(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ニードルを備える、皮膚に対して薬剤送達デバイスを固着するためのパッド
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240409BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61M5/142 522
A61M5/20
(21)【出願番号】P 2022561567
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2021057585
(87)【国際公開番号】W WO2021209234
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・ペナ
(72)【発明者】
【氏名】シュエ-イ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】スロボダン・ステファノフ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-525822(JP,A)
【文献】特開2016-154599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部から遠位端部まで軸(30)に沿って延在するパッド(10)であって、前記近位端部は前記パッドの使用時に注射部位に隣接する前記パッドの端部であり、前記パッドが、
薬剤送達デバイス(100、150)を受けるように構成された装着部分(14)と、
前記装着部分に対して装着された第2の装着部分(16)であって、前記パッドの前記近位端部に配置され、前記パッドの使用時に前記注射部位に対して前記パッドを装着するように構成された、第2の装着部分(16)と
を備え
、
前記第2の装着部分(16)はフランジ(12)を備え、
前記装着部分(14)は解除ボタン(20)を備え、
前記解除ボタン(20)は、前記第2の装着部分(16)の前記フランジ(12)上に設けられ、
前記解除ボタン(20)は、前記解除ボタン(20)を作動させることによって前記パッド(10)から前記薬剤送達デバイス(100、150)が外れるように構成されている、パッド(10)。
【請求項2】
前記第2の装着部分は接着部分であり、前記接着部分は、前記パッドの使用時に前記注射部位に対して前記パッドを接着するように構成される、請求項1に記載のパッド。
【請求項3】
前記パッドは薬剤送達部材を備える、請求項1または2に記載のパッド。
【請求項4】
前記薬剤送達部材はカニューレである、請求項3に記載のパッド。
【請求項5】
前記パッドは、前記注射部位中に前記薬剤送達部材を挿入するように構成された挿入機構を備える、請求項3または4に記載のパッド。
【請求項6】
前記挿入機構は、前記注射部位中に前記薬剤送達部材を挿入するためのニードルを備える、請求項3から5のいずれか一項に記載のパッド。
【請求項7】
前記挿入機構の前記ニードルは、前記軸からオフセットされている、請求項3から6のいずれか一項に記載のパッド。
【請求項8】
前記装着部分は、前記薬剤送達デバイスを解除可能に受けるように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のパッド。
【請求項9】
前記装着部分はスライダを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のパッド。
【請求項10】
前記スライダは、第1のアームおよび第2のアームを備え、前記第1のアームおよび前記第2のアームは、相互から離間され、前記第1のアームと前記第2のアームとの間に薬剤送達デバイスを把持するように構成される、請求項9に記載のパッド。
【請求項11】
前記装着部分は、ユーザ操縦部分および薬剤送達デバイス係合部分を備え、前記装着部分は、ユーザが前記ユーザ操縦部分を操縦すると、前記薬剤送達デバイス係合部分が前記薬剤送達デバイスから係合解除できるように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のパッド。
【請求項12】
前記装着部分は、薬剤送達デバイスの特徴部に係合するように構成されたアームを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のパッド。
【請求項13】
前記アームは、前記薬剤送達デバイスの窓フレームに係合するように構成される、請求項12に記載のパッド。
【請求項14】
前記装着部分は、薬剤送達デバイスの長手方向軸が前記軸(30)に対して垂直に延在する状態で前記薬剤送達デバイスを受けるように構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のパッド。
【請求項15】
前記薬剤送達デバイスは自動注射器である、請求項1から14のいずれか一項に記載のパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動注射器などの薬剤送達デバイスに関し、特に注射部位に対して自動注射器などの薬剤送達デバイスを装着するためのパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの病状が注射を必要とする。近年は、様々なタイプのペンインジェクタ、自動注射器、およびオンボディデバイスを含む多数の様々な注射デバイスが存在する。これらのデバイスの多くは多数の病状の管理において大きな改善をもたらすことが可能であるが、現行の技術においては依然として様々な制約が存在している。その中でも特に、頻繁に注射を必要とする患者や特に粘性の高い薬物を注射する必要のある患者が直面する問題がある。これらの問題を考慮して、本出願人は、今日市場に存在している薬剤送達デバイスの改善を促すために様々な展開をなし得ると認識しており、以降においてそれらをさらに詳細に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/123024号パンフレット
【文献】国際公開第2020/058069号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、添付の特許請求の範囲により定義される。以降では、この特許請求の範囲を参照とする。
【0005】
本開示において、「遠位方向」という用語が使用される場合、これは、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスの使用の最中に注射部位または用量送達部位から離れる方向を向いた方向を示す。「遠位部分/遠位端部」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達デバイスの使用下において用量送達部位から最も遠く離れて位置する送達デバイスの部分/端部または送達デバイスの部材の部分/端部を示す。またこれに対応して、「近位方向」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達デバイスの使用の最中に用量送達部位に向かう方向を示す。「近位部分/近位端部」という用語が使用される場合、これは、薬剤送達デバイスの使用下において用量送達部位に対して最も近くに位置する送達デバイスの部分/端部または送達デバイスの部材の部分/端部を示す。
【0006】
さらに、「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」、および「軸方向の」という用語は、近位端部から遠位端部まで、典型的にはデバイスおよび/または構成要素の最長の長さ方向にデバイスまたはその構成要素に沿って延在する方向を示す。
【0007】
同様に、「横の」、「横軸の」、および「横方向に」という用語は、長手方向に対してほぼ垂直である方向を示す。
【0008】
これらの方向用語は、例えばパッドなどの他の構成要素を説明するためにも使用されており、例えばパッドの近位端部は、用量送達部位(注射部位)の最も近くに位置するパッドの部分であり、パッドの遠位端部は、用量送達部位から最も遠くに位置するパッドの部分である。図面では、長手方向は軸30の方向であり、また軸30に対して対応する周方向31および径方向32も示されている。薬剤送達デバイスおよび/または構成要素の近位端部および遠位端部もまた、近位端部50および遠位端部52として示される。
【0009】
本願で「注射部位に」または「用量送達部位に」という語が使用される場合、これは概して、薬剤送達デバイス(例えばニードル)が患者内に進入する箇所と、例えばパッドが装着される領域などの周辺領域とを示す。
【0010】
本発明の一態様は、近位端部から遠位端部まで軸に沿って延在するパッドを備える。近位端部は、パッドの使用時に注射部位に隣接するパッドの端部である。このパッドは、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスを受けるように構成された装着部分と、この装着部分に対して装着された第2の装着部分とを備える。第2の装着部分は、パッドの近位端部に配置され、第2の装着部分は、パッドの使用時に前記注射部位に対してパッドを装着するように構成される。これにより、自動注射器が注射の最中にハンズフリーになり得るため、注射の実施に長時間をかける(例えば15秒超、30秒超、例えば1~15分の間などの1分超など)自動注射器を実現することが可能となる。例えば、米国のFDA(食品医薬品局)は、自動注射器が薬物の注射にかける最大許容時間を設定しており、ハンズフリー自動注射器は、より長い注射時間を可能にすることができる。
【0011】
一実施形態では、第2の装着部分は接着部分であり、この接着部分は、パッドの使用時に前記注射部位に対してパッドを接着するように構成される。
【0012】
一実施形態では、装着部分はパッドの遠位端部に位置する。代替的には、薬剤送達デバイスは、パッドの側部に対しても装着することが可能である(薬剤送達デバイスの長手方向軸を注射部位の表面に対して平行にする)。
【0013】
一実施形態では、パッドの接着部分はフランジを備え、このフランジは、装着部分よりも軸から径方向へとより遠方に延在する。フランジは、大きな接着面積を提供することが可能であり、したがってより注射部位に対して強力な装着を実現することが可能である、および/または例えば自動注射器を作動させるためなどに注射部位に向かって薬剤送達デバイスを押す圧力を拡散することによりユーザ/患者に対してより高い快適性を提供することが可能である。典型的には、フランジは、一方の面においてパッドの装着部分に対しておよび他方の面で接着剤に対して装着される。一実施形態では、フランジは可撓性を有する。これは、注射部位の形状に従うように撓曲することにより注射部位に対してパッドを装着するのを補助し得る。一実施形態では、フランジは、軸に対してほぼ垂直または垂直に延在する。
【0014】
一実施形態では、接着部分は接着層を備える。一実施形態では、接着部分は、接着層を覆う接着層カバーを備える。
【0015】
一実施形態では、装着部分は管状部分を備える。管状部分は、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスを受けるように構成され得る。管状部分は、薬剤送達デバイスを支持するのを補助し得る。
【0016】
一実施形態では、パッドは薬剤送達部材を備える。これは、複数の利点を提供し得る。例えば、これは、次々と間をおかずに、または代替的には例えば数時間、数日間、もしくはさらには10日間などの時間間隔にわたって分散するかのいずれかで、複数回の注射を行うことを可能にし得る。パッドは、例えば最大で3日間または最大で10日間など、同一位置に留置することが可能である。薬剤送達部材がパッド内に位置することにより、薬剤送達部材を有さない薬剤送達デバイスを許容することが可能となり、これにより例えば特に器用さおよび/または視力に問題を有するユーザにおける針刺し損傷を低下させることが可能となる。これは、パッド上の同一の薬剤送達部材による複数回の注射を実施することを可能にするため、必要とされる新規注射の回数を減らすことができ、同一の注射部位を再度使用することを回避するために最後の注射部位の位置をユーザが記憶しておかなければいけない事態を回避させることができる。また、これにより、薬剤送達デバイスの使用がより簡単になる、および/または薬剤送達デバイスの設計がより単純なものになり得る。例えば、針刺し損傷から保護するための薬剤送達デバイス上の保護カバーもしくは保護ガードまたは収納可能カバーもしくは収納可能ガードが不要となり得る。パッドの再利用により、場合によっては廃棄物を削減することが可能となる。これにより、薬剤送達部材が比較的固定された距離だけ注射部位内に延在することによって、注射深さのばらつきを軽減することが可能となる(一方でシリンジまたは自動注射器では、例えばユーザがニードルを完全には挿入せず、痛みを伴う皮内注射に終始してしまう場合がある)。
【0017】
一実施形態では、薬剤送達部材は、例えば軟質カニューレまたは可撓性カニューレなどのカニューレである。これは、例えば金属ニードルなどの剛性ソリューションよりも高い快適性を有し得る。一実施形態では、パッドは、注射部位中に薬剤送達部材を挿入するように構成された挿入機構を備える。一実施形態では、挿入機構は、注射部位中に薬剤送達部材を挿入するためのニードルを備える。一実施形態では、挿入機構のニードルおよび/または例えばカニューレなどの薬剤送達部材は、軸からオフセットされている。一実施形態では、装着部分および挿入機構のニードルは、軸に対して径方向に離間される。一般的に、この軸は、例えばパッドの装着部分の中心を貫通してなど、薬剤送達デバイスがパッド内の定位置にある場合に薬剤送達デバイスが芯合わせされる位置にてパッドを貫通して延在するものとしてみなすべきである。このように構成要素同士を離間させるまたはオフセットさせることにより、構成要素同士が同軸状である解決策と比較して、軸方向におけるパッドの幅を縮小することが可能となり、これにより衣服の下で皮膚上にパッドを保持することがより現実的になり得る。なぜならば、この場合に、例えば装着部分および挿入機構は、軸方向において相互に重畳することが可能になるからである。
【0018】
一実施形態では、パッドは、薬剤送達デバイスの薬剤送達容器を穿刺するように構成された挿入ニードルまたは薬剤容器挿入ニードルを備える。一実施形態では、挿入ニードルは、注射部位中に薬剤送達部材を挿入するためのニードルから離間される。一実施形態では、パッドは、薬剤送達デバイス挿入ニードルと薬剤送達部材との間に延在するチューブを備える。
【0019】
