(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】少なくとも1種のポリマーおよびリチウムイオン伝導性粒子を含む、リチウムイオン伝導性複合材料
(51)【国際特許分類】
H01M 10/056 20100101AFI20240409BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20240409BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M10/056
H01B1/08
H01B1/06 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124571
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2018560542の分割
【原出願日】2017-05-15
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】102016208532.8
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シューマッハー
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ドレヴケ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヨアヒム シュミット
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ トライス
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ロータース
(72)【発明者】
【氏名】マイケ シュナイダー
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192258(JP,A)
【文献】国際公開第2015/043889(WO,A1)
【文献】特開2015-191886(JP,A)
【文献】特表2016-504711(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102529247(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0255767(US,A1)
【文献】国際公開第2015/043917(WO,A1)
【文献】特開2010-113819(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104377385(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01M 50/40-50/497
H01B 1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマーと、前記ポリマー中に埋め込まれているリチウムイオン伝導性粒子とを含む、リチウムイオン伝導性複合材料であって、前記リチウムイオン伝導性複合材料は、固体リチウムイオン電池中に存在しており、前記ポリマーと前記粒子との間の、リチウムイオン伝導性についての界面抵抗が、前記粒子の表面改質に基づき低減されており、ひいては、リチウムイオン伝導性が、前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料の場合よりも少なくとも5%高く、前記粒子が、ガーネット型結晶相を有し、実験式
Li
7+x-yM
x
IIM
3-x
IIIM
2-y
IVM
y
VO
12
[前記式中、
M
IIは2価のカチオンであり、
M
IIIは3価のカチオンであり、
M
IVは4価のカチオンであり、
M
Vは5価のカチオンであり、ここで、
0≦x<3、且つ0≦y<2である]
を有する材料からなるか、もしくはそこから誘導される化合物からなるか、またはNaSIConと同形の結晶相を有し、実験式
Li
1+x-yM
5+
yM
3+
xM
4+
2-x-y(PO
4)
3
[前記式中、
xおよびyは0~1の範囲であり、且つ(1+x-y)>1であり、且つ
Mは+3価、+4価または+5価のカチオンである]
を有する材料からなるか、もしくはそこから誘導される化合物からなり、
前記表面改質が、Li
2
TiO
3
、Li
2
ZrO
3
、Li
2
SiO
3
、Li
3
PO
4
、Li
3
VO
4
、BaTiO
3
、Al
2
O
3
、SiO
2
、またはこれらの任意の組み合わせを用いた改質からなる群から選択されることを特徴とする、前記リチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、三官能性ウレタンで架橋されたポリエチレンオキシド、ポリ(ビス(メトキシ-エトキシ-エトキシド))-ホスファゼン(MEEP)、二官能性ウレタンで架橋されたトリオール型ポリエチレンオキシド、ポリ((オリゴ)オキシエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属メタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ塩化ビニリデン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリ(クロロトリフルオロ-エチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロ-エチレン)、ポリ(フッ化エチレン-プロピレン)、アクリレート系ポリマー、それらの縮合または架橋された組み合わせ、および/またはそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項
1に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリエチレンオキシドおよびポリエチレンオキシドの誘導体を含むことを特徴とする、請求項1
または2に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導性複合材料が、少なくとも1種のリチウムイオン伝導性化合物を含有することを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項5】
前記リチウムイオン伝導性複合材料が、前記リチウムイオン伝導性化合物として、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミダートを含有することを特徴とする、請求項
4に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項6】
前記粒子が、平均粒径0.02μm~100μmを有することを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項7】
前記粒子が、平均粒径0.2μm~2μmおよび/または5μm~70μmを有することを特徴とする、請求項
6に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項8】
前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が、以下の手段:
a) 粒子のポリマーへの共有結合、
b) 粒子のポリマーへのファンデルワールス結合、
