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特許7469425液圧式のアクチュエータ装置、および導電性の媒体で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】液圧式のアクチュエータ装置、および導電性の媒体で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/06 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
F15B21/06
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022163399
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2020529810の分割
【原出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2022188246
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102017214173.5
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クライン,リコ アルフ
(72)【発明者】
【氏名】コクーレック,ヴァクラフ
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,トマス
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-264560(JP,A)
【文献】特開平09-142744(JP,A)
【文献】特開平09-151903(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006041863(DE,A1)
【文献】米国特許第6146103(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/06
F02K 44/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の媒体(20)で満たされた液圧システムのための液圧式のアクチュエータ装置(10)において:
前記液圧式のアクチュエータ装置(10)が、前記液圧システムに接しておよび/または前記液圧システム内に配置可能または配置されており、
少なくとも1つのアクチュエータモジュール(12)を有しており、該アクチュエータモジュール(12)はそれぞれ、前記導電性の媒体(20)の少なくとも部分量が、前記それぞれのアクチュエータモジュール(12)によって生ぜしめられた電流および/または前記それぞれのアクチュエータモジュール(12)によって生ぜしめられた磁界(B)との相互作用に基づいて、前記液圧システムの少なくとも1つの部分体積(14)内に加速可能であって、それによって、前記液圧システムの少なくとも1つの前記部分体積(14)内で圧力上昇を生ぜしめることができ、
前記液圧式のアクチュエータ装置(10)は、複数の前記アクチュエータモジュール(12)を有し、
複数の前記アクチュエータモジュール(12)は、
前記導電性の媒体(20)で満たされた媒体管路(22)に沿って配置されており、
複数の前記アクチュエータモジュール(12)によって前記媒体管路(22)内に生ぜしめられる電流は前記導電性の媒体の流れ方向に対して同じ方向であり、および/または複数の前記アクチュエータモジュール(12)によって前記媒体管路(22)内に生ぜしめられる磁界(B)は、前記導電性の媒体の流れ方向に対して同じ方向であり、前記導電性の媒体(20)の部分量を同じ方向に加速させ
前記媒体管路(22)は、蛇行状またはら旋状に延設されている、
液圧式のアクチュエータ装置(10)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記アクチュエータモジュール(12)が、少なくとも1つの電極装置(18)および少なくとも1つの磁石装置(24)を有していて、少なくとも1つの前記電極装置(18)によって生ぜしめられた電流および少なくとも1つの前記磁石装置(24)によって生ぜしめられた磁界(B)を用いて、前記導電性の媒体(20)の少なくとも前記部分量が圧力上昇に対抗して作用する反力に抗して前記液圧システムの少なくとも1つの前記部分体積(14)内に加速され得るように、ローレンツ力(FL)が前記導電性の媒体(20)の少なくとも前記部分量に作用可能である、請求項1記載の液圧式のアクチュエータ装置(10)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記アクチュエータモジュール(12)が少なくとも1つのコイル装置(26)を有しており、少なくとも1つの前記コイル装置(26)によって生ぜしめられた時間的に変化する磁界(B)を用いて、前記導電性の媒体(20)の少なくとも前記部分量が、圧力上昇に対抗して作用する反力に抗して前記液圧システムの少なくとも1つの前記部分体積(14)内に加速され得るように、前記導電性の媒体(20)の少なくとも前記部分量に誘導力(FI)が作用可能である、請求項1または2記載の液圧式のアクチュエータ装置(10)。
【請求項4】
前記液圧式のアクチュエータ装置(10)が複数のアクチュエータモジュール(12)を有していて、前記液圧システムに接しておよび/または前記液圧システム内に配置された前記液圧式のアクチュエータ装置(10)の前記アクチュエータモジュール(12)の少なくともいくつかかが、前記液圧システムの互いに平行に延在する少なくとも2つの媒体管路(22)に配置されるように、前記液圧システムに接しておよび/または前記液圧システム内に配置可能または配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の液圧式のアクチュエータ装置(10)。
【請求項5】
液圧システムにおいて、
請求項1から4までのいずれか1項記載の少なくとも1つの液圧式のアクチュエータ装置(10)と、
前記液圧システム内に満たされた導電性の媒体(20)と、
