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特許7469462制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法
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  • 特許-制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法 図1
  • 特許-制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法 図2A
  • 特許-制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法 図2B
  • 特許-制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法 図3
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  • 特許-制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法 図6
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  • 特許-制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/414 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G05B19/414 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022510492
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011745
(87)【国際公開番号】W WO2021193549
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020052411
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勝博
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-171203(JP,A)
【文献】特開昭60-035373(JP,A)
【文献】特開平04-175036(JP,A)
【文献】特開2003-189108(JP,A)
【文献】実開平06-037902(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/414
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械のモータ制御データを生成し、前記モータ制御データに従い前記産業機械の駆動部を制御する制御装置であって、
前記産業機械の駆動部ごとに、前記駆動部のモータ制御データを保持する制御データ保持部と、
制御周期ごとの前記駆動部の制御量を求める制御量算出部と、
前記制御周期ごとの制御量を指令パルスと、トルク指令、電流周期、制御モードの少なくとも1つを含むデータと、からなるモータ制御データに変換する制御データ生成部と、
前記モータ制御データにおける繰り返しパターンの有無を判定する繰り返しパターン判定部と、
前記繰り返しパターンの繰り返し回数を算出する繰り返しパターン生成部と、
前記繰り返しパターンを前記駆動部の制御部に転送するパターンデータ転送部と、
前記繰り返し回数を含む、前記繰り返しパターンに関する情報を前記駆動部の制御部に転送するパターン通知部と、
前記繰り返しパターンを前記繰り返し回数複製し、前記制御周期ごとに前記制御データ保持部に書き込むパターンデータ生成部と、
前記駆動部の制御部に転送済みの繰り返しパターンを記憶する転送済みパターンデータ記憶部と、
を備え
前記パターンデータ転送部は、前記転送済みパターンデータ記憶部に記憶されていない繰り返しパターンのみ前記駆動部の制御部に転送する、
制御装置。
【請求項2】
プログラムを解析するプログラム解析部と、
前記プログラムに記載された指令に基づき、繰り返しパターンの有無を検出する移動指令判定部と、を備える請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記移動指令判定部が繰り返しパターンの存在を検出すると、前記繰り返しパターン生成部と、前記パターンデータ転送部と、前記パターン通知部と、パターンデータ生成部の動作を開始する、請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記パターンデータ転送部は、シリアルバスを用いて前記繰り返しパターンを転送する、請求項1記載の制御装置。
