IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許7469523変位検出センサ、制御装置、及び制御システム
<>
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図1
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図2
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図3
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図4
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図5
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図6
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図7
  • 特許-変位検出センサ、制御装置、及び制御システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】変位検出センサ、制御装置、及び制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/02 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B25J19/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022578334
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2022002249
(87)【国際公開番号】W WO2022163536
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021011910
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 邦彦
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269412(JP,A)
【文献】特開2011-152633(JP,A)
【文献】特開2012-016799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ー 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線に関して相対運動可能に連結された第一リンクと第二リンクに取付けた二つのエンコーダを備え、
前記二つのエンコーダは、前記軸線から検出位置までの距離が異なる二つのスケール部材と、二つのスケール部材の目盛りをそれぞれ検出する二つの検出器と、を備え、
前記第二リンクの先端で受けた外力に応じて前記スケール部材と前記検出器の位置関係が変化して前記二つのエンコーダで検出される二つの目盛りに差が生じ、前記二つの目盛りに基づいて前記第二リンクの先端の変位を検出可能にした、変位検出センサ。
【請求項2】
前記検出器と前記スケール部材の一方を支持するベース部材をさらに備え、前記ベース部材は、前記第二リンクの先端に固定された固定端と、前記第一リンクと第二リンクの連結部に配置されていて拘束されない自由端と、を備え、前記自由端に前記検出器と前記スケール部材の前記一方が取付けられ、前記第一リンクに前記検出器と前記スケール部材の他方が固定された、請求項1に記載の変位検出センサ。
【請求項3】
前記二つの目盛りに加え、前記軸線から前記二つのスケール部材の検出位置までの異なる二つの距離と、前記第二リンクの先端から前記スケール部材の前記検出位置までの距離と、に基づき、前記第二リンクの先端の前記変位を算出する変位算出部をさらに備える、請求項2に記載の変位検出センサ。
【請求項4】
前記変位算出部は前記第二リンクの先端の前記変位に応じた補正量をさらに算出する、請求項3に記載の変位検出センサ。
【請求項5】
前記二つのエンコーダは前記軸線回りに回転可能に連結された前記第一リンクと前記第二リンクの相対角度を検出するロータリエンコーダである、請求項1から4のいずれか一項に記載の変位検出センサ。
【請求項6】
前記二つのエンコーダは前記軸線に沿って直進可能に連結された前記第一リンクと前記第二リンクの相対位置を検出するリニアエンコーダである、請求項1から4のいずれか一項に記載の変位検出センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の変位検出センサを取付けた複数のリンクを備える機械を制御する制御装置であって、前記複数のリンクのそれぞれの先端の前記変位に応じた補正量に基づいて前記機械の動作指令を生成する動作指令生成部を備える、制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記二つの目盛りに加え、前記軸線から前記二つのスケール部材の検出位置までの異なる二つの距離と、前記第二リンクの先端から前記スケール部材の前記検出位置までの距離と、に基づき、前記複数のリンクのそれぞれの先端の前記変位を算出する変位算出部をさらに備える、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記変位算出部は前記複数のリンクのそれぞれの先端の前記変位に応じた前記補正量を前記リンク毎にさらに算出する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の変位検出センサと、
前記変位検出センサを取付けた複数のリンクを備える機械と、
