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特許7469432抗GPRC5D抗体、GPRC5DとCD3を結合する二重特異性抗原結合分子、及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】抗GPRC5D抗体、GPRC5DとCD3を結合する二重特異性抗原結合分子、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240409BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240409BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240409BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P35/00
【請求項の数】 43
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022173361
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2019502647の分割
【原出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2023011774
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】62/364,811
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】アター,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】チン,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】エダヴェッタル,スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ガウデート,フランコイス
(72)【発明者】
【氏名】リ,インジェ
(72)【発明者】
【氏名】ルイストロ,レオポルド
(72)【発明者】
【氏名】マジェースキー,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】メンドンカ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ピラリセッティ,コンダンダラム
(72)【発明者】
【氏名】テプリアコフ,アレクシー
(72)【発明者】
【氏名】トルネッタ,マーク
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/090329(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/036937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
C12P 21/08
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPRC5Dに特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであって、重鎖および軽鎖を含み、
前記重鎖は、配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含み、かつ、
前記軽鎖は、配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む、
単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号55の可変重(VH)鎖領域と、
配列番号58の可変軽(VL)鎖領域と、を含む、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト抗体又は抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、組み換え体である、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、又は一本鎖抗体である、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプのものである、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1又はIgG4のアイソタイプである、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記IgG1は、そのFc領域中に、K409R置換を有する、請求項7に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、Fc領域中に、S228P置換、L234A置換、及びL235A置換を更に含む、請求項8に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトGPRC5Dに特異的に結合し、カニクイザルGPRC5Dと交差反応する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、28nM未満のEC50でADCCをインビトロで誘導する、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号55のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号58のアミノ酸配列を有するVLと、配列番号59のアミノ酸配列を有するFcドメインと、を含む、請求項1に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントを発現している単離された細胞。
【請求項14】
前記抗体は、組み換えにより生成される、請求項13に記載の単離された細胞。
【請求項15】
単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体、又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメントであって、
a)第1の重鎖(HC1)と、
b)第2の重鎖(HC2)と、
c)第1の軽鎖(LC1)と、
d)第2の軽鎖(LC2)と、を含み、
前記HC1及び前記LC1は、対を成してCD3に特異的に結合する第1の抗原結合部位を形成し、前記HC2及び前記LC2は、対を成してGPRC5Dに特異的に結合する第2の抗原結合部位を形成し、
HC1は、配列番号25を含み、LC1は、配列番号26を含み、
HC2可変重鎖領域は、配列番号55を含み、LC2可変軽鎖領域は、配列番号58を含む、
単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体、又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項16】
前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプのものである、請求項15に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項17】
前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、IgG4のアイソタイプである、請求項16に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項18】
前記二重特異性抗体のGPRC5D結合部分は、配列番号55のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号58のアミノ酸配列を有するVLと、配列番号59のアミノ酸配列を有するFcドメインと、を含む、請求項16に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項19】
前記二重特異性抗体のCD3結合部分は、配列番号25のアミノ酸配列を有するVHと、配列番号26のアミノ酸配列を有するVLと、配列番号59のアミノ酸配列を有するFcドメインと、を含み、前記Fcドメインが、F405L及びR409Kをさらに含む、請求項18に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項20】
前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、ヒト骨髄腫細胞の表面上のGPRC5Dに結合する、請求項15に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項21】
前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、ヒトの多発性骨髄腫細胞の表面上のGPRC5Dに結合する、請求項15に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項22】
前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、インビトロでのヒトT細胞活性化を0.22nM未満のEC50で誘導する、請求項15に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項23】
前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、インビトロでのGPRC5D発現細胞のT細胞依存性細胞傷害を0.89nM未満のEC50で誘導する、請求項15に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【請求項24】
請求項15~23のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを発現している、単離された細胞。
【請求項25】
前記GPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、組み換えにより生成される、請求項24に記載の単離された細胞。
【請求項26】
がんを有する対象を処置するための方法で使用するための医薬組成物であって、請求項15~23のいずれか一項に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを含み、
前記方法は、
治療的に有効な量の、前記GPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを、それを必要とする対象に、前記がんを処置するのに十分な時間投与する工程を含む、医薬組成物。
【請求項27】
がん細胞の成長又は増殖を阻害するための方法で使用するための医薬組成物であって、請求項15~23のいずれか一項に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを含み、
前記方法は、
治療的に有効な量の、前記GPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを、それを必要とする対象に、がん細胞の成長又は増殖を阻害するのに十分な時間投与する工程を含む、医薬組成物。
【請求項28】
T細胞をGPRC5D発現がん細胞に対し再指向する方法で使用するための医薬組成物であって、請求項15~23のいずれか一項に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを含み、
前記方法は、
治療的に有効な量の、前記GPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを、それを必要とする対象に、T細胞をGPRC5D発現がん細胞に対し再指向するのに十分な時間投与する工程を含む、医薬組成物。
【請求項29】
前記がん又はがん細胞は、血液がん又はがん細胞である、請求項26~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記血液がん又はがん細胞は、GPRC5D発現B細胞がん又はがん細胞である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記GPRC5D発現B細胞がん又はがん細胞は、多発性骨髄腫である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記使用は、第2の治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記第2の治療剤は、化学療法剤又は標的を設定した抗がん治療剤である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記化学療法剤は、シタラビン、アントラサイクリン、ヒスタミン二塩酸塩、又はインターロイキン2である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記第2の治療剤を、前記二重特異性抗体と同時に、連続的に、又は別個に、前記対象に投与する、請求項32~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項15~23のいずれか一項に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントと、医薬的に許容され得る担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項37】
請求項24又は25に記載の単離された細胞を培養することを含む、請求項15~23のいずれか一項に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントを生成するための方法。
【請求項38】
請求項15~23のいずれか一項に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメントをコードする、単離された合成ポリヌクレオチド。
【請求項39】
請求項15~23のいずれか一項に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその二重特異性結合フラグメント、及び/又は請求項38に記載の単離された合成ポリヌクレオチドと、これらのための包装と、を含む、キット。
【請求項40】
GPRC5Dに特異的に結合する、単離された抗体であって、
配列番号55のアミノ酸配列を有する可変重(VH)鎖領域を含む重鎖と
配列番号58のアミノ酸配列を有する可変軽(VL)鎖領域を含む軽鎖を含み、
前記抗体がIgG4のアイソタイプである、単離された抗体。
【請求項41】
前記重鎖は、配列番号59のアミノ酸配列を更に有する、請求項40に記載の単離された抗体。
【請求項42】
単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体であって、
配列番号55のアミノ酸配列を有する可変重(VH)鎖領域を含む重鎖と
配列番号58のアミノ酸配列を有する可変軽(VL)鎖領域を含む軽鎖を含む、GPRC5D結合部分と、
配列番号99を含む重鎖と配列番号100を含む軽鎖を含む、CD3結合部分を含み、
前記抗体がIgG4のアイソタイプである、単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体。
【請求項43】
前記GPRC5D結合部分の重鎖は、配列番号59のアミノ酸配列を更に有する、請求項42に記載の単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2016年7月20日に出願された米国仮特許出願第62/364,811号
の優先権を主張するものである。前述の出願の全内容は、その全体が参照により本明細書
に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出済みの配列表を含み、その配列表の
全体を参照により本明細書に援用するものである。当該ASCIIのコピーは、2017
年6月28日に作成され、ファイル名はPRD3422USNP_SL.txtであり、
そのサイズは57,673バイトである。
【0003】
(発明の分野)
本明細書に提供される開示は、Gタンパク質連結受容体クラスCグループ5メンバーD
(GPRC5D)に特異的に結合するモノクローナル抗体、GPRC5D及びクラスター
決定因子3(CD3)に特異的に結合する多重特異的抗体、並びに記載された抗体の生成
方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
多発性骨髄腫(MM)は、2番目に多い血液系腫瘍であり、がんによる全死亡者の2%
を占める。MMは、異質性疾患であり、ほとんどが特にt(11;14),t(4;14
),t(8;14),del(13),del(17)の染色体の転座によって引き起こ
される(Drach et al.,(1998)Blood 92(3):802~8
09;Gertz et al.,(2005)Blood 106(8):2837~
2840;Facon et al.,(2001)Blood 97(6):1566
~1571)。MMに罹患している患者は、骨髄浸潤、骨破壊、腎不全、免疫不全、及び
がん診断の心理的負荷によって、種々の疾患関連症状になり得る。2006の時点で、M
Mの5年相対生存率は約34%であり、MMは治療が難しい疾患であることは際立ってお
り、現在のところ治療選択肢は存在しない。
【0005】
Gタンパク質連結受容体、クラスC、グループ5、メンバーD(GPRC5D)は、2
001年に最初に同定されたオーファン、非定型、クラスC GPCRである(Brau
ner-Osborne et al.Biochim Biophys Acta.1
518(3):237~248,2001)。GPRC5D及びグループ5の他のGPC
R群は、クラスC受容体に対する非常に短いアミノ末端ドメインを有し、それゆえクラス
A受容体と立体構造が類似すると予測される。これに関し、これらは、クラスCのGPC
Rに対する配列相同性を有すること、並びに構造トポロジーがクラスA受容体と同程度で
あると予想されることからユニークである。GPRC5D活性化の機能的意義については
報告されておらず、リガンドは未だ不明である。ヒトにおいては、かかる遺伝子は3つの
エキソンを有しており、染色体12p13.3上に位置する。GPRC5D受容体は多様
な種間で高度に保存されており、カニクイザルGPRC5Dとは92%の同一性を共有し
ている。
【0006】
GPRC5D mRNAは、ほとんどがMM患者由来の全ての悪性腫瘍細胞で発現して
いる(Atamaniuk JA et al.Eur J Clin Invest
42(9)953~960;2012;Frigyesi-blood and Coh
en,et al.Hematology 18(6):348~35;2013)。G
PRC5D発現は患者間で様々に異なり、血漿細胞負荷及びRb1欠損などの遺伝子異常
と関連している(Atamaniuk JA et al.Eur J Clin In
vest 42(9)953~960;2012)。
【0007】
この血漿細胞系列でのGPRC5Dのみの発現が、かかる発現を抗骨髄腫抗体の理想的
な標的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、GPRC5Dに特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメン
トが提供される。また、提供されたGPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントを
コード可能な関連するポリヌクレオチド、提供された抗体及び抗原結合フラグメントを発
現している細胞、並びに関連するベクター、並びに検出可能に標識された抗体及び抗原結
合フラグメントもまた記載されている。加えて、提供された抗体及び抗原結合フラグメン
トを使用する方法が記載されている。例えば、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラ
グメントを使用することで、GPRC5D発現がんの進行、退縮、又は不変性を診断若し
くはモニタすること、患者ががんを処置される必要があるかを判定すること、又は対象が
GPRC5D発現がんに苦しんでおり、かつGPRC5D特異的抗がん治療剤、例えば、
本明細書に記載されたGPRC5D及びCD3に対する多重特異的抗体による処置に適し
ているかを判定すること、を行うことができる。
【0009】
本明細書において、GPRC5D及びCD3に免疫特異的に結合する多重特異的抗体、
並びにその多重特異的抗原結合フラグメントが更に提供される。提供されたGPRC5D
×CD3多重特異的抗体をコード可能な関連するポリヌクレオチド、提供された抗体を発
現している細胞、並びに関連するベクター、並びに検出可能に標識された多重特異的抗体
もまた記載されている。加えて、提供された多重特異的抗体を使用する方法が記載されて
いる。例えば、GPRC5D×CD3多重特異的抗体を使用することで、GPRC5D発
現がんの進行、退縮、又は不変性を診断若しくはモニタすること、患者ががんを処置され
る必要があるかを判定すること、又は対象がGPRC5D発現がんに苦しんでおり、かつ
GPRC5D特異的抗がん治療剤、例えば、本明細書に記載されたGPRC5D×CD3
多重特異的抗体による処置に適しているかを判定することができる。
【0010】
GPRC5D特異的抗体
本明細書において、GPRC5Dに特異的な、単離された抗体及び抗原結合フラグメン
トが記載されている。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグ
メントは、ヒトGPRC5Dに結合する。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体
及び抗原結合フラグメントは、ヒトGPRC5D及びカニクイザルGPRC5Dに結合す
る。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番
号22のアミノ酸配列を有するポリペプチドの1つ又は2つ以上の残基に結合する。この
GPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、インビトロにて28nM以下のE
50でADCCを誘導し得る。
【0011】
表1に、本明細書に記載された一部のGPRC5D特異的抗体の例の概要を提供する。
【0012】
【表1】
【0013】
一部の実施形態では、表1に記載された抗体のうちいずれか1つのCDR1、CDR2
、及びCDR3を含む重鎖を含む、GPRC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメン
トが提供される。一部の実施形態では、表1に記載された抗体のうちいずれか1つのCD
R1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖と、表1に記載された抗体のうちいずれか1つ
のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖と、を含む、GPRC5D特異的抗体又
はその抗原結合フラグメントが提供される。本明細書に記載された一部の実施形態では、
GPRC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメントは、表1に記載された抗体のうち
いずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖と、表1に記載された抗体
のうちいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖と、を含む抗体又は
抗原結合と、GPRC5Dに対する結合について競合する。
【0014】
IgGクラスは、ヒトにおいて、4つのアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3
、及びIgG4に分割される。これらのアイソタイプは、Fc領域のアミノ酸配列におい
て95%超の相同性を共有するが、ヒンジ領域のアミノ酸組成及び構造において主な差異
を示す。Fc領域は、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び
補体依存性細胞傷害(CDC)を介在する。ADCCにおいて、抗体のFc領域は、免疫
エフェクター細胞、例えば、ナチュラルキラー及びマクロファージの表面上のFc受容体
(FcgR)に結合する。同免疫エフェクター細胞は、標的細胞の貪食又は溶解をもたら
す。CDCにおいて、抗体は、標的細胞を、細胞表面における補体カスケードをトリガー
することにより殺傷する。本明細書に記載された抗体は、IgGアイソタイプのいずれか
との組み合わせで、可変ドメインの記載された特徴を有する抗体を含む。同IgGアイソ
タイプは、Fc配列が異なるエフェクター機能をもたらすために改変されている改変版を
含む。
【0015】
治療用抗体の多くの応用に関し、Fc介在性エフェクターの機能は、作用機序を担わな
い。これらのFc介在性エフェクター機能は、メカニズム外の毒性を引き起こすことによ
り有害であるおそれがあり、かつ安全性リスクを引き起こすおそれがある。エフェクター
機能を改変することは、Fc領域を遺伝子操作して、FcgR又は補体因子への結合性を
低下させることにより達成され得る。活性化(FcgRI、FcgRIIa、FcgRI
IIa、及びFcgRIIIb)及び阻害性(FcgRIIb)FcgR又は補体の第1
成分(C1q)へのIgGの結合性は、ヒンジ領域及びCH2ドメイン中に位置する残基
により決まる。IgG1、IgG2、及びIgG4に変異が導入されて、Fc機能を低下
又はサイレンシングさせる。本明細書に記載された抗体は、これらの改変を含んでもよい
【0016】
一実施形態では、抗体は、下記特性:(a)親Fcと比較した場合、低下したエフェク
ター機能、(b)FcgRI、FcgRIIa、FcgRIIb、FcgRIIIb、及
び/又はFcgRIIIaに対する低下した親和性、(c)FcgRIに対する低下した
親和性、(d)FcgRIIaに対する低下した親和性、(e)FcgRIIbに対する
低下した親和性、(f)FcgRIIIbに対する低下した親和性、又は(g)FcgR
IIIaに対する低下した親和性のうち1つ又は2つ以上を有するFc領域を含む。
【0017】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、IgG又はその誘導体、例え
ば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のアイソタイプである。抗体がIgG
1アイソタイプを有する一部の実施形態では、抗体は、L234A、L235A、及び/
又はK409R置換を、そのFc領域中に含有する。抗体がIgG4アイソタイプを有す
る一部の実施形態では、抗体は、S228P、L234A、及びL235A置換を、その
Fc領域中に含有する。本明細書に記載された抗体は、これらの改変を含んでもよい。
【0018】
記載されたGPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントに加えて、記載された抗
体及び抗原結合フラグメントをコード可能なポリヌクレオチド配列もまた提供される。記
載されたポリヌクレオチドを含むベクターも提供され、同様に、GPRC5D特異的抗体
又は抗原結合フラグメントを発現している細胞も本明細書において提供される。また、開
示されたベクターを発現可能な細胞も記載される。これらの細胞は、哺乳類細胞(例えば
、293F細胞、CHO細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf7細胞)、酵母細胞、植物細胞
、又は細菌細胞(例えば、大腸菌)でもよい。記載された抗体はまた、ハイブリドーマ細
胞により産生できる。
【0019】
GPRC5D特異的抗体を使用する方法
記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントを使用する方法もまた開
示されている。本節において検討されている方法で使用する特定の抗体には、表1に抗体
に対して記載された一連のCDRを有するものが含まれる。例えば、これらの抗体又は抗
原結合フラグメントは、がん治療においてGPRC5D受容体相互作用と干渉することに
より有用であり得、すなわち、抗体に毒素がコンジュゲートされると、毒物はGPRC5
D発現がんを標的とするようになる。更に、これらの抗体又は抗原結合フラグメントは、
生体サンプル、例えば、血液又は血清中のGPRC5Dの存在を検出するのに、生体サン
プル、例えば、血液又は血清中のGPRC5Dの量を定量するのに、GPRC5D発現が
んを診断するのに、がんで苦しむ対象を処置する方法を決定するのに、又は対象における
GPRC5D発現がんの進行をモニタするのに、有用であり得る。一部の実施形態では、
GPRC5D発現がんは、多発性骨髄腫(MM)などのリンパ腫であり得る。記載された
方法は、対象がGPRC5D発現がんの処置、例えば、GPRC5D及びCD3に対する
多重特異的抗体による処置を受ける前に行われてもよい。更に、記載された方法は、対象
がGPRC5D発現がんの処置、例えば、本明細書に記載されるGPRC5D及びCD3
に対する多重特異的抗体による処置を受けた後に行われてもよい。
【0020】
生体サンプル中のGPRC5Dを検出する記載された方法は、生体サンプルを、本明細
書に記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントのうち1つ又は2つ以
上にさらすことを含む。
【0021】
また、対象におけるGPRC5D発現がんを診断する記載された方法は、生体サンプル
を、本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントのうち1つ
又は2つ以上にさらすことを伴う。但し、この方法は、サンプル中に存在するGPRC5
Dの量を定量する工程と、サンプル中に存在するGPRC5Dの量を、既知の標準又は参
照サンプルと比較する工程と、対象のGPRC5Dレベルががんに関連付けられるGPR
C5Dのレベル内に入るかどうかを判定する工程と、を含む。
【0022】
本明細書において、対象中のGPRC5D発現がんをモニタする方法もまた記載されて
いる。記載された方法は、生体サンプルを、本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗
体又は抗原結合フラグメントのうち1つ又は2つ以上にさらす工程と、抗体又はその抗原
結合フラグメントに結合したサンプル中に存在するGPRC5Dの量を定量する工程と、
サンプル中に存在するGPRC5Dの量を、既知の標準若しくは参照サンプル、又は対象
から以前に得られた同様のサンプル中のGPRC5Dの量のいずれかと比較する工程と、
比較されたサンプル中のGPRC5Dの量における差異に基づいて、対象のGPRC5D
レベルががんの進行、退縮、又は不変を示すかどうかを判定する工程と、を含む。
【0023】
対象から得られ、又は同対象に由来するサンプルは、生体サンプル、例えば、尿、血液
、血清、血漿、唾液、腹水、循環細胞、循環している腫瘍細胞、組織会合していない細胞
、組織、外科手術的に切除された腫瘍組織、生検、微細針吸引サンプル、又は組織学的調
製物である。
【0024】
記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、記載された方法又は
当業者に既知の他の方法での使用のために標識されてもよい。例えば、本明細書に記載さ
れた抗体又はその抗原結合フラグメントは、放射線標識、蛍光標識、エピトープタグ、ビ
オチン、発色団標識、ECL標識、酵素、ルテニウム、111In-DOTA、111In-ジ
エチレントリアミン五酢酸(DTPA)、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスフ
ァターゼ、及びβガラクトシダーゼ、若しくはポリヒスチジン、又は当技術分野において
既知の類似するこのような標識で標識されてもよい。
【0025】
GPRC5D特異的抗体キット
開示されるGPRC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメントを含むキットが本明
細書において記載されている。記載されたキットを使用して、本明細書で提供されたGP
RC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントを使用する方法、又は当業者に既知の他の
方法を行うことができる。一部の実施形態では、記載されたキットは、本明細書に記載さ
れた抗体又は抗原結合フラグメントと、生体サンプル中のGPRC5Dの存在を検出する
際に使用する試薬と、を含んでもよい。したがって、記載されたキットは、本明細書に記
載された抗体又はその抗原結合フラグメントのうち1つ又は2つ以上と、使用していない
ときに抗体又はフラグメントを収容するための容器と、抗体又はフラグメントを使用する
ための使用説明書と、本明細書に記載されたとおり、固体支持体に固定された抗体若しく
はフラグメント及び/又は検出可能に標識された形態の抗体若しくはフラグメントと、を
含んでもよい。
【0026】
GPRC5D×CD3多重特異的抗体
TCR/CD3複合体によるGPRC5D発現MM細胞へのTリンパ球の再指向は、魅
力的な代替アプローチを提示する。Tリンパ球のTCR/CD3複合体は、ガンマ(γ)
、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ゼータ(ζ)、及びエータ(η)標識されたCD3
のインバリアントなサブユニットと細胞表面で共発現した、TCRアルファ(α)/ベー
タ(β)又はTCRガンマ(γ)/デルタ(δ)ヘテロ二量体のいずれかからなる。ヒト
CD3εは、UniProt P07766(CD3E_HUMAN)に記載されている
。従来技術において記載される抗CD3ε抗体は、SP34である(Yang SJ,T
he Journal of Immunology(1986)137;1097~1
100)。SP34は霊長類及びヒトの両方のCD3と反応する。SP34はPharm
ingenから入手できる。従来技術で記載される更なる抗CD3抗体は、UCHT-1
である(国際公開第2000041474号を参照されたい)。従来技術で記載される更
なる抗CD3抗体は、BC-3である(Fred Hutchinson Cancer
Research Institute;used in Phase I/II t
rials of GvHD,Anasetti et al.,Transplant
ation 54:844(1992))。SP34とUCHT-1及びBC-3との間
の違いは、SP-34がCD3のε鎖上に単独で存在するエピトープを認識する(Sal
meron et al.,(1991)J.Immunol.147:3047を参照
されたい)のに対して、UCHT-1及びBC-3はε鎖及びγ鎖の両方が寄与するエピ
トープを認識するという点である。抗体SP34のものと同じ配列を有する抗体の配列は
、国際公開第2008119565号、同第2008119566号、同第200811
9567号、同第2010037836号、同第2010037837号及び同第201
0037838号に言及されている。抗体SP34のVHに対して96%の同一性を有す
る配列は、米国特許第8236308号(国際公開第2007042261号)に言及さ
れている。
【0027】
本明細書において、GPRC5D及びCD3に結合する、単離された多重特異的抗体(
「GPRC5D×CD3多重特異的抗体」)及びその多重特異的抗原結合フラグメントが
記載されている。一部の実施形態では、GPRC5Dに免疫特異的に結合する、単離され
た抗体又はその抗原結合フラグメントが提供される。
【0028】
一部の実施形態では、多重特異的抗体のGPRC5D特異的アームは、ヒトGPRC5
D及びカニクイザルGPRC5Dに結合する。一部の実施形態では、GPRC5D×CD
3多重特異的抗体又は抗原結合フラグメントのGPRC5D特異的アームは、ヒトGPR
C5Dの細胞外ドメインに結合する。好ましい実施形態では、GPRC5D×CD3多重
特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、二重特異性抗体又は抗原結合フラグメントであ
る。一部の実施形態では、a)第1の重鎖(HC1)と、b)第2の重鎖(HC2)と、
c)第1の軽鎖(LC1)と、d)第2の軽鎖(LC2)と、を含み、HC1とLC1と
が対を成して、GPRC5Dに免疫特異的に結合する第1の抗原結合部位を形成し、HC
2とLC2とが対を成して、CD3に免疫特異的に結合する第2の抗原結合部位を形成す
る、単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重
特異性結合フラグメントが提供される。別の実施形態では、抗体又は二重特異性結合フラ
グメントを発現している単離された細胞が提供される。一部の実施形態では、GPRC5
D×CD3多重特異的抗体のGPRC5D結合アーム(又は「GPRC5D特異的アーム
」)は、本明細書に記載されたGPRC5D抗体から(例えば、表1で列記されたCDR
配列を有する抗体から)得られる。