【請求項5】
産業機械のモータ制御データを生成し、前記モータ制御データに従い前記産業機械の駆動部を制御するデータ転送システムであって、
前記産業機械の駆動部ごとに、前記駆動部のモータ制御データを保持する制御データ保持部と、
制御周期ごとの前記駆動部の制御量を求める制御量算出部と、
前記制御周期ごとの制御量を指令パルスと、トルク指令、電流周期、制御モードの少なくとも1つを含むデータと、からなるモータ制御データに変換するモータ制御データ生成部と、
前記モータ制御データにおける繰り返しパターンの有無を判定する繰り返しパターン判定部と、
前記繰り返しパターンを前記駆動部の制御部に転送するパターンデータ転送部と、
前記繰り返し回数を含む、前記繰り返しパターンに関する情報を前記駆動部の制御部に転送するパターン通知部と、
前記繰り返しパターンを前記繰り返し回数複製し、前記制御周期ごとに前記制御データ保持部に書き込むパターンデータ生成部と、
前記駆動部の制御部に転送済みの繰り返しパターンを記憶する転送済みパターンデータ記憶部と、
を備え、
前記パターンデータ転送部は、前記転送済みパターンデータ記憶部に記憶されていない繰り返しパターンのみ前記駆動部の制御部に転送する、
データ転送システム。
【請求項6】
産業機械のモータ制御データを生成するメイン制御ユニットから、前記モータ制御データに基づき前記産業機械の駆動部を制御する制御ユニットにデータを転送するデータ転送方法であって、
制御周期ごとの前記駆動部の制御量を算出し、
前記制御周期ごとの制御量を指令パルスと、トルク指令、電流周期、制御モードの少なくとも1つを含むデータと、からなるモータ制御データに変換し、
前記モータ制御データにおける繰り返しパターンの有無を判定し、
前記繰り返しパターンの繰り返し回数を算出し、
前記繰り返しパターンを前記駆動部の制御ユニットに転送し、該転送した繰り返しパターンを記憶し、その後は記憶していない繰り返しパターンのみ前記駆動部の制御ユニットに転送し、
前記繰り返し回数を含む、前記繰り返しパターンに関する情報を前記駆動部の制御ユニットに転送し、
前記駆動部の制御ユニットは、転送された繰り返しパターンを前記繰り返し回数複製し、前記モータ制御データを生成する、
データ転送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械の制御装置、制御装置のデータ転送システム、及びデータ転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置は、工作機械を含む産業機械を制御する装置であり、プログラムに従い制御信号を生成し、予め設定した手順で産業機械の複数の駆動部を動かす。
【0003】
近年の産業機械では、制御するモータの数(軸数)が増加しており、数値制御装置が処理するデータ量も増加している。例えば、工作機械では、X軸、Y軸、Z軸の直線軸だけでなくA軸、B軸などの回転軸を有する場合があり、1つの工具だけでなく複数の工具で同時加工する工作機械も存在する。また、工具の交換や治具の移動もモータで行う。このように産業機械の駆動部が増加するほど制御する軸の数が増加し、数値制御装置が処理するデータ量が増加する。
【0004】
数値制御装置は、通常、メイン制御ユニットと、複数のモータ制御ユニットを備えている。メイン制御ユニットは、入力したプログラムを解析し、指令パルスを生成する。モータ制御ユニットは、メイン制御ユニットから指令パルスと、トルク指令、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つのデータと、を含むモータ制御データを受け取り、前記モータ制御データをサーボモータのアンプに出力する。
なお、トルク指令、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)は、モータ制御に係るパラメータである。このモータ制御に係るパラメータは、一般に加工プログラム又は不揮発性メモリ内に設定するパラメータで指定する。
【0005】
数値制御装置において、メイン制御ユニットが作成したモータ制御データは、モータ制御ユニットを介して各サーボアンプに転送される。メイン制御ユニットとモータ制御ユニットは、シリアルバスで接続されている。モータ制御データが増加すると、このシリアルバスにかかる転送負荷が大きくなる。
特許文献1は、『バス制御装置に接続される周期的なデータ転送が必要な内部ユニット及び外部I/Oユニットに対してシリアルバスを付加して、パラレルバスのデータトラフィック量を削減しすることにより、性能向上を図ったバス制御装置』を開示している
【0006】
