(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】チオプリン系化合物、組成物、調製の方法、および応用
(51)【国際特許分類】
C07D 473/38 20060101AFI20240409BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20240409BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240409BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240409BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240409BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240409BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240409BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240409BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20240409BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240409BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C07D473/38 CSP
A61K31/52
A61K51/04 200
A61K51/04 100
A61P35/00
A61P37/06
A61P21/04
A61P29/00 101
A61P13/12
A61P1/04
A61P11/00
A61P1/16
G01T1/161 B
G01T1/161 A
A61B5/055 390
A61B6/03 Z
(21)【出願番号】P 2022557904
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2021078187
(87)【国際公開番号】W WO2022178840
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518115447
【氏名又は名称】▲聚▼天生醫股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SeeCure Taiwan Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 28, Huadong Road, Daliao District, Kaohsiung City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウェイ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、デイビッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ミン-チン
(72)【発明者】
【氏名】コ、チー-シアン
(72)【発明者】
【氏名】クオ、ツオン-ティエン
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101074231(CN,A)
【文献】国際公開第2007/074213(WO,A1)
【文献】Appl. Radiat. Isot.,2013年,72,pp.105-113
【文献】Bulletin of the Korean Chemical Society,2013年,34(12),pp.3654-3658
【文献】ARKIVOC,2006年,2,pp.68-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B,A61K,A61P,C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリン経路指向システムを定量するための化合物であって、前記化合物は以下の化学式を有し、
【化1】
R
1は2から7個の炭素原子を含むアルキル基であり、前記炭素原子のうちの1つはヒドロキシ基によって任意に置換され、R
2は窒素含有テトラアザ環を有するキレート剤である、化合物。
【請求項2】
前記キレート剤はサイクラム、サイクレン、サイクラム-カルボン酸、またはサイクレン-カルボン酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記キレート剤は金属イオンをキレートしている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記金属イオンは、放射性核種、非放射性金属、またはこれらの組み合わせである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記放射性核種は、
99mTc、
67、68Ga、
60、61、62、64、67Cu、
111In、
166Ho、
186、188Re、
90Y、
177Lu、
223Ra、
225Ac、および
89Zr、
117mSn、
153Sm、
89Sr、
59Fe、
212Bi、
211At、
45Ti、またはこれらの組み合わせである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記非放射性金属は、Tc、Sn、Cu、In、Tl、Ga、As、Re、Ho、Y、Sm、Se、Sr、Gd、Bi、Fe、Mn、Lu、Co、Pt、Ca、Rh、Eu、Tb、またはこれらの組み合わせである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
以下の化学式のうちの一つを有する、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項8】
請求項1に記載の化合物と医薬組成物を投与するための器具とを備えるキット。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物を調製する方法であって、
化学式1によって表される化合物を化学式2によって表される化合物と反応させることを含む、方法。
【化3】
【請求項10】
癌、自己免疫疾
患、骨髄疾患、アテローム性動脈硬化を検出するための
放射線造影剤の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項11】
自己免疫疾患は、多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡/ループス腎炎、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、特発性肺線維症、および肝臓炎を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記放射線造影剤はCT、MRI、PET、およびSPECT
を含む画像技術のためのものである、請求項10に記載の
使用。
【請求項13】
使用される請求項1に記載の化合物の量はキットとして規定される、請求項
12に記載の
使用。
【請求項14】
癌、自己免疫疾
患、骨髄疾患の治療
のための薬剤の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項15】
自己免疫疾患は、多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡/ループス腎炎、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、特発性肺線維症、および肝臓炎を含む、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝的病因、プロテアソーム発現差異、および染色体異常による機能的細胞欠損症のセラノスティクス(診断および治療)のための化合物、その化合物を合成する方法、臨床試験における評価項目に代わるイメージング方法、およびその化合物を使用した最適な反応結果のための治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理は、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、X線、または超音波に依存している。これらのモダリティは、形態(大きさ、形状)および身体構造に関する情報を提供するが、細胞の標的情報を有しない。従って、治療法反応の有効性の評価は最適にはなっていない。治療評価項目は、侵襲的でありサンプリングエラーを伴う分子的方法および病理組織学的方法による生検の分析にほぼ例外なく依存する[非特許文献1~3]。
【0003】
ポジトロン放出断層撮影(PET)用放射性医薬品および単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)用放射性医薬品は、標的箇所の活性をイメージング、マッピング、および測定することが可能である。PET剤およびSPECT剤は、分子イメージング剤としてだけでなく、検出可能な薬理作用を誘導しないため、マイクロドーシング剤としてもみなされる。分子画像および細胞画像により誘導されるカスタマイズされた治療は、プロテアソームおよび増殖活性における変化を測定することによって、腫瘍治療の有効性を評価することを可能にした。腫瘍プロテアソームおよび増殖の程度を非侵襲的に検出するためのこの試みの成功により、医師が最適な反応率のために追加または代わりの治療計画を選択することが可能となり、不必要な治療を回避することによって費用が低減されるであろう。
【0004】
分子イメージング剤によるプロテアソーム濃度およびDNA増殖活性の順次的な測定により、全身画像における腫瘍標的の測定とともに治療の効果のモニタリングが可能になるであろう。加えて、分子DNA剤は、腫瘍再発に対して炎症または瘢痕組織を識別するであろう。さらに、分子DNA剤は、化学療法および放射線治療に対する反応を予測する機会を提供し、この機会により、より早い段階で無効な治療が中止され得、患者にとって有益であり得る。
【0005】
腫瘍増殖活性を評価するために、いくつかの取組みがされている。2’-フルオロデオキシグルコース([18F]FDG)の取り込みが腫瘍増殖活性の指標となることが報告されている[非特許文献4~6]。ヒガシらは、[18F]FDGの取り込みが生存細胞の数に強く関連することを示している[非特許文献7]。別のアプローチは、腫瘍細胞増殖マーカーとして放射性標識されたアミノ酸を使用することであった[非特許文献8~12]。しかしながら、これらの薬剤の構造は、DNA/RNAの必要不可欠な構成単位であるプリン系またはピリミジン系ではない。いくつかの放射性標識されたピリミジンおよびプリンが開発されている。それらは、ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV1-tk)発現および他のレポーター遺伝子をイメージングするためのプローブとして使用された[非特許文献13~27]。イメージングにおけるこれらのプローブの難点は、HSV1-tk酵素発現がアデノウイルスタイプベクターによるHSV1-tk遺伝子形質導入に依存することである。HSV1-tk酵素発現のレベルは、形質導入された互いに異なる細胞および組織において変化する傾向があり、従って、HSV1-tkプローブの応用は制限される。
【0006】
HSV1-tkプローブを使用した遺伝子治療の効率を克服するために、いくつかのピリミジンヌクレオシド/ヌクレオチドおよびプリンヌクレオシド/ヌクレオチドを合成してDNA/RNAの中に組み込むことが試みられた[非特許文献23~29]。例えば、3’-デオキシ-3’-18F-フルオロチミジン(18F-FLT)は、DNA合成のサルベージ経路に入ることによって細胞増殖をイメージングするトレーサーである。FLTの取り込みはあるタイプの癌における増殖活性と有意に相互関係があるが、しかし、腫瘍の取り込みは低かった[非特許文献23、24]。初期または再発の低悪性度腫瘍の評価、または治療後の結果測定へのFLTの応用は制限される。
【0007】
全体として、放射性核種イメージングモダリティは、(1)低費用な細胞標的、(2)より迅速な治療反応、(3)鑑別診断、(4)治療反応の予測、および(5)内部放射線治療のためのよりよい線量測定法を評価し得る。よりよい治療計画が設計され得るように、患者への臨床使用のための選択は、放射性医薬品の生物学的挙動によってだけでなく、準備の容易さによって、および患者から集まる情報を処理するための新しいソフトウェアを有するリアルタイムにイメージングする設備によっても、決定されるのがよい。細胞増殖活性を評価するために、m-RNAおよびアデノシン5’-三リン酸(ATP)ならびにグアノシン5’-三リン酸(GTP)経路の両方に関与することに起因して、キレート剤系プリンアナログが選択された。キレート剤系プリンイメージング剤により、腫瘍悪性度、癌のグレード、プリン経路指向システム治療の特徴を示すための機会が提供され、臨床医がカスタマイズされた治療法を使用して最適な結果のために患者を選択することが可能になる。加えて、分子は内部放射性核種治療のための治療放射性核種に組み込まれてもよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Kubota K,Ishiwata K,Kubota R,Yamada S, Tada M,Sato T,Ido T.Tracer feasibility for monitoring tumor radiotherapy:A quadruple tracer study with fluorine-18-fluorodeoxyglucose or fluorine-18-fluorodeoxyuridine,L-[Methy1-14C]methionine,[6-3H]thymidine, and gallium-67.J Nucl Med.1991;32:2118-2123.
