(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】排ガスヒータ
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20240409BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F01N3/20 K
H05B3/10 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022039270
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】10 2021 106 168.7
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2021 109 568.9
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファティ ウイサル
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ ヘッケル
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー クシェル
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-503854(JP,A)
【文献】特開2002-373862(JP,A)
【文献】特開昭61-80785(JP,A)
【文献】特開2022-45351(JP,A)
【文献】特開2022-123833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス装置用の排ガスヒータであって、支持体ユニット(16)と、該支持体ユニット(16)に支持され、少なくとも1つの通電式の加熱導体(66,68)を備えた、排ガスが排ガス主流動方向(H)に通流可能な加熱導体ユニット(14)とを有しており、前記少なくとも1つの加熱導体(66,68)は、金属平形材料から分断されて提供されている、排ガスヒータにおいて、
前記加熱導体ユニット(14)は、前記排ガス主流動方向(H)に連続して配置された少なくとも2つの加熱導体(66,68)を有しており、
少なくとも2つの加熱導体(66,68)は、前記排ガス主流動方向(H)に対して横方向では互いに合致していない、
排ガスヒータ。
【請求項2】
前記支持体ユニット(16)は、排ガスヒータ中心軸線(A)に対して半径方向外側に位置する、排ガス案内ケーシング(10)に固定するように形成された固定領域(38)を備えた少なくとも2つの支持体部材(18,20)を有しており、前記固定領域(38)は、前記加熱導体ユニット(14)の少なくとも1つの加熱導体(66,68)の半径方向外側に位置する導体領域(120)と、少なくとも1つの周方向領域において少なくとも部分的に、半径方向では重なっていない、請求項1記載の排ガスヒータ。
【請求項3】
前記加熱導体ユニット(14)の少なくとも1つの加熱導体(66,68)は、少なくとも部分的に渦巻き状に延びるように形成されており、
または/かつ
前記加熱導体ユニット(14)の少なくとも1つの加熱導体(66,68)は、少なくとも1つの蛇行渦巻きエリア(70,72,74,76,78,80)を有しており、各蛇行渦巻きエリア(70,72,74,76,78,80)は、
排ガスヒータ中心軸線(A)に対して半径方向に連続して配置された、実質的に周方向に延在する複数の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)を有しており、少なくとも1つの蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)は、第1の周方向端部において、半径方向においてより内側に配置された蛇行渦巻き部分(84,86,88,90)に接続しているまたは/かつ第2の周方向端部において、半径方向においてさらに外側に配置された蛇行渦巻き部分(82,84,86,88)に接続している、請求項1または2記載の排ガスヒータ。
【請求項4】
前記加熱導体ユニット(14)の全ての加熱導体(66,68)は、少なくとも部分的に渦巻き状に延びるように形成されており、全ての加熱導体(66,68)は、周方向に連続する複数の蛇行渦巻きエリア(70,72,74,76,78,80)を有しており、各蛇行渦巻きエリア(70,72,74,76,78,80)は、
排ガスヒータ中心軸線(A)に対して半径方向に連続して配置された、実質的に周方向に延在する複数の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)を有しており、複数の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)は、第1の周方向端部において、半径方向においてより内側に配置された蛇行渦巻き部分(84,86,88,90)に接続しているまたは/かつ第2の周方向端部において、半径方向においてさらに外側に配置された蛇行渦巻き部分(82,84,86,88)に接続している、請求項3記載の排ガスヒータ。
【請求項5】
前記少なくとも2つの加熱導体(66,68)は、互いに電気的に直列に接続されているまたは/かつ前記少なくとも2つの加熱導体は、互いに電気的に並列に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項6】
前記少なくとも2つの加熱導体(66,68)の第1の加熱導体(66)において、1つの蛇行渦巻きエリア(70)の半径方向外側の蛇行渦巻き部分(82)が、前記第1の加熱導体(66)の第1の接続領域(92)を提供すると共に、別の蛇行渦巻きエリア(80)の半径方向外側の蛇行渦巻き部分(82)が、前記第1の加熱導体(66)の第2の接続領域(94)を提供しており、
前記少なくとも2つの加熱導体(66,68)の第2の加熱導体(68)において、1つの蛇行渦巻きエリア(70)の半径方向外側の蛇行渦巻き部分(82)が、前記第2の加熱導体(68)の第1の接続領域(96)を提供すると共に、別の蛇行渦巻きエリア(80)の半径方向外側の蛇行渦巻き部分(82)が、前記第2の加熱導体(68)の第2の接続領域(98)を提供しており、
前記第1の加熱導体(66)および前記第2の加熱導体(68)ではそれぞれ、前記第1の接続領域(92,96)と前記第2の接続領域(94,98)のうちの少なくとも1つの接続領域が、前記加熱導体ユニット(14)を電圧源に接続する電圧源接続領域を提供しておりまたは/かつ前記第1の加熱導体(66)および前記第2の加熱導体(68)ではそれぞれ、前記第1の接続領域(92,96)と前記第2の接続領域(94,98)のうちの一方の接続領域が、前記第1の加熱導体(66)と前記第2の加熱導体(68)とを電気的に直列に接続する結合・接続領域を提供している、請求項3を引用する請求項5記載の排ガスヒータ。
【請求項7】
