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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電子機器および電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20240409BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022143422
(22)【出願日】2022-09-09
(65)【公開番号】P2024039113
(43)【公開日】2024-03-22
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】中村 安仁
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0262766(US,A1)
【文献】国際公開第2019/180859(WO,A1)
【文献】特開2020-155521(JP,A)
【文献】特開2011-198810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0118925(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0393118(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0350231(US,A1)
【文献】中国実用新案第211907417(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104124218(CN,A)
【文献】特開2010-219260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34 -23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に実装された半導体チップと、
前記半導体チップの上面と向かい合うように、前記基板に取り付けられたヒートシンクと、
前記半導体チップの上面および前記ヒートシンクの下面に接触する液体金属と、
前記基板の表面に対して垂直方向で視た際に前記液体金属を取り囲むように設けられ、前記基板の上面と前記ヒートシンクの下面との間をシールするシール部材と、
前記ヒートシンクに設けられ、前記基板と前記シール部材と前記半導体チップと前記ヒートシンクとで囲まれた第1の内部空間と前記ヒートシンクの外部とを連通する連通部と、
備えた電子機器。
【請求項2】
前記ヒートシンクが、
前記シール部材を収容する凹部を有し、
前記連通部は、前記凹部と前記ヒートシンクの外部とを連通する、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項3】
前記連通部が、
前記第1の内部空間と前記ヒートシンクの外面とをつなぐ少なくとも1つの貫通孔を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項4】
前記貫通孔の直径が0.01mmから3mmの範囲である、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記ヒートシンクが、
前記基板に対して締結部材で固定されている、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記半導体チップと前記基板との間隔を第1の距離に保つためのスペーサを有する、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記締結部材を前記ヒートシンクの上方に付勢する付勢部材を有する、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記基板の裏面側に設けられ、前記基板を補強する補強板を有する、
ことを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項9】
基板の上に実装された半導体チップの上面に液体金属を供給し、
前記液体金属を取り囲むようにシール部材を取り付け、
前記液体金属に下面が接触するようにヒートシンクを取り付け、
前記ヒートシンクは、前記シール部材と前記半導体チップとの間の内部空間と前記ヒートシンクの外部とを連通する連通部を備え、
前記基板に対して前記ヒートシンクを固定する、
ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセッサや画像処理IC(Integrated Circuit)などの半導体チップは、動作に伴って熱を発生する。この熱を放散するためにヒートシンクが用いられる。ヒートシンクは、例えば、半導体チップの上面に取り付けられる。この際、熱伝導をよくするために、半導体チップとヒートシンクとの間に熱伝導性物質を介在させることがある。熱伝導性物質は、TIM(Thermal Interface Material)とも呼ばれる。
【0003】