【文献】Tjuvajev J,Muraki A,Ginos J,Berk J,Koutcher J,Ballon D,Beattie B,Finn R,Dahighian F,Blasberg R.Iododeoxyuridine uptake and retention as a measure of tumor growth.J Nucl Med.1993;34:1152-1162.
【文献】Strauss LG,Conti PS.The application of PET in clinical oncology.J Nucl Med.1991;32:623-648.
【文献】Okada J,Yoshihawa K, Itami M,Imaseki K, Uno K,Itami J, Kuyama J,Mikata A,Arimizu N.Positron emission tomography using fluorine-18-fluorodeoxyglucose in malignant lymphoma:A comparison with proliferative activity.J Nucl Med.1992;33:325-329.
【文献】Okada J,Yoshihawa K, Itami M,Imaseki K, Uno K,Itami J, Kuyama J,Mikata A,Arimizu N.Positron emission tomography using fluorine-18-fluorodeoxyglucose in malignant lymphoma:A comparison with proliferative activity.J Nucl Med.1992;33:325-329.
【文献】Minn H,Joensuu H,Ahonen A,Klemi P.Fluorodeoxyglucose imaging:a method to acssess the proliferative activity of human cancer in vivo.Comparison with DNA flow cytometry in head and neck tumors.Cancer 1988;61:1776-1781.
【文献】Higashi K,Clavo AC,Wahl RL.Does FDG uptake measure proliferative activity of human cancer cells?In vitro comparision with DNA flow cytometry and tritiated thymidine uptake.J Nucl Med.1992;34:414-419.
【文献】McConathy J,Martarello L,Malveaux EJ, Camp VM, Simpson NE, Simpson CP,Bowers GD,Zhang Z,Olson JJ, Goodman MM.Synthesis and evaluation of 2-amino-4-[(18)F]fluoro-2-methylbutanoic acid(FAMB):relationship of amino acid transport to tumor imaging properties of branched fluorinated amino acids.Nucl Med Biol.2003;30:477-490.
【文献】Jager PL,Plaat BE,de Vries EG,Molenaar WM,Vaalburg W,Piers DA,Hoekstra HJ.Imaging of soft-tissue tumors using L-3-[iodine-123]iodo-alpha-methyl-tyrosine single photon emission computed tomography:comparison with proliferative and mitotic activity,cellularity,and vascularity.Clin Cancer Res.2000;6:2252-2259.
【文献】Coleman RE.Single photon emission computed tomography and positron emission tomography in cancer imaging.Cancer.1991;67:1261-1270.
【文献】Kubota K,Matsuzawa T,Ito M,Ito K,Fujiwara T,Abe Y,Yoshioka S,Fukuda H,Hatazawa J,Iwata R.Lung tumor imaging by positron emission tomography using C-11 L-methionine.J Nucl Med.1985;26:37-42.
【文献】Willemsen ATM,Waarde AV,Paans AMJ,Pruim J,Luurtsema G,Go KG,Vaalburg W.In vivo protein synthesis rate determination in primary or recurrent brain tumor using L-[1-11C]-tyrosine and PET.J Nucl Med.1995;36:411-419.
【文献】Tjuvajev JG,Doubrovin M,Akhurst T, Cai S,Balatoni J,Alauddin MM,Finn R,Bornmann W,Thaler H,Conti PS,Blasberg RG.Comparison of radiolabeled nucleoside probes (FIAU,FHBG,and FHPG)for PET imaging of HSV1-tk gene expression.J Nucl Med.2002;43:1072-1083.
【文献】Gambhir SS,Barrio JR,Wu L,et al.Imaging of adenoviral-directed herpes simplex virus type 1 thymidine kinase reporter gene expression in mice with radiolabeled ganciclovir.J Nucl Med.1998;39:2003-2011.
【文献】Gambhir SS,Barrio JR,Phelps ME,et al.Imaging adenoviral-directed reporter gene expression in living animals with positron emission tomography.Proc Natl Acad Sci USA.1999;96:2333-2338.
【文献】Namavari M,Barrio JR,Toyokuni T,et al.Synthesis of 8-[18F]fluoroguanine derivatives:in vivo probes for imaging gene expression with positron emission tomography.Nucl Med Biol.2000;27:157-162.
【文献】Gambhir SS,Bauer E,Black ME,et al.A mutant herpes simplex virus type 1 thymidine kinase reporter gene shows improved sensitivity for imaging reporter gene expression with positron emission tomography.Proc Natl Acad Sci USA.2000;97:2785-2790.
【文献】Iyer M,Barrio JR,Namavari M,et al.8-[18F]Fluoropenciclovir:an improved reporter probe for imaging HSV1-tk reporter gene expression in vivo using PET.J Nucl Med.2001;42:96-105.
【文献】Alauddin MM,Conti PS,Mazza SM,et al.9-[(3-[18F]-Fluoro-1-hydroxy-2-propoxy)methyl]guanine([18F]-FHPG):a potential imaging agent of viral infection and gene therapy using PET.Nucl Med Biol.1996;23:787-792.
【文献】Alauddin MM,Shahinian A,Kundu RK,et al.Evaluation of 9-[(3-18F-fluoro-1-hydroxy-2-propoxy)methyl]guanine ([18F]-FHPG) in vitro and in vivo as a probe for PET imaging of gene incorporation and expression in tumors.Nucl Med Biol.1999;26:371-376.
【文献】Alauddin MM,Conti PS.Synthesis and preliminary evaluation of 9-(4-[18F]-fluoro-3-hydroxymethylbutyl)guanine([18F]FHBG):a new potential imaging agent for viral infection and gene therapy using PET.Nucl Med Biol.1998;25:175-180.
【文献】Yaghoubi S,Barrio JR,Dahlbom M,et al.Human pharmacokinetic and dosimetry studies of[18F]FHBG:a reporter probe for imaging herpes simplex virus type-1 thymidine kinase reporter gene expression.J Nucl Med.2001;42:1225-1234.
【文献】Buck AK,Halter G,Schirrmeister H,Kotzerke J,Wurziger I,Glatting G,Mattfeldt T,Neumaier B,Reske SN,Hetzel M.Imaging Proliferation in Lung Tumors with PET:18F-FLT Versus 18F-FDG.J Nucl Med.2003;44:1426-1431.
【文献】Francis DL,Visvikis D,Costa DC,Arulampalam TH,Townsend C,Luthra SK,Taylor I,Ell PJ.Potential impact of [18F]3’-deoxy-3’-fluorothymidine versus[18F]fluoro-2-deoxy-D-glucose in positron emission tomography for colorectal cancer.Eur J Nucl Med Mol Imaging.2003;30:988-994.
【文献】Marquez VE,Tseng CKH,Mitsuya H,Aoki S,Kelly JA,Ford H,Roth JS,Broder S,Johns DG,Driscoll JS.Acid-stable 2’-fluoro purine dideoxynucleosides as active agents against HIV.J Med Chem.1990;33:978-985.
【文献】Wright JA,Taylor NF,Fox JJ.Nucleosides.LX.Fluorocarbohydrates.synthesis of 2-deoxy-2-fluoro-d-arabinose and 9-(2-deoxy-2-fluoro-a-and-b-d-arabinofuranosyl)adenines.J Org Chem.1969;34:2632-2636.
【文献】Uesugi S,Kaneyasu T,Ikehara M.Syntheis and properties of ApU Analogues containing 2’-halo-2’-deoxyadenosine.Effect of 2’substituents on oligonucleotide conformation.Biochemistry 1982;21:5870-5877.
【文献】Ikehara M,Miki H.Studies of nucleosides and nucleotides.Cyclonucleosides.Synthesis and properties of 2’-halogeno-2’-deoxyadenosines.Chem.Pharm.Bull.1978;26:2449-2453.
