(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4061 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G05B19/4061 Z
(21)【出願番号】P 2022551981
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034514
(87)【国際公開番号】W WO2022065280
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2020160887
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】新倉 美穂
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-131908(JP,A)
【文献】特開2008-15740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
B23Q 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具とテーブル上の補助機構との干渉をチェックする機能を有する工作機械の制御装置であって、
3次元の基本形状データを記憶する記憶部と、
前記基本形状データから前記補助機構の干渉チェック領域を作成し、該干渉チェック領域を前記補助機構を囲む所定の設定領域内に設定する領域設定部と、
前記干渉チェック領域の複数の境界面の各々の位置を決定するための複数の設定項目の設定値が操作者によって入力される入力部とを備え、
前記複数の設定項目は、前記設定値の入力が必須でない少なくとも1つの非必須項目を含み、
前記領域設定部が、
前記入力部に入力された前記設定値に基づいて前記干渉チェック領域を設定し、
前記設定値が入力されていない前記非必須項目である未入力項目が存在する場合、該未入力項目によって決定される前記境界面を前記所定の設定領域の端に設定する、工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記所定の設定領域が、前記工具の動作範囲である、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記非必須項目が、前記干渉チェック領域の外方を向く前記境界面の内、前記補助機構の静止部分を囲む境界面の位置を決定するための項目である、請求項1または請求項2に記載の工作機械の制御装置。
【請求項4】
前記非必須項目が、前記干渉チェック領域の同一側に位置する2以上の境界面の内、最も外側に位置する境界面以外の境界面の位置を決定するための項目である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の工作機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械のテーブル上には、テーブルに対してワークを固定するための治具またはテーブルに対するワークの姿勢を変化させるための付加軸テーブル等の補助機構が設置される。工作機械の運転中の工具と補助機構との意図しない干渉を防止するために、工具と補助機構との干渉をチェックする機能を有する工作機械の制御装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。特許文献1,2において、補助機構および工具の3次元データを用いて補助機構および工具の各々の干渉領域を設定し、補助機構および工具の移動をシミュレーションし、干渉領域同士が干渉するか否かをチェックしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-115117号公報
