(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4093 20060101AFI20240409BHJP
B23Q 15/12 20060101ALI20240409BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20240409BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G05B19/4093 M
B23Q15/12 Z
G05B19/404 J
B23B1/00 D
(21)【出願番号】P 2022506007
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008489
(87)【国際公開番号】W WO2021182304
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020040967
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】森橋 諒
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182336(JP,A)
【文献】特開2019-028597(JP,A)
【文献】特開2006-252392(JP,A)
【文献】特開2019-185780(JP,A)
【文献】特開2019-040252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
B23Q15/00-15/28
B23B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸及び送り軸を協調動作させて切削工具によりワークを切削加工する工作機械を制御する工作機械の制御装置であって、
前記主軸の回転速度、及び前記ワークに対する前記切削工具の相対位置の位置指令から、前記切削工具と前記ワークとを相対的に揺動させる揺動指令を算出する揺動指令算出部と、
前記主軸の回転速度の前記揺動指令算出部への通知遅れに相当する補正量を算出する補正量算出部と、
前記補正量を前記揺動指令に重畳する補正量重畳部と、
を備える、工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記揺動指令算出部は、前記主軸の回転速度に基づいて算出される揺動位相と、前記位置指令に基づいて算出される揺動振幅とから前記揺動指令を算出し、
前記補正量算出部は、前記主軸の回転速度の通知遅れ時間相当の揺動位相変化分を前記補正量として算出し、前記補正量を前記揺動指令における前記揺動位相に重畳する、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記補正量算出部は、前記主軸の回転速度、通知遅れ時間、パラメータ値のうちの少なくともいずれか一つから前記補正量を算出する、請求項1又は2に記載の工作機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対する切削加工を行う場合に、切削工具とワークとを相対回転させる少なくとも一つの主軸、及び切削工具をワークに対して相対移動させる少なくとも一つの送り軸を有し、主軸及び送り軸を協調動作させて切削工具によりワークを切削加工する例えば旋盤のような工作機械が用いられている。
【0003】
このような工作機械では、通常、切削工具の刃先が連続してワークの表面の材料を削り取るため、ワークの材質によっては、削り取られた材料が細長い削り屑(切粉)となる。削り屑は、切削工具に纏わりついてワークの加工を阻害する可能性がある。これに対して、例えば特許文献1に記載されるように、ワークに対して揺動切削を行う技術が知られている。揺動切削は、主軸周りに回転するワークに対して、揺動位相が交差するように所定の振動回数で切削工具を往復動作させる。揺動位相がワークの表面で交差すると、切削工具は、揺動位相が交差する箇所において、既にワークの表面を削り取った部位を再度通過するため、切削工具が一時的にワークから離れる(空振りする)。揺動位相はワークの表面で定期的に交差するので、切削工具が定期的にワーク表面から離れる(空振りする)。そのため、削り屑は一定の長さで細断され、削り屑が切削工具に纏わりつく問題は解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークに対して揺動切削を行う場合、例えば、送り軸を制御するサーボ制御装置において、切削工具を送り軸に沿って移動させるための位置指令に、切削工具を所定の振動回数で往復動作させるための揺動指令が重畳される。この揺動指令は、切削加工時の切削工具の毎回転送り量(主軸の一回転毎の切削工具の位置)や主軸の回転速度に基づいて算出される。
【0006】
しかし、CNCからの指令により主軸制御部が主軸を回転させ、そのフィードバックがサーボ制御装置に通知される。そのため、揺動指令の算出に用いる主軸回転数には通知遅れがある。
【0007】