を有する液圧システム。
【請求項6】
前記液圧システムが、前記導電性の媒体(20)として、導電性の液体、導電性のガス、イオン液体、少なくとも1つの電解質、少なくとも1つのプラズマ、少なくとも1つの液体金属、ガリウム、リチウム、ナトリウム、水銀、液体金属合金、ガリウム-インジウム-錫合金および/またはナトリウム-カリウム合金で満たされている、
請求項5記載の液圧システム。
【請求項7】
前記液圧システムが、液圧式の作業機械システム、ロボット、液圧式の建設機械システム、液圧式の農業機械システム、液圧式のリフティングシステム、液圧式のエレベータシステム、液圧式せり上げ台システム、液圧式のブレーキシステム、液圧式の伝動装置システム、液圧式のパワーステアリングシステム、液圧式の走行機構調整システム、液圧式のカブリオレ幌システム、液圧式の掘削機システム、液圧式のトラクタシステム、液圧式のフォークリフトシステム、液圧式のクレーンシステム、液圧式の林業機械システム、液圧式の重荷重搬送システム、液圧式の翼折り畳みシステム、液圧式のプレスシステム、液圧式の裁断システム、液圧式の折り曲げ機械システム、液圧式の研削機システム、液圧式の切削システム、液圧式のアクチュエータシステム、液圧式の圧延機システム、液圧支柱および/または液圧式の消防隊救命キットである、請求項5または6記載の液圧システム。
【請求項8】
導電性の媒体(20)で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積(14)内で圧力上昇を生ぜしめるための方法において、
前記導電性の媒体(20)の少なくとも部分量が少なくとも1つの電流および/または少なくとも1つの磁界(B)との相互作用に基づいて前記液圧システムの少なくとも1つの前記部分体積(14)内に加速され、それによって前記液圧システムの少なくとも1つの前記部分体積(14)内で圧力上昇が生ぜしめられるように、少なくとも1つの電流および/または少なくとも1つの磁界(B)を発生させるステップ(S1)を有しており、
圧式のアクチュエータ装置(10)は、複数のアクチュエータモジュール(12)を有し、
前記複数のアクチュエータモジュール(12)は、前記導電性の媒体(20)で満たされた媒体管路(22)に沿って配置されており、
前記媒体管路(22)は、蛇行状またはら旋状に延設されており、
前記ステップ(S1)では、
前記アクチュエータモジュール(12)は、
複数の前記アクチュエータモジュール(12)によって前記媒体管路(22)内に生ぜしめられる電流は前記導電性の媒体の流れ方向に対して同じ方向であり、および/または複数の前記アクチュエータモジュール(12)によって前記媒体管路(22)内に生ぜしめられる磁界(B)は、前記導電性の媒体の流れ方向に対して同じ方向であり、
前記媒体管路(22)内の前記導電性の媒体(20)の部分量を同じ方向に加速させる
導電性の媒体(20)で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積(14)内で圧力上昇を生ぜしめるための方法。
【請求項9】
前記複数の電流および/または前記複数の磁界(B)を、前記液圧システムの互いに平行に延在する少なくとも2つの媒体管路(22)内で、部分量としての前記導電性の媒体(20)の個別体積(Vpipe)が、少なくとも2つの前記媒体管路(22)が開口する収集体積内の少なくとも2つの前記媒体管路(22)内に全体積(Vtotal)として集合されるように、発生させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
導電性の媒体(20)で満たされた液圧システムのための液圧式のアクチュエータ装置(10)において、
前記液圧式のアクチュエータ装置(10)が、前記液圧システムに接しておよび/または前記液圧システム内に配置可能または配置されており、
少なくとも1つのアクチュエータモジュール(12)を有しており、該アクチュエータモジュール(12)はそれぞれ、前記導電性の媒体(20)の少なくとも部分量が、前記それぞれのアクチュエータモジュール(12)によって生ぜしめられた電流および/または前記それぞれのアクチュエータモジュール(12)によって生ぜしめられた磁界(B)との相互作用に基づいて、前記液圧システムの少なくとも1つの部分体積(14、34)内に加速可能であって、それによって、前記導電性の媒体(20)の少なくとも前記部分量が圧力上昇に対抗して作用する反力に抗して前記液圧システムの少なくとも1つの前記部分体積(14、34)内に加速され得るように、ローレンツ力(FL)が前記導電性の媒体(20)の少なくとも前記部分量に作用し、加速された前記部分量を前記液圧システムの第1シリンダ(14、34)に移動させて、該第1シリンダ(14、34)内で圧力上昇を生ぜしめ
前記液圧式のアクチュエータ装置(10)は、複数の前記アクチュエータモジュール(12)を有し、
複数の前記アクチュエータモジュール(12)は、前記導電性の媒体(20)で満たされた媒体管路(22)に沿って配置されており、
前記媒体管路(22)は、蛇行状またはら旋状に延設されている、
液圧式のアクチュエータ装置(10)。
【請求項11】
前記液圧システムは、前記第1シリンダ(34)の内部を摺動する第1ピストンに接続される第2ピストンが内部を摺動する第2シリンダ(36)を備え、
前記第1ピストンの作用面(A1)は、前記第2ピストンの作用面(A2)とは、異なる大きさである、
請求項10に記載の液圧式のアクチュエータ装置(10)。
【請求項12】
前記第2シリンダ(36)は、前記第1シリンダ(34)を満たす前記導電性の媒体(20)とは異なる媒体で満たされる、