前記加熱導体ユニット(14)の、前記排ガス主流動方向(H)に連続する前記加熱導体(66,68)は、前記支持体ユニット(16)の
支持体部材(18,20)の間に支持されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項8】
少なくとも1つの蛇行渦巻きエリア(70,72,74,76,78,80)において、1つの前記加熱導体(66,68)の少なくとも1つの蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)が、前記排ガス主流動方向(H)に続く、別の前記加熱導体(66,68)の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)と、前記排ガス主流動方向(H)に対して横方向では合致していない、請求項3を引用する請求項7記載の排ガスヒータ。
【請求項9】
全ての蛇行渦巻きエリア(70,72,74,76,78,80)において、1つの前記加熱導体(66,68)の複数の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)が、前記排ガス主流動方向(H)に続く、別の前記加熱導体(66,68)の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)と、前記排ガス主流動方向(H)に対して横方向では合致していない、請求項8記載の排ガスヒータ。
【請求項10】
前記少なくとも2つの加熱導体(66,68)が、少なくとも1つの支柱部材(130;130’)を介して、互いに対して支持されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項11】
前記少なくとも2つの加熱導体(66,68)が、複数の支柱部材(130;130’)を介して、互いに対して支持されている、請求項10記載の排ガスヒータ。
【請求項12】
少なくとも1つの前記支柱部材(130;130’)は、2つの前記加熱導体(66,68)の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)の間に延在している、請求項3を引用する請求項10または11記載の排ガスヒータ。
【請求項13】
全ての前記支柱部材(130;130’)は、2つの前記加熱導体(66,68)の蛇行渦巻き部分(82,84,86,88,90)の間に延在している、請求項12記載の排ガスヒータ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの支持体部材(18,20)は、周方向に相互に間隔をあけて配置されかつ半径方向外側にそれぞれ前記固定領域(38)の固定部分(40,42,44,46,48,50)を提供する複数の支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)を有している、請求項2を引用する請求項3から13までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項15】
周方向に連続する少なくとも2つの前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)の前記固定部分(40,42,44,46,48,50)
は、周方向では
互いに結合されてはいない、請求項14記載の排ガスヒータ。
【請求項16】
周方向に連続する全ての前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)の前記固定部分(40,42,44,46,48,50)
は、周方向では
互いに結合されてはいない、請求項15記載の排ガスヒータ。
【請求項17】
周方向に連続する少なくとも2つの前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)の前記固定部分(40,42,44,46,48,50)は、周方向において固定縁部(54,56,58,60,62,64)を介して互いに結合されている、請求項14または15記載の排ガスヒータ。
【請求項18】
周方向に連続する全ての前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)の前記固定部分(40,42,44,46,48,50)は、周方向において固定縁部(54,56,58,60,62,64)を介して互いに結合されている、請求項14記載の排ガスヒータ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの支持体部材(18,20)の前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)は、前記少なくとも1つの支持体部材(18,20)の中央領域(22)から半径方向外側に向かって延びており、または/かつ
少なくとも、前記少なくとも1つの支持体部材(18,20)の前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)の一部または/および前記少なくとも1つの支持体部材(18,20)の中央領域(22)に、前記少なくとも1つの支持体部材(18,20)と前記加熱導体ユニット(14)とを固く結合するための少なくとも1つの結合成形部(106)が設けられている、請求項14から18までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項20】
少なくとも前記加熱導体(66,68)は、前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)により覆われる領域内に、前記支持体アーム(24,26,28,30,32,34,36)により覆われていない領域におけるよりも大きな導体横断面を有している、請求項14から19までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項21】
上流側の支持体部材(18)と下流側の支持体部材(20)とが設けられており、前記加熱導体ユニット(14)は、前記排ガス主流動方向(H)において前記上流側の支持体部材(18)と前記下流側の支持体部材(20)との間に配置されている、請求項14から20までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項22】
少なくとも1つの支持体部材(18)は、前記加熱導体ユニット(14)の少なくとも1つの電圧源接続領域を、直接的な排ガス流入に対して実質的に遮蔽している、請求項14から21までのいずれか1項記載の排ガスヒータ。
【請求項23】
排ガス案内ケーシング(10)に支持された、請求項1から22までのいずれか1項記載の少なくとも1つの排ガスヒータ(12)を有する、内燃機関の排ガス装置用の排ガスヒータユニット。
【請求項24】
