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  • 特許-燃料電池システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240409BHJP
【FI】
H01M8/04 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022544682
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2021051688
(87)【国際公開番号】W WO2021151863
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】102020201195.8
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ライノール,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】レヴァース,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ハヴェイ,フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】エスリング,ロルフ-ペーター
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-245814(JP,A)
【文献】特開2008-052997(JP,A)
【文献】特開2018-139205(JP,A)
【文献】特開2013-093256(JP,A)
【文献】特開2008-192393(JP,A)
【文献】特開平04-026194(JP,A)
【文献】特開2020-014263(JP,A)
【文献】特開2002-050385(JP,A)
【文献】特開2016-100160(JP,A)
【文献】特開2010-153104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの燃料電池スタック(101)と、空気路(10)であって、空気が周辺から前記空気路(10)を介して前記燃料電池スタック(101)に到達する空気路と、排気路(12)であって、前記燃料電池スタック(101)を通り抜けた水が前記排気路(12)を介して周辺へ運ばれる排気路と、燃料配管(20)であって、燃料が前記燃料配管(20)を介して前記燃料電池スタック(101)に輸送される燃料配管と、を備える燃料電池システム(100)において、前記空気路(10)が分岐箇所(33)を介して冷却配管(30)と接続され、前記冷却配管(30)がPDUユニット(32)と接続されていて、
前記冷却配管(30)に冷却器(35)が配置されていることを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項2】
前記分岐箇所(33)は、前記空気路(10)内の空気を圧縮するコンプレッサ(11)と前記燃料電池スタック(101)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項3】
前記コンプレッサ(11)と前記分岐箇所(33)との間に熱交換器(15)が配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項4】
前記空気路(10)において、入口(16)と前記分岐箇所(33)との間に少なくとも1つのフィルタが配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項5】
前記冷却配管(30)に調節可能なスロットル(34)が配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項6】
前記冷却器(35)は、前記調節可能なスロットル(34)と前記PDUユニット(32)との間に配置されていることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項7】
前記冷却配管(30)にガス逆止弁(37)が配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項8】
前記PDUユニット(32)は、空気を周辺に逃すことができる圧力補償要素(38)または逆止弁(38)を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項9】
前記圧力補償要素(38)は、ガスを透過させるが、前記PDUユニット(32)への粒子および湿気の侵入を阻止することを特徴とする、請求項に記載の燃料電池システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ベースの燃料電池は、排気として水のみを放出し、迅速な補給時間を可能にすることから、将来のモビリティコンセプトとみなされる。燃料電池は、大抵の場合、燃料電池スタックに組み立てられる。燃料電池スタックは、大抵は周辺からの単純な空気から取得される酸素と、大抵は水素である燃料とを化学反応のために必要とする。
【0003】