一実施形態では、装着部分は、薬剤送達デバイスを解除可能に受けるように、またはパッドに対して自動注射器を除去可能に装着するように構成される。これにより、パッドおよび/または自動注射器は、例えばそれらを個別に処分するためにまたはパッドの除去を伴わない自動注射器の除去を可能にするために(それによりパッドは後の次の注射のために留置されることが可能となる)など、注射後の分離が可能となる。これは、例えば患者が複数の自己免疫疾患、糖尿病(インスリン)、および/または成長ホルモン欠損症を患っている場合などの、患者が頻繁な注射(例えば毎日もしくは1日に複数回など)を必要とする病状を患う場合に、または患者が複数の病状を患いしたがって複数の注射を次々と受ける必要がある場合に、特に有用となり得る。
【0020】
一実施形態では、装着部分は摩擦ロックを備える。一実施形態では、装着部分は、作動された場合にパッドから薬剤送達デバイスを解除する解除機構を備える。一実施形態では、解除機構はボタンまたはスライダを備える。
【0021】
一実施形態では、装着部分はスライダを備える。一実施形態では、スライダは、第1のアームおよび第2のアームを備え、第1のアームおよび第2のアームは、相互から離間され、第1のアームと第2のアームとの間に薬剤送達デバイスを把持するように構成される。一実施形態では、第1のアームは、第1の端部および第2の端部を有し、第2のアームは、第1の端部および第2の端部を有し、第1のアームの第1の端部は、第2のアームの第1の端部に対して装着され、第1のアームの第2の端部および第2のアームの第2の端部は、相互から離間される。一実施形態では、これらのアームは、アームの一方の端部のみにて共に接合される。
【0022】
一実施形態では、第1のアームおよび第2のアームは、第1のアームおよび第2のアームの第2の端部同士が相互に対して移動し得るように可撓性を有する。一実施形態では、第1のアームおよび第2のアームは、ロック位置および解除位置を形成するように構成される。一実施形態では、ロック位置および解除位置はそれぞれ、アーム同士の間に開口を描画し、解除位置の開口のアーム同士の間の距離は、ロック位置の開口のアーム同士の間の距離よりも長い。一実施形態では、これらの開口は円形である。一実施形態では、装着部分はハウジングを備え、スライダはハウジング内部に配置される。
【0023】
一実施形態では、装着部分は、ユーザ操縦部分および薬剤送達デバイス係合部分を備え、装着部分は、ユーザがユーザ操縦部分を操縦すると、薬剤送達デバイス係合部分が前記薬剤送達デバイスから係合解除できるように構成される。
【0024】
一実施形態では、ユーザ操縦部分は、軸の周囲に延在する可撓性セクションを備え、装着部分は、ユーザが可撓性セクションの形状を変更した場合に(例えばハンドル同士を圧迫することにより)、薬剤送達デバイス係合部分の少なくとも一部分が軸からより遠くに移動されるように構成される。
【0025】
一実施形態では、可撓性セクションは、可撓性楕円形セクションであり、装着部分は、可撓性セクションの形状の変化により可撓性楕円形セクションの楕円性が低下するように構成される。一実施形態では、ユーザ操縦部分は、1つまたは複数のアームにより薬剤送達デバイス係合部分に対して装着される。一実施形態では、薬剤送達デバイス係合部分は、前記薬剤送達デバイス上の対応する突出部または溝に係合するように構成された溝または突出部を備える。
【0026】
一実施形態では、装着部分は、薬剤送達デバイスの特徴部に係合するように構成されたアームを備える。一実施形態では、アームは、軸に対して実質的に平行にまたは平行に延在する。一実施形態では、アームは、前記薬剤送達デバイスの窓フレームに係合するように構成される。一実施形態では、アームは、軸に対して垂直に延在する突出部を備える。一実施形態では、突出部は、前記薬剤送達デバイスの窓フレームに係合するように構成される。一実施形態では、装着部分は、ハンドルと、ハンドルに対して装着された係合部分とを備え、係合部分は、ハンドルが軸に向かって押された場合に、係合部分が薬剤送達デバイスから解除されるように、前記薬剤送達デバイスの装着部分に対して解除可能に装着されるように構成される。一実施形態では、係合部分は軸とハンドルとの間に位置する。
【0027】
一実施形態では、装着部分は、第1のハンドル、第2のハンドル、第1の係合部分、および第2の係合部分を備える。第1の係合部分および第2の係合部分はそれぞれ、前記薬剤送達デバイスの装着部分に解除可能に係合するように構成され、第1のハンドルは、第1の係合部分に対して装着され、第2のハンドルは、第2の係合部分に対して装着される。第2のハンドルに向かって第1のハンドルを押すことにより、前記薬剤送達デバイスの装着部分から係合部分が解除される。一実施形態では、第1の係合部分は、軸と第1のハンドルとの間に位置し、第2の係合部分は、軸と第2のハンドルとの間に位置する。一実施形態では、軸に向かってハンドルを押すことにより、係合部分の少なくとも一部分が軸に対して周方向に移動される。
【0028】
一実施形態では、装着部分は、薬剤送達デバイスの長手方向軸が軸(30)に対して垂直に延在する状態でこの薬剤送達デバイスを受けるように構成される。一実施形態では、装着部分は、管状部分を備え、管状部分の長手方向軸は、軸(30)に対して垂直に延在する。一実施形態では、パッドは薬剤送達部材を備え、装着部分はボタンを備え、ボタンを押すことにより薬剤送達部材が近位方向に移動される。一実施形態では、パッドは、弾性部材およびハウジングを備え、弾性部材は、ハウジングとボタンとの間に延在する。一実施形態では、パッドは、ハウジングを備え、カニューレを備える薬剤送達部材ハウジングを備え、薬剤送達部材ハウジングは、ハウジング内に配置される。一実施形態では、薬剤送達部材ハウジングは、チャネルを備え、チャネルは、ボタンが押される前は装着部分に整列されず、ボタンが押された後に装着部分に整列される。一実施形態では、パッドは、ボタンが押された後に初めて薬剤送達が行われ得るように構成される。一実施形態では、パッドは、ガスキャニスタと、カートリッジに係合するように構成されたプランジャロッドとを備え、ガスキャニスタの作動により、プランジャロッドが前記カートリッジからの薬剤の放出を結果的に行う。
【0029】
本発明の別の態様では、上述のようなパッドを備える薬剤送達部材ガードが提供される。本発明の別の態様では、薬剤送達部材ガードを備える薬剤送達デバイスが提供される。別の態様では、上述のようなパッドおよび薬剤送達デバイスを備える装置が提供される。一実施形態では、薬剤送達デバイスはガードを備える。一実施形態では、ガードは、薬剤送達部材ガードまたは膜ガードである。一実施形態では、薬剤送達デバイスは、パッドの装着部分に係合するように構成された突出部または凹部を備える。一実施形態では、薬剤送達デバイスはハウジングを備え、突出部または凹部はハウジング上に位置する。一実施形態では、薬剤送達デバイスは窓フレームを備え、パッドの装着部分は窓フレームに係合するように構成される。
【0030】
一実施形態では、薬剤送達デバイスは自動注射器である。一実施形態では、薬剤送達デバイスは薬剤容器を備える。一実施形態では、薬剤送達デバイスが薬剤送達部材を備える。
【0031】
本発明の別の態様では、ハウジングを備える自動注射器が提供される。ハウジングは、装着部分を備え、装着部分は、上述のようなパッド上の対応する装着部分に係合するように構成される。
【0032】
本発明の別の態様は、注射を実施する方法に関する。この方法は、注射部位に対してパッドを装着するステップと、パッドに対して自動注射器を装着するステップと、注射部位から自動注射器を除去するステップとを含む。一実施形態では、この方法は、注射部位からパッドを除去するステップをさらに含む。一実施形態では、注射は、自動注射器がパッドに対して装着されると自動的に開始される。一実施形態では、自動注射器およびパッドは、注射部位から共に除去される。一実施形態では、自動注射器がパッドから除去され、その後にパッドが注射部位から除去される。
【0033】
本発明の別の態様は、注射を実施する方法に関する。この方法は、用量送達部位に対してパッドを装着するステップと、パッドに対して薬剤送達デバイスを装着するステップと、用量送達部位中に薬剤を注射するステップと、薬剤送達デバイスを除去するステップとを含む。一実施形態では、用量送達部位に対してパッドを装着するステップが、パッドを装着し、用量送達部位中に薬剤送達部材を挿入することからなる。一実施形態では、パッドは上述のようなパッドである。
【0034】
本発明の別の態様は、注射を実施するために薬剤送達部位に対して薬剤送達デバイスを装着するように構成されたパッドに関する。このパッドは、薬剤送達部位にパッドを装着するための接着剤と、薬剤送達部位に薬剤送達デバイスを保持するように構成された装着部分とを備える。一実施形態では、薬剤送達デバイスは、自動注射器または薬剤カートリッジである。一実施形態では、パッドは、注射の期間中に薬剤送達部位に薬剤送達デバイスを保持するように構成される。一実施形態では、パッドは、注射が開始されると注射がハンズフリーで進行し得るように、薬剤送達デバイスを支持するように構成される。
【0035】
本発明の別の態様は、ユーザに対して自動注射器を装着するためのパッドに関する。このパッドは、薬剤送達部位に対して装着するための接着部分と、接着部分に対して装着されたハウジングとを備える。ハウジングは、装着部分を備え、この装着部分は、パッドに対して自動注射器を装着するためのものである。一実施形態では、パッドは、自動注射器がハンズフリーで使用され得るように自動注射器に対して装着される。
【0036】
本発明の別の態様は、薬剤をハンズフリー注射する方法に関する。この方法は、用量送達部位に対してパッドを装着するステップと、パッドに対して薬剤送達デバイスを装着するステップと、薬剤送達デバイスがパッドに対して装着される間に、薬剤送達部位中に薬剤を注入するステップと、薬剤送達デバイスを除去するステップとを含む。
【0037】
一般的には、本特許請求の範囲において使用される用語はいずれも、本明細書において別様のことが明示されない限りは、当技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。要素、装置、部材、構成要素、手段等への言及はいずれも、別様のことが明示されない限り、その要素、装置、部材、構成要素、手段等の少なくとも1つの例への言及としてオープンな解釈がなされるべきである。
【0038】
以下、単なる例として、および添付の図面を参照として、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】
図1のパッドおよび自動注射器の側面図である。
【
図3】自動注射器の一部を伴う、パッドの一部が透明で図示されたパッドの近位方向における断面図である。
【
図4】
図3のパッドおよび自動注射器の斜視断面図である。
【
図5】パッドおよび自動注射器の一部の側方断面図である。
【
図6】
図5のパッドおよび自動注射器の近位方向における断面図である。
【
図9】
図8の自動注射器のニードルガードの斜視図である。
【
図10】
図8の自動注射器のハウジングの斜視図である。
【
図11】
図9のニードルガードの面A-Aからの近位方向における断面図である。
【
図12】軸に向かって見た場合の、
図11の面B-Bに沿った
図8の自動注射器の側方部分断面図である。
【
図13】
図12と同一であるが、ハウジングおよびパッドの装着部分同士が相互に装着された状態にある図である。
【
図14】パッドを備える自動注射器の側面図である。
【
図15】ハウジングの装着部分の位置がパッドの背後に示された、
図14の自動注射器の側面図である。
【
図16】パッドは完全に示されるがハウジングは断面において示された、
図14の自動注射器の異なる側面図である。
【
図18】
図14の自動注射器の近位方向における断面図である。
【
図20】パッドおよび薬剤送達デバイスの図である。
【
図24】パッドおよび薬剤送達デバイスの一部の側方断面図である。
【
図25】注射部位に対する装着段階の1つにおける
図21のパッドの側面図である。
【
図26】注射部位に対する装着段階の1つにおける
図21のパッドの側面図である。
【
図27】注射部位に対する装着段階の1つにおける
図21のパッドの側面図である。
【
図28】薬剤送達前の
図21のパッドおよび薬剤送達デバイスの断面図である。
【
図29】薬剤送達中の
図21のパッドおよび薬剤送達デバイスの断面図である。
【
図34】様々な注射段階における
図30のパッドおよび薬剤送達デバイスの側面図および断面図である。
【
図36】自動注射器を伴う別のパッドの斜視図である。
【
図38】
図36のパッドの構成要素の中のいくつかの分解斜視図である。
【
図40】
図39と同様であるが、ボタンが近位方向へ移動された後の断面図である。
【
図41】
図39と同様であるが、ボタンが遠位方向へ移動されて戻った後の断面図である。
【
図42】近位方向に見た場合の、カートリッジを伴った別の例のパッドの部分透視図である。
【
図43】ハウジングが透明なものとして図示された、
図42のパッドの構成要素の中のいくつかの分解斜視図である。
【
図44】カートリッジを伴う、
図42のパッドの構成要素の中のいくつかの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1および
図2は、例えば自動注射器100などの対応する薬剤送達デバイスとの組合せにおける、本発明によるパッド10の一例を示す。一般的に、パッド10は、近位端部から遠位端部まで軸30に沿って延在する。ここで、近位端部50は、パッド10が使用中であるときに注射部位(薬物送達部位)に隣接するパッド10の端部である。パッド10は、自動注射器100を受けるように構成された装着部分14を備える。パッド10は、装着部分14に対して装着された接着部分16などの第2の装着部分をさらに備える。接着部分16は、パッド10の近位端部50に配置され、接着部分16は、パッド10が使用中であるときに前記注射部位に対してパッド10を装着するように構成される。
【0041】
接着部分16は、接着剤(図示せず)、オプションの接着部分カバー18、およびオプションのフランジ12を備える。装着部分14は、オプションの解除ボタン20を備える。装着部分14は、パッドに対して対応する自動注射器100を装着するために自動注射器100を受けるように設計される(
図2を参照)。フランジ12は、軸30に対して装着部分から離れるように延在する。接着剤はフランジ12に対して装着され、接着部分カバー18は接着部分に対して装着され、
図1および
図2では、接着部分カバー18は部分的に剥がされた状態で示される。解除ボタン20は、フランジ12に対して装着され、このボタンの作動によりパッドから自動注射器が外されるように構成される。代替的には、ユーザにより連係がなされる異なる形状またはタイプのアクチュエータが、ボタン20の代わりに設けられてもよい。例えば、解除ボタンが、パッドに対して軸方向におよび/または軸方向に対する垂直方向に移動することが可能である。例えば、解除ボタンが、装着部分14に向かって押されることにより、装着部分14内の係合部材(
