項5】
二重管の成形装置であって、
前記二重管に形成された曲げ部における前記曲げ部の中心軸を含む平面を挟んだ両側の外面のうち第1側の外面を成形するための第1成形面を有する第1成形型と、
前記両側の外面のうち第2側の外面を成形するための第2成形面を有する第2成形型であって、前記第1成形型における前記第1成形面前記曲げ部の曲率半径方向内側の部分と離間し、かつ、前記第1成形面の前記曲げ部の曲率半径方向外側の部分と接する位置に配置された状態の前記曲げ部を押圧するように構成された前記第2成形型と、
を備える、二重管の成形装置。
【請求項6】
二重管の成形装置であって、
前記二重管に形成された曲げ部における前記曲げ部の中心軸を含む平面を挟んだ両側の外面のうち第1側の外面を成形するための第1成形面を有する第1成形型と、
前記両側の外面のうち第2側の外面を成形するための第2成形面を有する第2成形型であって、前記第1成形型における前記第1成形面に対して前記曲げ部の曲率半径方向外側に偏った位置に配置された状態の前記曲げ部を押圧するように構成された前記第2成形型と、
を備え
前記第1成形型は、前記第1成形面における前記曲げ部の曲率半径方向外側の部分が内側の部分よりも前記第2側に突出するように構成される、二重管の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二重管を成形するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載のように、曲げ加工により二重管に曲げ部を形成する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3983211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の技術では、曲げ加工により外管及び内管が異なる曲率に仕上がってしまい、曲げ部が所望の断面形状にならない場合があった。具体的には、曲げ加工の条件によって、曲げ部において外管に対する内管の位置が偏ってしまう場合があった。
【0005】
本開示の一局面は、二重管を所望の形状に近付けるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、二重管の成形方法であって、以下の(i)及び(ii)を備える。
(i)所定の曲率で二重管を曲げて二重管に曲げ部を形成すること。
(ii)曲げ部における曲げ部の中心軸を含む平面を挟んだ両側の外面のうち第1側の外面を成形するための第1成形面を有する第1成形型における、第1成形面に対して曲げ部の曲率半径方向内側又は外側に偏った位置に、曲げ部を配置し、両側の外面のうち第2側の外面を成形するための第2成形面を有する第2成形型で、第1成形型に配置された状態の曲げ部を押圧すること。
【0007】
このような構成によれば、第1成形型に配置された状態の曲げ部が第2成形型で押圧されることにより、外管における曲げ部を構成する部分が曲げ部の曲率半径方向に膨らむ。したがって、曲げ部における内管と外管との間隔の偏りに応じて曲げ部の断面形状を調整することにより、二重管を所望の形状に近付けることができる。
【0008】
本開示の一態様では、曲げ部は、第1成形型における第1成形面に対して曲げ部の曲率半径方向外側に偏った位置に配置されてもよい。
曲げ加工によって、曲げ部における曲げ部の曲率半径方向内側では、内管と外管との間隔が狭くなりやすい。上記のような構成によれば、第1成形面に対して曲げ部の曲率半径方向外側に偏って曲げ部が配置されて押圧されることにより、外管における曲げ部を構成する部分が曲げ部の曲率半径方向内側に膨らむ。つまり、曲げ部における内管と外管との間隔が狭い側にて当該間隔が広げられる。したがって、二重管を所望の形状に近付けることができる。
【0009】
本開示の一態様では、第1成形型は、第1成形面における曲げ部の曲率半径方向外側の部分の高さが内側の部分の高さよりも高くてもよい。
このような構成によれば、第1成形面に対して曲げ部の曲率半径方向外側に寄せて曲げ部を配置した場合でも、第2成形型による押圧によって、外管における曲げ部を構成する部分が、曲げ部の曲率半径方向外側に膨らむことを抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、曲げ部は、第1成形面に対して曲げ部を位置決めする位置決め部材を用いて、第1成形型に配置されてもよい。
このような構成によれば、人が第1成形面に対して曲げ部を位置決めする場合と比べて、第1成形型における所定の位置に曲げ部をより正確に配置することができる。
【0011】
本開示の一態様は、二重管の成形装置であって、第1成形型と、第2成形型と、を備える。第1成形型は、二重管に形成された曲げ部における曲げ部の中心軸を含む平面を挟んだ両側の外面のうち第1側の外面を成形するための第1成形面を有する。第2成形型は、両側の外面のうち第2側の外面を成形するための第2成形面を有する第2成形型であって、第1成形型における第1成形面に対して曲げ部の曲率半径方向内側又は外側に偏った位置に配置された状態の曲げ部を押圧するように構成される。
【0012】
このような構成によれば、第1成形型に配置された状態の曲げ部が第2成形型で押圧されることにより、外管における曲げ部を構成する部分が曲げ部の曲率半径方向に膨らむ。したがって、曲げ部における内管と外管との間隔の偏りに応じて曲げ部の断面形状を調整することにより、二重管を所望の形状に近付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】曲げ加工装置を示す模式図である。
図2】曲げ加工装置における内側芯金を示す模式図である。
図3】曲げ加工装置における中間芯金を示す模式図である。
図4】曲げ部成形装置を模式的に示す上面図である。
図5】曲げ部成形装置を模式的に示す側面図である。
