(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両を運転するための方法
(51)【国際特許分類】
B60W 40/08 20120101AFI20240409BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20240409BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240409BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240409BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60W40/08
B60W30/182
B60W50/14
B60W60/00
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2022537221
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020078593
(87)【国際公開番号】W WO2021129963
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】102019009068.3
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラーローシ,リハブ
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064539(JP,A)
【文献】特開2019-034574(JP,A)
【文献】特開2016-078530(JP,A)
【文献】特開2019-034575(JP,A)
【文献】特開2019-034576(JP,A)
【文献】特開2018-167623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動走行モード及び自動走行モードで運転可能な車両(1)を運転するための方法であって、前記自動走行モードで発生する運転状況に応じて、前記車両(1)の車両ユーザ(2)が運転タスクを引き継ぐための引き継ぎ要求が、前記車両ユーザ(2)に対して出力される、方法、において、
前記自動走行モード中、前記引き継ぎ要求が出力された時点で、前記車両ユーザ(2)が座る車両座席(3)の現在の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の現在の座席姿勢において、前記車両が前記車両ユーザ(2)が前記引き継ぎ要求に応じることができるかどうかを監視
し、
前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席の少なくとも1つの座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の少なくとも1つの座席姿勢は、前記車両(1)の前記手動走行モード中に決定され、少なくとも1つの基準位置として記憶され、
前記自動走行モード中、前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席姿勢が前記少なくとも1つの基準位置の規定の許容差範囲内にあるかどうかが、定期的に点検され、
前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席姿勢が、前記少なくとも1つの基準位置の前記規定の許容差範囲外であると決定された場合、前記車両ユーザ(2)に対して、自身が座る座席位置及び/又は自身の座席姿勢を修正するように要求が出力され、
前記自動走行モードは、前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記座席姿勢を修正するように出力された規定の数の要求の後、かつ規定の期間の経過後に無効化されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
手動走行モード及び自動走行モードで運転可能な車両(1)を運転するための方法であって、前記自動走行モードで発生する運転状況に応じて、前記車両(1)の車両ユーザ(2)が運転タスクを引き継ぐための引き継ぎ要求が、前記車両ユーザ(2)に対して出力される、方法、において、
前記自動走行モード中、前記引き継ぎ要求が出力された時点で、前記車両ユーザ(2)が座る車両座席(3)の現在の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の現在の座席姿勢において、前記車両が前記車両ユーザ(2)が前記引き継ぎ要求に応じることができるかどうかを監視
し、
前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の複数の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の複数の座席姿勢が決定され、それぞれ基準位置として記憶され、
-許容範囲は、前記基準位置と、前記基準位置のすべてを包含する許容差範囲と、を含み、かつ/又は