図1および
図2には図示せず)が自動注射器100の装着部分110から係合解除されて、自動注射器のパッドからの除去を可能にするように構成されることが可能である。装着部分に関する可能な特徴部のさらなる詳細は、以降においておよび図面を参照としてさらに詳細に説明される。
【0042】
図1および
図2の自動注射器100は、軸30に対して近位端部50から遠位端部52まで延在する。この自動注射器は、ハウジング102、グリップ104、窓106、およびニードル108を備える。また、自動注射器は装着部分110をさらに備え、この装着部分110は、パッドの装着部分14に係合するように構成される。
【0043】
パッドの装着部分14および自動注射器の装着部分110は、詳細には図示しない。以降で例においてさらに詳細に概要が述べられるように、装着部分に関する様々なオプションが利用可能である。いくつか例を挙げれば、
図3のスライダのコンセプトが
図1の解除ボタンと共に使用されることが可能であり、例えばボタンが、軸に対して平行に移動しスライダを押す、またはボタンが、スライダに対して直接的に装着され軸に対して垂直に移動する(すなわち軸に向かっておよび軸から離れるように)。別のオプションは、摩擦ロックである。さらなるオプションは、スナップ嵌めロックであり、この場合には、自動注射器100のハウジング102の近位端部上の突出部103が、パッドの装着部分上の対応する部分に係合して、自動注射器を定位置にロックする。自動注射器は、永久的に装着されることが可能であり(すなわち除去されるようには設計されない)、または除去可能に装着されることが可能である。例えば、自動注射器は、自動注射器を遠位方向に単に引くことによりロックを係合解除することによって、または軸30に対する周方向31に自動注射器を回すことによって、除去可能にすることが可能である。例えば、自動注射器を回すことにより、例えば結果として自動注射器の近位端部上の傾斜表面(周方向31に延在し径方向32に対して角度をつけられた)が、パッドの装着部分14の対応する部分に係合し、それによりスナップ嵌めロックの係合解除を補助し得る。さらなる別のオプションは、最初に自動注射器がパッドの装着部分14内に挿入され、次いで周方向に回されることにより、自動注射器を定位置にロックするものである。除去可能な自動注射器の場合には、自動注射器は、例えば自動注射器を係合解除するためなどに、使用後に回し戻され得る。
【0044】
次に、
図1および
図2の例の場合の一例の使用方法を説明する。最初に、接着部分カバー18が、パッド10から除去される(接着部分カバーが設けられる場合)。次いで、パッド10が、接着剤が注射部位に対して装着されるように注射部位に対接して接着部分16を配置することにより、注射部位(用量送達部位)に装着される。次いで、自動注射器100が手に取られパッドの装着部分14内に挿入される。次いで、自動注射器100の装着部分110が、パッドの装着部分14に係合して、パッドに対して、ひいては注射部位に自動注射器を装着する。
【0045】
薬剤送達が単に注射部位に対して自動注射器を押し当てることにより開始される(例えばそれにより自動注射器のニードルシールドがデバイス内に押し込まれ、薬剤放出が開始される)自動注射器の場合には、薬剤送達は、典型的にはパッドおよび自動注射器の装着部分同士が相互に係合すると同時に開始される。これは、2ステップ自動注射器の一例である(注射部位に対して押し当て、注射完了後に作動部位から除去する)。例えばボタン(図示せず)などのアクチュエータを備える自動注射器の場合には、薬剤送達は、典型的にはパッドおよび自動注射器の装着部分同士の係合直後に開始されず、追加ステップすなわちアクチュエータの作動が、薬剤送達の開始のためにさらに必要になる。これは、3ステップ自動注射器の一例である(注射部位に対して押し当て、アクチュエータを作動させ、注射完了後に作動部位から除去する)。薬剤送達(注射)の開始は、典型的には触覚的示唆、視覚的示唆、または聴覚的示唆、例えばクリックなどにより示される。
【0046】
薬剤送達が完了すると(典型的にはやはり触覚的示唆、視覚的示唆、または聴覚的示唆、例えばクリックなどにより示される)、次いで自動注射器はボタン20を使用してパッドから係合解除することが可能となる。自動注射器が係合解除されると、パッドもまた注射部位から除去されることが可能となり、または後の注射のために定位置に残されることが可能となる。代替的には、自動注射器がパッドから除去可能でない場合には、パッドおよび自動注射器が共に注射部位から除去され得る。
【0047】
図3および
図4は、パッド10の別の例を示す。最初に
図3を主に参照すると、パッド10は、フランジ12と、ハウジング34、スライダ36、および管状部分38を備える装着部分と、接着剤(図示せず)と、接着部分カバー18とを備える。スライダ36は、ボタンまたはハンドル40と2つのスライダアーム39とを備える。これらのアームは、スライダの自動注射器係合セクションとみなすことが可能であり、ハンドルは、ユーザ係合セクションとなる。これらのアーム39は、共にハンドル40に対して装着され、相互に対して平行に延在し、相互から離間される。ハンドルから遠位方向に位置するアームの端部にて、これらのアームはロック部分42および解除部分44を形成するように形状設定される。
【0048】
次に
図4を主に参照すると、対応する自動注射器100のさらなる詳細が分かる。具体的には、ハウジング102、ニードル108、ニードルガード112、薬剤容器114、ニードルガードばね116、および突出部またはリッジ118を見ることができる。この場合における自動注射器の装着部分は、突出部またはリッジ118を備えるものとみなすことが可能である。
【0049】
この特定の例では、ロック部分42は、アーム39同士の間で円を部分的に描き、解除部分44は、同様にアーム39同士の間で円を部分的に描く。換言すれば、各アームが、他方のアームに対面するアームの側部に2つの切欠部を備え、これらの切欠部がそれぞれ、円の一部である円弧を描く。これらの円弧は、典型的にはパッドと共に使用されるように設計された対応する薬剤送達デバイスの形状に対応するように形状設定される。ロック部分および解除部分の全円同士は重畳するが、離間されることも可能である。解除部分円の円周は、ロック部分円の円周よりも大きい(アーム上の一方の切欠部により画定される円は、他方の切欠部により画定される円よりも大きな半径を有する)。これにより、適切に寸法設定された自動注射器は、解除部分円を通過することが可能となるが、ロック部分円を通過することは不可能となる。結果として、自動注射器がロック部分円内に位置する場合に、自動注射器は、自動注射器上の突出部またはリッジ118とスライダアーム39のロック部分42とにより定位置にロックされる。この例では、ハンドルよりも遠くに位置する円が、ハンドルに対してより近くに位置する円よりも大きな円周を有する(およびしたがってハンドルが、解除位置よりもロック位置において軸に対してより近くに位置する)が、逆もまた可能である。
【0050】
スライダ36は、パッドのハウジング34に対して可動である。解除部分44が管状部分38に整列されるようにスライダが移動されると、自動注射器は、管状部分38内に挿入されることが可能となる。ロック部分42が管状部分38と軸方向に整列されると、自動注射器は、管状部分38内に挿入されることが不可能となる(または限定された距離だけの挿入が可能となる)。換言すれば、自動注射器は、スライダの解除部分が管状部分に整列された場合に注射が実行されるように、スライダハウジング内に機能的に挿入されることのみが可能である。
【0051】
次に、
図3および
図4の例の使用方法をさらに詳細に説明する。
図1および
図2の例と同様に、最初に、オプションの接着部分カバー18がパッドから除去される。次いで、接着部分が、注射部位に対して装着される。パッドが注射部位の定位置に置かれると、スライダは、解除部分44が管状部分38と整列される位置に配置される(スライダがこの位置に予めない場合)。次いで、自動注射器100が、管状部分38内に挿入される。自動注射器のタイプに応じて、注射は、例えば自動注射器が管状部分38内に完全に挿入されると直ぐに開始されてもよく、または自動注射器上のボタンなどのアクチュエータが押された後に初めて開始されてもよい。
【0052】
自動注射器が管状部分内に完全に挿入されると、スライダ36は、解除部分44が管状部分38と整列される位置から、ロック部分42が管状部分38と整列される位置まで移動される。これにより、自動注射器がパッド中に固定(またはロック)され、すなわちユーザは、手を完全に離して注射を継続させることが可能となる。
【0053】
スライダは、
図3および
図4に示す特定の形状を有する必要はなく、スライダアーム39、ボタン/ハンドル40、ロック部分42、および解除部分44の形状は変更することが可能である。一代替例では、アームは、ハンドル方向に近づくにつれてアーム同士の間の距離が縮小されるようにテーパ状になされる。例えば、アーム同士の間の距離は、ハンドル方向に近づくにつれて一定量だけ縮小される。いくつかの例では、これは
図3および
図4の例の円と比較して不利となる場合がある(例えば厳密な形状によってはこれが明確なロック位置および解除位置を必ずしも与えないことにより)が、同パッドと共により多様な薬剤送達デバイスの使用を可能にし得るものであり(ある特定の直径または形状の薬剤送達デバイスを必要としないため)、これは、実用性および多種適合性の観点において有用となり得る。
【0054】
いくつかの例では、スライダは、2つのアームを有さず、代わりに例えば1つのアームを有する。スライダが1つのアームのみを有するパッドの一例は、例えばハウジング中などの自動注射器の側部に凹部または切欠部を有する自動注射器と共に機能するように設計されたパッドである(しかし一般的には、突出部を含む軸方向における任意形態の様々な直径の利用がさらに可能である)。パッドに対して自動注射器をロックするために、アームは、凹部または切欠部の中へ移動される。
【0055】
図4の突出部またはリッジ118は、軸に対してハウジングから離れるように延在する突出部(もしくは複数の突出部)であることが可能であり、またはこの軸に対してハウジングから離れるように延在し、自動注射器の周方向に沿って部分的にまたは完全に延在する1つまたは複数のリッジであることが可能である。
【0056】
次に、
図3および
図4を参照として、代替的な設計の例を提示する。パッドの設計に関する様々なオプションに加えて、自動注射器の動作にパッドが影響を及ぼすことを可能にするための自動注射器の設計の修正に関して多数のオプションが利用可能である。例えば、自動注射器は、パッドに対して正確に係合された場合にのみ使用のためにロック解除され得るように設計することが可能であり、これによりパッド無しでの自動注射器の使用が阻止される。これは、正確なパッドと共に使用されない限り注射を実施することができないため、パッドの使用が必要である場合(例えばFDAレギュレーションの順守のためにハンズフリー注射のためにパッドが使用されるべき長期注射の場合など)におけるユーザコンプライアンスの確保のために有用となり得る。次に、
図3および
図4における例のパッドを参照として、かかる自動注射器の一例を説明する。上記において既述したように、ボタンが設けられた自動注射器を用意することが比較的一般的な慣行であり、その場合、ユーザは、例えば自動注射器内のパワーパック中のばねを解除することなどによって、注射の開始のためにボタンを押さなければならない。典型的には、このボタンは、相当大きなものであり、例えば自動注射器の遠位端部上または自動注射器の側部上など、ユーザが自動注射器を保持しつつ容易に操作することができる位置に配置される。代替的な1つのアプローチでは、ボタンは、例えばボタンのサイズを縮小することにより、ユーザが一般的に保持しない位置にボタンを配置することにより、または電子デバイス上に一般的に見受けられるリセットボタンと同様の様式で凹部内にボタンを配置することによりなど、ユーザによる押下げが困難になるように作製され得る。特定の一例を挙げれば、ボタンは、
図4のパッド10の管状部分38により囲まれる自動注射器100のハウジング102の部分上に設けることが可能である。このボタンは、ハウジング中の凹部内に位置することにより、ユーザがボタンを押す(偶発的にまたは意図的に)ことが困難となる。自動注射器がパッド内に挿入される場合に、ボタンは、スライダ36のアーム39の一方と並ぶ。スライダ36のアーム39が解除位置からロック位置へと移動すると、アームの一方が、自動注射器上のボタンを圧迫して、注射が開始されるようにパワーパックを解除する(または代替的には、ユーザがハウジング上の他の位置の別のボタンを押すことにより注射を開始させ得るように、単にデバイスをロック解除する)。この例の特定の1つの利点は、パッドの使用を必須とするコンプライアンスを強制し得る点であり、ユーザが使用指示に従わずにパッドを用いずに自動注射器のみを使用することが不可能となる点である。また、種々の薬剤送達デバイスが、特定の薬剤送達デバイスが誤ったパッド上で使用されるのを防ぐために、種々の形状の凹部を(または特定のパターンで複数の凹部を)有することも可能である。
【0057】
図5、
図6、および
図35は、対応する自動注射器100と伴うパッド10の別の一例を示す。前出の例と同様に、このパッドは、装着部分14と、フランジ12、接着剤、および接着部分カバー18を備える接着部分16とを備える。装着部分14は、自動注射器係合部分55およびユーザ操縦部分56を備える。この例における装着コンセプトは、いくつかのタイプの子供のいたずら防止ボトルキャップと同様の様式でロック解除を行う。
【0058】
また、装着部分14は、自動注射器係合部分55から延在する管状部分38を任意に備えることも可能であるが、
図6で分かるように、管状部分38は、典型的には軸周囲の全周にわたっては延在しない。自動注射器係合部分55は、自動注射器100の装着部分に係合する。自動注射器100は、ハウジング102とハウジング上の突出部分103とを備える。
【0059】
ユーザ操縦部分56は楕円錐セクション58を備え、この楕円錐セクション58は、可撓性を有し、軸30に対して垂直な平面内において楕円形である。また、ユーザ操縦部分56はアーム59も備え、このアーム59は、自動注射器係合部分55に対して楕円セクション(この例では装着部分の遠位端部に位置する)を装着する。
【0060】
ユーザ操縦部分56の楕円錐セクション58は、自動注射器が使用中に配置される位置の周囲において全周にわたり延在するが、自動注射器係合部分55は、2つの別個の係合セクション57を備える。軸からより遠くに位置する楕円の一部が圧迫されると(