【文献】Malspeis L,Grever MR,Staubus AE,Young D.Pharmacokinetics of 9-B-D-arabinofuranosy1-2-fluoroadenine in canser patients during the phase I clinical investigation of fludarabine phosphate.Seminars in Oncology 1990;17:18-32.
【発明の概要】
【0009】
当業者にとって明らかになっているであろうことは、以下を含む。(1)イメージングにおける18F-放射化学の高度な知識、(2)セラノスティクスのコンセプトの不足により治療結果が最適でない。(3)バイオマーカーをインバースアゴニストに変換できなかった。インバースアゴニストは有害事象を回避してバイオマーカーと治療後反応との間の相関分析を提供し得る。および(4)DNA標的描出、またはイメージングおよび治療における異なる分子の使用のいずれかの不足に起因する識別診断および反応性予測における困難性。
【0010】
当分野において非自明なことは以下を含む。(1)キレート化-コンジュゲート技術基盤は、薬品の感度および特異性を強化する能力に起因して、最適な治療投薬量反応のための患者の選択を許容する。(2)キレート化-コンジュゲート技術基盤は、単純なキットに基づくイメージング薬品を予測治療薬品に転換し得、これはカスタマイズされた医薬のセラノスティクスのコンセプトである。(3)キレート化-コンジュゲート技術基盤は、バイオマーカー(アゴニスト)をインバースアゴニストに転換し得る。(4)キレート化-コンジュゲート技術により作動する生成物であるSC-06チオプリン化合物は、急速成長か緩徐成長かによらず、DNA増殖に関与する能力に起因して腫瘍を検出し得る。様々なタイプの腫瘍増殖活性を理解することによって、最適な治療のための患者の選択が支援され得る。キレート剤に基づくプリンコンジュゲートは、プロテアソーム転換および増殖活性における変化を測定することによって腫瘍治療の有効性を評価するために開発された。
【0011】
本発明は、プリン経路指向システムを定量するための、以下の化学式を有する化合物を提供する。
【0012】
【0013】
R1は2から7個の炭素原子を含むアルキル基であり、炭素原子のうちの1つはヒドロキシ基によって任意に置換され、R2は窒素含有テトラアザ環を有するキレート剤である。
【0014】
本発明の一実施形態において、キレート剤はサイクラム、サイクレン、サイクラム-カルボン酸、またはサイクレン-カルボン酸である。
本発明の一実施形態において、キレート剤は金属イオンをキレートしている。
【0015】
本発明の一実施形態において、金属イオンは放射性核種、非放射性金属、またはこれらの組み合わせである。
本発明の一実施形態において、放射性核種は、99mTc、67、68Ga、60、61、62、64、67Cu、111In、166Ho、186、188Re、90Y、177Lu、223Ra、225Ac、および89Zr、117mSn、153Sm、89Sr、59Fe、212Bi、211At、45Ti、またはこれらの組み合わせである。
【0016】
本発明の一実施形態において、非放射性金属は、Tc、Sn、Cu、In、Tl、Ga、As、Re、Ho、Y、Sm、Se、Sr、Gd、Bi、Fe、Mn、Lu、Co、Pt、Ca、Rh、Eu、Tb、またはこれらの組み合わせである。
【0017】
本発明の一実施形態において、化合物は以下の式のうち一つを有する。
【0018】
【0019】
本発明はまた、上述の化合物と医薬組成物を投与するための器具とを備えるキットを提供する。
本発明はさらに、上述の化合物を合成する方法を提供する。方法は、化学式1によって表される化合物を化学式2によって表される化合物と反応させることを含む。
【0020】
【0021】
本発明はさらに、腫瘍を有する動物にイメージング量の上述の化合物を投与することと、癌、自己免疫疾患(多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡/ループス腎炎、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、特発性肺線維症、肝臓炎)、骨髄疾患、アテローム性動脈硬化を検出するためのイメージング技術を使用して骨をイメージングすることとを含む、腫瘍をスキャニングする方法を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態において、画像技術はCT、MRI、PET、および/またはSPECTである。
本発明の一実施形態において、イメージング量はキットとして規定される。
【0023】
本発明はさらに、上述の化合物の投与を含む、癌、抗代謝物、抗増殖性(S/G1)自己免疫疾患(多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡/ループス腎炎、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、特発性肺線維症、肝臓炎)、骨髄疾患の治療方法を提供する。
【0024】
本発明の一実施形態において、ヒドロキシ基を有するスペーサーは分子(SC-06-L-1)に組み込まれる。
技術基盤は、アンタゴニスト(薬品)およびアゴニスト(バイオマーカー)のコンジュゲートを利用してもよく、様々な種類の病気における効果が見込まれる。
【0025】
また、化合物は、当業者に知られた化学的手順を使用した薬剤処方およびキットにおいて、さらに調製され得る。加えて、化合物を合成する方法もまた提供され、合成方法は保護基をチオプリンリガンドに加えることの必要性を取り除くとともにプロセス効率および最終生成物の純度を上昇させ得る。
【0026】
本発明は、遺伝的病因、タンパク質発現差異、および染色体異常による機能的欠損症のためのチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、およびキサンチンオキシダーゼ(XO)のセラノスティック(診断用および治療用)プロテアソームの化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
前述のものをさらにわかりやすくするために、いくつかの実施形態が添付の図面とともに以下の通りに詳細に記述される。添付の図面は本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれるとともに本明細書の一部を構成する。図面は本開示の典型的な実施形態を説明とともに示し、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【
図1】病期分類、再病期分類、反応予測の前倒し、および有効性/費用比の改善等のラジオミックセラノスティック剤の有効性のスキームである。
【
図3】チオプリン誘導体およびグアニン誘導体の分子構造である。
【
図5】CD28、G-タンパク質、およびDNA増殖のセラノスティクスのためのSC-06アナログである。
【
図6】作用-1の推定機構:SC-06はCD-28を活性化するとともにRac-1を阻害し(左)、癌における示差的な反応性結果のための受容体キナーゼ経路にクロストークする(右)。
【
図7】作用-2の推定機構:チオプリン経路指向システムにおけるDNA/RNA組込みへのSC-06-L1の関与を示す(MP:メルカプトプリン、TG:チオグアニン)。
【
図8】SC-06化合物により、チオプリン経路指向システムにおける酵素(XO、HPRT、TPMT)の転換を測定する。
【
図10】SC-06-L-1(B082-1)の
1H NMRである。
【
図11】SC-06-L-1(B082-1)の
13C NMRである。
【
図12】SC-06-L-1(B082-1)の質量である。
【
図13】SC-06-L-1のHPLC(B082-1)である。
【
図14】SC-06-L-2の合成スキームである。
【
図15】SC-06-L-2(B040-2)の
1H NMRである。
【
図16】SC-06-L-2(B040-2)の
13C NMRである。
【
図19】SC-06-K-1の合成スキームである。
【
図20】SC-06-K-1の
1H NMRである。
【
図21】SC-06-K-1の
13C NMRである。
【
図24】SC-06-K-2の合成スキームである。
【
図25】SC-06-K-2(A177)の
1H NMRである。
【
図26】SC-06-K-2(A177)の
13C NMRである。
【
図27】SC-06-K-2(A177)の質量である。
【
図29】
99mTc-SC-06アナログのインスタントラジオTLC分析(溶離剤として生理食塩水)は、カットアンドカウント法を使用してRf=0.1を示した。本発明にて合成された化合物
99mTc-SC-06-Kの放射化学純度は90%以上であった。
【
図30】
99mTc-SC-06アナログのインスタントラジオTLC分析(溶離剤として生理食塩水)は、カットアンドカウント法を使用してRf=0.1を示した。本発明にて合成された化合物
99mTc-SC-06-Lの放射化学純度は85%以上であった。
【
図31】乳癌細胞中のインビトロ細胞/培地比(分布体積)は、
99mTc-SC-06-L1が乳腫瘍をイメージングする潜在性を有する時間依存的パターンでの高い取り込みを有することを示した。
