(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】反り修正装置
(51)【国際特許分類】
H01R 43/16 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
H01R43/16
(21)【出願番号】P 2022080455
(22)【出願日】2022-05-16
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】出雲 千博
(72)【発明者】
【氏名】加山 忍
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-200666(JP,A)
【文献】特開2002-035838(JP,A)
【文献】特公平04-030186(JP,B2)
【文献】特開平07-122697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長板状の端子の幅方向の反りを修正する反り修正装置であって、
前記端子が載置される載置台と、
前記載置台に載置された前記端子を押圧する押圧部材と、
前記端子への前記押圧部材の押圧を制御する制御部と、を備えて、
前記押圧部材は、
前記端子表面における幅方向の該端子の反り側の一部を押圧する突起部を有する、
反り修正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の反り修正装置において、
前記端子は、金属板から打ち抜き加工により形成されたものである、
反り修正装置。
【請求項3】
請求項1に記載の反り修正装置において、
前記突起部は、くさび形状である、
反り修正装置。
【請求項4】
請求項1に記載の反り修正装置において、
前記制御部は、
測定された反り量に応じて前記端子への前記押圧部材の押圧を制御する、
反り修正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の幅方向の反りを修正する反り修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装されるPCB(Printed Circuit Bord)コネクタ等の端子は、例えば、帯板状の金属板を順送プレス金型で打ち抜き加工することによって製造(形成)される。このように端子が製造される場合、金属板を順次打ち抜き加工していく段階で、形成された端子に反り等が生じることがある。これにより、製品(本例では、PCBコネクタ)に不具合が生じ得るおそれがある。なお、不具合としては、例えば、回路基板へのPCBコネクタの実装作業性の煩雑化等が考えられる。
【0003】
特許文献1では、特定の構造を有するダイ(ダイス)及びパンチによって端子を挟み込み、3点曲げの原理によって反り方向と逆方向に塑性加工を行って、端子の反りを矯正・修正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記端子の反りとは、端子の板厚方向の反りや撓みと、端子の幅方向の反りや撓み(いわゆる、なびき)と、がある。しかしながら、特許文献1の方法では、板厚方向の反りについては矯正・修正できるが、なびきについては矯正・修正できない。一方、なびきについても、製品に不具合が生じるおそれがあるため、矯正・修正されるべきである。
【0006】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、端子の幅方向の反り(いわゆる、なびき)を修正できる反り修正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る反り修正装置は、下記を特徴としている。
長板状の端子の幅方向の反りを修正する反り修正装置であって、
前記端子が載置される載置台と、
前記載置台に載置された前記端子を押圧する押圧部材と、
前記端子への前記押圧部材の押圧を制御する制御部と、を備えて、
前記押圧部材は、
前記端子表面における幅方向の該端子の反り側の一部を押圧する突起部を有する、
反り修正装置であること。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る反り修正装置について以下に述べる。
本構成の反り修正装置によれば、載置台に載置された端子は、端子表面における幅方向の反り側の一部を、押圧部材の突起部によって押圧される。換言すると、端子表面における幅方向の反り側の一部には、押圧部材の突起部形状の凹部が形成される。これにより、端子は、凹部を基点に長手方向に伸びて、反り側と逆側に反るように変形する。この結果、端子は、幅方向の反りや撓み(いわゆる、なびき)が打ち消されて長手方向に略真っすぐ延びることになる。つまり、端子のなびきが修正される。このように、本構成の反り修正装置は、端子のなびきを修正できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、帯板状の金属板を順送プレス金型で打ち抜き加工して形成された連鎖端子であって、端子のなびきを示す概略上面図である。
【
図2】
図2は、反り修正装置のダイスに端子を載置した態様を示す概略正面図である。
【
図3】
図3は、反り修正装置のパンチでダイスに載置された端子を押圧した態様を示す概略正面図である。
【
図4】