前記機械を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は前記複数のリンクのそれぞれの先端の前記変位に応じた補正量に基づいて前記機械の動作指令を生成する動作指令生成部を備える、制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械制御に関し、特に機械先端の変位を検出可能な変位検出センサ、制御装置、及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット、工作機械等の機械は相対運動可能に連結された複数のリンクを備えている。機械先端に加工ツールやワークを持たせて加工を行うアプリケーションでは、機械先端で外力を受けるため、外力によって生じるリンクの撓み、リンク連結部の捻じれ等の影響で機械先端の位置が変化する。機械先端の変位が加工精度に直接影響するため、外力による変位の小さい機械が求められる。これに対し、連結部の出力軸に装着したエンコーダにより出力軸の位置を制御することで連結部の捻じれ、バックラッシ等の影響を無くす技術が知られている。しかしながら、出力軸に装着したエンコーダで出力軸の位置を制御する場合、連結部より先のリンクの撓みによる機械先端の変位には対応できない。本願に関連する技術としては例えば後述の文献が公知である。
【0003】
特許文献1には、ロボットアームにおいて、主たる負荷を受け持つ主アームと、主アームの根元側に固定された固定端と主アームの先端側に延在する自由端とを備えたサブアームと、自由端側に取付けられていて負荷に起因する主アームの撓みを検出する変位検出器と、を備え、変位検出器を用いて撓みを補正してアーム先端の位置決めを行うロボットアームが開示されている。
【0004】
特許文献2には、多関節形ロボットにおいて、回動腕を駆動する電動機の回転角度検出器とは別に、各関節に回動腕同士のなす実際の角度を検出する角度検出器を、直結ないし増速歯車を介して付設した多角形ロボットが記載されている。
【0005】
特許文献3には、二つのエンコーダを備えたエンコーダ装置において、第一軸に取付けた第一スケールと第二軸に取付けた第二スケールとを隣接配置し、第二スケールに第一スケールを検出するための光透過部を備えたエンコーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-125786号公報
【文献】特開昭64-45592号公報
【文献】特開2016-3947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の問題点に鑑み、機械先端の変位を精度良く検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、所定の軸線に関して相対運動可能に連結された第一リンクと第二リンクに取付けた二つのエンコーダを備え、二つのエンコーダは軸線からの距離が異なる二つのスケール部材と二つのスケール部材の目盛りをそれぞれ検出する二つの検出器とを備え、第二リンクの先端で受けた外力に応じてスケール部材と検出器の位置関係が変化して二つのエンコーダでそれぞれ検出される二つの目盛りに差が生じ、二つの目盛りに基づいて第二リンクの先端の変位を検出可能にした、変位検出センサを提供する。
本開示の他の態様は、前述の変位検出センサを取付けた複数のリンクを備える機械を制御する制御装置であって、複数のリンクのそれぞれの先端の変位に応じた補正量に基づいて機械の動作指令を生成する動作指令生成部を備える、制御装置を提供する。
本開示の別の態様は、前述の変位検出センサと、変位検出センサを取付けた複数のリンクを備える機械と、機械を制御する制御装置と、を備え、制御装置は複数のリンクのそれぞれの先端の変位に応じた補正量に基づいて機械の動作指令を生成する動作指令生成部を備える、制御システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様によれば、機械先端の変位を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一実施形態の変位検出センサを示す機械の上面図である。
図2】第一実施形態の変位検出センサを示す機械の斜視図である。
図3】第一実施形態の変位検出センサを示す機械の側面図である。
図4図3に示す変位検出センサの一部拡大図である。
図5】リンク先端の変位の算出例を示す幾何学図である。
図6】第一実施形態の制御システムのブロック図である。
図7】第二実施形態の変位検出センサを示す機械の側面図である。
図8】リンク先端の変位の算出例を示す幾何学図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号が付与されている。また、以下に記載する実施形態は請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではない。
【0012】
図1及び図2は第一実施形態の変位検出センサ20を示す機械10の上面図及び斜視図である。機械10は例えば産業用ロボット、工作機械等の機械である。機械10は軸線Oに関して相対運動可能に連結された第一リンク11と第二リンク12を備えている。変位検出センサ20は第一リンク11と第二リンク12に取付けられる。第一リンク11と第二リンク12は例えば軸線O回りに回転可能に連結されている。第二リンク12はアクチュエータによって駆動される。アクチュエータは例えばモータ13と減速機14である。アクチュエータは減速機を備えないダイレクトモータで構成されてもよい。
【0013】
変位検出センサ20は第一リンク11と第二リンク12に取付けた二つのエンコーダ21、22を備えている。二つのエンコーダ21、22は例えば第一リンク11と第二リンク12の相対角度を検出するロータリエンコーダである。二つのエンコーダ21、22は例えば光学式エンコーダであるが、磁気式エンコーダ等の他の方式のエンコーダでもよい。二つのエンコーダ21、22は軸線Oから検出位置までの距離が異なる二つのスケール部材21a、22aと二つのスケール部材21a、22aの目盛りを検出する検出器21b、22bとを備えている。二つのスケール部材21a、22aは、例えば径の異なる二つのリング状部材であり、軸線Oを中心とした同心円上に配置される。一方、二つの検出器21b、22bは二つのスケール部材21a、22aにそれぞれ対向する位置に配置される。