近年、高性能化にともなって半導体チップの発熱量が増大している。このため、TIMとして熱伝導率の高い液体金属を用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、半導体チップとヒートシンク(放熱器)との間に熱伝導材料を設けた電子機器等の発明が開示されている。特許文献1の電子機器では、基板上の導体要素が絶縁部により覆われている。また、絶縁部上に設けられたシール部材により、熱伝導材料が取り囲まれている。そして、熱伝導材料は、導電性を有する。また、熱伝導材料は、少なくとも半導体チップが動作して発熱した時に流動性を有する。この熱伝導材料として、液体金属を用いる構成が特許文献1に例示されている。液体金属とは、常温で液体の金属である。この構成では、シール部材によって、熱伝導材料の広がる範囲が制限される。ここで、液体金属が触れてはいけない部品や回路は、シール部材の外側に配置されている。あるいは、部品や回路が絶縁部の下に配置されている。なお、上記の問題とは、例えばショートである。このような構成により、液体金属(熱伝導材料)が広がることで生じるショート等の問題の発生が抑制される。
【0004】
また、特許文献2にも関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/162417号
【文献】国際公開第2005/024940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、絶縁部とヒートシンクとシール部材とで囲まれた領域が密閉空間となっている。このため、半導体チップの温度が上昇すると、密閉空間内の気体の圧力が上昇する。この圧力が、ヒートシンクをシール部材から引き離す方向の力として、半導体装置に作用する。このため、ヒートシンクとシール部材と絶縁部で構成されるシール構造が損傷を受ける恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、温度上昇時にシール構造が損傷を受けにくい電子機器等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の電子機器は、基板上に実装された半導体チップと、前記半導体チップの上面と向かい合うように、前記基板に取り付けられたヒートシンクと、前記半導体チップの上面および前記ヒートシンクの下面に接触する液体金属と、前記基板の表面に対して垂直方向で視た際に前記液体金属を取り囲むように設けられ、前記基板の上面と前記ヒートシンクの下面との間をシールするシール部材と、前記ヒートシンクに設けられ、前記シール部材と前記半導体チップと前記ヒートシンクとで囲まれた第1の内部空間と前記ヒートシンクの外部とを連通する連通部と、を備える。
【0009】
また、本発明の電子機器の製造方法は、基板上に実装された半導体チップの上面に液体金属を供給し、前記液体金属を取り囲むようにシール部材を取り付け、前記液体金属に下面が接触するようにヒートシンクを取り付け、前記ヒートシンクは、前記シール部材と前記半導体チップとの間の内部空間と前記ヒートシンクの外部とを連通する連通部を備え、前記基板に対して前記ヒートシンクを固定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、温度上昇時にシール構造が損傷を受けにくい電子機器等を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態の電子機器を示す断面模式図である。
図2】第1の実施形態の電子機器を示す平面模式図である。
図3】第1の実施形態の電子機器の製造方法の第1の状態を示す断面模式図である。
図4】第1の実施形態の電子機器の製造方法の第2の状態を示す断面模式図である。
図5】第1の実施形態の電子機器の製造方法の第3の状態を示す断面模式図である。
図6】第1の実施形態の電子機器の製造方法の第4の状態を示す断面模式図である。
図7】第1の実施形態の電子機器の変形例を示す断面模式図である。
図8】第2の実施形態の電子機器を示す断面模式図である。
図9】第2の実施形態の電子機器の変形例1を示す断面模式図である。
図10】第2の実施形態の電子機器の変形例2を示す断面模式図である。
図11】第2の実施形態の電子機器の変形例3を示す断面模式図である。
図12】第2の実施形態の電子機器の変形例4を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の電子機器100を示す断面模式図である。また、図2は、第1の実施形態の電子機器100を示す平面模式図である。電子機器100は、基板1と、半導体チップ2と、ヒートシンク3と、液体金属4と、シール部材5と、を有する。
【0014】
基板1は、例えば、絶縁性の基体の表面に配線が形成されたものである。基体の材料は、例えば、セラミック、ガラスエポキシ、ポリイミドなどの耐熱性プラスチックなどである。
【0015】
基板1の上には、半導体チップ2が実装される。半導体チップ2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)である。半導体チップ2は、例えば、バンプ2aによって、基板1の配線と接続される。バンプ2aは、例えば、はんだボールであっても良い。
【0016】
半導体チップ2の上面と向かい合うように、ヒートシンク3が基板1に取り付けられる。ヒートシンク3は、例えば、熱伝導率の高い金属によって形成される。具体的には、ヒートシンク3の材料として、例えば、銅、アルミニウムなどが用いられる。ただし、液体金属4がアルミニウムと反応する場合は、例えば、銅が用いられる。ヒートシンク3は、基板1に固定される。例えば、接着剤を用いて、ヒートシンク3が基板1に固定される。