図6図6Aは、第1曲げ工程を説明するための模式図である。図6Bは、第1曲げ工程における図6Aの次の状態を説明するための模式図である。
図7図7Aは、第2曲げ工程を説明するための模式図である。図7Bは、第2曲げ工程における図7Aの次の状態を説明するための模式図である。
図8図8Aは、曲げ部成形工程を説明するための模式図である。図8Bは、曲げ部成形工程における図8Aの次の状態を説明するための模式図である。
図9図9Aは、曲げ部成形工程にて外管における変形させる箇所を説明するための模式図である。図9Bは、曲げ部成形工程にて外管における変形させる箇所の他の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.成形装置]
[1-1.曲げ加工装置]
図1に示す曲げ加工装置1は、直管を曲管に成形する装置である。本実施形態の曲げ加工装置1の成形対象は、二重管100である。二重管100は、金属製である。二重管100は、内管110と、内管110の外面を覆うように配置された外管120と、を有する。つまり、内管110は、外管120の内部に配置されている。なお、図5を除く図面では、二重管100は断面が示されている。
【0015】
二重管100は、内管110と外管120との連結部130を備える。連結部130は、二重管100の軸方向における一方の端部である第1端部101に設けられている。具体的には、内管110における二重管100の第1端部101を構成する部分が、外管120の内面に接触するように拡径して、外管120の内面に溶接等により接合されている。二重管100の軸方向における第1端部101と反対側の端部である第2端部102では、内管110と外管120とは接合されていない。
【0016】
内管110及び外管120は、中心軸と垂直な断面の外形がそれぞれ円形状(つまり真円状又は楕円状)である。本実施形態では、曲げ加工装置1による曲げ加工前の内管110及び外管120は、いずれも中心軸と垂直な断面の外形が真円状である。曲げ加工前の外管120の径は、軸方向に沿って一定である。曲げ加工前の内管110の径も、連結部130を構成する部分を除き、軸方向に沿って一定である。また、曲げ加工前の二重管100では、内管110の中心軸と外管120の中心軸とが一致している。このため、曲げ加工前の二重管100では、内管110と外管120との間隔が二重管100の周方向に均一である。
【0017】
図6A及び図6Bに示すように、曲げ加工装置1は、内管110と外管120とを同時に曲げることで、中心軸が一部で湾曲した二重管100を曲管として得る。つまり、曲げ加工装置1は、曲げ加工によって二重管100に曲げ部140を形成する。曲げ部140は、中心軸が湾曲している部分である。なお、後述するように、本実施形態では、曲げ加工により二重管100に2つの曲げ部140が形成される。以下の説明及び図面では、この2つの曲げ部140のそれぞれを区別する場合に、第1曲げ部140A及び第2曲げ部140Bと表記する。
【0018】
曲げ加工後の二重管100における曲げ部140の両側は、曲げ加工装置1により曲げられずに中心軸が直線状のままである。このように二重管100における曲げ加工装置1により曲げられない部分、つまり二重管100における曲げ部140が形成されない部分を、以下ではストレート部という。
【0019】
曲げ加工装置1は、内側芯金2、中間芯金3、及び曲げ型4を備える。
図2に示すように、内側芯金2は、内管110の内部に配置されるように構成されている。内側芯金2は、内側芯金本体21、第1内側可動部22、及び第2内側可動部23を備える。
【0020】
内側芯金本体21は、円筒状又は円柱状の部材である。内側芯金本体21は、二重管100におけるストレート部に配置される。内側芯金本体21の外径は、軸方向に沿って一定である。内側芯金本体21の外径は、曲げ加工前の内管110の内径と概ね等しい。
【0021】
第1内側可動部22は、内側芯金本体21の軸方向における一方の端部に連結された円筒状又は円柱状の部材である。第1内側可動部22は、内側芯金本体21の中心軸と垂直な第1揺動軸L1を中心に、内側芯金本体21に対して揺動する。第1揺動軸L1は、内側芯金本体21の中心軸を含む直線と、第1内側可動部22の中心軸を含む直線と、の交点を通る。第1内側可動部22の軸方向に沿った長さは、内側芯金本体21の軸方向に沿った長さよりも短い。
【0022】
第2内側可動部23は、第1内側可動部22における内側芯金本体21側と反対側に連結された円筒状又は円柱状の部材である。第2内側可動部23は、第1内側可動部22の第1揺動軸L1と平行な第2揺動軸L2を中心に、第1内側可動部22に対して揺動する。第2揺動軸L2は、第1内側可動部22の中心軸を含む直線と、第2内側可動部23の中心軸を含む直線と、の交点を通る。第2内側可動部23の軸方向に沿った長さも、内側芯金本体21の軸方向に沿った長さよりも短い。
【0023】
図3に示す中間芯金3は、内管110と外管120との間に配置されるように構成されている。中間芯金3は、二重管100における曲げ部140が形成される部分(つまり、二重管100における曲げ加工装置1により曲げられる部分)において、内側芯金2と共に内管110を径方向に挟むように配置される。また、中間芯金3は、内管110と外管120とによって内管110の径方向に挟まれる。中間芯金3は、中間芯金本体31、第1中間可動部32、及び第2中間可動部33を備える。
【0024】
中間芯金本体31は、円筒状の部材である。中間芯金本体31は、二重管100におけるストレート部に配置される。中間芯金本体31の内径及び外径は、軸方向に沿って一定である。中間芯金本体31の内径は、曲げ加工前の内管110の外径と概ね等しい。中間芯金本体31の外径は、曲げ加工前の外管120の内径と概ね等しい。
【0025】