図4は、反り修正装置によってなびきが修正された端子を示す概略上面図である。
【
図6】
図6は、端子に形成された凹部の拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、なびき量が大きい場合におけるなびき修正方法の一例(角度調整)であって、
図5に相当する図である。
【
図8】
図8は、なびき量が大きい場合におけるなびき修正方法の一例(深さ調整)であって、
図6に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図2~
図3に示す本発明の実施形態に係る反り修正装置1について説明する。反り修正装置1は、
図1に示す端子11の幅方向の反りや撓み(以下、「なびき」ともいう)を修正することを目的としている。端子11は、帯板状の金属板10を順送プレス金型で打ち抜き加工することによって製造(形成)され、例えば、PCBコネクタ(図示省略)の端子として使用される。これら端子11群は、いわゆる連鎖端子である。そして、端子11は、順送プレス金型による打ち抜き加工工程の次段階にて反り修正装置1に搬送されて、反り修正装置1によってなびきが修正される。
【0012】
以下、説明の便宜上、
図1~
図8に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、端子11の長手方向に対応している。左右方向は、本発明の端子11の「幅方向」に対応している。上下方向は、パンチ3の昇降方向に対応している。また、左右方向の右側は、本発明の「反り側」に対応し、左右方向の左側は、本発明の「反り側と逆側」に対応している。なお、本発明の「反り側」をなびき側ともいう。
【0013】
まず、反り修正装置1の構成例について説明する。
図2~
図3に示すように、反り修正装置1は、長板状の端子11が載置されるダイス2と、ダイス2に載置された端子11を押圧するパンチ3と、端子11へのパンチ3の押圧を制御する制御部4と、を備えて構成される。なお、ダイス2は本発明の「載置台」に対応し、パンチ3は本発明の「押圧部材」に対応している。
【0014】
パンチ3は、モータ等の公知の駆動源5と接続されて、ダイス2に近付くように又は遠ざかるように変位(即ち、昇降)可能に構成される。また、パンチ3は、端子11上面における幅方向のなびき側の一部(以下、「押圧位置12」ともいう。)を押圧するくさび形状(
図5~
図6の端子11の凹部13を参照)の突起部3aを有している。つまり、パンチ3は、突起部3aにて端子11を押圧する際に降下し、端子11への押圧が完了すると上昇する、公知のパンチと同様の動作をする。
【0015】
なお、押圧位置12としては、端子11が保持・収容されるハウジング(図示省略)内に位置することになる箇所等が選択されることが好ましい。ただし、押圧位置12は、端子11及び製品(本例では、PCBコネクタ)に機能上の影響がなければ、何れの箇所が選択されてもよく、例えばハウジング外に位置する(即ち、外部に露出する)ことになる箇所が選択されてもよい。押圧位置12は、適宜最良の箇所が選択される。
【0016】
制御部4は、駆動源5に接続されて、パンチ3の昇降を制御する。なお、制御部4にAI機能を搭載することで、制御部4は、測定された端子11のなびき量に応じて端子11へのパンチ3の押圧を自動制御できる。
【0017】
次いで、端子11のなびき量について説明する。なびき量は、本発明の「反り量」に対応し、端子11のなびきの大きさを表すものである。なびき量は、端子11(即ち、金属板10)の材料特性、及び端子11の長さや幅等の寸法に影響するため、製造ロット毎に各端子11のなびき量がおおよそ等しい。このため、生産性等の観点から製造ロット毎に修正量が調整される。なお、各製造ロットにおいて端子11毎に修正量を調整してもよい。
【0018】
次いで、なびき量の測定方法について説明する。なびき量の測定方法としては、端子11の材料特性及び端子11の寸法から予め算出してもよいし、順送プレス金型又は反り修正装置1等に設けられたカメラによって検知してもよい。このように測定されたなびき量は、制御部4に入力される。つまり、制御部4は、入力(測定)されたなびき量に応じて端子11へのパンチ3の押圧を制御する。なお、なびき量の測定は、制御部4によって行われてもよい。
【0019】
次いで、反り修正装置1によって修正加工された端子11について説明する。
図4~
図6に示すように、パンチ3の突起部3aによって押圧された端子11には、突起部3aの形状に対応するくさび形状(略三角柱状)の凹部13が形成される。これにより、端子11は、凹部13を基点に伸びて(
図5の矢印参照)、なびき側と逆側に反るように変形する。この結果、端子11は、なびきが打ち消されて前後方向に略真っすぐ延びることになる。つまり、端子11は、凹部13が形成されることで、なびきが修正される。
【0020】
ところで、なびき量に応じて端子11の修正量も異なってくる。このため、なびき量に応じて修正量が調整される。例えば、突起部3aの先端部(具体的には、端子11の中心軸A1に最も近い角部)の角度を調整することで、端子11の変形量を調整できる(
図5及び
図7参照)。具体的には、なびき量が大きい場合には、上記角度を大きくすることで、端子11の変形量を大きくできる。一方、なびき量が小さい場合には、上記角度を小さくすればよい。つまり、上記角度が異なる突起部3aが設けられた複数種類のパンチ3を準備し、なびき量に応じて使用するパンチ3を変更することで修正量を調整できる。