このような通知遅れがあると、ワークに対して切削工具を相対的に揺動させた場合、揺動位相が主軸(ワーク)の位相に対してずれることによって、揺動位相が交差せず、削り屑が効率的に細断されなくなる可能性がある。このような問題は、主軸の回転速度を一定に制御して切削加工を行う場合には発生しないが、例えば外形形状がテーパー形状のワークに対してワークの周速を一定に制御しながら切削加工を行う場合等のように、主軸の回転速度変化を伴う切削加工を行う場合に発生する。通知遅れ分の揺動位相のずれ量の大きさが、主軸の回転速度に応じて変わるためである。そのため、揺動切削を行う工作機械においては、通知遅れが発生しても、削り屑を確実に細断できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、主軸及び送り軸を協調動作させて切削工具によりワークを切削加工する工作機械を制御する工作機械の制御装置であって、前記主軸の回転速度、及び前記ワークに対する前記切削工具の相対位置の位置指令から、前記切削工具と前記ワークとを相対的に揺動させる揺動指令を算出する揺動指令算出部と、前記主軸の回転速度の前記揺動指令算出部への通知遅れに相当する補正量を算出する補正量算出部と、前記補正量を前記揺動指令に重畳する補正量重畳部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、揺動切削を行う際に、通知遅れが発生していても、削り屑を確実に細断できる工作機械の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一態様に係る工作機械によってワークに対する揺動切削を行う様子を説明する説明図である。
【
図2】本開示の一態様に係る工作機械の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】通知遅れが補正されない状態における揺動切削時のワーク表面の切削工具の軌跡を示すグラフである。
【
図4】通知遅れが補正された状態における揺動切削時のワーク表面の切削工具の軌跡を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一態様について図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の一態様に係る工作機械によってワークに対する揺動切削を行う様子を説明する説明図である。
図2は、本開示の一態様に係る工作機械の制御装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
工作機械100は、
図1に示すように、切削工具Tを用いて加工対象であるワークWを切削加工するNC旋盤である。工作機械100は、ワークWを切削工具Tに対して相対回転させる主軸101、切削工具TをワークWに対して主軸101の回転軸と平行なZ軸方向に相対移動させる送り軸102、及び切削工具TをワークWに対して主軸101の径方向であるX軸方向に相対移動させる切り込み軸103の少なくとも3つの制御軸を有する。工作機械100においては、これら3つの制御軸101,102,103が相互に協調動作することによって、ワークWに対する切削加工が実行される。
【0013】
なお、本開示の一態様では、主軸101は、切削工具Tに対してワークWを主軸101の回転軸周りに回転させるように構成され、送り軸102は、ワークWに対して切削工具Tを送り軸102の軸方向に沿って移動させるように構成される。送り軸102は、切削工具Tを主軸101の回転軸方向に沿うZ軸方向に送り移動させる動作と、切削工具TをZ軸方向に沿って往復移動、すなわち揺動させる動作との両方を行うことができる。切り込み軸103は、切削工具TをワークWに対して主軸101の径方向であるX軸方向に移動させるように構成される。
【0014】
図1に示すワークWは、外径がZ軸方向において異なるワークである。すなわち、ワークWは、図中左から右に行くに従って外径が次第に小さくなるテーパー状の外形形状を有する。このようなワークWに対して揺動切削を行う場合、切削工具Tは、ワークWの外周面に対してZ軸方向及びX軸方向のいずれか一方に往復しながら送られる。このとき、送り軸102と切り込み軸103とが協調動作する。以下においては、切削工具TがワークWの外周面に対してZ軸方向に往復しながら送られることによって揺動切削を行う場合について説明する。
【0015】
工作機械100は、これらの制御軸101,102,103を駆動する駆動モータを有する。
図2では、このうちの主軸101を駆動する駆動モータである主軸モータ110及び送り軸102を駆動する駆動モータである送り軸モータ120のみが示されている。さらに、工作機械100は、
図2に示すように、主軸モータ110に対して主軸101を回転駆動させる指令を出力する指令部10と、送り軸モータ120の駆動を制御するサーボ制御装置20と、を備える。
【0016】
指令部10は、例えばCNC(Computer Numerical Control)又は主軸101の制御装置によって構成される。指令部10は、主軸モータ110及びサーボ制御装置20に対してそれぞれ通信可能に接続され、主軸モータ110に対して、主軸101の回転速度を含む指令を出力する。また、主軸モータ110から取得した主軸101の実回転速度もサーボ制御装置20に対して出力する。
【0017】
指令部10は、工具寿命等を考慮して、切削加工時の切削工具Tに対するワークWの周速が一定になるように主軸101の回転速度を制御してもよい。すなわち、