c) 少なくとも1種の他の材料で前記粒子を被覆することによる、ポリマーと粒子との間のリチウムイオン移動の容易化
の少なくとも1つによって低減されていることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項9】
前記リチウムイオン伝導性化合物が、LiAsF
6、LiClO
4、LiSbF
6、LiPtCl
6、LiAlCl
4、LiGaCl
4、LiSCN、LiAlO
4、LiCF
3CF
2SO
3、Li(CF
3)SO
3(LiTf)、LiC(SO
2CF
3)
3、LiPF
6、LiPF
3(CF
3)
3(LiFAP)、LiPF
4(C
2O
4)(LiTFOB)、LiBF
4、LiB(C
2O
4)
2(LiBOB)、LiBF
2(C
2O
4)(LiDFOB)、LiB(C
2O
4)(C
3O
4)(LiMOB)、Li(C
2F
5BF
3)(LiFAB)、Li
2B
12F
12(LiDFB)、LiN(FSO
2)
2(LiFSI)、LiN(SO
2CF
3)
2(LiTFSI)、LiN(SO
2C
2F
5)
2(LiBETI)LiCIO
4、リチウムビス(オキサレート)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、LiSO
3CF
3、リチウム2-ペンテフルオロエトキシ-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート(LiSO
3C
3F
4OC
2F
5)および/またはこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項
4に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【請求項10】
前記リチウムイオン伝導性複合材料が、15体積%の粒子を充填されたポリマーを含むことを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項に記載のリチウムイオン伝導性複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリマーおよびリチウムイオン伝導性粒子を含む、リチウムイオン伝導性複合材料に関する。
【0002】
電動モビリティの分野において、高性能で信頼性があり且つ安全な解決手段のための主要な課題は、高いエネルギー密度および出力密度を有する電気化学的蓄電池アセンブリを提供することである。リチウムイオン電池は、一連の卓越した特性、例えば高いエネルギー密度および出力密度、長いサイクル寿命、並びに良好な環境適合性を兼ね備えることにより、上記の用途分野におけるエネルギー供給ユニットにされている。
【0003】
リチウムイオン電池は通常、以下の要素から構成される: カソード、アノード、電子絶縁性セパレータ、およびリチウムイオン伝導性電解質。放電過程の間に、リチウムイオンはアノードから電解質およびセパレータ膜を通ってカソードへ移動し、そこで挿入される。同時に電子は、消費物が組み込まれた外部回路を介して、カソードからアノードへと流れる。充電の間、前記のプロセスは反対の方向に行われる。
【0004】
殊にカソード側での電極材料への挿入速度の他に、電解質を通じたリチウムイオンのマイグレーション速度が重要な役割を果たし、且つ、電池システム全体の性能を決定的に定める。これは、殊にリチウム電池(リチウム金属電池)および固体リチウムイオン電池(全固体電池、ASSB)について該当し、通常、慣例的なリチウムイオン電池システムの場合のように、自然に比較的高いリチウムイオン伝導性を有する液体電解質が用いられるのではなく、高いエネルギー密度のシステムの際に必要な安全性を高めるために固体電解質が使用される。ここで、前記電解質は、ポリマーとリチウムイオン伝導性をもたらすリチウムイオン伝導性化合物(例えばいわゆる支持塩)とからなるポリマー電解質であってよい。
【0005】
Croce,F. et al., Nature 1998, 456; Li,Q. et al., Solid State lonics 159 (2003) 97~109、およびStephan,A.M. et al, Polymer 47 (2006) 5952~59646によれば、ポリマー電解質のリチウムイオン伝導性を、無機、殊にセラミックの充填材を組み込むことによって著しく高めることができる(リチウムイオン伝導性複合材料)。このために、充填材は必ずしもリチウムイオン伝導性である必要はない。その理由は、非伝導性の熱可塑性ポリマー中の結晶領域の形成が、無視できない程度まで抑制され、そのことにより、ドープされる支持塩からのイオンの移動度が著しく高められるからである。
【0006】
複合材料のリチウムイオン伝導性のさらなる上昇は、リチウムイオン非伝導性の充填材の代わりに固体リチウムイオン伝導体(固体イオン伝導体、SIC)を充填材としてポリマー電解質中に組み込む場合に達成できる。このことはまた、適した材料は周囲のポリマー電解質マトリックスに対して高められたリチウムイオン粒の伝導性を有することに起因する。
【0007】
これに対し、Choi,J.-H. et al., Journal of Power Sources 274 (2015) 458~463は、セラミック固体イオン伝導体としてのジルコン酸リチウムランタン(LLZO)が充填材としてポリマー電解質中に組み込まれているリチウムイオン伝導性複合材料を記載している。ここでは、充填材含有率が52.5%である場合に、リチウムイオン伝導性について最適値が達成されている。その値は、温度55℃で計測した場合、4.42×10-4S/cmであると測定された。前記の刊行物は、セラミックの固体イオン伝導体の粒子がポリマー中に組み込まれる前に、その表面で、ポリマーとセラミック材料との間の界面を通じたLi+電荷担体の通過を容易にしようとする特別な処理に供されたことは示唆していない。
【0008】
マトリックスについて、10-6~10-5mS/cmの桁数の範囲での慣例的な値が達成される場合、それらの値は、リチウムイオン伝導性材料としてガーネット型結晶相を有するイオン伝導体、例えばリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)についても、NaSIConと同形の結晶相を有するリン酸塩系イオン伝導体(リチウム超イオン伝導体、LISICON)、殊にLi1+x-yM5+
yM3+
xM4+
2-x-y(PO4)3(M:+3価、+4価または+5価のカチオン)についても、10-4~10-3mS/cmの桁数の範囲にわたる。
【0009】
無機のリチウムイオン伝導性材料を製造するために、以下の方法が記載された:
【0010】
Sakuda,A. et al., Journal of The Electrochemical Society 156 (2009) A27~A32は、基礎を成すセル設計において互いに直接接触する、固体電解質とカソード活物質としてのLiCoO2との間の界面抵抗を低下させるための、Li2S-P2S5系の硫化物含有固体イオン伝導体のLi2O-SiO2シェルでの被覆を記載している。
【0011】
Shimonishi,Y. et al., Solid State lonics 183 (2011) 48~53は、LLZOの焼結ペレットを、塩化リチウムの飽和溶液中、50℃で7日間処理し、そのことにより、材料の粒界の伝導性をわずかに上昇させることができる一方で、バルク材料中の伝導性は本質的に変わらないままであることを記載している。これは、インピーダンス分光法を実施して確認された。相応の試料を同様に1MのLiOH水溶液、脱イオン水、または改質剤としての0.1Mの塩酸中で処理する場合、対照的に、粒界の伝導性は低下する。