【文献】特開2006-102923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用される補助機構の形状および寸法は、ユーザ毎に異なり得る。さらに、同一の補助機構であっても、設置方向および設置位置がユーザ毎に異なり得る。そのため、干渉領域の設定に時間がかかり不便である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、工具とテーブル上の補助機構との干渉をチェックする機能を有する工作機械の制御装置であって、3次元の基本形状データを記憶する記憶部と、前記基本形状データから前記補助機構の干渉チェック領域を作成し、該干渉チェック領域を前記補助機構を囲む所定の設定領域内に設定する領域設定部と、前記干渉チェック領域の複数の境界面の各々の位置を決定するための複数の設定項目の設定値が操作者によって入力される入力部とを備え、前記複数の設定項目は、前記設定値の入力が必須でない少なくとも1つの非必須項目を含み、前記領域設定部が、前記入力部に入力された前記設定値に基づいて前記干渉チェック領域を設定し、前記設定値が入力されていない前記非必須項目である未入力項目が存在する場合、該未入力項目によって決定される前記境界面を前記所定の設定領域の端に設定する、工作機械の制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】付加2軸テーブルの干渉チェック領域の一例の平面図である。
【
図3】付加2軸テーブルの干渉チェック領域の一例の側面図である。
【
図4】付加2軸テーブルの拡張された干渉チェック領域の一例の平面図である。
【
図5】付加2軸テーブルの拡張された干渉チェック領域の一例の側面図である。
【
図6】
図1の工作機械の制御装置による干渉チェック領域の設定方法を示すフローチャートである。
【
図7】バイスの干渉チェック領域の一例の平面図である。
【
図8】バイスの干渉チェック領域の一例の側面図である。
【
図9】バイスの拡張された干渉チェック領域の一例の平面図である。
【
図10】バイスの拡張された干渉チェック領域の一例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、一実施形態に係る工作機械10およびその制御装置1について図面を参照して説明する。
図1に示されるように、工作機械10は、工具2を保持する主軸3と、ワークWが載置されるテーブル4と、主軸3を回転させる主軸モータ5と、主軸3をテーブル4に対してZ方向に移動させるZ軸送りモータ6と、テーブル4を主軸3に対してX方向およびY方向にそれぞれに移動させるX軸送りモータ7およびY軸送りモータ8と、モータ5,6,7,8を制御する数値制御装置1とを備える。
【0008】
Z方向は、主軸3に保持された工具2の長手軸に沿う方向である。X方向およびY方向は、主軸3に保持された工具2の長手軸に直交する方向であり、相互に直交する。
図1の工作機械10において、Z方向は鉛直方向であり、X方向およびY方向は水平方向である。
主軸3は、鉛直方向に配置され、図示しない支持機構によって鉛直方向に移動可能に支持されている。工具2は、主軸3の下端部に主軸3と同軸に保持され、主軸3と一体的に回転し移動する。
【0009】
テーブル4は、主軸3の下方に水平に配置されている。テーブル4の上面である載置面4a上には、ワークWを保持する補助機構9が設置されている。補助機構9は、例えば、ワークWをテーブル4に対して固定する治具、または、テーブル4に対するワークWの姿勢を変更する付加軸テーブルである。
【0010】
送りモータ6,7,8は、それぞれサーボモータである。送りモータ7,8は、テーブル4をX方向およびY方向に移動させることによって、テーブル4に対して工具2を所定の動作範囲内においてX方向およびY方向に移動させる。例えば、X方向の動作範囲はテーブル4のX方向の両端の間であり、Y方向の動作範囲はテーブル4のY方向の両端の間である。
【0011】
制御装置1は、記憶部11と、入力部12と、制御部13とを備える。
記憶部11は、RAM、ROMおよびその他の任意の記憶装置を有する。
入力部12は、タッチパネル、マウスおよびキーボード等を有する。操作者は、入力部12を使用して制御装置1への様々な入力操作を行うことができる。
【0012】
自動運転時、制御部13は、記憶部11に記憶された加工プログラムに基づく制御指令をモータ5,6,7,8に送信することによって、主軸3およびテーブル4の動作を制御する。手動運転時、制御部13は、操作者による操作入力装置(図示略)への入力に基づく制御指令をモータ5,6,7,8に送信することによって、主軸3およびテーブル4の動作を制御する。制御部13は、制御装置1に内蔵された中央演算処理装置のような少なくとも1つのプロセッサによって実現される。
【0013】
さらに、制御装置1は、工作機械10の自動または手動運転中に工具2と補助機構9との間の干渉をチェックする機能として、領域設定部14および干渉チェック部15を備える。領域設定部14および干渉チェック部15は、制御部13と同様に、プロセッサによって実現される。
【0014】