図1に示すテーパー形状のワークWに対して切削加工を行う場合、指令部10は、主軸モータ110に対して、切削加工時の切削工具Tに対してワークWの周速が一定になるように、主軸101の回転速度を変化させる指令を出力する。そのため、指令部10は、主軸101(主軸モータ110)の速度指令と、送り軸102及び切り込み軸103に沿う切削工具Tの送り速度とに基づいて、送り軸102及び切り込み軸103の位置指令(送り軸102及び切り込み軸103の毎回転送り量)を作成する機能を有する。この位置指令は、切削工具TをワークWの外周面の母線に沿う方向(加工方向)に送るときの目標位置を指示する指令となるものである。
【0018】
サーボ制御装置20は、送り軸モータ120の駆動を制御することによって、送り軸102の軸方向に沿う切削工具TのワークWに対する相対的な送り移動を制御する。サーボ制御装置20は、揺動指令算出部21と、補正量算出部22と、加算器23と、減算器24と、を有する。このサーボ制御装置20は、バスを介して互いに接続された、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、CPU(Control Processing Unit)、及び通信制御部を備えたコンピュータを用いて構成することができる。したがって、サーボ制御装置20の各部の機能又は動作は、上記コンピュータに搭載されたCPU、メモリ、及び該メモリに記憶された制御プログラムが協働することによって達成され得る。
【0019】
揺動指令算出部21は、指令部10からサーボ制御装置20に送られる位置指令及び主軸101の実回転速度に基づいて、切削工具TがワークWに対して接触及び離隔(空振り)しながら切削するように、切削工具TとワークWとを送り軸102の軸方向に沿って相対的に揺動させる揺動指令を算出する。
【0020】
揺動指令は、主軸101の実回転速度に対して倍率をかけて作成される周期的な指令であり、例えば、次式(1)のように表される。
【数1】
【0021】
上記式(1)において、Kは揺動振幅倍率、FはワークWの一回転当たりの切削工具Tの移動量、すなわち毎回転送り量[mm/rev]、Sは主軸101(ワークW)の回転軸周りの回転速度[min-1]、Iは揺動周波数倍率、tは揺動を開始してからの時間[s]である。また、(K×F)/2は揺動振幅[mm]、2π×S/60×I×tは揺動位相[rad]である。揺動振幅倍率K及び揺動周波数倍率Iは定数である。揺動振幅倍率Kは1以上の数であり、揺動周波数倍率Iはゼロより大きい非整数(例えば、0.5、0.8、1.2、1.5、1.9、2.3、2.5…等の正の非整数)である。揺動振幅倍率K及び揺動周波数倍率Iの値は、工作機械100の稼働前に、図示しない記憶部に記憶される。
【0022】
上記式(1)に示すように、揺動指令は揺動位相と揺動振幅とを含む。そのため、揺動指令算出部21は、揺動位相を計算するための揺動位相計算部211と、揺動振幅を計算するための揺動振幅計算部212とを有する。揺動指令算出部21は、指令部10から送られる位置指令及び主軸101の実回転速度に基づいて、揺動位相及び揺動振幅を計算し、上記式(1)に例示されるような揺動指令を算出する。
【0023】
揺動指令算出部21で算出された揺動指令は、加算器23において、指令部10から送られた位置指令に重畳(加算)される。これによって、加算器23において合成指令が算出される。加算器23によって算出された合成指令は、切削工具TをワークWに対して送り軸102の軸方向に沿って揺動させるための指令であり、サーボ制御装置20から送り軸モータ120に送られる。送り軸モータ120は、この合成指令に基づいて駆動制御され、揺動切削時における切削工具Tを送り軸102の軸方向に相対的に往復動作させる。これによって、切削工具TはワークWに対して揺動動作を行う。
【0024】
工作機械100は、
図2に示すように、送り軸モータ120によって駆動される送り軸102の位置(切削工具Tの位置)を検出するパルスコーダ等の検出器130を有する。サーボ制御装置20は、減算器24において、指令部10から送られた位置指令と、検出器130から送られた送り軸102(切削工具T)の位置フィードバック(実位置)との差分である位置偏差を求める。減算器24は、加算器23において揺動指令が重畳される前の位置指令に対して、検出器130から送られる位置フィードバックとの位置偏差を求めるように設けられる。したがって、揺動指令算出部21によって算出された揺動指令は、加算器23において、位置偏差が求められた後の位置指令に対して重畳される。
【0025】
補正量算出部22は、指令部10からサーボ制御装置20に送られる主軸101の実回転速度に基づいて、通知遅れ相当の揺動位相を補正量として算出し、その補正量を揺動指令における揺動位相に重畳する。これによって、例えば、次式(2)で表されるような揺動指令が生成される。
【数2】
【0026】
揺動位相は、揺動開始からの時間tによって表現する場合、上記式(2)における(2π×S×I/60)tによって計算されるが、揺動開始から計算周期Δt毎の揺動位相加算によって表現する場合は、揺動位相(Δt秒前)+(2π×S×I/60)Δtによって計算されてもよい。
【0027】
補正量算出部22は、主軸101の実回転速度、通知遅れ時間、パラメータ値のうちの少なくともいずれか一つから補正量を算出することができる。パラメータ値は補正値そのものでなくてもよく、通知遅れや通知周期等であってもよい。また、補正量は固定値であってもよい。例えば、補正量を通知遅れから算出する場合、補正量は、次式(3)のように表すことができる。
【数3】
通知遅れの単位は、時間の次元(12msec等)である。この通知遅れは、主軸101の実回転速度、通知手段、通知方法によって変わる。