【0012】
電極活物質が液体電解質と接触すると、最初の充電過程の際、制御が困難な副反応によって、リチウムイオン伝導性の固体界面、いわゆる固体電解質界面(SEI)が活物質の粒子表面上で形成される。これは、電池システムのサイクリングに際し、Li+電荷担体が活物質中に入る、およびそこから再度出る輸送に関する十分な速度のために不可欠である。これは、既に言及されたとおり、比較的制御が困難な反応であるので、過去のアプローチにおいては、電極材料粒子の表面を目的に応じて改質することによって、より高い再現性での電荷の移動を確実にするか、もしくはこのために加速を引き起こすこともあった。
【0013】
無機被膜の他に、前記文献においては、機能化のために、高い電子伝導性およびリチウムイオン伝導性を有するポリマー電解質の使用についても報告されている。ここで重要な代表物として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)ポリマー(Yang,Y. et al., Nano 5 (2011) 9187)もしくはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン-co-ポリ(エチレングリコール)(PEDOT-co-PEG)-ブロックコポリマー(Ju,S.H. et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 6(2014)2545)、ポリイミド(Park,J.H. et al., J. Mater. Chem. 22 (2012) 12574)、p-トルエンスルホン酸でドープされたPEDOT(Murugan,A.V. et al., Electrochem. Commun. 10 (2008) 903)およびポリエチレンオキシド(PEO)(Lee,S.H. et al., Chem. Mater. 26 (2014) 2579)が挙げられている。
【0014】
独国特許出願公開第102014206040号明細書(DE102014206040A1)から、支持塩と機能化された粒子とを有する無機と有機とのハイブリッド材料を含有する複合電解質が公知である。
【0015】
国際公開第2015/043917号(WO2015/043917A1)から、少なくとも1種のポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含み、前記ポリマーがリチウムイオン伝導性であり、そのことによって前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されている、リチウムイオン伝導性複合材料が公知である。
【0016】
独国特許出願公開第102012022606号明細書(DE102012022606A1)には、a)粒子(結晶性無機材料)を含有するナノ構造化被膜と、b)ナノ構造化ハイブリッドポリマー被膜との2つの被膜を有する、被覆された電極が記載されている。被膜a)中の粒子は、好ましくは電気的に半導体性または伝導性である。前記被膜b)は、ポリマーおよびリチウム塩を含有でき、好ましくは10-7~1S/cmの範囲のリチウムイオン伝導率を有する。
【0017】
そこから出発して、本発明の課題は、従来技術に対して改善されたリチウムイオン伝導性を有するリチウムイオン伝導性複合材料を提供することである。前記複合材料は殊に、リチウムイオン電池内およびリチウム電池内のリチウムイオン伝導体として適しているべきである。
【0018】
請求項1によれば、前記の課題は、少なくとも1種のポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性複合材料であって、前記ポリマーと前記粒子との間の、リチウムイオン伝導性についての界面抵抗が、前記粒子の表面改質に基づき低減されており、ひいては、リチウムイオン伝導性が、前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料の場合よりも高い、前記リチウムイオン伝導性複合材料によって解決される。
【0019】
従って本質的に、前記ポリマーは前記粒子を取り囲んでいるか、もしくは前記粒子が前記ポリマー中に埋め込まれている。
【0020】
本発明による複合材料は、リチウムイオンについて改善された伝導性を有し、且つ、それ故に殊に、リチウムイオン電池もしくはリチウム電池内のリチウムイオン伝導体として適している。
【0021】
従って本質的に、以下の特徴を有するリチウムイオン伝導性複合材料が特許請求される:
1) 少なくとも1種のポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性材料であって、
2) 前記ポリマーと前記粒子との間の、リチウムイオン伝導性についての界面抵抗が、前記粒子の表面改質に基づき低減されており、ひいては、
3) リチウムイオン伝導性が、前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料の場合よりも高い。
【0022】
例えば、複合材料が請求項1の保護範囲に該当するかしないかを検証するためには、2つの複合材料を比較すればよい(複合材料Aと、比較可能な複合材料B):
1) 特徴1)および2)を有する複合材料A(ポリマーA、粒子A、粒子Aの表面改質に基づき低減されたポリマーAと粒子Aとの間の界面抵抗G)、
2) 特徴3)を有する比較可能な複合材料B(同じポリマーA、同じ粒子A、低減されていないポリマーAと粒子Aとの間の界面抵抗)、および
3) 複合材料Aと比較可能な複合材料Bとのリチウムイオン伝導率を測定(同じ測定条件、同じ測定温度、当業者にとって暗黙の前提条件)、
4) 両方の測定結果を比較し、複合材料Aのリチウムイオン伝導率が比較可能な複合材料Bのリチウムイオン伝導率よりも高ければ、その複合材料Aは保護の範囲に該当する。
【0023】
従って、比較可能な複合材料Bに比した、複合材料Aの粒子Aの表面改質に基づく界面抵抗の低減が殊に重要である。どのようにポリマーと粒子との間の界面抵抗を粒子の表面改質に基づき低減させ、ひいてはリチウムイオン伝導性を増加させるかは、殊に、従属請求項の対象であり、以下の記載で詳述される。
【0024】
前記の課題は好ましくは、少なくとも1種のポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含むリチウムイオン伝導性複合材料であって、前記ポリマーと前記粒子との間の、リチウムイオン伝導性についての界面抵抗が低減されており、ひいてはリチウムイオン伝導性が、前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されていない、殊に前記粒子の表面改質に基づき低減されていない、比較可能な複合材料の場合よりも少なくとも5%、特に好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%高い、前記リチウムイオン伝導性複合材料によって解決される。本発明による複合体のリチウムイオン伝導性と、比較可能な複合体のリチウムイオン伝導性との比較を可能にするために、両方の複合体について同じ測定方法および同じ測定パラメータ、例えばインピーダンス分光法が選択される。