【0029】
一部の実施形態では、GPRC5D×CD3多重特異的抗体又は抗原結合フラグメント
のGPRC5D特異的アームは、IgG又はその誘導体である。一部の実施形態では、G
PRC5D×CD3多重特異的抗体のCD3結合アーム(又は「CD3特異的アーム」)
は、マウスモノクローナル抗体SP34、マウスIgG3/ラムダアイソタイプに由来す
る。(K.R.Abhinandan and A.C.Martin,2008.Mo
l.Immunol.45,3832~3839)。一部の実施形態では、GPRC5D
×CD3多重特異的抗体のCD3結合アームは、表2から選択された1つのVHドメイン
及び1つのVLドメインを含む。
【0030】
【表2】
【0031】
IgGクラスは、ヒトにおいて、4つのアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3
、及びIgG4に分割される。これらのアイソタイプは、Fc領域のアミノ酸配列におい
て95%超の相同性を共有するが、ヒンジ領域のアミノ酸組成及び構造において主な差異
を示す。Fc領域は、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び
補体依存性細胞傷害(CDC)を介在する。ADCCにおいて、抗体のFc領域は、免疫
エフェクター細胞、例えば、ナチュラルキラー及びマクロファージの表面上のFc受容体
(FcgR)に結合する。同免疫エフェクター細胞は、標的細胞の貪食又は溶解をもたら
す。CDCにおいて、抗体は、標的細胞を、細胞表面における補体カスケードをトリガー
することにより殺傷する。
【0032】
多くの治療用抗体の適用に関し、Fc介在性エフェクター機能は、作用機序を担わない
。これらのFc介在性エフェクター機能は、メカニズム外の毒性を引き起こすことにより
有害であるおそれがあり、かつ安全性リスクを引き起こすおそれがある。エフェクター機
能の改変は、Fc領域を遺伝子操作して、FcgR又は補体因子への結合性を低下させる
ことにより達成され得る。活性化(FcgRI、FcgRIIa、FcgRIIIa、及
びFcgRIIIb)及び阻害性(FcgRIIb)FcgR又は補体の第1成分(C1
q)へのIgGの結合性は、ヒンジ領域及びCH2ドメイン中に位置する残基により決ま
る。IgG1、IgG2、及びIgG4に変異が導入されると、Fc機能が低下又はサイ
レンシングする。
【0033】
一実施形態では、抗体は、下記特性:(a)親Fcと比較した場合、低下したエフェク
ター機能、(b)FcgRI、FcgRIIa、FcgRIIb、FcgRIIIb、及
び/又はFcgRIIIaに対する低下した親和性、(c)FcgRIに対する低下した
親和性、(d)FcgRIIaに対する低下した親和性、(e)FcgRIIbに対する
低下した親和性、(f)FcgRIIIbに対する低下した親和性、又は(g)FcgR
IIIaに対する低下した親和性のうち1つ又は2つ以上を有するFc領域を含む。
【0034】
一部の実施形態では、多重特異的抗体のCD3特異的アームが得られるCD3特異的抗
体又は抗原結合フラグメントは、IgG又はその誘導体である。一部の実施形態では、多
重特異的抗体のCD3特異的アームが得られるCD3特異的抗体又は抗原結合フラグメン
トは、IgG1又はその誘導体である。一部の実施形態では、例えば、CD3結合アーム
が得られるCD3特異的IgG1抗体のFc領域は、そのFc領域中に、L234A、L
235A、及びF405L置換を含む。一部の実施形態では、多重特異的抗体のCD3特
異的アームが得られるCD3特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、IgG4又はその
誘導体である。一部の実施形態では、例えば、CD3結合アームが得られるCD3特異的
IgG4抗体のFc領域は、そのFc領域中に、S228P、L234A、L235A、
F405L、及びR409K置換を含む。一部の実施形態では、多重特異的抗体のCD3
特異的アームが得られるCD3特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、初代ヒトT細胞
及び/又は初代カニクイザルT細胞上のCD3εに結合する。一部の実施形態では、多重
特異的抗体のCD3特異的アームが得られるCD3特異的抗体又は抗原結合フラグメント
は、初代ヒトCD4+T細胞及び/又は初代カニクイザルCD4+T細胞を活性化する。
【0035】
記載されたGPRC5D×CD3多重特異的抗体に加えて、記載されたGPRC5D×
CD3多重特異的抗体をコード可能なポリヌクレオチド配列も提供される。一部の実施形
態では、GPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントのHC1
、HC2、LC1、又はLC2をコードする単離された合成ポリヌクレオチドが提供され
る。記載されたポリヌクレオチドを含むベクターも提供され、同様に、GPRC5D×C
D3多重特異的抗体を発現している細胞も本明細書において提供される。また、開示され
たベクターを発現可能な細胞も記載される。これらの細胞は、哺乳類細胞(例えば、29
3F細胞、CHO細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf7細胞)、酵母細胞、植物細胞、又は
細菌細胞(例えば、大腸菌)でもよい。記載された抗体はまた、ハイブリドーマ細胞によ
り産生できる。一部の実施形態では、細胞を培養することにより、GPRC5D×CD3
二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを生成するための方法が提供される。
【0036】
本明細書において、GPRC5D×CD3多重特異的抗体又は抗原結合フラグメントと
、医薬的に許容され得る担体とを含む医薬組成物が更に提供される。
【0037】
GPRC5D×CD3多重特異的抗体を使用する方法
記載されたGPRC5D×CD3多重特異的抗体及びその多重特異的抗原結合フラグメ
ントを使用する方法もまた開示される。例えば、GPRC5D×CD3多重特異的抗体及
びその多重特異的抗原結合フラグメントは、GPRC5D発現がんの処置を必要とする対
象における、GPRC5D発現がんの処置に有用であり得る。一部の実施形態では、GP
RC5D発現がんは、多発性骨髄腫などのリンパ腫である。
【0038】
GPRC5D発現がんの処置を、かかる処置を必要とする対象において行う記載された
方法は、この対象に、治療的に有効な量の記載されたGPRC5D×CD3多重特異的抗
体又はその多重特異的抗原結合フラグメントを投与する工程を含む。一部の実施形態では
、対象は、哺乳類、好ましくは、ヒトである。好ましい実施形態では、治療的に有効な量
のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性抗原結合フラグメントを、処置を
必要とする患者に、がんを処置するのに十分な時間投与することにより、がんを有する対
象を処置するための方法が提供される。
【0039】
がん細胞の成長又は増殖を阻害するために、治療的に有効な量のGPRC5D×CD3
二重特異性抗体又は二重特異性抗原結合フラグメントを投与することにより、がん細胞の
成長又は増殖を阻害するための方法が更に提供される。
【0040】
また、本明細書において、T細胞をがんに再指向するために、治療的に有効な量のGP
RC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを投与することにより
、T細胞をGPRC5D発現がん細胞に再指向する方法もまた提供される。
【0041】
GPRC5D×CD3特異的抗体キット
本明細書において、開示されたGPRC5D×CD3多重特異的抗体を含むキットが記
載されている。記載されたキットを使用して、本明細書で提供されたGPRC5D×CD
3多重特異的抗体を使用する方法又は当業者に既知の他の方法を行うことができる。一部
の実施形態では、記載されたキットは、本明細書に記載された抗体と、GPRC5D発現
がんの処置に使用するための試薬と、を含んでもよい。したがって、記載されたキットは
、本明細書に記載された多重特異的抗体又はその多重特異的抗原結合フラグメントのうち
1つ若しくは2つ以上、使用していないときに抗体又はフラグメントを収容するための容
器、並びに/又は抗体若しくはフラグメントを使用するための使用説明書、本明細書に記
載されたとおりの、固体支持体に固定された抗体若しくはフラグメント及び/若しくは検
出可能に標識された形態の抗体若しくはフラグメントと、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】選択された抗GPRC5D mAbの、ヒトGPRC5D細胞及び遺伝子導入していないHEK293細胞に対する濃度依存的結合プロファイル。3種類のmAb、すなわちGC5B36、GC5B168、及びGC5B205は、遺伝子導入していない(GPRC5D null)HEK293細胞にも結合することが観察された。
図2】ヒトGPRC5D HEK293F細胞に対する抗GPCR5D×CD3二重特異性抗体の用量依存的結合。
図3】FACSを使用して、二重特異性抗体のMM1R細胞及びH929細胞に対する結合プロファイルを、過剰発現させたヒトGPCR5D HEK293細胞及び遺伝子導入していないHEK293細胞の場合と比較した。
図4A】ヒトGPRC5D発現細胞に対する抗GPCR5D×CD3抗体によるT細胞介在性細胞傷害及びT細胞活性化。
図4B】ヒトGPRC5D発現細胞に対する抗GPCR5D×CD3抗体によるT細胞介在性細胞傷害及びT細胞活性化。
図5A】カニクイザルGPRC5D発現細胞に対する抗GPCR5D×CD3抗体によるT細胞介在性細胞傷害及びT細胞活性化。
図5B】カニクイザルGPRC5D発現細胞に対する抗GPCR5D×CD3抗体によるT細胞介在性細胞傷害及びT細胞活性化。
図6A】GPRC5D×CD3 Abは、予防的(prophylactic)NSGマウスモデルにおいて、H929細胞を効率的に殺傷する。GCDB32(6A)及びGCDB35(6B)では、投与量10μgで腫瘍の成長が完全に阻害され、GCDB32については、投与量1μgでも腫瘍の成長阻害率は100%が可能であった。
図6B】GPRC5D×CD3 Abは、予防的(prophylactic)NSGマウスモデルにおいて、H929細胞を効率的に殺傷する。GCDB32(6A)及びGCDB35(6B)では、投与量10μgで腫瘍の成長が完全に阻害され、GCDB32については、投与量1μgでも腫瘍の成長阻害率は100%が可能であった。
図7A】Fcブロックの非存在下(7A)での力価の比較。
図7B】Fcブロックの存在下(7B)での力価の比較。
図8A】GCDB35 GCDB32、GCDB40及びGCDB43のFcγ受容体に対する結合。
図8B】GCDB35 GCDB32、GCDB40及びGCDB43のFcγ受容体に対する結合。
図8C】GCDB35 GCDB32、GCDB40及びGCDB43のFcγ受容体に対する結合。
図8D】GCDB35 GCDB32、GCDB40及びGCDB43のFcγ受容体に対する結合。
図9A】ハイブリドーマ由来mAbの、FACSによる結合評価。
図9B】ハイブリドーマ由来mAbの、FACSによる結合評価。
図10A】H929細胞に対するGPRC5D×CD3二重特異性抗体のT細胞介在性細胞傷害。
図10B】H929細胞に対するGPRC5D×CD3二重特異性抗体のT細胞介在性細胞傷害。
図11A】GPRC5D陽性細胞株(H929、MM1R、LP1、OPM2)及び陰性細胞株(NALM6)に結合するGPRC5D×CD3二重特異性抗体。
図11B】GPRC5D陽性細胞株(H929、MM1R、LP1、OPM2)及び陰性細胞株(NALM6)に結合するGPRC5D×CD3二重特異性抗体。
図11C】GPRC5D陽性細胞株(H929、MM1R、LP1、OPM2)及び陰性細胞株(NALM6)に結合するGPRC5D×CD3二重特異性抗体。
図11D】GPRC5D陽性細胞株(H929、MM1R、LP1、OPM2)及び陰性細胞株(NALM6)に結合するGPRC5D×CD3二重特異性抗体。
図11E】GPRC5D陽性細胞株(H929、MM1R、LP1、OPM2)及び陰性細胞株(NALM6)に結合するGPRC5D×CD3二重特異性抗体。
図12A】GPRC5D×CD3二重特異性Abは、生体内において強力な腫瘍阻害剤である。GPRC5D×CD3二重特異性Ab(図12AにはGCDB32を示す)は、投与量10μg及び1μgで多発性骨髄腫細胞(H929)の腫瘍成長を完全に阻害した。
図12B】GPRC5D×CD3二重特異性Abは、生体内において強力な腫瘍阻害剤である。GPRC5D×CD3二重特異性Ab(図12BにはGCDB53を示す)は、投与量10μg及び1μgで多発性骨髄腫細胞(H929)の腫瘍成長を完全に阻害した。
図12C】GPRC5D×CD3二重特異性Abは、生体内において強力な腫瘍阻害剤である。GPRC5D×CD3二重特異性Ab(図12CにはGCDB61を示す)は、投与量10μg及び1μgで多発性骨髄腫細胞(H929)の腫瘍成長を完全に阻害した。
図12D】GPRC5D×CD3二重特異性Abは、生体内において強力な腫瘍阻害剤である。GPRC5D×CD3二重特異性Ab(図12DにはGCDB72を示す)は、投与量10μg及び1μgで多発性骨髄腫細胞(H929)の腫瘍成長を完全に阻害した。GCDB72を0.1μgで投与した場合には、腫瘍の成長阻害率は80%であるという差異が観察された。
図13】様々な濃度のリード抗体(lead antibodies)でGPRC5D+MM1.R細胞株を60分間染色し、表面結合プロファイルを測定した(n=3)。フィコエリトリン標識したヒトIgG4Fc(Southern Biotech,HP6025クローン)を、シグナルを捕捉する二次抗体として使用した。結合は、FACSにより求められた、正規化された幾何平均蛍光強度として表される。データのグラフ化及びフィッティングは、勾配が可変の非線形回帰(4パラメータ)及び最小二乗法を使用して、GraphPad Prism 6で実施した。
図14A-1】様々な濃度のFAB6300抗体及びGC5M481抗体でGPRC5D+細胞株を60分間染色し、表面結合プロファイルを測定した。フィコエリトリン標識したヒトIgG4Fc(Southern Biotech,HP6025クローン)を、シグナルを捕捉する二次抗体として使用した。結合をヒストグラムとして表す。黒線はアイソタイプを示し、赤線はGPRC5D特異的抗体を表す。影をつけた点線は、アイソタイプ対照を示し、実線はリード分子の結合を示す。
図14A-2】様々な濃度のFAB6300抗体及びGC5M481抗体でGPRC5D+細胞株を60分間染色し、表面結合プロファイルを測定した。フィコエリトリン標識したヒトIgG4Fc(Southern Biotech,HP6025クローン)を、シグナルを捕捉する二次抗体として使用した。結合をヒストグラムとして表す。黒線はアイソタイプを示し、赤線はGPRC5D特異的抗体を表す。影をつけた点線は、アイソタイプ対照を示し、実線はリード分子の結合を示す。
図14B-1】様々な濃度のFAB6300抗体及びGC5M481抗体でGPRC5D+細胞株を60分間染色し、表面結合プロファイルを測定した。フィコエリトリン標識したヒトIgG4Fc(Southern Biotech,HP6025クローン)を、シグナルを捕捉する二次抗体として使用した。GPRC5D+多発性骨髄腫細胞株に対するリード分子の結合パターンを示す。影をつけた点線は、アイソタイプ対照を示し、実線はリード分子の結合を示す。
図14B-2】様々な濃度のFAB6300抗体及びGC5M481抗体でGPRC5D+細胞株を60分間染色し、表面結合プロファイルを測定した。フィコエリトリン標識したヒトIgG4Fc(Southern Biotech,HP6025クローン)を、シグナルを捕捉する二次抗体として使用した。GPRC5D+多発性骨髄腫細胞株に対するリード分子の結合パターンを示す。影をつけた点線は、アイソタイプ対照を示し、実線はリード分子の結合を示す。
図14B-3】様々な濃度のFAB6300抗体及びGC5M481抗体でGPRC5D+細胞株を60分間染色し、表面結合プロファイルを測定した。フィコエリトリン標識したヒトIgG4Fc(Southern Biotech,HP6025クローン)を、シグナルを捕捉する二次抗体として使用した。GPRC5D+多発性骨髄腫細胞株に対するリード分子の結合パターンを示す。影をつけた点線は、アイソタイプ対照を示し、実線はリード分子の結合を示す。
図15A】2名の異なるMM患者由来の、凍結した骨髄由来単核細胞を使用して、IgG4アイソタイプ対照と比較したGPRC5D×CD3二重特異性抗体の結合、プラズマ細胞の細胞傷害(plasma cell cytotoxicity)及びT細胞活性化を評価した。細胞傷害アッセイのため、患者のBM MNCサンプルに健常ドナー由来のT細胞を外部より添加し、4種類のリード分子と共に48時間インキュベートした。GPRC5D×CD3二重特異性抗体は、全てのドナーサンプルについて用量依存的な様式で血漿細胞に結合した。平均蛍光強度をY軸に記録した。GPRC5D×CD3二重特異性抗体処理に応答する血漿生細胞(CD138+)の減少及び付随するT細胞でのCD25の上方制御に注目されたい。
図15B】2名の異なるMM患者由来の、凍結した骨髄由来単核細胞を使用して、IgG4アイソタイプ対照と比較したGPRC5D×CD3二重特異性抗体の結合、プラズマ細胞の細胞傷害(plasma cell cytotoxicity)及びT細胞活性化を評価した。細胞傷害アッセイのため、患者のBM MNCサンプルに健常ドナー由来のT細胞を外部より添加し、4種類のリード分子と共に48時間インキュベートした。GPRC5D×CD3二重特異性抗体は、全てのドナーサンプルについて用量依存的な様式で血漿細胞に結合した。平均蛍光強度をY軸に記録した。GPRC5D×CD3二重特異性抗体処理に応答する血漿生細胞(CD138+)の減少及び付随するT細胞でのCD25の上方制御に注目されたい。
図16】第0日目に、NSGマウスに、MM.1Sヒト多発性骨髄腫細胞を皮下移植した。7日目に、ヒトPBMCを静脈内投与した。第15、18、22、24、29、32、及び36日目に、PBS、GCDB72(0.1μg、1μg、10μg、及び50μg/個体(それぞれ0.005、0.05、0.5及び2.5mg/kg相当))、及びNull対照抗体を静脈内投与した。週に2度皮下腫瘍を測定し、その結果を、それぞれの群における平均腫瘍体積としてmm3±(SEM)で表した。1μg(0.05mg/kg)で投与した場合、GCDB72抗体処理では、PBSと比較して皮下腫瘍の成長は有意に阻害された(TGI=64%,p<0.0001)。GCDB72は、10μg/個体(0.5mg/kg)及び50μg/個体(2.5mg/kg)の投与量では、腫瘍の成長を完全に退縮させた(p≦0.0001)。Null対照抗体は、ほとんど影響がなく、又は全く影響がなかった。テューキー多重比較検定(Graph Pad Prismソフトウェア(バージョン6)を使用)を利用した、多重比較2-way ANOVAを用いて、統計的有意性を評価した。確率値(p)が<0.05であれば、グループ間の差分は有意であるとみなした。
図17】第0日目に、NSGに、MM.1Sヒト多発性骨髄腫細胞を皮下移植した。7日目に、ヒトPBMCを静脈内投与した。第15、18、22、24、29、32、及び36日目に、PBS、GCDB72(0.1μg、1μg、10μg、及び50μg/個体(それぞれ0.005、0.05、0.5及び2.5mg/kg相当))、及びNull対照抗体を静脈内投与した。体重は、処置の開始時から試験終了までの体重の絶対値(absolute body weight)として表す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
本明細書及び特許請求の範囲を通して本明細書の諸態様に関する様々な用語が使用され
る。別途記載のない限り、そのような用語には、当該技術分野におけるそれらの通常の意
味が与えられるものとする。その他の具体的に定義される用語は、本明細書に提供される
定義と一致する様式で解釈されるものとする。
【0044】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「a
n」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象
を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ以上の細胞
の組み合わせ、及びこれに類するものなどが含まれる。
【0045】
本明細書で使用されるとき、測定値、例えば、量、持続時間等に言及する場合の「約」
という用語は、指定された値から最大±10%の偏差を包含することを意味する。同様に
、このような偏差は、開示された方法を行うのに適している。別途記載のない限り、本明
細書及び特許請求の範囲において使用される、成分の量、並びに分子量及び反応条件等の
特性を表わす全ての数字は、全ての事例において「約」という用語により修飾されている
と理解されたい。したがって、そうではないと示されない限り、下記明細書及び添付の特
許請求の範囲で説明された数値パラメータは、本発明により得ようとする所望の特性に応
じて変動する場合がある近似値である。最低でも、特許請求の範囲の範囲に対して均等論
の適用を制限することを試みてはならず、各数値パラメータは、報告された有効桁の数字
を考慮し、通常の四捨五入の手法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきであ
る。
【0046】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例
に記載された数値は、可能な限り正確に報告される。但し、任意の数値は、各試験測定に
おいて見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含有する。
【0047】
「単離された」とは、生物学的成分(例えば、核酸、ペプチド、又はタンパク質)が、
これらの成分が本来存在する生物の他の生物学的成分、すなわち、他の染色体及び染色体
外DNA及びRNA、並びにタンパク質から、実質的に分離され、同他の成分とは別に生
成され、又は同他の成分から離して精製されていることを意味する。このため、「単離」
されている核酸、ペプチド、及びタンパク質は、標準的な精製法により精製された核酸及
びタンパク質を含む。「単離された」核酸、ペプチド、及びタンパク質は、組成物の一部
であることができ、このような組成物が核酸、ペプチド、又はタンパク質の本来の環境の
一部ではない場合であっても単離されている。また、この用語は、宿主細胞中での組み換
え発現により調製された核酸、ペプチド、及びタンパク質、並びに化学合成された核酸も
包含する。本明細書で使用されるとき、「単離された」抗体又は抗原結合フラグメントは
、種々の抗原特異性を有する他の抗体又は抗原結合フラグメントを実質的に含まない抗体
又は抗原結合フラグメントを意味することを意図している(例えば、GPRC5Dに特異
的に結合する単離された抗体は、GPRC5D以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質
的に含まない)。但し、GPRC5Dのエピトープ、アイソフォーム、又は変異体に特異
的に結合する単離された抗体は、例えば、他の種に由来する他の関連する抗原(例えば、
GPRC5D種間ホモログ)に対する交差反応性を有してもよい。
【0048】
「ポリヌクレオチド」は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」と
呼ばれ、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAでもよい、任意のポ
リリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」に
は、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及
び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、DNA及びRN
Aを含むハイブリッド分子(一本鎖、又はより典型的には、二本鎖、又は一本鎖及び二本
鎖の領域の混合物でもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌ
クレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を
指す。用語、ポリヌクレオチドには、1つ又は2つ以上の修飾塩基を含有するDNA又は
RNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された主鎖を有するDNA又はRNAも
含まれる。「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシン
を含む。各種の修飾が、DNA及びRNAになされてもよい。したがって、「ポリヌクレ
オチド」は、典型的に天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に
修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態
を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌク
レオチドと呼ばれる)も包含する。
【0049】
「実質的に同じ」の意味は、この用語が使用される文脈に応じて異なる場合がある。重
鎖及び軽鎖並びにこれらをコードする遺伝子中には天然の配列バリエーションが存在し得
ることから、本明細書に記載されたアミノ酸配列又は抗体若しくは抗原結合フラグメント
をコードする遺伝子内には、固有の結合特性(例えば、特異的及び親和性)にはほとんど
影響しない、又は影響しない、ある程度のバリエーションが見られることが予測される。
このような予測は、部分的には、遺伝暗号の縮重及び保存的アミノ酸配列バリエーション
の進化的成功による。同バリエーションは、コードされたタンパク質の性質を、認識され
得るほどには改変させない。したがって、核酸配列の文脈において、「実質的に同じ」は
、2つ以上の配列間での少なくとも65%の同一性を意味する。好ましくは、この用語は
、2つ以上の配列間での少なくとも70%の同一性、より好ましくは、少なくとも75%
の同一性、より好ましくは、少なくとも80%の同一性、より好ましくは、少なくとも8
5%の同一性、より好ましくは、少なくとも90%の同一性、より好ましくは、少なくと
も91%の同一性、より好ましくは、少なくとも92%の同一性、より好ましくは、少な
くとも93%の同一性、より好ましくは、少なくとも94%の同一性、より好ましくは、
少なくとも95%の同一性、より好ましくは、少なくとも96%の同一性、より好ましく
は、少なくとも97%の同一性、より好ましくは、少なくとも98%の同一性、及びより
好ましくは、少なくとも99%以上の同一性を意味する。2つの配列間の同一性(%)は
、ギャップ数及び各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一の位置の数の
関数である(すなわち、相同性の割合(%)=同一位置数/位置の総数×100)。同考
慮は、2つの配列の最適なアライメントを導くのに必要である。2つのヌクレオチド又は
アミノ酸配列間の同一性(%)は、例えば、E.Meyers and W.Mille
r,Comput.Appl.Biosci 4,11~17(1988)のアルゴリズ
ムを使用して決定されてもよい。同アルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン
2.0)に組み込まれており、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルテ
ィ12、及びギャップペナルティ4を使用する。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性
(%)は、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48,
444~453(1970)のアルゴリズムを使用して決定されてもよい。
【0050】
タンパク質の機能に実質的な影響を有することなく、タンパク質のアミノ酸配列内に生
じ得るバリエーションの度合いは、核酸配列のバリエーションの度合いより非常に小さい
。これは、同じ縮重原理がアミノ酸配列には適用しないためである。したがって、抗体又
は抗原結合フラグメントの文脈において、「実質的に同じ」は、記載された抗体又は抗原
結合フラグメントに対して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%
、97%、98%、又は99%の同一性を有する抗体又は抗原結合フラグメントを意味す
る。他の実施形態は、本明細書に記載された抗体及び抗原結合フラグメントと有意な同一
性を共有しないが、1つ又は2つ以上のCDR又は結合性を付与するのに必要とされる他
の配列を組み込む、フレームワーク、スキャフォールド、又は他の非結合領域を有し、本
明細書に記載されたこのような配列に対して、90%、91%、92%、93%、94%
、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、GPRC5D特異的
抗体又は抗原結合フラグメントを含む。「ベクター」とは、セグメントの複製又は発現を
もたらすように、別の核酸セグメントを操作可能に挿入できる、レプリコン、例えば、プ
ラスミド、ファージ、コスミド、又はウイルスのことである。
【0051】
「クローン」は、有糸分裂により、単一の細胞又は共通する祖先から得られる細胞集団
である。「細胞株」は、インビトロにおいて何代にもわたって安定して成長させることが
できる初代細胞のクローンである。本明細書で提供された一部の例では、細胞は、細胞を
DNAで遺伝子導入することにより、形質転換される。
【0052】
「発現する」及び「生成する」という用語は、本明細書において同義的に使用され、遺
伝子産物の生合成を意味する。これらの用語は、遺伝子のRNAへの転写を包含する。ま
た、これらの用語は、RNAの1つ又は2つ以上のポリペプチドへの翻訳を包含し、全て
の天然の転写後及び翻訳後修飾を更に包含する。抗体又はその抗原結合フラグメントの発
現又は生成は、細胞の細胞質内、又は細胞外環境、例えば、細胞培養の増殖培地内でもよ
い。
【0053】
「処置すること」又は「処置」という用語は、損傷、病理、又は病状の減弱又は改善に
おける、何らかの成功又は成功の兆候を指し、これには、寛解、緩解、症状の低減若しく
は病状を患者にとってより許容できるものにすること、変性又は低下速度を遅くすること
、変性による最終的な衰弱を和らげること、患者の肉体的又は精神的健康を改善すること
、あるいは生存期間を延長することなどの、何らかの客観的又は主観的パラメータを含む
。治療は、客観的又は主観的なパラメータにより評価されてもよい。同パラメータには、
身体検査、神経学的検査、又は精神医学評価の結果が挙げられる。
【0054】
「有効量」又は「治療的に有効な量」は、必要とされる用量及び期間において、所望の
治療結果を達成するのに有効な量を意味する。治療的に有効な量のGPRC5D×CD3
抗体は、個体の病態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を引き出す
抗体の能力等の要因に従って変動し得る。治療的に有効な量はまた、抗体又は抗体部分の
任意の毒性又は有害作用より、治療的に有益な作用が上回る量でもある。
【0055】
「抗体」は、特に断らない限り、免疫グロブリンの全てのアイソタイプ(IgG、Ig
A、IgE、IgM、IgD、及びIgY)を指し、種々の単量体、多量体、及びキメラ
型を含む。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、及び抗体様ポリペプチ
ド、例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体が、「抗体」という用語に具体的に包含される。
【0056】
「抗原結合フラグメント」は、特定の抗原に対して結合親和性を示し得る任意のタンパ
ク質性構造体である。抗原結合フラグメントは、任意の既知の手法、例えば、酵素開裂、
ペプチド合成、及び組み換え手法により提供されたものを含む。一部の抗原結合フラグメ
ントは、親抗体分子の抗原結合特異性を保持しているインタクトな抗体の部分から構成さ
れる。例えば、抗原結合フラグメントは、特定の抗原に結合することが既知である抗体の
、少なくとも1つの可変領域(重鎖若しくは軽鎖の可変領域のいずれか一方)、又は1つ
若しくは2つ以上のCDRを含んでもよい。適切な抗原結合フラグメントの例には、ディ
アボディ(diabodies)及び一本鎖分子、並びにFab、F(ab’)2、Fc、Fab
c、及びFv分子、一本鎖(Sc)抗体、個々の抗体軽鎖、個々の抗体重鎖、抗体鎖若し
くはCDRと他のタンパク質との間でのキメラ融合体、タンパク質スキャフォールド、重
鎖単量体若しくは二量体、軽鎖単量体若しくは二量体、1本の重鎖と1本の軽鎖とからな
る二量体、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価フラグメント、国際公開
第2007059782号に記載された一価抗体、ヒンジ領域においてジスルフィド結合
により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント、V.sub.H及
びC.sub.H1ドメインから本質的になるFdフラグメント、抗体の1つのアームの
VL及びVHドメインから本質的になるFvフラグメント、VHドメインから本質的にな
り、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holt et al;Trends Biotech
nol.2003 Nov.;21(11):484~90)dAbフラグメント(Wa
rd et al.,Nature 341,544~546(1989))、ラクダ科
動物のもの又はナノボディ(Revets et al;Expert Opin Bi
ol Ther.2005 Jan.;5(1):111~24)、単離された相補性決
定領域(CDR)などが挙げられる。全ての抗体アイソタイプが、抗原結合フラグメント
を生成するのに使用されてもよい。加えて、抗原結合フラグメントは、対象となる所与の
抗原に対する親和性を付与する方向にポリペプチドセグメントをうまく組み込み得る、抗
体以外のタンパク質性フレームワーク、例えば、タンパク質スキャフォールドを含んでも
よい。抗原結合フラグメントは、組み換えにより生成されてもよく、又はインタクトな抗
体の酵素分解若しくは化学分解により生成されてもよい。「抗体又はその抗原結合フラグ
メント」という表現は、所与の抗原結合フラグメントが、この表現内で参照された抗体の
1つ又は2つ以上のアミノ酸セグメントを組み込んでいることを示すために使用されても
よい。
【0057】
「CDR」及びその複数形「CDRs」という用語は、相補性決定領域(CDR)であ
って、そのうちの3つが軽鎖可変領域(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)の結
合特性を構成し、3つが重鎖可変領域(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)の結
合特性を構成する、相補性決定領域(CDR)を意味する。CDRは、抗体分子の機能的
活性に寄与し、スキャフォールド領域又はフレームワーク領域を含むアミノ酸配列によっ
て分離される。正確な定義上のCDRの境界及び長さは、様々な分類及び番号付けシステ
ムによって異なる。したがって、CDRは、Kabat定義、Chothia定義、接触
定義、又は任意の他の境界定義によって参照され得る。境界が異なるにもかかわらず、こ
れらのシステムの各々は、可変配列内のいわゆる「超可変領域」を構成する要素において
ある程度のオーバーラップを有する。したがって、これらのシステムによるCDRの定義
は、隣接するフレームワーク領域についての長さ及び境界領域の点で異なることがある。
例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Kabat et a
l.,Sequences of Proteins of Immunologica
l Interest,5th ed.NIH Publication No.91~
3242(1991);Chothia et al.,「Canonical Str
uctures For the Hypervariable Regions of
Immunoglobulins,」J.Mol.Biol.196:901(198
7);並びにMacCallum et al.,「Antibody-Antigen
Interactions:Contact Analysis and Bindi
ng Site Topography,」J.Mol.Biol.262:732(1
996))を参照されたい。
【0058】
典型的には、CDRは、カノニカル構造として分類され得るループ構造を形成する。「
カノニカル構造」という用語は、抗原結合(CDR)ループによって採用される主鎖立体
構造を意味する。比較構造の研究から、6つの抗原結合ループのうちの5つは利用可能な