排ガス案内ケーシング(10)内に配置された、請求項1から22までのいずれか1項記載の少なくとも1つの排ガスヒータ(12)と、該排ガスヒータ(12)の下流側の少なくとも1つの排ガス処理ユニット(128)とを有する、内燃機関用の排ガス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス装置用の排ガスヒータであって、支持体ユニットと、支持体ユニットに支持され、少なくとも1つの通電式の加熱導体を備えた、排ガスが排ガス主流動方向に通流可能な加熱導体ユニットとを有しており、少なくとも1つの加熱導体は、金属平形材料から分断されて提供されている、排ガスヒータに関する。
【0002】
このような排ガスヒータは、後から公開された独国特許出願第102020123376号明細書から公知である。2つの支持体部材の間に支持される加熱導体を金属平形材料から分断して、例えばこのような加熱導体を金属平形材料の板状の素材から切断してまたは打ち抜いて提供することにより、このような、ほぼ任意の比較的複雑な延在部および特に変化する横断面ひいては局所的に変化する抵抗をも有する加熱導体を提供すること、ひいてはこの加熱導体を、排ガス装置の排ガス案内ケーシング内の流動条件に適合させることが可能になる。
【0003】
本発明の課題は、通流する排ガスに熱を伝達する際の効率が高められた、内燃機関の排ガス装置用の排ガスヒータを設けることである。
【0004】
本発明に基づきこの課題は、内燃機関の排ガス装置用の排ガスヒータであって、支持体ユニットと、支持体ユニットに支持され、少なくとも1つの通電式の加熱導体を備えた、排ガスが排ガス主流動方向に通流可能な加熱導体ユニットとを有しており、少なくとも1つの加熱導体は、金属平形材料から分断されて提供されている、排ガスヒータにおいて、
-加熱導体ユニットは、排ガス主流動方向に連続して配置された少なくとも2つの加熱導体を有しており、
または/かつ
-支持体ユニットは、排ガスヒータ中心軸線に対して半径方向外側に位置する、排ガス案内ケーシングに固定するように形成された固定領域を備えた少なくとも1つの支持体部材を有しており、固定領域は、加熱導体ユニットの少なくとも1つの加熱導体の半径方向外側に位置する導体領域と、少なくとも1つの、好適には複数の周方向領域において少なくとも部分的に、半径方向では重なっていない、
排ガスヒータにより解決される。
【0005】
複数の加熱導体を排ガス主流動方向に連続して設けることにより、排ガスヒータを通流する排ガスに熱を伝達することができる表面積が大幅に拡大され、この場合、加熱導体自体は金属平形材料から分断されることにより提供されているという事情に基づき、このような加熱導体を複数連続して配置することにより、このように構成された排ガスヒータの構成サイズが大幅に増大することはない。このような構成では、基本的に電気的な絶縁手段によっては包囲されない種々様々な加熱導体が、同じまたは異なる導電材料から構成されていてよいと共に、排ガス流の流れ案内に適切に影響を及ぼすように形成もしくは配置されていてよい。また、種々様々な加熱導体は、異なって形成されていてもよい、例えば異なって寸法設定されていてもよく、これにより、例えば排ガス案内ケーシングの漏斗状の構造に適合させることができる。
【0006】
支持体ユニットを、この支持体ユニットが1つの周方向領域または複数の周方向領域において、1つの加熱導体と少なくとも部分的に半径方向において重ならないように、つまり少なくとも部分的に、排ガスの流入もしくは環流に対して遮蔽しないように形成することにより、半径方向外側の領域においても、排ガスと加熱導体との間に熱交換作用を提供する手段が提供され、その結果、この手段によっても構成サイズを増大させること無しに、熱伝達に有効利用可能な加熱導体の表面積が拡大され得る。
【0007】
上述した2つの手段はそれぞれ、それ自体が前記のように構成された排ガスヒータの熱伝達特性の向上をもたらすものであり、したがって本発明の原理に基づき、排ガスヒータにおいて単独で実現されていてもよい。特に有利なのは、2つの手段が組み合わせられて排ガスヒータに設けられている場合である。
【0008】
排ガス案内ケーシングの、排ガスが通流可能な横断面において、排ガスとの熱交換作用を生ぜしめる加熱導体の最大限の表面積を達成するために、加熱導体ユニットの少なくとも1つ、好適には全ての加熱導体が、少なくとも部分的に渦巻き状に延びるように形成されている、ということを提案する。この場合、例えば、加熱導体ユニットの少なくとも1つ、好適には全ての加熱導体は、少なくとも1つの蛇行渦巻きエリア、好適には周方向に連続する複数の蛇行渦巻きエリアを有している、ということが想定されていてよく、この場合、各蛇行渦巻きエリアは、排ガスヒータ中心軸線に対して半径方向に連続して配置された、実質的に周方向に延在する複数の蛇行渦巻き部分を有しており、この場合、少なくとも1つ、好適には複数の蛇行渦巻き部分は、第1の周方向端部において、半径方向においてより内側に配置された蛇行渦巻き部分に接続しているまたは/かつ第2の周方向端部において、半径方向においてさらに外側に配置された蛇行渦巻き部分に接続している。
【0009】
排ガス主流動方向に連続して配置された少なくとも2つの加熱導体を備えた加熱導体ユニットの構成では、少なくとも2つの加熱導体は、互いに電気的に直列に接続されていてよいまたは/かつ少なくとも2つの加熱導体は、互いに電気的に並列に接続されていてよい。
【0010】
加熱導体と電圧源とをもしくは加熱導体同士を電気的に接続するためには、少なくとも2つの加熱導体の第1の加熱導体において、1つの蛇行渦巻きエリアの半径方向外側の蛇行渦巻き部分が、第1の加熱導体の第1の接続領域を提供すると共に、別の蛇行渦巻きエリアの半径方向外側の蛇行渦巻き部分が、第1の加熱導体の第2の接続領域を提供しており、少なくとも2つの加熱導体の第2の加熱導体において、1つの蛇行渦巻きエリアの半径方向外側の蛇行渦巻き部分が、第2の加熱導体の第1の接続領域を提供すると共に、別の蛇行渦巻きエリアの半径方向外側の蛇行渦巻き部分が、第2の加熱導体の第2の接続領域を提供しており、第1の加熱導体および第2の加熱導体ではそれぞれ、第1の接続領域と第2の接続領域のうちの少なくとも1つの接続領域が、加熱導体ユニットを電圧源に接続する電圧源接続領域を提供しておりまたは/かつ第1の加熱導体および第2の加熱導体ではそれぞれ、第1の接続領域と第2の接続領域のうちの一方の接続領域が、第1の加熱導体と第2の加熱導体とを電気的に直列に接続する結合・接続領域を提供している、ということを提案する。
【0011】
さらに、排ガスによる加熱導体の効率的な環流は、排ガス主流動方向に連続して配置された少なくとも2つの加熱導体を備えた加熱導体ユニットの構成において、少なくとも2つの加熱導体は、排ガス主流動方向に対して横方向では互いに合致していない、ということにより改良され得る。つまり、より下流側に配置された加熱導体は、より上流側に配置された加熱導体の流れの陰内に位置するもしくは完全に位置するのではなく、少なくとも部分的に、排ガス主流動方向に対して横方向において、より上流側に配置された加熱導体を越えて張り出しておりひいてはより上流側に配置された加熱導体により覆われていないと共に、ガスの流入に対して遮蔽されてもいない。この場合、加熱導体ユニットの、排ガス主流動方向に連続する加熱導体が、支持体ユニットの支持体部材の間に支持されていると、安定した配置に有利である。