干渉をチェックするために、
図2および
図3に示されるように、所定の設定領域P内に補助機構9の干渉チェック領域Aが設定される。設定領域Pは、制御装置1に予め設定された補助機構9を囲む3次元領域であり、例えば工具2の動作範囲である。干渉チェック領域Aは、単一の領域または複数の部分領域A1,A2,A3の組み合わせから構成される。単一の領域および各部分領域A1,A2,A3は、直方体または円柱体のような単純な形状をそれぞれ有する。
図2および
図3は、補助機構9がX方向に平行に設置された付加2軸テーブルである場合の干渉チェック領域Aの例を示している。付加2軸テーブル9は、回転テーブル9aおよび2つのモータユニット9bを有し、X方向に平行な傾斜軸線B回りおよび回転テーブル9aの中心軸線である回転軸線C回りに回転テーブル9aが回転可能である。
【0015】
記憶部11は、干渉チェック領域Aを作成するための複数の3次元の基本形状データを記憶している。複数の基本形状データは、相互に異なる形状であり、各基本形状データは、直方体または円柱体のような単純な形状の組合せによって構成される。
操作者は、干渉チェック領域Aに使用する基本形状データを入力部12で選択することができる。
図2および
図3の干渉チェック領域Aの場合、3つの部分領域A1,A2,A3に対応する3つの直方体から構成される基本形状データを選択する。
【0016】
例えば、各基本形状データは、補助機構9の少なくとも1つの種類と関連付けられている。具体的には、3つの直方体から構成された基本形状データは、付加2軸テーブルと関連付けられている。操作者は、制御装置1の設定画面に表示された補助機構9の種類の一覧の中から、使用する補助機構9を選択する。補助機構9が選択されると、選択された補助機構9と関連付けられている少なくとも1つの基本形状データが設定画面に表示される。操作者は、入力部12を使用して、表示されている基本形状データの中から1つを選択する。
【0017】
干渉チェック領域Aを定義するためには、干渉チェック領域Aを画定する複数の境界面の各々の位置を決定する必要がある。操作者は、複数の境界面の位置を決定するための複数の設定項目の設定値を入力部12に入力することができる。
図2および
図3の例の場合、干渉チェック領域Aは19個の境界面a,b,・・・,m,nによって画定され、境界面a,b,・・・,m,nの位置を決定するために16個の設定項目1~16が設けられている。
【0018】
設定項目1~3は、回転テーブル9aの一方の側面における傾斜軸線Bの位置のXYZ座標(Bx,By,Bz)である。
設定項目4は、回転テーブル9aの他方の側面のX座標xjである。
設定項目5,6,7,8,9,10,11,12は、傾斜軸線(所定の軸線)Bから傾斜軸線Bに平行な境界面a,b,c,d,e,f,k,lまでの距離Δa,Δb,Δc,Δd,Δe,Δf,Δk,Δlである。
設定項目13は、境界面h,g間の幅Δghであり、設定項目14は境界面i,j間の幅Δijである。
設定項目15,16は、載置面4aから境界面m,nまでの距離Δm,Δnである。
【0019】
例えば、入力部12は、数字キーパッドを有する操作盤であり、操作者は、数字キーパッドを使用して入力部12に設定値を入力する。入力部12がタッチパネルを有する場合、操作者は、タッチパネルに表示された基本形状データの各境界面の位置を、使用する補助機構9の形状および寸法に応じた位置へタッチ操作によって移動させることで、各設定値を入力してもよい。入力部12がマイク等の音声入力装置を有する場合、操作者の音声として設定値が入力されてもよい。
【0020】
複数の設定項目は、操作者による設定値の入力が必須である必須項目と、操作者による設定値の入力が必須でない少なくとも1つの非必須項目とからなる。
非必須項目の一例は、載置面4aに沿うX方向およびY方向において干渉チェック領域Aの外方を向く境界面の内、補助機構9の静止部分9bを囲む部分領域A2,A3の境界面c,d,e,f,g,iの位置をそれぞれ決定するための項目Δc、Δd、Δe、Δf、Δgh,Δijである。静止部分9bは、テーブル4に対して静止した部分であり、付加2軸テーブルの場合、補助機構9の回転軸線C回りの回転に同期しない部分である。
非必須項目の他の例は、補助機構9の可動部分9aを囲む部分領域A1のテーブル4側の境界面lの位置を決定するための項目Δlである。可動部分9aは、テーブル4に対して可動の部分であり、付加2軸テーブルの場合、補助機構9の回転軸線C回りの回転に同期する部分である。