【0025】
前記ポリマーは有利には、ポリエチレンオキシド(PEO)を含むか、またはポリエチレンオキシドからなるか、または、ポリエチレンオキシドの誘導体を含むか、またはその誘導体からなる。リチウム化合物はポリエチレンオキシド中でよく溶解し、且つリチウムイオンがよく溶媒和されるので、ポリエチレンオキシドが好ましい。
【0026】
前記複合材料は、1種以上のポリマーを含むことができる。
【0027】
有利には架橋または非架橋ポリマーが使用される。好ましい実施態様において、前記ポリマーはポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、三官能性ウレタンで架橋されたポリエチレンオキシド、ポリ(ビス(メトキシ-エトキシ-エトキシド))-ホスファゼン(MEEP)、二官能性ウレタンで架橋されたトリオール型ポリエチレンオキシド、ポリ((オリゴ)オキシエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属メタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ塩化ビニリデン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリ(クロロトリフルオロ-エチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロ-エチレン)、ポリ(フッ化エチレン-プロピレン)、アクリレート系ポリマー、それらの縮合または架橋された組み合わせ、および/またはそれらの物理的混合物を含む群から選択される。
【0028】
前記ポリマーはさらに、有利にはリチウムイオン伝導性化合物、殊にリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミダート(LiTFSI)をリチウムイオン伝導性化合物として含有する。前記ポリマーは、1種以上のかかる化合物を含むことができる。
【0029】
少なくとも1種のリチウムイオン伝導性化合物を含有するポリマーが、本願の意味におけるポリマー電解質である。
【0030】
適したリチウム塩は、例えば、LiAsF6、LiClO4、LiSbF6、LiPtCl6、LiAlCl4、LiGaCl4、LiSCN、LiAlO4、LiCF3CF2SO3、Li(CF3)SO3(LiTf)、LiC(SO2CF3)3、リン酸塩系リチウム塩、有利にはLiPF6、LiPF3(CF3)3(LiFAP)およびLiPF4(C2O4)(LiTFOB)、ホウ酸塩系リチウム塩、有利にはLiBF4、LiB(C2O4)2(LiBOB)、LiBF2(C2O4)(LiDFOB)、LiB(C2O4)(C3O4)(LiMOB)、Li(C2F5BF3)(LiFAB)およびLi2B12F12(LiDFB)、および/またはスルホニルイミドのリチウム塩、有利にはLiN(FSO2)2(LiFSI)、LiN(SO2CF3)2(LiTFSI)および/またはLiN(SO2C2F5)2(LiBETI)を含む群から選択される。
【0031】
好ましいリチウム塩は、高められた温度、例えば100℃または120℃で分解しないものである。好ましい実施形態において、リチウム塩のアニオンは、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、AsF6
-、C4F9SO3
-、ClO4
-、AlO2
-、AlCl4
-、(CxF2x+1SO3)-[前記式中、0≦x<1]、および/または(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)N-[前記式中0≦x<1且つ0≦y<1]を含む群から選択される。
【0032】
特に好ましくは、前記リチウム塩は、LiClO4、LiBF4、リチウムビス(オキサレート)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、LiSO3CF3、リチウム-2-ペンタフルオロエトキシ-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、LiN(FSO2)2および/またはLiN(SO2CF3)2を含む群から選択される。過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)、LiSO3CF3、(LiTf)、リチウム-2-ペンタフルオロエトキシ-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート(LiSO3C2F4OC2F5)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(FSO2)2、LiFSI)およびリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiN(SO2CF3)2、LiTFSI)も、有利なことに100℃を上回る温度で安定である。これらのリチウム塩を含む複合材料は、特に良好な伝導性を、良好な機械的安定性と共に示す。
【0033】
上記のポリマー電解質の他に、選択的に多価電解質も使用できる。ここで、それはLi+を対イオンとして有するポリマー、例えばポリスチレンスルホネート(PSS)、または、イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウムまたはグアニジウムに基づく重合されたイオン性液体であって、離散数の化学結合したイオン性基を有し且つその理由から本質的にリチウムイオン伝導性であるものである。
【0034】
有利には、前記粒子はリチウムイオン伝導性化合物から、殊に、ガーネット型結晶相を有し、実験式Li7+x-yMx
IIM3-x
IIIM2-y
IVMy
VO12[前記式中、MIIは2価のカチオンであり、MIIIは3価のカチオンであり、MIVは4価のカチオンであり、MVは5価のカチオンであり、ここで、有利には0≦x<3、より好ましくは0≦x≦2、0≦y<2、且つ特に好ましくは0≦y≦1である]を有する材料、またはそこから誘導される化合物、例えばジルコン酸リチウムランタン(LLZO)から、殊にAl、NbまたはTaでドープされた化合物から、またはNaSIConと同形の結晶相を有し、実験式Li1+x-yM5+
yM3+
xM4+
2-x-y(PO4)3[前記式中、xおよびyは0~1の範囲であり且つ(1+x-y)>1であり且つMは+3価、+4価または+5価のカチオンである]を有する材料(LISICON)またはそこから誘導される化合物からなる。
【0035】
前記複合材料は、1種の化学組成または改質を有する粒子を含んでもよいし、または種々の化学組成または改質を有する粒子を含んでもよい。
【0036】
LISICONとは、本発明の範囲では、NASICONと同形の、実験式(1)Li1+x-yMV
yMIII
xMIV
2-x-y(PO4)3のリチウム化合物、および/または実験式(2)Li7+x-yMII
xMIII
3-xMIV
2-yMV
yO12のガーネット型構造を有するリチウム化合物であるとも理解され、有利にはゲルマニウムを含有しない。ゲルマニウムはリチウム金属に対して不安定である。より良好に適する4価の金属はチタンである。チタンは入手しやすい原料であり、そのことにより、電解質、ひいては電池全体を経済的に製造できるようにする。
【0037】