燃料電池システムでは、燃料電池スタックの電圧タッピングがパワー・ディストリビューション・ユニット(PDUユニット)により実現され、さらに処理される。PDUユニットに課せられた仕事は、典型的には、電圧の確保、電流測定、事故発生時のシステムからのスタック電圧の切り離し、DC/DC変換器へ、次いでバッテリへのスタック電圧の接続である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PDUユニット内の部品およびコンポーネントは、電気的損失と抵抗にもとづいて高い熱発生にさらされる。この理由から、PDUユニットは冷却される必要がある。冷却の可能性として、PDUユニットのハウジング内の固有のファンおよび/または水冷が知られている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
独立請求項の特徴を有する本発明による燃料電池システムは、PDUユニットを冷却するための空気が空気路(カソード路)から取り出されるという利点を有する。このようにすることで、エンジンルーム周辺での必要な安全性を提供するとともに、PDUユニットのハウジングにクリーンな空気を吹き込む固有の冷却器を設置する必要がないため、コストを削減することができる。
【0006】
水冷と比較すると、PDUユニットの部品が直接冷却され得るのに対して、水冷の場合、コンポーネントは、ハウジング内に温度勾配にもとづいて生じる空気流によって間接的に冷却されるだけである。PDUユニットを冷却するために用いられるヒートパイプおよびペルチェ素子は、直接空冷に比べて小さい冷却効果しか生成しない。
【0007】
本発明による燃料電池システムによって、PDUユニットの効果的な冷却を確保することができる。PDUユニットのコンポーネントは、熱に変換される電気的損失を有し、それにより効果的な冷却なしではPDUユニットの内部温度が上昇しつづけ、コンポーネントが過熱し、最悪の場合には故障する。
【0008】
本発明による燃料電池システムの有利な実施形態および展開形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
空気路内の空気を圧縮するコンプレッサと燃料電池スタックとの間に分岐箇所を配置することは、このようにすることで、分岐箇所と周辺との間に大きい圧力勾配を生成でき、それにより必要な場合に、冷却のために十分な大きさの空気質量流が冷却配管を介してPDUユニットへ流れることができるため有利である。
【0010】
コンプレッサと分岐箇所との間に配置される熱交換器は、このようにすることで、PDUユニットへ流れる空気の温度をさらに低減できるため有利である。
【0011】
空気路において入口と分岐箇所との間に配置されているフィルタによって、このようにすることで、PDUユニットへ流れる空気は、埃および微粒子がすでに除去されているため、特別な利点が達成される。PDUユニット内の電子コンポーネントにとって、純粋な空気は重要な基本要件である。
【0012】
冷却配管に調節可能なスロットルが配置されている場合、このようにすることで、PDUユニットへ流れる空気の量を可変に変化させることができるため有利である。PDUユニットのコンポーネントの熱負荷が大きい場合、調節可能なスロットルを介して大量の空気がPDUユニットへ流れる。熱負荷が小さい場合、調節可能なスロットルは、その断面を縮小することができ、それによりPDUユニットへ流れる空気が少なくなる。
【0013】
効果的な冷却を確保するのに冷却配管内の空気の温度がまだ過度に高い場合、冷却配管内の冷却器が温度をさらに低減することができ、それにより同じ量の空気でより高い冷却効率が達成される。
【0014】
その際、調節可能なスロットルとPDUユニットとの間に冷却器が配置されている場合、このようにすることで、PDUユニットへ流れる空気のみが冷却されるため有利である。
【0015】
燃料電池システムが停止した場合、水素が燃料電池スタックから空気路に漏れ出る可能性がある。水素がPDUユニットに侵入することを阻止するために、冷却配管に逆止弁が配置されている場合が有利である。燃料電池システムが停止した場合、停止中に分岐箇所の空気圧によって逆止弁の閉じ力に打ち勝つことができないため、逆止弁によって燃料電池スタックとPDUユニットとの間のガス交換が阻止される。水素と空気の混合物を発火させる可能性のある発火源がPDUユニットに存在し得るため、これは非常に重要である。
【0016】
PDUユニットが、空気を周辺へ逃すことができる圧力補償要素または逆止弁を有する場合が有利である。この場合、圧力補償要素を、ガスを透過させるが、PDUユニットへの粒子および湿気の侵入を阻止するように形成することができる。
【0017】
以下、図面をもとにして本発明による燃料電池システムおよび本発明による方法を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施例による燃料電池システムのトポロジの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