立体構造のレパートリーがごく限られていることが判明している。各カノニカル構造は、
ポリペプチド主鎖のねじれ角によって特徴付けられ得る。したがって、ループの大部分の
アミノ酸配列の可変性は高いのにもかかわらず、抗体間の対応するループは非常に類似し
た三次元構造を有している(Chothia et al.,「Canonical S
tructures For the Hypervariable Regions
of Immunoglobulins,」J.Mol.Biol.196:901(1
987);Chothia et al.,「Conformations of Im
munoglobulin Hypervariable Regions,」I 34
2:877(1989);Martin and Thornton,「Structu
ral Families in Loops of Homologous Prot
eins:Automatic Classification,Modelling
and Application to Antibodies,」J.Mol.Bio
l.263:800(1996)、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれ
る)。更に、とられるループ構造とその周囲のアミノ酸配列との間には関係がある。特定
のカノニカルクラスの立体構造は、ループの長さと、ループ内の重要な位置並びに保存さ
れたフレームワーク(すなわち、ループの外側)内にあるアミノ酸残基とによって決定さ
れる。したがって、これらの重要なアミノ酸残基の存在に基づいて、特定のカノニカルク
ラスへの割り当てを行うことができる。
【0059】
「ポリペプチド」という用語は、「タンパク質」という用語と互換的に使用され、その
最も広い意味において、2つ又はそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、又
はペプチド模倣体の化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合によって連結されてい
てもよい。別の実施形態では、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテル
などによって連結されてもよい。本明細書で使用されるとき、「アミノ酸」という用語は
、グリシン並びにD及びL光学異性体の両方と、アミノ酸類似体と、ペプチド模倣体とを
含む、天然及び/若しくは非天然アミノ酸又は合成アミノ酸のいずれかを指す。3つ又は
それ以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短い場合、一般にオリゴペプチドと称さ
れる。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは、一般にポリペプチド又はタンパク質と称され
る。
【0060】
抗体又は抗体フラグメントの文脈において使用されるとき、「特異的に結合(Specific
ally binds)」若しくは「特異的に結合(binds specifically)」又はそれらの派生語は
、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによりコードされたド
メインを介し、混合された様々な分子を含有するサンプル中で他の分子に優先的に結合す
ることなく対象となるタンパク質の1つ又は2つ以上のエピトープに結合することを表わ
す。典型的には、抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイ又は細胞結合アッセイにより測定
された場合、約1×10-8M未満のKdで、同種の抗原に結合する。「[抗原]特異的」
抗体(例えば、GPRC5D特異的抗体)等の表現は、列挙された抗体が列挙された抗原
に特異的に結合することを伝える意味である。
【0061】
「ポリヌクレオチド」は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」と
呼ばれ、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAでもよい、任意のポ
リリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」に
は、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及
び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、DNA及びRN
Aを含むハイブリッド分子(一本鎖、又はより典型的には、二本鎖、又は一本鎖及び二本
鎖の領域の混合物でもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌ
クレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を
指す。用語、ポリヌクレオチドには、1つ又は2つ以上の修飾塩基を含有するDNA又は
RNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された主鎖を有するDNA又はRNAも
含まれる。「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシン
を含む。各種の修飾が、DNA及びRNAになされてもよい。したがって、「ポリヌクレ
オチド」は、典型的に天然に認められるポリヌクレオチドの、化学反応、酵素反応又は代
謝反応により修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有す
る化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合
、オリゴヌクレオチドと呼ばれる)も包含する。
【0062】
「ベクター」とは、セグメントの複製又は発現をもたらすように、別の核酸セグメント
を操作可能に挿入できるレプリコン、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、又はウ
イルスのことである。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「宿主細胞」という用語は、例えば、初代細胞、培養中の
細胞、又は細胞株由来の細胞といった任意のタイプの細胞であってよい。特定の実施形態
では、「宿主細胞」という用語は、核酸分子を遺伝子導入された細胞、及びそのような細
胞の子孫又は潜在的子孫を指す。このような細胞の子孫は、核酸分子で遺伝子導入された
親細胞とは、例えば、宿主細胞ゲノムへの核酸分子の後続の生成又は集積において生じ得
る、変異又は環境からの影響により、同一ではないことがある。「発現」及び「生成」と
いう用語は、本明細書において同義的に使用され、遺伝子産物の生合成を意味する。これ
らの用語は、遺伝子のRNAへの転写を包含する。また、これらの用語は、RNAの1つ
又は2つ以上のポリペプチドへの翻訳を包含し、全ての天然の転写後及び翻訳後修飾を更
に包含する。抗体又はその抗原結合フラグメントの発現又は生成は、細胞の細胞質内、又
は細胞外環境、例えば、細胞培養用の増殖培地内でもよい。「実質的に同じ」の意味は、
この用語が使用される文脈に応じて異なる場合がある。重鎖及び軽鎖並びにこれらをコー
ドする遺伝子中には天然の配列バリエーションが存在し得ることから、本明細書に記載さ
れたアミノ酸配列又は抗体若しくは抗原結合フラグメントをコードする遺伝子内には、固
有の結合特性(例えば、特異的及び親和性)にはほとんど影響しない、又は影響しない、
ある程度のバリエーションが見られることが予測される。このような予測は、部分的には
、遺伝暗号の縮重及び保存的アミノ酸配列バリエーションの進化的成功による。同バリエ
ーションは、コードされたタンパク質の性質を認識され得るほどには改変させない。した
がって、核酸配列の文脈において、「実質的に同じ」は、2つ以上の配列間での少なくと
も65%の同一性を意味する。好ましくは、この用語は、2つ以上の配列間での少なくと
も70%の同一性、より好ましくは、少なくとも75%の同一性、より好ましくは、少な
くとも80%の同一性、より好ましくは、少なくとも85%の同一性、より好ましくは、
少なくとも90%の同一性、より好ましくは、少なくとも91%の同一性、より好ましく
は、少なくとも92%の同一性、より好ましくは、少なくとも93%の同一性、より好ま
しくは、少なくとも94%の同一性、より好ましくは、少なくとも95%の同一性、より
好ましくは、少なくとも96%の同一性、より好ましくは、少なくとも97%の同一性、
より好ましくは、少なくとも98%の同一性、及びより好ましくは、少なくとも99%以
上の同一性を意味する。2つの配列間の同一性(%)は、ギャップ数及び各ギャップの長
さを考慮して、配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性の
割合(%)=同一位置数/位置の総数×100)。同考慮は、2つの配列の最適なアライ
メントを導くのに必要である。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセン
トは、例えば、E.Meyers and W.Miller,Comput.Appl
.Biosci 4,11~17(1988)のアルゴリズムを使用して決定されてもよ
い。同アルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており
、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナル
ティ4を使用する。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性(%)は、Needlema
n and Wunsch,J.Mol.Biol.48,444~453(1970)
のアルゴリズムを使用して決定されてもよい。
【0064】
タンパク質の機能に実質的な影響を有することなく、タンパク質のアミノ酸配列内に生
じ得るバリエーションの度合いは、核酸配列のバリエーションの度合いより非常に小さい
。これは、同じ縮重原理がアミノ酸配列には当てはまらないためである。したがって、抗
体又は抗原結合フラグメントの文脈において、「実質的に同じ」は、記載された抗体又は
抗原結合フラグメントに対して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、9
6%、97%、98%、又は99%の同一性を有する抗体又は抗原結合フラグメントを意
味する。他の実施形態は、本明細書に記載された抗体及び抗原結合フラグメントと有意な
同一性を共有しないが、1つ又は2つ以上のCDR又は結合性を付与するのに必要とされ
る他の配列を組み込む、フレームワーク、スキャフォールド、又は他の非結合領域を有し
、本明細書に記載されたこのような配列に対して、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する、GPRC5D特
異的抗体又は抗原結合フラグメントを含む。
【0065】
「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を意味し、全ての脊椎動物、例えば、哺乳
類及び非哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、
ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類を意味する。記載された方法の多くの実施形態では
、対象はヒトである。
【0066】
本明細書で使用されるとき、「再指向」又は「再指向する」という用語は、GPRC5
D×CD3抗体が、T細胞の活性を、かかる細胞がもともと備えている同種に特異的なも
のから、GPRC5D発現細胞に対し反応性があるものへと効果的に変換する能力を指す
【0067】
本明細書で使用されるとき、「サンプル」という用語は、対象から単離された、類似す
る流体、細胞、又は組織(例えば、外科手術により切除された腫瘍組織、微細針吸引を含
む生検)の収集物、並びに対象内に存在する流体、細胞、又は組織を意味する。一部の実
施形態では、サンプルは、体液である。体液は、典型的には、生理学的温度において液体
であり、対象又は生物学的資源中に存在し、これらから採取され、これらから外に出され
、あるいは抽出された天然に生じる流体を含んでもよい。特定の組織、臓器、又は局所的
な領域から得られたある種の体液及びその他のある種の体液は、対象又は生物学的資源に
おいて、より全体的に又は全身的に適していてもよい。体液の例としては、血液、血清及
び漿膜液、血漿、リンパ、尿、唾液、嚢胞液、涙、糞、痰、分泌組織及び臓器の粘膜分泌
物、膣分泌物、腹水液、例えば、非固体腫瘍に関連するもの、胸膜、心膜、腹膜、腹部及
び他の体腔の液体、気管支洗浄により収集された液体等が挙げられる。体液はまた、対象
又は生体資源と接触した溶液、例えば、細胞又は臓器馴化培地を含む細胞及び臓器培養培
地、洗浄液等を含んでもよい。本明細書で使用されるとき、「サンプル」という用語は、
対象から取り出された材料又は対象中に存在する材料を包含する。
【0068】
「既知の標準」は、既知の量又は濃度のGPRC5Dを有する溶液でもよい。この場合
、この溶液は、自然発生する溶液、例えば、初期、中期、後期、進行性、又は静的がんを
有することが判明している患者由来のサンプルでもよく、又はこの溶液は、希釈された既
知の量のGPRC5Dを含む緩衝水溶液等の合成溶液でもよい。本明細書に記載された既
知の標準は、対象から単離されたGPRC5D、組み換え若しくは精製されたGPRC5
Dタンパク質、又は病態に関連するGPRC5D濃度の値を含んでもよい。
【0069】
本明細書で使用するとき、用語「Gタンパク質連結受容体ファミリーCグループ5メン
バーD」及び「GPRC5D」は、特に、例えば、GenBankアクセッション番号B
C069341、NCBI参照配列:NP_061124.1及びUniProtKB/
Swiss-Protアクセッション番号Q9NZD1に記載のとおりのヒトGPRC5
Dタンパク質を包含する(Brauner-Osborne,H.et al.2001
,Biochim.Biophys.Acta 1518,237~248も参照のこと
)。
【0070】
「CD3」という用語は、ヒトCD3タンパク質マルチサブユニット複合体を意味する
。CD3タンパク質マルチサブユニット複合体は、6つの区別できるポリペプチド鎖から
構成される。これらは、CD3γ鎖(SwissProt P09693)、CD3δ鎖
(SwissProt P04234)、2つのCD3ε鎖(SwissProt P0
7766)、及び1つのCD3ζ鎖ホモ二量体(SwissProt 20963)を含
み、T細胞受容体α及びβ鎖と会合する。「CD3」という用語は、特に断りのない限り
、細胞(T細胞を含む)により本来発現されているか、又はそれらのポリペプチドをコー
ドする遺伝子若しくはcDNAにより遺伝子導入された細胞上に発現され得る任意のCD
3変異体、アイソフォーム、及び種間ホモログを含む。
【0071】
「GPRC5D×CD3抗体」は、多重特異的抗体、場合により、二重特異性抗体であ
り、同二重特異性抗体は、2種類の異なる抗原結合領域を含み、一方の抗原結合領域は、
抗原GPRC5Dに特異的に結合し、もう一方の抗原結合領域は、CD3に特異的に結合
する。多重特異的抗体は、二重特異性抗体、ディアボディ(diabody)、又は類似する分
子であり得る(ディアボディの説明については、例えば、PNAS USA 90(14
),6444~8(1993)を参照のこと)。本明細書で提供された二重特異性抗体、
ディアボディ等は、GPRC5Dの一部分に加えて、任意の適切な標的に結合してもよい
。「二重特異性抗体」という用語は、異なる抗体配列により定義された、2種類の異なる
抗原結合領域を有する抗体と理解されたい。これは、異なる標的結合と理解され得るが、
1つの標的中の異なるエピトープに同様に結合することを含む。
【0072】
「参照サンプル」は、別のサンプル、例えば、試験サンプルと比較することで、比較さ
れるサンプルの特性を評価できるサンプルである。参照サンプルは、試験サンプルとの比
較の際に基準として機能する、特性評価済みの何らかの特性を有する。例えば、参照サン
プルは、がんを有する対象を示すGPRC5Dレベルについてのベンチマークとして使用
することができる。参照サンプルは、必ずしも試験サンプルと平行して分析されなくても
よい。そのため一部の例では、参照サンプルは、所与の状態を特性評価するために予め設
定された数値又は範囲、例えば、対象におけるがんの指標となるGPRC5Dレベルでも
よい。この用語はまた、生理学的状態又は病態、例えば、GPRC5D発現がんに関連す
ることが既知であるが、含まれるGPRC5量が不明である、比較目的で使用されるサン
プルを含む。
【0073】
GPRC5D発現がんの進行の文脈において使用されるとき、「進行」という用語は、
より重篤でない状態からより重篤な状態へのがんの変化を含む。これは、腫瘍の数又は重
症度、転移の程度、がんが成長又は拡散する速度等の増大を含むことができる。例えば、
「結腸がんの進行」には、このようながんの、より重篤でない状態からより重篤な状態へ
の進行、例えば、ステージIからステージIIへ、ステージIIからステージIIIへ等
の進行が挙げられる。
【0074】
GPRC5D発現がんの退縮の文脈において使用されるとき、「退縮」という用語は、
より重篤な状態からより重篤でない状態へのがんの変化を含む。これは、腫瘍の数又は重
症度、転移の程度、がんが成長又は拡散する速度等の低減を含むことができると考えられ
る。例えば、「結腸がんの退縮」には、このようながんの、より重篤な状態からより重篤
でない状態への退縮、例えば、ステージIIIからステージIIへ、ステージIIからス
テージIへ等の回復(progression)が挙げられる。
【0075】
不変のGPRC5D発現がんの文脈において使用されるとき、「不変の」という用語は
、臨床的に関連する期間にわたって、がんが進行している又は退縮しているとみなすのに
有意に十分な程度の変化が生じていない、又は変化していなかったと病態を説明すること
を意図している。
【0076】
本明細書に記載された実施形態は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物系に
限定されるものではなく、当然、様々に変更され得る。
【0077】
GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメント
本明細書において、GPRC5Dに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体
又は抗原結合フラグメントが記載されている。抗体分子の全体的な構造は、抗原結合ドメ
インを含む。同ドメインは、重鎖及び軽鎖並びにFcドメインを含み、補体固定及び抗体
の結合受容体(binding antibody receptors)を含む各種の機能を果たす。
【0078】
記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、全てのアイソタイプ
である、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、並びに4本鎖免疫グロブリン構
造の合成多量体を含む。記載された抗体又は抗原結合フラグメントはまた、雌鳥又はシチ
メンチョウの血清及び雌鳥又はシチメンチョウの卵黄中に一般的に見出されるIgYアイ
ソタイプも含む。
【0079】
GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、組み換え手法により任意の種か
ら得ることができる。例えば、抗体又は抗原結合フラグメントは、マウス、ラット、ヤギ
、ウマ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヒト、又はそれらのキメラ版で
もよい。ヒトへの投与に使用するために、非ヒト由来の抗体又は抗原結合フラグメントは
、ヒト患者への投与時に、抗原性がより低くなるよう遺伝的に又は構造的に改変されても
よい。
【0080】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントはキメラである。本明細書で使用
されるとき、「キメラ」という用語は、抗体又はその抗原結合フラグメントであって、非
ヒト哺乳類、げっ歯類、又は爬虫類の抗体アミノ酸配列に由来する少なくとも1つの可変
ドメインの少なくともいくらかの部分を有するものの、それらの残りの部分はヒトに由来
するものである、抗体又はその抗原結合フラグメントを指す。
【0081】
一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリ
ンに由来する最少配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖、又は
フラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原
結合部分配列)であってもよい。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性
決定領域(CDR)からの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種、例
えば、マウス、ラット、又はウサギのCDRからの残基(ドナー抗体)により置き換えら
れているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一般的には、ヒト化抗体は、
少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むこととなる。同可
変ドメイン中、全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領
域に対応し、全て又は実質的に全てのフレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリン配列の
フレームワーク領域である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的に
は、ヒト免疫グロブリンのFcのうち少なくとも一部分を含んでもよい。
【0082】
本明細書に記載された抗体又は抗原結合フラグメントは、各種の形態で存在し得るが、
表1に示された抗体CDRのうち1つ又は2つ以上を含むこととなる。
【0083】
本明細書において、GPRC5Dに免疫特異的に結合する、単離された抗体及び抗原結
合フラグメントが記載されている。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体又は抗
原結合フラグメントは、ヒトIgG又はその誘導体である。本明細書で例示されたGPR
C5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒトのものであるが、例示された抗体又
は抗原結合フラグメントは、キメラ化されてもよい。
【0084】
一部の実施形態では、表1に記載された抗体のうちいずれか1つのCDR1、CDR2
、及びCDR3を含む重鎖を含む、GPRC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメン
トが提供される。一部の実施形態では、表1に記載された抗体のうちいずれか1つのCD
R1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖と、表1に記載された抗体のうちいずれか1つ
のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖と、を含む、GPRC5D特異的抗体又
はその抗原結合フラグメントが提供される。
【0085】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
1を含む重鎖CDR1、配列番号5を含む重鎖CDR2、及び配列番号9を含む重鎖CD
R3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは
、配列番号1を含む重鎖CDR1、配列番号5を含む重鎖CDR2、配列番号9を含む重
鎖CDR3、配列番号13を含む軽鎖CDR1、配列番号16を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号19を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラ
グメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では、GPRC5
D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号52と実質的に同じ又は同一の重鎖
可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグ
メントは、配列番号52と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配列番号56と
実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討された抗体の
重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5Dアームである
、二重特異性構築物への包含に適している。
【0086】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
2を含む重鎖CDR1、配列番号6を含む重鎖CDR2、及び配列番号10を含む重鎖C
DR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメント
は、配列番号2を含む重鎖CDR1、配列番号6を含む重鎖CDR2、配列番号10を含
む重鎖CDR3、配列番号13を含む軽鎖CDR1、配列番号16を含む軽鎖CDR2、
及び配列番号19を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は抗原結合
フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では、GPR
C5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号53と実質的に同じ又は同一の
重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フ
ラグメントは、配列番号53と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配列番号5
6と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討された抗
体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5Dアームで
ある、二重特異性構築物への包含に適している。
【0087】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
3を含む重鎖CDR1、配列番号7を含む重鎖CDR2、及び配列番号11を含む重鎖C
DR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメント
は、配列番号3を含む重鎖CDR1、配列番号7を含む重鎖CDR2、配列番号11を含
む重鎖CDR3、配列番号14を含む軽鎖CDR1、配列番号17を含む軽鎖CDR2、
及び配列番号20を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は抗原結合
フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では、GPR
C5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号54と実質的に同じ又は同一の
重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フ
ラグメントは、配列番号54と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配列番号5
7と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討された抗
体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5Dアームで
ある、二重特異性構築物への包含に適している。
【0088】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
4を含む重鎖CDR1、配列番号8を含む重鎖CDR2、及び配列番号12を含む重鎖C
DR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメント
は、配列番号4を含む重鎖CDR1、配列番号8を含む重鎖CDR2、配列番号12を含
む重鎖CDR3、配列番号15を含む軽鎖CDR1、配列番号18を含む軽鎖CDR2、
及び配列番号21を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は抗原結合
フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では、GPR
C5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号55と実質的に同じ又は同一の
重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フ
ラグメントは、配列番号55と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配列番号5
8と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討された抗
体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5Dアームで
ある、二重特異性構築物への包含に適している。
【0089】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
61を含む重鎖CDR1、配列番号67を含む重鎖CDR2、及び配列番号72を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号61を含む重鎖CDR1、配列番号67を含む重鎖CDR2、配列番号
72を含む重鎖CDR3、配列番号13を含む軽鎖CDR1、配列番号78を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号80を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号82と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号82と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号92と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0090】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
2を含む重鎖CDR1、配列番号28を含む重鎖CDR2、及び配列番号30を含む重鎖
CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメン
トは、配列番号2を含む重鎖CDR1、配列番号28を含む重鎖CDR2、配列番号30
を含む重鎖CDR3、配列番号13を含む軽鎖CDR1、配列番号16を含む軽鎖CDR
2、及び配列番号19を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は抗原
結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では、G
PRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号83と実質的に同じ又は同
一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結
合フラグメントは、配列番号83と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配列番
号56と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討され
た抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5Dアー
ムである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0091】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
27を含む重鎖CDR1、配列番号29を含む重鎖CDR2、及び配列番号73を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号27を含む重鎖CDR1、配列番号29を含む重鎖CDR2、配列番号
73を含む重鎖CDR3、配列番号14を含む軽鎖CDR1、配列番号17を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号20を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号84と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号84と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号57と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0092】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
27を含む重鎖CDR1、配列番号29を含む重鎖CDR2、及び配列番号11を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号27を含む重鎖CDR1、配列番号29を含む重鎖CDR2、配列番号
11を含む重鎖CDR3、配列番号14を含む軽鎖CDR1、配列番号17を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号20を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号85と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号85と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号57と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0093】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
62を含む重鎖CDR1、配列番号68を含む重鎖CDR2、及び配列番号74を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号62を含む重鎖CDR1、配列番号68を含む重鎖CDR2、配列番号
74を含む重鎖CDR3、配列番号14を含む軽鎖CDR1、配列番号17を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号20を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号86と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号86と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号57と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0094】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
63を含む重鎖CDR1、配列番号69を含む重鎖CDR2、及び配列番号75を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号63を含む重鎖CDR1、配列番号69を含む重鎖CDR2、配列番号
75を含む重鎖CDR3、配列番号13を含む軽鎖CDR1、配列番号78を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号80を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号87と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号87と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号92と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0095】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