リチウムイオン伝導性粒子の組み込みが、使用されるバルク材料のイオン伝導性に上記の良い影響を及ぼす一方で、それらの影響は、ポリマー電解質と粒子との間の界面で生じ且つ乗り越えなければならない抵抗によって、部分的に引き下げられるかまたは完全に相殺される。従って、粒子が複合材料の全体的な伝導性を高めるための能力を完全に活用することはできない。しかしまた、粒子の適した表面の機能化によって上記の欠点を(部分的に)直すことができる。相応に表面改質された材料の提供、並びにその製造方法も、本願に記載される発明の対象である。
【0038】
前記粒子は好ましくは、平均粒径0.02μm~100μmを有する。特に好ましくは、直径は0.2μm~2μmの範囲、または5μm~70μmの範囲である。0.2μm~2μmと、5μm~70μmとの2つの範囲からの直径も特に好ましい。
【0039】
特に好ましくは、前記粒子はほぼ球形を有する。
【0040】
前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗は、好ましくは以下の手段の少なくとも1つによって(前記粒子の以下の表面改質の1つに基づき)低減されている:
a) 粒子のポリマーへの共有結合、
b) 粒子のポリマーへのファンデルワールス結合、
c) 少なくとも1種の他の材料で前記粒子を被覆することによる、ポリマーと粒子との間のリチウムイオン移動の容易化。
【0041】
有利には、本発明による複合材料は、以下の用途のために使用される:
・ 殊にモバイル用途、例えば電子製品、例えばコンピュータ、スマートホン、ポータブル電子機器(ウエアラブル機器)、工具、例えば電動工具、または輸送機器、例えば車両、航空機、船舶、潜水艦、電動自転車のための、リチウムイオン電池またはリチウム電池用の固体電解質、
・ 殊に、定置用途、例えば非常用電源、夜間電源、送電網安定化等のための、リチウム電池用の固体電解質。
【0042】
前記複合材料のリチウムイオン伝導率を、以下のように測定した:
伝導率の測定を、Novocontrolの2電極測定(Novocontrol Technologies)を用い、周波数範囲107Hz~10-2Hzで実施した。電極の設計は、各々、白金またはニッケル製(ブロッキング測定)、またはリチウム製(非ブロッキング測定)の2つであった。直径13mmを有する電極を使用し、且つ厚さ0.1mmを有する電極を使用した。前記測定を、それぞれ選択された電極間で、60℃で複合材料をプレスすることによって実施した。測定の温度範囲は0℃(少なくとも室温)から70℃にわたり、その際、5Kもしくは10Kの間隔で測定した。それぞれの温度に達した後、試料を60分間、平衡化し、その後、周波数範囲107Hz~10-2Hzで伝導率を測定した。
【0043】
図1の左側には、リチウムアノード(2)とカソード(3)との間に配置されている本発明による複合材料(1)の模式的な構造が示されている。前記複合材料(1)は、少なくとも1種のポリマー(4)とリチウムイオン伝導性粒子(5)とを含み、前記ポリマー(4)と前記リチウムイオン伝導性粒子(5)との間の、リチウムイオン伝導性についての界面抵抗が低減されており、ひいては、リチウムイオン伝導性が、前記ポリマーと前記リチウムイオン伝導性粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料の場合よりも高い。
【0044】
図1の右側には、複合材料のリチウムイオン伝導性についての全体の抵抗(R
ges)が示されている。全体の抵抗の逆数は、部分的な抵抗の逆数の合計から構成され、ここで、R
1,PEはポリマーの抵抗であり、(R
2,PE+R
icon+R
interf.)はポリマーおよび粒子、およびポリマーと粒子との間の界面のイオン伝導の抵抗である。ポリマー(4)と粒子(5)との間のリチウムイオン伝導性についての界面抵抗が低減され、ひいてはリチウムイオン伝導性が、ポリマーと粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料よりも大きい場合、これは、リチウムイオンにとって好ましいパスである。両方の伝導パス1および2において、ポリマー電解質の抵抗の寄与分R
1,PEもしくはR
2,PEがある。この抵抗の寄与分は、パス2においては、リチウムイオンがポリマー電解質を通って移動しなければならない距離がより短いので、(距離の抵抗自体は同じであるとはいえ)明らかに低いはずである。リチウムイオンがポリマー電解質を通り、セラミックの固体イオン伝導体を通り、且つポリマー電解質とセラミックの固体イオン伝導体との間の界面を通るマイグレーションの際に乗り越えるべき抵抗の寄与分の合計が、リチウムイオンがパス1に沿ってポリマー電解質だけを通るマイグレーションの際に生じる抵抗の寄与分よりも小さい場合、全体としてパス2が好ましい。
【0045】
有利には、ポリマーもしくはポリマー電解質自体は非イオン伝導性ポリマーからなり、通常、ここでは、適した鎖長を有し、リチウム化合物、リチウム支持塩(例えばLiTFSI)が施与されているポリエチレンオキシドが使用される。
【0046】
例えば、本発明の複合材料を固体リチウムイオン電池に組み込んだ後、本発明の複合材料の内部で、リチウムイオンの輸送は原理的に3つの互いに並列に接続された経路を通じて行われる:
1. ポリマーもしくはポリマー電解質マトリックス自体だけを通る、
2. ポリマーもしくはポリマー電解質マトリックスを通じた短い区間も通り、粒子も通り抜ける組み合わせ、
3. ポリマーもしくはポリマー電解質マトリックスを通じた短い区間も通り、粒子とポリマーもしくはポリマー電解質マトリックスとの間の界面にも沿う組み合わせ。
【0047】
本発明の範囲において使用される無機材料は通常、ポリマーもしくはポリマー電解質よりも2~3桁大きいリチウムイオン伝導率を有するので、優先的に経路2が採用されることが予測される。これに対し、経路3に沿うのは、全体的に高すぎる抵抗が生じるので、以下ではもはや考慮しない。ただしこれは、界面抵抗(ポリマーもしくはポリマー電解質と粒子との間の界面で移動する抵抗)が十分に低い場合だけは該当する。これを粒子表面の適切な改質によって確実にすることも、本願内で記載する発明の課題である。
【0048】
詳細な説明
少なくとも1種のポリマーとリチウムイオン伝導性粒子とを含む、本発明によるリチウムイオン伝導性複合材料であって、前記ポリマーと前記粒子との間のリチウムイオン伝導性についての界面抵抗が低減されている前記複合材料は、例えば以下のように製造された。
【0049】
全ての例に際し、そのリチウムイオン伝導性は、前記ポリマーと前記粒子との間の界面抵抗が低減されていない比較可能な複合材料の場合よりも高い。
【0050】
粒子とそれを囲むポリマー電解質マトリックスとの間で、リチウムイオン伝導に関して形成される界面抵抗が最小値をとるように、粒子の表面を種々の方式で改質することができる。
【0051】
ポリマーとイオン伝導性材料との間の界面抵抗は、以下の手段の少なくとも1つによって低減された:
a) 粒子のポリマーへの共有結合、
b) 粒子のポリマーへのファンデルワールス結合、
c) 少なくとも1種の他の材料で前記粒子を被覆することによる、ポリマーと粒子との間のリチウムイオン移動の容易化。
【0052】
a) 粒子のポリマーへの共有結合
このために、粒子を第1の段階でその表面上で、例えば、適した側鎖を有するシランとの化学反応を介して改質する。第2の段階において、ここでもまた同様に、適した化学反応の実施により、側鎖へのポリマーのカップリングを行う。
【0053】