-前記許容範囲は、前記記憶された基準位置のすべてから選択されたサブセットと、前記サブセットを包含する許容差範囲と、を含み、かつ/又は
-前記許容範囲は、平均基準位置と、前記平均基準位置を包含する許容差範囲と、を含み、
前記平均基準位置は、前記記憶された基準位置のすべてから、又は前記記憶された基準位置の選択されたサブセットから形成されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席の少なくとも1つの座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の少なくとも1つの座席姿勢は、前記車両(1)の前記手動走行モード中に決定され、少なくとも1つの基準位置として記憶されることを特徴とする、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記自動走行モード中、前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席姿勢が前記少なくとも1つの基準位置の規定の許容差範囲内にあるかどうかが、定期的に点検されることを特徴とする、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記現在の座席姿勢が、前記少なくとも1つの基準位置の前記規定の許容差範囲外であると決定された場合、前記車両ユーザ(2)に対して、自身が座る座席位置及び/又は自身の座席姿勢を修正するように要求が出力されることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの基準位置として、前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の座席姿勢が決定され、前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)は、前記少なくとも1つの基準位置を、前記手動走行モードから前記自動走行モードへの切り替え時点に有していることを特徴とする、
請求項1、または請求項
3から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自動走行モードは、前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記座席姿勢を修正するように出力された規定の数の要求の後、かつ規定の期間の経過後に無効化されることを特徴とする、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の複数の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の複数の座席姿勢が決定され、それぞれ基準位置として記憶されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
-許容範囲は、前記基準位置と、前記基準位置のすべてを包含する許容差範囲と、を含み、かつ/又は
-前記許容範囲は、前記記憶された基準位置のすべてから選択されたサブセットと、前記サブセットを包含する許容差範囲と、を含み、かつ/又は
-前記許容範囲は、平均基準位置と、前記平均基準位置を包含する許容差範囲と、を含み、
前記平均基準位置は、前記記憶された基準位置のすべてから、又は前記記憶された基準位置の選択されたサブセットから形成されることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記サブセットの選択は、実行された頻度分析に基づいて決定されることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記複数の座席位置及び/又は前記車両ユーザ(2)が座る前記車両座席(3)の前記複数の座席姿勢は、前記車両(1)の前記手動走行モードの規定の期間内に決定されることを特徴とする、請求項
8から
10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動走行モード及び自動走行モードで運転可能な車両を運転するための方法であって、自動走行モードで発生する運転状況に応じて、車両の車両ユーザが運転タスクを引き継ぐための引き継ぎ要求が、車両ユーザに対して出力される、方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、運転者支援システムを使用してユーザ操作を必要としない自動走行モードでの車両の自動運転のための方法が公知である。車両の運転者がステアリング機能及び/又は加速機能に介入することにより、運転者支援システムの自動走行モードは、無効化される。運転者支援システムは、車両の自動走行モードの前提条件を継続的に点検し、前提条件が満たされている場合、運転者が運転者支援システムのステアリング介入を大幅に妨げない限り、運転者が制御要素を操作することによって自動走行モードが作動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許第10 2013 019 788 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、手動走行モード及び自動走行モードで運転可能な車両を運転するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