64を含む重鎖CDR1、配列番号70を含む重鎖CDR2、及び配列番号12を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号64を含む重鎖CDR1、配列番号70を含む重鎖CDR2、配列番号
12を含む重鎖CDR3、配列番号15を含む軽鎖CDR1、配列番号18を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号21を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号88と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号88と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号58と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0096】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
65を含む重鎖CDR1、配列番号68を含む重鎖CDR2、及び配列番号76を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号65を含む重鎖CDR1、配列番号68を含む重鎖CDR2、配列番号
76を含む重鎖CDR3、配列番号95を含む軽鎖CDR1、配列番号79を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号81を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号89と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号89と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号93と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0097】
一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号
66を含む重鎖CDR1、配列番号71を含む重鎖CDR2、及び配列番号77を含む重
鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメ
ントは、配列番号66を含む重鎖CDR1、配列番号71を含む重鎖CDR2、配列番号
77を含む重鎖CDR3、配列番号15を含む軽鎖CDR1、配列番号18を含む軽鎖C
DR2、及び配列番号21を含む軽鎖CDR3を含む。このGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントは、ヒトフレームワーク配列を含んでもよい。一部の実施形態では
、GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号91と実質的に同じ又
は同一の重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体及び抗
原結合フラグメントは、配列番号91と実質的に同じ又は同一の重鎖可変ドメインと、配
列番号94と実質的に同じ又は同一の軽鎖可変ドメインとを含む。この段落において検討
された抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、1つのアームが抗GPRC5D
アームである、二重特異性構築物への包含に適している。
【0098】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、IgG又はその誘導体、例え
ば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のアイソタイプである。抗体がIgG
1アイソタイプである一部の実施形態では、抗体は、IgG1のFc領域(配列番号60
)を含む。
【0099】
配列番号60
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVS
WNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQT
YICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGG
PSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNW
YVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGK
EYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREE
MTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPV
LDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYT
QKSLSLSPGK
【0100】
抗体がIgG4アイソタイプである一部の実施形態では、抗体は、Fc領域(配列番号
59)中にS228P、L234A、及びL235A置換を含有する。
【0101】
配列番号59
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVS
WNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKT
YTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSV
FLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVD
GVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYK
CKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTK
NQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDS
DGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKS
LSLSLGK
【0102】
上記段落において検討された、CDR及び/又は可変ドメイン配列により定義された特
異的抗体は、これらの変形例を含んでもよい。
【0103】
GPRC5Dに免疫特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントをコードする単離
されたポリヌクレオチドもまた開示される。本明細書で提供された可変ドメインセグメン
トをコード可能な単離されたポリヌクレオチドは、抗体又は抗原結合フラグメントを生成
する同一の又は異なるベクターに含まれてもよい。GPRC5D抗体をコードする例示的
なポリヌクレオチド配列を以下に示す抗体をコード:
重鎖配列(配列番号:96):
atggcctgggtctggaccctgctgttcctgatggccgctg
cccagagcatccaggcccaggtgcagctggtgcagagcgg
cgccgaggtgaagaagcccggcgccagcgtgaaggtgagc
tgcaaggccagcggctacagcttcaccggctacaccatga
actgggtgcggcaggcccccggccagggcctggagtggat
gggcctgatcaacccctacaacagcgacaccaactacgcc
cagaagctgcagggccgggtgaccatgaccaccgacacca
gcaccagcaccgcctacatggagctgcggagcctgcggag
cgacgacaccgccgtgtactactgcgcccgggtggccctg
cgggtggccctggactactggggccagggcaccctggtga
ccgtgagcagcgcctccaccaagggcccatccgtcttccc
cctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagcc
gccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccgg
tgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgt
gcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctac
tccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgg
gcacgaaaacctacacctgcaacgtagatcacaagcccag
caacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggt
cccccatgcccaccatgcccagcacctgaggccgccgggg
gaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacac
tctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtg
gtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaact
ggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaa
gccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtc
agcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggca
aggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtc
ctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccc
cgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggagg
agatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaa
aggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggagagc
aatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccg
tgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggct
aaccgtggacaagagcaggtggcaggaggggaatgtcttc
tcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactaca
cacagaagagcctctccctgtctctgggtaaatga
軽鎖配列(配列番号:90):
atgcgggtgctggcccagctgctgggactgctgctgctgt
gcttccctggcgccagatgcgacatccagatgacccagag
ccccagcagcctgagcgccagcgtgggcgaccgggtgacc
atcacctgcaaggccagccagaacgtggccacccacgtgg
gctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagcggct
gatctacagcgccagctaccggtacagcggcgtgcccagc
cggttcagcggcagcggcagcggcaccgagttcaccctga
ccatcagcaacctgcagcccgaggacttcgccacctacta
ctgccagcagtacaaccggtacccctacaccttcggccag
ggcaccaagctggagatcaagcgtacggtggctgcaccat
ctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatc
tggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctat
cccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccc
tccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcagga
cagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacg
ctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcct
gcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaa
gagcttcaacaggggagagtgttga
【0104】
組み換え抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた、本開示の範囲内で
ある。一部の実施形態では、記載されたポリヌクレオチド(及びこのポリヌクレオチドが
コードするペプチド)は、リーダー配列を含む。当技術分野において既知の任意のリーダ
ー配列を利用することができる。リーダー配列は、制限部位又は翻訳開始部位を含み得る
がこれらに限定されない。
【0105】
本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、記載され
たGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントの生物学的特性(例えば、結合親和
性又は免疫エフェクター活性)を保持している、1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、又
は付加を有する多様体を含む。本発明の文脈において、下記注釈は、別途記載のない限り
、変異を説明するのに使用される。i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、
S228Pと記載される。S228Pは、228位におけるセリンのプロリンによる置換
を意味する。ii)特定の多様体について、特定の三文字又は一文字コードは、コードX
aa及びXを含めて、アミノ酸残基を示すのに使用される。このため、228位における
アルギニンについてのセリンの置換は、S228Pと表記され、又は228位におけるセ
リンについての任意のアミノ酸残基の置換は、S228Pと表記される。228位におけ
るセリンの欠失の場合には、この欠失は、S228*により示される。当業者であれば、
1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有する多様体を生成することができる。
【0106】
これらの多様体としては、(a)1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存
的アミノ酸により置換されている多様体、(b)1つ又は2つ以上のアミノ酸がポリペプ
チドに付加され、又は同ポリペプチドから欠失している多様体、(c)1つ又は2つ以上
のアミノ酸が置換基を含む多様体、及び(d)ポリペプチドが別のペプチド又はポリペプ
チド、例えば、融合パートナー、タンパク質タグ、又は他の化学部分と融合した多様体、
を挙げることができる。これらは、ポリペプチドに有用な特性、例えば、抗体に対するエ
ピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分等を付与してもよい。本明細書に記載され
た抗体又は抗原結合フラグメントは、保存的又は非保存的位置のいずれかにおいてある種
からのアミノ酸残基が別の種における対応する残基に置換されている多様体を含んでもよ
い。他の実施形態では、非保存的位置におけるアミノ酸残基は、保存的又は非保存的残基
により置換される。これらの多様体を得るための手法は、遺伝的(欠失、変異等)、化学
的、及び酵素的手法を含めて、当業者に既知である。
【0107】
本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、いくつか
の抗体アイソタイプ、例えば、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEを具現化す
ることができる。一部の実施形態では、抗体アイソタイプは、IgG1、IgG2、Ig
G3、又はIgG4のアイソタイプ、好ましくは、IgG1又はIgG4のアイソタイプ
である。抗体又はその抗原結合フラグメントの特異性は、CDRのアミノ酸配列及び配置
により主に決定される。したがって、あるアイソタイプのCDRは、抗原特異性を変化さ
せることなく、別のアイソタイプに変更することができる。あるいは、抗原特異性を変化
させることなく、ハイブリドーマに、ある抗体アイソタイプを別のものにスイッチさせる
技術(アイソタイプスイッチング)が確立されてきた。したがって、このような抗体アイ
ソタイプは、記載された抗体又は抗原結合フラグメントの範囲内にある。
【0108】
本明細書に記載されたポリヌクレオチドを含むベクターもまた提供される。ベクターは
、発現ベクターであり得る。このため、対象となるポリペプチドをコードする配列を含有
する組み換え発現ベクターは、本開示の範囲内であると想到される。発現ベクターは、1
つ又は2つ以上の追加配列を含有してもよい。同追加配列には、例えば、制御配列(例え
ば、プロモータ、エンハンサー)、選択マーカー、及びポリアデニル化シグナルが挙げら
れるが、これらに限定されない。広い各種の宿主細胞を形質転換するためのベクターは公
知であり、プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌人
工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、並びに、他の細菌、酵母、及びウイル
スのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
本説明の範囲内にある組み換え発現ベクターは、適切な調節エレメントに操作可能に連
結することができる少なくとも1つの組み換えタンパク質をコードする、合成、ゲノム、
又はcDNA由来の核酸フラグメントを含む。このような調節エレメントには、転写プロ
モータ、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終
了を制御する配列を挙げることができる。発現ベクター、特に、哺乳類の発現ベクターは
また、1つ又は2つ以上の非転写エレメント、例えば、複製の起点、発現される遺伝子に
連結された適切なプロモータ及びエンハンサー、他の5’又は3’フランキング非転写配
列、5’又は3’非翻訳配列(例えば、必須リボソーム結合部位)、ポリアデニル化部位
、スプライスドナー及びアクセプター部位、又は転写終了配列を含んでもよい。宿主にお
いて複製する能力を付与する複製の起点もまた包含されてもよい。
【0110】
脊椎動物細胞を形質転換するのに使用される発現ベクター中の転写及び翻訳制御配列は
、ウイルス資源により提供することができる。例示的なベクターは、Okayama a
nd Berg,3 Mol.Cell.Biol.280(1983)に記載されたよ
うに構築されてもよい。
【0111】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントのコード配列は、強力な構成的プ
ロモータ、例えば、下記遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(H
PRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータアクチン、ヒトミオシ
ン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン等のためのプロモータの制御下に置かれる。加
えて、多くのウイルスプロモータが、真核細胞中で恒常的に機能し、記載された実施形態
での使用に適している。このようなウイルスプロモータには、サイトメガロウイルス(C
MV)中間初期プロモータ、SV40の初期及び後期プロモータ、マウス乳がんウイルス
(MMTV)プロモータ、モロニー白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、
エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及び他のレトロ
ウイルスの長端末反復配列(LTR)、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ
プロモータが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、GPRC5D特異
的抗体又はその抗原結合フラグメントのコード配列は、誘導性プロモータ、例えば、メタ
ロチオネインプロモータ、テトラサイクリン誘導性プロモータ、ドキシサイクリン誘導性
プロモータ、1つ又は2つ以上のインターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)、例
えば、プロテインキナーゼR 2’,5’-オリゴアデニレート合成酵素、MX遺伝子、
ADAR1等を含有するプロモータの制御下に置かれる。
【0112】
本明細書に記載されたベクターは、1つ又は2つ以上の配列内リボソーム進入部位(I
RES)を含有してもよい。IRES配列の融合ベクター内への包含は、一部のタンパク
質の発現を増強させるのに有益であり得る。一部の実施形態では、ベクター系は、1つ又
は2つ以上のポリアデニル化部位(例えば、SV40)を含むこととなる。同部位は、前
述の核酸配列のうちいずれかの上流又は下流にあってもよい。ベクターの成分は、近接し
て連結されてもよく、又は遺伝子産物を発現させるのに最適な間隔を提供するように(す
なわち、ORF間に「スペーサー」ヌクレオチドを導入することにより)配置されてもよ
く、若しくは別の方法で位置付けられてもよい。調節エレメント、例えば、IRESモチ
ーフはまた、発現に最適な間隔を提供するように配置されてもよい。
【0113】
ベクターは、当技術分野において既知の選択マーカーを含んでもよい。選択マーカーに
は、陽性及び陰性選択マーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐
性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐
性遺伝子、ペニシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性
遺伝子)、グルタミン酸合成酵素遺伝子、ガンシクロビル選択用のHSV-TK、HSV
-TK誘導体、又は6-メチルプリン選択用の細菌のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ
遺伝子(Gadi et al.,7 Gene Ther.1738~1743(20
00))が挙げられる。選択マーカーをコードする核酸配列又はクローニング部位は、対
象となるポリペプチドをコードする核酸配列又はクローニング部位の上流又は下流にあっ
てもよい。
【0114】
本明細書に記載されたベクターを使用して、記載された抗体又は抗原結合フラグメント
をコードする遺伝子により種々の細胞を形質転換することができる。例えば、ベクターを
使用して、GPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントの生成細胞を生じさせるこ
とができる。このため、別の態様は、GPRC5Dに特異的に結合する抗体又はその抗原
結合フラグメント、例えば、本明細書に記載され、例示された抗体又は抗原結合フラグメ
ントをコードする核酸配列を含むベクターで形質転換された宿主細胞を特徴とする。
【0115】
外来遺伝子を細胞内に導入するための数多くの手法が、当技術分野において既知であり
、本明細書に記載され、例示された種々の実施形態に従って、記載された方法を行う目的
で組み換え細胞を作成するのに使用することができる。使用される手法は、異種遺伝子配
列が細胞の子孫により遺伝及び発現可能であり、かつレシピエント細胞に必須の成育及び
生理学的機能を損なうことのないよう、異種遺伝子配列を宿主細胞に安定して導入するも
のでなければならない。使用することができる手法としては、染色体導入法(例えば、細
胞融合、染色体介在性遺伝子導入、マイクロ細胞介在性遺伝子導入)、物理的方法(例え
ば、トランスフェクション、スフェロプラスト融合、マイクロインジェクション、エレク
トロポレーション、リポソーム担体)、ウイルスベクター導入(例えば、組み換えDNA
ウイルス、組み換えRNAウイルス)等が挙げられる(Cline,29 Pharma
c.Ther.69~92(1985)に記載)が、これらに限定されない。哺乳類細胞
による細菌プロトプラストのリン酸カルシウム沈殿及びポリエチレングリコール(PEG
)誘導融合を使用しても、細胞を形質転換することができる。
【0116】
本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントの発現に使用
するのに適した細胞は、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、植物、げっ歯類、又は
ヒト起源の細胞である。これらの細胞には、例えば、NSO、CHO、CHOK1、pe
rC.6、Tk-ts13、BHK、HEK293細胞、COS-7、T98G、CV-
1/EBNA、L細胞、C127、3T3、HeLa、NS1、Sp2/0骨髄腫細胞、
とりわけBHK細胞株等が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、抗体の発現は
、ハイブリドーマ細胞を使用して達成されてもよい。ハイブリドーマを生成するための方
法は、当該技術分野において十分確立されている。
【0117】
本明細書に記載された発現ベクターにより形質転換された細胞は、本明細書に記載され
た抗体又は抗原結合フラグメントの組み換え発現について選択され、又はスクリーニング
されてもよい。組み換え陽性細胞は、タンパク質改変又は変化させた翻訳後修飾により、
所望の表現型、例えば、高レベルの発現、向上した増殖特性、又は所望の生化学的特性を
有するタンパク質を生成する能力を示すサブクローンについて、増殖され、スクリーニン
グされる。これらの表現型は、所与のサブクローンの本来の特性又は変異によるものであ
り得る。変異は、化学薬品、UV波長光、照射、ウイルス、挿入変異源、DNAミスマッ
チ修復の阻害、又はこのような方法の組み合わせにより生じ得る。
【0118】
処置のためにGPRC5D特異的抗体を使用する方法
本明細書において、治療に使用するための、GPRC5D特異的抗体又はその抗原結合
フラグメントが提供される。特に、これらの抗体又は抗原結合フラグメントは、がん、例
えば、GPRC5D発現がんを処置するのに有用であり得る。したがって、本発明は、本
明細書に記載されたとおりの抗体、例えば、GPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグ
メントを投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。例えば、使用は、GPR
C5D受容体相互作用と干渉することによるものであってよく、すなわち、かかる抗体に
毒素がコンジュゲートされると、毒素はGPRC5D発現がんを標的とするようになる。
一部の実施形態では、GPRC5D発現には多発性骨髄腫(MM)などのリンパ腫を含む
。これらの方法において使用する抗体には、本明細書に前述したもの、例えば、表1及び
これらの抗体の更なる検討において列記された特徴、例えば、CDR又は可変ドメイン配
列を有するGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントが含まれる。
【0119】
本明細書に記載された一部の実施形態では、GPRC5D特異的抗体の免疫エフェクタ
ー特性は、当業者に既知の技術によるFc改変によって増強又はサイレンシングさせるこ
とができる。例えば、Fcエフェクター機能、例えば、Clq結合、補体依存性細胞傷害
(CDC)、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞介在性貪食(
ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーショ
ンなどのFcエフェクター機能は、これらの活性に関与するFcの残基を修飾することに
よって提供及び/又は調節され得る。
【0120】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」又は「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現
している非特異的細胞傷害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及び
マクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、続けて、標的細胞の溶解を引き
起こす、細胞介在性反応を指す。
【0121】
ADCCを誘導するモノクローナル抗体の能力は、そのオリゴ糖成分を操作することに
より増強され得る。ヒトIgG1又はIgG3は、Asn297においてN-グリコシル
化される。ここで、グリカンの大部分は、公知の二分岐G0、G0F、G1、G1F、G
2、又はG2Fの形態である。遺伝子操作されていないCHO細胞により生成される抗体
は、典型的には、少なくとも約85%のグリカンフコース含量を有する。Fc領域に付着
した二分岐の複雑なタイプのオリゴ糖からコアフコースを除去すると、抗原結合性又はC
DC活性を変化させることなく改善されたFc.γ.RIIIa結合により、抗体のAD
CCが向上される。このようなmAbは、二分岐の複雑なタイプのFcオリゴ糖を有する
、比較的高い脱フコシル化抗体の成功した発現をもたらすことが報告された種々の方法、
例えば、培養浸透圧の制御(Konno et al.,Cytotechnology
64:249~65,2012)、宿主細胞株としての変異体CHO株Lec13の適
用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733~2
6740,2002)、宿主細胞株としての変異体CHO株EB66の適用(Olivi
er et al.,MAbs;2(4),2010、Epub ahead of p
rint、PMID:20562582)、宿主細胞株としてのラットハイブリドーマ細
胞株YB2/0の適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 2
78:3466~3473,2003)、アルファ.1,6-フコシルトランスフェラー
ゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al
.,Biotechnol Bioeng 88:901~908,2004)、又はベ
ータ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIとゴルジアルファ
-マンノシダーゼIIとの共発現又は強力なアルファ-マンノシダーゼI阻害剤であるキ
フネンシン(Ferrara et al.,J Biol Chem 281:503
2~5036;2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bi
oeng 93:851~861,2006;Xhou et al.,Biotech
nol Bioeng 99:652~65,2008)を使用して達成され得る。
【0122】
本明細書において記載された一部の実施形態では、GPRC5D抗体により引き起こさ
れたADCCはまた、抗体Fc中の特定の置換によって増強され得る。例示的な置換は、
例えば、米国特許第6,737,056号に記載されたように、アミノ酸位置256、2
90、298、312、356、330、333、334、360、378、又は430
(EUインデックスに従った残基番号付け)における置換である。
【0123】
GPRC5Dを検出する方法
本明細書において、サンプルを、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合フラグメ
ントと接触させることにより、生体サンプル中のGPRC5Dを検出するための方法が提
供される。本明細書に記載されたように、サンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、腹
水、循環細胞、循環腫瘍細胞、組織会合していない細胞(すなわち、遊離細胞)、組織(
例えば、外科手術的に切除された腫瘍組織、微細針吸引を含む生検)、組織学的調製物等
から得ることができる。一部の実施形態では、記載された方法は、サンプルを、本明細書
に記載されたGPRC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメントのいずれかと接触さ
せることにより、生体サンプル中のGPRC5Dを検出することを含む。
【0124】
一部の実施形態では、サンプルを、本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗体又は
抗原結合フラグメントの2つ以上と接触させてもよい。例えば、サンプルを、第1のGP
RC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させ、次いで、第2のGPRC
5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させてもよく、この場合、第1の抗
体又は抗原結合フラグメントと第2の抗体又は抗原結合フラグメントとは、同じ抗体又は
抗原結合フラグメントではない。一部の実施形態では、第1の抗体又はその抗原結合フラ
グメントは、サンプルと接触させる前に、表面、例えば、マルチウェルプレート、チップ
、又は類似する基材に固定されてもよい。他の実施形態では、第1の抗体又はその抗原結
合フラグメントは、サンプルと接触させる前に、何にも固定されず又は付着されなくても
よい。
【0125】
記載されたGPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、検出可能に標識され
てもよい。一部の実施形態では、標識された抗体及び抗原結合フラグメントは、本明細書
に記載された方法により、GPRC5Dの検出を容易にし得る。多くのこのような標識が
、当業者に容易に既知である。例えば、適切な標識としては、放射線標識、蛍光標識、エ
ピトープタグ、ビオチン、発色団標識、ECL標識、又は酵素が挙げられるが、これらに
限定されると考えられるべきではない。より詳細には、記載された標識には、ルテニウム
111In-DOTA、111In-ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、西洋わさび
ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びベータガラクトシダーゼ、ポリヒスチ
ジン(HISタグ)、アクリジン染料、シアニン染料、フルオロン染料、オキサジン染料
、フェナントリジン染料、ローダミン染料、Alexafluor(登録商標)染料など
が挙げられる。
【0126】
記載されたGPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントは、生体サンプル中のG
PRC5Dを検出するための各種のアッセイに使用されてもよい。一部の適切なアッセイ
には、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、表面プラズモン共鳴、免疫蛍光
測定法、免疫沈澱法、平衡透析法、免疫拡散法、電気化学発光(ECL)イムノアッセイ
、免疫組織化学法、蛍光標識細胞分取(FACS)又はELISAアッセイが挙げられる
が、これらに限定されると考えられるべきではない。
【0127】
本明細書に記載された一部の実施形態では、対象におけるGPRC5D発現がん細胞の
検出を用い、対象がGPRC5Dを目標とする治療剤により処置され得るかを判定するこ
とができる。
【0128】
GPRC5Dは、血液及び血清サンプル中に、検出可能なレベルで存在する。このため
、本明細書において、サンプルを、GPRC5Dに特異的に結合する抗体又はその抗原結
合フラグメントと接触させることにより、血液から得られたサンプル、例えば、血清サン
プル中のGPRC5Dを検出するための方法が提供される。血液サンプル又はその派生物
は、希釈され、画分され、又は他の方法で処理されて、記載の方法が実施され得るサンプ
ルを生成することができる。一部の実施形態では、GPRC5Dは、当該技術分野におい