【
図32】卵巣癌細胞中のインビトロ細胞/培地比(分布体積)は、
99mTc-SC-06アナログが卵巣腫瘍をイメージングする潜在性を有する時間依存的パターンでの高い取り込みを有することを示した。
【
図33】様々なヒトリンパ腫細胞に対するSC-06-KアナログのインビトロMTT細胞毒性アッセイにより、SC-06-K-1が用量依存的に癌細胞を阻害することを示す。
【
図34】様々なヒトびまん性大B細胞リンパ腫細胞に対するSC-06-K-1のインビトロMTT細胞毒性アッセイにより、SC-06-K-1が用量依存的に癌細胞を阻害することを示す。
【
図35】1時間での
99mTc-SC-06-L1およびL2画像は、ヒト卵巣腫瘍担持無胸腺ヌードマウス(OVCA-3およびTOV-2d)におけるより高い腫瘍取り込みを明らかにする一方、
18F-FDGは乏しい取り込みを有した。
【
図36】
18F-FDGに比較して、SC-06化合物は、腫瘍における有意に増加した取り込みを示した。
99mTc-SC-06-L1は、卵巣腫瘍における優れた薬物速度論的特性および高いコントラスト可視化を明示した。
【
図37】ヒト卵巣腫瘍担持ヌードマウスにおける
99mTc-SC-06-L1の生物内分布は、OCAR-3腫瘍がTOV-112dよりも多くの取り込みを有したことを示した。
【
図38】
99mTc-SC-06-L1および
99mTc-SC-06-K1は、
18F-FDGに比べてMDA-MB231およびMCF腫瘍担持ヌードマウスにおいて高い取り込みを示した。
【
図39】
18F-FDGに比較して、SC-06化合物は、腫瘍における有意に増加した取り込みを示した。
99mTc-SC-06-L1は、乳腫瘍における優れた薬物速度論的特性および高いコントラスト可視化を明示した。
【
図40】2匹のヌードマウスに2種類の乳腫瘍(MDA-MB-231およびMCF-7)を接種し、
18F-FDGを投与した。0.5時間での腫瘍/筋肉計数密度比は、それぞれ0.25(MDA-MB-231)および0.28(MCF-7)であった。
【
図41】2匹のヌードマウスに2種類の乳腫瘍(MDA-MB-231およびMCF-7)を接種し、
99mTc-SC-06-L1を投与した。1~6時間での腫瘍/筋肉計数密度比は、それぞれ2.0~3.0(MDA-MB-231)および2.1~3.2(MCF-7)であった。
【
図42】2匹のヌードマウスに2種類の乳腫瘍(MDA-MB-231およびMCF-7)を接種し、
99mTc-SC-06-K1を投与した。1~6時間での腫瘍/筋肉計数密度比は、それぞれ1.2~2.4(MDA-MB-231)および1.6~2.2(MCF-7)であった。
【
図43】MDA-MB231(右腿)およびMCF(左腿)腫瘍担持ヌードマウスに、
99mTc-SC-06-L1および
99mTc-SC-06-K1(マウスごとに4.44MBq(120uCi)/100uL、n=2/化合物、iv)を投与した。全身画像は、1~6時間後にeZ-Scope(登録商標)(安西メディカル、日本)によって収集された。MDA-MB231およびMCF-7腫瘍の両方における
99mTc-SC-06-L1および
99mTc-SC-06-k1による腫瘍/筋肉計数密度比は、それぞれ2.0~3.2および1.2~2.4の範囲であった。
【発明を実施するための形態】
【0028】
参照は、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明するものであり、それらの例は添付の図面に示される。同一の符号が図面および明細書中に使用されて、同一または類似の部分を参照する。
【0029】
利用可能、入手可能、および手頃な価格のジェネレータで生成されたイメージング用同位体
サイクロトロンで生成されたトレーサーは、局所サイクロトロン、または、適切に管理された設備にて生成され得る放射性核種ジェネレータシステムの利用可能性によって制約され、成功した臨床応用の長い歴史を有する。ジェネレータは親-娘核種ペアを使用し、比較的長寿命の親同位体は、イメージングに使用される短命の娘同位体へと崩壊する。サイクロトロン設備にて生成される親同位体が臨床部位に送達され、そこから娘同位体が臨床使用のための部位にて溶出され得る。例えば、99mTc系(6時間半減期)および68Ga系(68分半減期)は、これらの同位体がオンサイトのジェネレータから生成され得、18F-または124I-等のサイクロトロンで生成された同位体に代わる好都合な代替物であるため、非常に商業的な可能性を有する。キレート剤-コンジュゲートキットの独自性は、インスタントキットが、イメージングのための高い放射化学純度および安定性で、「クリックケミストリー」として知られるように放射性同位体99mTc-(SPECT)および68Ga(PET)によって容易に捕捉され、または、治療用金属を取り込むことによって治療剤として使用され得ることである。従って、キレート化技術基盤は、セラノスティック分子を開発するための基礎である。
【0030】
癌における細胞増殖をイメージングする重要性
現代のCT、MRI、および超音波イメージングモダリティは、腫瘍体積および形質学的変化を検出し得るが、腫瘍増殖および増殖変化の程度を正確には評価できない。病理学検査が増殖の診断を裏付けるために必要とされる。診断試験および治療試験のための継続的な需要に起因して、腫瘍の挙動に相互関連がある腫瘍増殖の程度を検出するためにより効率的かつ正確な非侵襲的方法を開発するための試みがなされている。
【0031】
現在のところ、充実性腫瘍を根絶することは、高用量の化学療法に繰り返し曝露することによる。このような高用量治療の成功は、しばしば、骨髄細胞へのこれらの薬品の骨髄抑制作用および毒作用によって、および化学療法への癌細胞の固有耐性によって、制限される。上昇したレベルの多剤耐性(MDR)発現および化学療法への耐性は、プロテアソームおよびDNA増殖活性に関与する[30~31]。腫瘍増殖率は、生存および予後に直接関連することがわかっている。
【0032】
イメージングにおける臨床のゴールドスタンダードであるPET[18F]フルオロデオキシグルコース(FDG)は、様々な腫瘍の診断におけるCTおよびMRIの所見に一致するが、FDGはまた、下流の特定の細胞経路の不足に起因して、個別の癌治療への使用において難点を有する。FDGのかなりの量(>95%)はミトコンドリア断片の中に濃縮され、これにより、炎症/感染と腫瘍再発との間の明らかな偽陽性病変につながった[32]。従って、FDGは高感度であるが、治療反応の予測に対する特異的なバイオマーカーではない。[18F]フルオロ-L-チミジン(FLT)は、初期および再発腫瘍における遺伝子、RNA、またはDNAの変化のイメージングのために開発されたが、複雑な化学に加えて、取り込みは低かった[23、24、33]。本発明において、チオプリン-コンジュゲートキットは、イメージングによるDNA/RNA増殖活性の測定に適用された。癌におけるDNA増殖を調節するために、治療手段にチオプリン-コンジュゲートを利用する可能性を有するチオプリン経路指向システムの理解を促進するイメージングアプローチ。
【0033】
DNA遺伝子はRNAを制御し、RNAは細胞経路において、様々なタンパク質を転写する。タンパク質活性は、様々な腫瘍においてリアルタイムかつ動的に過剰発現である。
図1は、病期分類、再病期分類、反応予測の前倒し、有効性/費用比の改善等のラジオミックセラノスティック剤の有用性のスキームを示す。従って、FDGおよびFLTを超える治療予測を提供し得るプロテアソーム活性およびDNA活性を測定するために、放射性医薬品を開発することが適している。プリン構造は、アデニン(
図2)、チオプリンまたはグアニン(
図3)誘導体のいずれかである。技術基盤は、アザチオプリン経路-活性化システムを模擬するキレート剤-チオプリンコンジュゲートを製造するものであった(
図4)。コンジュゲーションに選択されたキレート剤は、サイクラムおよびサイクレンである(
図5)。例えば、サイクラム-アザチオプリン(SC-06-L-1)はアザチオプリン経路を模擬し、CTLAに結合し、CD-28を活性化し、Rac-1シグナリングを阻害する。
図6は、作用-1の推定機構を示す。SC-06はCD-28を活性化するとともにRac-1を阻害し(左)、癌における示差的な反応性結果のための受容体キナーゼ経路にクロストークする(右)。SC-06-L-1もまた、癌における示差的な反応性結果のための受容体キナーゼ経路にクロストークする。
図7は、作用-2の推定機構を示し、チオプリン経路指向システムにおけるDNA/RNA組込みへのSC-06-L1の関与を示す(MP:メルカプトプリン、TG:チオグアニン)。SC-06-L-1は、DNA/RNA組込みにおけるチオプリン経路指向システムをマッピングする。放射性標識されたSC-06化合物により、チオプリン経路指向システムにおける酵素(XO、HPRT、TPMT)の転換を測定する(
図8)。要するに、放射性標識されたキレート剤-チオプリンコンジュケートは、化学療法および放射線治療への反応をモニタリングおよび予測し得る、全身画像における腫瘍標的の正確な測定を可能にし得る。最終的に、キレート剤-プリンプローブにより、より早い段階で無効な治療が中止され得、患者にとって有益であり得る。
【0034】
プリン経路指向システムセラノスティクスのためのプローブとしてのキレート剤-プリンの設計