第1中間可動部32は、中間芯金本体31の軸方向における一方の端部に連結された円筒状の部材である。第1中間可動部32は、中間芯金本体31の中心軸と垂直な第3揺動軸L3を中心に、中間芯金本体31に対して揺動する。第3揺動軸L3は、中間芯金本体31の中心軸を含む直線と、第1中間可動部32の中心軸を含む直線と、の交点を通る。第3揺動軸L3は、第1揺動軸L1と平行である。第1中間可動部32の軸方向に沿った長さは、中間芯金本体31の軸方向に沿った長さよりも短い。
【0026】
第2中間可動部33は、第1中間可動部32における中間芯金本体31側と反対側に連結された円筒状の部材である。第2中間可動部33は、第1中間可動部32の第3揺動軸L3と平行な第4揺動軸L4を中心に、第1中間可動部32に対して揺動する。第4揺動軸L4は、第1中間可動部32の中心軸を含む直線と、第2中間可動部33の中心軸を含む直線と、の交点を通る。第2中間可動部33の軸方向に沿った長さも、中間芯金本体31の軸方向に沿った長さよりも短い。
【0027】
図1に戻り、曲げ型4は、内側芯金2及び中間芯金3が配置された領域において、二重管100を曲げるように構成されている。具体的には、曲げ型4は、内側芯金2及び中間芯金3と共に、内管110及び外管120を径方向に挟みながら回転及び移動することにより、内管110及び外管120を曲げる。曲げ型4は、回転部41、揺動クランプ部42、滑り部43、及び送り部44を備える。
【0028】
回転部41は、二重管100における曲げ部140が形成される部分と径方向に重なるように配置される。回転部41は、チャック部411を二重管100の外面に押し当てた状態で、回転軸Pを中心に回転するように構成されている。回転部41の回転軸Pは、第1内側可動部22の第1揺動軸L1と平行である。
【0029】
揺動クランプ部42は、二重管100を挟んで回転部41と反対側に配置されている。揺動クランプ部42は、回転部41のチャック部411と共に二重管100を挟持するように構成されている。揺動クランプ部42は、回転部41の回転に伴って、回転部41の回転軸Pを中心に揺動する。
【0030】
滑り部43は、回転部41に隣接して配置されている。滑り部43は、曲げ加工時に、二重管100のストレート部の外面と摺動することで二重管100を回転部41の回転方向に沿って送るガイドの機能を奏する。
【0031】
送り部44は、二重管100を挟んで滑り部43と反対側、且つ揺動クランプ部42に隣接する位置に配置されている。送り部44は、二重管100のストレート部を押圧しながら当該ストレート部の中心軸に沿って移動するように構成されている。送り部44は、二重管100を滑り部43に押し付けながら、二重管100を回転部41に向けて送り出す。
【0032】
図6A及び図6Bに示すように、回転部41のチャック部411と揺動クランプ部42とが、直管である二重管100を挟みながら第1端部101に向かって回転軸P回りに二重管100の外面上を摺動することにより、二重管100が回転部41の回転軸Pを中心に曲げられる。その結果、曲げ部140が形成された、曲管としての二重管100が得られる。
【0033】
このような曲げ加工の詳細については後述するが、曲げ加工後の二重管100は、回転部41のチャック部411及び揺動クランプ部42に挟まれて曲げられたことにより、外管120における曲げ部140を構成する部分が図8Aに示すように扁平化している。ここでいう外管120が曲げ加工により扁平化していることとは、外管120の軸方向に垂直な断面の外形が曲げ加工前と比較して変形していることを指す。具体的には、曲げ加工後の外管120における曲げ部140を構成する部分の断面の外形は、回転軸Pに沿って延びた(つまり曲げ部140の曲率半径方向に潰れた)歪な円形状である。また、曲げ部140では、外管120の周方向に沿った曲率が、曲げ部140の曲率半径方向外側と内側とで異なっている。
【0034】
また、曲げ加工において、外管120は、回転部41のチャック部411及び揺動クランプ部42から直接作用されて曲げられるのに対し、内管110は、連結部130を構成する部分が外管120の変位に伴って引きずられることにより曲げられる。このため、曲げ加工によって内管110と外管120とは必ずしも同一の曲率に仕上がらず、外管120の方が内管110よりも大きな曲率に仕上がりやすい。このように内管110と外管120との曲率に差異が生じると、内管110の中心軸と外管120の中心軸とが一致しなくなり、内管110と外管120との間隔が二重管100の周方向に不均一になる。
【0035】
[1-2.曲げ部成形装置]
図4及び図5に示す曲げ部成形装置5は、曲げ加工装置1による曲げ加工後の二重管100を成形する装置である。前述したように、二重管100は、曲げ加工によって、外管120における曲げ部140を構成する部分が曲げ部140の曲率半径方向に潰れていたり、外管120に対する内管110の位置が偏っていたりする。そこで、曲げ部成形装置5は、曲げ加工後の二重管100を完成品として所望する形状に近付けるために、外管120における曲げ部140を構成する部分を成形する。
【0036】
曲げ部成形装置5は、第1成形型51、第2成形型52、及び2つの位置決め部材53を備える。なお、図4では、第2成形型52の図示を省略している。また、後述するように、各位置決め部材53は、二重管100を径方向に挟持可能な2つのクランプ部531を有するが、図4では第2成形型52側のクランプ部531の図示を省略している。
【0037】
ここで、曲げ部140の中心軸Xを含む平面を、中心平面Yとする。曲げ部140の中心軸Xは湾曲しているため、中心平面Yは一義的に定められる。中心平面Yは、曲げ加工装置1による曲げ加工における回転部41の回転軸Pと垂直な平面である。
【0038】