【0017】
半導体チップ2の上面およびヒートシンク3の下面に接触するように液体金属4が設けられる。液体金属は、常温(例えば25℃)で液体の金属である。液体金属の材料としては、例えば、ガリウム、インジウム、スズなどを含む合金が用いられる。液体金属4によって、半導体チップ2からヒートシンク3への熱伝導がサポートされる。
【0018】
液体金属4を取り囲むようにシール部材5が設けられる。より具体的には、基板1の表面に対して垂直方向で視た際に、半導体チップ2および液体金属4を取り囲むようにシール部材5が設けられている。基板1の上面とヒートシンク3の下面との間をシール部材5がシールする。シール部材5の形は、例えば、半導体チップ2の平面形状に応じて決定される。例えば、半導体チップ2が矩形であれば、シール部材5が矩形のリング状とされる。なお、シール部材5は、ヒートシンク3が基板1に取り付けられた際に、圧縮される。これにより、基板1の上面と半導体チップ2の下面の接合面に隙間が生じることを抑制することができる。
【0019】
ヒートシンク3の内部には、基板1とシール部材5と半導体チップ2とヒートシンク3とで囲まれた第1の内部空間7が形成される。ヒートシンク3には、この第1の内部空間7とヒートシンク3の外部とを連通する連通部6が設けられる。連通部6は少なくとも1つ設けられる。図2の例では、連通部6が2つ設けられている。連通部6が複数あれば、一部が閉塞されても、残りの連通部6を介して気体の流通が可能である。つまり、連通部6を複数設けることによって、冗長性が増す。
【0020】
連通部6は、例えば、ヒートシンク3の上面から下面に至る貫通孔である。連通部6によって、第1の内部空間7とヒートシンク3の外面との間の気体の流通が可能になる。連通部6が貫通孔の場合、その直径は、例えば0.01mmから3mmの範囲に設定される。外部からの異物の侵入を防ぐためには、直径が小さい方が良い。しかしながら、小さ過ぎると貫通孔が塞がりやすい。このため、直径を0.01mm以上にする。また、直径が2mm~3mmであれば、仮に液体金属4が貫通孔に入り込んでも、液体金属4が貫通孔から抜けやすい。
【0021】
電子機器100では、半導体チップ2の温度上昇によって第1の内部空間7の中の気体の温度も上昇する。上記の構成では、連通部6を介して気体が流通できるため、第1の内部空間7の気圧の上昇を抑制される。このため、シール部材5を用いたシール構造が損傷を受けにくい。一方、特許文献1のように、内部空間が密閉されていると、圧力の上昇によって、シール部材やシール部材の接着部などに応力が生じる。このため、シール構造が損傷を受けやすい。
【0022】
次に、電子機器100の製造方法について説明する。図3は、第1の実施形態の電子機器100の製造方法の第1の状態を示す断面模式図である。図3のような、半導体チップ2を実装した基板1が出発点となる。
【0023】
図4は、第1の実施形態の電子機器100の製造方法の第2の状態を示す断面模式図である。図4に示すように、半導体チップ2の上面に液体金属4が塗布される。この際、余分な液体金属が半導体チップ2の上面の外に出て行かないように、所定の厚さ以下に塗布する。
【0024】
図5は、第1の実施形態の電子機器100の製造方法の第3の状態を示す断面模式図である。図5に示すように、ヒートシンク3の凹部3aにシール部材5が取り付けられる。なお、また図示はしていないが、基板1の上面に、配線や絶縁層が形成されていても良い。
【0025】
図6は、第1の実施形態の電子機器100の製造方法の第4の状態を示す断面模式図である。図6に示すように、液体金属4にヒートシンク3の下面が接するように、ヒートシンク3が基板1に取り付けられる。そして、図示はしていないが、接着層等により、ヒートシンク3が基板1に固定される。この際、ヒートシンク3と基板1とがシール部材5を挟むことで、両者の間がシールされる。また、半導体チップ2と、基板1とシール部材5とヒートシンク3で囲まれた第1の内部空間7が形成される。ヒートシンク3に設けられた連通部6によって、この第1の内部空間7とヒートシンク3の外面との間の気体の流通が可能になる。
【0026】
(変形例)
図7は、第1の実施形態の電子機器100の変形例を示す断面模式図である。この変形例では、基板1と半導体チップ2を接続するバンプ2aの隙間が、絶縁性のアンダーフィル8によって埋められている。温度上昇によって液体金属4の流動性が高まると、液体金属4が半導体チップ2の上面から基板1上にこぼれることがあり得る。アンダーフィル8があると、このような場合に、液体金属4によるバンプ2a間の短絡を防止できる。
【0027】
以上、本実施形態の電子機器100等について説明した。
【0028】
本実施形態に電子機器100は、基板1上に実装された半導体チップ2と、ヒートシンク3と、液体金属4と、シール部材5と、を備える。半導体チップ2の上面と向かい合うように、ヒートシンク3が基板1に取り付けられる。半導体チップ2の上面およびヒートシンク3の下面に接触するように、液体金属4が設けられる。また、基板の表面に対して垂直方向で視た際に液体金属4を取り囲むように、シール部材5が設けられる。シール部材5が、基板1の上面とヒートシンク3の下面との間をシールする。ヒートシンク3には、連通部6が設けられる。ヒートシンク3の内部には、シール部材5と半導体チップ2とヒートシンク3とで囲まれた第1の内部空間7が形成される。連通部6は、この第1の内部空間7とヒートシンク3の外部とを連通する。