例: 通常、ポリマー電解質内でポリマーとして使用されるポリエチレンオキシド(PEO)の場合、粒子の表面改質のために、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(GLYEO)を用いたシラン化が適しており、ここで、粒子に対する改質剤の共有結合が形成される。その粒子をポリマー電解質マトリックス中に埋め込んだ後、引き続き、PEOの鎖端に存在するOH基を、シランの側鎖中に存在するエポキシ基と熱的に反応させる。全体として、粒子とポリマー電解質との間の共有結合性ブリッジが形成され、これが、粒子からポリマー電解質中へのリチウムイオンの移動を著しく容易化する。このようにして、表面でいかなる改質もされていない粒子の場合と比較して、相応の界面での明らかに低減された移動抵抗が形成される。
【0054】
b) 粒子のポリマーへのファンデルワールス結合
このために、粒子をその表面で、化学反応によってまたは単純に付着させることによって、双極子またはファンデルワールス相互作用に基づき、適した薬剤を用いて改質する。その際、前記薬剤は、粒子がポリマー電解質中に組み込まれた後に粒子表面でポリマーの化学結合がファンデルワールス相互作用および/または双極子相互作用に基づき形成されるように、ポリマー電解質のポリマーとの十分な化学的適合性を有さねばならない。
【0055】
例: 通常、ポリマー電解質内でポリマーとして使用されるポリエチレンオキシド(PEO)の場合、粒子の表面改質のために、ポリエチレングリコール(PEG)単位からの側鎖を有するシランを用いたシラン化が適している。その際、粒子に対する改質剤の共有結合が形成される。選択的に、短鎖の液体ポリエチレングリコール(例えばPEG400またはPEG200)中で粉砕を行ってもよい。ここで、粉砕の際に生じる、PEG分子からのOH末端基と粒子表面の化学吸着水との間のエステル形成反応によって、PEG分子と粒子との間の共有結合が形成される。第3の変法においては、適した鎖長のPEG分子が、例えば粒子をPEGの溶液と共に適した溶剤(例えば水、アルコール等)中で撹拌して接触させることにより、双極子およびファンデルワールス相互作用を介して粒子表面上に付着される。その粒子がポリマー電解質マトリックス中に埋め込まれた後、引き続き、改質された粒子表面に存在するPEG鎖もしくはその一部が、PEOの鎖と密に接触し、絡み合って、双極子およびファンデルワールス相互作用を形成する。従って、全体として、粒子とポリマー電解質との間の上記相互作用に基づく化学的ブリッジが形成され、これが、粒子からポリマー電解質中へのリチウムイオンの移動を著しく容易化する。このようにして、表面でいかなる改質もされていない粒子の場合と比較して、相応の界面で明らかに低減された移動抵抗が形成される。
【0056】
c) 少なくとも1種の他の材料で粒子を被覆することによる、ポリマーと粒子との間のリチウムイオン移動の容易化
この場合、コアとして機能する粒子上へのシェルとして施与される他の材料を、2つの異なる機能性に関して区別できる:
1. 特定のリチウムイオン伝導性を有する他の材料:
好ましい粒子に対して限定されてはいるものの、同様に特定のリチウムイオン伝導性を有する、一連のさらなるリチウムイオン伝導性材料(例えばLi2TiO3、Li2ZrO3、Li2SiO3、Li3PO4、Li3VO4等)がある。それらはしかし、ポリマー電解質からのポリマーに対する明らかにより良好な化学的適合性を特徴とし、ひいては界面を通じたLi+電荷担体の容易な通過をみちびくことができる。場合により、中程度のリチウムイオン伝導性を有する層を挿入することにより、一方の側の非常に良好なリチウムイオン伝導性粒子から、他方の側の明らかに伝導性が悪いポリマー電解質への電荷移動が容易になる。中程度のリチウムイオン伝導性を有する他の材料製の中間層を導入することにより、このように粒子とポリマー電解質との間の電位勾配における傾きが生じ、電気化学的電位に関して、いわば「Li+イオンの滑り台」が生じ、そこにLi+電荷担体が供される。ただし、この解決策の正確なメカニズムはまだ完全に明らかではない。
【0057】
2. それ自体はリチウムイオン伝導性を有さない他の材料:
通常、これらは、共有結合または顕著なファンデルワールス相互作用を介してポリマーに結合しておらず、且つ同時に単独ではリチウムイオン伝導性を有さない、リチウム不含の他の材料である。ここで、それは例えば以下のリチウム不含の材料であってよい:
・ 側鎖が、ポリマーに対する比較的わずかではあるがまだ十分な化学適合性を有し、従って前記ポリマーに顕著にはカップリングしないシラン、
・ マトリックスポリマーに対する比較的わずかではあるがまだ十分な化学適合性を有し、従って、これに顕著にはカップリングしないポリマー、
・ 高度に分岐した構造を有するポリマー、
・ セラミック材料、例えばBaTiO3、Al2O3、SiO2等。
【0058】
上記の材料は種々の方式で、複合体からポリマー電解質中へのLi+電荷担体の移動を容易化できる:
【0059】
例えば、施与されたリチウム不含の他の材料は、直接的な接触の際に制御不能に速いかまたは長時間にわたって生じ、且つLi+電荷担体の移動についての抵抗の上昇をもたらす、望ましくない化学反応に対するバリアとして作用できる。
【0060】
粒子上に施与されるリチウム不含の他の材料が、電気化学的なバリア現象の形成を減少もしくは完全に回避することも考えられる。そのようなバリア現象は、例えば界面近傍領域でのポリマーの結晶化であることがあり、それは、この領域におけるリチウムイオン輸送の速度を明らかに低下させる。
【0061】
さらに、複合材料とポリマー電解質との界面の場合のように、伝導性の異なる材料の界面では、電荷雲が形成される現象が知られており、その電荷雲は、伝導を担う電荷担体、本願の場合はリチウムイオンが、一方の材料から他の材料に移動することを明らかに阻害する。リチウム不含の他の材料を粒子上に施与することにより、ポリマー電解質マトリックス中にそれらが導入された後に、2種類の材料の間に距離ができ、これが上記の電荷雲の形成を減少するか、または完全に抑制する。これによって、イオン伝導性相の間で支配的である分極が低下し、Li+電荷担体の移動が明らかに容易化される。この場合、他の材料製のシェルはそれ自体ではリチウムイオン伝導性を有さないので、前記シェルが厚過ぎないように留意すべきであり、そうでなければ、前記シェルはリチウムイオン伝導性について大き過ぎる抵抗として作用する。
【0062】
そのように機能化された粒子を、充填材として、ポリマー電解質中もしくは多価電解質中に組み込んで、充電式リチウムイオン電池、特に固体リチウムイオン電池中の電解質として使用できる。その際、一方では、セパレータとしての使用が考えられ、つまり、電極間に導入し、電極を望ましくない短絡から保護し、且つそのことによりシステム全体の機能性を確実にする。このために、相応の本発明による複合材料を、一方または両方の電極上の層として施与して、または自立式の膜としてのいずれかで、固体電解質として電池に組み込むことができる。他方で、電極材料と配合することが考えられ、つまり、この場合、複合材料は、電池が放電または充電されているかに依存して、関連する電荷担体(リチウムイオンおよび電子)が電極材料へ、および伝導性電極へ、向かうもしくは離れる輸送をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明による複合材料の模式的な構造および複合材料のリチウムイオン伝導性についての全体の抵抗を示す図である。
【実施例】
【0064】