【0012】
安定性の向上のために、排ガス主流動方向に連続して配置された少なくとも2つの加熱導体を備えた加熱導体ユニットの構成では、少なくとも2つの加熱導体が、少なくとも1つ、好適には複数の支柱部材を介して、互いに対して支持されていてよい。
【0013】
このためには少なくとも1つ、好適には全ての支柱部材が、2つの加熱導体の蛇行渦巻き部分の間に延在していてよい。
【0014】
特に、1つまたは複数の支柱部材を介して互いに対して支持された加熱導体を並列接続する場合には、熱伝達に利用可能な表面積の拡大にも寄与するこのような支柱部材は金属材料から構成されていてよく、加熱導体に、材料接続、例えば溶接またはろう接により結合されていてよい。
【0015】
1つまたは複数の蛇行渦巻きエリアを備えた加熱導体の構成では、排ガスの流入に対する完全な相互被覆が、少なくとも1つ、好適には全ての蛇行渦巻きエリアにおいて、1つの加熱導体の少なくとも1つ、好適には複数の蛇行渦巻き部分が、排ガス主流動方向に続く、別の加熱導体の蛇行渦巻き部分と、排ガス主流動方向に対して横方向では合致していないことにより回避され得る。
【0016】
加熱導体ユニットの少なくとも1つの加熱導体の半径方向外側に位置する導体領域と、少なくとも1つの周方向領域内で少なくとも部分的に半径方向では重ならない固定領域を備えた少なくとも1つの支持体部材の構成では、少なくとも1つの支持体部材は、周方向に相互に間隔をあけて配置されかつ半径方向外側にそれぞれ固定領域の固定部分を提供する複数の支持体アームを有していてよい。
【0017】
この場合、加熱導体の半径方向外側に位置する導体領域の、2つのこのような支持体アームの間に位置する範囲を、排ガスの流入に対して被覆しないもしくは完全には被覆しないようにするために、周方向に連続する少なくとも2つの支持体アーム、好適には周方向に連続する全ての支持体アームの固定部分の間に、周方向では結合部が一切存在しない、ということが想定されていてよい。
【0018】
択一的または追加的に、支持体アームに対する割当てにおいて、周方向に連続する少なくとも2つの支持体アーム、好適には周方向に連続する全ての支持体アームの固定部分は、周方向において固定縁部を介して互いに結合されている、ということが想定されていてよい。このような固定縁部は、半径方向外側において支持体部材の補強に寄与するにもかかわらず、この固定縁部を介して結合された2つの支持体アームの間の領域において半径方向外側に位置する導体領域を覆わないもしくは完全には覆わないように寸法設定されている。
【0019】
安定した構造を達成するために、少なくとも1つの支持体部材の支持体アームは、少なくとも1つの支持体部材の中央領域から半径方向外側に向かって延びており、または/かつ少なくとも1つの支持体部材の支持体アームの少なくとも一部または/および少なくとも1つの支持体部材の中央領域に、少なくとも1つの支持体部材と加熱導体ユニットとを固く結合するための少なくとも1つの結合成形部が設けられている、ということを提案する。
【0020】
半径方向外側の導体領域も支持体アームにより覆われざるを得ないということが不可避である領域において熱滞留の発生を回避するために、さらに、少なくとも加熱導体は、支持体アームにより覆われる領域内に、支持体アームにより覆われていない領域におけるよりも大きな導体横断面を有している、ということを提案する。覆われた領域において、加熱導体はより大きな横断面に基づき、より小さな抵抗を有しているため、そこに生じる熱も、より少なくなる。このような構造は、好適には加熱導体の半径方向外側の導体領域、特に少なくとも1つの蛇行渦巻きエリアにおける半径方向外側の蛇行渦巻き部分に設けられている。
【0021】
安定した構造はさらに、上流側の支持体部材と下流側の支持体部材とが設けられており、この場合、加熱導体ユニットが、排ガス主流動方向において上流側の支持体部材と下流側の支持体部材との間に配置されていることにより支援され得る。加熱導体ユニットは当然、例えば金属薄板材料からも構成される支持体部材に対して電気的に絶縁された状態に保たれている。
【0022】
1つの特に好適な構成では、少なくとも1つの支持体部材は、加熱導体ユニットの少なくとも1つの電圧源接続領域を、直接的な排ガス流入に対して実質的に遮蔽している、ということが想定されていてよい。排ガス案内ケーシングを貫通している接続部材に対する加熱導体ユニットの接続領域には一般に、排ガスとの熱交換作用を生ぜしめるように設けられた加熱導体ユニットの導体領域におけるよりも少ない熱が提供される。よって、この領域を排ガス通流に対して遮蔽することにより、この領域内を流れる排ガスが、別の領域内を流れる排ガスに比べ、あまり強力には加熱されない、ということが回避される。
【0023】
本発明はさらに、排ガス案内ケーシングに支持された、本発明に基づき構成された少なくとも1つの排ガスヒータを有する、内燃機関の排ガス装置用の排ガスヒータユニットに関する。
【0024】
本発明はさらに、排ガス案内ケーシング内に配置された、本発明に基づき構成された少なくとも1つの排ガスヒータと、排ガスヒータの下流側の少なくとも1つの排ガス処理ユニットとを有する、内燃機関用の排ガス装置に関する。
【0025】
以下に、添付の図面に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】排ガス主流動方向に見た、排ガス案内ケーシング内の排ガスヒータを示す図である。
【
図2】
図1に示した排ガスケーシング内の排ガスヒータの斜視図である。
【
図3】排ガス案内ケーシング内に挿入された排ガスヒータの部分縦断面図である。
【
図4】
図1に示した排ガスヒータの支持体ユニットの支持体部材を示す図である。
【
図5】
図1に示した排ガスヒータの加熱導体ユニットの、より上流側に配置されるべき第1の加熱導体を示す図である。
【
図6】
図1に示した排ガスヒータの加熱導体ユニットの、より下流側に配置されるべき第2の加熱導体を示す図である。
【
図7】
図5および
図6に示した加熱導体を組み合わせた状態で示す図である。
【
図8】排ガス案内ケーシング内に配置された排ガスヒータの1つの択一的な構成を示す、
図1に相応する図である。
【
図9】
図8に示した排ガス案内ケーシング内の排ガスヒータの斜視図である。
【
図10】
図8に示した排ガス案内ケーシング内の排ガスヒータの側面図である。
【
図11】
図8に示した排ガスヒータの部分縦断面図である。
【
図12】
図8に示した排ガスヒータの加熱導体ユニットの、より上流側に配置されるべき第1の加熱導体を示す図である。
【
図13】
図8に示した排ガスヒータの加熱導体ユニットの、より下流側に配置されるべき第2の加熱導体を示す図である。
【
図15】