アデノシン5’-三リン酸(ATP)およびグアノシン5’-三リン酸(GTP)等のヌクレオチドは、DNAおよびRNAの構成単位である。それらは細胞エネルギーおよび細胞内シグナリングを提供するために重要である。より高い細胞内プリンレベルおよび酵素は、腫瘍細胞増殖上方制御下で生合成経路を介して上方制御される。プリンはまた、より複雑な生体分子の中に組み込まれ得、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)等の補因子および補酵素として機能して細胞生存および細胞増殖を促進し得る。
【0035】
チオプリンは、通常のDNAプリンよりも化学的に反応性が高い。例えば、アザチオプリンは、悪性血液疾患、リウマチ疾患、固形臓器移植、および炎症性大腸炎の治療のために、T細胞およびB細胞増殖阻害を伴う免疫抑制剤として使用されている。アザチオプリンはグルタチオンによる還元を通して代謝され、その後に肝臓のキサンチン酸化酵素(XO)によって、その活性代謝物6-メルカプトプリン(6-MP)へと酵素的に転換される。6-MPは、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)によって、6-チオグアノシン-5’-リン酸(6-チオ-GMP)および6-チオイノシン一リン酸(6-チオ-IMP)へさらに代謝され、それらは両方ともヌクレオチド転換およびデノボプリン合成を阻害する。これは、DNA、RNA、およびタンパク質の合成の阻害につながる。最終的に、アザチオプリンはその後に複製中のDNAの中に組み込まれ得、また、プリン合成のデノボ経路を遮断し得る。チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)、キサンチンオキシダーゼ(XO)、およびHPRTは、リンパ球に対する相対的特異性に寄与すると考えられる[34~36]。放射性標識されたキレート剤-アザチオプリンコンジュゲートは、m-RNAおよび酵素(XO、HPRT、TPMT)のDNA経路におけるグアニンへの相互変換に関与するため、細胞増殖活性を評価するための選択肢であり得、サロゲートバイオマーカーとして機能し得る(
図8)。加えて、よりよい治療計画が設計され得るように、分子の選択は、放射性医薬品の生物学的挙動によってだけでなく、準備の容易さによって、および患者から集まる腫瘍における変化を定量するためのソフトウェアを有するリアルタイムにイメージングする設備によっても、決定されるのがよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、例えば、キレート剤は窒素含有テトラアザ環でもよい。特に、窒素含有テトラアザ環は、例えば、サイクラム、サイクレン、サイクラム-カルボン酸、またはサイクレン-カルボン酸でもよいが、本発明はこれらに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態において、プリンリガンドは、例えば、チオプリンリガンドまたはニトロイミダゾールチオプリンリガンド、またはグアニンリガンドでもよい。いくつかの実施形態において、プリンリガンドは、例えばアザチオプリンを含んでもよい。しかしながら、本発明はこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、プリンリガンドは、以下に詳細に記述されるスペーサーヒドロキシ基を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、化合物は金属イオンをさらに含む。特に、金属イオンは、例えば、放射性核種、非放射性金属、またはそれらの組み合わせでもよい。
いくつかの実施形態において、放射性核種は、例えば、99mTc、67、68Ga、60、61、62、64、67Cu、111In、166Ho、186、188Re、90Y、177Lu、223Ra、225Ac、および89Zr、117mSn、153Sm、89Sr、59Fe、212Bi、211At、45Ti、またはこれらの組み合わせでもよい。いくつかの他の実施形態において、非放射性金属は、例えば、テクノチウムイオン(Tc)、スズイオン(Sc)、銅イオン(Cu)、インジウムイオン(In)、テルミウムイオン(Tl)、ガリウムイオン(Ga)、ヒ素イオン(As)、レニウムイオン(Re)、ホルミウムイオン(Ho)、イットリウムイオン(Y)、サマリウムイオン(Sm)、セレニウムイオン(Se)、ストロンチオムイオン(Sr)、ガドリウムイオン(Gd)、ビスマスイオン(Bi)、鉄イオン(Fe)、マンガンイオン(Mn)、ルテシウムイオン(Lu)、コバルトイオン(Co)、プラチナイオン(Pt)、カルシウムイオン(Ca)、ロジウムイオン(Rh)、ユウロピウムイオン(Eu)、およびテルビウルイオン(Tb)、またはこれらの組み合わせでもよい。しかしながら、本発明はこれらに限定されない。本発明の一つの具体的な実施形態において、化合物は99mTc-サイクラム-アザチオプリンアナログでもよい。本発明の別の具体的な実施形態において、化合物は99mTc-サイクレン-アザチオプリンアナログでもよい。
【0039】
本発明の化合物は、細胞表面のヌクレオシド輸送体を通してプロテアソーム過剰発現を識別するために使用され得ることに言及しておく。放射性標識されたプリンリガンドにより、細胞増殖を定量して癌の病期分類および再病期分類することが可能なだけでなく、治療への最適な反応のために患者を選択すること、および耐性が発生したときに治療を中止することが可能である。言い換えれば、化合物の構造に起因して、化合物は、能動輸送戦略によってプロテアソーム(XO、HPRT、TPMT)結合ポケットに対して薬品を定量し得、それによって、薬品耐性を克服する。
【0040】
本発明はさらに、化合物を合成する方法を提供する。合成方法のステップは以下に詳細に記述されるが、本発明はこれに限定されない。
いくつかの実施形態において、ジブロモヒドリンは、例えば四環式環にまずコンジュゲートされる。言い換えれば、モノブロモヒドリンはプリンリガンドに付着される。いくつかの実施形態において、プリンリガンドは、例えばアンタゴニストのアザチオプリンでもよい。従って、ヒドロキシ基は、最終生成物におけるキレート剤-アザチオプリンコンジュゲートに配置される。いくつかの実施形態において、テトラアザ環キレート剤は、例えばサイクラムまたはサイクレンでもよい。しかしながら、本発明はこれらに限定されない。ヒドロキシ基はプリンリガンドの脂肪族鎖に位置付けられることに注意されたい。
【0041】
いくつかの実施形態において、混合の方法は、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエチルアミン、またはこれらの混合物等の有機溶剤の中で実施され得る。いくつかの実施形態において、キレート剤の窒素基のうち1つ、2つ、または3つは、例えばtert-ブチルまたはベンジル基によって保護されてもよく、保護されなくてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は少なくとも一つの精製ステップをさらに含んでもよい。本発明のいずれの化合物も、当業者に知られる任意の方法によって精製され得る。当業者は、このような方法、およびこれらの方法が使用されるときを熟知している。例えば、特定の化合物に到達することを目標にした複数ステップの合成において、精製ステップは、各合成ステップの後に、数ステップ毎に、合成の間の様々な時点に、および/または合成の一番最後に、実施され得る。いくつかの実施形態において、一つ以上の精製ステップは、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC、およびLCからなる群から選択された技術を含む。ある実施形態において、精製方法は、サイズ排除クロマトグラフィーおよび/または透析を明確に除外する。有機溶剤中で化合物を合成する方法および保護基の使用により、化合物の精製における改善が典型的に提供されることに留意されたい。保護基の導入により、合成中の中間体の様々な官能基の保護が可能となり、これらの中間体の精製が容易になる。有機溶剤を使用した精製の様々な方法により、不純物を極わずかしか含まない、イメージング剤等の所望の化合物の分離および単離が可能となる。従って、より効率的な方法で得られるより高純度の部位特異的コンジュゲートを可能にするために、有機合成技術を開発することが適している。
【0043】
本発明の一つの具体的な実施形態において、ヒドロキシプロリル-サイクラムまたはヒドロキシプロリル-サイクレンは、合成経路を使用して一つの窒素基にてアザチオプリンにコンジュゲートされる。この場合、ヒドロキシ基は、最終生成物に組み込まれる。保護されたキレート剤は、ジブロモヒドリンを反応させてキレート剤-ブロモヒドリンコンジュゲートを形成するように使用される。技術基盤は、アンタゴニストおよびアゴニストのコンジュゲートを利用し、様々な種類の病気における効果が見込まれる。言い換えれば、各患者の病気に関連付けられたDNA増殖へのプリンの酵素転換の個人の遺伝的構成に基づいて、個別の技術基盤が設計され得る。他の態様において、これらの合成方法は、プリンアナログに保護基を付加することの必要性を取り除き、プロセス効率および最終生成物の純度を上昇させ得る。
【0044】