請求項11に記載の液圧式のアクチュエータ装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の媒体で満たされた液圧システムのための液圧式のアクチュエータ装置に関する。同様に、本発明は温度調節装置、センサ装置および液圧システムに関する。さらに本発明は、導電性の媒体で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための方法、液圧システム内で導電性の媒体の温度調節するための方法、および液圧システム内の導電性の媒体の流速に関する情報を算出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、少なくとも1つの電動式の装置、例えば少なくとも1つのポンプおよび/または少なくとも1つのプランジャ装置を用いて、媒体を少なくとも1つの部分体積内にポンプ供給および/または押しやることによって、液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめることは公知である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、請求項1の特徴を有する、導電性の媒体で満たされた液圧システムのための液圧式のアクチュエータ装置、請求項6の特徴を有する温度調節装置、請求項7の特徴を有するセンサ装置、請求項8の特徴を有する液圧システム、請求項11の特徴を有する、導電性の媒体で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための方法、請求項14の特徴を有する液圧システム内の導電性の媒体を温度調節するための方法、および請求項15の特徴を有する液圧システム内の導電性の媒体の流速に関する情報を算出するための方法に関する。
【発明の効果】
【0004】
本発明は、液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための、従来の/既存の電動式の装置の代わりに使用することができる新式のアクチュエータを提供する。従来の/既存の電動式の装置とは異なり、新式のアクチュエータの作用原理は移動可能な/可動の要素/部分を必要としない。これは、新式のアクチュエータの損傷リスクを低減し、その耐用年数を高め、取り付け所要スペースおよび重量を小さくする。新式のアクチュエータは、移動可能な/可動な要素/部分を必要としないその構成に基づいて優れたNVH特性(ノイズバイブレーションハーシュネス)を有しているということも指摘しておく。追加的に、新式のアクチュエータの作用原理は均一な体積流量を可能にし、この場合、全体積および体積流量の流速は、弁を使用しなくても確実かつ容易に調量することができる。従って、本発明は、弁を省いたことに基づいて従来の液圧システムの複雑な構造を省くことができる、弁なしの液圧システムの好適な運転を可能にする。従って、本発明により実現された弁なしの液圧システムにおける漏れリスクも著しく低下される。
【0005】
液圧式のアクチュエータ装置の好適な実施例によれば、少なくとも1つのアクチュエータモジュールが、少なくとも1つの電極装置および少なくとも1つの磁石装置を有していて、少なくとも1つの電極装置によって生ぜしめられた電流の流れおよび少なくとも1つの磁石装置によって生ぜしめられた磁界を用いて、導電性の媒体の少なくとも部分量が圧力上昇に対抗して作用する反力に抗して液圧システムの少なくとも1つの部分体積内に加速され得るように、ローレンツ力が導電性の媒体の少なくとも部分量に作用可能である。これによって、液圧式のアクチュエータ装置は、電磁液圧的な原理による反力を克服し、この場合、発生されたローレンツ力は導電性の媒体の少なくとも部分量を液圧システムの少なくとも1つの部分体積内に加速させる。部分量の全体積および導電性の媒体の部分量の生ぜしめられた加速は、発生された電流の流れおよび発生された磁界によって精確に規定可能であり、これによって、従来では必要であった弁は省くことができる。
【0006】
液圧式のアクチュエータ装置の別の好適な実施例では、少なくとも1つのアクチュエータモジュールが少なくとも1つのコイル装置を有しており、この少なくとも1つのコイル装置によって生ぜしめられた時間的に変化する磁界を用いて、導電性の媒体の少なくとも部分量が、圧力上昇に対抗して作用する反力に抗して液圧システムの少なくとも1つの部分体積内に加速され得るように、導電性の媒体の少なくとも部分量に誘導力が作用可能である。このような液圧式のアクチュエータ装置の実施例も、前記段落に記載した利点をもたらす。
【0007】
好適な形式で、液圧式のアクチュエータ装置は、複数のアクチュエータモジュールを有していて、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置された液圧式のアクチュエータ装置のアクチュエータモジュールの少なくともいくつかが液圧システムの媒体管路に相前後して配置されるように、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置可能または配置されている。アクチュエータモジュールの、このような形式の「直列配置」および/または「直列接続」によって、導電性の媒体の加速された部分量の比較的大きい加速が得られる。従って、「直列配置」および/または「直列接続」によって、大きい力/高い圧力も得られる。
【0008】
選択的にまたは補足的に、液圧式のアクチュエータ装置が複数のアクチュエータモジュールを有していて、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置された液圧式のアクチュエータ装置のアクチュエータモジュールの少なくともいくつかかが、液圧システムの互いに平行に延在する少なくとも2つの媒体管路に配置されるように、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置可能または配置されていてよい。ここに記載されたアクチュエータモジュールの「並列配置」または「並列接続」によって、導電性の媒体の加速された部分量の全体積が増大され得る。このような作用原理も、液圧システムの少なくとも部分量内での比較的迅速な圧力上昇を生ぜしめるために使用され得る。
【0009】
前記液圧式のアクチュエータ装置と協働する温度調節装置および液圧式のアクチュエータ装置と協働するセンサ装置も好適である。
【0010】
少なくとも1つの相応の液圧式のアクチュエータ装置、および液圧システム内に満たされた導電性の媒体を有する液圧システムも、前記利点をもたらす。
【0011】