図8に示した排ガスヒータの支持体ユニットの上流側の支持体部材を示す図である。
【
図16】
図8に示した排ガスヒータの支持体ユニットの下流側の支持体部材を示す図である。
【
図17】上流側の支持体部材の1つの択一的な構成を示す図である。
【
図18】下流側の支持体部材の1つの択一的な構成を示す図である。
【
図19】加熱導体ユニット用の絶縁部材を示す図である。
【
図21】2つの加熱導体の間に配置された支柱部材を示す図である。
【0027】
図1~
図7には、少なくとも部分的に排ガスヒータ中心軸線Aの方向に長く延在する、例えば管状の排ガス案内ケーシング10内に挿入された排ガスヒータ12の第1の構成形式が示されている。排ガスヒータ12は、全体的に符号14で表された加熱導体ユニットを有しており、加熱導体ユニット14は、支持体ユニット16により排ガス案内ケーシング10に支持されている。
【0028】
支持体ユニット16は、例えば金属薄板材料から成形された、互いに同じ構成の2つのディスク状の支持体部材18,20を有している。支持体部材18,20は、排ガスヒータ中心軸線Aに対して実質的に横方向に延在する中央領域22と、中央領域22から半径方向外側に向かって延びる複数の支持体アーム24,26,28,30,32,34,36とにより構成されている。支持体部材18,20の外周領域には、全体的に符号38で表された固定領域が形成されており、固定領域38でもって支持体部材18,20ひいては排ガスヒータ12全体を排ガス案内ケーシング10の内側表面に、例えば溶接により固定することができる。この固定領域38において、両支持体部材18,20は軸線方向に曲げられている。
【0029】
各支持体アーム24,26,28,30,32,34,36の領域に、固定領域38は各1つの固定部分40,42,44,46,48,50,52を有している。支持体アーム24,26,28,30,32,34,36の各1つの半径方向外側の端部領域を形成する2つの固定部分40,42,44,46,48,50,52の間にはそれぞれ、2つの隣り合う支持体アームの固定部分を結合する固定縁部54,56,58,60,62,64が形成されており、これにより、固定部分40,42,44,46,48,50,52は、その間に延びており、隣り合う支持体アーム24,26,28,30,32,34,36を互いに結合する固定縁部54,56,58,60,62,64と共に、周方向において実質的に連続した固定領域38の構造を提供している。
図4において上部に認められる固定縁部は、2つの支持体アーム24,36もしくは支持体アーム24,36の固定部分40,52の間にだけ延在していない。
【0030】
支持体アーム24,26,28,30,32,34,36および固定領域38の形状に基づき、排ガスヒータ12を通流する排ガスの適切な流れ案内が達成される。特に支持体アーム24,26,28,30,32,34,36により、直接的な流入に対して保護されるべき領域が覆われてよい。これは例えば、例えば温度検出用または排ガス組成検出用のセンサが配置された領域であり得る。実質的に環状に連続している固定領域38により、半径方向外側の領域での、排ガスヒータ12を含む排ガス案内ケーシングの比較的低温の内側表面に直接に沿った流動が阻止される。
【0031】
図5および
図6には、加熱導体ユニット14の上流側の第1の加熱導体66ならびに下流側の第2の加熱導体68が示されている。基本的に、電気絶縁材料により被覆されてはいない両加熱導体66,68はそれぞれ、金属平形材料からの分断により、例えば打抜きまたは例えばレーザカットまたはウォータジェットカット等の切断により提供されており、排ガス案内ケーシング10の内周輪郭に適合された、図示の実施例では平らで丸い外周輪郭を有している。両加熱導体66,68はそれぞれ、周方向において連続する複数の蛇行渦巻きエリア70,72,74,76,78,80を備えて構成されており、この場合、各蛇行渦巻きエリア70,72,74,76,78,80内には、互いに実質的に半径方向において段付けられた蛇行渦巻き部分82,84,86,88,90が設けられており、蛇行渦巻き部分82,84,86,88,90は、ほぼ周方向に延びるように形成されている。蛇行渦巻き部分84,86,88,90は、その周方向端部領域の一方においてそれぞれ、さらに半径方向外側に配置された蛇行渦巻き部分82,84,86,88に結合されている。他方の周方向端部領域において蛇行渦巻き部分82,84,86,88はそれぞれ、さらに半径方向内側に位置する蛇行渦巻き部分84,86,88,90に結合されている。蛇行渦巻きエリア72,74,76,78の半径方向外側の各蛇行渦巻き部分82は、すぐ隣の蛇行渦巻きエリア同士を互いに結合している。同様に、蛇行渦巻きエリア70,72,74,76,78,80の半径方向内側の蛇行渦巻き部分90は、すぐ隣の蛇行渦巻きエリア同士を結合しており、これにより全体として、蛇行渦巻きエリア70,72,74,76,78,80の1つの直列電気回路が得られることになる。
【0032】
平形材料からの分断によるこのような加熱導体66,68の生産は、特に簡単かつ経済的に実施可能な方法で、加熱導体66,68の蛇行渦巻き部分の比較的複雑な構造を備えた加熱導体66,68を提供する可能性をもたらすにもかかわらず、基本的に、このような加熱導体66,68を得るには、例えば金属射出成形または焼結等の別の製造法も可能である。
【0033】
第1の加熱導体66の蛇行渦巻きエリア70,80の半径方向外側の蛇行渦巻き部分82は、第1の加熱導体66の第1の接続領域92もしくは第2の接続領域94を提供する。同様に、第2の加熱導体68の蛇行渦巻きエリア70,80の半径方向外側の蛇行渦巻き部分82は、第2の加熱導体68の第1の接続領域96および第2の接続領域98を提供する。加熱導体66,68は、その第1の接続領域92,96でもって各1つの電圧源接続領域を提供しており、電圧源接続領域でもって加熱導体は、例えば電気的に絶縁された状態で排ガス案内ケーシング10を気密に貫通している接続部材100,102を介して電圧源に接続され得る。両加熱導体66,68は、その第2の接続領域94,98でもって結合・接続領域を提供しており、結合・接続領域において両加熱導体66,68は、例えばリベットピン締結または溶接等により互いに導電結合されており、これによりこの実施例では、両加熱導体の電気的に直列の回路が生じている。接続領域92,94,96,98の範囲内に、加熱導体66,68もしくは半径方向外側に位置する各蛇行渦巻き部分82は比較的大きな幅を有しており、これにより、局所的により小さな電気抵抗に基づき、排ガスの流入に対して遮蔽されたこれらの領域内での熱の発生を、自由に流入可能な領域に比べて減少させることができる。
【0034】