加えて、いくつかの実施形態において、上述された化合物を含む薬剤処方またはキットが提供される。他の態様において、化合物は、当業者に知られた化学的手順を使用して薬剤処方またはキットにおいて、さらに調製され得る。いくつかの実施形態において、薬剤処方またはキットは、例えば、抗酸化物質、安定化剤、保存料、または塩をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、薬剤処方またはキットは、例えば、アスコルビン酸、マンニトール、塩化スズ(II)、およびキレート剤-アザチオプリンコンジュゲートを含み得る。いくつかの態様において、薬剤処方またはキットは、例えば、水溶液、または凍結および/または凍結乾燥された溶液でもよい。本明細書において、「キット」は、分子イメージングの分野において「コールドキット」または「製剤原料」とも称される。
【0045】
さらに、本発明は、所与の対象における病気の部位にてイメージングする方法を正確に提供して、治療毎/治療後に評価を行い、対象が治療中であるか、抗エストロゲンによる治療下にある限りはその対象をモニタリング可能である。ある態様において、方法は、個々の対象の病気の部位にて放射性核種標識されたキレート剤コンジュゲートによって生成されたシグナルを検出することを含み、病気の部位は、存在するならば、その組織の周りよりも強烈なシグナルを生成する。いくつかの態様において、金属イオンは、放射性核種、および当業者に知られたいかなる放射性核種でもよい。いくつかの実施形態において、放射性核種は、例えば、99mTc、67、68Ga、60、61、62、64、67Cu、111In、166Ho、186、188Re、90Y、177Lu、223Ra、225Ac、および89Zr、117mSn、153Sm、89Sr、59Fe、212Bi、211At、および45Tiを含むが、本発明はこれらに限定されない。他の態様において、金属イオンは非放射性金属でもよい。いくつかの実施形態において、イメージングされる部位は、腫瘍、またはXO、HPRT、およびTPMT過剰発現組織等のプロテアソーム濃縮組織でもよい。いくつかの実施形態において、方法は、上述の化合物の投与を含む、癌、関節リウマチ、または骨髄疾患のイメージング方法と定義されてもよい。一つの具体的な実施形態において、方法は対象内の部位をイメージングする方法と定義されて、その部位に局在する金属イオン標識されたキレート剤-プリンリガンドコンジュゲートからのシグナルを検出することを含んでもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、シグナルは、例えばPET、PET/CT、SPECT、SPECT/CT、PET/MRI、SPECT/MRI、および核イメージング装置による光学イメージングハイブリッドからなる群から選択された技術を使用して検出されてもよい。他の実施形態において、画像は、例えばガンマ画像、PET画像、PET/CT画像、SPECT画像、SPECT/CT画像、PET/MRI画像、SPECT/MRI画像、またはハイブリッド画像でもよい。上述の化合物は、イメージングのためのキットとして作成されてもよく、イメージング用量はキットとして規定されることに注意されたい。さらに、方法は、癌またはクロマチン不安定疾患を有する対象を治療する方法とさらに定義されてもよい。特定の態様において、癌は、例えば乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、リンパ腫、または子宮内膜癌であるが、本発明はこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、方法は、例えば上述の化合物の投与を含む、癌、関節リウマチ、骨髄疾患、アテローム性動脈硬化、または子宮内膜組織の治療方法と定義されてもよい。言い換えれば、対象に金属イオン標識されたキレート剤-プリンリガンドコンジュゲートを投与することを含む、対象内の部位のイメージング、病気の診断、または病気の治療の方法が提供され、部位がイメージングされ、病気が診断され、または病気が治療される。
【0047】
一方、本発明の化合物は、分子イメージングおよび治療に応用され得る。例えば、本発明の化合物は、分子核イメージング剤として使用され得る。特に、分子核イメージング剤は、治療的介入の包括的な特性評価を可能にし、患者選択、薬物動態、用量設定、および概念実証研究において使用され得る。計装開発に並行した、プリン画像により誘導される細胞治療アプローチにおける試みは、治療への患者の反応の結果評価においてより包括的であり得る。さらに具体的に、キレート化を使用する分子イメージング剤は、放射化学的吸収のバッチ間の再現性、純度、生産コスト、および日常的臨床診療における薬剤の利用可能性において利点を提供する。
【0048】
加えて、本発明の技術基板は、金属イオン、キレート剤、およびプリンリガンドを一体化する。プリンリガンドは、細胞表面輸送体と細胞内プロテアソームとの間をクロストークすることによって二役を果たすホーミング剤として使用され、従って、ホーミング剤の細胞取り込みを強化し得る。このようなプリンに基づくイメージングは、プリン経路指向治療反応をモニタリングすること、および最適な治療反応のために患者の選択を予測することに役立ち得る。この場合、ヒドロキシ基はキレート剤-アザチオプリンコンジュゲート内の脂肪族スペーサーにおいて組み込まれ、組織変性、炎症、および増殖性疾患をもたらす経路活性化酵素システムにおける動的変化を理解するために、ならびに患者の診断、治療および予後を改善するために、革新的ツールによる診断イメージングの間のリン酸化反応を許容した。しかしながら、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
本発明の化合物がイメージングに適合することを証明し、癌治療に使用されるために、本発明の化合物は、以下の実施例に記述される方法を使用することによって合成および試験される。
【0050】
実施例1 化合物SC-06-L-1の合成
この実施例において、本発明のSC-06-L-1を3つの具体的なステップにて合成した。合成スキームは
図9に示される。全ての化合物をNMR、質量分析計、およびHPLCによって分析した。NMRデータは、5mm PFGトリプル
1H-
13C-
15Nプローブ、5mm PFG
1H-
19C-
15N-
31P切り替え可能プローブ、および4mm
1H-
13Cナノプローブを備え付けられた500MHz Varian Inova NMRスペクトロメーター(Palo Alto、カルフォルニア州)から収集した。質量分析計はBruler Solarix(ドイツ)から入手された。HPLCデータは、PC HILICカラム(5μm、2.0mm I.D.×150mm)を備え付けられたWaters 2695 Separations Module(Milford、マサチューセッツ州)から収集した。
【0051】
ステップ1 保護されたサイクラム-ブロモヒドリンコンジュゲート(化合物2)の合成
【0052】
【0053】
ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、7.34mL、42.16mmol)を、トリBOC保護された化合物1(1.41g、2.81mmol)およびアセトニトリル(MeCN、20mL)の溶液に室温(r.t.)で滴下した。混合物をr.t.で30分間攪し、その後に1,3-ジブロモ-2-プロパノール(2.87mL、28.11mmol)を滴下した。反応物を18時間灌流にて温め、攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、溶剤を減圧下で取り除いた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン、1/1)によって精製し、白色固体として化合物2(869.8mg、1.36mmol、49%)を得た。
【0054】
ステップ2 保護されたサイクラム-ヒドロキシプロリル-アザチオプリンコンジュゲート(化合物3)の合成
【0055】
【0056】
炭酸セシウム(Cs2CO3、54.5mg、0.17mmol)を、アザチオプリン(23.2mg、0.08mmol)およびジメチルホルムアミド(DMF、5mL)の溶液にr.t.にて加えた。混合物をr.t.にて30分間攪拌し、DMF(3mL)中の化合物2(106.7mg、0.17mmol)の溶液を滴下した。反応物を温め、100℃にて18時間攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、EA(150mL)を反応物へ加え、反応物を水で3回抽出した(150mL×3)。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過および濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(メタノール中5%酢酸エチル)によって精製し、黄色固体として化合物3(24.3mg、0.03mmol、35%)を得た。
【0057】
ステップ3 サイクラム-ヒドロキシプロリルーアザチオプリンコンジュゲート(化合物SC-06-L-1)の合成
【0058】
【0059】
トリフルオロ酢酸(TEA、3mL)を、アイスバス中でジクロロメチル(CH
2C