【0029】
上記の構成では、連通部6によって、第1の内部空間7がヒートシンク3の外部と連通されている。このため、半導体チップ2の温度が上昇し、第1の内部空間7の気温が上昇した際に、第1の内部空間7内の気圧の上昇が抑制される。このため、内部空間が密閉された構成に比べて、シール部材を含むシール構造が損傷しにくい。
【0030】
また一態様によれば、電子機器100のヒートシンク3が、シール部材5を収容する凹部3aを有する。そして、連通部6は、凹部3aとヒートシンク3の外部とを連通する。
【0031】
凹部3aによって、液体金属4が膨張した際に、体積の増加分が退避するスペースが確保される。
【0032】
また一態様によれば、電子機器100において、連通部6が、第1の内部空間7とヒートシンク3の外面とをつなぐ少なくとも1つの貫通孔を備える。貫通孔によって、気体の流通が可能になる。また、貫通孔を複数設けることで、一部の貫通孔が閉塞しても残りの貫通孔によって、第1の内部空間7とヒートシンク3の外部とが連通される。
【0033】
また一態様によれば、電子機器100において、貫通孔の直径が0.01mmから3mmの範囲である。
【0034】
貫通孔の直径を上記の範囲であれば、貫通孔から異物が侵入しにくい。また、直径が2mm~3mmであれば、貫通孔に液体金属4が入り込むことがあっても、液体金属4が貫通孔から抜けやすい。これは、毛細管現象による液面上昇が小さいためである。
【0035】
また、本実施形態の電子機器100の製造方法では、基板1上に実装された半導体チップ2の上面に液体金属4を供給される。また、液体金属4を取り囲むようにシール部材5が取り付けられる。また、液体金属4に下面が接触するようにヒートシンク3が取り付けられる。また、ヒートシンク3が、第1の内部空間7とヒートシンク3の外部とを連通する連通部6を備える。ここで、第1の内部空間7は、シール部材5と半導体チップ2との間の空間である。また、基板1に対してヒートシンク3が固定される。
【0036】
このような製造方法によって、半導体チップ2からヒートシンク3への熱伝導が良く、シール構造が損傷を受けにくい電子機器100が容易に製造される。
【0037】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の電子機器100では、シール部材5が、基板1に直接、接触して、ヒートシンク3と基板1との間がシールされていた。しかしながら、半導体チップ2を介して、ヒートシンク3と基板1との間がシールされる構成も可能である。本実施形態では、このような構成について説明する。
【0038】
図8は、第2の実施形態の電子機器101を示す断面模式図である。第1の実施形態の電子機器100と同様に、電子機器100は、基板1と、半導体チップ2と、ヒートシンク3と、液体金属4と、シール部材5と、を有する。違いは、シール部材5が、半導体チップ2の上面に取り付けられていることである。
【0039】
基板1の上には、半導体チップ2が実装されている。半導体チップ2の上面と向かい合うように、ヒートシンク3が基板1に取り付けられる。
【0040】
半導体チップ2の上面には液体金属4が塗布されている。ここで、例えば、半導体チップ2の端部から第1の距離だけ内側が、液体金属4の塗布範囲とされる。
【0041】
半導体チップ2の上面において、前記基板の表面に対して垂直方向で視た際に液体金属4を取り囲むようにシール部材5が設けられる。より具体的には、基板1の表面に対して垂直方向で視た際に、液体金属4を取り囲むように半導体チップ2の上面に、シール部材5が設けられている。ここで、例えば、液体金属4の端部とシール部材5との間に第2の距離の隙間ができるようにする。ただし、この隙間が無くても、電子機器101の動作に特に問題はない。
【0042】
ヒートシンク3は、シール部材5を収容するための凹部3aを備えている。凹部3aは、液体金属4が膨張した際に、体積の増加分が退避する第2の内部空間7aを提供する。そのために、液体金属4が熱膨張した際に増加する体積以上となるように、第2の内部空間7aの容積が設定される。半導体チップ2の動作温度が最高で200℃程度であれば、例えば、第2の内部空間7aの容積として、液体金属4の体積の10~100%が設定される。
【0043】
そして、ヒートシンク3の下面が液体金属4の上面に接するように、ヒートシンク3が基板1に取り付けられる。そして、ヒートシンク3が基板1に固定されている。図8の例では、接着層9によってヒートシンク3が基板1に固定されている。
【0044】
上記の構成では、半導体チップ2の上面とヒートシンク3の下面との間をシール部材5がシールする。シール部材5の形は、例えば、半導体チップ2の平面形状に応じて決定される。例えば、半導体チップ2が矩形であれば、シール部材5が矩形のリング状とされる。
【0045】
ヒートシンク3の凹部3aに対応するヒートシンク3の内部には、シール部材5と半導体チップ2とヒートシンク3とで囲まれた第2の内部空間7aが形成される。ヒートシンク3には、この第2の内部空間7aとヒートシンク3の外部とを連通する連通部6が設けられる。連通部6は少なくとも1つ設けられる。図8の例では、連通部6が2つ設けられている。