1つの択一的な構成では、各加熱導体66,68において第2の接続領域94,98が電圧源接続領域を提供してもよく、これにより、例えば両加熱導体66,68の両第1の接続領域92,96が、接続部材100と、接続部材100を介して電圧源とに接続され得る一方で、両加熱導体66,68の第2の接続領域94,98は互いに接続されていると共に接続部材102を介して電圧源に接続されていてよく、これにより、加熱導体66,68の電気的に並列の回路が生じている。特に両加熱導体66,68の並列回路が選択されると、加熱導体66,68が異なる排ガス温度に晒され、これにより加熱導体66,68の局所的に異なる電気抵抗が生じた場合に、加熱導体66,68の自己調整が達成される。
【0035】
排ガスヒータ中心軸線Aひいては排ガス主流動方向Hの方向に連続して位置する加熱導体66,68に基づき、軸線方向においてコンパクトな構成サイズと共に、加熱されるべき排ガスとの熱交換作用を生ぜしめる比較的大きな表面積が達成される。この場合、より下流側に配置される第2の加熱導体68が、より上流側に配置される第1の加熱導体66の流れの陰内に完全に配置されてはいないようにするために、両加熱導体66,68は、互いに異なる構造もしくは延在部の、個々の蛇行渦巻き部分82,84,86,88を有している。このことは、
図7に示す複合体により示されており、この複合体では、個々の蛇行渦巻きエリア70,72,74,76,78,80において両加熱導体66,68の特に蛇行渦巻き部分84,86,88は互いに完全に合致して位置しているのではなく、半径方向に互いにずらされている、ということが認められ、これにより、より下流側に配置された第2の加熱導体68は少なくとも部分的に、排ガス主流動方向Hに対して横方向において、より上流側に配置された第1の加熱導体66を越えて張り出している。よって
図7から看取されるように、両加熱導体66,68の一方によりカバーされていない横断面領域はほぼ存在しないため、両加熱導体66,68の通流時に生じる渦動もしくは乱流を考慮しても、排ガス流の極めて効率的で均一な加熱が達成されることになる。
【0036】
さらにこのユニットは、固定領域38により半径方向において実質的に完全に包囲されるように係合されておりかつ両支持体部材18,20の固定領域38に対する電気絶縁部を提供するためにU字形の絶縁材料104により包囲された半径方向外側の各蛇行渦巻き部分82が、互いに実質的に整合するようになっていてよい。両加熱導体66,68の半径方向内側の蛇行渦巻き部分90も、互いに整合して位置していてよい。
【0037】
両支持体部材18,20と、これらの間に配置された両加熱導体66,68との固い結合を生ぜしめるために、いくつかの支持体アームの領域には、つまり支持体アーム26,30,34の領域には、それぞれ1つまたは2つの結合開口108を備えた結合成形部106が設けられている。これらの結合開口108を通り、加熱導体66,68に設けられた対応する開口をも貫通する結合部材110、例えばねじピンまたはリベットピンが貫通案内され得、これにより、軸線方向での固い結合を達成することができる。中央領域22にも、このような結合成形部106が設けられていてよい。
図7に示した複合体において、支持体アーム26,28および34ならびに中央領域22にも設けられた結合成形部106は、例示的に示されたものである、ということに留意されたい。
【0038】
基本的に、加熱導体66,68は、加熱導体66,68が支持体部材18,20により被覆されひいては排ガス流入に対して遮蔽された領域内に、排ガス流入に対して実質的に遮蔽されていない領域におけるよりも大きな幅もしくは横断面を有していてよく、これにより、これらの領域内の局所的により小さな電気抵抗に基づき、遮蔽されていない領域におけるよりも少ない熱が生じることになる。実質的に遮蔽されていない領域には、例えば2mm×4mm~4mm×2mmの範囲内の、蛇行渦巻き部分の横断面寸法が提供されていてよい。
【0039】
安定性をさらに高めるために、加熱導体66,68の間もしくは加熱導体66,68の異なる蛇行渦巻き部分の間には、
図21に例示する支柱部材130が複数配置されていてよい。これらの支柱部材130は、流動方向に連続して位置する加熱導体66,68の蛇行渦巻き部分の間に結合を生ぜしめることができるため、特に比較的薄い構成の蛇行渦巻き部分の場合には、これらの蛇行渦巻き部分が互いに支持されておりひいては振動励起に対しても保持されている。両加熱導体の並列回路の場合、支柱部材130は加熱導体66,68に、例えば材料接続、例えばろう接または溶接等により固く結合されていてよい、比較的簡単に製造されるべき金属部材であり得る。加熱導体66,68の並列回路に基づき、このような局所的な導電ブリッジは、特に両加熱導体がほぼ同じ形状を有している場合に加熱導体66,68の導電特性ひいては加熱特性にも実質的に影響を及ぼさない。択一的に、このような支柱部材130は、例えばセラミック材料または耐熱プラスチック材料等の非導電材料から構成されていてよく、加熱導体66,68に、例えば接着または係止等により結合されてよい。このような構成は、特に加熱導体66,68が互いに直列に接続されている場合に適している。
【0040】
このような支柱部材130により、両加熱導体66,68の安定した結合が達成され得るため、支持体部材18,20を、例えばより小数の支持体アームでもって、もしくは例えば
図3に認められる結合部材110により両加熱導体66,68が支持体部材18,20に固定されている、より少数の固定領域でもって構成する可能性が生じる。これにより、加熱導体66,68の、排ガスを環流させるより大きな表面領域も解放されることになる。このような支柱部材の挿入により生ぜしめられる別の効果は、排ガスが環流可能なひいては熱伝達に利用可能な排ガスヒータ12の表面積の拡大である。
【0041】
図21には、このような支柱部材130もしくは130’の2つの異なる構成が示されている。
図21の左側に認められる支柱部材130はバー状に構成されており、この支柱部材130により結合された加熱導体66,68の蛇行渦巻き部分に対してほぼ直交して延びている。
図21の右側に示された支柱部材130’は、加熱導体66,68に固定された複数の固定脚部132を有しており、固定脚部132の間には、湾曲した結合部分134が延びている。各結合部分134により互いに結合された各固定脚部132のずれと、結合部分134の湾曲構造とに基づき、剛性の連結が回避され、かつ追加的に振動緩衝に寄与し得るもしくは加熱導体66,68の、互いに対する小さな動きを連結領域内でも可能にする弾性がもたらされる。
【0042】
両支持体部材18,20が互いにかつ両加熱導体66,68に結合された領域において電気的な短絡を回避するために、両加熱導体66,68のそれぞれと、加熱導体66,68にすぐ隣接する支持体部材18もしくは20との間ならびに両加熱導体66,68の間には、例えばディスク状の絶縁部材112が設けられている。このような絶縁部材112は
図19に示されておりかつ中心開口114を有しており、中心開口114を通り、各1つの結合部材110が貫通案内されていてよい。両加熱導体66,68が、支持体部材18,20の縁部領域38に対して電気的な絶縁を提供するために全体がU字形の構造の絶縁材料104により包囲されて係合されている半径方向外側の領域にも、両加熱導体66,68、特に両加熱導体66,68の半径方向外側の蛇行渦巻き部分82の間に、例えば全体的に環状の構造を有する絶縁材料116が配置されていてよい。