例えば、液圧システムは、導電性の媒体として、導電性の液体、導電性のガス、イオン液体、少なくとも1つの電解質、少なくとも1つのプラズマ、少なくとも1つの液体金属、ガリウム、リチウム、ナトリウム、水銀、液体金属合金、ガリウム-インジウム-錫合金および/またはナトリウム-カリウム合金で満たされていてよい。しかしながら、導電性の媒体のための、ここに記載した例は最終的なものではないと見なされる。
【0012】
液圧システムは、液圧式の作業機械システム、ロボット、液圧式の建設機械システム、液圧式の農業機械システム、液圧式のリフティングシステム、液圧式のエレベータシステム、液圧式のせり上げ台システム、液圧式のブレーキシステム、液圧式の伝動装置システム、液圧式のパワーステアリングシステム、液圧式の走行機構調整システム、液圧式のカブリオレ幌システム、液圧式の掘削機システム、液圧式のトラクタシステム、液圧式のフォークリフトシステム、液圧式のクレーンシステム、液圧式の林業機械システム、液圧式の重荷重搬送システム、液圧式の翼折り畳みシステム、液圧式のプレスシステム、液圧式の裁断システム、液圧式の折り曲げ機械システム、液圧式の研削機システム、液圧式の切削システム、液圧式のアクチュエータシステム、液圧式の圧延機システム、液圧支柱および/または液圧式の消防隊救命キットであってよい。従って本発明は、多様に使用可能である。
【0013】
追加的に、導電性の媒体で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための対応する方法も、前記利点を提供する。この方法は、液圧式のアクチュエータ装置の前記実施例に従ってさらに改良可能である、ということを指摘しておく。同様に、液圧システム内の導電性の媒体を温度調節するための方法は好適である。さらに、液圧システム内の導電性の媒体を検査するための方法の実行も複数の利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】液圧式のアクチュエータ装置またはこの液圧式のアクチュエータ装置を備えた液圧システムの第1実施例の概略図である。
図2】液圧式のアクチュエータ装置の第2実施例の概略図である。
図3】液圧式のアクチュエータ装置の第3実施例の概略図である。
図4】液圧式のアクチュエータ装置の第4実施例の概略図である。
図5】液圧式のアクチュエータ装置の第5実施例の概略図である。
図6】液圧式のアクチュエータ装置の第6実施例の概略図である。
図7】液圧式のアクチュエータ装置の第7実施例を説明するための座標系である。
図8】液圧式のアクチュエータ装置またはこの液圧式のアクチュエータ装置を備えた液圧システムの第8実施例の概略図である。
図9】センサ装置の実施例の概略図である。
図10】温度調節装置の実施例の概略図である。
図11】導電性の媒体で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のその他の特徴および利点を以下に図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、液圧式のアクチュエータ装置またはこの液圧式のアクチュエータ装置を備えた液圧システムの第1実施例の概略図を示す。
【0017】
図1に概略的に示された液圧式のアクチュエータ装置10は、導電性の媒体で満たされた液圧システム内で使用するために構成されている。単に一例として図1に概略的に示された液圧システムは車両/自動車のための液圧式のブレーキシステムであって、この場合、液圧式のブレーキシステムの使用可能性は、所定の車両型式/自動車型式に限定されない。しかしながら、図1の液圧システムの開発可能性/有用性はこのシステム型式に限定されないことを指摘しておく。液圧システムは、例えば液圧式の作業機械システム、ロボット、液圧式の建設機械システム、液圧式の農業機械システム、液圧式のリフティングシステム、液圧式のエレベータシステム、液圧式のせり上げ台システム、液圧式の伝動装置システム、液圧式のパワーステアリングシステム、液圧式の走行機構調整システム、液圧式のカブリオレ幌システム、液圧式の掘削機システム、液圧式のトラクタシステム、液圧式のフォークリフトシステム、液圧式のクレーンシステム、液圧式の林業機械システム、液圧式の重荷重搬送システム、液圧式の翼折り畳みシステム、液圧式のプレスシステム、液圧式の裁断システム、液圧式の折り曲げ機械システム、液圧式の研削機システム、液圧式の切削システム、液圧式のアクチュエータシステム、液圧式の圧延機システム、液圧支柱および/または液圧式の消防隊救命キットであってもよい。
【0018】
導電性の媒体とは、1S/m(ジーメンスをメートルで割ったもの)より大きいかまたは1(Ωm)-1(抵抗計の逆数)より大きい導電率σを有する媒体のことであると解釈される。好適な形式で、導電性の媒体は10S/mより大きい導電率σ、特に10S/mより大きい導電率σ、特別に10S/mより大きい導電率σを有している。(導電性の媒体を通る電流の低い電気抵抗のために、高い導電率σが好適である。)導電性の媒体は、導電性液体および/または導電性ガスとして液圧システム内に存在していてよい。例えば導電性の媒体は、イオン液体、少なくとも1つの電解質、少なくとも1つのプラズマ、少なくとも1つの液体金属(例えばガリウム、リチウム、ナトリウム、水銀)および/または液体金属合金(例えばナトリウム-カリウム-合金)である。好適な形式で、液圧システムは、導電性の媒体としてガリウム-インジウム-錫合金(σ=10S/m)で満たされている。ガリウム-インジウム-錫合金は無毒である。しかも、ガリウム-インジウム-錫合金は、概ね-20℃の温度から既に(大気圧で)液状であり、簡単に実施可能な加熱技術によってより低い温度から-20℃またはより高い温度に危険なしに加熱可能である。
【0019】