図5および
図6の矢印Aのように)、これにより楕円はより円形に近づき、結果として楕円の最小直径が増大する。これは、アーム59を、およびそれに対応して自動注射器係合部分55を、より具体的には自動注射器係合部分55の係合セクション57を軸30からさらに離れる方向へと引く。結果として、係合セクション57は、自動注射器100上の突出部103から係合解除される。
【0061】
図5の装着部分の様々な部分の形状は変更することが可能である。例えば、ユーザ操縦部分が、その形状を変化させそれにより係合セクションを係合解除させるように、撓曲可能であることのみが必要である。これは、ユーザ操縦部分56の楕円錐セクションの代わりに楕円リングを用意することにより実現され得る。また、これは、円形ユーザ操縦部分によっても、圧迫されると楕円形になるユーザ操縦部分によっても、または他の形状のユーザ操縦部分によっても実現可能である。2つの係合セクション57が設けられるが、1つまたは複数の係合セクションを設けることが可能である。同様に、2つのアーム59が設けられるが、1つまたは複数のアーム59を設けることが可能である。また、係合セクションのこの特定の形状は、対応する薬剤送達デバイスの形状に応じて、および対応する薬剤送達デバイス上の突出部もしくは溝の個数に応じて変更することも可能である。突出部-溝アプローチの代わりに、異なる装着機構を利用することが可能であり、例えば代替的に摩擦ロックを設けることが可能である。
【0062】
次に、
図5および
図6の例の使用方法をより詳細に説明する。
図1および
図2の例と同様に、最初に、オプションの接着部分カバー18がパッドから除去される。次いで、接着部分が、注射部位に対して装着される。パッドが注射部位の定位置に置かれると、自動注射器が
図5に示す位置まで装着部分14内に挿入される。この時点で、装着部分14の自動注射器係合部分55は自動注射器を定位置にロックし、前出の例と同様に自動注射器が保持されることなく注射を進行することが可能となる。注射が完了すると、自動注射器は、
図5および
図6に示すように箇所Aを圧迫することによって解除される。
【0063】
図7は、パッド10の別の一例を示す。このパッドは、フランジ12、接着剤(図示せず)、および接着部分カバー18を備える接着部分16と、ハウジング34、スライダ36、および装着アーム60を備える装着部分とを備える。スライダ36は、ハウジング34に対して移動し得る。装着アーム60は、スライダに対して装着され、アーム部分62および突出部64を備える。装着アームの形状は、例えば
図1の自動注射器100の窓106などの自動注射器の窓に係合するように設計される。一般的に、例えば自動注射器の窓などの自動注射器の既存の特徴部への係合により、パッドは、自動注射器の構造の変更を伴わずに既存の自動注射器と共に使用することが可能になり得る。
【0064】
次に、
図7の例の使用方法をさらに詳細に説明する。前述の例と同様に、最初に、オプションの接着部分カバー18がパッドから除去される。次いで、接着部分が注射部位に対して装着される。パッドが注射部位の定位置に置かれると、自動注射器が装着部分14内に挿入される。次いで、例えば窓などの自動注射器の特徴部(またはより具体的にはこの場合には窓のフレーム)が突出部64に係合して、自動注射器を定位置にロックするように、スライダが軸30に向かって移動される。自動注射器が保持されることなく注射を進行することが可能となる。注射が完了すると、スライダが軸30から離れるように移動されて戻され、それにより自動注射器から突出部64を係合解除し、自動注射器を取り外すことが可能となる。
【0065】
別の例では、スライダ36が、
図7の例から除去され、装着アーム60が、代わりにハウジング34に対して直接的に装着される。装着アーム60のアーム部分62が可撓性を有することにより、パッド10内へ自動注射器を挿入するときに装着アーム60が横に押しのけられ得る。自動注射器がパッド内の定位置に置かれると、装着アームが撓曲して戻り、突出部が自動注射器に係合する(例えば自動注射器の窓に)。注射が完了すると、次いで自動注射器は、ユーザが装着アームを撓曲させて戻してパッドから自動注射器を係合解除させることにより、除去されることが可能となる。
【0066】
一般的に、装着アーム60、アーム部分62、および突出部64は、例えばパッドと共に使用されるように設計された薬剤送達デバイスの特定の形状などに応じて、それぞれ異なる例で形状、長さ、および材料を変更することが可能である。
【0067】
図8から
図13は、パッド10の他の一例を示す。この例では、パッド10はニードルガード112(またはより一般的には薬剤送達部材ガード)の一部である。
図8から
図13のパッド10は、自動注射器のニードルガードの一部として図示されるが、このタイプのパッド構造/装着構造は、別個の構成要素としてパッドと共に使用することも可能であり、すなわち
図8から
図13に示す装着コンセプトは、ニードルシールドの一体部分ではないパッドとの場合にも機能する。
【0068】
図8は、ハウジング102、窓106、およびパッド10を備える自動注射器100を示す。
図8では、パッド10を別とすれば、ニードルガードの残りの部分の大半がハウジング102内に隠れている。ニードルガード112は、
図9に示され、パッド10および2つのニードルガードアーム122を備える。
図10は、ハウジング102を示し、ハウジング102は、装着部分を、換言すればこの例では2つの突出部103を備え、この装着部分は、パッド10に対して自動注射器100を装着する(典型的には除去可能に装着する)ように構成される。
【0069】
図11は、近位端部50に向かって見た
図9の面A-Aの図を示す。特に、パッド10の装着部分の形状が分かる。パッド10の装着部分は2つのハンドル140を備え、これらのハンドル140は、相互に向かって圧迫されることにより突出部103から(すなわち自動注射器の装着部分から)装着部分が解除されるように構成される。ハンドル140はそれぞれ円弧部143により連結され、この円弧部143は、軸30に向かってハンドル140を押すことにより対応する係合セクションが引き離され、それにより係合セクションの2つの突出部141間の間隙が広がるように形状設定される(
図12および
図13を参照)。
【0070】
図12および
図13は、軸に向かって見た
図11の面B-Bの図を示す。この図からは、パッドの装着部分とハウジングの装着部分との間の装着箇所を見ることができ、ハンドル140は視野方向に存在しない。
【0071】
図12は、延伸されたニードルガード112を示し、したがってニードルは見えない。
図13は、引き戻されたニードルガード112を示し、結果としてフランジ12および装着部分14を含むパッド10のみが
図13では見ることができる。
【0072】
図12および
図13に示す図では、ハウジング102上の突出部103の詳細を見ることができる。突出部103は、ハウジングから突出するV字形状部分からなる。突出部103は、この場合は自動注射器の装着部分とみなすことができる。V字形状部分の中心部130は、V字形状部分の2つの端部132よりも自動注射器の近位端部のより近くに位置する。パッドの装着部分14は、対応する開口142を有し、この開口142は、2つのテーパ状エッジ144を有し、それによりV字形状部分は、近位方向に移動し2つのテーパ状エッジ144を押し離すことが可能となる。これらのテーパ状エッジは、これらのテーパ状エッジの近位端部よりもテーパ状エッジの遠位端部において相互により遠くに離間される。
【0073】
V字形状部分が開口142を越えて移動されると、2つのテーパ状エッジ144は、V字形状部分により離れる方向へ付勢されなくなるため、再び相互に対してより近くに移動する。また、装着部分14は、テーパ状エッジの近位端部におよび開口142の各側に2つの近位方向対向表面146も有し、これらの近位方向対向表面146は、突出部103の2つの端部132の遠位端部に係合することによりV字形状部分が遠位方向へと移動して戻るのを阻止する(ハンドル140同士が相互方向に圧迫されて、ハウジング102およびパッド10のそれぞれの装着部分14、103を相互に係合解除させない限りにおいて)。ハンドル140同士を相互に向かって圧迫することにより、2つの近位方向対向表面146は相互から引き離されて、開口142のサイズを拡大させ、2つの近位方向対向表面146と突出部103の2つの端部132の遠位端部との間の係合を解消させ、それにより突出部103が遠位方向へ移動して戻るのを可能にする(すなわち
図13の位置から
図12の位置に向かって戻る)。
【0074】
例えばハウジング102および窓106などの自動注射器の他の構成要素と同様に、
図9のニードルガードアーム122の特定の形状は必須ではない。上述したニードルガードアームの(またはより一般的には薬剤送達ガードアームの)特定の形状は、例えばWO2011/123024の回転子などの回転子と連係するように設計される。しかし、薬剤送達デバイスによっては、または薬剤送達部材ガードと連係するように設計された薬剤送達デバイスの部分によっては、他の形状および長さのニードルガードアームを設けることが可能である。
【0075】
図8から
図13の例の使用方法は、上述の使用方法と同様であるが、パッドが自動注射器と一体化されているために、いくつかの点でより単純なものである。最初に、パッド10が注射部位に対接して配置される。次に、自動注射器が、注射部位に向かってハウジングを押すことにより近位方向へ押される。この結果として、ニードルガードがハウジングの内部に引き戻される(すなわち
図12の位置から
図13の位置へ)。ニードル108が注射部位を穿刺し、注射が開始される(
図1および
図2の例に関連して上述したように自動的にまたはユーザがボタンを押した後に、のいずれかで)。上記の例と同様に、パッドが注射部位に対して固着され、すなわち所望に応じて注射がハンズフリーで継続されることが可能となる。注射が完了すると、ハンドル140が押されることにより突出部103を解除し、結果としてハウジングが遠位方向に移動する(すなわち
図13の位置から
図12の位置へ)。次いで、自動注射器が注射部位から除去され得る。代替的には、注射部位から自動注射器を除去するステップは、ハンドル140同士を圧迫するステップの前に実行することが可能であるが、これによりニードルは、自動注射器が注射部位から除去される時点からハンドル同士が相互に向かって圧迫されるときまで露出された状態となる。
【0076】
図8から
図13の例に示すような装着部分の代わりに、異なる装着部分を薬剤送達部材ガードの一部として設けることが可能である。一例を挙げれば、
図7のアーム60と同様のアームが、
図8から
図13の装着部分の代わりに設けられ得る。かかる例では、ハウジング上に装着部分110を設ける必要もなくなる。
【0077】
【0078】
図14は、ハウジング102、窓106、2つの突出部103(すなわちハウジング102の装着部分)、およびパッド10を備える自動注射器100を示す。パッドは、フランジ12、装着部分14、および接着剤(図示せず)を備える。
図15は、ニードルガードが引き戻された自動注射器を示し、突出部103の位置は、パッド10の内部に示される。これらの2つの突出部は、周方向において相互から離間される。
【0079】
図16は、
図15と同様に引き戻されたニードルガードを示し、軸30を中心として90度回転された図である。そのため窓106およびハンドル140は、側方ではなく前方において図示される。ハウジング102が断面で図示され、それにより一例の自動注射器の様々な特徴部が図示されるが、他の内部特徴部も可能である。特に、後方ハウジング124、回転子125、および薬剤容器126を見ることができるが、これらはやはり背景状況として図示されるにすぎず、図示する特定の構造物は必須ではない。
【0080】
図17から
図19は、パッド10および自動注射器100の近位端部の近接図をより全般的に示し、
図17では複数の部分もまた、内部構成要素を示すために自動注射器の内部に図示される。自動注射器100の突出部103およびパッド10の装着部分14が幾分か異なって形状設定されるが、全般的には、これらの部分は、異なるように形状設定されたとしても、上記の
図8から
図13に示したものとほほ同等である。また、使用方法も、基本的には
図8から
図13に関して上述したとおりである。
【0081】
具体的には
図14および
図17へ戻ると、各突出部103が、軸方向に延在するリブを備える。各突出部は、角度表面134を備え、この角度表面134は、軸方向および周方向の両方へと延在する。突出部同士は、それらの近位端部よりも遠位端部において共により近くに位置し、すなわち突出部の遠位端部間の間隙は、突出部の近位端部間の間隙よりも小さい。角度表面134は、パッド10の装着部分14の係合セクション上の対応する一対の突出部141を案内するように構成される。
【0082】
次に、
図14から
図19の自動注射器の使用方法を説明する。最初に、パッドが注射部位に対して装着される。次に、ハウジング102が近位方向に(注射部位に向かって)押される。ハウジングが近位方向に移動することにより、パッドの装着部分の係合セクション上の突出部141は、ハウジング上の突出部103上の角度表面134に係合する。これにより、パッドの装着部分の係合セクション上の突出部141同士が相互方向へ押される。例えば
図15に示すように、ハウジングが近位方向へと最大限まで遠くへ押されると、パッドの装着部分の係合セクション上の突出部141は、ハウジング102上の突出部103よりも注射部位からさらに遠くに位置し、すなわち突出部141は、ハウジング102上の突出部103を越えて通過しており、したがって再度さらに離れるように移動自在となる。この時点にて、ハウジング102は、ハウジング102上の突出部103がパッドの装着部分の係合セクション上の突出部141の遠位端部に係合することにより、遠位方向へ移動して戻ることは不可能となる。
【0083】
ハウジングが定位置にロックされると、注射の開始が可能となり、提示する例では自動的に開始可能となる。しかし、自動注射器を定位置にロックするこの一般的なアプローチは、他の自動注射器または他の薬剤送達デバイスにおいても利用可能である。注射が完了すると、ハウジング102は、ハンドル140同士を共に押すことにより(パッドが注射部位から除去される前または後に)ハウジングがパッドに対して遠位方向に移動されて戻ることが可能となることによって、パッド10から係合解除されることが可能となる。
【0084】
図20は、パッド10の別の例を示す。パッド10は、フランジ12を備える接着部分を備える。また、パッド10は装着部分も備える。装着部分は詳細には図示しないが、ハウジング34を備える。ハウジング34の代替または追加として、例えば