手動走行モード及び自動走行モードで運転可能な車両を運転するための方法は、自動走行モードで発生する運転状況に応じて、車両の車両ユーザが運転タスクを引き継ぐための引き継ぎ要求が車両ユーザに対して出力されることを企図する。本発明によれば、自動走行モード中、引き継ぎ要求が出力された時点で、車両ユーザの現在の座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の現在の座席姿勢において、車両ユーザが引き継ぎ要求に応じることができるかどうかが、車両側で監視される。
【0008】
本方法を使用することにより、車両ユーザが自身に固有の引き継ぎ可能な座席位置を有するかどうか、かつ/又は、車両ユーザが車両の手動走行モードの運転タスクを問題なく実行できるように、車両ユーザの車両座席が調整されて位置付けられているかどうかを、比較的容易に決定することができる。本方法を実行するために、車両ユーザの身体比率、例えば、車両のステアリングホイールまでの車両ユーザの距離に関して、車両ユーザの腕の長さ及び腕の位置を、例えば、対応する質問によって決定する必要はない。
【0009】
本方法の一実施形態では、車両ユーザの少なくとも1つの座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の少なくとも1つの座席姿勢は、車両の手動走行モード中に決定され、少なくとも1つの基準位置として記憶される。その際、基準位置は、車両の運転タスクを引き継ぐことができるように、車両のユーザが車両のステアリングホイール及び/又はペダルに対して位置付けられているかどうかを点検するために役立つ。例えば、車両ユーザの座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の座席姿勢は、車両座席に配置された位置センサにより検出された信号及び/又は車両座席の上に位置合わせされた室内カメラで撮像された画像データに基づいて決定される。
【0010】
加えて、発展形態は、自動走行モード中に、車両ユーザの現在の座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の現在の座席姿勢が、少なくとも1つの基準位置の規定された許容差範囲内にあるかどうかが定期的に点検されることを企図している。特に、車両ユーザの現在の座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の現在の座席姿勢が変化したかどうか、例えば、引き継ぎ要求の出力に対して、車両ユーザがステアリングホイールに迅速に到達できることを、定期的に点検する。
【0011】
可能な一実施形態において、車両ユーザの現在の座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の現在の座席姿勢が、少なくとも1つの基準位置の規定された許容差範囲外であると決定された場合、車両ユーザが自身の座席位置及び/又は自身の座席姿勢を修正する要求を車両ユーザに対して出力する。出力された要求によって、車両ユーザは、ステアリングホイール及び/又はペダルに対する自身の姿勢及び位置調整を認識するようになり、車両ユーザは、修正する機会を与えられる。
【0012】
特に、更なる一実施形態では、少なくとも1つの基準位置として、車両ユーザの座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の座席姿勢が決定され、車両ユーザ及び/又は車両ユーザの車両座席は、少なくとも1つの基準位置を、手動走行モードから自動走行モードに切り替える時点で有する。この座席位置において、かつ/又は車両ユーザの車両座席のこの座席姿勢を用いて、車両ユーザは、ステアリングホイール及びペダルに対して本質的に最適に位置合わせされ、したがって、車両ユーザ固有の引き継ぎ可能な位置もまた有する。
【0013】
自動走行モードは、本方法の一発展形態では、車両ユーザの座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の座席姿勢を修正するように出力された規定の数の要求の後、かつ規定の期間の経過後に無効化される。特に、車両内で決定された車両ユーザの現在の健康状態が無効化を妨げない場合であれば、無効化が行われるため、車両ユーザは、手動走行モードを実行することを余儀なくされる。そうでない場合、例えば、車両ユーザが無意識であることが検出された場合、自動走行モード中に車両を安全に停止させることを企図することができる。
【0014】
車両ユーザの1つの座席位置のみ及び/又は車両ユーザの車両座席の1つの座席姿勢のみが基準位置として記憶される代わりに、車両ユーザの複数の座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の複数の座席姿勢が決定され、それぞれ1つの基準位置として記憶されることが企図されている。