【0028】
補正量算出部22で算出された補正量は、接続線25を介して、揺動指令算出部21で算出される揺動指令における上記揺動位相に重畳される。接続線25は、補正量重畳部を構成する。
【0029】
揺動指令における揺動位相に補正量を重畳する具体的な方法としては、補正時におけるその時刻の補正量を重畳する場合と、前回の補正時との差分を重畳する場合とがある。
補正時におけるその時刻の補正量を重畳する場合、例えば、補正後の揺動位相は、次式(4)のように表される。tcは通信遅れである。
【数4】
【0030】
また、前回の補正時との差分を重畳する場合、補正後の揺動位相は、例えば、次式(5)のように表すことができる。
【数5】
【0031】
補正量算出部22で算出された補正量が揺動指令に重畳された場合、加算器23において、指令部10から送られた位置指令に対して、例えば式(2)に示されるような補正量が重畳された後の揺動指令が合成指令として生成される。したがって、この場合、サーボ制御装置20は、補正量が重畳された後の揺動指令と位置指令とが重畳された合成指令を送り軸モータ120に出力して送り軸102を制御し、切削工具TのワークWに対する相対的な揺動動作を制御する。
【0032】
ここで、
図3は、通知遅れが補正されない状態における揺動切削時のワーク表面の切削工具Tの軌跡を示している。縦軸は送り軸102に沿う切削工具Tの位置を示す送り方向位置であり、横軸は主軸101の回転によるワークWの周方向位置である。テーパー形状のワークWの場合、主軸101の回転速度は、切削工具Tに対するワークWの周速が一定になるようにサーボ制御装置20によって制御されるため、通知遅れが補正されない状態では、切削工具TをワークWに対して相対的に揺動させても、n回目、n+1回目、n+2回目…の各揺動位相は、互いにワークWの周方向にずれ、交差しない場合がある。通知遅れに起因する揺動位相のずれが次第に蓄積されるためである。そのため、切削工具Tは、定期的にワークWから離れる(空振りする)ことなく、ワークWの表面を切削し続ける。したがって、削り屑は全く又はほとんど細断されない。
【0033】
一方、
図4は、通知遅れが補正された状態における揺動切削時のワーク表面の切削工具Tの軌跡を示している。
図4に示すように、通知遅れが補正された状態では、切削工具TをワークWに対して相対的に揺動させることによって、n回目、n+1回目、n+2回目…の各揺動位相は互いに交差し得る。すなわち、n回目の揺動位相とn+1回目の揺動位相は、約240°毎に箇所A1,A1において交差し、n+1回目の揺動位相とn+2回目の揺動位相も、約240°毎に箇所A2,A2において交差する。そのため、切削工具Tは定期的にワークWから離れ(空振りし)、そのたびに削り屑は細断される。
【0034】
すなわち、本開示の一態様によれば、主軸101の回転速度、及びワークWに対する切削工具Tの相対位置の位置指令から、切削工具TをワークWに対して相対的に揺動させる揺動指令を算出する揺動指令算出部21と、主軸101の回転速度の揺動指令算出部21への通知遅れに相当する補正量を算出する補正量算出部22と、補正量を揺動指令に重畳する補正量重畳部(接続線25)と、を備える工作機械100の制御装置(サーボ制御装置20)が提供される。これによれば、切削工具TによってワークWに対して揺動切削を行う際に、通知遅れが発生していても、その通知遅れが補正された揺動指令に基づいて切削工具TをワークWに対して相対的に揺動させることができる。そのため、揺動位相は定期的に交差することができ、その結果、削り屑は確実に細断され得る。
【0035】
また、揺動指令算出部21は、主軸101の回転速度に基づいて算出される揺動位相と、位置指令に基づいて算出される揺動振幅とから揺動指令を算出する。補正量算出部22は、主軸101の回転速度の通知遅れ時間相当の揺動位相変化分を補正量として算出し、その補正量を揺動指令における揺動位相に重畳する。これによれば、補正量によって揺動位相のずれを解消し、揺動切削によって切り屑をより確実に細断することができる。
【0036】
また、補正量算出部22は、主軸101の回転速度、通知遅れ時間、パラメータ値のうちの少なくともいずれか一つから補正量を算出するので、切り屑を細断できるようにする補正量を容易に算出できる。
【0037】
本開示の一態様では、切削工具TがワークWに対して送り軸102の軸方向に沿って移動するように構成されている。しかし、ワークWが切削工具Tに対して送り軸102の軸方向に沿うZ軸方向に移動するように構成されてもよい。また、主軸101は、ワークWに対して切削工具TをワークWの周方向に回転移動させるように構成されてもよい。さらに、ワークWに対して端面加工を行う場合には、送り軸102は、切削工具TをワークWに対して主軸101の径方向に相対移動させるように構成されてもよい。
【0038】
以上説明したワークWの外形形状は一例であり、テーパー形状に限定されない。ワークWは、円弧形状又は円柱形状等の他の様々な外形形状を有し得る。本開示の工作機械の制御装置は、切削工具TによってワークWに対して揺動切削を行う際に、通知遅れが問題となる主軸101(ワークW)の回転速度変化を伴う加工を行う場合に好ましく適用され得る。
【符号の説明】
【0039】
20 サーボ制御装置
21 揺動指令算出部
22 補正量算出部
25 接続線(補正量重畳部)
100 工作機械
101 主軸
102 送り軸
T 切削工具
W ワーク