第1成形型51及び第2成形型52は、外管120における曲げ部140を構成する部分を成形するための成形型である。第1成形型51及び第2成形型52は、曲げ部140を挟むように、中心平面Yを挟んで一方側及び他方側にそれぞれ配置されている。第2成形型52は、第1成形型51と接近及び離間するように変位可能に構成されている。第1成形型51と第2成形型52との接近及び離間方向(つまり第2成形型52の変位方向)は、曲げ加工装置1による曲げ加工における回転部41の回転軸Pに沿った方向である。
【0039】
図8A及び図8Bは、曲げ部140の中心軸Xと垂直な断面視の模式図である。図8Aに示すように、第1成形型51は、曲げ部140の第1外面141を成形するための第1成形面511を有する。曲げ部140の第1外面141とは、曲げ部140における、中心平面Yを挟んだ両側の外面のうち一方の外面を指す。第1成形面511は、溝状である。第1成形面511は、完成品として設計された曲げ部140の第1外面141に対応する曲面状に形成されている。本実施形態の第1成形面511は、第1成形面511の延伸方向に垂直な断面形状が円弧状である。図4に示すように、第1成形面511の延伸方向は、完成品として設計された曲げ部140の曲率に対応して湾曲している。
【0040】
また、図8Aに示すように、第1成形面511における、曲げ部140の曲率半径方向外側の部分である外側面511aの高さは、内側の部分である内側面511bの高さよりも高く形成されている。ここでいう第1成形面511の高さは、具体的には、第1成形型51と第2成形型52との接近及び離間方向に沿った第1成形面511の高さである。本実施形態では、第1成形型51は、外側面511aを構成する部分の断面形状が、山形状(つまり第1成形面511の高さ方向に角を向けた三角形状)である。すなわち、本実施形態の第1成形型51には、外側面511aの一部を構成する突条が形成されている。
【0041】
第2成形型52は、曲げ部140の第2外面142を成形するための第2成形面521を有する。曲げ部140の第2外面142とは、曲げ部140における、中心平面Yを挟んだ両側の外面のうち第1外面141と反対の外面を指す。第2成形面521も、基本的には第1成形面511と同様の形状である。つまり、第2成形面521も溝状であり、完成品として設計された曲げ部140の第2外面142に対応する曲面状に形成されている。本実施形態の第2成形面521は、第2成形面521の延伸方向に垂直な断面形状が円弧状である。また、第2成形面521の延伸方向は、完成品として設計された曲げ部140の曲率に対応して湾曲している。ただし、第2成形面521は、曲げ部140の曲率半径方向外側の部分の高さと内側の部分の高さとが同一である。ここでいう第2成形面521の高さは、具体的には、第1成形型51と第2成形型52との接近及び離間方向に沿った第2成形面521の高さである。
【0042】
図4に戻り、2つの位置決め部材53は、第1成形型51の第1成形面511に対して曲げ部140を位置決めする部材である。2つの位置決め部材53は、第1成形面511の延伸方向における第1成形型51の両側に配置され、二重管100における曲げ部140の両側のストレート部をそれぞれ固定する。
【0043】
具体的には、各位置決め部材53は、図5に示すように、2つのクランプ部531を有する。2つのクランプ部531は、中心平面Yを挟んで一方側及び他方側にそれぞれ配置されている。第2成形型52と同じ側に配置されたクランプ部531は、第1成形型51と同じ側に配置されたクランプ部531と接近及び離間するように変位可能に構成されている。クランプ部531同士の接近及び離間方向は、第1成形型51と第2成形型52との接近及び離間方向と平行である。
【0044】
各クランプ部531は、二重管100のストレート部を配置可能な溝531aを有する。2つのクランプ部531が中心平面Yを挟んで配置されている状態において、溝531a同士は互いに対向している。クランプ部531同士が互いに接近していくと、それぞれの溝531aにより二重管100のストレート部が挟持される。これにより、二重管100のストレート部が固定される。
【0045】
前述したように、外管120における曲げ部140を構成する部分は、図8Aに示すように曲げ加工により扁平化しており、当該部分の断面の外形が曲げ部140の曲率半径方向に潰れた歪な円形状になっている。曲げ部140の曲率半径方向に沿った長さは、第1成形面511の幅よりも短い。このため、曲げ部140を第1成形面511に配置した場合、曲げ部140には第1成形面511から離間した部分が生じる。
【0046】
第1成形面511への曲げ部140の配置にあたって2つの位置決め部材53が用いられた場合(すなわち、2つの位置決め部材53によって二重管100における曲げ部140の両側のストレート部が固定された場合)、曲げ部140は、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に偏った位置に配置される。言い換えれば、曲げ部140は、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側の部分との間隔が、内側の部分との間隔よりも狭くなる位置に配置される。本実施形態では、曲げ部140は、第1成形面511における曲げ部140の曲率半径方向外側の部分と接し、内側の部分と離間する位置に配置される。
【0047】
[2.成形方法]
次に、曲げ加工装置1及び曲げ部成形装置5を用いた二重管100の成形方法について説明する。この成形方法は、第1曲げ工程、第2曲げ工程、及び曲げ部成形工程を備える。
【0048】
[2-1.第1曲げ工程]
第1曲げ工程は、直管である二重管100の第1領域R1に第1曲げ部140Aを形成する工程である。
【0049】