【0015】
それにより、規定の許容差範囲をわずかに超えた場合に、座席位置及び/又は座席姿勢を修正するように要求が出力されることを可能な限り排除することができる。加えて、自身の座席位置及び/又は車両座席の座席姿勢を比較的頻繁に変更する車両ユーザもいるため、多くの基準位置を記憶することによって、このことを考慮している。
【0016】
更に、本方法は、可能な一実施形態では、許容範囲が、基準位置と、これらの基準位置のすべてを包含する許容差範囲と、を含むこと、及び/又は、許容範囲が、記憶された基準位置のすべてから選択されたサブセットと、これらのサブセットを包含する許容差範囲と、を含むこと、及び/又は、許容範囲が、平均基準位置と、平均基準位置を包含する許容差範囲と、を含むこと、を企図している。その際、平均基準位置は、基準位置全体のセットから、又は基準位置の選択されたサブセットから、例えば、算術平均値、加重算術平均値、又は中央値を形成することによって形成される。
【0017】
これによりまた、座席位置及び/又は座席姿勢を修正するための要求が不適切に出力されないこと、並びに、車両ユーザには、車両の自動走行モードにおける自身の座席位置及び/又は座席姿勢に関して比較的大きな余裕を与えられることが規定される。
【0018】
本方法の可能な更なる実施形態では、サブセットの選択は、実行された頻度分析に基づいて決定される。その際、基準位置が頻繁に発生する領域に存在する基準位置のみが選択されるため、統計的異常値が除外される。
【0019】
加えて、本方法は、可能な一発展形態では、車両ユーザの複数の座席位置及び/又は車両ユーザの車両座席の複数の座席姿勢が、車両の手動走行モード規定の期間内に決定されること、特に状況に応じた規定の期間内に決定されることを企図する。その際、この期間は、例えば、車両が高速道路を走行している期間、点火始動からの期間、又はこの1人の車両ユーザのみが車両を運転している合計期間を含む。
【0020】
以下に、図面を参照して本発明の実施例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車両ユーザが車両座席の上に座っている車両の詳細を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
単一の図は、車両ユーザ2が車両座席3の上に座っている車両1の断面斜視図を示す。
【0023】
車両1は、自動走行モードのための支援システムを備えており、その支援システムでは、車両ユーザ2は、自身の運転タスクを車両1に完全に引き継ぐため、車両ユーザ2は、例えば、読書などの別の活動を追求できる。
【0024】
自動走行モードが実施される場合、車両ユーザ2が規定の時間内に運転タスクを引き継いで、車両1を手動走行モードで動かすことができる必要がある。運転タスクを引き継ぐために、車両側で、特に現在の運転状況に応じて、引き継ぎ要求は、車両ユーザ2に対して出力される。このような運転状況は、例えば、顕著な気象条件のために、例えば、車両1の前方にある車線区分では自動走行モードが不可能である場合がある。
【0025】
車両ユーザ2が車両座席3を後部方向に動かした場合、及び/又はリクライニング位置をとるために車両座席3の背もたれ3.1を後部方向に傾けた場合、車両1の引き継ぎ要求に直ちに従うには、車両ユーザ2がその状況下で運転可能な位置を取ることが十分迅速にはできないほど、車両ユーザ2がステアリングホイール4及び/又はペダル(詳細には図示せず)から離れている可能性がある。したがって、運転タスクの引き継ぎが危険であることから、車両ユーザ2のみが危険に身をさらしているのではないというリスクが生じる。
【0026】
加えて、車両ユーザ2が、自身の座席位置及び/又は車両座席3の座席姿勢に起因して、車両1の周囲における現在の事象を目で追うことができないリスクが生じ、その結果、車両ユーザ2は、少なくとも車両1の周囲での明白な状況に反応するという自身の義務を履行することができない。
【0027】
車両ユーザ2の車両座席3の座席姿勢は、非常に個別的であり、車両ユーザ2の引き継ぎ可能な座席位置及び車両ユーザ2の車両座席3の引き継ぎ可能な座席姿勢は、車両ユーザ2がステアリングホイール4及びペダルに到達することを前提とする。
【0028】
以下に記載する方法は、車両ユーザ2が座席位置を有し、車両座席3が座席姿勢を有するどうかを決定するために、車両ユーザ2が規定の時間内に引き継ぎ要求に応じることができることを企図する。
【0029】
この目的のために、車両ユーザ2が自動走行モードを作動させた時点で、車両ユーザ2の現在の座席位置及び車両座席3の座席姿勢が決定され、基準位置として記憶される。
【0030】
車両座席3の座席姿勢を決定し、これに基づいて車両ユーザ2の座席位置を導き出すことができるように、位置センサ5は、車両座席3に配置されている。位置センサ5は、信号を検出し、その結果、背もたれ3.1の傾き及び車両1内の長手方向における車両座席3の位置が決定される。
【0031】