液圧式のアクチュエータ装置10は、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置可能または配置されている。液圧式のアクチュエータ装置は少なくとも1つのアクチュエータモジュール12を有しており、このアクチュエータモジュールはそれぞれ、導電性の媒体の少なくとも部分量がその、それぞれのアクチュエータモジュール12によって生ぜしめられた電流の流れおよび/またはそれぞれのアクチュエータモジュール12によって生ぜしめられた磁界との相互作用に基づいて、液圧システムの少なくとも1つの部分体積14に加速され得るように構成されている。このような形式で、導電性の媒体の少なくとも加速された部分量が、リザーブタンク16から少なくとも1つの部分体積14内、例えば少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14内に移動可能である。従って、液圧式のアクチュエータ装置10によって、液圧システムの少なくとも1つの部分体積14内の圧力上昇/圧力増大を生ぜしめることができる。例えば、液圧システム/ブレーキシステムの、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14として構成された部分体積14内の圧力上昇/圧力増大によって、少なくとも1つの回転するホイールにブレーキトルクを加えることができる。もちろん、液圧式のアクチュエータ装置10によって、「流れ」を引き起こすこともできる。
【0020】
液圧式のアクチュエータ装置10は、電気機械式-液圧式のアクチュエータ装置10と呼ばれてもよい。液圧式のアクチュエータ装置10の可能な作用原理のための例を、以下に詳しく記載する。図1では、液圧式のアクチュエータ装置10の1つのアクチュエータモジュール12だけが単に一例として図に示されている。しかしながら、液圧式のアクチュエータ装置10は複数のアクチュエータモジュール12を有していてよいことを指摘しておく。この場合、アクチュエータモジュール12の「直列配置」および/または「並列配置」のための例を以下に説明する。
【0021】
導電性の媒体の加速された部分量の移動は、移動可能な/可動な要素/部分(例えばポンププランジャまたはプランジャ)を利用することなしに行われる。その代わり、導電性の媒体の加速された部分量の移動は、もっぱら、少なくとも1つのアクチュエータモジュール12の少なくとも1つの電流の流れとの、および/または少なくとも1つのアクチュエータモジュール12の少なくとも1つの磁界との(電気的、磁気的および/または電気磁気的な)相互作用を用いて生ぜしめられる。以下に詳しく説明されているように、この相互作用は容易にかつ確実に「配分」され得る。従って、(例えば従来のポンプおよびプランジャ装置のような、移動可能な/可動な要素/部分を備えた)従来のアクチュエータとは異なり、この液圧式のアクチュエータ装置10は、より高いダイナミックスおよび「作用の可逆性」、つまり図1に図面で示された、リザーブタンク16から少なくとも1つの部分体積14への体積流量と、少なくとも1つの部分体積14からリザーブタンク16への体積流量との可逆性を有している。さらに、(移動可能な/可動な要素/部分を備えた)従来のアクチュエータとは異なり、液圧式のアクチュエータ装置10を用いて、導電性の媒体の加速された部分量の量設定、および導電性の媒体の加速された部分量の加速しようとする所定の目標速度を、確実に維持することができる。従って、(流量調整のための)少なくとも1つの弁を備えた液圧式のブレーキシステムとして構成された液圧システムの装備は必要ない。従って、液圧システムにおける長い複雑な調整経路の構成も省くことができる。
【0022】
図1に示された液圧式のブレーキシステムの別の利点は、従来のブレーキ液の代わりに導電性の媒体(伝達媒体として)を使用することである。従来のブレーキ液は強く温度に依存する特性、特に強く温度に依存する粘性を有しており、これに対して、導電性の媒体のための上記列挙した例の粘性は、全く/殆ど温度に依存しない。顕著なガス発生特性(つまり高い温度での水の気化)を有する従来のブレーキ液とは異なり、導電性の媒体のための上記列挙した例は、ガス発生特性も(殆ど)有していない。
【0023】
図2は、液圧式のアクチュエータ装置の第2実施例の概略図を示す。
【0024】
図2に概略的に示された液圧式のアクチュエータ装置10では、例として1つのアクチュエータモジュール12が示されているだけである。しかしながら、液圧式のアクチュエータ装置10は、以下に挙げた特徴を有する複数のアクチュエータモジュール12を有していてもよい。
【0025】
アクチュエータモジュール12は、(少なくとも2つの電極18a,18bを備えた)電極装置18を有しており、この電極装置18を用いて、電流の強さI(または電流密度j)を有する電流の流れが導電性の媒体20によって発生可能/生ぜしめられる。例えば、電極装置18の少なくとも2つの電極18a,18bは、液圧式のアクチュエータ装置10を備えた液圧システムの、導電性の媒体20で満たされた媒体管路22の互いに反対側に位置していてよい。電流の電流密度jのために、次の(簡略化された)方程式(式1)が適用される:
【数1】
(式1)
この場合、hは、電流に対して直角に向けられた、媒体管路22の高さであり、wは、電流によって貫流される、媒体管路22の区分の電流に対して直角に向けれらた幅である。
【0026】
さらに、アクチュエータモジュール12は、(例えば2つの永久磁石24a,24bおよび/または少なくとも1つの通電可能/通電されたコイルを備えた)磁石装置24を有しており、この磁石装置24によって、アクチュエータモジュール12の磁界Bが発生可能/生ぜしめられる。磁界Bは、例えば時間的に一定な磁界Bであってよい。従って、導電性の媒体20内で電極装置18によって生ぜしめられた電流は、アクチュエータモジュール12の、導電性の媒体20を貫く磁界Bと相互に影響し合う。磁石装置24によって生ぜしめられた、アクチュエータモジュール12の磁界Bは、ローレンツ力Fが導電性の媒体20の少なくとも加速された部分量に作用可能/作用せしめられるように、電流に向けられており、このローレンツ力によって、導電性の媒体20の少なくとも部分量が(圧力上昇に対抗して作用する反力に抗して)液圧システムの少なくとも1つの部分体積内に加速可能/加速される。
【0027】
作用したローレンツ力Fは、導電性の媒体20の少なくとも部分量を加速し、液圧システムの少なくとも1つの(図示していない)部分体積14内で圧力上昇を生ぜしめる。電流/電流の電流密度jが磁界Bに対して直角に向けられている限り、ローレンツ力Fのローレンツ力密度fのために次の方程式(式2)が適用される:
【数2】
(式2)
【0028】