l2、6mL)に溶解した化合物3(96mg、0.12mmol)の溶液に滴下した。混合物をr.t.にて18時間攪拌した。溶媒および試薬を減圧下にて取り除いた。粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィーによって精製し、白色固体としてSC-06-L-1(80.5mg)を得た。化合物SC-06-L-1の構造を
1H-NMRおよび
13C-NMRによって確認し、分析結果は、それぞれ
図10から
図11に示す。また、化合物SC-06-L-1を質量分析計およびHPLCを使用して分析し、結果は
図12および
図13に示す。
【0060】
実施例2 化合物SC-06-L-2の合成
この実施例において、本発明のSC-06-L-2を3つの具体的なステップにおいて合成した。合成スキームは
図14に示される。
【0061】
ステップ1 保護されたサイクラム-ブロモプロピルコンジュゲート(化合物2)の合成
【0062】
【0063】
ジイソプロピルエチルアミン(2mL、11.48mmol)を化合物1(385.3g、0.77mmol)およびアセトニトリル(8mL)の溶液にr.t.で滴下した。混合物をr.t.で30分間攪拌し、1,3-ジブロモプロパン(0.78mL、7.69mmol)を滴下した。反応物を18時間灌流にて温め、攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、溶剤を減圧下で取り除いた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EA/ヘキサン、1/2)によって精製し、白色固体として化合物2(270.5mg、0.435mmol、57%)を得た。
【0064】
ステップ2 保護されたサイクラム-プロピル-アザチオプリンコンジュゲートの合成
【0065】
【0066】
炭酸セシウム(178.2mg、0.55mmol)をアザチオプリン(79.5mg、0.29mmol)およびDMF(2mL)の溶液にr.t.にて加えた。混合物をr.t.にて30分間攪拌し、DMF(4mL)中の化合物2(340mg、0.55mmol)の溶液を滴下した。反応物を温め、100℃にて18時間攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、EA(150mL)を反応物へ加え、反応物を水で3回抽出した(150mL×3)。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過および濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(メタノール中5%EA)によって精製し、黄色固体として化合物3(177.4mg、0.22mmol、76%)を得た。
【0067】
ステップ3 サイクラム-プロピル-アザチオプリンコンジュゲート(化合物SC-06-L-2)の合成
【0068】
【0069】
トリフルオロ酢酸(3mL)を、アイスバス中の化合物3(177.4mg、0.22mmol)およびジクロロメタン(6mL)の溶液に滴下した。混合物をr.t.にて18時間攪拌した。溶媒および試薬を減圧下にて取り除いた。粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィーによって精製し、白色固体としてSC-06-L-2(80.8mg)を得た。化合物SC-06-L-2の構造を
1H-NMRおよび
13C-NMRによって確認し、分析結果はそれぞれ
図15から
図16に示す。また、化合物SC-06-L-2を質量分析計およびHPLCを使用して分析し、結果は
図17および
図18に示す。
【0070】
実施例3 化合物SC-06-K-1の合成
この実施例において、本発明のSC-06-K-1を3つの具体的なステップにおいて合成した。合成スキームは
図19に示される。
【0071】
ステップ1 保護されたサイクレン-ブロモヒドリンコンジュゲート(化合物2)の合成
【0072】
【0073】
ジイソプロピルエチルアミン(6.79mL、39mmol)を室温滴下にて、化合物1(1.23g、2.6mmol)およびアセトニトリル(20mL)の溶液に加えた。混合物をr.t.で30分間攪拌し、1,3-ジブロモ-2-プロパノール(2.65mL、26mmol)を滴下した。反応物を18時間灌流にて温め、攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、溶剤を減圧下で取り除いた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EA/ヘキサン、1/1)によって精製し、白色固体として化合物2(863.1mg、1.42mmol、55%)を得た。
【0074】
ステップ2 保護されたサイクレン-ヒドロキシプロリル-アザチオプリンコンジュゲート(化合物3)の合成
【0075】
【0076】
炭酸セシウム(877.7mg、2.69mmol)をアザチオプリン(373.5mg、1.35mmol)およびDMF(5mL)の溶液にr.t.にて加えた。混合物をr.t.にて30分間攪拌し、DMF(4mL)中の2(1.64g、2.69mmol)の溶液を滴下した。反応物を温め、100℃にて18時間攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、EA(150mL)を反応物へ加え、反応物を水で3回抽出した(150mL×3)。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過および濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(メタノール中5%EA)によって精製し、黄色固体として化合物3(278.5mg、0.34mmol、35%)を得た。
【0077】
ステップ3 サイクレン-ヒドロキシプロリル-アザチオプリンコンジュゲート(化合物SC-06-K-1)の合成
【0078】
【0079】
トリフルオロ酢酸(3mL)を、アイスバス中で化合物3(151.8mg、0.19mmol)およびジクロロメタン(6mL)の溶液に滴下した。混合物をr.t.にて18時間攪拌した。溶媒および試薬を減圧下にて取り除いた。粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィーによって精製し、白色固体としてSC-06-K-1(108.8mg)を得た。化合物SC-06-K-1の構造を
1H-NMRおよび
13C-NMRによって確認し、分析結果はそれぞれ
図20から
図21に示す。また、化合物SC-06-L-1を質量分析計およびHPLCを使用して分析し、結果は
図22および
図23に示す。
【0080】
実施例4 化合物SC-06-K-2の合成
この実施例において、本発明のSC-06-K-2を3つの具体的なステップにて合成した。合成スキームは
図24に示される。
【0081】
ステップ1 保護されたサイクレン-ブロモプロピルコンジュゲート(化合物2)の合成
【0082】
【0083】
ジイソプロピルエチルアミン(9.23mL、53mmol)を室温滴下にて、化合物1(1067g、3.53mmol)およびアセトニトリル(15mL)の溶液に加えた。混合物をr.t.で30分間攪拌し、1,3-ジブロモプロパン(3.5mL、35.3mmol)を滴下した。反応物を18時間灌流にて温め、攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、溶剤を減圧下で取り除いた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EA/ヘキサン、1/2)によって精製し、白色固体として化合物2(1.6g、2.65mmol、75%)を得た。
【0084】
ステップ2 保護されたサイクレン-プロピル-アザチオプリンコンジュゲートの合成
【0085】
【0086】
炭酸セシウム(863mg、2.65mmol)をアザチオプリン(367.4mg、1.33mmol)およびDMF(5mL)の溶液にr.t.にて加えた。混合物をr.t.にて30分間攪拌し、DMF(4mL)中の化合物2(1.6g、2.65mmol)の溶液を滴下した。反応物を温め、100℃にて18時間攪拌した。反応物をr.t.まで冷却し、EA(150mL)を反応物へ加え、反応物を水で3回抽出した(150mL×3)。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過および濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(メタノール中5%EA)によって精製し、黄色固体として化合物3(908.5mg、1.15mmol、87%)を得た。
【0087】
ステップ3 サイクレン-プロピル-アザチオプリンコンジュゲート(化合物SC-06-K-2)の合成
【0088】
【0089】
トリフルオロ酢酸(3mL)をアイスバス中で化合物3(454.3mg、0.58mmol)およびジクロロメタン(6mL)の溶液に滴下した。混合物をr.t.にて18時間攪拌した。溶媒および試薬を減圧下にて取り除いた。粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィーによって精製し、白色固体としてSC-06-K-2(247.5mg)を得た。化合物SC-06-K-2の構造を
1H-NMRおよび
13C-NMRによって確認し、分析結果はそれぞれ
図25から