【0021】
領域設定部14は、入力部12で選択された形状の基本形状データを記憶部11から取得する。続いて、領域設定部14は、入力部12で選択された基本形状データと設定項目の設定値とに基づいて、干渉チェック領域Aを作成し干渉チェック領域Aを設定領域P内に設定する。つまり、領域設定部14は、基本形状データをX、Y、Z方向に拡大または縮小させ基本形状データの各境界面を設定値によって決定される位置に配置することによって、干渉チェック領域Aを作成する。
【0022】
このように、領域設定部14は、入力部12に入力された必須項目および非必須項目の設定値に基づいて、各境界面の位置を決定する。設定値が入力されていない非必須項目である未入力項目が存在する場合、領域設定部14は、未入力項目によって決定される境界面を、干渉チェック領域Aに対して当該境界面と同一側に位置し当該境界面と対向する設定領域Pの端に決定する。
図2および
図3は、全ての設定項目の設定値が入力された場合の干渉チェック領域Aを示す。
図4および
図5は、全ての非必須項目の設定値が入力されなかった場合の拡張された干渉チェック領域Aを示す。
【0023】
具体的には、項目Δgh,Δijが未入力項目である場合、境界面g,iが設定領域Pの端に決定されることによって、モータユニット9bを囲む部分領域A2,A3が、設定領域Pの端までX方向に拡張される。
項目Δc,Δd,Δe,Δfが未入力項目である場合、境界面c,d,e,fが設定領域Pの端に決定されることによって、モータユニット9bを囲む部分領域A2,A3が設定領域Pの端までY方向に拡張される。
項目Δlが未入力項目である場合、境界面lが設定領域Pの下側の端である載置面4aに決定されることによって、回転テーブル9aを囲む領域A1がZ方向に拡張される。
【0024】
干渉チェック部15は、工具2と干渉チェック領域Aとが相互に干渉するか否かをチェックする。例えば、干渉チェック部15は、制御部13が送りモータ6,7,8に制御指令を送信する前に、制御指令に従って工具2およびテーブル4が移動したと仮定したときの工具2および干渉チェック領域Aの位置を計算し、算出された位置において工具2と干渉チェック領域Aとが相互に干渉するか否かをチェックする。
【0025】
工具2と干渉チェック領域Aとが相互に干渉すると干渉チェック部15によって判断された場合、制御部13は、送りモータ6,7,8を制御することによって、主軸3およびテーブル4の少なくとも一方に干渉を回避する動作を実行させる。例えば、制御部13は、主軸3およびテーブル4を停止させるか、または、主軸3およびテーブル4を相互に離間する方向に移動させる。
【0026】
次に、工作機械10の制御装置1の作用について説明する。
テーブル4の載置面4a上に補助機構9を設置後、自動または手動運転の開始前に、
図6に示されるように、干渉チェック領域Aが設定される。
まず、干渉チェック領域Aに使用する基本形状データが、入力部12を使用して操作者によって選択される(ステップS1)。次に、干渉チェック領域Aの複数の境界面を決定するための設定値が、入力部12を使用して操作者によって入力される(ステップS2)。
【0027】
設定値の入力が完了した後(ステップS3のYES)、全ての必須項目の設定値が入力されたことが領域設定部14によって確認される(ステップS4)。設定値の入力の完了は、例えば、操作者による設定画面上の所定のボタンの押下に基づいて判断される。設定値が入力されていない必須項目が存在する場合、制御装置1は、エラーを出力し(ステップS5)、未入力の必須項目の設定値の入力を操作者に要求する。
【0028】
次に、ステップS1において選択された基本形状データおよびステップS2において入力された設定値に基づき、領域設定部14によって補助機構9の干渉チェック領域Aが作成され設定される(ステップS6)。
全ての非必須項目に設定値が入力されている場合、
図2および
図3に示されるように、干渉チェック領域Aの全ての境界面a,b,・・・,m,nの位置が設定値に基づいて決定される。一方、少なくとも1つの非必須項目に設定値が入力されていない場合、未入力項目に対応する境界面の位置が未決定のまま、ステップS7に進む。
【0029】
次に、領域設定部14によって、全ての非必須項目の設定値が入力されたか否かが確認される(ステップS7)。全ての非必須項目の設定値が入力されている場合(ステップS7のYES)、補助機構9の干渉チェック領域Aの作成および設定が終了する。