従って、ローレンツ力Fは、次の方程式(式3)に従って、磁界Bによって浸透された液体体積V(V=hL)に関してローレンツ力密度fを積分することによって得られる:
【数3】
(式3)
この場合、Lは、電流の流れに沿って向けられた媒体管路22の大きさである。
【0029】
ローレンツ力Fは、導電性の媒体20を、電流密度jおよび磁界Bによって形成された平面に対して直角な方向に加速する。従って、この平面に作用する圧力pのために次の方程式(式4)が適用される。
【数4】
(式4)
【0030】
従って、1T(テスラ)の磁束密度を有する磁界Bのために、100A(アンペア)の電流の強さIのために、および1mm(ミリメートル)の高さhのために、1barの圧力pが得られる。従って、作用する圧力pの方向および大きさは、磁界Bおよび電流の方向および強さに依存する。従って、図2に記載された作用原理を用いて、比較的正確な圧力配分、比較的均一な圧力分布および確実な圧力維持が(弁を使用しなくても)可能である。(値wおよびLは、圧力pに直接的な影響を及ぼさないが、できるだけ小さい電気的および液圧的な抵抗に関する要求が満たされるように、簡単に選択され得る。)
【0031】
図3は、液圧式のアクチュエータ装置の第3の実施例の概略図を示す。
【0032】
例えば1つのアクチュエータモジュール12だけが示されている、図3により図面で示した液圧式のアクチュエータ装置10は、前記実施例とは別の原理(導電性の媒体20内で電流供給/電流発生するための)を有している。図3の液圧式のアクチュエータ装置10のアクチュエータモジュール12は、少なくとも1つのコイル装置/コイル26を有している。少なくとも1つの(通電された)コイル装置26によって生ぜしめられた/発生された時間的に変化する磁界Bによって、いわゆる「誘導力」F(しばしばローレンツ力とも呼ばれる)は、導電性の媒体20の少なくとも部分量に(導電性の媒体20内の誘導式の電流供給/電流発生によって)、導電性の媒体20の少なくとも部分量が圧力上昇に対抗して作用する反力に抗して液圧システムの少なくとも1つの部分体積内に加速可能/加速されるように作用可能である。
【0033】
少なくとも1つのコイル装置26を通って流れる電流を制御することによって、導電性の媒体20内に電流密度jを有する電流が(磁気的な誘導原理に基づいて)生ぜしめられる。例えば、複数のコイル装置/コイル26が、媒体管路22に沿って位置決めされ、様々な位相で制御されるので、いわゆる「磁気的な進行磁界」がアクチュエータモジュール12の時間的に変化する磁界Bとして発生する。選択的な実施例では、時間的に変化する磁界B(「磁気的な進行磁界」として)が、少なくとも1つの可動の永久磁石によっても生ぜしめられる。
【0034】
図3に示された原理も、少なくとも1つのコイル装置26の制御だけによって、誘導力Fの精確な「配分」を可能にし、従って図2の作用原理と同じ利点が得られる。追加的に、図3の原理は、導電性の媒体20との直接的な接触を必要とせず、従って汚染に対して耐性がある。
【0035】
図2および図3の原理は、移動可能な/可動な要素/部分の使用が省かれている、ということを再び想起させる。従って、それぞれの液圧式のアクチュエータ装置10は、良好なNVH特性(Noise Vibration Harshness「ノイズバイブレーションハーシュネス」)を有している。移動可能な/可動な要素/部分が省略されていることによって、上記液圧式のアクチュエータ装置10の運転は、(機械的な)摩耗と結びつくこともない。従って、上記液圧式のアクチュエータ装置10は、比較的高い頑丈さも有している。特に、上記液圧式のアクチュエータ装置10の損傷リスク/摩耗リスクは、(例えばポンプおよびプランジャ装置等の移動可能な/可動な要素/部分を備えた)従来のアクチュエータよりも著しく低い。同様に、上記液圧式のアクチュエータ装置10は追加的に、所望の圧力上昇を生ぜしめる際に高い精度および良好な一様さを可能にする。
【0036】
図4は、液圧式のアクチュエータ装置の第4実施例の概略図を示す。
【0037】
図4に概略的に示された液圧式のアクチュエータ装置10は、n個/複数のアクチュエータモジュール12を有している。液圧式のアクチュエータ装置10は、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置された液圧式のアクチュエータ装置10のn個のアクチュエータモジュール12の少なくともいくつかが液圧システムのいくつかの媒体管路22に相前後して配置されるように、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置可能/配置されている。好適な形式で、n個のアクチュエータモジュール12は直列に接続されている。このような形式で、n個のアクチュエータモジュール12の「直列配置」または「直列接続」が実現されている。
【0038】
n個のアクチュエータモジュール12の「直列配置」の運転から得られた圧力ptotalのために、次の方程式(式5)が適用される:
【数5】
(式5)
【0039】
従って、複数のアクチュエータモジュール12(例えばn=100)を用いて、概ね100barの圧力pが形成され得る。ホイールブレーキシリンダ内の概ね100barの圧力pは、隣接する/対応配設された少なくとも1つの回転するホイールに有効なブレーキトルクを作用させるために十分である。個別のアクチュエータモジュール12の広がり/大きさが僅かであることに基づいて、大きい数量n個のアクチュエータモジュール12を備えた液圧式のアクチュエータ装置10が、簡単にかつコンパクトな構造形式で実現可能である。
【0040】
「直列配置」または「直列接続」の長さ寸法を短くするために、図4に示した媒体管路22が蛇行状に構成されていて、n個のアクチュエータモジュール12が直列に接続されている。媒体管路22の互いに反対側に配置された2つの永久磁石24a,24bは、すべてのn個のアクチュエータモジュール12のために十分である。(しかしながら、場合によってはより多くの(より小さい)永久磁石24a,24bが使用されてもよい。)これは、n個のアクチュエータモジュール12の「蛇行状の直列配置」または「蛇行状の直列接続」と言い換えてもよい。
【0041】