図1、
図3、
図5、または
図7に示すものなどの装着部分を使用することが可能である。また、パッドは、典型的には可撓性を有する例えばニードルまたはカニューレなどの薬剤送達部材120も備える。
【0085】
使用方法に関して、最初に、パッドが接着パッドを使用して注射部位に対して装着される。薬剤送達部材が、注射部位に対するパッドの装着の最中または後のいずれかに注射部位中へ挿入される。次いで、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスが、パッドに対して装着され、その後に注射が開始され得る。注射が完了した後に、薬剤送達デバイスは、先述の例において説明したように任意で除去することが可能となる。
【0086】
自動注射器とパッドの薬剤送達部材との間の連結に関して、複数のオプションが利用可能である。例えば、パッドの薬剤送達部材は、薬剤送達デバイスの薬剤送達部材と直接的に係合可能である。代替的には、薬剤送達デバイスは、薬剤送達部材を完全に有さなくてもよく、この場合には、薬剤送達デバイス内の主要パッケージ(薬剤容器)が、パッドに対して直接的に連結可能である。
【0087】
図21から
図23は、
図20のパッドと同様のパッド10の別の例を示す。パッド10は、フランジ12、装着部分14、接着部分16、ハウジング34、カニューレ152、およびカニューレ挿入ニードル154を備える。装着部分14は、薬剤送達デバイス挿入ニードル156と、注射部位中にカニューレ挿入ニードル154を挿入するための作動ボタン158と、オプションの外方ハウジング160と、オプションの圧縮可能パッド162と、管状部分38と、環状部分の遠位端部上のオプションのパディング164とを備える。
【0088】
図24は、フランジを有さないが他の点においては
図21から
図23のパッドと同様であるパッド10の別の例を示す。パッド10は、薬剤送達デバイス150がパッド10に対して装着された状態で図示される。この場合に、薬剤送達デバイス150は、膜170およびプランジャ172を有するカートリッジである(例えば
図28を参照)。薬剤送達デバイス挿入ニードル156は、膜170を穿通して図示される。さらに膜ガード113も図示され、これは、典型的には使用前に膜が穿刺されるのを防止するために最初に膜ガードが延伸位置に位置し、引戻し位置へ移動することにより膜を露出させる点において、本願の他の箇所で説明される薬剤送達部材ガードと同様の様式で機能する。すなわち、カートリッジがパッドに押し当てられると、膜ガード113は、カートリッジの残りの部分に対して遠位方向に押される。パッド10に対して、カートリッジの装着前には最初に非圧縮状態にある圧縮可能パッド162(
図23)が、カートリッジの装着により圧縮される(
図24)。圧縮可能パッド162の圧縮により薬剤送達デバイス挿入ニードル156が露出され、この薬剤送達デバイス挿入ニードル156が膜170を穿刺する。典型的には、薬剤送達部材ガードが注射後に再び延伸するが、対照的に、膜ガードは、注射後に例えばニードルなどの薬剤送達部材を保護するために再び延伸する必要はない。また、圧縮可能パッド162は、カートリッジの除去後にその元の状態へと拡張して戻ることも可能であり、これは、特にパッドが再利用可能である場合には、注射間にニードル156の保護を補助するために有用となり得る。追加的にまたは代替的に、ニードル156を覆うために予備キャップを用意することが可能である。
【0089】
次に、
図21から
図23に示すパッド10を使用する
図25から
図29を参照として、
図21から
図24のパッドの使用方法の一例を説明する。最初に、
図25において、パッド10が注射部位に対して装着される。次に、
図26において、カニューレ挿入ニードル154が注射部位中に挿入され、それによりカニューレを挿入する(
図26に図示)。次に、カニューレ挿入ニードル154が引き戻されて、
図27に示すように注射部位中にカニューレが残される。次いで、薬剤送達デバイス150がパッド10に対して装着され、薬剤が注射される(
図28および
図29)。
【0090】
図30から
図33は、
図21から
図29の例と同様のパッド10の別の例を示す。
図21から
図29の例とは対照的に、カニューレ挿入ニードル154は、軸30(すなわち薬剤送達デバイスが芯合わせされる軸であり、さらには結果としてパッドの装着部分の中心を貫通して延在する軸でもある)からオフセットされている。換言すれば、軸方向において、カニューレ挿入ニードル154(およびカニューレ152)は薬剤送達デバイス挿入ニードル156からオフセットされている。
【0091】
図30から
図33の例のパッドの使用方法は、
図21から
図29の例と同様である。パッド10が注射部位に対して装着され、カニューレ152がカニューレ挿入ニードル154を使用して挿入される。次いで、薬剤送達デバイス150がパッド10の装着部分14に対して装着される(しかしこのステップは代替的にはカニューレ152の挿入前に行うことが可能である)。次いで、注射を進行することが可能となる。注射が完了すると、薬剤送達デバイスはパッドから除去することが可能となる。
【0092】
図33では、カニューレ152、カニューレ挿入ニードル154、および薬剤送達デバイス挿入ニードル156の周辺の特徴部の一例の近接図が示される。この特定の例では、薬剤送達デバイス挿入ニードル156は、チューブ165により連結ハブ166に対して連結される。また、カニューレ152も、連結ハブ166に対して連結される。この機構は、流体が薬剤送達デバイス挿入ニードル156、チューブ165、連結ハブ166、およびカニューレ152を経由して薬剤送達デバイスから注射部位中に流れることが可能となるように設定される。キャップ(図示せず)が、非使用時の薬剤送達デバイス挿入ニードルを覆うために用意され得る。カニューレ挿入ニードル154が、注射部位中にカニューレ152を挿入するために用意される。端的に言えば、カニューレ挿入ニードル154は、例えばユーザがカニューレ挿入ニードルを直接的に押すことによってなど手動により挿入(および必要な場合には引戻しも)され得る。しかし、このプロセスは自動化されることが、および作動ボタン158がカニューレ挿入ニードルおよびカニューレの挿入のために使用されることが一般的には好ましい。かかる作動システムは、本願では詳細には説明しないが、既存の文献に記載された適切な機構を見ることが可能であり、一例はWO2020/058069に示される。この特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0093】
図34は、
図30から
図33の例の使用方法を示し、これは上記の
図21から
図29の例の使用方法と同様であり、ここでは
図21から
図29の例の使用方法を参照とする。約言すれば、ステップ1は、注射部位に対して装着された後の初期状態にあるパッド10を示す。ステップ2は、カニューレ挿入ニードル154およびしたがってさらにカニューレ152が注射部位中に挿入された状態にあるパッドを示す。ステップ3は、カニューレ挿入ニードル154(および依然として注射部位中に挿入されたカニューレ)を伴うパッドを示す。ステップ4は、パッド10に接近しつつある薬剤送達デバイス150を示す。ステップ5は、注射の最中における薬剤送達デバイスおよびパッドを示す。
【0094】
本明細書において説明されるパッド10のいくつかは、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスの一部として図示され(例えば
図8)、これらのパッドのいくつかは、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスに対して装着されることが可能な独立型デバイス(例えば
図5)である。しかし、一般的には、独立型デバイスとして説明されるこれらのパッドは、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスの一部として用意することも可能である。
【0095】
これらの例のいくつかを参照として上記で既に言及したように、一般的には、パッドは、ある特定のタイプの自動注射器もしくは薬剤送達デバイスまたはある特定のグループの自動注射器もしくは薬剤送達デバイスと共に機能するように設計されることが可能であり、あるいは可能な限り多数の異なる薬剤送達デバイスと共に機能するように設計されることが可能である。例えば、パッドが、ある特定の自動注射器もしくは薬剤送達デバイスとのみ機能するように設計されることが可能であり、または多数の異なる自動注射器もしくは薬剤送達デバイスがこのパッドと共に使用できるように設計されることが可能である。本明細書において自動注射器を使用する例を説明する場合に、より一般的には薬剤送達デバイスを代替的に使用することが可能である。
【0096】
いくつかの場合に、パッドは、修正されていない既存の薬剤送達デバイスと共に機能するように設計されてもよい(例えば
図7)。代替的には、薬剤送達デバイスの構造がさらに変更されてもよいが、多くの場合は薬剤送達デバイスの薬剤送達ガードおよび/またはハウジング(外方ハウジング)のみの修正が必要となる。また、自動注射器の他の部分が変更されてもよい。図面に示す自動注射器はいずれも円筒状断面を有するが、例えば三角形などの他の断面もまた例えばパッド設計の適切な変更などと共に機能し得る。
【0097】
一般的には、これらの例の多くにおいて示すようなフランジ12は、必須ではなく、接着剤は、例えば装着部分、ハウジング、および/または薬剤送達部材ガードなどのパッドの別の部分上に直接的に装着されてもよい。しかしながら、典型的には可撓性フランジであるフランジを備えることにより接着部分の面積を拡大することが有利となり得る。典型的には、フランジは平坦状であるが、例えば大腿または下腹部の一部分など、例えば設計されるパッドが上に装着されることとなる身体部分の予想される輪郭の鏡像となる形状などの他の形状もまた可能である。フランジ自体の形状によりおよび/または可撓性フランジを設けることにより身体輪郭に倣うことによって、より良好な接着が実現され得る。典型的には、フランジはパッドの装着部分に対して装着される。
【0098】
本明細書においては、一般的に、フランジは軸30に対する装着部分から離れるように延在するものとして説明されるが、代替的にはまたは追加的には装着部分よりも軸に対してより近くへ延在することが可能である。例えばニードルなどの薬剤送達部材が貫通して延在するように穴を残すことが可能であり、またはフランジがパッドの近位端部中にわたって完全に延在し、薬剤送達部材により穿刺されるように構成することも可能である。
【0099】
多数の異なるオプションが装着部分14に関して可能であり、上記の例は、様々なかかるオプションを既に示し説明している。かかるオプションは、一般的には様々な異なる例の間で振替可能であり、一例としては、
図4または
図8の一般的な装着部分コンセプトを
図21によるパッドに組み込むことができる。複数の他の異なる装着部分コンセプトは、図面には直接的には示さないが、例えば
図1および
図2の例などの例に関連してやはり上述されており、これらのコンセプトは、本明細書において説明される他の例においても同様に組み込むことができる。一般的には、装着部分を実現するために、フック、突出部、摩擦ロック、スナップ嵌めロック、またはスライダ等を含む多数の異なる要素を個別にまたは組み合わせて使用することが可能である。摩擦ロックの場合には、パッドおよび/または薬剤送達デバイスの装着部分の対応する表面は、薬剤送達デバイスをパッド内で定位置に保持するのに十分な摩擦をこれらの表面同士がもたらすように、高摩擦材料で被覆されるまたは粗面加工されることが可能である。
【0100】
一般的には、接着部分16は、例えばフランジおよび/または薬剤送達部材ガードに対してなど、パッドに対して装着された接着部分からなる。接着部分は、任意で、上述のようにフランジを備える。一般的には、接着部分は、パッドの(またはパッドが薬剤送達部材ガードの一部である例では例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスの)最近位端部に位置する。一般的には、接着部分は膠剤などの物質であるが、代替的には注射部位に対するパッドの別の装着手段であることが可能である。例えば、接着剤の代わりにストラップを設けることが可能である。また、ヒートステーキングを利用して注射部位への接着部分の装着を行うことも可能である。
【0101】
任意で、接着部分カバー18が、パッドの使用直前まで接着表面を保護するために設けられる。接着部分カバーは、接着剤まで延在することが可能であり、または例えば
図1に示すように、除去を容易にするための余剰突出部を有しつつ例えば接着剤よりも遠くまでなど異なる量だけ延在することが可能である。
【0102】
いくつかの例はハウジング34を備え、このハウジング34は、例えば接着層の支持、フランジの支持、例えば
図1の解除ボタン20もしくは
図3のスライダ36などのロッキング機構および/または解除機構の支持、例えば
図23における装着部分の収容、および/または例えば
図34のカニューレ152などの薬剤送達部材の収容など、様々な目的を果たし得る。図面に示す様々なハウジングの形状は、例として図示されるにすぎず、例えば使用性の最適化、異なる形状の薬剤送達デバイスへの対応、および/またはパッドの種々の装着部分もしくは接着部分への対応などを目的として変更することが可能である。
【0103】
いくつかの例(例えば
図3および
図7)は、典型的にはパッドのハウジング内に少なくとも部分的に位置するスライダ36を備える。スライダに関する様々な代替形状が可能であり、複数の例が上記で既に提示されている。一般的には、スライダは径方向に摺動するように構成されるが、スライダが係合および係合解除するために例えば周方向になど異なる方向に移動する代替例もまた可能である。
【0104】
典型的には、パッド10の装着部分14は、軸方向に延在する管状部分38を備える(例えば
図5)。自動注射器の近位端部は、自動注射器の支持を補助するために好ましくは管状部分と自動注射器との間の止まり嵌めにより管状部分内に配置され得る。いくつかの種類の管状部分が多くの図面の例において図示されるが、環状部分を設けることは各例において任意である。
【0105】
本明細書では、
図20以降に示すものを含む複数の薬剤送達デバイスが説明される。薬剤送達デバイスは、例えば自動注射器、ペンインジェクタ、またはカートリッジなどであってもよい。特に、薬剤送達デバイスは、薬剤送達デバイスの一体部分としてのパッドを備えてもまたは備えなくてもよく、薬剤送達デバイスの一部としてニードルを備えてもまたは備えなくてもよい。
【0106】