【0046】
上記の構成では、半導体チップ2の上面にシール部材5が取り付けられ、シール部材5が液体金属4を取り囲んでいる。このため、温度上昇等により液体金属4が半導体チップ2の端部に向かって広がっても、液体金属4が基板1上に流れ出すことがない。基板1上に回路があると、液体金属4が流れ込むことで、短絡等の不具合が生じることがある。しかし、図8の構成では、液体金属4がシール部材5よりも外には広がらない。このため、電子機器101では、このような不具合が生じない。
【0047】
(変形例1)
図9は、第2の実施形態の電子機器101の変形例1を示す断面模式図である。変形例1では、締結部材10を用いて、ヒートシンク3が基板1に固定されている。締結部材10の締め付け力を調整することで、シール部材5の圧縮量が調整される。
【0048】
(変形例2)
図10は、第2の実施形態の電子機器101の変形例2を示す断面模式図である。変形例2の電子機器101では、半導体チップ2の下面の端部にスペーサ11が設けられている。スペーサ11は、変形しにくい材料、例えばセラミックやガラスなどによって形成される。スペーサ11があることによって、スペーサ11の厚みに対応する距離に半導体チップ2と基板1との間隔が保たれる。このため、締結部材10を締め付けた際の、バンプ2aの変形が防止される。
【0049】
(変形例3)
図11は、第2の実施形態の電子機器101の変形例3を示す断面模式図である。変形例3では、締結部材10のヒートシンク3の上面側に、付勢部材12が取り付けられている。付勢部材12があることによって、締結部材10の過度の締め付けが防止される。また、これにより、シール部材5の圧縮量の調整が容易になる。
【0050】
(変形例4)
図12は、第2の実施形態の電子機器101の変形例4を示す断面模式図である。変形例4の電子機器101では、基板1の下面に補強板13が取り付けられている。補強板13は、締結部材10によって基板1に固定される。例えば、基板1がセラミックの場合、ネジ穴を形成することが容易ではない。この際、例えば金属板など加工が容易な材料を用いることで、ネジ穴の形成が容易になる。また、補強板13によって、電子機器100の機械的な強度が高められる。
【0051】
以上、本実施形態の電子機器101等について説明した。
【0052】
本実施形態の電子機器101は、基板1上に実装された半導体チップ2と、ヒートシンク3と、液体金属4と、シール部材5と、を備える。半導体チップ2の上面と向かい合うように、ヒートシンク3が基板1に取り付けられる。半導体チップ2の上面およびヒートシンク3の下面に接触するように、液体金属4が設けられる。そして、シール部材5が、半導体チップ2の上面に設けられる。シール部材5は、半導体チップ2を介して、基板1の上面とヒートシンク3の下面との間をシールする。また、基板1の表面に対して垂直方向で視た際に液体金属4を取り囲むように、シール部材5が設けられる。ヒートシンク3には、連通部6が設けられる。ヒートシンク3の内部には、シール部材5と半導体チップ2とヒートシンク3とで囲まれた第2の内部空間7aが形成される。連通部6は、この第2の内部空間7aとヒートシンク3の外部とを連通する。
【0053】
上記の構成では、連通部6によって、第2の内部空間7aがヒートシンク3の外部と連通されている。このため、半導体チップ2の温度が上昇し、第2の内部空間7aの気温が上昇した際に、第2の内部空間7a内の気圧の上昇が抑制される。このため、内部空間が密閉された構成に比べて、シール部材5を含むシール構造が損傷しにくい。また、半導体チップ2の上面にシール部材5が取り付けられ、シール部材5が液体金属4を取り囲んでいる。このため、温度上昇等により液体金属4が半導体チップ2の端部に向かって広がっても、液体金属4が基板1上に流れ出すことがない。
【0054】
また一態様によれば、電子機器101において、ヒートシンク3が、基板1に対して締結部材10で固定されている。
【0055】
この構成では、締結部材10の締め付け力を調整することで、シール部材5の圧縮量が調整される。
【0056】
また一態様によれば、電子機器101が、半導体チップ2と基板1との間隔を第1の距離に保つためのスペーサ11を有する。
【0057】
スペーサ11によって、締結によるバンプ2aの破損が防止される。
【0058】
また一態様によれば、電子機器101が、締結部材10をヒートシンク3の上方に付勢する付勢部材12を有する。
【0059】
付勢部材12の付勢によって、締結部材10の締結力の調整が容易になる。
【0060】
また一態様によれば、電子機器101が、基板1の裏面側に設けられ、基板1を補強する補強板13を有する。
【0061】
補強板13によって、基板1の強度が補強される。
【0062】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 半導体チップ
2a バンプ
3 ヒートシンク
4 液体金属
5 シール部材
6 連通部
7 第1の内部空間
8 アンダーフィル
9 接着層
10 締結部材
11 スペーサ
12 付勢部材
13 補強板
100、101 電子機器
図1
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図12