図5は、液圧式のアクチュエータ装置の第5実施例の概略図を示す。
【0042】
図5に示された媒体管路22は、「渦巻き状」に構成されている。液圧式のアクチュエータ装置10のn個のアクチュエータモジュール12は、直列に接続されている。媒体管路22の互いに反対側に配置された2つの永久磁石24a,24bよりも多い永久磁石は、すべてのn個のアクチュエータモジュール12のために必要ではない。従って、n個のアクチュエータモジュール12の「2D-ら旋状の直列配置」または「2D-ら旋状の直列接続」と言い換えてもよい、図5の液圧式のアクチュエータ装置10も、比較的僅かな取り付け所要スペースしか必要としない。
【0043】
図6は、液圧式のアクチュエータ装置の第6実施例の概略図を示す。
【0044】
図6の実施例では、媒体管路22は、円筒形周壁状の永久磁石30によって囲まれたコア28の周りに巻き付けられた管路(いわゆる「液体コイル」)である。媒体管路22に配置された、液圧式のアクチュエータ装置10のn個のアクチュエータモジュール12は、直列に接続されている。これは、アクチュエータモジュール12の「3D-らせん状の直列配置」または「3D-ら旋状の直列接続」と言い換えてもよい。
【0045】
コア28は好適には、例えば透磁率μ>1を有する強磁性の材料より成っている。コア28は、特に鉄心であってよい。永久磁石は(円筒形周壁状の永久磁石30と共に)コア28として組み込まれていてよい。選択的な実施例では、円筒形周壁状の永久磁石30の代わりに、好適には透磁率μ>1を有する強磁性の材料より成る円筒形周壁をコア28としての永久磁石と共に使用してもよい。
【0046】
図7は、液圧式のアクチュエータ装置の第7実施例を説明するための座標系を示し、この場合、横座標は時間tを示し、縦座標は液圧式のアクチュエータ装置によって生ぜしめられる圧力pを示す。
【0047】
図7の座標系には、圧力上昇時間間隔Δt中の勾配Δpおよび圧力上昇時間間隔Δt後の最大振幅Amaxを有する圧力上昇特性曲線kが示されている。最大振幅Amaxは、数値nの増大によって、「直列配置」または「直列接続」内に配置されたアクチュエータモジュール12から上昇可能である(矢印31a)。液圧式のアクチュエータ装置のダイナミックスを示す勾配Δpは、アクチュエータモジュール12の「並列配置」または「並列接続」によって、同様に高めることができる(矢印31b)。
【0048】
「並列配置」または「並列接続」では、複数のアクチュエータモジュール12を含む液圧式のアクチュエータ装置10が、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置された液圧式のアクチュエータ装置10のアクチュエータモジュール12の少なくともいくつかが、液圧システムの互いに平行に延在するm個の媒体管路22に配置されるように、液圧システムに接しておよび/または液圧システム内に配置可能/配置されており、この場合、mは少なくとも2である。従って、すべてのm個の媒体管路22から加速された全体積Vtotalのために、(式6)が適用される:
【数6】
(式6)
この場合、Vpipeは、それぞれの媒体管路22から加速された個別体積である。
【0049】
図8は、液圧式のアクチュエータ装置またはこのアクチュエータ装置を備えた液圧システムの第8実施例の概略図を示す。
【0050】
図8に示された液圧式のアクチュエータ装置10は、液圧式の増幅器32と協働する。液圧式の増幅器32は、第1の体積34と第2の体積36との間に調節可能に配置されたピストン38を有しており、このピストン38は、第1の作用面Aを有する第1の体積34と、第1の作用面Aよりも小さい第2の作用面Aを有する第2の体積36とを仕切る。(第2の体積36に接続された液圧システムの部分は、導電性の媒体20とは別の媒体で満たされていてよい。)従って、増幅ファクターkは、次の方程式(式7)に従って得られる:
【数7】
(式7)
【0051】
これに応じて、液圧式のアクチュエータ装置10によって生ぜしめられた圧力pまたは増幅器圧力pincr内のppotalは、次の方程式(式8)または(式9)に従って上昇する:
【数8】
(式8)または
【数9】
(式9)
【0052】
従って、液圧式の増幅器32は、液圧システムの設計時における融通性を高める。このような形式で、少なくとも1つの部分体積14内に、比較的高い圧力pincr、例えば100barを越える圧力pincrが自動的に生ぜしめられる。
【0053】
図9は、センサ装置の実施例の概略図を示す。
【0054】
図9に概略的に示されたセンサ装置は、上記液圧式のアクチュエータ装置10のそれぞれと協働することができる。このセンサ装置は、上記液圧システムのそれぞれに接しておよび/または上記液圧システムのそれぞれの内にも配置可能/配置されるように構成可能である。センサ装置は、少なくとも1つのセンサ電極装置40(好適には少なくとも1つの電極対)および少なくとも1つの磁界発生装置(例えば少なくとも1つの永久磁石および/または少なくとも1つの通電可能なコイル)を有しており、このセンサ電極装置40および磁界発生装置はそれぞれ、少なくとも1つの磁界Bが発生可能/発生されるように構成されている。液圧システムの導電性の媒体20と少なくとも1つの磁界Bとの相互作用に基づいて、少なくとも1つのセンサ電極装置40に少なくとも1つの誘導電圧Usensorが発生可能/生ぜしめられる。
【0055】
センサ装置は評価装置42も有しており、この評価装置42は、少なくとも1つの印加された誘導電圧Usensorに関する少なくとも1つの電圧値Usensorを読み取って、少なくとも1つの読み取られた電圧値Usensorを考慮して導電性の媒体20の(平均的な)流速vに関する情報を確認しかつアウトプットするように設計されている。この情報は、導電性の媒体20の例えば(平均的な)流速v(若しくは平均的な流れ速度)または媒体管路を通る流量Qであってよい。(誘導電圧Usensorは(平均的な)流れ速度vまたは流量Qに関連している。)
【0056】
従来の液圧システムでの流量測定が全く/殆ど不可能であり、従って従来の液圧システムでの制御が(二次物理量としての圧力を測定するために)圧力センサを用いてのみ可能であるのに対して、このような問題は上記液圧システムでは解消されている。