自動注射器が、注射プロセスのステップの中の少なくとも1つが自動化された薬剤送達デバイスとして定義されてもよい。例えば、ニードル挿入、薬剤の注射、またはニードル除去のステップの中の少なくとも1つが自動化される(従来のシリンジの場合のようにすべてのステップがユーザにより実施されなければならないものとは対照的に)。
【0107】
本明細書では、特に
図1から
図19を参照として自動注射器100の様々な異なる例を説明するが、これらの例は排他的なものとして意図されない。自動注射器は、あるタイプの薬剤送達デバイスであり、一般的に本明細書において「薬剤送達デバイス」という表現が使用される場合には常に薬剤送達デバイスの一例である。自動注射器の一例のさらなる詳細は、WO2011/123024に見ることができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書において説明されるコンセプト、例、および代替例のいくつかは、一例としての自動注射器を参照として説明されるが、これらは、自動注射器と共にのみ使用されるように限定されるものとしてみなされるべきではない。一般的に、本明細書において説明されるあらゆるコンセプト、例、および代替例は、様々な薬剤送達デバイスと共に使用することが可能であり、自動注射器と共にのみ使用され得るとは必ずしも限らない。薬剤送達デバイスは、例えば一回使用型自動注射器または複数回使用型自動注射器など、一回使用型または複数回使用型のデバイスであることが可能である。すなわち、薬剤送達デバイスは、固定の一回用量、可変用量、または複数回用量を供給し得る。
【0108】
複数の例が、自動注射器の様々な特徴部を示す。ハウジング102は、例えば
図1の例の円形断面ではなく軸に対して垂直な三角形断面を有する、または
図8のようなほぼ平坦状の遠位端部ではなく半球状の遠位端部を有するなど、様々な形状であることが可能である。例えばスロープ101、グリップ104、および窓106などの本明細書において説明される自動注射器の様々な特徴部は、任意である。
【0109】
いくつかの例では、突出部103がハウジング102上に設けられる。突出部103は、より一般的には装着部分として考えることができる。本明細書における例では、2個または4個の突出部が図示されるが、他の例では1個、3個、5個、またはさらに多数の突出部もまた可能である。突出部は、ハウジングの外部表面上に図示されるが、より一般的には自動注射器のハウジングの突出部分または装着部分は、代替としてハウジングの内部表面上に位置することが可能であり、パッドの装着部分の一部分が、ハウジング内部に延在することにより突出部に係合する。
【0110】
本明細書において説明される薬剤送達デバイスのいくつかは、例えばニードル108などの薬剤送達部材を備える。ある特定の例がニードルについて説明する場合に、より一般的には薬剤送達部材もまた設けられ得る。
【0111】
本明細書において説明される薬剤送達デバイスのいくつかは、装着部分を備える。典型的には、装着部分は、薬剤送達デバイスのハウジング上に位置するが、例えばガード、グリップ、または窓などの薬剤送達デバイスの異なる部分に対して装着されることも可能である。本明細書において(例えば
図12および
図14)示される装着部分の特定の形状もまた変更が可能であり、特定の形状は必須ではない。
【0112】
上記の複数の例が、例えば
図9のニードルガード112などの薬剤送達部材ガードなどのガードを備える。
図24の膜ガード113は、ガードの別の例である。ガードは、パッドと連係し得る。例えば、ガードは、パッドから薬剤送達デバイスを除去するための機構の一部として使用されることも可能である。例えば、プランジャロッドが完全に前方に移動されると(および結果として注射が完了すると)、プランジャロッドは、直接的にまたは薬剤送達デバイスの別の部分を介してのいずれかにより、薬剤送達デバイスからパッドを物理的に解除または係合解除することができる。この結果として、注射が終了した場合に、薬剤送達デバイスは自動的に解除を行う。解除機構は例えばニードルガードばね116を解除し、プランジャロッドがばねを解除し、次いでばねがパッドと薬剤送達デバイスとの間のロック(例えば摩擦ロック)を克服し得る。
【0113】
いくつかの例では、パッドが薬剤送達部材120を備える。薬剤送達部材120は、例えばニードルまたはカニューレ152などであることが可能である。
【0114】
これらの例のいくつかは、パッドの装着部分のハンドル140を備える。各例において、2つのハンドルが示されるが、1つのみを含む他の個数のハンドルを設けることが可能である。例えば
図8では、平滑面を有するハンドル140が示され、例えば
図16では、グリップ(輪郭設定された表面)を有するハンドル140が示されるが、様々な表面テクスチャがいずれの例においても可能である。いくつかの例は、本明細書の他の箇所でも説明されるように、ハンドルを押す代わりに周方向に回転させることによりロックおよびロック解除され得る。
【0115】
係合セクション57に対してハンドル140を装着する構造の2つの例が説明され、特に
図11および
図18に見ることができる。
図11は、角度付き円弧部143を示し(軸に対して垂直に見た場合)、
図18の円弧部は湾曲状である。装着部分は、例えばハンドルが円弧部143を介さずに直接的に係合部分を移動させる、および/またはハンドルが係合部分から周方向にオフセットされるなど、様々な方法で修正され得る。
【0116】
複数の特徴部が、
図20から
図34の例に示される。これらの特徴部の構造は、例えばカニューレ(例えば軟質カニューレ/可撓性カニューレ)などの薬剤送達部材を備えるパッドの例に焦点が当てられる。しかし、
図20から
図34を参照として説明される特徴部の多くは、
図1から
図19を参照として説明される例と共に使用することも可能であり、具体的には例えばパッドのハウジング、パッドの装着部分、作動ボタン158、および圧縮可能パッド162などの特徴部を参照として説明される例と共に使用することも可能である。作動ボタン158は、図面に示すスライダボタン以外の様々な形態をとることが可能である。作動ボタンは、例えば
図22の外方ハウジング160上に位置するものが示されるが、代わりに例えばパッドのハウジング34などのパッドの他の部分に対して装着されることも可能である。また、外方ハウジング160、圧縮可能パッド162、およびパディング164は、図面に示すものとは異なる様々な形状をとることが可能であり、または完全に除去することが可能である。また、薬剤送達部材を有さない例の特徴部を、薬剤送達部材を有する例において使用することも可能であり、例えば
図7において説明されるパッドの装着部分が、
図24のパッドと共に使用されることが可能である。
【0117】
複数の使用方法を上述した。以下、それらの方法に関連する装置に対する修正と共に、さらなる方法の代替例を説明する。既に言及したように、例えば自動注射器などの薬剤送達デバイスがパッドに対して除去可能に装着されてもよく、これによりこのパッドの複数回使用が可能となる。複数回の使用は、注射部位からのパッドの除去と、次いでその後の同一の注射部位または異なる注射部位へのパッドの再装着とによって、または注射間で注射部位にパッドを留置することによってのいずれかにより、実施され得る。パッドが注射部位上に留置される場合には、パッドは、最大時間量または最大注射回数にわたって留置され得る。また、複数回使用は、交換可能な接着層によって、または例えば上述したようなストラップなどの特徴部と接着層を交換することによっても容易になり得る。
【0118】
典型的には、薬剤送達示唆の初期開始は、上述のように薬剤送達の開始時および/または終了時に例えばクリックなどの触覚的示唆、視覚的示唆、または聴覚的示唆によって示される。これらの示唆がクリックである場合には、典型的にはそれぞれ開始クリックおよび終了クリックとして表される。薬剤送達デバイスにより示される代わりにまたはそれに加えて、開始示唆および/または終了示唆は、薬剤送達デバイスとパッドとの間のまたはパッド自体における2つの部分間の相互作用によって提供され得る。例えば、開始示唆は、薬剤送達デバイスおよびパッドが例えばクリックまたは振動を伴いつつ係合することによって引き起こされ得る。示唆が生成される場所にかかわらず、代替的にまたは追加的に、例えば画面または可動インジケータなどの視覚的示唆が、薬剤送達デバイスおよび/またはパッドの上に用意されることが可能である。例えば、パッドに対する自動注射器の装着により回路を完成させることも可能であり、これにより注射が開始されたことをパッド上または薬剤送達デバイス上のいくつかの種類のディスプレイによって視覚的に確認することが可能になる、および/またはパッド上もしくは薬剤送達デバイス内の拡声器による聴覚的示唆の作動が可能になる。
【0119】
一例として、薬剤送達デバイスおよびパッドの上の対応する装着部分が
図8の例において定位置にスナップ嵌めされることが、第1のクリックとして使用され得る。この場合に、パッドの装着部分に自動注射器の装着部分を係合させることにより、第1のクリックが発生し得る。さらに一般的には、これは、例えば注射がニードルシールドの引戻しにより開始される場合など、パッドの装着部分に自動注射器の装着部分が係合することにより引き起こされるクリックが、注射の開始とほぼ同時に発生し得る例において特に関係する。
【0120】
また、最終クリックは、以下において説明するようにパッドから薬剤送達デバイスを自動解除することによっても引き起こされ得る。
【0121】
注射後における1つのオプションは、注射の完了時に、例えばニードルガードなどのガードが解除されたときの係合解除などにより薬剤送達デバイスが自動的に係合し得ることである。例えば、ニードルガードの解除により、結果としてニードルガードばねの力が摩擦ロックなどのロックを、摩擦によるロック効果が克服されるのに十分な強さで押すことになり、それにより自動注射器ハウジングは、パッドの管状部分38外へと押し出されることが可能となる。これは、注射が完了したという視覚的示唆を与え、さらには聴覚的示唆を与え得る。薬剤送達デバイスが自動的に係合解除する別の例は、
図3および
図4の例を使用して実現することが可能である。
図3および
図4の例のアーム39は可撓性を有することが可能である。注射が完了するまでニードルガードがロックされた状態に戻ると(すなわちハウジング外へとニードルガードを押し出す力が存在しないように)、ニードルガードが解除されたときに、ニードルガードばねの力を利用してアームを外方に押しニードルガードシールドを自動的に解除することを利用して、これらのアームを外方へと撓曲することが可能となる。
【0122】
別の代替例では、例えば
図20から
図34に示すものなどのパッドが、カニューレの代わりにニードルを備える(すなわちカニューレ挿入ニードルもまた必要とされない)。パッドが注射部位に対して装着される後まではニードルまたはカニューレがパッド内部に存在しない代わりに、ニードルは、パッドが注射部位に対して装着された場合にニードルもまた注射部位内に挿入されるように、パッドの主要本体を越えて(例えばハウジングおよび/または接着層を越えて)予め延在することが可能である。代替的には、カニューレおよびカニューレ挿入ニードルがニードルの代わりに設けられる。カニューレおよびカニューレ挿入ニードルは、パッドが注射部位に装着されると挿入される。次いで、後にカニューレ挿入ニードルが注射部位から引き戻されて、注射部位にカニューレ(例えば軟質カニューレ)が留置され得る。
【0123】
薬剤送達部材を備えるパッドが、多数の既存の解決策と比較した場合に比較的単純な解決策をユーザにもたらし得る。注射部位に対してパッドを装着する場合に、パッドは単に皮膚に対して装着されることが可能となり、例えばボタン158などの挿入アクティベータが作動される(例えば押される)ことが可能となる。皮膚に対してパッドを装着し、薬剤送達デバイスと共に使用するための準備を行うさらなるステップは不要となる。例えば、ニードルシースなどの薬剤送達部材プロテクタを除去することが不要となる(薬剤送達部材がパッド内に保護されるため)。また、パッドを機能状態にするためにパッドの一部を除去することも不要となる。
【0124】
図36以降では、別の代替的なアプローチが示される。パッド10は、自動注射器100(またはより一般的には薬剤送達デバイス)を受けるように構成された装着部分14を備える。また、パッド10は、例えば装着部分14に対して装着された接着部分16などの第2の装着部分を備え、接着部分16は、パッド10の近位端部50に配置され、接着部分16は、パッド10の使用時に前記注射部位に対してパッド10を装着するように構成される。接着カバー(図示せず)を設けることが可能である。ハウジング34およびボタン158(この場合には第1のボタンハウジング192)を見ることもできる。
【0125】
次に、
図37から
図39を参照して、ハウジング内部の装着部分の部分をさらに詳細に説明する。
図37および
図38で分かるように、パッドは、任意のばね190と、第1のボタンハウジング192および第2のボタンハウジング194を備えるボタンと、カニューレ挿入ニードル154(例えばカニューレが剛質カニューレである場合などにはオプションとなり得る)と、第1のニードルハウジング200および第2のニードルハウジング202を備えるニードルハウジング198とを備える。第1のニードルハウジング200はカニューレ152を備える。複数の他の構造的修正を既述の部分に対して行うことが可能であり、例えばボタンおよび/またはニードルハウジングは、代替的には2つの別個のハウジングではなく単体の一体部分であることが可能であり、またニードルハウジングの一部もしくはすべてが、ボタンの一部もしくはすべてと単体の一体部分として一体化されることも可能である。複数のシール210、211、212およびスペーサ214を含む複数の他のオプションの特徴部が示される。
【0126】
組み立てられる場合に、カニューレ挿入ニードル154は、ボタンに対して(この特定の例では第2のボタンハウジング194に対して)装着され、ニードルハウジング内へとおよび例えば
図39に見ることができるようなカニューレ内へと延在する。カニューレ152およびカニューレ挿入ニードル154は、軸30の方向に延在する。
【0127】
オプションのハウジングシール210は、第1のニードルハウジング200と第2のニードルハウジング202との間にハウジング内に保持され、パッド10のニードルハウジング198の遠位端部から薬剤が漏出するのを阻止するのを補助し得る。ニードルハウジングはチャネル204(またはチューブ)を備え、チャネルはこの例では軸30に対して垂直に延在する。チャネル204は、ニードルハウジングの第2のチャネル206(またはチューブ)に連結され、この第2のチャネル206は、カニューレ152にチャネル204を流体連結する。例えば