【0043】
図2では、支持体部材18,20の2つの支持体アーム24,36の間に固定縁部は形成されていないことにより、両加熱導体66,68が接続部材100,102に例えば溶接またはろう接または形状接続により結合されている領域は露出していることが認められる。よって、排ガスヒータ12を排ガス案内ケーシング10内に挿入した場合に、第1の接続領域92,96への介入部を得る可能性が生じており、これにより、第1の接続領域92,96を、接続部材100,102の、排ガス案内ケーシング10の内部に係合している部分に導電式に固定することができるようになっている。この介入部は、両軸線方向面から、つまり両支持体部材18,20のところに生じているため、各第1の接続領域92,96は、対応する各接続部材100もしくは102に確実に接続され得る。
【0044】
図1~
図7に示した排ガスヒータ12の構造により、軸線方向においてコンパクトな構成と同時に、排ガスヒータ12を通流する排ガスを加熱する比較的大きな相互作用面が達成される。両加熱導体66,68の半径方向外側の領域、つまり特に個々の蛇行渦巻きエリア70,72,74,76,78,80の半径方向外側の蛇行渦巻き部分82において、両加熱導体66,68は、支持体部材18,20の固定縁部38により半径方向と周方向とにおいて実質的に完全に被覆されて係合されている。そこでの熱滞留の発生を回避するために、
図5および
図6において明確に看取されるように、これらの半径方向外側の蛇行渦巻き部分82は、より半径方向内側に位置する、排ガスが環流可能な蛇行渦巻き部分84,86,88,90よりも大きな半径方向幅ひいてはより大きな横断面を備えかつこれに相応してより小さな電気抵抗を備えて構成されている。より小さな電気抵抗に基づき、周方向において実質的に一定の半径方向幅を有する半径方向外側の蛇行渦巻き部分82にはより少ない熱が発生するため、これらの半径方向外側の蛇行渦巻き部分82が絶縁材料104もしくは支持体部材18,20の固定縁部38により実質的に完全に包囲されて係合されているもしくは被覆されている場合でも、熱滞留を招くことはない。
【0045】
排ガス主流動方向Hに連続して配置された加熱導体66,68は、排ガスとの熱交換作用の改良のためもしくは排ガス流に影響を及ぼすために、互いに異なって形成もしくは寸法設定されていてよいと共に、異なる材料から構成されていてよい。
【0046】
次に、
図8~
図18を参照して排ガスヒータの変化実施形態を説明する。上述したコンポーネントもしくは構成群に、構成および機能に関して相応するコンポーネントもしくは構成群は、同じ符号で表されている。
【0047】
基本的な構造に関して、
図8~
図18に示す排ガスヒータもしくはこの排ガスヒータにより構成された排ガス装置は、上で
図1~
図7を参照して説明した構造に相応する、ということに留意されたい。したがって、
図8~
図18に示す排ガスヒータの実施形態の基本的な構成に関しては、先行実施形態を参照されたい。以下では主として、上述した実施形態に対して生じている相違点について説明する。
【0048】
図8~
図18に示す排ガスヒータ12は、上述した排ガスヒータと、主として支持体ユニット16の両支持体部材18,20の構成において相違している。この排ガスヒータ12の上流側の支持体部材18は、
図15に示されている。この排ガスヒータ12の下流側の支持体部材20は、
図16に示されている。明確に看取されるのは、
図15と
図16との比較において、排ガスヒータ12のこの実施形態では、両支持体部材18,20が互いに異なるように形成されている、という点である。特に上流側の支持体部材18は、この排ガスヒータ12の両加熱導体66,68が接続部材100,102に接続されている領域を、排ガスヒータ12の上流側において排ガスの直接的な流入に対して実質的に遮蔽するようになっているのに対し、下流側の支持体部材20では、中央領域22から出発する支持体アーム24,36の間の半径方向外側に依然として切欠きが残されており、つまり固定領域38が中断されており、固定部分40,52の間に固定縁部は設けられていない。このようにして、下流側からは依然として、両加熱導体66,68が接続部材100,102に接続される領域への入口が得られる。
【0049】
上流側の支持体部材18では、加熱導体66,68と接続部材100,102との結合部を覆う領域内に、下流側の支持体部材20の2つの支持体アーム24,36をまとめた単一の支持体アーム24’が設けられており、単一の支持体アーム24’は、比較的大きな周方向領域にわたり延在する固定部分40’により、この領域内で周方向に連続する固定領域38をも提供する。この領域における完全な遮蔽を回避するために、支持体アーム24’には複数の、例えば寸法設定の異なる通流開口118が設けられている。
【0050】
上流側の支持体部材18のこの構成の理由は、
図14に示すように、この領域では両加熱導体66,68が、その周方向端部に各1つの第1の接続領域92もしくは96を提供する蛇行渦巻き部分82以外に蛇行渦巻きエリア70,80の蛇行渦巻き部分を一切有していない点にある。この領域を支持体アーム24’で覆うことにより、排ガスヒータ12に向かって流れるべき排ガスの大部分が、両加熱導体66,68との熱交換作用を生ぜしめること無しにこの開口領域を通流する、ということが防がれる。したがって、排ガスヒータ12の下流側では、排ガスヒータ12において加熱された排ガスの、全周にわたって分布するより均一な温度が達成される。
【0051】
図15および
図16には特に
図4との比較において、第2の実施形態の排ガスヒータ12の支持体部材18,20では、支持体アーム24’,26,28,30,32,34の固定部分40’,42,44,46,48,50の間に延在する固定縁部54,56,58,60,62,64が大幅に小さな半径方向幅を有している、つまり半径方向内側に向かって延びる幅がより小さくなっていることが示されている。このことは、支持体アーム24’,26,28,30,32,34の間の領域において、支持体部材18,20は、支持体部材18,20の間に収容された加熱導体66,68を、それらの半径方向外側の各蛇行渦巻き部分82において、半径方向内側に向かって覆うように係合しておらずひいては半径方向において実質的に被覆してはいない、ということにつながる。
図8では、固定部分40’,42,44,46,48,50の間の周方向領域において、加熱導体66,68にそれぞれ半径方向外側の導体領域120を提供する半径方向外側の蛇行渦巻き部分82は、排ガスの流入に対して遮蔽されていないことが明確に認められる。このことは、排ガスが環流可能な加熱導体66,68の範囲を拡大させひいては排ガスヒータ12を通流する排ガスとのより効率的な熱交換作用につながる。
【0052】