まず、図1に示すように、直管である二重管100において、内管110の内部に内側芯金2を配置すると共に、内管110と外管120との間に中間芯金3を配置する。具体的には、曲げ型4の回転部41と揺動クランプ部42との間に保持された内側芯金2及び中間芯金3に対して、二重管100を第2端部102側から軸方向に挿入する。この際、内側芯金2は、内側芯金本体21、第1内側可動部22及び第2内側可動部23の中心軸が同一直線上になるように保持されている。同様に、中間芯金3は、中間芯金本体31、第1中間可動部32及び第2中間可動部33の中心軸が同一直線上になるように保持されている。また、第1内側可動部22は、少なくとも一部が内管110の径方向において中間芯金3と重なるように配置される。第2内側可動部23は、内管110の径方向において中間芯金3と重ならないように配置される。
【0050】
続いて、図6Aに示すように、内側芯金2及び中間芯金3が配置された状態の二重管100を、曲げ型4により挟持する。具体的には、揺動クランプ部42及び送り部44により、内側芯金2及び中間芯金3が配置された状態の二重管100を径方向に加圧する。これにより、二重管100は、内側芯金2及び中間芯金3と共に回転部41及び滑り部43に向かって径方向にスライドする。そして、二重管100は、揺動クランプ部42により回転部41のチャック部411に押し付けられると共に、送り部44により滑り部43に押し付けられる。
【0051】
続いて、図6Bに示すように、内側芯金2及び中間芯金3が配置された状態の二重管100の第1領域R1を、曲げ型4により曲げる。具体的には、回転部41をチャック部411が滑り部43から離間する方向に(つまり二重管100の第1端部101側に向けて)回転させると共に、回転部41の回転に伴って移動する揺動クランプ部42を追う方向へ送り部44をスライドさせる。これにより、チャック部411と揺動クランプ部42とが、二重管100を挟みながら、回転部41の回転軸P回りに二重管100の外面上を第1端部101側へ摺動する。その結果、二重管100におけるチャック部411と揺動クランプ部42とに挟まれた部分が、回転部41の回転軸Pを中心に湾曲するように塑性変形する。
【0052】
回転部41の回転による二重管100の曲げに合わせて、第1内側可動部22は、内側芯金本体21に対して揺動する。また、第2内側可動部23が第1内側可動部22に対して揺動する。同様に、回転部41の回転による二重管100の曲げに合わせて、第1中間可動部32は、中間芯金本体31に対して揺動する。また、第2中間可動部33が第1中間可動部32に対して揺動する。内側芯金本体21及び中間芯金本体31は、曲げ工程中に移動しないように保持される。したがって、二重管100は、内側芯金2と中間芯金3とに摺動しつつ、揺動クランプ部42の移動方向に伸びながら移動する。
【0053】
このように、二重管100が曲げられて、二重管100の第1領域R1に第1曲げ部140Aが形成される。二重管100が曲げられる際、内管110は、内側芯金2及び中間芯金3の抵抗によって軸方向に引っ張られるため、外管120における曲率半径方向内側の部分に近付くように曲がる。つまり、第1曲げ部140Aでは、内管110の曲率が外管120の曲率に比べて小さくなる。このため、第1曲げ部140Aの曲率半径方向内側において、内管110と外管120との間隔が狭くなる。
【0054】
また、前述したように、曲げ加工にあたって内側芯金2における第2内側可動部23が内管110の径方向において中間芯金3と重ならないように配置されることから、二重管100の第1領域R1には、内管110の径方向において内管110の内部には内側芯金2が位置するものの内管110と外管120との間には中間芯金3が位置していない部分がある。このため、曲げに伴って外管120は断面形状も変形し得る。具体的には、外管120における第1曲げ部140Aを構成する部分は、回転軸Pに沿って延びた歪な円形状になる。
【0055】
[2-2.第2曲げ工程]
第2曲げ工程は、第1曲げ工程にて第1曲げ部140Aが形成された二重管100における、第1領域R1と異なる第2領域R2に、第2曲げ部140Bを形成する工程である。
【0056】
まず、図6Bに示す第1曲げ工程後の状態から、内側芯金2及び中間芯金3を、図7Aに示すような第2領域R2と重なる位置まで引き戻す。第2領域R2は、第1領域R1よりも二重管100の連結部130から離れた領域であり、第1領域R1よりも二重管100の第2端部102に近い領域である。内側芯金2及び中間芯金3が第1領域R1から第2領域R2側へ引っ張られることにより、第1領域R1では内管110が軸方向に伸びて内管110の曲率が小さくなる。このため、第1曲げ部140Aの曲率半径方向内側において、内管110と外管120との間隔が、第1曲げ工程直後よりも更に狭くなる。
【0057】
内側芯金2及び中間芯金3の引き抜き後、第1曲げ工程後の曲げ型4について、揺動クランプ部42及び送り部44を二重管100から径方向に離間させると共に、二重管100を回転部41及び滑り部43からも離間させる。また、送り部44を初期位置(つまり曲げ加工前の位置)に戻す。
【0058】
図7Aに示すように、回転部41及び揺動クランプ部42を初期位置に戻した後、二重管100の第2領域R2が揺動クランプ部42と径方向に重なる位置まで、二重管100を内側芯金2及び中間芯金3と共に軸方向にスライドさせる。そして、揺動クランプ部42及び送り部44により、内側芯金2及び中間芯金3が配置された状態の二重管100を径方向に加圧することにより、当該二重管100を曲げ型4により挟持する。
【0059】
続いて、内側芯金2及び中間芯金3が配置された状態の二重管100の第2領域R2を、曲げ型4により曲げる。具体的な方法は、第1曲げ工程にて二重管100の第1領域R1を曲げたときと同様である。すなわち、図7Bに示すように、回転部41をチャック部411が滑り部43から離間する方向に回転させると共に、揺動クランプ部42を追う方向へ送り部44をスライドさせる。これにより、チャック部411と揺動クランプ部42とが、二重管100を挟みながら、回転部41の回転軸P回りに二重管100の外面上を第1端部101側へ摺動する。その結果、二重管100におけるチャック部411と揺動クランプ部42とに挟まれた部分が、回転部41の回転軸Pを中心に湾曲するように塑性変形する。この際の内側芯金2及び中間芯金3の作用は、第1曲げ工程と同様である。