図39において分かるように、ハウジング34はチャネル220(またはチューブ)を備え、ボタンが押されるとチャネル204およびチャネル220は整列される。チャネル220は、チャネル204に自動注射器のニードルを整列させるのを補助するために、ニードルハウジング198への円錐状入口を遠位端部に有し得るが、この入口構造は任意であり、ニードルは単にチャネル204と直接的に連係することが可能である。ハウジング連係シール211は、ニードルハウジングとハウジングとの間の間隙内における薬剤の漏出を最小限に抑えるまたは回避するために設けられ得る。スペーサ214は、ニードルハウジングおよびハウジングを共に押すのを補助することが可能であり、さらにこれは、チャネル220とチャネル204との間における漏出を減少させるまたは回避させるのを補助し得る。スペーサは、ニードルハウジングとハウジングの壁部(または代替的にはハウジングのリブまたは突出部)との間に配置される。この例では、スペーサは、可撓性を有し、定位置にあるときに付勢される。すなわち、スペーサは、ハウジングに向かってニードルハウジングを絶えず押すことにより漏出を最小限に抑制するのを補助し得る。より一般的には、スペーサは、例えばばねなどの弾性部材であることが可能である。チャネルシール212(事前に存在する貫通する穴を有することが可能であり、またはパッドの使用中にニードルにより穿刺されることが可能である)は、ハウジング内に配置され、ハウジング102のチャネル220からの漏出を減少させるまたは回避させるのを補助し得る。
【0128】
また、ハウジングは、オプションのばね190(または代替的には別のタイプの弾性部材)を収容する。ばねは、ハウジングとボタンとの間に配置される。任意で、ハウジングはばねガイド224を備える、および/またはボタンはばねガイド226を備える。ばねガイドは、ハウジング内の定位置にばねを保持し得る。ばねガイドによりもたらされ得るもう1つの機能は、これらのばねがボタンの移動を制限し得る(カニューレ挿入深さを制御し得る)ことであるが、これは任意である(および代替的には、例えばニードルハウジングなどによってなど別の構成要素によってもたらされ得る)。ばね190を設けることにより、ボタンの解除後にばね190が自動的に遠位方向へとボタンを押し戻すことが可能となり、それによりまた注射部位からカニューレ挿入ニードルが引き戻されるため(およびユーザが手動により遠位方向へとボタン(およびしたがってカニューレ挿入ニードル)を引き戻す必要性が解消されるため)、有利となり得る。
【0129】
この例では、操作方法は、例えば
図30から
図33を参照してなど本明細書における他の例に関して説明した方法と同様である。第1に、パッド10が注射部位に対して装着される。第2に、自動注射器(またはより一般的には薬剤送達デバイス)がパッドに対して装着される(しかし、第1のステップおよび第2のステップを逆転することが可能である)。第3に、ボタンが近位方向に押され、それによりカニューレおよびパッドのカニューレ挿入ニードルが注射部位中に挿入され(
図40はこの時点における構成要素の相対位置を示すが、ばね190の位置は
図40では調節されていない)、次いでボタンが放される(または遠位方向に引かれる)ことにより注射部位からカニューレ挿入ニードルが除去される(しかし第2のステップおよび第3のステップは逆転することが可能である)。注射部位からのカニューレ挿入ニードルの除去は、必ずしも必須ではないが、一般的には薬剤に開通した流路を与えるのを補助するために好ましい。最後に、自動注射器が作動されて、パッドを経由して注射部位中に薬剤が注射される(
図41はこの時点における構成要素の相対位置を示す)。
【0130】
薬剤の注射後に、薬剤送達デバイスがパッドから除去されることが可能となり、パッドは薬剤送達部位から除去されることが可能となる。上述のように、例えばパッドのボタンを遠位方向に移動することなどにより、パッドのニードルは任意で引き戻され得る(すなわち注射部位外へと遠位方向に移動されて戻り得る)。任意で、薬剤送達デバイスがパッドから除去され得るが、パッドは注射部位上に残され(典型的にはパッドのニードルが注射部位中に依然として挿入された状態で)、第2の薬剤送達デバイスがパッド内に挿入されることが可能となり、それにより第2の注射が可能となる(同一薬剤または異なる薬剤のいずれかの第2の用量)。一般的には、1回または複数回の後の注射が、第1の注射の後に即座にまたは時間間隔をおいてのいずれかでこのように実施され得る。
【0131】
図35に示すような自動注射器の代わりに、他の自動注射器またはより一般的には他の薬剤送達デバイスを使用することが可能であり、パッド設計はより一般的には異なる形状またはタイプの自動注射器または薬剤送達デバイスに対応するように変更することが可能である。例えば、パッドは、例えば
図28に示すものなどの薬剤送達デバイスと共に使用するように構成することが可能であり、このパッドは、薬剤送達デバイスの膜を穿刺するように構成された薬剤送達デバイス挿入ニードルを備える。
【0132】
図35に示す例では、自動注射器100の長手方向軸180は、軸30に対して垂直であるが、他の角度もまた可能である。
図36に示すようなフランジ12の範囲を変更することが可能であり、より広く言えば、フランジは本明細書で説明した他の例におけるように任意である。しかし、フランジを設けることは、例えば注射部位にパッドを装着するためにおよび/または自動注射器100を支持するために利用可能な面積を拡大することなどによって有利となり得る。自動注射器のためのオプションの支持の例としては、管状部分38(
図5に示す平行な例とは対照的にこの例では軸30に対して垂直に延在する)およびクリップ230が含まれる。管状部分38は、突出部64を有する装着アーム60を備え、この装着アーム60は、自動注射器の特徴部(この例では窓106)に係合して、薬剤送達の最中に自動注射器を定位置に保持し得る。代替的にはまたは追加的には、例えば
図1から
図19に示すアプローチなどの他の装着システム(および任意で設計によっては後の装着解除システムも)が、
図35のパッド上に自動注射器を保持する(および任意で後にパッドから自動注射器を解除する)ために使用され得る。ハウジング連係シール211などのシールが、ニードルハウジングまたはハウジングの別個の部分または一体部分であることが可能である。また、ハウジング連係シールは、例えばハウジングシールが中に置かれるハウジングおよびニードルハウジングの両方に凹部を設けることなどにより、注射の最中にハウジングに対してニードルハウジングを押すために必要な摩擦を高めることによって、注射の最中にニードルハウジングを定位置に保持するのを補助することができる。代替的にはまたは追加的には、スナップ嵌めが、注射の最中にハウジングに対してニードルハウジングを定位置に保持するのを補助することができる。任意で、ユーザがカニューレ挿入ニードル154を複数回挿入するのを阻止するために、ロックが、カニューレが挿入されると係合されるように設けられ得る。例えば、このロックは、ボタンが遠位方向に移動して戻ると、ボタンとニードルハウジングとの間の間隙内へと跳ね出るハウジング内の被付勢アームであることが可能である。
【0133】
図42は別の例を示す。この例の構造のほとんどは、
図36から
図41を参照して上述した例に示すものと同一であり、したがって図示する構造および様々な代替例の完全な説明を繰り返し行うことはしない。
【0134】
図42に示す例と
図35に示す例との間の主な機能上の相違点は、
図42に示すパッドが、自動注射器ではなく薬剤容器(この場合にはカートリッジ)を受けるように構成され、すなわちニードルが薬剤送達デバイス内に位置するのではなく、パッドに対して装着される点であり、これは例えば
図32の例のアプローチと同様である。別の代替例では、ニードルは、別個に用意され、注射前にカートリッジに対してまたはパッドに対して追加される。
【0135】
図42は、パッド10およびカートリッジ260を示す。パッド10は、フランジ12、装着部分14、および第2の装着部分(図示せず)を備える。管状部分38、薬剤送達デバイス挿入ニードル156、第2のボタンハウジング194、クリップ230、ガスカートリッジ(ガスキャニスタ)250、第1のガスカートリッジハウジング252、ガスパイプ254、プランジャロッド256、プランジャロッドハウジング257、および第2のガスカートリッジハウジング258を含む、装着部分14の様々な部分を見ることができる。カートリッジ260はストッパ262を備える。
【0136】
図43は、パッドの装着部分14のさらなる特徴部を、すなわちカニューレ挿入ニードル154、薬剤送達デバイス挿入ニードル156、ばね190、第1のボタンハウジング192、第2のボタンハウジング194、第1のニードルハウジング200、第2のニードルハウジング202、ハウジングシール210、およびハウジング連係シール211を示す。薬剤送達デバイス挿入ニードル156はハウジング34に対して装着される。ボタン(この例では具体的には第1のボタンハウジング192)は、ボタンが押された場合にガスカートリッジを作動させ得るオプションのウェッジ193を備える。代替的には、ガスカートリッジは、例えば別個のボタンにより、またはガスカートリッジの挿入時に直接的になど、別の方法で作動させることが可能である。
【0137】
図44および
図45は、カートリッジのストッパを押してカートリッジから薬剤を排出する(他の例ではこれは代替的にシリンジを用いてなど単に手動により行われ得る)ために設けられたパッドの構成要素と、薬剤送達デバイス挿入ニードル156とをコンテクストを目的として主に示す。この場合、これらの構成要素は、すべてが同一軸に沿って整列されるわけではなく、この特定の配置は、空間利用率の点において有利となり得る。しかし代替的に、これらの構成要素のいずれもが同一軸に沿って整列されることも可能である。
【0138】
図44および
図45は、ストッパを有するカートリッジ260(透視状態で示される)と、パッドの構成要素すなわちガスカートリッジ250、第1のガスカートリッジハウジング252、ガスパイプ254、プランジャロッド256、プランジャロッドハウジング257、および第2のガスカートリッジハウジング258とを示す。ガスパイプ254、プランジャロッドハウジング257、および第2のガスカートリッジハウジング258は、共に装着される(任意で単体の一体部分として)。ガスカートリッジ250は、第1のガスカートリッジハウジング252とプランジャロッド256との間に配置される。第1のガスカートリッジハウジング252は、第2のガスカートリッジハウジング258に対して可動であり、角度付き表面253を介して第2のガスカートリッジハウジング258に向かって押されることによりガスカートリッジ250を作動させ得る。プランジャロッド256は、プランジャロッドハウジング257内部に収容される。カートリッジ260は、プランジャロッド256に対して隣接しておよび同軸状に配置される。ガスカートリッジは、典型的には圧縮ガスである圧縮流体を収容する。ガスカートリッジは、同一パッドを複数回使用することが可能となるように交換可能であることが可能である。
【0139】
次に、
図44に示す構成要素に焦点を当てて使用方法を説明する。パッドを使用するために、最初にカートリッジがパッド内に挿入され、次いでパッドが注射部位に対して装着される(またはその逆)。次いで、ボタンが押されて近位方向へと移動され、それによりカニューレ152およびカニューレ挿入ニードル154が注射部位中に挿入され、ガスカートリッジ250が作動される(後にボタンを遠位方向に移動させることにより所望であれば注射部位からカニューレ挿入ニードル154が除去される)。ガスカートリッジ250が作動されると、ガスが、カートリッジからガスパイプを通って流れ、プランジャロッドに衝突し、ストッパに対してプランジャロッドが押圧され、それにより薬剤送達デバイス挿入ニードル156に対してカートリッジが押圧される(カートリッジが既に薬剤送達デバイス挿入ニードル156に対して装着されていない場合)。次いで、プランジャロッドがストッパを押し続けて、薬剤送達デバイス挿入ニードル156に向かってストッパを押すことにより、薬剤がカートリッジから出てチャネル204、206およびカニューレ152を通って注射部位中に押し込まれる。
【0140】
次に、より一般的には
図42から
図45の設計の両方に対して使用し得る他の代替例を説明する。任意で、膜が、薬剤送達デバイス挿入ニードル156の周囲に配置され、これは無菌性の維持を補助し得る。膜は、薬剤送達デバイス挿入ニードル156がカートリッジを穿刺するときに薬剤送達デバイス挿入ニードル156により穿刺され得る。任意で、プランジャロッドは、中空で管状の折り畳み式のものであり、使用中にストッパと連係するプランジャロッドの端部から遠位に位置するプランジャロッドの端部にてガスパイプ254またはプランジャロッドハウジング257に対して装着される。この例では、プランジャロッドは、使用中にガスパイプ254が加圧された場合に長さを伸長させる。このアプローチは、使用されるデバイス内に残る圧力を低下させ得ることにより、再利用可能システムの例でデバイスをリセットすることが容易になり得ることにより、および/または使用後にユーザがキャニスタを除去する場合にプランジャロッド全体が飛び出す危険性が生じないことによって使用するデバイスがより安全になり得ることにより、例えば円筒状プランジャロッドを使用する代替オプションなどの他の代替例に比べて好ましいものとなり得る。
【0141】
本明細書において説明される例の多くは、例えば完全機能型自動注射器などの完全機能型薬剤送達デバイスと共に使用することが可能である。すなわち、パッドと共に使用される薬剤送達デバイス(例えば自動注射器)は、単独で完全に機能するデバイスであることが可能である。
【0142】
任意で、本明細書において説明されるパッドの構成要素のいくつか(または構成要素のいくつかの部分)が透明であることが可能である。これにより、薬剤送達デバイスのユーザは、薬剤送達デバイスの使用の最中に薬剤送達デバイスを(特に薬剤送達デバイスの近位端部を)見ることが可能となり得る。これは、特に、薬剤送達デバイスが予期通りに機能しているか否か(例えば薬剤送達部材ガードが正確に引き戻されたか否か)をユーザが判断するのを可能にするために有用となり得る。例えば、パッドの装着部分の一部またはすべてが透明であることが可能である(特定の例では、管状部分38の一部またはすべてが透明であることが可能である)。同様の静脈内において、例えばスロットまたは切欠部などの開口が、装着部分に(例えば管状部分38に)追加的にまたは代替的に設けられることも可能である。開口を設けることにより、ユーザは薬剤送達デバイスが予期通りに機能しているか否か(例えば薬剤送達部材ガードが正確に引き戻されたか否か)を判断することが可能となり得る。
【0143】