【0021】
また、端子11の凹部13の深さを調整することで、端子11の変形量を調整できる(
図6及び
図8参照)。具体的には、なびき量が大きい場合には、凹部13を深く形成することで、端子11の変形量を大きくできる。一方、なびき量が小さい場合には、凹部13を浅く形成すればよい。つまり、高さが異なる突起部3aが設けられた複数種類のパンチ3を準備し、なびき量に応じて使用するパンチ3を変更、又は、端子11へのパンチ3の押圧力を変更することで修正量を調整できる。
【0022】
また、押圧位置12を前後方向に沿って変更することでも修正量を調整できる。具体的には、なびき量が大きい場合には、押圧位置12をなびき発生個所の基端(後端)近傍に設定し、なびき量が小さい場合には、押圧位置12をなびき発生個所の先端(前端)に設定すればよい。このように、なびき量に応じた修正量の調整は上記に限定されず、適宜最良の方法が選択される。
【0023】
<作用・効果>
本実施形態に係る反り修正装置1によれば、端子11はパンチ3の押圧によって突起部3a形状の凹部13が形成される。これにより、端子11は、凹部13を基点に前後方向に伸びて、なびき側と逆側に反るように変形する。この結果、端子11は、なびきが打ち消されて前後方向に略真っすぐ延びることになる。つまり、端子11のなびきが修正される。
【0024】
更に、本実施形態に係る反り修正装置1によれば、パンチ3の突起部3aがくさび形状であることで、端子11に形成される凹部13がくさび形状になる。これにより、端子11は、凹部13を基点に前後方向に伸びやすくなる。
【0025】
このように、本実施形態に係る反り修正装置1は、端子の幅方向の反り(いわゆる、なびき)を修正できる。
【0026】
更に、本実施形態に係る反り修正装置1によれば、測定されたなびき量に応じて端子11へのパンチ3の押圧を制御することで、より適正になびきを修正できる。
【0027】
なお、端子11のなびきが修正されることで、端子11製造後の製品(本例では、PCBコネクタ)の製造工程への影響を軽減するとともに、製品の品質向上を図れる。
【0028】
<他の形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0029】
上記実施形態では、「押圧部材」としてパンチが採用されたが、「押圧部材」としてダイスが採用されてもよい。このように、「押圧部材」は、特に限定されるものではない。
【0030】
上記実施形態では、端子11表面として端子11上面を例に説明したが、端子11表面は端子11下面であってもよい。つまり、押圧部材(パンチ3)によって端子11下面における幅方向のなびき側の一部が押圧されてもよい。
【0031】
ここで、上述した本発明に係る反り修正装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
長板状の端子の幅方向の反りを修正する反り修正装置であって、
前記端子(11)が載置される載置台(2)と、
前記載置台(2)に載置された前記端子(11)を押圧する押圧部材(3)と、
前記端子(11)への前記押圧部材(3)の押圧を制御する制御部(4)と、を備えて、
前記押圧部材(3)は、
前記端子表面における幅方向の該端子の反り側の一部を押圧する突起部(3a)を有する、
反り修正装置(1)。
[2]
上記[1]に記載の反り修正装置(1)において、
前記端子(11)は、金属板(10)から打ち抜き加工により形成されたものである、
反り修正装置(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の反り修正装置(1)において、
前記突起部(3a)は、くさび形状である、
反り修正装置(1)。
[4]
上記[1]から上記[3]の何れか一つに記載の反り修正装置(1)において、
前記制御部(4)は、
測定された反り量に応じて前記端子(11)への前記押圧部材(3)の押圧を制御する、
反り修正装置(1)。
【0032】
上記[1]及び[2]の構成の反り修正装置によれば、載置台に載置された端子は、端子表面における幅方向の反り側の一部を、押圧部材の突起部によって押圧される。換言すると、端子表面における幅方向の反り側の一部には、押圧部材の突起部形状の凹部が形成される。これにより、端子は、凹部を基点に長手方向に伸びて、反り側と逆側に反るように変形する。この結果、端子は、幅方向の反り(いわゆる、なびき)が打ち消されて長手方向に略真っすぐ延びることになる。つまり、端子のなびきが修正される。このように、本構成の反り修正装置は、端子の幅方向の反りを修正できる。
【0033】
上記[3]の構成の反り修正装置によれば、押圧部材の突起部がくさび形状であることで、端子に形成される凹部がくさび形状になる。これにより、端子は、凹部を基点に長手方向に伸びやすくなる。
【0034】
上記[4]の構成の反り修正装置によれば、測定された反り量(いわゆる、なびき量)に応じて端子への押圧部材の押圧を制御することで、より適正になびきを修正できる。
【符号の説明】
【0035】
1 反り修正装置
2 ダイス(載置台)
3 パンチ(押圧部材)
3a 突起部
4 制御部
5 駆動源
10 金属板
11 端子
12 押圧位置
13 凹部
A1 中心軸