加えて、座席位置及び座席姿勢に関する基準位置はまた、車両座席3に、したがって車両ユーザ2に向けられた室内カメラ7で撮像された画像データに基づいて決定することができる。室内カメラ7は、この例では、車両1の内部ミラー6に統合されているが、室内カメラ7は、車両室内の別の適切な場所、例えば、車両1のコンビネーションメータに配置することもできる。特に、基準位置は、車両ユーザ2の頭及び/又は胴体の位置を使用して決定することができる。その際、車両ユーザ固有の位置は、車両1に記憶されている基準位置を表す。
【0032】
手動走行モードに続く車両1の自動走行モード中、一定の時間間隔で、又は継続的に、車両ユーザ2の座席位置及び車両座席3の座席姿勢が許容範囲外に存在するかどうかを監視する。この許容範囲は、記憶された基準位置と、基準位置を包含する許容差範囲と、を含む。
【0033】
許容差範囲は、固定して規定することができるか、又は車両ユーザごとに個別に決定することができる。
【0034】
車両ユーザ2の座席位置及び車両座席3の座席姿勢が許容差範囲外にある場合、そのことから車両ユーザ2は引き継ぐことができる座席位置を有していないとみなされるため、座席位置及び座席姿勢を修正するための要求が車両ユーザ2に対して出力される。
【0035】
車両ユーザ2が規定の時間内に座席位置及び座席姿勢を修正するように複数回出力された要求に応じず、要求がエスカレーションレベルを表す可能性がある場合、車両1の自動走行モードは、自動的に終了する。それにより、車両ユーザ2は、引き継ぎ可能な座席位置を取ることを余儀なくされる。
【0036】
一実施形態では、車両ユーザ2の健康状態は、室内カメラ7を使用して撮像された画像データを使用して決定され、その結果、車両ユーザ2が、例えば、無意識であり、自身の座席位置を修正するための要求に応じることができないことが検出された場合、車両1の自動走行モードは、自動的に終了しない。車両ユーザ2が憂慮すべき健康状態を有する場合、車両1は、自動走行モードにおいて安全な停止状態に移行され、場合により、緊急通報が自動的に発せられる。
【0037】
また、複数の座席位置及び座席姿勢が決定され、それぞれの基準位置として記憶されることも考えられる。
【0038】
したがって、許容範囲は、基準位置と、これらの基準位置のすべてを包含する許容差範囲と、を含む。代替的又は追加的に、許容範囲は、記憶された基準位置のすべてから選択されたサブセットと、このサブセットを包含する許容差範囲と、を含む。代替的又は追加的に、許容範囲は、平均基準位置と、平均基準位置を包含する許容差範囲と、を含み、平均基準位置は、基準位置全体のセットから、又は基準位置の選択されたサブセットから形成される。
【0039】
基準位置のサブセットの選択は、特に頻度分析によって行われ、基準位置が頻繁に発生する領域にある基準位置のみが選択されるため、統計的異常値が排除される。
【0040】
更なる実施形態では、本方法は、車両ユーザ2に関する古い基準位置が排除されるように、履歴を考慮することを企図する。
【0041】
加えて、本方法は、車両ユーザ2及び車両座席3が過去の時点で有し、車両ユーザ2が規定の時間内に座席位置及び座席姿勢を修正するための要求に応じなかった、座席位置及び座席姿勢を基準位置として記憶することを企図する。例えば、このために、車両ユーザ2が対応する入力を行い、座席位置を修正しないという自身の決定を確認することが必要である。
【0042】
上記のように、許容差範囲は、固定して規定することができるか、又は車両ユーザごとに個別に決定することができる。例えば、許容差範囲は、決定又は選択された多数の基準位置の分布に基づいて特定することができる。
【0043】
車両ユーザ2が自身の座席位置及び自身の座席姿勢を比較的滅多に変更しない場合、基準位置は、狭い範囲に集まるため、許容差範囲は、車両ユーザ2の基準位置が比較的広い範囲にわたって分布する場合よりも狭く選択することができる。車両ユーザ2の基準位置が比較的広い範囲にわたって分布する場合では、車両ユーザ2は、著しくかつ比較的頻繁に自身の座席位置及び自身の座席姿勢を変更している。
【0044】
例えば、基準位置はまた、車両1の自動走行モード中に、車両ユーザ2が引き継ぎ要求の出力直後に正しく反応し、運転タスクを引き継いだ状況においても決定することができる。
【0045】
複数の座席位置及び車両座席3の座席姿勢が基準位置を検出するために決定される場合、座席位置及び座席姿勢が手動走行モードの特定の期間に決定されることが企図されている。
【0046】
特定の期間は、車両1が高速道路上で手動走行モードで移動されている期間を含むことができる。代替的又は追加的に、この期間は、点火始動からの期間、すなわち、自動走行モードに切り替えるまで又は点火がオフになるまでの手動走行モードにおける車両1の総運転継続時間の期間を含む。この場合もまた代替的又は追加的に、期間は、単一の車両ユーザ2が車両1を運転した合計期間を含むことができる。この目的のために、車両ユーザ2の識別は、例えば、車両キーによって、顔認識を介して、かつ/又は車両ユーザ2からの対応する入力によって行われる。その際、全期間はまた、車両1の全耐用年数であり得る。車両ユーザ2を識別することにより、車両ユーザ2の1つの基準位置又は車両ユーザ2の複数の基準位置を決定するために使用される車両ユーザ2のデータは、車両ユーザ固有のメモリに記憶することができる。