少なくとも1つの燃料電池スタック101を有する第1の実施例による燃料電池システム100のトポロジが図1に模式的に示される。少なくとも1つの燃料電池スタック101は、空気路10と排気路12と燃料配管20とを有する。少なくとも1つの燃料電池スタック101は、例えば貨物自動車などの高い電力要求の携帯用途、または例えば発電機などの定置用途に用いることができる。
【0020】
空気路10は、周辺からの空気を、入口16を介して燃料電池スタック101に供給するための給気配管として用いられる。空気路10には、燃料電池スタック101の作動のために必要とされるコンポーネントを配置することができる。空気路10には、燃料電池スタック101のそれぞれの動作条件に応じて空気を圧縮する、または吸い込む空気圧縮器11および/またはコンプレッサ11を配置することができる。空気圧縮器11および/またはコンプレッサ11の下流側に、空気路10内の空気をより低い温度に冷却する熱交換器15を設けることができる。
【0021】
空気路10内には、例えば加湿器および/または弁などのさらに別のコンポーネントを設けることができる。空気路10により、燃料電池スタック101に酸素含有空気が提供される。
【0022】
空気路10は、分岐箇所33を介して冷却配管30と接続されている。空気は、空気路10から冷却配管30を介してPDUユニット32に、もしくはPDUユニット32のハウジング31に到達することができる。PDUユニット32は、燃料電池スタック101で電圧タッピングを行い、この電圧タッピングをさらに処理および接続するパワー・ディストリビューション・ユニット32である。
【0023】
パワー・ディストリビューション・ユニット(PDUユニット)32に課せられた仕事は、とりわけ、電圧の確保、電流測定、事故が検出された場合のシステムからのスタック電圧の切り離し、DC/DC変換器および/またはバッテリへのスタック電圧の接続である。
【0024】
空気路10から、冷却配管30を介してPDUユニット32のハウジング31に到達する空気を用いて、PDUユニット32のハウジング31内の部品を冷却することができる。
【0025】
分岐箇所33は、空気路10内の空気を圧縮するコンプレッサ11と燃料電池スタック101との間に配置されていることが好ましい。十分に冷えた空気を冷却配管30に提供できるようにするために、コンプレッサ11と分岐箇所33との間に熱交換器15を配置することができる。
【0026】
空気路10において、空気から粒子および異物をろ過して除去する少なくとも1つのフィルタ13を入口16と分岐箇所33との間に配置することができる。このようにすることで、PDUユニット32へ流れる空気は、不都合な粒子および異物がすでに除去されている。
【0027】
空気路10から冷却配管30に到達する空気を必要に応じて制御するために、冷却配管30に調節可能なスロットル34を配置することができる。
【0028】
空気路10から冷却配管30に流れる空気が所望の温度を有していない場合、冷却配管30内の空気をさらに冷却する冷却器35を冷却配管30に配置することができる。一実施形態では、冷却器35を調節可能なスロットル34とPDUユニット32との間に配置することができる。
【0029】
さらに、冷却配管30には、燃料電池システム100が停止した場合に、水素が燃料電池スタック101から冷却配管30内に拡散することを阻止するガス逆止弁37を配置することができる。
【0030】
冷却配管30を通ってPDUユニット32のハウジング31に到達した空気を、PDUユニット32のハウジング31内に配置された少なくとも1つの圧力補償要素38によって再び周辺へ排出することができる。一実施形態では、圧力補償要素38は、ガスを透過させるが、PDUユニットへの粒子および湿気の侵入を阻止する。
【0031】
代替の実施形態では、PDUユニット32のハウジング31内に別の逆止弁38が配置され、冷却配管30を通ってPDUユニット32のハウジング31に到達した空気をこの逆止弁を介して周辺へ逃すことができる。
【0032】
さらに、燃料電池システム100は、空気路10からの水、および空気の他の成分が燃料電池スタック101を通り抜けた後に出口18を介して周辺へ運ばれる排気路12を有する。
【0033】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック101を冷却するように形成された冷却回路をさらに有することができる。冷却回路は、本発明の構成要件ではないため図に描かれていない。
【0034】
燃料配管20は、高圧タンク21と遮断弁22とを有する。燃料を必要に応じて燃料電池スタック101に供給するために、燃料配管20に他のコンポーネントを配置することができる。さらに、本発明の構成要件ではないため図に示されない循環配管を設けることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 空気路
11 空気圧縮器、コンプレッサ
12 排気路
13 フィルタ
15 熱交換器
16 入口
18 出口
20 燃料配管
21 高圧タンク
22 遮断弁
30 冷却配管
31 ハウジング
32 PDUユニット
33 分岐箇所
34 スロットル
35 冷却器
37 ガス逆止弁
38 圧力補償要素、別の逆止弁
100 燃料電池システム
101 燃料電池スタック
図1