一方、少なくとも1つの未入力項目が存在する場合(ステップS7のNO)、領域設定部14によって、未決定の境界面が所定の設定領域Pの端に決定されることによって干渉チェック領域Aが設定領域Pの端まで拡張され(ステップS8)、補助機構9の干渉チェック領域Aの作成および設定が終了する。
干渉チェック領域Aの設定終了後、工具2と干渉チェック領域Aとが干渉するか否かが干渉チェック部15によってチェックされる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、記憶部11内に予め登録されている所定の基本形状データに対して設定値を与えるだけの簡単な作業によって、補助機構9の干渉チェック領域Aが作成される。したがって、様々な補助機構9の干渉チェック領域Aを容易に短時間で設定することができる。
【0031】
また、非必須項目の設定値が入力されなかった場合、未入力項目に対応する境界面が設定領域Pの端、例えば工具2の動作範囲の端に自動的に決定され、設定領域Pの端まで拡張された干渉チェック領域Aが自動的に設定される。すなわち、操作者は、非必須項目の設定値の入力を省略することができ、干渉チェック領域Aをさらに容易に、かつ、さらに短時間で設定することができる。例えば、
図2から
図5の例の場合、従来、16個の設定項目の設定値の入力が要求されていた。本実施形態によれば、設定値の入力が必須である設定項目の数を9個まで減らすことができる。
【0032】
また、干渉チェック領域Aを工具2の動作範囲の端まで拡張することによって、工具2と補助機構9との間の干渉をより確実に防止し、安全性を高めることができる。
また、操作者が非必須項目の設定値の入力を忘れた場合、安全性を高める方向に干渉チェック領域Aを自動的に調整することができる。
また、付加2軸テーブルの場合、通常、ワークWの加工中に工具2がX方向およびY方向において回転テーブル9aの外側まで移動することはない。したがって、干渉チェック領域Aを工具2の動作範囲の端まで拡張することにより工具2の移動が不要に制限されることはない。
【0033】
干渉チェック領域Aが静止部分9bをそれぞれ囲む複数の部分領域A2,A3を含む場合、干渉チェック領域Aの同一側に部分領域A2,A3の複数の境界面が存在する。本実施形態において、同一側の複数の境界面の内、最も外側の境界面以外の境界面の位置を決定する項目が、非必須項目であってもよい。例えば、
図2から
図5の例において、ΔmおよびΔnの内、小さい方が非必須項目であってもよい。ΔmおよびΔnの一方が未入力項目である場合、領域設定部14は、ΔmおよびΔnの一方の設定値を他方の設定値と同一の値に決定する。
これにより、設定値の入力が必須である設定項目の数をさらに8個まで減らすことができる。
【0034】
図7から
図10は、補助機構9が治具の一種であるバイスである場合の干渉チェック領域Aの例を示している。バイスの干渉チェック領域Aは、3つの静止部分をそれぞれ囲む3つの部分領域からなる。
図7から
図10の例において、13個の設定項目1~13が設けられている。
図7および
図8は、全ての設定項目の設定値が入力された場合の干渉チェック領域Aを示す。
図9および
図10は、全ての非必須項目の設定値が入力されなかった場合の拡張された干渉チェック領域Aを示す。
【0035】
設定項目1,2は、境界面a,bのY座標ya,ybである。設定項目3~8は、境界面c,d,e,f,g,hのX座標xc,xd,xe,xf,xg,xhである。設定項目9は、境界面a,i間の幅Δaiであり、設定項目10は、境界面b,j間の幅Δbjである。設定項目11,12,13は、境界面k,l,mのZ座標zk,zl,zmである。
【0036】
非必須項目の一例は、載置面4aに沿うY方向において干渉チェック領域Aの外方を向く境界面i,iの位置をそれぞれ決定するための項目Δai、Δbjである。
非必須項目の他の例は、干渉チェック領域Aの同一側に位置する3つの境界面c,e,gの内、最も外側に位置する境界面c以外の2つの境界面e,gの位置を決定するための項目xe,xgである。
非必須項目の他の例は、干渉チェック領域Aの同一側に位置する3つの境界面d,f,hの内、最も外側に位置する境界面d以外の2つの境界面f,hの位置を決定するための項目xf,xhである。
非必須項目の他の例は、干渉チェック領域Aの同一側に位置する2つの境界面l,mの内、最も外側に位置する境界面l以外の1つの境界面mの位置を決定するための項目zmである。
この例において、必須項目は5個であり、非必須項目は7個である。すなわち、操作者による設定値の入力が必須である設定項目の数を従来の13個から5個まで減らすことができる。