【文献】WO98/35296
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、バスのトラフィック量を下げるためにシリアルバスを追加している。しかし、新たなシリアルバスの追加は、物理的な構成変更が必要になるだけでなく、バスのトラフィック制御も複雑になる。よって、バスのトラフィックを安定させるためには、データの転送量を少なくすればよい。
【0008】
数値制御装置の分野では、データの伝送量を少なくする技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様である制御装置は、産業機械のモータ制御データを生成し、前記モータ制御データに従い前記産業機械の駆動部を制御する制御装置であって、産業機械の駆動部ごとに、駆動部のモータ制御データを保持する制御データ保持部と、制御周期ごとの駆動部の制御量を求める制御量算出部と、制御周期ごとの制御量を指令パルスと、トルク指令、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つを含むデータと、からなるモータ制御データに変換する制御データ生成部と、前記モータ制御データにおける繰り返しパターンの有無を判定する繰り返しパターン判定部と、繰り返しパターンの繰り返し回数を算出する繰り返しパターン生成部と、繰り返しパターンを駆動部の制御部に転送するパターンデータ転送部と、前記繰り返し回数を含む、繰り返しパターンに関する情報を駆動部の制御部に転送するパターン通知部と、前記繰り返しパターンを前記繰り返し回数複製し、前記制御周期ごとに制御データ保持部に書き込むパターンデータ生成部と、駆動部の制御部に転送済みの繰り返しパターンを記憶する転送済みパターンデータ記憶部と、を備え、パターンデータ転送部は、転送済みパターンデータ記憶部に記憶されていない繰り返しパターンのみ駆動部の制御部に転送する。
【0010】
本開示の一態様であるデータ転送システムは、産業機械のモータ制御データを生成し、前記モータ制御データに従い産業機械の駆動部を制御するデータ転送システムであって、産業機械の駆動部ごとに、駆動部の前記モータ制御データを保持する制御データ保持部と、制御周期ごとの駆動部の制御量を求める制御量算出部と、制御周期ごとの制御量を指令パルス、トルク指令と、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つを含むデータと、からなるモータ制御データに変換する制御データ生成部と、モータ制御データにおける繰り返しパターンの有無を判定する繰り返しパターン判定部と、繰り返しパターンを駆動部の制御部に転送するパターンデータ転送部と、繰り返し回数を含む、繰り返しパターンに関する情報を駆動部の制御部に転送するパターン通知部と、繰り返しパターンを繰り返し回数複製し、制御周期ごとにモータ制御データ保持部に書き込むパターンデータ生成部と、駆動部の制御部に転送済みの繰り返しパターンを記憶する転送済みパターンデータ記憶部と、を備え、パターンデータ転送部は、転送済みパターンデータ記憶部に記憶されていない繰り返しパターンのみ駆動部の制御部に転送する。
【0011】
本開示の一態様であるデータ転送方法は、産業機械のモータ制御データを生成するメイン制御ユニットから、モータ制御データに基づき産業機械の駆動部を制御する制御ユニットにデータを転送するデータ転送方法であって、制御周期ごとの駆動部の制御量を算出し、制御周期ごとの制御量を指令パルス、トルク指令と、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つを含むデータと、からなるモータ制御データに変換し、モータ制御データにおける繰り返しパターンの有無を判定し、前記繰り返しパターンの繰り返し回数を算出し、繰り返しパターンを駆動部の制御ユニットに転送し、転送した繰り返しパターンを記憶し、その後は記憶していない繰り返しパターンのみ駆動部の制御ユニットに転送し、繰り返し回数を含む、繰り返しパターンに関する情報を駆動部の制御ユニットに転送し、駆動部の制御ユニットは、転送された繰り返しパターンを繰り返し回数複製し、モータ制御データを生成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、制御装置の内部構成を変化させることなく、データの伝送量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示にかかる数値制御装置のハードウェア構成である。
図2A】XZ平面において、工具がZ軸に対して斜め方向に移動する場合を示す図である。
図2B】メイン制御ユニットで生成されるモータ制御データのパターンの一例を示す図である。