【0060】
このように、二重管100が曲げられて、二重管100の第2領域R2に第2曲げ部140Bが形成される。第1曲げ工程でも述べたように、二重管100が曲げられる際、内管110は、内側芯金2及び中間芯金3の抵抗によって軸方向に引っ張られるため、外管120における曲率半径方向内側の部分に近付くように曲がる。つまり、第2曲げ部140Bでは、内管110の曲率が外管120の曲率に比べて小さくなる。
【0061】
加えて、内管110は、連結部130を構成する部分が外管120の変位に伴って引きずられることにより曲げられるところ、第2領域R2が第1領域R1よりも二重管100の連結部130から離れているために、内管110における第2領域R2に含まれる部分は、第1領域R1に含まれる部分よりも曲がりにくい。つまり、内管110の曲率が外管120の曲率に比べて小さくなる傾向は、第1曲げ部140Aよりも第2曲げ部140Bの方が大きい。
【0062】
また、第1曲げ工程でも述べたように、曲げ加工により、外管120は断面形状も変形し得る。具体的には、外管120における第2曲げ部140Bを構成する部分は、回転軸Pに沿って延びた歪な円形状になる。
【0063】
第2曲げ工程が終了した後、二重管100を内側芯金2、中間芯金3及び曲げ型4から取り出す。具体的には、まず、内側芯金2及び中間芯金3を二重管100の第2領域R2と重ならない位置まで引き戻す。この際、内側芯金2及び中間芯金3が第2領域R2から二重管100の第2端部102側へ引っ張られることにより、第2領域R2では内管110が軸方向に伸びて内管110の曲率が小さくなる。このため、第2曲げ部140Bの曲率半径方向内側において、内管110と外管120との間隔が、第2曲げ工程直後よりも更に狭くなる。
【0064】
内側芯金2及び中間芯金3の引き戻し後、揺動クランプ部42及び送り部44を二重管100から径方向に離間させると共に、二重管100を回転部41及び滑り部43からも離間させる。また、送り部44を初期位置に戻す。回転部41及び揺動クランプ部42を初期位置に戻した後、内側芯金2、中間芯金3及び曲げ型4から二重管100を取り出す。
【0065】
[2-3.曲げ部成形工程]
本実施形態の完成品として設計された二重管100の形状は、内管110及び外管120の軸方向に垂直な断面の外形が真円状であり、内管110と外管120との中心軸が一致している形状である。これに対して、第1曲げ工程及び第2曲げ工程後の二重管100では、第1曲げ部140A及び第2曲げ部140Bにおいて、外管120の断面形状が曲げ加工により変形していたり、内管110と外管120との曲率の差異により外管120に対する内管110の位置が偏っていたりする。具体的には、外管120における第1曲げ部140Aを構成する部分の断面の外形が、曲げ加工により第1曲げ部140Aの曲率半径方向に潰れた歪な円形状になっている。外管120における第2曲げ部140Bを構成する部分の断面の外形も同様である。また、第1曲げ部140Aにおいて、第1曲げ部140Aの曲率半径方向内側における内管110と外管120との間隔が狭くなっている。第2曲げ部140Bにおいても同様である。このため、曲げ加工後の二重管100を完成品として所望する形状に近付けるために、第1曲げ工程及び第2曲げ工程に続いて曲げ部成形工程を実施する。曲げ部成形工程は、曲げ加工後の二重管100を所望の形状に近付けるために、外管120における第1曲げ部140A及び第2曲げ部140Bを構成する部分を成形する工程である。
【0066】
なお、本実施形態では、先に第1曲げ部140Aについて曲げ部成形工程を実施し、その後に第2曲げ部140Bについて曲げ部成形工程を実施するが、それぞれの成形方法は同様であるため、以下では第1曲げ部140A及び第2曲げ部140Bを区別せず、曲げ部140に対する工程として説明する。
【0067】
まず、図4及び図5に示すように、曲げ部成形装置5において、二重管100を第1成形型51及び2つの位置決め部材53に配置する。具体的には、第1成形型51の第1成形面511内に曲げ部140が位置し、2つの位置決め部材53のそれぞれにおける第1成形型51側のクランプ部531の溝531a内に曲げ部140の両側のストレート部がそれぞれ位置するように、二重管100を配置する。
【0068】
続いて、2つの位置決め部材53のそれぞれにおける第2成形型52側のクランプ部531を第1成形型51側のクランプ部531に接近するように変位させて、クランプ部531同士により曲げ部140の両側のストレート部を挟持する。これにより、曲げ部140の両側のストレート部が固定され、図8Aに示すように、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に偏った位置に、曲げ部140が配置される。具体的には、曲げ部140は、第1成形面511における曲げ部140の曲率半径方向外側の部分と接し、内側の部分と離間する位置に配置される。
【0069】
続いて、図8Bに示すように、第2成形型52を第1成形型51に接近するように変位させ、第1成形型51に配置された状態の曲げ部140を第2成形型52で押圧する。これにより、外管120における曲げ部140を構成する部分が、第1成形型51と第2成形型52との接近方向に潰れつつ、曲げ部140の曲率半径方向に膨らむ。本実施形態では、曲げ部140が、第1成形型51における外側面511aと接し、内側面511bと離間する位置に配置されているため、第2成形型52による押圧によって、図9Aに示すように、外管120における曲げ部140を構成する部分が曲げ部140の曲率半径方向内側に膨らむ。
【0070】