て既知の任意の回数のアッセイにより、血液サンプル又はその派生物中で検出することが
できる。例えば、同アッセイには、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、表
面プラズモン共鳴、免疫蛍光測定法、免疫沈澱法、平衡透析法、免疫拡散法、電気化学発
光(ECL)免疫アッセイ、免疫組織化学法、蛍光標識細胞分取(FACS)又はELI
SAアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
がんを診断するための方法
本明細書において、対象におけるGPRC5D発現がんを診断するための方法が提供さ
れる。一部の実施形態では、GPRC5D発現がんには多発性骨髄腫(MM)などのリン
パ腫を含む。一部の実施形態では、上記されたように、生体サンプル、例えば、血液サン
プル又は血清サンプル中のGPRC5Dを検出することは、サンプルが得られた対象にお
けるがんを診断する能力を提供する。あるいは、一部の実施形態では、他のサンプル、例
えば、組織学的サンプル、微細針吸引サンプル、切除された腫瘍組織、循環細胞、循環腫
瘍細胞等もまた、サンプルが得られた対象ががんを有するかどうかを評価するのに使用さ
れてもよい。一部の実施形態では、サンプルが得られた対象ががんを有することが既に判
明していてもよいが、対象を苦しめているがんの種類は、診断されていなくてもよく、又
は予備的診断では不明であってもよく、そのため、対象から得られた生体サンプル中のG
PRC5Dを検出することにより、がんの診断を可能にし、又は明確にすることができる
。例えば、対象ががんを有することが判明していてもよいが、不明であってもよく、又は
対象のがんがGPRC5Dを発現しているかどうかが不明確であってもよい。
【0130】
一部の実施形態では、記載された方法は、対象から得られた生体サンプル中に存在する
GPRC5Dの量を決定し、観察されたGPRC5Dの量を対照又は参照サンプル中のG
PRC5Dの量と比較することにより、対象がGPRC5D発現がんに苦しんでいるどう
かを評価することを含む。この場合、対象から得られたサンプル中のGPRC5Dの量と
対照又は参照サンプル中のGPRC5Dの量との間の差が、対象がGPRC5D発現がん
に苦しんでいることの指標となる。別の実施形態では、対象から得られた生体サンプル中
に観察されたGPRC5Dの量を、特定の形態又はステージのがんに関連することが既知
のGPRC5Dのレベルと比較して、対象のがんの形態又はステージを求めることができ
る。一部の実施形態では、対象から得られたサンプル中のGPRC5Dの量は、サンプル
を、GPRC5Dに免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、例えば、
本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗体と接触させることにより評価される。GP
RC5Dの存在について評価されるサンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、腹水、循
環細胞、循環腫瘍細胞、組織会合していない細胞(すなわち、遊離細胞)、組織(例えば
、外科手術的に切除された腫瘍組織、微細針吸引を含む生検)、組織学的調製物等から得
られてもよい。一部の実施形態では、GPRC5D発現がんは、多発性骨髄腫(MM)な
どの血液系のがんを含む。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0131】
一部の実施形態では、GPRC5D発現がんを診断する方法は、対象の生体サンプルを
、GPRC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、表1で提供された抗
体及びフラグメントから得られたもの)と接触させること、抗体又はその抗原結合フラグ
メントが結合したサンプル中に存在するGPRC5Dの量を定量すること、サンプル中に
存在するGPRC5Dの量を既知の標準又は参照サンプルと比較すること、及び対象のG
PRC5Dレベルががんに関連するGPRC5Dのレベル内に入るかどうかを判定するこ
とを含む。更なる実施形態では、診断方法は、がん特異的治療剤を投与又は処方する更な
る工程が続き得る。別の実施形態では、診断方法は、がんの処置を容易にするために、判
定の結果を伝達する更なる工程が続き得る。一部の実施形態では、がん特異的処置は、本
明細書に記載されたGPRC5D×CD3多重特異的抗体などのGPRC5D発現がんを
目標としてもよい。
【0132】
一部の実施形態では、記載された方法は、対象から得られた血液又は血清サンプル中に
存在するGPRC5Dの量を決定することと、観察されたGPRC5Dの量を対照又は参
照サンプル中のGPRC5Dの量と比較することと、により、対象がGPRC5D発現が
んに苦しんでいるかどうかを評価することを含む。この場合、対象から得られたサンプル
中のGPRC5Dの量と対照又は参照サンプル中のGPRC5Dの量との間の差は、対象
がGPRC5D発現がんに苦しんでいることの指標である。
【0133】
一部の実施形態では、対照又は参照サンプルは、GPRC5D発現がんに苦しんでいな
い対象から得られてもよい。一部の実施形態では、対照又は参照サンプルは、GPRC5
D発現がんに苦しんでいる対象から得られてもよい。対照又は参照サンプルがGPRC5
D発現がんに苦しんでいない対象から得られる一部の実施形態では、対照又は参照サンプ
ルについて観察されたGPRC5Dの量に対して、試験サンプル中に存在するGPRC5
Dの量において観察された増大は、評価される対象がGPRC5D発現がんに苦しんでい
ることの指標である。対照サンプルがGPRC5D発現がんに苦しんでいない対象から得
られる一部の実施形態では、対照又は参照サンプルについて観察されたGPRC5Dの量
に対して、試験サンプル中に存在するGPRC5Dの量において観察される減少又は類似
性は、評価される対象がGPRC5D発現がんに苦しんでいないことの指標である。対照
又は参照サンプルがGPRC5D発現がんに苦しんでいる対象から得られる一部の実施形
態では、対照又は参照サンプルについて観察されたGPRC5Dの量に対して、試験サン
プル中に存在するGPRC5Dの量において観察された類似性は、評価されている対象が
GPRC5D発現がんに苦しんでいることの指標である。対照又は参照サンプルがGPR
C5D発現がんに苦しんでいる対象から得られる一部の実施形態では、対照又は参照サン
プルについて観察されたGPRC5Dの量に対して、試験サンプル中に存在するGPRC
5Dの量において観察された減少は、評価される対象がGPRC5D発現がんに苦しんで
いないことの指標である。
【0134】
一部の実施形態では、対象から得られたサンプル中のGPRC5Dの量は、サンプルを
、GPRC5Dに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、例えば、本明細
書に記載された抗体と接触させることにより評価される。GPRC5Dの存在について評
価されるサンプルは、血液サンプル、血清サンプル、循環細胞、循環腫瘍細胞、組織会合
していない細胞(すなわち、遊離細胞)、組織(例えば、外科手術的に切除された腫瘍組
織、微細針吸引を含む生検)、組織学的調製物等から得られてもよい。
【0135】
種々の態様において、GPRC5Dの量は、サンプルを、GPRC5Dに特異的に結合
する抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることにより求められる。一部の実施
形態では、サンプルを、GPRC5Dに特異的に結合する2つ以上の種類の抗体又はその
抗原結合フラグメントと接触させてもよい。一部の実施形態では、サンプルを、GPRC
5Dに特異的に結合する第1の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させ、次いでG
PRC5Dに特異的に結合する第2の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させても
よい。本明細書に記載されたものなどのGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメン
トを、この能力範囲において使用してもよい。
【0136】
GPRC5D特異的抗体及び抗原結合フラグメントの種々の組み合わせを使用して、記
載された診断方法を実施するための「第1」及び「第2」の抗体又は抗原結合フラグメン
トを提供することができる。一部の実施形態では、GPRC5D発現がんは、多発性骨髄
腫(MM)などのリンパ腫を含む。
【0137】
特定の実施形態では、GPRC5Dの量は、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノア
ッセイ、免疫蛍光測定法、免疫沈降法、平衡透析法、免疫拡散法、電気化学発光(ECL
)免疫アッセイ、免疫組織化学法、蛍光標識細胞分取(FACS)又はELISAアッセ
イにより決定される。
【0138】
記載された診断方法の種々の実施形態では、対照又は参照サンプルが使用される。この
サンプルは、使用されるアッセイが適切に機能していることを保証する陽性又は陰性のア
ッセイ対照でもよい。例えば、この性質のアッセイ対照は、免疫組織化学アッセイに一般
的に使用されてもよい。あるいは、サンプルは、健康な対象からの生体サンプル中のGP
RC5Dの量について標準化された参照であってもよい。一部の実施形態では、試験され
た対象の観察されたGPRC5Dレベルは、GPRC5D発現がんを有することが判明し
ている対象由来のサンプル中に観察されたGPRC5Dレベルと比較されてもよい。一部
の実施形態では、対照群の対象は、標的となる特定のがんに苦しんでいてもよい。一部の
実施形態では、対照群の対象は、初期ステージのがんを有することが判明しており、かか
るがんは、GPRC5D発現がんであってもよく、又はGPRC5D発現がんでなくても
よい。一部の実施形態では、対照群の対象は、中間ステージのがんを有することが判明し
ており、かかるがんは、GPRC5D発現がんであってもよく、又はGPRC5D発現が
んでなくてもよい。一部の実施形態では、対照群の対象は、後期ステージになっているこ
とが判明しており、かかるがんは、GPRC5D発現がんであってもよく、又はGPRC
5D発現がんでなくてもよい。
【0139】
がんをモニタするための方法
本明細書において、対象におけるGPRC5D発現がんをモニタするための方法が提供
される。一部の実施形態では、GPRC5D発現がんは、多発性骨髄腫(MM)などのリ
ンパ腫を含む。一部の実施形態では、記載された方法は、対象から得られた試験サンプル
中に存在するGPRC5Dの量を決定することと、観察されたGPRC5Dの量をより早
い時点で対象から同様にして得られた生体サンプル中のGPRC5Dの量と比較すること
と、により、GPRC5D発現がんが進行性、退縮性、又は不変なままであるかどうかを
評価することを含む。この場合、試験サンプル中のGPRC5Dの量とより早期のサンプ
ル中のGPRC5Dの量との間の差は、がんが、進行性、退縮性、又は不変なままである
かどうかの指標を提供する。これに関して、より早期のサンプルについて観察された量と
比較して増大した量のGPRC5Dを含む試験サンプルは、GPRC5D発現がんの進行
を示すことができる。逆に、より早期のサンプルで観察された量と比較して減少した量の
GPRC5Dを含む試験サンプルは、GPRC5D発現がんの退縮を示すことができる。
【0140】
したがって、より早期のサンプルについて観察された量と比較してGPRC5Dの量に
おけるわずかな差しか有さない試験サンプルは、GPRC5D発現がんについて不変の病
態を示すことができる。一部の実施形態では、対象から得られた生体サンプル中のGPR
C5Dの量は、サンプルを、GPRC5Dに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラ
グメント、例えば、本明細書に記載された抗体と接触させることにより評価される。GP
RC5Dの存在について評価されるサンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、腹水、循
環細胞、循環腫瘍細胞、組織会合していない細胞(すなわち、遊離細胞)、組織(例えば
、外科手術的に切除された腫瘍組織、微細針吸引を含む生検)、組織学的調製物等から得
られてもよい。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0141】
一部の実施形態では、GPRC5D発現がんをモニタする方法は、対象の生体サンプル
を、GPRC5D特異的抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、表1で提供された
抗体及びフラグメントから得られたもの)と接触させることと、サンプル中に存在するG
PRC5Dの量を定量することと、サンプル中に存在するGPRC5Dの量をより早い時
点において同じ対象から同様にして得られた生体サンプル中に存在することが決定されて
いるGPRC5Dの量と比較することと、対象のGPRC5Dレベルが経時的に変化して
いたかどうかを判定することと、を含む。より早期のサンプルについて観察された量と比
較して増大した量のGPRC5Dを含む試験サンプルは、がんの進行を示すことができる
。逆に、より早期のサンプルについて観察された量と比較して減少した量のGPRC5D
を含む試験サンプルは、GPRC5D発現がんの退縮を示すことができる。したがって、
より早期のサンプルについて観察された量と比較してGPRC5Dの量においてわずかな
差しか有さない試験サンプルは、GPRC5D発現がんについて不変の病態を示すことが
できる。一部の実施形態では、サンプルのGPRC5Dレベルは、単独で、又はより早い
時点において評価されたサンプルについて観察されたGPRC5Dレベルに加えて、既知
の標準又は参照サンプルと比較されてもよい。更なる実施形態では、診断方法は、がん特
異的処置を行う更なる工程が続き得る。一部の実施形態では、がん特異的処置は、GPR
C5D発現がんを目標としてもよい。
【0142】
種々の態様において、GPRC5Dの量は、サンプルを、GPRC5Dに特異的に結合
する抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることにより決定される。一部の実施
形態では、サンプルを、GPRC5Dに特異的に結合する2つ以上の種類の抗体又はその
抗原結合フラグメントと接触させてもよい。一部の実施形態では、サンプルを、GPRC
5Dに特異的に結合する第1の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させ、次いで、
GPRC5Dに特異的に結合する第2の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させて
もよい。本明細書に記載されたもの等の抗体を、この能力において使用されてもよい。
【0143】
表1で記載された抗体及び抗原結合フラグメントの種々の組み合わせを使用して、記載
されたモニタ方法を行うための「第1」及び「第2」の抗体又は抗原結合フラグメントを
提供することができる。一部の実施形態では、GPRC5D発現がんは、多発性骨髄腫(
MM)などの血液系のがんを含む。
【0144】
特定の実施形態では、GPRC5Dの量は、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノア
ッセイ、免疫蛍光測定法、免疫沈降法、平衡透析法、免疫拡散法、電気化学発光(ECL
)免疫アッセイ、免疫組織化学法、蛍光標識細胞分取(FACS)又はELISAアッセ
イにより決定される。
【0145】
GPRC5Dを検出するためのキット
本明細書において、生体サンプル中のGPRC5Dを検出するためのキットが提供され
る。これらのキットは、本明細書に記載されたGPRC5D特異的抗体又はその抗原結合
フラグメントのうち1つ又は2つ以上と、このキットを使用するための使用説明書とを含
む。
【0146】
提供されたGPRC5D特異的抗体又は抗原結合フラグメントは、溶液であってもよく
、凍結乾燥されていてもよく、基材、担体、又はプレートに固定されていてもよく、又は
検出可能に標識化されていてもよい。
【0147】
記載されたキットはまた、本明細書に記載された方法を行うのに有用な更なる構成要素
を含んでもよい。例として、キットは、対象からサンプルを得るための手段、対照若しく
は参照サンプル、例えば、ゆっくり進行するがんを有する対象及び/又はがんを有さない
対象からのサンプル、1つ若しくは2つ以上のサンプル区画、及び/又は本発明の方法の
実施について説明する指示材料、並びに組織特異的な対照若しくは基準物質を含んでもよ
い。
【0148】
GPRC5Dのレベルを決定するための手段は、例えば、GPRC5Dのレベルを決定
するためのアッセイに使用するための緩衝液又は他の試薬を更に含み得る。使用説明書は
、例えば、アッセイを行うための印刷された使用説明書及び/又はGPRC5Dの発現レ
ベルを評価するための使用説明書であり得る。
【0149】
記載されたキットはまた、対象からサンプルを単離するための手段を含んでもよい。こ
れらの手段は、対象から流体又は組織を得るのに使用され得る機器又は試薬のうち1つ又
は2つ以上の品目を含み得る。対象からサンプルを得るための手段はまた、血液サンプル
から血液成分、例えば、血清を単離するための手段を含んでもよい。好ましくは、キット
は、ヒト対象で使用するために設計されている。
【0150】
多重特異的抗体
本明細書に記載された抗GPRC5D抗体の結合ドメインは、その表面上にGPRC5
Dを発現している細胞を認識する。上記したように、GPRC5Dの発現は、がん細胞を
示し得る。特定の細胞分画に対するより特異的な標的化は、二重特異性分子、例えば、G
PRC5D及び別の標的(CD3及びBCMAなど)に結合する抗体又は抗体フラグメン
トを作製することにより達成され得る。これは、GPRC5Dに結合する第1の領域及び
他の標的抗原に結合する第2の結合領域を含む分子を作製することにより達成される。抗
原結合領域は、標的の特異的な認識を可能にする任意の形態を取ることができ、例えば、
結合領域は、重鎖可変ドメイン、Fv(重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの組み合わ
せ)、フィブロネクチンIII型ドメインに基づいた結合ドメイン(Janssen B
iotech,Inc.のCentyrin分子など、フィブロネクチン由来、若しくは
フィブロネクチン由来のIII型ドメインのコンセンサスに基づいたもの、又はテネイシ
ン由来、若しくはテネイシン由来のIII型ドメインのコンセンサスに基づいたもの、例
えば、国際公開第2010/051274号及び同第2010/093627号を参照さ
れたい)であっても、これらを含んでいてもよい。したがって、GPRC5D及び別の抗
原にそれぞれに結合する2種類の異なる抗原結合領域を含む二重特異性分子が提供される
【0151】
本明細書に記載された一部の多重特異的抗体は、GPRC5D及びCD3にそれぞれ結
合する2種類の異なる抗原結合領域を含む。好ましい実施形態では、GPRC5D及びC
D3に結合する多重特異的抗体(GPRC5D×CD3多重特異的抗体)及びその多重特
異的抗原結合フラグメントが提供される。一部の実施形態では、GPRC5D×CD3多
重特異的抗体は、GPRC5Dに特異的に結合する第1の抗原結合部位を対を成して形成
する第1の重鎖(HC1)及び第1の軽鎖(LC1)と、CD3に特異的に結合する第2
の抗原結合部位を対を成して形成する第2の重鎖(HC2)及び第2の軽鎖(LC2)と
、を含む。好ましい実施形態では、GPRC5D×CD3多重特異的抗体は、CD3に特
異的に結合する第1の抗原結合部位を対を成して形成する第1の重鎖(HC1)及び第1
の軽鎖(LC1)を含むGPRC5D特異的アームと、GPRC5Dに特異的に結合する
第2の抗原結合部位を対を成して形成する第2の重鎖(HC2)及び第2の軽鎖(LC2
)を含むCD3特異的アームと、を含む二重特異性抗体である。一部の実施形態では、本
発明の二重特異性抗体は、完全長の抗体構造を有する抗体を含む。本明細書で使用される
とき、「完全長の抗体」は、2本の完全長の抗体重鎖と2本の完全長の抗体軽鎖とを有す
る抗体を意味する。完全長の抗体重鎖(HC)は、重鎖可変ドメイン及び定常ドメイン、
VH、CH1、CH2、及びCH3を含む。完全長の抗体軽鎖(LC)は、軽鎖可変ドメ
イン及び定常ドメイン、VL及びCLを含む。完全長の抗体は、一方又は両方の重鎖のい
ずれかにおいて、C末端リジン(K)を欠いていてもよい。「Fabアーム」又は「半分
子」という用語は、抗原に特異的に結合する一対の重鎖-軽鎖を意味する。一部の実施形
態では、抗原結合ドメインのうちの1つは、非抗体ベースの結合ドメイン、例えば、Ce
ntyrinなど、フィブロネクチン3型ドメインに基づいた結合ドメインである。
【0152】
本明細書で提供された多重特異的抗体のGPRC5D結合アームは、上記のGPRC5
D特異的抗体のいずれから得られてもよい。このようなGPRC5D結合アームの一部の
例示的な実施形態では、GPRC5Dに結合する第1の抗原結合領域は、表1に記載され
たとおり抗体クローンから得られた重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。この
ようなGPRC5D結合アームの一部の例示的な実施形態では、GPRC5Dに結合する
第1の抗原結合領域は、表1に記載されたとおり抗体クローンから得られた、重鎖CDR
1、CDR2、及びCDR3と、軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3とを含む。この
ようなGPRC5D結合アームの一部の例示的な実施形態では、GPRC5Dに結合する
第1の抗原結合領域は、以下のクローンの重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含む
:GC5B81、GC5B465、GS5B483、GC5B596、GC5B382、
GC5B379、GC5B373、GC5B376、GC5B385、GC5B370、
GC5B602、GC5B603、GC5B599、GC5B601、GC5B598、
又はGC5B597。
【0153】
このようなGPRC5D結合アームの一部の例示的な実施形態では、GPRC5Dに結
合する第1の抗原結合領域は、以下のクローンの重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3
と、軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3と、を含む:GC5B81、GC5B465
、GS5B483、又はGC5B596。このようなGPRC5D結合アームの一部の例
示的な実施形態では、GPRC5Dに結合する第1の抗原結合領域は、表1に記載された
とおり抗体クローンから得られた重鎖可変ドメインを含む。このようなGPRC5D結合
アームの一部の例示的な実施形態では、GPRC5Dに結合する第1の抗原結合領域は、
表1に記載されたとおり抗体クローンから得られた重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメイ
ンとを含む。このようなGPRC5D結合アームの一部の例示的な実施形態では、GPR
C5Dに結合する第1の抗原結合領域は、クローンGC5B81、GC5B465、GS
5B483、又はGC5B596の重鎖可変ドメインを含む。このようなGPRC5D結
合アームの一部の例示的な実施形態ではGPRC5Dに結合する第1の抗原結合領域は、
以下のクローンの重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む:GC5B81、GC5
B465、GS5B483、GC5B596、GC5B382、GC5B379、GC5
B373、GC5B376、GC5B385、GC5B370、GC5B602、GC5
B603、GC5B599、GC5B601、GC5B598、又はGC5B597。
【0154】
表3は、GPRC5Dに特異的な、ある重鎖及び軽鎖対と、CD3に特異的な、別の重
鎖及び軽鎖対と、を有する、GPRC5D×CD3二重特異性抗体の一覧を提供する。表
中には、記載の実施形態を作成するのに使用される抗原特異的抗体アームを示すため、具
体的な抗体IDを掲載する。
【0155】
【表3】
【0156】
二重特異性抗体の一部の実施形態では、GPRC5D結合アームは、カニクイザルGP
RC5D、好ましくは、その細胞外ドメインにも結合する。
【0157】
一部の実施形態では、多重特異的抗体のGPRC5D結合アームは、IgG又はその誘
導体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のアイソタイプである。G
PRC5D結合アームがIgG4アイソタイプを有する一部の実施形態では、結合アーム
は、Fc領域中にS228P、L234A、及びL235A置換を含有する。
【0158】
二重特異性抗体の一部の実施形態では、第2の抗原結合アームは、ヒトCD3に結合す
る。一部の好ましい実施形態では、GPRC5D×CD3二重特異性抗体のCD3特異的
アームは、ヒト初代T細胞及び/又はカニクイザル初代T細胞に結合し、これらを活性化
するCD3特異的抗体から得られる。一部の実施形態では、CD3結合アームは、CD3
εのN末端において、エピトープに結合する。一部の実施形態では、CD3結合アームは
、CD3εの6つのN末端アミノ酸を含むエピトープと接触する。一部の実施形態では、
二重特異性抗体のCD3特異的結合アームは、マウスモノクローナル抗体SP34、マウ
スIgG3/λアイソタイプから得られる。一部の実施形態では、CD3結合アームは、
抗体SP34のCDRを含む。このようなCD3結合アームは、5×10-7M以下、例え
ば、1×10-7M以下、5×10-8M以下、1×10-8M以下、5×10-9M以下、又は
1×10-9M以下の親和性で、CD3に結合し得る。CD3特異的結合アームは、マウス
モノクローナル抗体SP34のヒト化版のアームでもよい。ヒトフレームワークを用いる
適合(HFA)を使用して、CD3特異的アームが得られる抗CD3抗体をヒト化しても
よい。二重特異性抗体の一部の実施形態では、CD3結合アームは、表2から選択される
重鎖及び軽鎖の対を含む。
【0159】
一部の実施形態では、CD3結合アームは、IgG又はその誘導体である。一部の実施
形態では、CD3結合アームは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。
CD3結合アームがIgG4アイソタイプを有する一部の実施形態では、結合アームは、
Fc領域中にS228P、L234A、L235A、F405L、及びR409K置換を
含有する。一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、初代ヒトT細胞上の
CD3εに結合する。一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、初代カニ
クイザルT細胞上のCD3εに結合する。一部の実施形態では、抗体又は抗原結合フラグ
メントは、初代ヒト及びカニクイザルT細胞上のCD3εに結合する。一部の実施形態で
は、抗体又は抗原結合フラグメントは、初代ヒトCD3+T細胞を活性化する。一部の実
施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、初代カニクイザルCD4+T細胞を活性
化する。
【0160】
一部の実施形態では、抗体クローン:GC5B81、GC5B465、GS5B483
、GC5B596、GC5B382、GC5B379、GC5B373、GC5B376
、GC5B385、GC5B370、GC5B602、GC5B603、GC5B599
、GC5B601、GC5B598、又はGC5B597の重鎖を含むGPRC5D結合
アームを有する、GPRC5D×CD3二重特異性抗体が提供される。一部の実施形態で
は、抗体クローン:GC5B81、GC5B465、GS5B483、GC5B596、
GC5B382、GC5B379、GC5B373、GC5B376、GC5B385、
GC5B370、GC5B602、GC5B603、GC5B599、GC5B601、
GC5B598、又はGC5B597の重鎖及び軽鎖を含むGPRC5D結合アームを有
する、GPRC5D×CD3二重特異性抗体が提供される。一部の実施形態では、抗体ク
ローンCD3B219の重鎖を含むCD3結合アームを有するGPRC5D×CD3二重
特異性抗体が提供される。一部の実施形態では、抗体クローンCD3B219の重鎖及び
軽鎖を含むCD3結合アームを有するGPRC5D×CD3二重特異性抗体が提供される
。一部の実施形態では、抗体クローン:GC5B81、GC5B465、GS5B483
、GC5B596、GC5B382、GC5B379、GC5B373、GC5B376
、GC5B385、GC5B370、GC5B602、GC5B603、GC5B599
、GC5B601、GC5B598、又はGC5B597の重鎖を含むGPRC5D結合
アームと、抗体クローンCD3B219の重鎖を含むCD3結合アームと、を有する、G
PRC5D×CD3二重特異性抗体が提供される。一部の実施形態では、抗体クローン:
GC5B81、GC5B465、GS5B483、GC5B596、GC5B382、G
C5B379、GC5B373、GC5B376、GC5B385、GC5B370、G
C5B602、GC5B603、GC5B599、GC5B601、GC5B598、又
はGC5B597の重鎖及び軽鎖を含むGPRC5D結合アームと、抗体クローンCD3
B219の重鎖及び軽鎖を含むCD3結合アームと、を有する、GPRC5D×CD3二
重特異性抗体が提供される。
【0161】
例示的なGPRC5D×CD3二重特異性抗体が、表23に提供される。
【0162】
これまでに種々のフォーマットの二重特異性抗体が記載されており、近年ではCham
es and Baty(2009)Curr Opin Drug Disc Dev
12:276によりレビューされている。
【0163】
一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、本発明において記載されたもの等の
制御されたFabアーム交換により得られたディアボディ、クロスボディ、又は二重特異
性抗体である。
【0164】
一部の実施形態では、二重特異性抗体としては、ヘテロ二量体形成する相補性CH3ド
メインを有するIgG様分子、組み換えIgG様デュアル(dual)標的分子(この分子の
2つの側面は各々少なくとも2種類の異なる抗体のFabフラグメント又はFabフラグ
メントの一部を含有する)、IgG融合分子(完全長IgG抗体がエクストラFabフラ
グメント又はFabフラグメントの一部に融合されている)、Fc融合分子(一本鎖Fv
分子又は安定化ディアボディが重鎖定常ドメイン、Fc領域又はその一部に融合されてい
る)、Fab融合分子(異なるFabフラグメントが互いに融合されている)、ScFv
-及びディアボディ-ベース及び重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)(異な
る一本鎖Fv分子又は異なるディアボディ若しくは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗
体、ナノボディ)が互いに又は別のタンパク質若しくは担体分子に融合されている)が挙
げられる。
【0165】
一部の実施形態では、相補性CH3ドメイン分子を有するIgG様分子には、Trio
mab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biot
ech)、Knobs-into-Holes(Genentech)、CrossMA
bs(Roche)及び静電的に調整された抗体(Amgen)、LUZ-Y(Gene
ntech)、ストランドを交換し操作したドメインボディ(SEEDbody)(EM
D Serono)、Biclonic(Merus)、並びにDuoBody(Gen
mab A/S)が挙げられる。
【0166】
一部の実施形態では、組み換えIgG様デュアル標的分子には、Dual Targe
ting(DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Ant
ibody(Genentech)、Cross-linked Mabs(Karma
nos Cancer Center)、mAb2(F-Star)、及びCovX-b
ody(CovX/Pfizer)が挙げられる。
【0167】
一部の実施形態では、IgG融合分子には、Dual Variable Domai
n(DVD)-Ig(Abbott)、IgG-like Bispecific(In
nClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、及び
BsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)
、並びにTvAb(Roche)が挙げられる。
【0168】
一部の実施形態では、Fc融合分子には、ScFv/Fc Fusions(Acad
emic Institution)、SCORPION(Emergent BioS
olutions/Trubion,Zymogenetics/BMS)、Dual
Affinity Retargeting Technology(Fc-DART)
(MacroGenics)、及びDual(ScFv).sub.2-Fab(Nat
ional Research Center for Antibody Medic
ine--China)が挙げられる。
【0169】
一部の実施形態では、Fab融合二重特異性抗体には、F(ab)2(Medarex
/AMGEN)、Dual-Action or Bis-Fab(Genentech
)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bival
ent Bispecific(Biotecnol)、及びFab-Fv(UCB-C
elltech)が挙げられる。ScFv-、ディアボディ-ベース及びドメイン抗体に
は、Bispecific T Cell Engager(BITE)(Microm
et)、Tandem Diabody(Tandab)(Affimed)、Dual
Affinity Retargeting Technology(DART)(M
acroGenics)、Single-chain Diabody(Academi
c)、TCR-like Antibodies(AIT,ReceptorLogic
s)、Human Serum Albumin ScFv Fusion(Merri
mack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的指向性ナ
ノボディ(dual targeting nanobody)(Ablynx)、二重標的指向性の重鎖のみの
ドメイン抗体(dual targeting heavy chain only domain antibody)が挙げられるが、
これらに限定されない。
【0170】
本発明の完全長の二重特異性抗体は、例えば、2つの単一特異的二価抗体間でのFab
アーム交換(又は半分子交換)を用い、インビトロにおいて、無細胞環境下又は共発現使
用下のいずれかで、別個の特異性を有する2つの抗体半分子を好ましくヘテロ二量体形成
させるべく各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することにより生成されてもよ
い。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-
会合の結果である。単一特異的親抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少
する。単一特異的親抗体のうち1つについて生じる遊離システインは、第2の単一特異的
親抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH
3ドメインは、解離-会合により開放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは
、ホモ二量体形成より好ましいヘテロ二量体形成をするよう操作されてもよい。得られた
生成物は、各々別個のエピトープ、すなわち、GPRC5D上のエピトープ及びCD3上
のエピトープに結合する、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である
【0171】
本明細書で使用されるとき、「ホモ二量体形成」は、同一のCH3アミノ酸配列を有す
る2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用されるとき、「ホモ二量体」は、同
一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0172】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ二量体形成」は、同一でないCH3アミノ酸配列
を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用されるとき、「ヘテロ二量体