図3】第1の開示における数値制御装置のブロック図である。
図4】第2の開示における数値制御装置のブロック図である。
図5】第2の開示におけるデータ転送方法を示すフローチャートである。
図6】XZの2軸指令による工具の直線移動を示す図である。
図7】制御周期ごとの各軸の移動量を示す図である。
図8】第3の開示における数値制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の数値制御装置100について説明する。図1は本開示に係る数値制御装置100のハードウェア構成である。数値制御装置100は、メイン制御ユニット10とモータ制御ユニット20とを備える。メイン制御ユニット10は、加工プログラムを解析し、モータ制御データを作成する。モータ制御ユニット20は、メイン制御ユニット10が作成したモータ制御データに従いサーボアンプ31を制御する。
なお、図1では、1つのメイン制御ユニット10に対し、1つのモータ制御ユニット20が接続されているが、モータ制御ユニット20は複数であってもよい。
【0015】
メイン制御ユニット10は、モータ制御データを記憶するモータ制御データ保持部11と、メインメモリに保持されたプログラムに従い演算や制御を行うCPU12と、データ伝送を制御するDMAC(ダイレクトメモリアクセスコントローラ)13とを備える。
モータ制御データ保持部11は、各軸のモータ制御データをモータ制御ユニット20に転送するためのレジスタである。DMAC13は、モータ制御データ保持部11からモータ制御データを読み出し、CPU12を介さずにモータ制御ユニット20に転送する。
【0016】
モータ制御ユニット20は、モータ制御データ保持部21と、CPU22と、DMAC23とを備える。モータ制御データ保持部21は、メイン制御ユニット10から転送されたデータを一時的に保持するレジスタである。DMAC23は、メイン制御ユニット10から転送されたデータをモータ制御データ保持部21に書き込む。モータ制御ユニット20は、n個のサーボアンプ31~31に接続されている。モータ制御データ保持部21の記憶領域は1軸目からn軸目のサーボアンプ31~31に対応づけられている。モータ制御データは、制御周期ごとに転送される。数値制御装置100は、制御周期ごとに転送されるモータ制御データを遅延なく処理するリアルタイム処理を行う。
【0017】
図2Aに示すように、工具をXZ平面においてZ軸に対して斜め方向に移動させる場合、X軸とZ軸のモータを同時に駆動する。モータ制御データは制御周期ごとにメイン制御ユニット10からモータ制御ユニット20に転送される。図2Bは、メイン制御ユニット10で生成されるモータ制御データの一例である。工具を図2Aに示されるように移動させるために、図2Bに示されるように、X軸の指令パルスPxa→Pxb→Pxa→Pxb→…と、Z軸の指令パルスPzc→Pzc→Pzc→Pzc→…が生成される。この指令パルスに、トルク指令、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つを含むデータを加えたものがモータ制御データである。
X軸のモータ制御データは、PxaとPxbの繰り返しであり、Z軸のモータ制御データはPzcの繰り返しである。本開示の数値制御装置では、モータ制御データに繰り返しが存在する場合、繰り返し回数と繰り返しパターンのみモータ制御ユニット20を転送することによって、メイン制御ユニット10とモータ制御ユニット20との間のトラフィック量を削減する。
【0018】
メイン制御ユニット10とモータ制御ユニット20との間は、シリアルバスで接続されている。シリアルバスは、1本の伝送線で連続してデータを転送するバスである。伝送線が1本なので、数値制御装置100が制御する軸数が増えると、モータ制御データのデータ量が増加し、シリアルバスのトラフィック量が増加する。産業機械の制御は、絶え間なく変化するデータを遅延なく実行するリアルタイム処理であるため、データの転送による遅れを回避しなければならない。本開示の数値制御装置100は、転送するデータ量を削減することにより、トラフィックの遅延を防止する。
【0019】
[第1の開示]
図3は、第1の開示における、数値制御装置100のブロック図である。数値制御装置100のメイン制御ユニット10は、加工プログラムを解析する加工プログラム解析部41、モータ制御データを生成するモータ制御データ生成部42、モータ制御データをモータ制御ユニット20に転送するモータ制御データ転送部43、繰り返しパターンに関する情報を転送するパターン通知部44を備える。
【0020】
加工プログラム解析部41は、図示しない不揮発性メモリなどに記録された加工プログラムを取得して、加工プログラムの1ブロック(1行)ごとのプログラムを解析し、制御周期ごとの各軸の移動量を算出する。