GLYEOでのシラン化:
10.0gのリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末(d50=0.4μm、比表面積: 2.5m2/g)を、超音波処理しながら75mlのイソプロパノール中で分散させる。その粒子懸濁液に、撹拌しながら12mlのNH4OHの25%水溶液を添加する。引き続き、0.9mlの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランと混合し、その反応混合物を24時間、撹拌させておく。反応の終了後に、固形分を遠心分離で取り出し、再度、イソプロパノールで収集し、洗浄し、再度遠心分離する。最後に、湿った残留物を、乾燥キャビネット中で5時間、65℃で乾燥させる。
【0065】
PEG 400中での粉砕:
70.0gのリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末(d50=0.4μm、比表面積: 2.5m2/g)を、撹拌しながら140gのポリエチレングリコール400(PEG 400)と50mlのイソプロパノールとの混合物に添加する。その粒子懸濁液を、1030gのZrO2粉砕用ビーズ(d=0.7~0.9mm)と混合し、そのバッチを1000rpmで、Netzsch PE 075S磨砕機内で処理する。引き続き、その粒子懸濁液を、その都度50mlのイソプロパノールを用いて、粗いふるいにおける洗浄を3回通して、前記粉砕用ビーズから分離し、遠心分離で取り出して、乾燥キャビネット中で5時間、65℃で乾燥させる。
【0066】
リチウムイオン伝導性Li2TiO3シェルでの被覆
18.0gのリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末(d50=1.0μm、比表面積: 1.0m2/g)を、超音波処理しながら633mlのエタノール中で分散させる。その粒子懸濁液に、35mlのNH4OHの25%水溶液を添加する(溶液A)。これと並行して、3.4mlのチタン(IV)-n-ブトキシドを100mlのエタノールと混合し、1.0mlのアセチルアセトンを慎重に溶液に滴下する(溶液B)。さらなるバッチでは、2.0gの酢酸リチウム二水和物を暖めながら100mlのエタノール中で溶解させる(溶液C)。引き続き、まず溶液Bと溶液Cとを混合し、この混合物を次に粒子懸濁液(溶液A)に添加し、そのように得られた反応混合物を24時間、さらに撹拌させておく。反応終了後、固形物を5分間、3000rpmの遠心分離で取り出し、最後に、その湿った残留物を乾燥キャビネット内で5時間、65℃で乾燥させ、引き続き、改めて2時間、750℃(加熱速度10℃/分)でか焼する。
【0067】
リチウム不含のBaTiO3シェルでの被覆
18.0gのリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粉末(d50=1.0μm、比表面積: 1.0m2/g)を、超音波処理しながら633mlのエタノール中で分散させる。その粒子懸濁液に、35mlのNH4OHの25%水溶液を添加する(溶液A)。これと並行して、3.4mlのチタン-n-ブトキシドを100mlのエタノールと混合し、1.0mlのアセチルアセトンを慎重に溶液に滴下する(溶液B)。さらなるバッチでは、3.4gの過塩素酸バリウムを100mlのエタノール中で溶解させる(溶液C)。引き続き、まず溶液Bと溶液Cとを混合し、この混合物を次に粒子懸濁液(溶液A)に添加し、そのように得られた反応混合物を24時間、さらに撹拌させておく。反応の終了後に、固形分を遠心分離で取り出し、再度、エタノールで収集し、洗浄し、再度遠心分離する。最後に、湿った残留物を、乾燥キャビネット内で5時間、65℃で乾燥させ、引き続き、改めて4時間、500℃でか焼する。
【0068】
複合材料が15体積%の粒子を充填されたポリマーを含む、本発明による複合材料からのリチウムイオン伝導性膜の製造
1.73gのLiTFSIを、246mlのアセトニトリル中で溶解させる。引き続き、その溶液を5.0gのポリエチレンオキシド(PEO)(M=600000g/mol)と混合し(この段階は、グローブボックスで実施)、ポリマーが完全に溶解されるまで(終夜)撹拌する。その後、2.57gの表面改質されたLLZO粉末を、予め製造されたポリマー電解質の溶液に分散させる。そのように得られた混合物30mlを、10×10cm2の底面積を有するテフロンの型に注ぎ、且つ溶剤をデシケータ内で穏やかな窒素流下で蒸発させて除去する。約120μm厚の複合材料の膜が残り、それをテフロンの型から慎重に取り外すことができる。最終的な溶剤残留物を除去するために、改めて5時間、65℃で、真空乾燥キャビネット内で乾燥させる。引き続きその試料を、インピーダンス分光法を用いて、試料中に存在するリチウムイオン伝導の抵抗に関して測定し、表面改質されていない同量のLLZO粉末を用いて相応に製造された相応の試料と比較する。本発明による複合体のリチウムイオン伝導率は著しくより高く、従ってその複合体はリチウムイオン電池内のリチウムイオン伝導体として特に適している。
【0069】
インピーダンス分光法を用いた、ポリマー(ポリマー電解質)と粒子材料との間の界面抵抗の測定
ポリマーと粒子材料自体との間の純粋な界面抵抗を測定するために、層構造の形の特定の試料構造の使用が可能である。従って、原理的に、相応のポリマーと相応の粒子とを含む本発明による複合材料の品質についての推論を引き出し、さらにまた複合材料が保護の範囲に該当するかどうかを調べることが可能である。この層構造を
図2に示す(Au電極(6)、LLZO円板(粒子材料)(7)、ポリマー(電解質)(8))。ここで、底面の両側に薄いポリマー層が施与された丸い円板としての、粒子からなる材料が存在する。ポリマーと粒子材料との間の界面抵抗を低減するために、ポリマーの施与前に粒子材料の底面は表面改質(例えば機能化もしくは被覆)されている。
【0070】
例えば、グローブボックス内(MBraun、H2O+O2<0.1ppm)で界面抵抗を測定するために、ポリマー電解質層(PEO+LiTFSI、Li:O=1:18、Sigma Aldrich、分子量PEO=4×105g/mol)を、固体イオン伝導体粒子材料からなる円板の両側上に押しつけた。より良好に接触させるために、この試料を気密状に包装し、オーブン内で60℃で1時間、1.2kgの荷重を用いてプレスした。その試料をグローブボックス内でNovocontrolのBDS1308試料セルに組み込んだ。これは、ZG4-Impedance Interface(Novocontrol)を介してAlpha-A-High Performance Analyzer Mainframe(Novocontrol)と接続されている。温度を一定(±0.1K)に保ち、Ptセンサを用いて制御した。ソフトウェアのWinDETAを用いて、10-1Hz~2×107Hzの周波数範囲内でACインピーダンス測定を実施した。電圧の振幅は20mVである。評価のために、ソフトウェアのZView(Scribner Associates, Inc.)を使用した。まず、対称型のAu-LLZO-AuおよびAu-PEM-Auの試料(PEM=ポリマー電解質膜)を、周波数特性および伝導率を特定するために測定した。引き続き、上述のAu-PEM固体イオン伝導体-PEM-Au参照-およびAu-PEM-FS-固体イオン伝導体-FS-PEM-Au(FS=機能化層)のサンドイッチシステムの実際の評価を行った。得られるナイキスト線図内の半円を、RQ要素を用いてフィッティングした。金電極の理想的ではないブロッキングについても、定位相要素(CPE)をフィッティングさせた。第1の半円は本質的に、ポリマー層のバルクの伝導率に相当する(固体イオン伝導体粒子材料の伝導率は通常、ポリマーの伝導率よりもほぼ2桁高いので、その寄与分はポリマーの半円によって完全に重畳される)。従って、第2の半円が、所望の界面の寄与分を表す。その容量を、Brugの式を用いて計算し、Irvine、SinclairおよびWestのスキームに従って分類できる。固体イオン伝導体材料としてLLZOを使用する場合、Au-PEM-固体イオン伝導体-PEM-Au参照の系(ここで、ディスク状の固体イオン伝導体材料の円板は、塊状のLLZO溶融ブロックから製造され且つ被覆されないままであった)について、固体イオン伝導体とポリマー電極との間の移動の抵抗が7×105オームcm2であると測定された。