特に本実施形態では、図8A及び図8Bに示すように、外側面511aの高さが内側面511bの高さよりも高く形成されている。このため、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に偏った位置に曲げ部140を配置しても、第2成形型52による押圧によって、外管120における曲げ部140を構成する部分が、曲げ部140の曲率半径方向外側に膨らむことを抑制することができる。
【0071】
このように、外管120における曲げ部140を構成する部分が、第1成形型51と第2成形型52との接近方向に潰れつつ、曲げ部140の曲率半径方向内側に膨らむことにより、曲げ加工を経て歪な円形状になっていた外管120の断面の外形が真円状に近付く。さらに、曲げ加工を経て二重管100の周方向に不均一になっていた内管110と外管120との間隔が、二重管100の周方向に均一な間隔に近付く。つまり、二重管100が完成品として所望する形状に近付く。
【0072】
ここで、先の曲げ加工の条件によっては、曲げ部140に、曲げ部140の曲率半径方向内側だけでなく外側においても、内管110と外管120との間隔が狭い部分が生じ得る。例えば、前述したように、曲げ加工により内管110の曲率は外管120の曲率に比べて小さくなりやすいが、二重管100において曲げ部140が形成される部分が連結部130から遠い場合、内管110と外管120との曲率の差が大きくなりやすい。また、曲げ加工において二重管100を曲げる角度が大きい場合も、内管110と外管120との曲率の差が大きくなりやすい。内管110の曲率が外管120の曲率に比べて小さく、且つ、両曲率の差が大きいと、曲げ部140における湾曲の頂点付近では、曲げ部140の曲率半径方向内側における内管110と外管120との間隔が狭くなる一方、曲げ部140における湾曲の頂点から曲げ部140に隣接するストレート部側にずれた位置では、曲げ部140の曲率半径方向外側における内管110と外管120との間隔が狭くなる。また例えば、内管110及び外管120の湾曲の頂点同士がずれた場合も、当該頂点同士のずれに応じて、曲げ部140に、曲げ部140の曲率半径方向外側における内管110と外管120との間隔が狭い部分が生じ得る。
【0073】
このように、曲げ部140が、曲げ部140の曲率半径方向外側における内管110と外管120との間隔が狭い部分を更に有する場合には、図9Bに示すように、外管120における当該部分を構成する部分を、曲げ部140の曲率半径方向外側に膨らませる。この成形操作は、前述した、外管120を曲げ部140の曲率半径方向内側に膨らませる成形操作の後に行う。本実施形態では、二重管100における連結部130から比較的離れた領域に形成された第2曲げ部140Bについて、外管120を第2曲げ部140Bの曲率半径方向外側に膨らませる成形操作も行う。なお、第1曲げ部140Aについては、外管120を第1曲げ部140Aの曲率半径方向内側に膨らませる成形操作のみである。
【0074】
外管120を曲げ部140の曲率半径方向外側に膨らませるための具体的な方法は、基本的には、前述した、外管120を曲げ部140の曲率半径方向内側に膨らませるための具体的な方法と同様である。ただし、二重管100を成形型に配置する際には、成形型の成形面に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に偏った位置ではなく内側に偏った位置に、二重管100を配置する。これにより、成形型で二重管100を押圧したときに、外管120が曲げ部140の曲率半径方向外側に膨らみ、曲げ部140の曲率半径方向外側における内管110と外管120との間隔が広がる。その結果、内管110と外管120との間隔が二重管100の周方向に均一な間隔に近付き、二重管100が完成品として所望する形状に近付く。
【0075】
なお、外管120を曲げ部140の曲率半径方向外側に膨らませるための成形型は、外管120を曲げ部140の曲率半径方向内側に膨らませるための成形型(つまり、第1成形型51及び第2成形型52)と同一であってもよいし異なってもよい。第1成形型51及び第2成形型52と異なる成形型を用いる場合には、この成形型は、成形面における、曲げ部140の曲率半径方向内側の部分の高さが、外側の部分の高さよりも高く形成されてもよい。この場合、当該成形型による押圧によって、外管120における曲げ部140を構成する部分が、曲げ部140の曲率半径方向内側に膨らむことを抑制することができる。
【0076】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)二重管100の成形方法は、第1曲げ工程と、第2曲げ工程と、曲げ部成形工程と、を備える。第1曲げ工程及び第2曲げ工程では、二重管100に曲げ部140(具体的には第1曲げ部140A及び第2曲げ部140B)を形成する。曲げ部成形工程では、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側又は内側に偏った位置に曲げ部140を配置し、第1成形型51に配置された状態の曲げ部140を第2成形型52で押圧する。
【0077】
具体的には、曲げ加工により、曲げ部140は、曲げ部140の曲率半径方向内側における内管110と外管120との間隔が狭く仕上がるため、基本的に、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に偏った位置に曲げ部140を配置する。ただし、曲げ加工の条件によっては、曲げ部140に、曲げ部140の曲率半径方向外側における内管110と外管120との間隔が狭くなっている部分も生じる場合がある。この場合、当該部分の成形にあたっては、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向内側に偏った位置に曲げ部140における当該部分を配置する。そして、第1成形型51に配置された状態の曲げ部140を第2成形型52で押圧する。