【0021】
モータ制御データ生成部42は、加工プログラム解析部41が算出した制御周期ごとの移動量を、メートルやインチなどの物理的な単位系からパルスを用いた電気的なモータ指令単位に変換する。モータ制御データは、最小指令単位の整数倍であるため、モータ制御データ生成部42は、一定の周期ごとに平均的に分散して、産業機械の駆動部が滑らかに移動するように調整する。
【0022】
モータ制御データ転送部43は、モータ制御データ生成部42で生成されたモータ制御データを、モータ制御ユニット20のモータ制御データ保持部51に転送する。モータ制御データ保持部51は、図1に示すように、軸ごとにモータ制御データが保持できるようになっている。各軸のモータ制御データは、各軸の保持領域に複製される。モータ制御データ転送部43は、DMAC13とCPU12で実現される。
【0023】
ここまでは、従来の数値制御装置100と同じ機能である。本開示のメイン制御ユニット10は、さらに、繰り返しパターン判定部45と、繰り返しパターン生成部46と、パターンデータ転送部47と、パターン通知部44とを備える。
【0024】
繰り返しパターン判定部45は、モータ制御データに、繰り返しパターンが存在するか否かを判定する。繰り返しパターンは複数の要素の組合せである。図2Bの場合は、Pxa、Pxb、Pzcという3つの要素の組合せが繰り返しパターンとなる。
繰り返しパターン生成部46は、検出した繰り返しパターンの要素をメートルやインチなどの物理的な長さの単位系から電気的なパルスを用いたモータ指令単位に変換する。
【0025】
パターンデータ転送部47は、繰り返しパターン生成部46からパターンデータを取得し、メイン制御ユニット10からモータ制御ユニット20のメモリへ制御周期ごとに転送する。パターンデータ転送部47は、例えば、繰り返しパターンデータのアドレスなどを用いて、繰り返しパターンデータを識別する。すなわち、パターンデータ転送部は、どの軸のどのパターンに関する繰り返しパターンデータを繰り返しパターン保持部52のどのアドレスに保持したかを認識している。
【0026】
パターン通知部44は、繰り返しパターンの識別情報と、繰り返し回数の情報をモータ制御ユニット20に転送する。モータ制御ユニット20は、パターン通知部44から取得した繰り返し回数と、繰り返しパターンから、対応する軸のレジスタに繰り返しパターンを複製し、モータ制御データを生成する。
【0027】
次に、モータ制御ユニット20の構成について説明する。モータ制御ユニット20は、モータ制御データを保持するモータ制御データ保持部51と、繰り返しパターンを保持する繰り返しパターン保持部52と、繰り返しパターンに関する情報を保持するパターン情報保持部53と、繰り返しパターンからモータ制御データを生成する繰り返しパターンデータ生成部54と、モータ制御データ保持部51に保持されたモータ制御データを用いてサーボモータを制御するモータ制御部55とを備える。
【0028】
モータ制御データ保持部51、繰り返しパターン保持部52、パターン情報保持部53は、例えば、メイン制御ユニット10との共有メモリである。メイン制御ユニット10とモータ制御ユニット20の共有メモリのアドレスには対応関係があり、メイン制御ユニット10とモータ制御ユニット20は互いのメモリのどこに何のデータを保持しているかを認識している。すなわち、共有メモリのアドレスは、データの識別情報として機能する。
【0029】
モータ制御データ保持部51は、モータ制御部55がサーボアンプ31を制御するために用いるモータ制御データを保持する。モータ制御データは、図1に示すように、産業機械の軸ごとに保持される。モータ制御部55は、モータ制御データ保持部51に保持されたモータ制御データに基づきサーボアンプ31に制御信号を出力する。
【0030】
繰り返しパターン保持部52は、繰り返しパターン生成部46が生成した繰り返しパターンを保持する。
パターン情報保持部53は、パターン通知部44から転送された、繰り返しパターンの識別情報、繰り返しの回数、繰り返しを行う軸の識別情報など、繰り返しに関するデータを保持する。
【0031】
ターンデータ生成部54は、パターン情報保持部53に保持する情報に基づき、繰り返しパターン保持部52から繰り返しパターンを取得し、繰り返しパターンをモータ制御データ保持部51の対応する軸の記憶領域に書き込む。
【0032】
モータ制御部55は、制御周期に合わせてモータ制御データを読み出し、各モータのサーボアンプ31に出力する。サーボアンプ31は、モータ制御データに応じて、モータの回転速度やトルクを制御する。
【0033】