加熱導体66,68の半径方向外側の領域でも、より半径方向内側に位置する領域とほぼ同じ加熱特性を達成するために、半径方向外側の蛇行渦巻き部分82は支持体アーム24’,26,28,30,32,34により覆われていない領域に、支持体アーム24’,26,28,30,32,34により覆われた領域におけるよりも小さな幅ひいてはより小さな横断面を有している。特にこれらの覆われていない領域において、半径方向外側の蛇行渦巻き部分82は、例えばより半径方向内側に位置する蛇行渦巻き部分84,86,88,90、特に蛇行渦巻き部分84,86,88,90の、同様に支持体アーム24’,26,28,30,32,34もしくは中央領域22により覆われてはいない領域と同じ幅ひいては同じ横断面を有している。より小さな横断面ひいては高められた電気抵抗に基づき、半径方向外側の蛇行渦巻き部分82のこれらの領域にも、蛇行渦巻き部分82の、より大きな横断面を備えて形成された、支持体アーム24’,26,28,30,32,34により覆われた領域におけるよりも多くの熱が発生することになるため、これらの覆われた領域では、より少ない熱量に基づき熱滞留が回避される。例えば、支持体部材18,20により覆われていないもしくは実質的に覆われていない領域内の蛇行渦巻き部分の横断面は、
図1~
図7に示した実施形態の場合と同様に、約2mm×4mm~約4mm×2mmの範囲内に位置していてよい。
【0053】
加熱導体66,68の各半径方向外側の導体領域120を提供する半径方向外側の蛇行渦巻き部分82は、固定部分40’,42,44,46,48,50の間に位置する領域内では支持体部材18,20により覆われていないため、排ガスヒータ12のこの構成では、半径方向外側において加熱導体66,68を包囲するように係合する、例えばU字形の絶縁材料は存在しない。むしろこの領域では、加熱導体66,68は両支持体部材18,20の間で実質的に露出している。加熱導体66,68の電気的な絶縁および規定された位置決めは、実質的に、
図19に示す絶縁部材112を貫通する結合部材110の領域においてのみ実現されている。
【0054】
図15および
図16にはさらに、中央領域22も特に2つの支持体アーム28,32への移行部ではより塊状に形成されていることが示されており、これにより、この領域でも加熱導体66,68の賦形に適合して、蛇行渦巻き部分が延在していない場所での排ガスの通流を阻止することができるようになっている。ただし、流れの完全な滞留は回避するために、ここにも支持体部材18,20に複数の通流開口122が形成されている。
【0055】
これらの支持体部材18,20の1つの変化実施形態が
図17、
図18に示されている。これらの支持体部材18,20では、支持体アーム24,26,28,30,32,34はその半径方向外側の端部領域、つまり各固定部分40’,42,44,46,48,50において互いに結合されてはいない。つまり、固定部分40’,42,44,46,48,50の間に延在する固定縁部が存在しない。その結果、両加熱導体66,68の半径方向外側の導体領域120もしくは半径方向外側の蛇行渦巻き部分82のより大きな範囲が、支持体部材18,20により覆われていない。
【0056】
排ガスヒータ12を、加熱導体66,68を周方向領域において半径方向外側を覆わない固定領域38を備えた、第2の実施形態に関して上述した構成を有する支持体部材18,20を備えて構成する場合、この排ガスヒータ12は、別の数の加熱導体、例えば単一の加熱導体のみまたは3つ以上の加熱導体を備えて構成されていてよい。
【0057】
さらに、支持体アームの領域の固定部分と、これらの固定部分の少なくとも一部の間の固定縁部とを備えた、実質的に周方向に連続する構造体としての、または周方向において中断された断続的な固定部分を備えた構造体としての固定領域38の構成に関係無く、取り付け領域38を排ガス案内ケーシング10に固定するためには必ずしも固定領域38全体が利用されなくてもよい、ということに留意されたい。例えば個々の固定部分および/または固定縁部の領域内に排ガス案内ケーシングの内面に対する結合が生じないように、断続的な溶接ポイントを設定することができる。
【0058】
図20には、排ガス装置124の構成が原理図で示されており、この排ガス装置124では、排ガスヒータ12用の排ガス案内ケーシング10も提供し得るまたは有し得る管状の排ガス案内ケーシング126内に排ガス処理ユニット128が配置されている。この排ガス処理ユニット128には、例えば微粒子フィルタ、触媒、例えば酸化触媒、例えば微粒子フィルタに設けられたSCR触媒、リーンNOxトラップ(Lean-NOx-Trap LNT)、パッシブNOx吸着装置(PNA)、三元触媒、四元触媒等、または複数のこのような系領域が含まれていてよい。排ガス主流動方向Hにおいて排ガス処理ユニット128に対して上流側に、流れ方向に連続する両加熱導体66,68を備えた排ガスヒータ12が支持体構造16(原理的にのみ図示)に設けられている。排ガス主流動方向Hにおいて排ガスヒータ12に向かって流れるべき排ガスは、特に内燃機関の燃焼運転の開始時に加熱導体66,68に電圧が印加されることにより、排ガスヒータ12の領域において熱を吸収し、次いでこの熱を、下流側に続く排ガス処理ユニット128内にもたらすことができる。つまりこの排ガス処理ユニット128は、とりわけ燃焼運転の開始時に極めて迅速に、そこで想定され得る反応、例えば触媒反応の実施に必要とされる温度に加熱される。基本的に、このような排ガスヒータ12を、流れ方向に連続する2つの排ガス処理ユニット、例えば触媒の間に組み込むことも可能であり、この場合は特に、このように配置された排ガスヒータ12に対して上流側に配置された排ガス処理ユニットが、排ガスヒータ12から放出された放射熱により加熱される。
【0059】
最後に、上述した排ガスヒータでは、本発明の範囲内で様々な変更が行われてよい、という点に留意されたい。つまり例えば、3つ以上の加熱導体が流れ方向に連続して配置されていてもよく、この場合、例えばこれらの加熱導体のいくつかは互いに直列に接続されておりかつこれらの加熱導体のいくつかは互いに並列に接続されていてよい。上述した実施形態の場合と同様に、3つ以上の加熱導体を備えた排ガスヒータの構成においても、個々の加熱導体は、その幾何学形状、つまり導体領域の延在部に関してそれぞれ異なっている、ということが想定されていてよく、これにより、流れ方向に連続する2つの加熱導体の実質的に整合する位置決めを回避することができひいてはこれらの加熱導体と排ガスとの間の効率的な熱交換作用を保証することができる。また、個々の加熱導体の導体領域の延在部も、上述したもしくは図示した延在部と異なっていてよい。例えばこのことが排ガス案内ケーシング内の流れ特性に基づき必要とされている場所では、他の領域よりも高いもしくは大きな密度の導体領域もしくは渦巻き部分が設けられていてよい。また、流動条件に適合させるために、加熱導体の導体領域は、可変の幅および場合により可変の厚さをも有していてよく、これにより、電気抵抗と、電圧印加に際して局所的に生じる熱とを規定通りに調整することができると共に、特に局所的な過熱領域を回避することができる。