【0078】
二重管100は、曲げ加工によって、外管120における曲げ部140を構成する部分の断面形状が変形したり、曲げ部140において外管120に対する内管110の位置が偏ったりする。しかし、上記のような構成によれば、第1曲げ工程及び第2曲げ工程に続く曲げ部成形工程において、第1成形型51に配置された状態の曲げ部140を第2成形型52で押圧することにより、外管120における曲げ部140を構成する部分が、第1成形型51と第2成形型52との接近方向に潰れつつ、曲げ部140の曲率半径方向に膨らむ。
【0079】
具体的には、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に偏った位置に曲げ部140を配置した場合には、曲げ部140は、第2成形型52による押圧によって曲げ部140の曲率半径方向内側に膨らむ。一方、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向内側に偏った位置に曲げ部140を配置した場合には、曲げ部140は、第2成形型52による押圧によって曲げ部140の曲率半径方向外側に膨らむ。すなわち、曲げ部140は、第2成形型52による押圧によって、第1成形面511に対する曲げ部140の曲率半径方向の配置の偏りと反対側に膨らむ。
【0080】
したがって、曲げ加工後の内管110と外管120との間隔の偏りに応じて、曲げ部140を第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向に偏った位置に配置して押圧することにより、外管120の断面形状を真円状に近付けつつ、内管110と外管120との間隔の狭い側を広げて当該間隔を二重管100の周方向に均一な間隔に近付けることができる。すなわち、二重管100を完成品として所望する形状に近付けることができる。
【0081】
(3b)第1成形型51は、外側面511aの高さが内側面511bの高さよりも高い。
このような構成によれば、第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に寄せて曲げ部140を配置した場合でも、第2成形型52による押圧によって、外管120における曲げ部140を構成する部分が、曲げ部140の曲率半径方向外側に膨らむことを抑制することができる。
【0082】
(3c)曲げ部140は、位置決め部材53を用いて第1成形型51に配置される。
このような構成によれば、人が第1成形面511に対して曲げ部140を位置決めする場合と比べて、第1成形型51における所定の位置に曲げ部140をより正確に配置することができる。
【0083】
特に本実施形態では、位置決め部材53により曲げ部140の両側のストレート部が固定されるため、第1成形型51及び第2成形型52に対する曲げ部140の位置が成形途中にずれてしまうことを抑制することもできる。
【0084】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0085】
(4a)曲げ部成形工程では、第1成形型51における第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側又は内側に偏った位置に、曲げ部140を配置する。上記実施形態では、第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側に寄せて曲げ部140を配置する例として、第1成形型51における外側面511aと接する位置に曲げ部140を配置する例が示されている。しかし、曲げ部140は、第1成形面511に対して曲げ部140の曲率半径方向外側又は内側に寄せられつつも、必ずしも第1成形型51における外側面511a又は内側面511bに接する位置に配置されなくてもよい。
【0086】
(4b)上記実施形態では、位置決め部材53を用いて曲げ部140を第1成形型51に配置する。しかし、第1成形型51への曲げ部140の位置決めにあたり、必ずしも位置決め部材53を用いなくてもよく、例えば人が曲げ部140を位置決めしてもよい。
【0087】
(4c)上記実施形態では、第1成形型51は、外側面511aの高さが内側面511bの高さよりも高く形成されている。しかし、外側面511aの高さは内側面511bの高さよりも必ずしも高く形成されていなくてもよく、例えば外側面511a及び内側面511bの高さが同一であってもよい。
【0088】
(4d)上記実施形態では、二重管100に2つの曲げ部140が形成されたが、二重管100に形成される曲げ部140の数は限定されず、1つでもよいし3つ以上でもよい。また、二重管100に複数の曲げ部140が形成される場合、これら複数の曲げ部140は、各中心軸Xが同一の平面に含まれるように形成されてもよいし、異なる平面に含まれるように形成されてもよい。つまり、各曲げ部140を形成するときの回転部41の回転軸Pが、互いに平行であってもよいし平行でなくてもよい。
【0089】
(4e)上記実施形態では、曲げ部成形工程は、第1曲げ工程及び第2曲げ工程を経て得られた曲げ部140に適用される。しかし、曲げ部成形工程は、上記実施形態で例示した第1曲げ工程及び第2曲げ工程とは異なる方法で二重管100に形成された曲げ部140にも適用され得る。
【0090】
(4f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…曲げ加工装置、2…内側芯金、3…中間芯金、4…曲げ型、41…回転部、42…揺動クランプ部、43…滑り部、44…送り部、5…曲げ部成形装置、51…第1成形型、511…第1成形面、52…第2成形型、521…第2成形面、53…位置決め部材、100…二重管、110…内管、120…外管、130…連結部、140…曲げ部。
図1
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図9