上述したように、本開示の数値制御装置100では、各軸のモータ制御データを1つ1つ全て転送するのではなく、モータ制御データが特定のパターンを繰り返す場合には、繰り返しパターンと繰り返し回数の情報を転送して、モータ制御ユニットに転送するデータ量を削減する。
【0034】
転送データの量が少なくなると、シリアルバスの転送負荷が小さくなり転送遅延が防止できる。また、CPUやDMACなどのハードウェアリソースの使用率が下がり発熱量を減少させることもできる。
【0035】
[第2の開示]
次いで、第2の開示について説明する。
図4は、第2の開示における、数値制御装置100のブロック図である。図3に示される繰り返しパターン判定部45として機能する移動指令判定部48を有する。
移動指令判定部48は、プログラムの指令を基に繰り返しパターンが存在するか否かを検出する。例えば、直線移動では繰り返しパターンが発生するため、移動指令判定部48は、G01(切削送り指令)、G00(早送り指令)、G53(機械座標指令)などの指令がプログラムに記述されている場合には、繰り返しパターンが生成されると判定する。
数値制御装置100は、移動指令判定部48の判定結果を基に繰り返し処理を開始する。なお、プログラムを用いた繰り返しパターンの検出は一例である。繰り返しパターンの有無は、他の方法で検出してもよい。
【0036】
図5を参照しながら、第2の開示における、データ転送方法について説明する。第2の開示は、プログラムに記載された指令から繰り返しパターンの有無を判定する。繰り返しパターンが存在すると判定されると、本開示のデータ転送方法を開始する。データの転送方法について、第1の開示と第2の開示は、同様の処理を行う。
まず、加工プログラム解析部41は、加工プログラムを図示しない不揮発性メモリから取得する(ステップS1)。次いで、加工プログラム解析部41は、ブロック(1行)ごとに加工プログラムを解析する(ステップS2)。加工プログラム解析部41は、ブロックごとの各軸の移動量を算出する(ステップS3)。
【0037】
移動指令判定部48は、プログラムに記載されたGコードが繰り返しパターンのGコードであるか否かを判定する。ここで、Gコードが繰り返しパターンのGコードでなければ(ステップS4;NO)、制御周期ごとの各軸の移動量を算出し(ステップS5)、メートルやインチ単位をモータ指令単位に変換し(ステップS6)、加えてトルク指令、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つを含むモータ制御データを生成する(ステップS7)。
【0038】
モータ制御データ転送部43は、制御周期ごとのモータ制御データをモータ制御データ保持部51に転送し、モータ制御部55は、モータ制御データ保持部51からモータ制御データを取得し、サーボアンプ31を制御する(ステップS8)。
【0039】
ステップS4において、Gコードが繰り返しパターンのGコードであれば(ステップS4;YES)、繰り返しパターン生成部46は、繰り返しパターンを構成する要素の制御周期ごとの移動量とトルク指令、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つを含むデータと、繰り返し回数とを算出し(ステップS9)、移動量のメートルやインチ単位をモータ指令単位に変換し(ステップS10)、繰り返しパターンデータを生成する(ステップS11)。
【0040】
パターンデータ転送部47は、繰り返しパターン保持部52に繰り返しパターンを転送する(ステップS12)。パターン通知部44は、使用する繰り返しパターン、繰り返しの回数、軸など繰り返しに関する情報をパターン情報保持部53に転送する(ステップS13)。
パターンデータ生成部54は、パターン情報保持部53から繰り返しに関する情報を取得し、対応する軸のモータ制御データ保持部51に、繰り返しパターンを所定の回数書き込む(ステップS14)。モータ制御部55は、モータ制御データ保持部51からモータ制御データを取得し、サーボアンプ31を制御する(ステップS8)。
【0041】
[本開示の具体例]
XZの2軸指令で工具を直線移動させたときの例を用いて、数値制御装置100の動作を説明する。加工プログラムに「G01 UΔx WΔz Ef」というブロックが記述されている場合、図6に示すように、工具を点Aから点Bに速度fで移動させる。工具のX軸方向の移動量はΔxであり、Z軸方向の移動量はΔzである。
【0042】
このとき、加工プログラム解析部41は、点Aから点Bへの移動ベクトルをAB(各軸の移動量)、送り速度f、制御周期(転送周期)Tから、以下の式により、データの転送回数K(回)を算出する。
【0043】
【数1】
【0044】
次いで、加工プログラム解析部41は、モータ制御データの制御周期ごとの各軸の移動量を以下の式から算出する。
【0045】
【数2】
【0046】