」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0173】
「ノブインホール(knob-in-hole)」戦略(例えば、国際公開第2006/02893
6号を参照のこと)を使用して、完全長の二重特異性抗体を生成することもできる。簡潔
に、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ
二量体形成を促進するために、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異
され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗
体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に
結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホー
ル」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される
。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換の対は、T366Y/F405A、T3
66W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/
Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T3
66S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改
変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表現)。
【0174】
他の戦略、例えば、第1のCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面
における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を用いる重鎖ヘテロ二量
体形成の促進が、米国特許公開第2010/0015133号、米国特許公開第2009
/0182127号、米国特許公開第2010/028637号、又は米国特許公開第2
011/0123532号に記載されるように使用されてもよい。他の戦略では、ヘテロ
二量体形成は、米国特許公開第2012/0149876号又は米国特許公開第2013
/0195849号に記載されるように、下記置換:L351Y_F405A Y407
V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T3
66L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/
T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V K409F Y407
A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A Y407V/
T350V_T366L_K392L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメイン
における改変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表現)に
より促進されてもよい。
【0175】
上記された方法に加えて、本発明の二重特異性抗体は、国際公開第2011/1317
46号に記載された方法に従って、インビトロにおいて、無細胞環境下で、2つの単一特
異的ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化
させる還元条件下において、2つの単一特異的ホモ二量体親抗体から二重特異性ヘテロ二
量体抗体を形成することにより生成されてもよい。この方法において、第1の単一特異的
二価抗体(例えば、抗GPRC5D抗体)及び第2の単一特異的二価抗体(例えば、抗C
D3抗体)は、ヘテロ二量体の安定性を促進するCH3ドメインにおける特定の置換を有
するように操作される。これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド
結合を異性化させるのに十分な還元条件下において共にインキュベートされ、それにより
、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適に
は、非還元条件に戻されてもよい。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチ
ルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DT
E)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-シ
ステイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルア
ミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群
から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度において、少なくとも2
5mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で
、pH5~8、例えば、pH7.0又はpH7.4において、少なくとも90分のインキ
ュベートが使用されてもよい。
【0176】
記載されたGPRC5D×CD3多重特異的抗体に加えて、記載されたGPRC5D×
CD3多重特異的抗体をコード可能なポリヌクレオチド配列も提供される。記載されたポ
リヌクレオチドを含むベクターも提供され、同様に、GPRC5D×CD3多重特異的抗
体を発現している細胞も本明細書において提供される。また、開示されたベクターを発現
可能な細胞も記載される。これらの細胞は、哺乳類細胞(例えば、293F細胞、CHO
細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf7細胞)、酵母細胞、植物細胞、又は細菌細胞(例えば
、大腸菌)でもよい。記載された抗体はまた、ハイブリドーマ細胞により生成することが
できる。
【0177】
多重特異的抗体及びその多重特異的抗原結合フラグメントを使用する治療組成物及び処
置方法
上記で検討されたGPRC5D二重特異性抗体、例えば、上記で検討されたGPRC5
D×CD3二重特異性抗体は、治療に有用である。特に、GPRC5D二重特異性抗体は
、がんを処置するのに有用である。また、本明細書において、治療的に有効な量の、本明
細書に記載された多重特異的抗体又は多重特異的抗原結合フラグメントと、医薬的に許容
され得る担体とを含む、哺乳類における過剰増殖性障害を処置するための治療組成物が提
供される。好ましい実施形態では、多重特異的抗体は、本明細書に記載されるようなGP
RC5D×CD3多重特異的抗体又はその多重特異的抗原結合フラグメントであり、より
好ましくは、本明細書に記載されるようなGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はその
GPRC5D×CD3二重特異性抗原結合フラグメントである。一実施形態では、医薬組
成物は、下記:多発性骨髄腫(MM)などのGPRC5D発現B細胞がん、並びにGPR
C5Dを発現しているかの判定がまだなされていないその他のがんを含む(が、これらに
限定されない)、GPRC5D発現がんの処置のためのものである。がん、例えば、上記
で検討された特定のがんを含む血液がんを処置するのに使用されてもよい特定の二重特異
性抗体としては、抗体GC5B81、GC5B465、GS5B483、又はGC5B5
96が挙げられる。
【0178】
本明細書で提供された医薬組成物は、a)有効量の本発明の多重特異的抗体又は抗体フ
ラグメントと、b)不活性でも又は生理学的に活性でもよい医薬的に許容され得る担体と
を含む。好ましい実施形態では、多重特異的抗体は、本明細書に記載されるようなGPR
C5D×CD3多重特異的抗体又はその多重特異的抗原結合フラグメントであり、より好
ましくは、本明細書に記載されるようなGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのG
PRC5D×CD3二重特異性抗原結合フラグメントである。本明細書で使用されるとき
、「医薬的に許容され得る担体」という用語は、生理学的に適合性である、任意かつ全て
の溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、及び抗真菌剤等を含む。適切な担体、希釈剤
、及び/又は賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロ
ース、グリセロール、エタノール等のうち1種又は2種以上、並びにそれらの任意の組み
合わせが挙げられる。多くの場合、等張性剤、例えば、糖、ポリアルコール、又は塩化ナ
トリウムを組成物中に含めるのが好ましい。特に、適切な担体の関連する例には、(1)
ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、pH約7.4、約1mg/mL~25mg/mLのヒ
ト血清アルブミンを含有又は非含有、(2)0.9%の生理食塩水(0.9%w/vの塩
化ナトリウム(NaCl))、及び(3)5%(w/v)のデキストロース、が挙げられ
、抗酸化剤、例えば、トリプタミン、及び安定化剤、例えば、Tween20(登録商標
)をも含有してもよい。
【0179】
本明細書における組成物はまた、処置される特定の疾患にとって必要な場合には、更な
る治療剤を含有してもよい。好ましくは、多重特異的抗体又は抗体フラグメントと補助的
な活性化合物とは、互いに有害に影響を及ぼさない補完的な活性を有することとなる。好
ましい実施形態では、更なる治療剤は、シタラビン、アントラサイクリン、ヒスタミン二
塩酸塩、又はインターロイキン2である。好ましい実施形態では、更なる治療剤は、化学
療法剤である。
【0180】
本発明の組成物は、様々な形態であってよい。このような形態としては、例えば、液体
、半固体、及び固体の剤形が挙げられるが、好ましい形態は、意図された投与方式及び治
療用途により決まる。典型的に好ましい組成物は、注射可能な溶液又は注入可能な溶液の
形態である。好ましい投与方式は、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下)で
ある。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、ボーラス又は一定期間にわたる連続的
な注入により静脈投与される。別の好ましい実施形態では、本組成物は、局所及び全身性
の治療効果を発揮するために、筋肉内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、腫瘍内、腫瘍周囲
、病巣内、又は病巣周囲の経路により投与される。
【0181】
非経口投与用の無菌組成物が、本発明の抗体、抗体フラグメント、又は抗体コンジュゲ
ートを、必要とされる量で適切な溶媒に包含させ、続けて、マイクロフィルター法により
滅菌することにより調製され得る。溶媒又は賦形剤として、水、生理食塩水、リン酸緩衝
生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、並びにこれらの組み合わせ
を使用することができる。多くの場合には、等張性剤、例えば、糖、ポリアルコール、又
は塩化ナトリウムを組成物中に含むのが好ましい。これらの組成物はまた、補助剤、特に
、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤、及び安定化剤を含有してもよい。非経口投与用の
無菌組成物はまた、使用時に滅菌水又は任意の他の注射可能な無菌媒体中に溶解されても
よい、無菌の固体組成物の形態で調製されてもよい。
【0182】
多重特異的抗体又は抗体フラグメントはまた、経口投与されてもよい。経口投与用の固
体組成物として、錠剤、丸剤、粉末剤(ゼラチンカプセル剤、サッシェ剤)、又は顆粒剤
が使用されてもよい。これらの組成物において、本発明による活性成分は、1つ又は2つ
以上の不活性な希釈剤、例えば、デンプン、セルロース、スクロース、ラクトース、又は
シリカと、アルゴン流下において混合される。これらの組成物はまた、希釈剤以外の物質
、例えば、1つ又は2つ以上の潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルク、
着色剤、コーティング(糖衣錠)、あるいはグレーズを含んでもよい。
【0183】
経口投与用の液体組成物として、不活性な希釈剤、例えば、水、エタノール、グリセロ
ール、植物油、又はパラフィンオイルを含有する、医薬的に許容され得る液剤、懸濁剤、
乳剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が使用されてもよい。これらの組成物は、希釈剤以
外の物質、例えば、湿潤剤、甘味料、増粘剤、着香剤、又は安定化製品を含んでもよい。
【0184】
用量は、所望の効果、治療の期間、及び使用される投与経路により決まる。用量は、一
般的には、成人では1日あたり経口で5mg~1000mgであり、単位用量は、活性物
質1mg~250mgの範囲である。一般的には、医師は、適切な用量を、処置される対
象の年齢、体重、及び同対象に固有の任意の他の因子に応じて決定する。
【0185】
また、本明細書において、GPRC5D+細胞を殺傷するための方法であって、かかる
細胞の殺傷を必要とする患者に、かかるGPRC5Dに結合し、T細胞を補充して、かか
るGPRC5D+細胞を殺傷する(すなわち、T細胞を再指向する)ことが可能な多重特
異的抗体を投与することにより、GPRC5D+細胞を殺傷するための方法が提供される
。本発明の多重特異的抗体又は抗体フラグメントのいずれかは、治療的に使用されてもよ
い。例えば、一実施形態では、GPRC5D×CD3多重特異的抗体は、対象におけるが
んを処置するために治療的に使用され得る。
【0186】
好ましい実施形態では、本発明の多重特異的抗体又は抗体フラグメントは、哺乳類にお
ける過剰増殖性障害を処置するために使用される。より好ましい実施形態では、本発明の
多重特異的抗体又は抗体フラグメントを含有する、上記で開示された医薬組成物のうち1
つは、哺乳類における過剰増殖性障害を処置するために使用される。一実施形態では、こ
の障害は、がんである。特に、かかるがんは、下記:多発性骨髄腫(MM)などのGPR
C5D発現B細胞がん、並びにGPRC5Dを発現しているかの判定がまだなされていな
いその他のがんを含む(但しこれらに限定されない)GPRC5D発現がんである。好ま
しい実施形態では、多重特異的抗体は、本明細書に記載されるようなGPRC5D×CD
3多重特異的抗体又はその多重特異的抗原結合フラグメントであり、より好ましくは、本
明細書に記載されるようなGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×
CD3二重特異性抗原結合フラグメントである。
【0187】
したがって、本発明の医薬組成物は、例えば、急性多発性骨髄腫(MM)又はMGUS
(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症)及びSMM(くすぶり型多発性骨髄腫)
などの前がん性骨髄腫、及びプラズマ細胞腫などの、GPRC5D発現B/プラズマ細胞
がんを含むGPRC5D発現がん(但しこれらに限定されない);並びにGPRC5Dを
発現しているかの判定がまだなされていないその他のがん、を含む、様々ながんの処置又
は予防に有用である。
【0188】
同様に、本明細書において、選択された細胞集団の成長を阻害するための方法であって
、GPRC5D発現標的細胞又はこのような標的細胞を含有する組織を、有効量の本発明
の多重特異的抗体又は抗体フラグメントと、単独で、又は他の細胞傷害剤若しくは治療剤
との組み合わせにおいてのいずれかで、末梢血単核球(PBMC)の存在下で接触させる
ことを含む、方法が更に提供される。好ましい実施形態では、多重特異的抗体は、本明細
書に記載されるようなGPRC5D×CD3多重特異的抗体又はその多重特異的抗原結合
フラグメントであり、より好ましくは、本明細書に記載されるようなGPRC5D×CD
3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性抗原結合フラグメントである
。好ましい実施形態では、更なる治療剤は、シタラビン、アントラサイクリン、ヒスタミ
ン二塩酸塩、又はインターロイキン2である。好ましい実施形態では、更なる治療剤は、
化学療法剤である。選択された細胞集団の成長を阻害するための方法は、インビトロ、イ
ンビボ、又はエクスビボにおいて実施され得る。
【0189】
インビトロでの使用例には、疾患細胞又は悪性細胞を殺傷することを目的とした、同じ
患者への移植前の自家骨髄の処理、コンピテントT細胞を殺傷し、移植片対宿主病(GV
HD)を防止するための移植前の骨髄の処理、標的抗原を発現していない所望の多様体を
除く全ての細胞を殺傷するため、又は不要な抗原を発現している多様体を殺傷するための
細胞培養物の処理、が挙げられる。非臨床的なインビトロでの使用条件は、当業者により
容易に決定される。
【0190】
臨床的なエクスビボでの使用例は、がん処置における自家移植前に、骨髄から腫瘍細胞
を除去することである。処置は、下記のように行われ得る。骨髄を患者又は他の個体から
採取し、次いで本発明の細胞傷害剤を添加した血清含有培地中でインキュベートする。濃
度は、約37℃で約30分~約48時間の間、約10μM~1μMの範囲である。インキ
ュベートの濃度及び時間の厳密な条件、すなわち、投与量は、当業者により容易に決定さ
れる。インキュベート後、骨髄細胞を、血清含有培地で洗浄し、既知の方法に従って、静
脈注射により患者に戻す。患者が他の処置、例えば、一連の骨髄破壊的化学療法又は全身
照射を受けている状況において、骨髄の収集時間と処理された細胞の再注入の時間との間
、処理された骨髄細胞は、標準的な医療機器を使用して、液体窒素中で凍結保存される。
【0191】
臨床的なインビボでの使用について、治療的に有効な量の多重特異的抗体又は抗原結合
フラグメントが、かかる抗体又はフラグメントを必要とする対象に投与される。例えば、
GPRC5D×CD3多重特異的抗体及びその多重特異的抗原結合フラグメントは、GP
RC5D発現がんの処置を必要とする対象における、GPRC5D発現がんの処置に有用
であり得る。一部の実施形態では、GPRC5D発現がんは骨髄腫(MM)などのB細胞
がんである。好ましい実施形態では、多重特異的抗体は、本明細書に記載されるようなG
PRC5D×CD3多重特異的抗体又はその多重特異的抗原結合フラグメントであり、よ
り好ましくは、本明細書に記載されるようなGPRC5D×CD3二重特異性抗体又はそ
のGPRC5D×CD3二重特異性抗原結合フラグメントである。一部の実施形態では、
対象は、哺乳類、好ましくは、ヒトである。一部の実施形態では、多重特異的抗体又は抗
原結合フラグメントは、無菌試験済みの溶液として投与される。
【0192】
処置及び使用についての上記方法における投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治
療応答)を提供するように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつ
かの分割用量を、時間をかけて投与してもよく、又は治療状況の緊急性が示される蔡に、
用量を比例的に減少又は増加させてよい。非経口組成物は、投与しやすくしかつ用量を均
一にするために、用量単位の形態に製剤されてもよい。
【0193】
多重特異的抗体及びフラグメントの効率的な投与及び投与計画は、処置される疾患又は
状態により決まり、当業者により決定されてもよい。本発明の化合物の治療的に有効な量
の例示的で非限定的な範囲は、約0.001~10mg/kg、例えば、約0.001~
5mg/kg、例えば、約0.001~2mg/kg、例えば、約0.001~1mg/
kg、例えば、約0.001、約0.01、約0.1、約1、又は約10mg/kgであ
る。
【0194】
当該技術分野において通常の技能を有する医師又は獣医師は、必要とされる医薬組成物
の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、医薬組成
物中に利用される多重特異的抗体又はフラグメントの用量を、所望の治療効果を達成する
のに必要されるよりも少ないレベルより開始し、かかる用量を、所望の効果が達成される
まで徐々に増大させることができる。一般的には、本発明の二重特異性抗体の適切な1日
量は、治療効果を生じさせるのに有効であるうち最も少ない用量である化合物量である。
投与は、例えば、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下でもよい。一実施形態では
、多重特異的抗体又はフラグメントは、mg/m2で算出された毎週投与での注入により
投与されてもよい。このような用量は、例えば、下記:用量(mg/kg)×70:1.
8に従って、上記で提供されたmg/kg用量に基づくことができる。このような投与は
、例えば、1~8回、例えば、3~5回繰り返されてもよい。投与は、2~24時間、例
えば、2~12時間の期間にわたる連続的な注入により行われてもよい。一実施形態では
、多重特異的抗体又はフラグメントは、毒性の副作用を低減させるために、長期間、例え
ば、24時間超にわたるゆっくりとした連続的な注入により投与されてもよい。
【0195】
一実施形態では、多重特異的抗体又はフラグメントは、1週間に1回で与えられる場合
、最大8回、例えば、4~6回の固定用量として算出された毎週投与において投与されて
もよい。このような計画は、例えば、6ケ月又は12ケ月後に、必要に応じて1回又は2
回以上繰り返されてもよい。このような固定用量は、例えば、上記で提供されたmg/k
g用量に基づくことができる。ここで、体重は、70kgと仮定する。用量は、例えば、
生体サンプルを採取し、本発明の多重特異的抗体のGPRC5D抗原結合領域を標的とす
る抗イディオタイプ抗体を使用することによって、本発明の二重特異性抗体の投与時の血
中量を測定することにより、決定又は調節されてもよい。
【0196】
一実施形態では、多重特異的抗体又はフラグメントは、維持治療、例えば、6ケ月以上
の期間で週1回等により投与されてもよい。
【0197】
多重特異的抗体又はフラグメントはまた、がんの進行リスクを低下させ、がんの進行に
おけるイベントの発生の開始を遅延させ、かつ/又はがんが緩解した際の再発リスクを低
下させるために、予防的に投与されてもよい。
【0198】
本明細書に記載された多重特異的抗体及びそのフラグメントはまた、組み合わせ治療に
おいて投与されてもよく、すなわち、処置される疾患又は状態に関連する他の治療剤と組
み合わせられてもよい。したがって、一実施形態では、抗体含有医薬は、1種又は2種以
上の他の治療剤、例えば、化学療法剤と組み合わせるためのものである。一部の実施形態
では、他の治療剤は、シタラビン、アントラサイクリン、ヒスタミン二塩酸塩、又はイン
ターロイキン2である。このような組み合わせ投与は、同時、任意の順序において、別々
又は連続的でもよい。同時投与では、薬剤は、必要に応じて、1つの組成物又は別々の組
成物として投与されてもよい。
【0199】
一実施形態では、対象においてGPRC5Dを発現している細胞が関与する障害を処置
するための方法であって、治療的に有効な量の、本明細書に記載された多重特異的抗体又
はフラグメント、例えば、GPRC5D×CD3二重特異性抗体と、放射線治療とを、そ
れを必要としている対象に施すことを含む、方法が提供される。一実施形態では、がんを
処置又は予防するための方法であって、治療的に有効な量の、本明細書に記載された多重
特異的抗体又はフラグメント、例えば、GPRC5D×CD3抗体と、放射線治療とを、
それを必要としている対象に施すことを含む、方法が提供される。放射線治療としては、
提供される患者に対する、放射線又は放射性医薬の関連する投与を含んでもよい。放射線
源は、処置される患者の外側又は内側のいずれか一方であってもよい(放射線治療は、例
えば、外照射療法(EBRT)又は小線源治療(BT)の形態でもよい)。このような方
法を実施するのに使用することができる放射性元素には、例えば、ラジウム、セシウム-
137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅
-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131、及びインジウム-11
1が挙げられる。
【0200】
キット
また、本明細書において、例えば、記載された多重特異的抗体又はその抗原結合フラグ
メントと、特定の細胞種を殺傷するための抗体又はフラグメントを使用するための使用説
明書と、を含むキットも提供される。好ましい実施形態では、多重特異的抗体は、本明細
書に記載されるようなGPRC5D×CD3多重特異的抗体又はその多重特異的抗原結合
フラグメントであり、より好ましくは、本明細書に記載されるようなGPRC5D×CD
3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性抗原結合フラグメントである
。使用説明書は、多重特異的抗体又はその抗原結合フラグメントを、インビトロ、インビ
ボ、又はエクスビボにおいて使用するための指示を含んでもよい。
【0201】
典型的には、キットは、多重特異的抗体又はその抗原結合フラグメントを含有する区画
を有する。多重特異的抗体又はその抗原結合フラグメントは、凍結乾燥状態、液状、又は
キットに含ませるのに修正可能な他の形態でもよい。キットはまた、キットの使用説明書
に記載された方法を実施するのに必要とされる、更なる要素を含有してもよい。同要素は
、例えば、凍結乾燥粉末を再構成するための無菌溶液、患者への投与の前に多重特異的抗
体又はその抗原結合フラグメントと組み合わせるための更なる薬剤、及び多重特異的抗体
又はその抗原結合フラグメントを患者に投与するのを支援するツールである。
【0202】
診断的使用
本明細書に記載された多重特異的抗体及びフラグメントはまた、診断目的に使用されて
もよい。このため、本明細書で定義されたような多重特異的抗体又はフラグメントを含む
診断組成物及びその使用もまた提供される。好ましい実施形態では、多重特異的抗体は、
本明細書に記載されるようなGPRC5D×CD3多重特異的抗体又はその多重特異的抗
原結合フラグメントであり、より好ましくは、本明細書に記載されるようなGPRC5D
×CD3二重特異性抗体又はそのGPRC5D×CD3二重特異性抗原結合フラグメント
である。一実施形態では、本発明は、二重特異性GPRC5D×CD3抗体と、GPRC
5Dに対する抗体の結合を検出するための1種又は2種以上の試薬と、を含む容器を含む
、がんを診断するためのキットを提供する。試薬には、例えば、蛍光タグ、酵素タグ、又
は他の検出可能なタグを挙げることができる。試薬はまた、酵素反応のための二次若しく
は三次抗体又は試薬を含んでもよい。この場合、酵素反応は、可視化することができる生
成物を生じる。例えば、本明細書に記載された多重特異的抗体又はその抗原結合フラグメ
ントは、放射線標識、蛍光標識、エピトープタグ、ビオチン、発色団標識、ECL標識、
酵素、ルテニウム、111In-DOTA、111In-ジエチレントリアミン五酢酸(DTP
A)、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びβガラクトシダーゼ
、若しくはポリヒスチジン、又は、当技術分野において公知の類似するこのような標識で
標識されてもよい。
【0203】
実施形態
本明細書で提供される開示は、以下の非限定的実施形態も提供する。
【0204】
実施形態1 GPRC5Dに特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合フラ
グメントであって、
a.配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号
5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖C
DR3、
b.配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有
する重鎖CDR2、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
c.配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有
する重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
d.配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有
する重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
e.配列番号61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号67のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
f.配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号28のアミノ酸配列を
有する重鎖CDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
g.配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
h.配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
i.配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
j.配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号69のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
k.配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号70のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
l.配列番号65のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、又は
m.配列番号66のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号71のアミノ酸配列
を有する重鎖CDR2、及び配列番号77のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、を含む
、単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0205】
実施形態2 実施形態1に記載の単離された抗体又は抗原結合フラグメントであって、
a.配列番号1のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列
を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を
含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号16の
アミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖CD
R3を更に含み、
b.配列番号2のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号6のアミノ酸配列
を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3
を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号16
のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖C
DR3を更に含み、
c.配列番号3のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列
を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3
を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号17
のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖C
DR3を更に含み、
d.配列番号4のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列
を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3
を含む、前記抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号18
のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖C
DR3を更に含み、
e.配列番号61のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号67のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
78のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号80のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含み、
f.配列番号2のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号28のアミノ酸配
列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR
3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号6
のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖C
DR3を更に含み、
g.配列番号27のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含み、
h.配列番号27のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含み、
i.配列番号62のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含み、
j.配列番号63のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号69のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
78のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号80のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含み、
k.配列番号61のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号67のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
78のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号80のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含み、
l.配列番号65のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
79のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号81のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含み、又は
m.配列番号66のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号71のアミノ酸
配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号77のアミノ酸配列を有する前記重鎖CD
R3を含む、前記抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号
18のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を有する軽
鎖CDR3を更に含む、単離された抗体又は抗原結合フラグメント。
【0206】
実施形態3 GPRC5Dに特異的に結合し、かつ配列番号52、53、54、55、