【0057】
ここに記載した測定原理は、いくつかの上記液圧式のアクチュエータ装置10によっても実行可能であり、この場合、少なくとも1つのアクチュエータモジュール12の少なくとも1つの電極装置18が少なくとも1つのセンサ電極装置40として使用可能である。従って、いくつかの上記液圧式のアクチュエータ装置10の1つの電極だけが、センサ装置の評価装置42の機能を実行可能であるようにプログラミングされなければならない。
【0058】
図10は、温度調節装置の1実施例の概略図を示す。
【0059】
図10に概略的に示された温度調節装置も、上記液圧式のアクチュエータ装置10のそれぞれと協働し、上記液圧システムのそれぞれに接しておよび/または液圧システム内に配置可能/配置されて構成可能である。温度調節装置は、温度調節(温度維持)および/または導電性の媒体20の加熱のために設けられてよい。
【0060】
図10の温度調節装置は、少なくとも1つの電極44(好適な形式で少なくとも1つの電極対)を有しており、この電極44を介して、加熱電流が液圧システムの導電性の媒体内に導入可能であって、これによって、導電性の媒体20内に熱が発生され、導電性の媒体20の硬化を阻止することができる。従って、温度調節装置は、少なくとも1つの電極44を介して導電性の媒体内への直接的な給電による電気式の抵抗加熱の原理に従って機能するので、比較的低い周囲温度においても、導電性の媒体20の低い粘性に基づく十分なダイナミックスが確実に維持される。
【0061】
ここに記載した温度調節および/または加熱原理は、少なくとも1つの電極18a,18bが少なくとも1つの電極44として使用されることによって、上記液圧式のアクチュエータ装置10のそれぞれによっても実行可能である。
【0062】
選択的な実施例では、温度調節装置は少なくとも1つのコイルも有しており、このコイルによって、液圧システムの導電性の媒体20内で時間的に変化する磁界Bが発生可能/生ぜしめられる。このような温度調節原理および/または加熱原理は、少なくとも1つのコイル装置26が「温度調節コイルおよび/または加熱コイル」として使用されることによって、上記液圧式のアクチュエータ装置10のいくつかによっても実行可能である。従って、誘導式の加熱の原理が使用されてもよい。
【0063】
図11は、導電性の媒体で満たされた液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇を生ぜしめるための方法の1実施例を説明するためのフローチャートを示す。
【0064】
方法ステップS1で、導電性の媒体の少なくとも部分量がその少なくとも1つの電流の流れおよび/または少なくとも1つの磁界との相互作用に基づいて、液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で加速され、それによって、液圧システムの少なくとも1つの部分体積内で圧力上昇が生ぜしめられるように、少なくとも1つの電流の流れおよび/または少なくとも1つの磁界が発生される。導電性の媒体のための例、および導電性の媒体と相互作用する電流/磁界を作用させるために適した装置のための例は、既に上記のように列挙されている。例えば、複数の電流の流れおよび/または複数の磁界は、媒体管路内の導電性の媒体の部分量が、発生された電流の流れおよび/または磁界によって移動されて連続的に加速されるように、液圧システムの媒体管路内で直列に並んで発生され得る。選択的にまたは補足的に、複数の電流の流れおよび/または複数の磁界は、液圧システムの互いに平行に延在する少なくとも2つの媒体管路内で、部分量としての導電性の媒体の個別体積が、少なくとも2つの媒体管路が開口する収集体積内で少なくとも2つの媒体管路内に全体積として集合されるように、生ぜしめられる。方法ステップS1によって貫流も生ぜしめられ/誘発され得る。
【0065】
オプション的な形式で、方法ステップS1の前および/または方法ステップS1中に方法ステップS2も実行され得る。この方法ステップS2で、加熱電流が液圧システムの導電性の媒体内に少なくとも1つの電極を介して導入されることによって、液圧システム内の導電性の媒体が温度調節(または加熱)される。導電性の媒体の温度調節および/または加熱は、液圧システムの導電性の媒体内で少なくとも1つのコイルによって時間的に変化する磁界を発生させることによっても生ぜしめることができる。
【0066】
同様に、方法ステップS1中に、液圧システム内の導電性の媒体の流速に関する情報を算出するための(オプション的な)方法ステップS3も実行され得る。このために、少なくとも1つの磁界が、液圧システムの導電性の媒体と少なくとも1つの磁界との相互作用に基づいて、少なくとも1つのセンサ電極装置において少なくとも1つの誘導電圧が生ぜしめられるように発生される。少なくとも1つの誘導電圧に関する少なくとも1つの電圧値が読み取られ、少なくとも1つの読み取られた電圧値を考慮して、導電性の媒体の流速に関する情報が確認される。それから得られた圧力上昇ダイナミックスを導き出すことができる。
【符号の説明】
【0067】
10 液圧式のアクチュエータ装置
12 アクチュエータモジュール
14 部分体積、ホイールブレーキシリンダ
16 リザーブタンク
18 電極装置
18a,18b 電極
20 導電性の媒体
22 媒体管路
24 磁石装置
24a,24b 永久磁石
26 コイル装置/コイル
28 コア
30 永久磁石
31a,31b 矢印
32 増幅器
34 第1の体積
36 第2の体積
38 ピストン
40 センサ電極装置
42 評価装置
max 最大振幅
B 磁界
誘導力
ローレンツ力密度
ローレンツ力
h 電流に対して直角に向けられた、媒体管路22の高さ
I 電流の強さ
j 電流密度
k 圧力上昇特性曲線、増幅ファクター
L 媒体管路22の大きさ
n 数値
p 圧力
Q 流量
sensor 誘導電圧、電圧値
v 流速、流れ速度
pipe 個別体積
w 媒体管路22の区分の電流に対して直角に向けれらた幅
Δt 圧力上昇時間間隔
Δp 勾配
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11