加工プログラム解析部41は、各軸の制御周期ごとの移動量を、最小移動指令の単位で整数化し、転送周期ごとの移動指令が平均的になるように調整する。これにより各軸が滑らかに移動する。具体的に説明すると、X軸方向の移動量Δxを転送回数Kで割った場合、必ず割り切れるわけではなく、余りが生じる。この余りを転送回数Kに対して均等に分配するように調整する。余りを分解することにより、一定の周期で余りを調整する繰り返しパターンとなる。
【0047】
繰り返しの回数は“K/繰り返しパターンの要素数”で算出できる。例えば、制御周期ごとの各軸の移動量が図7のように変化した場合、X軸の制御周期ごとの移動量は「ΔXta→ΔXtb」をK/2回繰り返し、Z軸の制御周期ごとの移動量は「ΔZta→ΔZta→ΔZta→ΔZtb」をK/4回繰り返す。
【0048】
次に、モータ制御データ生成部42では、加工プログラム解析部41で生成した各軸の移動量に係数(指令係数、フィードバック係数)を乗じて、インチやメートルの単位からモータ指令単位に変換する。これにトルク指令、電流周期、制御モード(切削モード/位置決めモード)の少なくとも1つを加えたデータが、モータ制御データである。単位変換の式は以下のようになる。ここで、Cは指令係数であり、1/Dはフィードバック係数である。
【0049】
【数3】
【0050】
なお、通常のモータ制御データを生成する場合には、全てのデータに対して単位変換の演算を行う必要があるが、繰り返しパターンを使用する場合、一度繰り返しパターンの変換を行えば、他のデータに対して単位変換の演算を行う必要はない。繰り返しパターン生成部46は、複数回繰り返す繰り返しパターンに対し、1回だけ単位変換の演算を施す。
以下の式ではX軸の繰り返しパターンに含まれる要素(Xa、Xb)の単位変換と、Z軸の繰り返しパターンに含まれる要素(Za、Zb)の単位変換を行い、繰り返しの回数を算出する例を示す。
【0051】
【数4】
【0052】
モータ制御データ転送部43は、モータ制御データを、メイン制御ユニット10からモータ制御ユニット20へ制御周期Tごとに転送する。転送するモータ制御データが通常のモータ制御データの場合、モータ制御データ生成部42が生成したモータ制御データは制御周期ごとに全てモータ制御データ保持部51に転送される。また、転送するモータ制御データが繰り返しパターンの場合、モータ制御データ生成部42が生成したモータ制御データは、少なくとも1度だけモータ制御データ保持部51に転送されるが、その後は、繰り返しパターンを複製する。
複製の基礎となる繰り返しパターンは、パターンデータ転送部47が繰り返しパターン保持部52に転送する。
【0053】
モータ制御ユニット20のパターンデータ生成部54は、繰り返しパターン保持部52に記憶した繰り返しパターンを読み出し、読み出した繰り返しパターンを所定の回数、モータ制御データ保持部51に複製する。
【0054】
なお、上述した例は定速で移動する工具の繰り返しパターンであるが、加減速する場合の繰り返しパターンを生成することもできる。この場合には、加速度又は減速度に応じたインクリメンタルパターン又はデクリメンタルパターンを作成し、基準となる繰り返しパターン加算する。
【0055】
[第3の開示]
図8は、第3の開示における数値制御装置100のブロック図である。図8の数値制御装置100は、メイン制御ユニット10に転送済みパターン記憶部49が設けられている。パターンデータ転送部47は、転送する繰り返しパターンが転送済みか否かを確認し、繰り返しパターンが転送済みであれば、繰り返し回数などの他のデータのみを転送する。第3の開示では、繰り返しパターンの転送回数を減らすことにより、データ転送量を更に削減することができる。
【0056】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は上述した開示のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 数値制御装置
10 メイン制御ユニット
11 モータ制御データ保持部
12 CPU
13 DMAC
20 モータ制御ユニット
21 モータ制御データ保持部
22 CPU
23 DMAC
31 サーボアンプ
41 加工プログラム解析部
42 モータ制御データ生成部
43 モータ制御データ転送部
44 パターン通知部
45 繰り返しパターン判定部
46 繰り返しパターン生成部
47 パターンデータ転送部
48 移動指令判定部
49 転送済みパターン記憶部
51 モータ制御データ保持部
52 繰り返しパターン保持部
53 パターン情報保持部
54 パターンデータ生成部
55 モータ制御部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8