82、83、84、85、86、87、88、89、又は91からなる群から選択される
重鎖可変(VH)領域を含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0207】
実施形態4 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号:56、57、58
、92、93、又は94からなる群から選択される軽鎖可変(VL)領域を含む、実施形
態3に記載の抗体。
【0208】
実施形態5 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号:52、53、54
、55、82、83、84、85、86、87、88、89、又は91からなる群から選
択されるVH領域と、配列番号56、57、58、92、93、又は94からなる群から
選択されるVL領域と、を含む、実施形態3に記載の抗体。
【0209】
実施形態6 前記VH鎖領域が、配列番号56を含むVL鎖領域と対となる配列番号5
2、53、又は83を含む、実施形態5に記載の抗体。
【0210】
実施形態7 前記VH鎖領域が、配列番号57を含むVL鎖領域と対となる配列番号5
4、84、85、86、又は90を含む、実施形態5に記載の抗体。
【0211】
実施形態8 前記VH鎖領域が、配列番号58を含むVL鎖領域と対となる配列番号5
5又は88を含む、実施形態5に記載の抗体。
【0212】
実施形態9 前記VH鎖領域が、配列番号92を含むVL鎖領域と対となる配列番号8
2又は87を含む、実施形態5に記載の抗体。
【0213】
実施形態10 前記VH鎖領域が、配列番号93を含むVL鎖領域と対となる配列番号
89を含む、実施形態5に記載の抗体。
【0214】
実施形態11 前記VH鎖領域が、配列番号94を含むVL鎖領域と対となる配列番号
91を含む、実施形態5に記載の抗体。
【0215】
実施形態12 前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号22のアミノ酸配
列を有するポリペプチドに結合する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の抗体又は
抗原結合フラグメント。
【0216】
実施形態13 抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒト抗体又は抗原結合フラグメント
である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【0217】
実施形態14 前記抗体又は抗原結合フラグメントは、組み換え体である、実施形態1
~13のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【0218】
実施形態15 抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、Fab2フラグメント
、又は一本鎖抗体である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の抗原結合フラグメン
ト。
【0219】
実施形態16 抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3
、又はIgG4のアイソタイプである、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗体又
は抗原結合フラグメント。
【0220】
実施形態17 IgG1又はIgG4のアイソタイプである、実施形態1~9のいずれ
かに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【0221】
実施形態18 IgG1は、Fc領域中に、K409R置換を有する、実施形態17に
記載の抗体。
【0222】
実施形態19 IgG1は、Fc領域中に、F405L置換を有する、実施形態17に
記載の抗体。
【0223】
実施形態20 IgG4は、Fc領域中に、F405L置換及びR409K置換を有す
る、実施形態20に記載の抗体。
【0224】
実施形態21 Fc領域中に、S228P置換、L234A置換、及びL235A置換
を更に含む、実施形態16に記載の抗体。
【0225】
実施形態22 前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトGPRC5Dに特異的
に結合し、カニクイザルGPRC5Dと交差反応する、実施形態1~14のいずれか1つ
に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【0226】
実施形態23 前記抗体又は抗原結合フラグメントは、約28nM未満のEC50でAD
CCをインビトロで誘導する、実施形態17に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
【0227】
実施形態24 実施形態1~11のいずれか1つに記載の抗体又は抗原結合フラグメン
トを発現している単離された細胞。
【0228】
実施形態25 細胞は、ハイブリドーマである、実施形態24に記載の細胞。
【0229】
実施形態26 抗体は、組み換えにより生成される、実施形態24に記載の細胞。
【0230】
実施形態27 単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体であって、
a)第1の重鎖(HC1)と、
b)第2の重鎖(HC2)と、
c)第1の軽鎖(LC1)と、
d)第2の軽鎖(LC2)と、を含み、
前記HC1及び前記LC1は、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合部位を形成す
るように対を成しており、前記HC2及び前記LC2は、GPRC5Dに特異的に結合す
る第2の抗原結合部位を形成するように対を成している、単離されたGPRC5D×CD
3二重特異性抗体、又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
【0231】
実施形態28 HC1は、配列番号25を含み、LC1は、配列番号26を含む、実施
形態27に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0232】
実施形態29 HC2は、配列番号52を含み、LC2は、配列番号56を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0233】
実施形態30 HC2は、配列番号53を含み、LC2は、配列番号56を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0234】
実施形態31 HC2は、配列番号54を含み、LC2は、配列番号57を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0235】
実施形態32 HC2は、配列番号55を含み、LC2は、配列番号58を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0236】
実施形態33 HC2は、配列番号82を含み、LC2は、配列番号92を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0237】
実施形態34 HC2は、配列番号83を含み、LC2は、配列番号56を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0238】
実施形態35 HC2は、配列番号84を含み、LC2は、配列番号57を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0239】
実施形態36 HC2は、配列番号85を含み、LC2は、配列番号57を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0240】
実施形態37 HC2は、配列番号86を含み、LC2は、配列番号57を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0241】
実施形態38 HC2は、配列番号87を含み、LC2は、配列番号92を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0242】
実施形態39 HC2は、配列番号88を含み、LC2は、配列番号58を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0243】
実施形態40 HC2は、配列番号89を含み、LC2は、配列番号93を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0244】
実施形態41 HC2は、配列番号91を含み、LC2は、配列番号94を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0245】
実施形態42 HC2は、配列番号85を含み、LC2は、配列番号57を含む、実施
形態28に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント
【0246】
実施形態43 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、IgG1、IgG2、I
gG3、又はIgG4のアイソタイプである、実施形態27~42のいずれか1つに記載
のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
【0247】
実施形態44 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、IgG4のアイソタイプ
である、実施形態43に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合
フラグメント。
【0248】
実施形態45 前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、ヒト骨髄腫細胞の表
面上のGPRC5Dに結合する、実施形態27~42に記載のGPRC5D×CD3二重
特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
【0249】
実施形態46 前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、ヒトの多発性骨髄腫
細胞の表面上のGPRC5Dに結合する、実施形態27~42に記載のGPRC5D×C
D3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
【0250】
実施形態47 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、インビトロでのヒトT細
胞活性化を約0.22nM未満のEC50で誘導する、実施形態27~42に記載のGPR
C5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
【0251】
実施形態48 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、インビトロでのGPRC
5D発現細胞のT細胞依存性細胞傷害を約0.89nM未満のEC50で誘導する、実施形
態27~42に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメ
ント。
【0252】
実施形態49 実施形態27~42のいずれか1つに記載の抗体又は二重特異性結合フ
ラグメントを発現している、単離された細胞。
【0253】
実施形態50 前記細胞は、ハイブリドーマである、実施形態49に記載の細胞。
【0254】
実施形態51 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、組み換えにより生成され
る、実施形態49に記載の細胞。
【0255】
実施形態52 がんを有する対象を処置するための方法であって、前記方法は、
治療的に有効な量の、実施形態27~42のいずれか1つに記載のGPRC5D×CD
3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを、処置を必要とする患者に、前記が
んを処置するのに十分な時間投与する工程を含む、方法。
【0256】
実施形態53 がん細胞の成長又は増殖を阻害するための方法であって、前記方法は、
がん細胞の前記成長又は増殖を阻害するために、治療的に有効な量の、実施形態27~
42のいずれか1つに記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フ
ラグメントを投与する工程を含む、方法。
【0257】
実施形態54 T細胞をGPRC5D発現がん細胞に再指向する方法であって、前記方
法は、
T細胞をがんに再指向するために、治療的に有効な量の、実施形態27~42のいずれ
か1つに記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを
投与する工程を含む、方法。
【0258】
実施形態55 前記がんは、血液がんである、請求項52、53、又は54に記載の方
法。
【0259】
実施形態56 前記血液がんは、GPRC5D発現B細胞がんである、実施形態55に
記載の方法。
【0260】
実施形態57 前記GPRC5D発現B細胞がんは、多発性骨髄腫である、実施形態5
6に記載の方法。
【0261】
実施形態58 第2の治療剤を投与する工程を含む、実施形態52に記載の方法。
【0262】
実施形態59 前記第2の治療剤は、化学療法剤又は標的を設定した抗がん治療剤であ
る、実施形態58に記載の方法。
【0263】
実施形態60 前記化学療法剤は、シタラビン、アントラサイクリン、ヒスタミン二塩
酸塩、又はインターロイキン2である、実施形態59に記載の方法。
【0264】
実施形態61 前記第2の治療剤を、前記二重特異性抗体と同時に、連続的に、又は別
個に、前記対象に投与する、実施形態59に記載の方法。
【0265】
実施形態62 実施形態27~42のいずれか1つに記載のGPRC5D×CD3二重
特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントと、医薬的に許容され得る担体と、を含む、
医薬組成物。
【0266】
実施形態63 実施形態49~51のいずれか1つに記載の細胞を培養することにより
、実施形態27~42のいずれか1つに記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は
二重特異性結合フラグメントを生成するための方法。
【0267】
実施形態64 実施形態27~42のいずれか1つに記載のGPRC5D×CD3二重
特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントの、前記HC1、前記HC2、前記LC1、
又は前記LC2をコードする、単離された合成ポリヌクレオチド。
【0268】
実施形態65 実施形態27~42のいずれか1つに定義されるとおりのGPRC5D
×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント、及び/又は実施形態63に定
義されるとおりのポリヌクレオチドと、これらのための包装と、を含む、キット。
【実施例
【0269】
下記実施例は、先の開示を補い、本明細書に記載された主題のより良好な理解を提供す
るために提供される。これらの実施例は、記載された主題を限定すると解釈されるべきで
ない。本明細書に記載された実施例及び実施形態は例示のみを目的とするものであり、そ
れらを考慮した種々の改変又は変更は、当業者に明らかであり、また、本発明の真の範囲
内に含まれ、かつ本発明の真の範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【0270】
実施例1:抗原
組み換えGPRC5D抗原の産生が困難であることから、標準法を使用して、GPRC
5D[ヒト(配列番号:22)、カニクイザル(配列番号:23)、マウス(配列番号:
24)]を示す形質転換細胞株を作成して抗体生成及び特性評価試験の際に全細胞抗原(
whole cell antigens)として使用した(表4)。
【0271】
【表4】
【0272】
実施例2:ファージディスプレイ法を用いたGPRC5D抗体の生成
2つの別個のアプローチは、ファージ:標準的な細胞パニング(負の選択)及びFAC
Sによる細胞ファージパニング(競合的な選択)によるGPRC5D抗体の生成によった
【0273】
標準的な細胞ファージパニング(負の選択):
インハウスの新規ファージライブラリについては詳細に記載されている(Shi et
al(2010)J.Mol.Biol.397:385~396;国際公開第09/
085462号)。これらのライブラリは、CDR-H3に高い多様性を有するように設
計された3つのヒトVH生殖系列遺伝子(IGHV1-69、3-23、5-51)及び
4つのヒトVL生殖系列遺伝子(A27、B3、L6、O12)で構築されたものである
。ファージコートタンパク質pIXに対するFab多様体を示す3つの新規ファージライ
ブラリ(DNP00004-169HC/LC mix、DNP00005-323HC
/LC mix、及びDNP00006-551HC/LC mix)を、ラウンド1、
3、5並びにラウンド2及び4でGPRC5D発現HEK293 G5安定細胞(標的細
胞)に対しパニングした。ラウンド前には増殖させたFab-pIXファージをHEK2
93バックグラウンド細胞に適用した(負の選択)(表5を参照)。終夜増殖させるため
、標的細胞に結合したラウンド1の新規Fab pIXファージを回収した。ラウンド1
で選択されたファージをラウンド2のためバックグラウンド細胞に適用し、負に選択され
たファージを終夜増殖させるのに備え未結合のFab-pIXファージを回収した。ラウ
ンド3及び4では、他の正及び負のセットのパニングラウンドを実施した。最終ラウンド
は、直前のラウンドで負に選択され増殖させたファージを2つのパニング群に分割して実
施した。一方の群は標的細胞のためのサンプルとし、他方の群はバックグラウンド細胞の
パニングのためのサンプルとした。
【0274】
【表5】
【0275】
標準セルファージパンニング(バックグラウンドの選択):
前述の標準的な細胞パニング手順で実施したものと同様の環境及びインキュベート時間
にて、Fab-pIXファージディスプレイライブラリをHEK293細胞に添加した(
表6)。3ラウンド後、HEK293結合Fab-pIXファージに対応するDNAを使
用して、NGSのためPCR増幅産物を産生した。これらのNGSの結果は、有望な標的
特異的なFab候補を識別するのを助けるソフトウェアNGS2.0での更なるダイナミ
ックなサブトラクティブ解析に使用される。
【0276】
【表6】
【0277】
FACSによる細胞ファージパニング(競合的な選択)
標的細胞とバックグラウンド細胞との混合物に、Fab pIXファージを同時に適用
して3ラウンドのパニングを行った(表7)。ラウンド1及び2については、GFPシグ
ナルを使用して、Fab-pIXファージが結合した標的細胞を選別した。選別された細
胞から、結合したFab-pIXファージを捕捉し、酸による細胞溶解を行った後で、大
腸菌を感染させた。ラウンド2で増幅させたFab pIXファージ及び細胞混合物を、
最終ラウンドでGFP標的細胞についてゲート化された集団及び非GFPバックグラウン
ド細胞についてゲート化された集団の2集団に選別した。細胞集団の両方に対するFab
-pIXファージの結合は、酸による溶解及び大腸菌の感染により捕捉した。
【0278】
【表7】
【0279】
ファージパニングの次世代シーケンシング(NGS)
最終ラウンドのパニングサンプル6つにグルコース抑制下での終夜増殖を実施した。m
ini-prep DNA(Qiagen QIAspin DNAキット)を用意する
のにこれらの培養物を使用した。6つのDNAサンプルをPCRのテンプレートとして使
用して、HCDR1~HCDR3から測定される増幅産物を生成した。6つの増幅産物を
ゲル精製し、keeping version 2.1によりプールし、標準的な細胞パ
ニングのため3.0を分離し、FACSによる細胞パニングのため完全にプールした。こ
れらのプールされ、ゲル精製された増幅産物を、Genewiz NGSサービスに提出
し、MiSeq 1×300法により加工した。ファイルはGenewizにより送付さ
れ、ローカルサーバにアップロードされた(nas2.0)。このサーバでは、NGS2
.0ソフトウェアアプリケーションを使用して、配列ファイルをロード、読み込み、及び
解析した。IgGの変換には、コピー数(>50)と、標的細胞(+)配列のバックグラ
ウンド細胞(-)配列に対する比率(>5:1の比率)をもとに上位88の配列を選択し
た。重鎖可変配列のみがNGSにより決定されることから、完全な重鎖コンストラクトは
電子的に適切なフレームワークへと構築する必要があった。更に、重鎖配列のみが判明し
ていることから、各候補を4つの親軽鎖(A27、B3、L6、O12)と対形成させた
。候補の最終的な変換は、ヒトIgG4PAAとして行われる。
【0280】
ELISAスクリーン及び標準シーケンシング
NGSに用いたものと同一のDNAプレップに、制限酵素による消化と、セルフライゲ
ーションを実施して、遺伝子pI×を切除し、可溶性Fabの発現を可能にした。3つの
パニングサンプルのそれぞれについて選別した92のコロニーをFab発現についてEL
ISAにより評価し、サンガー法により重鎖及び軽鎖の両方を配列決定した。LCDRの
多様な配列について最終候補を哺乳動物発現プラスミドにクローン化した。
【0281】
実施例4:ファージディスプレイ法により得られたGPRC5D抗体の初期特性評価
GPRC5D結合:
上記のとおり、ヒトGPRC5D細胞を抗原として使用して、全細胞ファージパニング
を完了した。NGS分析により、各候補は重鎖配列のみが判明していた。結果として、各
重鎖を、4つの親軽鎖(A27、B3、L6、O12)と対形成させ、NGSにより同定
された87のHc配列から348のmAbを得た。FACSを使用して、これらのmAb
をカニクイザルGPRC5Dに対する結合についてまずは評価した。カニクイザルGPR
C5D細胞株がヒトGPRC5D細胞株の発現レベルよりも高い発現レベルを有したこと
から、有望な結合シグナルを最大化する初期スクリーニングを行うため、カニクイザルG
PRC5D細胞株を選択した。簡潔に、タンパク質濃度を1μg/mLに正規化してFA
CSスクリーニングを実施し、1ウェルあたり100μLのタンパク質を200,000
個の細胞と混合した。mAbを細胞と共に4℃で1時間インキュベートした。次に、細胞
をPBS及び0.2%のFBSで3回洗浄した。次に、PEを連結した抗ヒト二次mAb
(Jacksonカタログ番号709-116-149)を検出試薬として添加した。細
胞及び二次抗体を4℃で1時間インキュベートした。次に、細胞をPBS及び0.2%の
FBSで3回洗浄した。PBS及び0.2%のFBSを用い、この細胞を再度洗浄した後
、FACSアレイで解析した。
【0282】
カニクイザルGPRC5Dに対する結合について、15のmAbでは100,000超
のMFI、23のmAbでは100,000未満10,000超のMFI、63のmAb
では10,000未満1000超のMFIといった多数のヒットが観察された(表8)。
【0283】
【表8-1】
【0284】
【表8-2】
【0285】
【表8-3】
【0286】
結合親和性が最も高かった40のmAbを、カニクイザルGPCR5D細胞に対する反
復結合試験と、ヒトGPRC5D発現細胞に対するFACSによる結合評価とから構成さ
れる、更なる特性評価のために選択した(表9)。これらのデータを解析して、精製及び
GPRC5D×CD3二重特異性抗体の生成のため17のmAbを選択した(ハイライト
を付した)。精製用mAbの選択及びGPRC5D×CD3二重特異性抗体の生成に使用
される因子としては、ヒトGPRC5Dに対する結合特異性、カニクイザルGPRC5D
に対する交差反応性、及びHc配列多様性が挙げられる。例えば、GC5H36を3つの
別個の軽鎖と対形成させ、結合について解析した(GC5B162、GC5B163、G
C5B164)。GC5B164は、そのmAbが、ヒトGPRC5Dに対してGC5B
162又はGC5B163より高いMFIを有することが観察されたので、GC5B16
4のみで解析を進めた。
【0287】
【表9】
【0288】
選択した各mAbの、ヒトGPRC5D発現HEK293細胞及び遺伝子導入していな
いHEK293細胞に対する濃度依存的結合プロファイルを、FACSを使用して求めた
図1)。全てのmAbについて、ヒトGPRC5Dに対し用量依存的な様式で結合が観
察された。3つのmAb、GC5B36、GC5B168、及びGC5B205は、遺伝
子導入していない(GPRC5D null)HEK293細胞にも結合することが観察
されたため、この細胞との非特異的な相互作用を理由として優先順位を下げた。
【0289】
抗CD3アームCD3B219と、抗RSV nullアームB23M46と、を有す
る二重特異性抗体の生成には、残りの14のmAbを選択した(表10)。
【0290】
【表10】
【0291】
二重特異性抗体のうちGCDB38は、組み換えの間に沈殿し、別の抗体のGCDB3
6は10%超の凝集体を含有した。全ての他の二重特異性抗体は、標準的なリリース基準
に合格した。nullアーム二重特異性抗体を、ヒトGPRC5D発現HEK293細胞
に対する濃度依存的結合について解析した(図2)。
【0292】
全ての二重特異性抗体は、用量依存的な様式で結合することが観察された。GC5B3
20は、二価のmAb及び一価の二重特異性抗体間の結合差を明らかにするための結合比
較分子として含めた。GCDB44は、抗CD3二重特異性抗体及び抗RSV null
アームmAb間の結合差を明らかにするための結合比較分子として含めた。mAbのGC
5B320を二重特異性抗体GCDB30及びGCDB44と比較すると、見かけ上の結
合親和性に予想される低下が観察された。また、GCDB44(抗CD3二重特異性Ab
)は、抗ヒトGPRC5D細胞に対する結合親和性が、GCDB30(抗RSV nul
lアーム二重特異性Ab)に比べてわずかに高いことが観察され、これにより、抗CD3
アームは、この細胞株に対する結合に正の影響を与えることが実証された。
【0293】
GPRC5Dを内因的に発現するMM1R細胞及びH929細胞に対する結合について
、二重特異性抗体のパネルもプロファイルした(図3)。FACSを使用して、二重特異
性抗体のMM1R及びH929細胞に対する結合プロファイルを、過剰発現させたヒトG
PCR5D HEK293細胞及び遺伝子導入していないHEK293細胞の場合と比較
した。二重特異性抗体は、MM1R細胞及びH929細胞で内因的に発現し、ある親和性
の範囲でGPRC5Dに結合することが観察された。MM1R細胞又はH929細胞のい
ずれかよりも受容体密度がかなり高い、過剰発現させた安定な細胞株であるヒトGPRC
5D HEK細胞において最も高い結合が観察された。H929及びMM1R細胞への結
合親和性が低いことが観察されたことから、GCDB37、GCDB38、GCDB39
及びGCDB41の解析は先に進めなかった。
【0294】
インビトロでのT細胞依存性細胞傷害
次に、H929及びMM1R標的細胞を使用して、T細胞介在性細胞傷害アッセイによ
り、二重特異性抗体のパネルを力価について評価した(図4A及びB、表11)。簡潔に
、標的細胞(H929、MM1.R、OPM2、LP-1及びDaudi又はHEK親及
びHEK+GPRC5D細胞)を計数し、107個の細胞を1350rpmで3分間遠心
分離し、細胞ペレットを1mLのCFSE希釈液(CellTrace CFSE増殖染
色液を18μLの無菌DMSOで再構成し、この溶液1μLを10mLの無菌PBSに希
釈したもの)に再懸濁し、室温、暗所で8分間インキュベートした。インキュベート後、
1mLのHI FBSを細胞懸濁液に添加して、余剰のCFSEを反応停止させた。細胞
を、10%のFBSを添加したRPMI-1640で2回洗浄した。10mLのRPMI
で再構成した後、細胞を計数し、細胞活性をスプレッドシートで再コード化した。細胞を
2.2×105個/mLに希釈し、使用までの間37℃でインキュベートした。
【0295】
健常なドナー由来のPan T細胞を37℃の水浴で解凍し、次に細胞を4℃にて3分
間1350rpmで遠心分離した。上清を廃棄し、1.1×106個/mLの濃度で培養
培地で再構成した。2×105個の標的細胞を96ウェルU底プレートのウェルに添加し
た後、Fc阻害剤を添加した(最終濃度2mg/mL)。全ての細胞株を室温で10分間
インキュベートし、Fc受容体活性をブロックした。1×105個のT細胞をウェルに添
加した(エフェクター:標的比5:1)。標的細胞及びT細胞を混合した後、20μLの
GPRC5D×CD3二重特異性Ab希釈物を各ウェルに添加した。GPRC5D×CD
3二重特異性抗体をPBSで800μg/mL(10×)に希釈した。力価測定は、96
ウェルU底プレートでPBSに4倍で段階希釈して準備した。最後のカラムはPBSのみ
のままとした(溶媒対照)。プレートを、5%のCO2下、37℃にて48時間インキュ
ベートした。
【0296】
2日(48時間)後、プレートを遠心分離し、サイトカイン放出アッセイのため、10
0μLの上清を-80℃で保管した。細胞を200μLのPBSで洗浄し、室温で20分
間、50μLの近赤外生/死染色(1:200希釈)及び抗CD25 PE抗体(1:5
0希釈)でインキュベートする。次に、細胞を200μLのFACS緩衝液で1回洗浄し
、最終的に150μLのFACS緩衝液で再構成した。FACSCanto II及びF
lowJo 7.6を使用して、標的細胞傷害(標的%)及びT細胞活性化CD25+(
生T細胞率%)について細胞を解析した。データのグラフ化及びフィッティングは、最小
二乗法を用い、勾配が可変の非線形回帰(4パラメータ)の関数を使用してGraphP
ad Prism 6で実施した。
【0297】
【表11】
【0298】
観察した力価範囲では、全ての二重特異性抗体は、T細胞介在性のH929細胞の殺傷
を活性化した(表11)。両細胞株について同様の順位が観察された。しかしながら、M
M1R細胞で観察されたEC50の方が低かった。興味深いことに、結合親和性は、T細胞
介在性細胞傷害アッセイにおいて、必ずしも力価と相関しなかった。例えば、GCDB4
4は、親和性結合の最も高い二重特異性抗体であったものの、細胞傷害アッセイにおいて
は力価が最も小さかった。一方GCDB43では、わずかに低いものの同様にして、細胞
傷害アッセイにおいて結合親和性が最も強力であった。
【0299】
次にカニクイザルGPRC5Dについて機能の交差反応性を評価するため、カニクイザ
ルGPRC5D HEK293細胞を使用して、T細胞介在性細胞傷害及びT細胞活性化
について、二重特異性抗体を評価した(図5A及びB)。このアッセイでは全ての二重特
異性抗体には活性があったものの、力価の範囲はカニクイザルGPRC5D+発現細胞に
対して観察された。
【0300】
インビボ活性
次いで、ベンチマークとなるインビボ試験を実施し、これらのGPRC5D×CD3二
重特異性抗体のインビボ活性を明らかにした。GCDB32及びGCDB35(図5A
びB)を選択して、H929予防的(prophylactic)腫瘍モデルで試験した。H929細
胞をNSGマウスに移植して一週間後に、ヒトPBMCを注入した。この二重特異性抗体
による処置は、H929細胞の移植と同時に開始し、用量10μg、1μg、及び0.1
μg/個体で2又は3日(q2d又はq3d)おきに継続し、合計5群とした。各群10
匹のマウスを使用し、溶媒対照としてはPBSを含めた。11日目に処置を停止し、25
日目(図6A及びB)又は26日目(図12A~D)に試験を終了した。用量1μg/個
体で約80%の腫瘍成長阻害を示したGCDB35を除き、この予防的モデルで試験した
全てのGPRC5D×CD3抗体は、用量10及び1μg/個体で100%の腫瘍成長阻
害を示した。用量を1/10程度(0.1μg/個体)に減らすと、これらの二重特異性
抗体は、10~80%の範囲の様々な有効度で腫瘍成長阻害活性を示した。
【0301】
Fcブロッカーの存在下でのインビトロT細胞依存性細胞傷害
GPRC5D標的化アームの特異性を明らかにするために、次に、Fc阻害剤の存在下
での、T細胞再指向による細胞傷害アッセイにおいて、GPRC5D×CD3二重特異性
抗体のパネルを評価した。二重特異性抗体の標的細胞は、インビトロアッセイにおいて二
重特異性抗体のFc部分と相互作用し得るFcγ受容体を発現しているB細胞であること
から、この試験は特異性を明らかにするために重要であった。T細胞介在性細胞傷害アッ
セイでは、多数の二重特異性抗体について力価のシフトが観察された。最も大きなシフト
はGCDB40及びGCDB34で観察された(図7A~7B)。
【0302】
次に、4つの最も強力な二重特異性抗体(GCDB32、GCDB35、GCDB40
、及びGCDB43)及びFcγ受容体間の結合相互作用の直接測定を完了した(図8A
~8D)。Fcγ受容体及び上記の二重特異性抗体のそれぞれについて、Alpha S
creen解析を1ラウンド実施した。全てのサンプルは2連でアッセイした。FcγR
Iでは、4つの二重特異性抗体はB21M hIgG4 PAA様に挙動する。すなわち
、合致するアイソタイプ対照以外に競合はない。FcγRIIIaに対し、hIgG1野
生型対照及び4つの二重特異性抗体間でも同様の差異が観察された。GCD43は最もI
gG4PAA様のアイソタイプ対照であり、他の二重特異性抗体は、FcγRIIIaに
対しわずかに高い親和性を有した。FcγRIIa及びFcγRIIbの両方において、
4つの二重特異性抗体が以下の順で競合する:GCDB40>GCDB32>GCDB4
3>GCDB35。GCDB40は、最も競合的であり、すなわちFcγRIIa及びF
cγRIIbに対し最も高親和性で結合した。実際のところ、GCDB40は、FcγR
IIa及びFcγRIIbに対しhIgG1野生型と同程度に競合し、Fc阻害剤を含め
たときにT細胞介在性細胞傷害アッセイにおいて観察される力価のシフトが裏付けられる
。FcγRIIa及びFcγRIIbに予期せぬ相互作用があったことから、これ以上G
CDB40についての解析は行わなかった。
【0303】
競合的結合アッセイ
ヒトGPCR5D細胞に対する競合的結合について、抗GPRC5D mAbを互いに
評価した。簡潔に、50,000個/ウェルで50μLの培地に細胞を播種し、37℃で
90分間定着させた。次に、3%のBSAを使用して室温で1時間ウェルをブロックした
。mAbをルテニウム(II)トリス-ビピリジン、N-ヒドロキシスクシンイミド(R
u-標識)で標識し、標準の手順を踏んだ。別個の96ウェルプレートにおいて、5μM
の競合的mAbを50nMのRu標識mAbとインキュベートした。阻害溶液を細胞プレ
ートから除去し、25μLのmAb溶液を添加した。プレートを振盪しながら室温で1時
間インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄した後、150μLのMSDリード
緩衝液(界面活性剤非添加)を添加し、MSDプレートリーダーを使用して、ルテニウム
標識した抗体の結合を検出した。
【0304】
全てのmAbは同じ競合群に属する。但し、GC5B420及びGC5B421は、G
C5B81、GC5B285、及び/又はGC5B332とは完全には競合しなかった(
阻害率70%未満)(表12)。mAbの大きさと比べてGPRC5Dの細胞外ドメイン
の大きさが小さいことから、2つのmAbがGPRC5Dに対して同時に結合するのは立
体的に不可能であるものと仮定される。
【0305】
【表12】
【0306】
実施例4:ハイブリドーマ法を用いたGPRC5D抗体の生成
0、10、及び20日目に、完全長のヒトGPRC5Dを発現しているpCMV6-n
eo(CMVプロモータ)プラスミドDNAにより、3匹のBalb/cマウスを尾の付
け根から経皮的に免疫した。最後に59日目に、マウスには、完全長のヒトGPRC5D
を過剰発現しているラット好塩基球性白血病(RBL)細胞を腹腔及び静脈内注射し、免
疫した。63日目にリンパ節及び脾臓を摘出し、B細胞を濃縮し、この細胞を使用して、
約3500のmAbを分泌するハイブリドーマを作成した。
【0307】
実施例5:ハイブリドーマ法により得られたGPRC5D抗体の初回特性評価
GPRC5D結合
RBL及びヒトGPRC5D発現RBL細胞の両方に対する結合についてFACSを使
用してハイブリドーマをスクリーニングした。各mAbに関し、バックグラウンドについ
て調整した、GPRC5D_RBL細胞に対する結合についてのMFIの、遺伝子導入し
ていないRBL細胞に対する結合についてのMFIに対する比を計算した。結合比3超の
全てのサンプルは有望であるものとみなした。3超の比を有していた99のハイブリドー
マに対しv領域のクローニングを行った。31のmAb配列を同定し、合成し、発現させ
、精製した。31のmAbのうち2つはRBL_GPRC5D細胞に対しバックグラウン
ドを超える結合を示した(図9A及び8B)。発現、精製、及び抗CD3アームCD3B