図26に示す。また、化合物SC-06-L-2を質量分析計およびHPLCを使用して分析し、結果は
図27および
図28に示す。
【0090】
実施例5 化合物
99mTc-SC-06アナログの一般的な製造
過テクネチウム酸ナトリウム(Na
99mTcO
4)は、FRI(日本)によって
99Mo/
99mTcジェネレータから得られた。化合物
99mTc-SC-06アナログの標識合成は、化合物SC-06-L-1(1mL水中5mg)および塩化スズ(II)(SnCl
2、0.1mL水中100μg)の凍結乾燥残留物の中に
99mTc-過テクネチウム酸(37MBq(1mCi)、0.14mL)を加えることによって達成された。化合物SC-06アナログの
99mTcとの錯体形成をpH6.5にて5分間実施した。生成物を1mL中に再構成し、0.22umフィルタを通して濾過して確実に無菌状態にした。生理食塩水で溶出するTLC(Waterman No.1、Aldrich-Sigma、セントルイス、ミズーリ州)によって放射化学的純度を決定した。
図29から
図30は、化合物
99mTc-SC-06-K-1およびK-2、本発明の実施例2にて合成された
99mTc-SC-06-L-1およびL-2の純度を示した。これら4つの化合物の放射化学純度は85%以上であり、移動相として生理食塩水を使用してRf値0.1を有した。マウスイメージング研究のために、0.1mL(3.7MBq(0.1mCi)の
99mTc中100ug SC-06-L1)をマウスの中に尾静脈を介して静脈中に投与した。
【0091】
実施例6 インビトロ細胞取り込み研究
肺癌細胞(MDA-MB-231、MCF-7)、OVCAR3(上皮性卵巣癌細胞)、およびTOV-112D(腹水卵巣癌細胞)吸収研究のために6ウェルプレートを使用した。各ウェルには、150μLの血清フリーRPMIの中100,000細胞を入れた。化合物
99mTc-SC-06-Kアナログ(用量:0.1mg/3.7MBq(0.1mCi)/20μL/ウェル)を、培地中の細胞を含む各ウェルに様々な間隔(0~2時間)で加えた。その後に、細胞をよく冷えたリン酸緩衝生理食塩水PBSによって2回洗浄し、0.5mLトリプシン溶液によってトリプシン処理して腫瘍細胞を分離させた。タンパク質濃度アッセイを使用して、各ウェルの中のタンパク質を測定した。細胞をプロテイナーゼ阻害剤(Roche Diagnostic、マインハム、ドイツ)を含む溶解バッファ中に溶解した。細胞溶解物中のタンパク質濃度を、メーカー(Bio-RAD、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、米国)によって記述されたようにブラッドフォード法を使用して定量した。ブラッドフォード染料を蒸留水中に希釈し(1:4)、濾紙(No.1、ワットマン(登録商標)no.1、Advantec Co.Ltd.、東京)を通して濾過した。1000μg/mL、500μg/mL、250μg/mL、125μg/mL、62.5μg/ml、31.25μg/mLの濃度のウシ血清アルブミンを使用して標準曲線を作成した。タンパク質サンプルを溶解バッファ中に1:9で希釈した。希釈されたタンパク質サンプルまたは標準を96ウェル中でブラッドフォード染料に混合し、その後に595nmの吸光度を記録した。細胞および培地中の放射能濃度をガンマカウンター(Packard、コネチカット州)によって測定し、cpm/g細胞およびcpm/g培地として表した。タンパク質質量対培地放射能濃度比を計算して経時的にプロットした。乳癌細胞中のインビトロ細胞/培地比(分布体積)は、
99mTc-SC-06-L1が乳腫瘍をイメージングする潜在性を有する時間依存的パターンでの高い取り込みを有することを示した(
図31)。卵巣癌細胞において、
99mTc-SC-06アナログは、卵巣腫瘍をイメージングする潜在性を有する時間依存的パターンでの高い細胞/培地比を有した(
図32)。
【0092】
実施例7 インビトロ抗癌研究
化合物SC-06-Kアナログの効果を選択して、細胞生死判定アッセイを使用して代表的なマントル細胞株およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株に対して生存率を試験した。様々なヒトリンパ腫細胞に対するSC-06-KアナログのインビトロMTT細胞毒性アッセイにより、SC-06-K-1が用量依存的に癌細胞を阻害したことを示す(
図33)。SC-06-K-1は、様々なヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ種を用量依存的に阻害した(
図34)。
【0093】
実施例8 卵巣腫瘍および乳腫瘍の分子イメージング
無胸腺ヌードマウスにヒト卵巣腫瘍(OVCA-3およびTOV-112d)を前足の両腋窩下に接種した。腫瘍が0.5cmに到達したとき、マウスに
99mTc-SC-06-L1または
18F-FDG(標準)のいずれか一方を投与した。画像は、プラナー/CTまたはPET/MRIによって収集した。解剖学的部位を減衰させるために、CTおよびMRIを使用した。
99mTc-SC-06-L1および
99mTc-SC-06-L2プラナー/CTにより、ヒト卵巣腫瘍(OVCA-3およびTOV-2d)担持無胸腺ヌードマウスにおけるより高い取り込みが明らかになった一方、
18F-FDGは乏しい吸収を有した(
図35)。PET/MRI
18F-FDGに比較して、SC-06化合物は、腫瘍における有意に増加した取り込みを示した。
99mTc-SC-06-L1は、卵巣腫瘍における優れた薬物速度論的特性および高いコントラスト可視化を実証した(
図36)。ヒト卵巣腫瘍担持ヌードマウスにおける
99mTc-SC-06-L1の生物内分布は、OCAR-3腫瘍はTOV-112dよりも多くの取り込みを有した(
図37)。
【0094】
無胸腺ヌードマウスにヒト卵巣腫瘍(MDA-MB231およびMCF-7)を接種した。腫瘍が0.5cmに到達したとき、マウスに
99mTc-SC-06-L1、
99mTc-SC-06-K1、および
18F-FDG(標準)のいずれか一つを投与した(マウスごとに4.44MBq(120uCi)/100uL、n=2/化合物、iv)。30分後にPET/MRI、および1~6時間後にeZ-Scope(登録商標)(安西メディカル株式会社、日本)によって画像を取得した。
99mTc-SC-06-L1および
99mTc-SC-06-K1は、
18F-FDGに比べてMDA-MB231およびMCF腫瘍担持ヌードマウスにおいて高い取り込みを示した(
図38)。
18F-FDGに比較して、SC-06化合物は、腫瘍における有意に増加した取り込みを示した。
99mTc-SC-06-L1は、乳腫瘍における優れた薬物速度論的特性および高いコントラスト可視化を明示した(
図39)。
18F-FDGを接種されたヌードマウスにおいて、0.5時間での腫瘍/筋肉計数密度比は、それぞれ0.25(MDA-MB-231)および0.28(MCF-7)であった(
図40)。しかしながら、1~6時間でのMDA-MB231およびMCF腫瘍の両方における
99mTc-SC-06-L1および
99mTc-SC-06-k1による腫瘍/筋肉計数密度比は、それぞれ2.0~3.2および1.2~2.4の範囲であった(
図39~
図43)。
99mTc-SC-06-K1および
99mTc-SC-06-L1の腫瘍バックグラウンド計数密度比は、両方の腫瘍タイプにおける
18F-FDGよりも高く、
99mTc-SC-06-L1および
99mTcーSC-06-k1が腫瘍検出において
18F-FDGよりもよい感度を有することを示した(
図40~
図42)。MCF-7およびMB-231腫瘍担持動物モデルにおいて、
99mTc-SC-06-L1は
99mTc-SC-06-k1よりもわずかに腫瘍/筋肉計数密度比を示した(
図43)。この発見は、
99mTc-SC-06-K1および
99mTc-SC-06-L1が様々なタイプの腫瘍をイメージングする潜在性を有する、DNA増殖の高感度マーカーであることを示す。
【0095】
要するに、本発明は、プリン経路指向システムにおける酵素転換活性を定量するための化合物を提供する。ヒドロキシ基は、最終生成物に組み込まれる。本発明の化合物において、保護されたブロモヒドリンキレート剤は、チオプリンリガンドを反応させてキレート剤-プリンリガンドコンジュゲートを形成するように使用される。技術基盤は、アンタゴニストおよびアゴニスト(バイオマーカー)のコンジュゲートを利用してもよく、様々な種類の病気における効果が見込まれる。また、化合物は、当業者に知られた化学的手順を使用した薬剤処方およびキットにおいて、さらに調製され得る。加えて、本化合物を合成する方法もまた提供される。さらに、本発明の化合物は、病気に関連付けられたプリン経路をイメージングおよび治療するために使用されてもよい。
【0096】
本開示の範囲または主旨から逸脱することなく、開示された実施形態に様々な修正および変更がなされ得ることは、当業者にとって明らかであろう。上述のことを考慮して、本開示は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等の範囲内にある限り、修正例およびバリエーションを包含することが意図される。
【0097】
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