【0037】
干渉チェック領域Aの作成に使用される基本形状データが複雑であり境界面の数が多い程、干渉チェック領域Aを作成するための演算量が増加し制御装置1の負荷が増大する。演算量を低減するために、工具2との干渉が少ない補助機構9の一部分には干渉チェック領域Aを設定しなくてもよい。
例えば、
図7および
図8において、境界面a,b間に配置される真ん中の部分領域は、ワークWの下面を受ける部分に対応する。操作者は、この部分は工具2と干渉する可能性が低いと判断し、
図9および
図10に示されるように、真ん中の部分領域を省略してもよい。この場合、項目zkが存在しないので、非必須項目は8個である。
【0038】
本実施形態において、領域設定部14が、記憶部11に既に記憶されている補助機構9の位置情報を参照し、一部の設定項目の設定値を自動的に設定してもよい。
干渉チェック領域Aの設定を行う前に、補助機構9の位置に関する位置情報が既に制御装置1に入力され設定されていることがある。例えば、付加2軸テーブルの場合、傾斜軸線Bの位置および方向が、干渉チェック領域Aの設定よりも先に記憶部11に記憶される。この場合、領域設定部14が、記憶部11に記憶されている傾斜軸線Bの位置および方向に基づいて項目(Bx,By,Bz)の設定値を自動的に設定する。これにより、操作者が設定値を入力しなければならない設定項目の数をさらに減らすことができる。
【0039】
干渉チェック領域Aを拡張することは、安全性を高める方向に働く。本実施形態においては、制御装置1が提案部16をさらに備え、設定領域P内に物体が存在しない空間が存在する場合、提案部16が、この空間が干渉チェック領域Aに含まれるように干渉チェック領域Aの拡張を提案してもよい。
【0040】
例えば、テーブル4の上方に設置されたカメラのような視覚センサ17によって設定領域Pの画像が取得される。提案部16は、補助機構9と設定領域Pの端との間に物体が存在するか否かを画像に基づいて判定する。物体が存在しないと判定された場合、提案部16は、干渉チェック領域Aの境界面を設定領域Pの端に変更し干渉チェック領域Aを拡張することを操作者に提案する。
提案部16は、2つの部分領域間の所定の幅以下の隙間に物体が存在するか否かを画像に基づいて判定し、物体が存在しないと判定された場合、2つの部分領域を拡張し相互に結合することを操作者に提案してもよい。
提案部16が干渉チェック領域Aの拡張を提案することに代えて、領域設定部14が、干渉チェック領域Aを自動的に拡張してもよい。
【0041】
干渉チェック領域Aの設定に要する演算量を減らし制御装置1の負荷を減らすために、提案部16が、より簡易な形状の干渉チェック領域Aを操作者に提案してもよい。例えば、基本形状データが操作者によって選択された後、提案部16が、干渉チェック領域Aを拡張したり、複数の部分領域を1つに結合したりすることを提案してもよい。
【0042】
本実施形態において、補助機構9が付加軸テーブルおよび治具である場合について説明したが、補助機構9は、一般に載置面4a上に設置される任意のデバイスであってもよい。例えば、補助機構9は、工具長を測定するための接触式の工具長スイッチであってもよい。また、載置面4a上に複数の補助機構9が設置されてもよく、この場合には複数の干渉チェック領域Aが設定されてもよい。
【0043】
本実施形態において、主軸3がZ方向に移動可能であり、テーブル4がX方向およびY方向に移動可能であることとしたが、主軸3およびテーブル4の相対移動は、主軸3およびテーブル4のいずれか一方または両方の移動によって達成されればよい。例えば、主軸3がXY方向に移動可能であり、テーブル4がZ方向に移動可能であってもよく、または、主軸3およびテーブル4の一方がX、Y、Zの3方向に移動可能であってもよい。
また、本実施形態において、主軸3が鉛直に配置され、テーブル4が水平に配置されることとしたが、主軸3およびテーブル4の配置方向は、適宜変更可能である。例えば、主軸3が水平に配置され、テーブル4が鉛直に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 数値制御装置(制御装置)
2 工具
4 テーブル
9 補助機構
10 工作機械
11 記憶部
12 入力部
14 領域設定部
16 提案部
a,b,c,d,e,f,g,f,i,j,k,l,m,n 境界面
A 干渉チェック領域
B 傾斜軸線(所定の軸線)
P 設定領域