様々な修正を説明してきたが、既述の実施形態に対するさらなる様々な修正もまた可能であり、そのような修正は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく当業者に想起されよう。
【0144】
以下の項では本発明のいくつかの態様を説明する。
1.近位端部から遠位端部まで軸(30)に沿って延在するパッド(10)であって、近位端部はパッドの使用時に注射部位に隣接するパッドの端部であり、パッドが、
薬剤送達デバイス(100、150)を受けるように構成された装着部分(14)と、
装着部分に対して装着された第2の装着部分(16)であって、パッドの近位端部に配置され、パッドの使用時に前記注射部位に対してパッドを装着するように構成された、第2の装着部分(16)と
を備える、パッド(10)。
2.第2の装着部分が接着部分であり、接着部分がパッドの使用時に前記注射部位に対してパッドを接着するように構成される、項1に記載のパッド。
3.装着部分がパッドの遠位端部に位置する、項1または項2に記載のパッド。
4.パッドの接着部分がフランジを備え、フランジが装着部分よりも軸から径方向へとより遠方に延在する、項2または項3に記載のパッド。
5.フランジが可撓性を有する、項4に記載のパッド。
6.接着部分が接着層を備える、項2から項5のいずれか一項に記載のパッド。
7.装着部分が管状部分を備える、項1から項6のいずれか一項に記載のパッド。
8.パッドが薬剤送達部材を備える、項1から項7のいずれか一項に記載のパッド。
9.薬剤送達部材がカニューレである、項8に記載のパッド。
10.パッドが、注射部位中に薬剤送達部材を挿入するように構成された挿入機構を備える、項8または項9に記載のパッド。
11.挿入機構が、注射部位中に薬剤送達部材を挿入するためのニードルを備える、項8から項10のいずれか一項に記載のパッド。
12.挿入機構のニードルが、軸からオフセットされている、項8から項11のいずれか一項に記載のパッド。
13.装着部分および挿入機構のニードルが軸に対して径方向に離間される、項8から項11のいずれか一項に記載のパッド。
14.薬剤送達デバイスの薬剤送達容器を穿刺するように構成された挿入ニードルを備える、項8から項13のいずれか一項に記載のパッド。
15.挿入ニードルが、注射部位中に薬剤送達部材を挿入するためのニードルから離間される、項14に記載のパッド。
16.挿入ニードルと薬剤送達部材との間に延在するチューブまたはチャネルを備える、項14または項15に記載のパッド。
17.装着部分が、薬剤送達デバイスを解除可能に受けるように構成される、項1から項16のいずれか一項に記載のパッド。
18.装着部分が摩擦ロックを備える、項17に記載のパッド。
19.装着部分が、作動された場合にパッドから薬剤送達デバイスを解除する解除機構を備える、項17または項18に記載のパッド。
20.装着部分がスライダを備える、項1から項19のいずれか一項に記載のパッド。
21.スライダが、第1のアームおよび第2のアームを備え、第1のアームおよび第2のアームが、相互から離間され、第1のアームと第2のアームとの間に薬剤送達デバイスを把持するように構成される、項1から項19のいずれか一項に記載のパッド。
22.第1のアームが第1の端部および第2の端部を有し、第2のアームが第1の端部および第2の端部を有し、第1のアームの第1の端部が第2のアームの第1の端部に対して装着され、第1のアームの第2の端部および第2のアームの第2の端部が相互から離間される、項21に記載のパッド。
23.第1のアームおよび第2のアームが、第1のアームおよび第2のアームの第2の端部が相互に対して移動可能となるように可撓性を有する、項21または項22に記載のパッド。
24.第1のアームおよび第2のアームが、ロック位置および解除位置を形成するように構成される、項21から項23のいずれか一項に記載のパッド。
25.ロック位置および解除位置がそれぞれ、アーム同士の間に開口を描画し、解除位置の開口のアーム同士の間の距離が、ロック位置の開口のアーム同士の間の距離よりも長い、項24に記載のパッド。
26.装着部分がハウジングを備え、スライダがハウジングの内部に配置される、項20から項25のいずれか一項に記載のパッド。
27.装着部分が、ユーザ操縦部分および薬剤送達デバイス係合部分を備え、装着部分は、ユーザがユーザ操縦部分を操縦すると、薬剤送達デバイス係合部分が前記薬剤送達デバイスから係合解除できるように構成される、項1から項19のいずれか一項に記載のパッド。
28.ユーザ操縦部分が、軸の周囲に延在する可撓性セクションを備え、装着部分は、ユーザが可撓性セクションの形状を変更した場合に、薬剤送達デバイス係合部分の少なくとも一部分が軸からより遠くに移動されるように構成される、項27に記載のパッド。
29.可撓性セクションが可撓性楕円形セクションであり、装着部分は、可撓性セクションの形状の変化により可撓性楕円形セクションの楕円性を低下させるように構成される、項28に記載のパッド。
30.ユーザ操縦部分が、1つまたは複数のアームにより薬剤送達デバイス係合部分に対して装着される、項27から項29のいずれか一項に記載のパッド。
31.薬剤送達デバイス係合部分が、前記薬剤送達デバイス上の対応する突出部または溝に係合するように構成される溝または突出部を備える、項27から項30のいずれか一項に記載のパッド。
32.装着部分が、薬剤送達デバイスの特徴部に係合するように構成されたアームを備える、項1から項20のいずれか一項に記載のパッド。
33.アームが、前記薬剤送達デバイスの窓フレームに係合するように構成される、項32に記載のパッド。
34.アームが、軸に対して垂直に延在する突出部を備える、項32または項33に記載のパッド。
35.突出部が、前記薬剤送達デバイスの窓フレームに係合するように構成される、項34に記載のパッド。
36.装着部分が、ハンドルと、ハンドルに対して装着される係合部分とを備え、係合部分は、ハンドルが軸に向かって押された場合に、係合部分が薬剤送達デバイスから解除されるように、前記薬剤送達デバイスの装着部分に対して解除可能に装着されるように構成される、項1から項19のいずれか一項に記載のパッド。
37.係合部分が軸とハンドルとの間に位置する、項36に記載のパッド。
38.装着部分が、第1のハンドル、第2のハンドル、第1の係合部分、および第2の係合部分を備え、
第1の係合部分および第2の係合部分がそれぞれ、前記薬剤送達デバイスの装着部分に解除可能に係合するように構成され、
第1のハンドルが第1の係合部分に対して装着され、第2のハンドルが第2の係合部分に対して装着され、
第2のハンドルに向かって第1のハンドルを押すことにより、前記薬剤送達デバイスの装着部分から係合部分が解除される、項1から項19のいずれか一項に記載のパッド。
39.第1の係合部分が、軸と第1のハンドルとの間に位置し、第2の係合部分が、軸と第2のハンドルとの間に位置する、項38に記載のパッド。
40.軸に向かってハンドルを押すことにより、係合部分の少なくとも一部分あるいは第1の係合部分および/または第2の係合部分の少なくとも一部分が軸に対して周方向に移動される、項36から項39のいずれか一項に記載のパッド。
41.装着部分は、薬剤送達デバイスの長手方向軸が軸(30)に対して垂直に延在する状態で薬剤送達デバイスを受けるように構成される、項1から項40のいずれか一項に記載のパッド。
42.装着部分が管状部分を備え、管状部分の長手方向軸が軸(30)に対して垂直に延在する、項1から項41のいずれか一項に記載のパッド。
43.パッドが薬剤送達部材を備え、装着部分がボタンを備え、ボタンを押すことにより薬剤送達部材が近位方向に移動される、項1から項42のいずれか一項に記載のパッド。
44.パッドが、弾性部材およびハウジングを備え、弾性部材が、ハウジングとボタンとの間に延在する、項43に記載のパッド。
45.パッドが、ハウジングを備え、カニューレを備える薬剤送達部材ハウジングを備え、薬剤送達部材ハウジングが、ハウジング内に配置される、項43または項44に記載のパッド。
46.薬剤送達部材ハウジングが、チャネルを備え、チャネルは、ボタンが押される前は装着部分に整列されず、ボタンが押された後に装着部分に整列される、項45に記載のパッド。
47.パッドが、ボタンが押された後に初めて薬剤送達が行われ得るように配置される、項43から項46のいずれか一項に記載のパッド。
48.パッドが、ガスキャニスタと、カートリッジに係合するように構成されるプランジャロッドとを備え、ガスキャニスタの作動により、プランジャロッドが前記カートリッジからの薬剤の放出を結果的に行う、項1から項47のいずれか一項に記載のパッド。
49.項1から項48のいずれか一項に記載のパッドを備える、薬剤送達部材ガード。
50.項49に記載の薬剤送達部材ガードを備える、薬剤送達デバイス。
51.項1から項40のいずれか一項に記載のパッドと薬剤送達デバイスとを備える、装置。
52.薬剤送達デバイスがガードを備える、項51に記載の装置。
53.ガードが薬剤送達部材ガードまたは膜ガードである、項52に記載の装置。
54.薬剤送達デバイスが、パッドの装着部分に係合するように構成される突出部または凹部を備える、項51から項53のいずれか一項に記載の装置。
55.薬剤送達デバイスがハウジングを備え、突出部または凹部がハウジング上に位置する、項54に記載の装置。
56.薬剤送達デバイスが窓フレームを備え、パッドの装着部分が窓フレームに係合するように構成される、項51から項55のいずれか一項に記載の装置。
57.薬剤送達デバイスが自動注射器である、項1から項56のいずれか一項に記載の主題。
58.薬剤送達デバイスが薬剤容器を備える、項1から項57のいずれか一項に記載の主題。
59.薬剤送達デバイスが薬剤送達部材を備える、項1から項57のいずれか一項に記載の主題。
60.ハウジングが、装着部分を備え、装着部分が、項1から項40のいずれか一項に記載のパッド上の対応する装着部分に係合するように構成される、ハウジングを備える自動注射器。
61.注射を実施する方法であって、
注射部位に対してパッドを装着するステップと、
パッドに対して自動注射器を装着するステップと、
注射部位から自動注射器を除去するステップと
を含む、方法。
62.注射部位からパッドを除去するステップをさらに含む、項61に記載の方法。
63.注射は、自動注射器がパッドに対して装着されると自動的に開始される、項62に記載の方法。
64.自動注射器およびパッドが、注射部位から共に除去される、項61から項63のいずれか一項に記載の方法。
65.自動注射器がパッドから除去され、その後にパッドが注射部位から除去される、項61から項63のいずれか一項に記載の方法。
66.注射を実施する方法であって、
用量送達部位に対してパッドを装着するステップと、
パッドに対して薬剤送達デバイスを装着するステップと、
用量送達部位中に薬剤を注射するステップと、
薬剤送達デバイスを除去するステップと
を含む、方法。
67.用量送達部位に対してパッドを装着するステップが、パッドを装着し、用量送達部位中に薬剤送達部材を挿入することからなる、項66に記載の方法。
68.パッドが項1から項40のいずれか一項に記載のパッドである、項61から項66のいずれか一項に記載の方法。
69.注射を実施するために薬剤送達部位に対して薬剤送達デバイスを装着するように構成されるパッドであって、
薬剤送達部位にパッドを装着するための接着剤と、
薬剤送達部位に薬剤送達デバイスを保持するように構成される装着部分と
を備える、パッド。
70.薬剤送達デバイスが、自動注射器または薬剤カートリッジである、項69に記載のパッド。
71.パッドが、注射の時間中に薬剤送達部位に薬剤送達デバイスを保持するように構成される、項69に記載のパッド。
72.パッドが、注射が開始されると注射がハンズフリーで進行し得るように、薬剤送達デバイスを支持するように構成される、項69に記載のパッド。
73.ユーザに対して自動注射器を装着するためのパッドであって、パッドが、
薬剤送達部位に対して装着するための接着部分と、
接着部分に対して装着されたハウジングであって、ハウジングが装着部分を備え、装着部分がパッドに対して自動注射器を装着するためのものである、ハウジングと
を備える、パッド。
74.パッドが、自動注射器がハンズフリーで使用され得るように自動注射器に対して装着される、項73に記載のパッド。
75.薬剤をハンズフリー注射する方法であって、
用量送達部位に対してパッドを装着するステップと、
パッドに対して薬剤送達デバイスを装着するステップと、
薬剤送達デバイスがパッドに対して装着される間に、薬剤送達部位中に薬剤を注入するステップと、
薬剤送達デバイスを除去するステップと
を含む、方法。
【符号の説明】
【0145】
10 パッド
12 フランジ
14 装着部分
16 接着部分
18 接着部分カバー
20 解除ボタン
30 軸
31 周方向
32 径方向
34 ハウジング
36 スライダ
38 管状部分
39 スライダアーム
40 ボタン、ハンドル
42 ロック部分
44 解除部分
50 近位端部
52 遠位端部
55 自動注射器係合部分
56 ユーザ操縦部分
57 係合セクション
58 楕円錐セクション
59 アーム
60 装着アーム
62 アーム部分
64 突出部
100 自動注射器
101 スロープ
102 ハウジング
103 突出部、突出部分
104 グリップ
106 窓
108 ニードル
110 装着部分
112 ニードルガード
113 膜ガード
114 薬剤容器
116 ニードルガードばね
118 リッジ
120 薬剤送達部材
122 ニードルガードアーム
124 後方ハウジング
125 回転子
126 薬剤容器
130 中心部
132 端部
134 角度表面
140 ハンドル
141 突出部
142 開口
143 円弧部、角度付き円弧部
144 テーパ状エッジ
146 近位方向対向表面
150 薬剤送達デバイス
152 カニューレ
154 カニューレ挿入ニードル
156 薬剤送達デバイス挿入ニードル
158 作動ボタン
160 外方ハウジング
162 圧縮可能パッド
164 パディング
165 チューブ
166 連結ハブ
170 膜
172 プランジャ
180 長手方向軸
190 ばね
192 第1のボタンハウジング
193 ウェッジ
194 第2のボタンハウジング
198 ニードルハウジング
200 第1のニードルハウジング
202 第2のニードルハウジング
204 チャネル
206 第2のチャネル
210 シール、ハウジングシール
211 シール、ハウジング連係シール
212 シール、チャネルシール
214 スペーサ
220 チャネル
224 ガイド
226 ガイド
230 クリップ
250 ガスカートリッジ、ガスキャニスタ
252 第1のガスカートリッジハウジング
253 角度付き表面
254 ガスパイプ
256 プランジャロッド
257 プランジャロッドハウジング
258 第2のガスカートリッジハウジング
260 カートリッジ
262 ストッパ