【0071】
ポリマーと、機能化もしくは被覆された固体イオン伝導体粒子材料との間の界面抵抗の測定を、相応の粉末状固体イオン伝導体材料から焼結することによって製造された円板状の成形体で行った。このために、特別な実施態様において、LLZOを固体イオン伝導体粒子材料としてまず一軸プレスしてペレットにして、その際、得られたプリフォームを焼結して所望の密度の円板試料へと圧密化した。
【0072】
例えば、ペレットを製造するために、0.5gのLLZO粉末を、水圧式の手動プレスを用いて30kNで2分間プレスした。その後、ペレット(10)は直径10mmおよび厚さ1.9mm~2.2mmを有する。円板状の成形体を製造するために、引き続き、3つのペレット(「犠牲」ペレット(11)、表面改質用のペレット、「犠牲」ペレット(11))を、
図3の模式図に示すように、3重に酸化亜鉛フリース(12)上に積み重ねた。その試料を、酸化アルミニウムるつぼ(9)で覆って、オーブン内の中央でSiO
2支持体(13)上に載置した。オーブンを25℃から10K/分で900℃まで加熱した。900℃の温度を1時間保持し、引き続き、オーブンを2K/分で1150℃に加熱した。オーブンを1時間、1150℃で温度を保持したあと、オーブンの特性線で700℃に冷却した。700℃でその試料を取り出し、デシケータ内で冷却した。引き続き、中央の試料を被覆のためにさらに使用した。この焼結体の底面を、引き続き、その表面で、界面抵抗の低減のために改質もしくは被覆した。引き続き、固体イオン伝導体材料製の機能化された円板を、上述の層状の測定用構造に組み込み、ポリマーと機能化された固体イオン伝導体粒子材料との間の界面での移動抵抗を、上記の機能化されていないもしくは被覆されていない参照用の系の測定手順に従って相応に測定した。
【0073】
機能化された、もしくは被覆された円板状の、固体イオン伝導体粒子材料(ここではLLZO)からなる円板試料の製造を、以下のように行った:
【0074】
GLYEOでのシラン化:
5gの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(GLYEO)を10mlのイソプロパノールに入れる。その混合物に、まず2.17mlの水、および引き続き0.07mlの30%の酢酸を添加する。この濃縮物を約2分間撹拌する。引き続き、エタノールを注いで500mlにする。
【0075】
被覆用溶液を、円板状の、LLZOからなる円板の両方の底面に噴霧し、空気中、室温で乾燥させた。引き続き、相応に被覆された円板を、上述の層状の測定用構造であるAu-PEM-FS-固体イオン伝導体-FS-PEM-Au(FS=機能化層)に組み込んだ。ポリマー電解質のPEO鎖からの末端OH基を、GLYEOで機能化されたLLZOの円板試料の表面に共有結合させるために、これらを、相応してそこに存在するエポキシド基と100℃で1時間、温度処理して反応させた。室温に冷却した後、ポリマーと機能化された固体イオン伝導体粒子材料との間の界面での界面抵抗を、上述の測定プロセスに従って測定した。ここで、測定値は6×103オームcm2であり、従って、未処理の参照試料の値よりも約2桁低い。
【0076】
PEG 200を用いた機能化:
5gのPEG 200を500mlのイソプロパノールに添加する。被覆用溶液を、円板状の、LLZOからなる円板の両方の底面に噴霧し、空気中、室温で乾燥させた。引き続き、相応に被覆されたディスクを、上述のとおり、サンドイッチ状の測定用構造であるAu-PEM-FS-固体イオン伝導体-FS-PEM-Au(FS=機能化層)に組み込んだ。引き続きポリマー電解質と機能化された固体イオン伝導体材料との間の界面での界面抵抗を、上述の測定プロセスに従って測定した。ここで、測定値は3×103オームcm2であり、従って、未処理の参照試料の値よりも2桁超低い。
【0077】
Li2ZrO3層での被覆:
1000mlの丸型ネック付きフラスコ内で、63g(0.15mol)の78%のZr(OiPr)4のイソプロパノール中の溶液に、等モル量の、つまり15.0gのアセチルアセトンを、滴下漏斗を用いて、1秒あたり約1滴の滴下速度で、定常的に撹拌しながら添加する。約1時間、室温で撹拌した後、その反応混合物に8.1g(0.45mol)の水を添加して加水分解させる。約15分の撹拌時間後、30.6g(0.30mol)の酢酸リチウム二水和物を添加する。最終的な被覆用ゾルを得るために、その濃縮物を最後に365gのエタノールと19.2g(0.129mol)のトリエタノールアミンとの混合物で希釈する。溶液中のLi2ZrO3(M=183.09g/mol)の固形分含有率は約50g/lもしくは5質量%である。その被覆用溶液を、円板状の、LLZOからなる円板の両方の底面に噴霧し、それを乾燥させた後、650℃で30分間ベークした。厚さ約100nmを有するLi2ZrO3層が形成された。引き続き、相応に被覆された円板を上述のとおり、サンドイッチ状の測定用構造であるAu-PEM-FS-固体イオン伝導体-FS-PEM-Au(FS=機能化層)に組み込み、且つ、ポリマーと機能化された固体イオン伝導体粒子材料との間の界面での界面抵抗を、上述の測定プロセスに従って測定した。ここで、測定値は7×104オームcm2であり、従って、被覆されていない参照試料の値よりも約1桁低い。
【0078】
BaTiO3層での被覆:
1000mlの丸型ネック付きフラスコ内で、42.6g(0.15mol)のTi(OiPr)4に、等モル量の、つまり15.0gのアセチルアセトンを、滴下漏斗を用いて、1秒あたり約1滴の滴下速度で、定常的に撹拌しながら添加する。約1時間、室温で撹拌した後、その反応混合物に8.1g(0.45mol)の水を添加して加水分解させる。約15分の撹拌時間後、50.4g(0.15mol)の過塩素酸バリウムを添加する。最終的な被覆用ゾルを得るために、その濃縮物を最後に385gのエタノールで希釈する。溶液中のBaTiO3(M=276.55g/mol)の固形分含有率は約75g/lもしくは7.5質量%である。その被覆用溶液を、丸い、LLZOからなる円板の両方の底面に噴霧し、それを乾燥させた後、650℃で30分間ベークした。厚さ約100nmを有するBaTiO3層が形成された。引き続き、相応に被覆された円板を上述のとおり、層状の測定用構造であるAu-PEM-FS-固体イオン伝導体-FS-PEM-Au(FS=機能化層)に組み込み、且つ、ポリマーと機能化された固体イオン伝導体粒子材料との間の界面での界面抵抗を、上述の測定プロセスに従って測定した。ここで、測定値は2×104オームcm2であり、従って、被覆されていない参照試料の値よりも約1桁低い。