219を有する二重特異性抗体の生成には、GCDB390及びGCDB396を選択し
、それぞれ二重特異性抗体GCDB46及びGCDB47を生成した。
【0308】
T細胞依存性細胞傷害
T細胞介在性細胞傷害アッセイでGCDB46及びGCDB47を評価した(図10A
及び図10B)。いずれの二重特異性抗体も強力であることが観察され、それぞれEC50
は0.67及び0.1nMであったと報告された。これらのデータに基づいて、いずれの
mAbも3種類のファージに由来するmAbによるリード最適化に進めた。
【0309】
実施例6:ヒット評価、選択、及び最適化
リード最適化のため、表13に要約した結合、機能、交差反応性、及び選択性について
のデータに基づき5つのGPRC5D二重特異性抗体(GCDB32、GCDB43、G
CDB35、GCDB46、GCDB47)を選択した。
【0310】
【表13】
【0311】
表14に説明するとおり、リード最適化は、GCDB32(GC5B81親mAb)、
GCDB43(GC5B285親mAb)及びGCDB35(GC5B164親mAb)
に可能性のある翻訳後修飾(PTM)配列のリスクに対処することを目的とした。
【0312】
【表14】
【0313】
GC5B81についてアッセイした全てのPTM多様体は、結合親和性が実質的に低下
しており、この残基(HC W102)のパラトープに対する重要性を実証する(表15
)。
【0314】
【表15】
【0315】
結合試験により、ヒトGPRC5Dに対する結合を保持していたGC5B285及びG
C5B164の両方について、変異の数を特定した(表16及び17)。
【0316】
【表16-1】
【0317】
【表16-2】
【0318】
【表17-1】
【0319】
【表17-2】
【0320】
この結合データに基づいて、選択されたmAbsをGPRC5D×CD3二重特異性抗
体として生成し、H929細胞のT細胞介在性細胞傷害について評価した(表18)。
【0321】
【表18】
【0322】
T細胞介在性細胞傷害アッセイにおいて観察された力価の範囲は、観察された結合親和
性によって必ずしも予測されるものではなかった。例えば、同様の親和性でヒトGPRC
5Dに結合したGC5B465及びGC5B463は、配列中2つのアミノ酸配列のみ(
表17)が異なり、GPRC5D×CD3二重特異性Abとして、力価において12.5
倍の差を有することが観察された(表18)。機能データに基づき、GC5B465及び
GC5B483を、GC5B285(CD3二重特異性なものとしてGCDB43)及び
GC5B164(CD3二重特異性なものとしてGCDB35)について最適化された配
列として選択した。
【0323】
また、このマウスハイブリドーマ由来GPCR5D mAbについて、ヒトフレームワ
ークの適合も完了した(それぞれCD3二重特異性なものとしてGC5B390及びGC
5B396、又はGCDB46及び47)。結合試験により、GC5B396用の多数の
フレームワークと、ヒトGPRC5Dに対する結合を保持したGC5B390用のフレー
ムワークとを特定した(表19)。
【0324】
【表19】
【0325】
結合データに基づいて、CD3二重特異性抗体としていくつかの抗GPCR5D mA
bを生成し、H929細胞のT細胞介在性細胞傷害について評価した(表18)。機能解
析により、GCDB63、GCDB67、及びGCDB69を強力な完全ヒト化GPRC
5D×CD3二重特異性抗体として同定した。これらのデータに基づいて、対応する抗G
PRC5D mAbの、GC5B515、GC5B532、及びGC5B540を、GC
5B390及びGC5B391の完全なヒト化配列として選択する。
【0326】
GC5B515、GC5B532、及びGCDB540の潜在的な翻訳後修飾による配
列リスクに対処することを目的として、完全ヒト化配列の更なるリード最適化を完了した
。重鎖配列にG56S変異を生じさせて、GC5B515に潜在的な脱アミドリスクを除
く(表20)。
【0327】
【表20】
【0328】
GC5B532及びGC5B540の重鎖は、潜在的な異性化リスク及び酸化リスクの
両方を含有する。このリスクを改善するようM64K及びG99Aの変異を作成した(表
20)。試験した多様体のうち、G99A変異を有するものは全て結合親和性が大幅に低
下していたのに対し、M64K及びG56A多様体は影響を受けなかった。結合データに
基づき、GC5B596のみを機能評価に進め、T細胞介在性細胞傷害アッセイにおいて
、CD3二重特異性(GCDB72)なものとして力価を実証した。
【0329】
したがって、更なる特性評価には、4つのGPRC5D二重特異性mAbを選択した:
GCDB32、GCDB53、GCDB61、及びGCDB72。以下、表21及び22
には、二重特異性分子の生成に使用したGPRC5D mAbのCDR配列と、重鎖及び
軽鎖配列とを示す。
【0330】
【表21】
【0331】
【表22】
【0332】
実施例7:IgG4 S228P、L234A、L235Aの二重特異性フォーマット
におけるGPRC5D及びCD3抗体の調製
4つの単一特異的GPRC5D抗体(表21を参照のこと)を、Fc置換S228P、
L234A、及びL235A、又はS228P、L234A、L235A、F405L、
及びR409K(CD3アーム)(EUインデックスに従ったナンバリング)を有するI
gG4として発現させた。配列番号25の重鎖及び配列番号26の軽鎖を有するVH及び
VL領域と、S228P、L234A、L235A、F405L、及びR409K置換を
有するIgG4定常領域とを含む単一特異的抗CD3抗体CD3B219も生成した。
【0333】
プロテインAカラム(HiTrap MabSelect SuReカラム)を使用す
る標準的な方法を使用して、単一特異的抗体を精製した。溶出後、プールを、D-PBS
、pH7.2の中に透析した。
【0334】
二重特異性GPRC5D×CD3抗体を、(国際公開第2011/131746号に記
載されたような)インビトロでのFabアーム交換において、単一特異的CD3 mAb
と単一特異的GPRC5D mAbとを組み合わせることにより生成した。簡潔に、PB
S、pH7~7.4中の約1~20mg/mLの抗GPRC5D/抗CD3抗体(モル比
1.08:1)と、75mMの2-メルカプトエタノールアミン(2-MEA)とを互い
に混合し、25~37℃において2~6時間インキュベートし、続けて、透析、透析ろ過
、接線流ろ過、及び/又はスピン細胞ろ過により標準的な方法を使用して2-MEAを除
去した。
【0335】
GPRC5D×CD3二重特異性Abの重鎖及び軽鎖を以下の表23に示す。
【0336】
【表23】
【0337】
実施例8:GCDB32、GCDB53、GCDB61、及びGCDB72の機能の特
性評価
GCDB32、GCDB53、GCDB61、及びGCDB72をマウスGPRC5D
に対する結合について評価した(表24)。観察された結合親和性の範囲では、4つの二
重特異性抗体の全てが、マウスGPRC5Dに対し結合していた。
【0338】
【表24】
【0339】
ヒト及びカニクイザルGPRC5Dを過剰発現させた細胞株にT細胞再指向による細胞
傷害アッセイを行い、カニクイザルGPRC5Dとの交差反応性も評価した(表25)。
GPRC5D×CD3二重特異性抗体は、ヒト及びカニクイザルGPRC5D(GCDB
32)に対し等しい効力を有していたのに対し、試験した他の二重特異性抗体は、カニク
イザルGPRC5Dに対し誘導される細胞傷害性の効力が、ヒトGPRC5Dに対する場
合よりも劣っていた。
【0340】
【表25】
【0341】
追加の特性評価は、インビトロでの結合(図11A図11E)と力価(表26)とを
明らかにすることを目的とした。
【0342】
【表26】
【0343】
GCDB61は結合が最も強く、GCDB72及びGCDB32は結合が最も弱いとい
う結合親和性範囲が観察されたものの、二重特異性抗体のパネルで、インビトロでの効力
は非常に似通っていた。しかし、順位の解析に基づくと、解析した多様なB細胞株の中で
、GCDB72の効力が最も高かった。患者から誘導されたMNCを使用したエクスビボ
結合及び力価試験でもインビトロアッセイと非常に似通った結果が得られた(表27並び
図15A及び図15B)。
【0344】
【表27】
【0345】
患者MNCに対する結合親和性は、GCDB61が最も高かったのに対し、GCDB7
2及びGCDB32は最も弱い結合分子であった。再度、結合親和性において差が観察さ
れたものの、全ての二重特異性抗体は、T細胞の再指向による細胞傷害アッセイにおいて
、ナノモル濃度未満(sub-nanomolar)で活性を示した。分子は、インビトロ及びエクス
ビボでの力価については実質的に識別不能であった。しかしながら、インビボのデータで
は差が示された(図12A図12D)。
【0346】
H929細胞をNSGマウスに移植して一週間後に、ヒトPBMCを注入した。この二
重特異性抗体の処置は、H929細胞を移植すると同時に開始し、用量10μg、1μg
、及び0.1μg/個体で2又は3日おき(q2d又はq3d)に、合計5つの処置群で
継続した。各群10匹のマウスを使用し、溶媒対照としてはPBSを含めた。11日目に
処置を停止し、26日目に試験を終了した(図12A~D)。この予防的モデルで試験し
たGPRC5D×CD3二重特異性分子は、全て、用量10及び1μg/個体で100%
の腫瘍成長阻害を示した。最も低い用量の0.1μg/個体で差が観察され、GCDB7
2は80%の腫瘍成長阻害率が観察されたことから、試験した他の二重特異性抗体よりも
優れていることが実証された。
【0347】
実施例9:GPRC5D+MM1.R細胞株に対するGPRC5D抗体結合プロファイ

FACSを使用して、GPRC5D+ヒトMM細胞株(MM1.R、ATCC(アメリ
カ培養細胞系統保存機関)から購入)に対するGPRC5D抗体の結合親和性を測定した
図13は、全てのリード抗体が、GPRC5Dを発現しているMM.1R細胞に、0.
10nM~135nmの範囲のEC50値で、用量依存的な様式で結合したことを示す。G
C5B602以外の抗体は全て、EC50値が121.7nMであった市販の抗体FAB6
300(R& D Systemsカタログ番号FAB6300A、クローン番号571
961)と比較して有意に値が低かった。
【0348】
様々な濃度のリード抗体でGPRC5D+MM1.R細胞株を60分間染色し、表面結
合プロファイルを測定した(n=3)。フィコエリトリン標識したヒトIgG4Fc(S
outhern Biotech,HP6025クローン,カタログ番号9200-09
)を、シグナルを捕捉する二次抗体として使用した。結合は、FACSにより求められた
、正規化された幾何平均蛍光強度として表される。データのグラフ化及びフィッティング
は、勾配が可変の非線形回帰(4パラメータ)及び最小二乗法を使用して、GraphP
ad Prism 6で実施した。
【0349】
更に、GPRC5D mAb GC5M481結合プロファイルを、3種類のGPRC
5D+多発性骨髄腫細胞株(JIM3、OPM-2、及びMM.1R;ATCCから購入
した細胞株)を使用して、市販の抗体と比較して評価した(図14A)。更に、カニクイ
ザルGPRC5Dを発現するDaudi細胞を使用して、カニクイザルとの交差反応性に
ついてGPRC5D mAb(GC5M481)を評価したところ、親細胞と比較して強
い結合が示された(図14A)。また、GPRC5D+(JIM3,OPM-2、及びM
M1.R)細胞株(図14B)を使用して結合ポテンシャルについて評価したときに、5
つのGPRC5D×CD3二重特異性抗体(GCDB32、GCDB48、GCDB53
、GCDB61、及びGCDB72)は、アイソタイプ対照(点線で灰色に塗られた波形
)と比較してヒストグラム(黒い実線の波形)がシフトしていることから明らかなとおり
、有意に結合を示した。
【0350】
実施例10:PBMCヒト化NSGマウスにおけるMM.1Sヒト多発性骨髄腫の皮下
異種移植に対するGCDB72の抗腫瘍活性。
PBMCヒト化NSGマウスにおいて、確立されたMM.1Sヒト多発性骨髄腫(MM
)異種移植に対するGCDB72の活性を確認するため、当該インビボ試験を実施した。
試験0日目に、体重及び齢が同様の雌性NSGマウスの背面後方右側腹部に、MM.1S
ヒトMM細胞(1×107個/200μLのPBS/個体)を皮下(sc)移植した。腫
瘍細胞の移植から7日後に、側面尾静脈から1×107個のヒトPBMC(200μLの
PBS中)を静脈内投与した。15日目に平均腫瘍体積が約72~78mm3になってい
た場合に、処置を開始した。各マウスには、0.1μg(0.005mg/kg)、1μ
g(0.05mg/kg)、10μg(0.5mg/kg)、及び50μg(2.5mg
/kg)でPBS又はGCDB72 DuoBody抗体を静脈内(iv)投与する。N
ull DuoBody対照、CD3×Null及びNull×GPRC5Dをそれぞれ
10μg/個体で投与した。約3日おき(q3d)に合計7回用量の処置剤を投与した。
2とおりの高用量(10μg及び50μg)のGCDB72で強い抗腫瘍活性が観察され
た。これらの場合、MM.1S sc腫瘍は試験終了時に100%のマウス(1群あたり
10/10)で完全に消失していた(図16)。また、個体あたり1μgの用量では、腫
瘍の成長はPBS処置した腫瘍と比較して有意に65%(p≦0.0001)も阻害され
たのに対し、用量0.1μgではその効果は小さかった(TGI=19.3%,p=0.
0023)。CD3×Nullの効果は有効であるとは考えられず(TGI=28%,p
≦0.0001)、並びにNull×GPRC5Dの有する効果は、3.1%のTGI,
p=0.9971という無視できるものであった。36日目に、1群あたり少なくとも8
0%が生存個体である場合にTGIを確認した。有意な体重減少及び/又は死亡は、36
日以降にGVHDによって顕著になりはじめた(図17)。43日目には、生存している
マウスは各群60%以下となっており、試験を終了した。
【0351】
例11:GPRC5D抗体の抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)
IgG1 mAb同様抗ヒトGPRC5D mAbのパネルを作成した。更に、実施例
2に記載のとおり、新規抗ヒトGPRC5D mAbパネルを作成した。以下、表28及
び表29には、新規GPRC5D mAbのCDR配列と、重鎖及び軽鎖可変領域の配列
とを示す。これらの新規抗体を使用して、実施例7に記載のとおり二重特異性CD3分子
を作成し、ADCC活性評価にもIgG1 mAbとして組み入れた。
【0352】
【表28】
【0353】
【表29】
【0354】
H929細胞に対するADCC活性(表30及び表31)簡潔に、多発性骨髄腫細胞を
カルセイン-AMで室温で30分間標識し、2回PBSで洗浄した後、0.2×106
/mLでRPMI+10%のHI FBSに再懸濁した。PBMCを解凍し、PBSで洗
浄した後、3×106個/mLでRPMI増殖培地に再懸濁した。抗体の存在下で100
00又は50000個の標的細胞を100000又は2500000個のPBMCと混合
し、37℃のCO2インキュベーターで3時間インキュベートした。インキュベートプレ
ートを200gで4分間遠心分離した後、100μLの上清を新しい96ウェルプレート
に移し、485/535nMで蛍光強度を測定した。RFU値をプロットして、溶解率を
計算した。
【0355】
【表30】
【0356】
【表31】
【0357】
2pM~27.7nMの範囲で力価範囲を観察した。結合親和性は、ADCCアッセイ
における活性を必ずしも予測するものではなかった。例えば、GC5B382及びGC5
B379はヒトGPRC5D細胞に対して同様の結合親和性を有していたものの、ADC
CアッセイにおけるH929細胞に対する細胞傷害については15倍の差があった。同様
に、GPRC5D×CD3二重特異性抗体の細胞傷害誘導は、ADCCアッセイにおいて
GC5B370及びGC5B602により示される力価の予測因子とはならなかった。C
D3二重特異性なものとしてフォーマットした場合、GC5B602(GCDB63)は
、ナノモル未満の濃度でH929細胞に対する力価を有していたのに対し、CD3二重特
異性なGC5B370(GCDB41)は本質的に不活性であった。IgG1 mAbと
してフォーマットした場合、ADCCアッセイにおいて、同じV領域により正反対の観察
結果が得られ、GC5B370はGC5B602よりも強力である(約1100倍)こと
が観察された。
【0358】
【表32-1】
【0359】
【表32-2】
【0360】
【表32-3】
【0361】
【表32-4】
【0362】
【表32-5】
【0363】
【表32-6】
【0364】
【表32-7】
【0365】
【表32-8】

以下の態様を包含し得る。
[1] GPRC5Dに特異的に結合する、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
a.配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
b.配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
c.配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
d.配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
e.配列番号61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号67のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
f.配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
g.配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
h.配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
i.配列番号62のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
j.配列番号63のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号69のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
k.配列番号64のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号70のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
l.配列番号65のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、又は
m.配列番号66のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号77のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、を含む、単離された組み換え抗体又はその抗原結合フラグメント。
[2] 上記[1]に記載の単離された抗体又は抗原結合フラグメントであって、
a.配列番号1のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
b.配列番号2のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
c.配列番号3のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
d.配列番号4のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号12のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
e.配列番号61のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号67のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号78のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号80のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
f.配列番号2のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号28のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
g.配列番号27のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号73のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
h.配列番号27のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
i.配列番号62のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号74のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
j.配列番号63のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号69のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号75のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号78のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号80のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
k.配列番号61のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号67のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号72のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号78のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号80のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、
l.配列番号65のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号76のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号79のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号81のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含み、又は
m.配列番号66のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR1、配列番号71のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR2、及び配列番号77のアミノ酸配列を有する前記重鎖CDR3を含む、前記抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を更に含む、単離された抗体又は抗原結合フラグメント。
[3] GPRC5Dに特異的に結合し、かつ配列番号52、53、54、55、82、83、84、85、86、87、88、89、又は91からなる群から選択される重鎖可変(VH)領域を含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[4] 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号:56、57、58、92、93、又は94からなる群から選択される軽鎖可変(VL)領域を含む、上記[3]に記載の抗体。
[5] 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号:52、53、54、55、82、83、84、85、86、87、88、89、又は91からなる群から選択されるVH領域と、
配列番号56、57、58、92、93、又は94からなる群から選択されるVL領域と、を含む、上記[3]に記載の抗体。
[6] 前記VH鎖領域が、配列番号56を含むVL鎖領域と対となる配列番号52、53、又は83を含む、上記[5]に記載の抗体。
[7] 前記VH鎖領域が、配列番号57を含むVL鎖領域と対となる配列番号54、84、85、86、又は90を含む、上記[5]に記載の抗体。
[8] 前記VH鎖領域が、配列番号58を含むVL鎖領域と対となる配列番号55又は88を含む、上記[5]に記載の抗体。
[9] 前記VH鎖領域が、配列番号92を含むVL鎖領域と対となる配列番号82又は87を含む、上記[5]に記載の抗体。
[10] 前記VH鎖領域が、配列番号93を含むVL鎖領域と対となる配列番号89を含む、上記[5]に記載の抗体。
[11] 前記VH鎖領域が、配列番号94を含むVL鎖領域と対となる配列番号91を含む、上記[5]に記載の抗体。
[12] 前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号22のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[13] 前記抗体又は抗原結合フラグメントは、ヒト抗体又は抗原結合フラグメントである、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[14] 前記抗体又は抗原結合フラグメントは、組み換え体である、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[15] 前記抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、Fab2フラグメント、又は一本鎖抗体である、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
[16] 前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプである、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[17] IgG1又はIgG4のアイソタイプである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[18] 前記IgG1は、そのFc領域中に、K409R置換を有する、上記[17]に記載の抗体。
[19] 前記IgG1は、そのFc領域中に、F405L置換を有する、上記[17]に記載の抗体。
[20] 前記IgG4は、そのFc領域中に、F405L置換及びR409K置換を有する、上記[20]に記載の抗体。
[21] Fc領域中に、S228P置換、L234A置換、及びL235A置換を更に含む、上記[16]に記載の抗体。
[22] 前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトGPRC5Dに特異的に結合し、カニクイザルGPRC5Dと交差反応する、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[23] 前記抗体又は抗原結合フラグメントは、約28nM未満のEC 50 でADCCをインビトロで誘導する、上記[17]のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメント。
[24] 上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合フラグメントを発現している単離された細胞。
[25] 前記細胞は、ハイブリドーマである、上記[24]に記載の細胞。
[26] 前記抗体は、組み換えにより生成される、上記[24]に記載の細胞。
[27] 単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体であって、
a)第1の重鎖(HC1)と、
b)第2の重鎖(HC2)と、
c)第1の軽鎖(LC1)と、
d)第2の軽鎖(LC2)と、を含み、
前記HC1及び前記LC1は、対を成してCD3に特異的に結合する第1の抗原結合部位を形成し、前記HC2及び前記LC2は、対を成してGPRC5Dに特異的に結合する第2の抗原結合部位を形成する、単離されたGPRC5D×CD3二重特異性抗体、又はそのGPRC5D×CD3二重特異性結合フラグメント。
[28] HC1は、配列番号25を含み、LC1は、配列番号26を含む、上記[27]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[29] HC2は、配列番号52を含み、LC2は、配列番号56を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[30] HC2は、配列番号53を含み、LC2は、配列番号56を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[31] HC2は、配列番号54を含み、LC2は、配列番号57を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[32] HC2は、配列番号55を含み、LC2は、配列番号58を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[33] HC2は、配列番号82を含み、LC2は、配列番号92を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[34] HC2は、配列番号83を含み、LC2は、配列番号56を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[35] HC2は、配列番号84を含み、LC2は、配列番号57を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[36] HC2は、配列番号85を含み、LC2は、配列番号57を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[37] HC2は、配列番号86を含み、LC2は、配列番号57を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[38] HC2は、配列番号87を含み、LC2は、配列番号92を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[39] HC2は、配列番号88を含み、LC2は、配列番号58を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[40] HC2は、配列番号89を含み、LC2は、配列番号93を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[41] HC2は、配列番号91を含み、LC2は、配列番号94を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[42] HC2は、配列番号85を含み、LC2は、配列番号57を含む、上記[28]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[43] 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプである、上記[27]~[42]のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[44] 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、IgG4のアイソタイプである、上記[43]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[45] 前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、ヒト骨髄腫細胞の表面上のGPRC5Dに結合する、上記[27]~[42]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[46] 前記抗体又はその二重特異性結合フラグメントは、ヒトの多発性骨髄腫細胞の表面上のGPRC5Dに結合する、上記[27]~[42]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[47] 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、インビトロでのヒトT細胞活性化を約0.22nM未満のEC 50 で誘導する、上記[27]~[42]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[48] 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、インビトロでのGPRC5D発現細胞のT細胞依存性細胞傷害を約0.89nM未満のEC 50 で誘導する、上記[27]~[42]に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント。
[49] 上記[27]~[42]のいずれか一項に記載の抗体又は二重特異性結合フラグメントを発現している、単離された細胞。
[50] 前記細胞はハイブリドーマである、上記[49]に記載の細胞。
[51] 前記抗体又は二重特異性結合フラグメントは、組み換えにより生成される、上記[49]に記載の細胞。
[52] がんを有する対象を処置するための方法であって、前記方法は、
治療的に有効な量の、上記[27]~[42]のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを、処置を必要とする患者に、前記がんを処置するのに十分な時間投与する工程を含む、方法。
[53] がん細胞の成長又は増殖を阻害するための方法であって、前記方法は、
がん細胞の前記成長又は増殖を阻害するために、治療的に有効な量の、上記[27]~[42]のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを投与する工程を含む、方法。
[54] T細胞をGPRC5D発現がん細胞に対し再指向する方法であって、前記方法は、
T細胞をがんに再指向するために、治療的に有効な量の、上記[27]~[42]のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを投与する工程を含む、方法。
[55] 前記がんは、血液がんである、上記[52]、[53]、又は[54]に記載の方法。
[56] 前記血液がんは、GPRC5D発現B細胞がんである、上記[55]に記載の方法。
[57] 前記GPRC5D発現B細胞がんは、多発性骨髄腫である、上記[56]に記載の方法。
[58] 第2の治療剤を投与する工程を含む、上記[52]に記載の方法。
[59] 前記第2の治療剤は、化学療法剤又は標的を設定した抗がん治療剤である、上記[58]に記載の方法。
[60] 前記化学療法剤は、シタラビン、アントラサイクリン、ヒスタミン二塩酸塩、又はインターロイキン2である、上記[59]に記載の方法。
[61] 前記第2の治療剤を、前記二重特異性抗体と同時に、連続的に、又は別個に、前記対象に投与する、上記[59]に記載の方法。
[62] 上記[27]~[42]のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントと、医薬的に許容され得る担体と、を含む、医薬組成物。
[63] 上記[49]~[51]のいずれか一項に記載の細胞を培養することにより、上記[27]~[42]のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントを生成するための方法。
[64] 上記[27]~[42]のいずれか一項に記載のGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメントの、前記HC1、前記HC2、前記LC1、又は前記LC2をコードする、単離された合成ポリヌクレオチド。
[65] 上記[27]~[42]のいずれか一項に定義されるとおりのGPRC5D×CD3二重特異性抗体又は二重特異性結合フラグメント、及び/又は上記[63]に定義されるとおりのポリヌクレオチドと、これらのための包装と、を含む、キット。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14A-1】
図14A-2】
図14B-1】
図14B-2】
図14B-3】
図15A
図15B
図16
図17
【配列表】
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