【0014】
変位検出センサ20は二つの検出器21b、22bを支持するベース部材23をさらに備えているとよい。ベース部材23は、例えば棒状部材であり、第二リンク12の先端に固定された固定端23aと、第一リンク11と第二リンク12の連結部に配置されていて拘束されない自由端23bと、を備えている。ベース部材23の自由端23bに検出器21b、22bが取付けられ、第一リンク11にスケール部材21a、22aが固定される。これにより、第二リンク12の先端で受けた外力に応じてスケール部材21a、22aと検出器21b、22bの位置関係が変化して二つのエンコーダ21、22で検出される二つの目盛りに差が生じる。
【0015】
図3は第一実施形態の変位検出センサ20を示す機械10の側面図である。この図では、外力を受ける前の第二リンク12が二点鎖線で描かれ、外力を受けて撓んだ第二リンク12が実線で描かれている。矢印で示すように第二リンク12の先端に外力を受けると、第二リンク12の撓み、リンク連結部の捻じれ等の影響で第二リンク12の先端(ベース部材23の固定端23a)が位置Aから位置Bへ移動する。つまり第二リンク12の先端がδだけ変位する。一方、ベース部材23は固定端23aが第二リンク12の先端に固定されているものの自由端23bが拘束されてないため、ベース部材23自体は変形しない(つまり撓まない)。従って、第二リンク12の先端の変位δ分だけ検出器21b、22bとスケール部材21a、22aの位置関係が変化して二つのエンコーダ21、22で検出される二つの目盛りに差が生じる。
【0016】
図4図3に示す変位検出センサ20の一部拡大図である。第二リンク12の先端の変位δに応じて検出器21b、22bとスケール部材21a、22aの位置関係が変化して二つのエンコーダ21、22で検出される二つの目盛り、即ち二つの角度θ1、θ2に差が生じている。二つの角度θ1、θ2は外力作用前後の角度変化である。変位検出センサ20は二つの角度θ1、θ2に基づいて第二リンク12の先端の変位δを検出可能にしている。
【0017】
変位検出センサ20は、二つの角度θ1、θ2に加え、軸線Oから二つのスケール部材21a、22aの検出位置C、D(又はC’、D’)までの異なる二つの距離r1、r2と(図4を参照)、第二リンク12の先端(ベース部材23の固定端23a)からスケール部材22aの検出位置Cまでの距離Lと(図3を参照)、に基づき、第二リンク12の先端の変位δを算出する変位算出部(図示せず)をさらに備えるとよい。r1、r2はそれぞれスケール部材21a、22aの半径であり、Lは外力作用前のベース部材23の固定端23aからスケール部材22aの検出位置Cまでの距離であるため、r1、r2、Lは既知の値である。図示しないが、変位算出部は例えばプログラムを実行するプロセッサ、メモリ、入出力部等を備えたコンピュータ装置であるが、プログラムを実行しないFPGA(field-programmable gate array)、ASIC(application specific integrated circuit)等の半導体集積回路で構成されてもよい。
【0018】
図5はリンク先端の変位δの算出例を示す幾何学図である。先ず、変位検出センサ20は既知の値であるr1、r2、Lと外力作用前の二つのエンコーダ21、22の目盛りとをメモリに記憶しておく。そして、変位検出センサ20は外力作用後の二つのエンコーダ21、22の目盛りを取得して二つの角度θ1、θ2を取得する。
【0019】
図5において、外力作用前の第二リンクの先端の位置A(ベース部材の固定端の位置)とスケール部材の検出位置Cを結ぶ線分ACに平行であり且つ外力作用後のスケール部材の検出位置C’を通る線分EFを引き、さらに外力作用後のベース部材の固定端の位置Bから線分EFへ垂線BEを引き、線分ACと垂線BEの交点をGとし、線分EGの長さをL2とし、垂線BEの長さをL3とすると、第二リンクの先端の変位δは以下の式で表すことができる。
【0020】
【数1】
【0021】
また、外力作用後のベース部材の角度∠BC’Eをβとし、ベース部材の固定端の位置Bからスケール部材の検出位置C’までの辺BC’の長さをL’とすると、L3は以下の式で表すことができる。
【0022】
【数2】
【0023】
L’に関し、外力作用後はスケール部材と検出器との間の距離が微小変化するため、この変化量をΔLとすると、辺BC’の長さL’はL’=L+ΔLと表される。ここでΔLはLに対して十分に小さいため、L’=Lと近似できる。よって、L3はさらに以下の式で表すことができる。
【0024】
【数3】
【0025】
一方、L2は、スケール部材の検出位置C’から線分AOに下した垂線である辺C’Hの長さに等しいため、角度θ2とスケール部材の半径r2から以下の式で表すことができる。
【0026】
【数4】
【0027】
式3、式4から既知の値でないβを求めれば、第二リンクの先端の変位δを求められることになる。ここで∠D’C’Oをαとすると、βは以下の式で表すことができる。
【0028】
【数5】
【0029】
式5から既知の値でないαを求めれば、第二リンクの先端の変位δを求められることになる。ここで△OC’D’に注目し、辺C’D’の長さをL1とすると、余弦定理からαは以下の式で表すことができる。
【0030】
【数6】
【0031】
式6から既知の値でないL1を求めれば、第二リンクの先端の変位δを求められることになる。ここで△OC’D’にさらに注目し、辺OD’の長さはr1であり、辺OC’の長さはr2であり、これら二辺の挟む角∠C’OD’は二つの角度θ1、θ2の差であるため、余弦定理からL1は以下の式で表すことができる。
【0032】
【数7】
【0033】
ここでr1、r2、θ1、θ2は既知であるため、第二リンクの先端の変位δを求められることになる。
【0034】
また第二リンクの先端の変位δを補正する場合、位置Bから位置Aまで軸線O回りに第二リンクを回転させる必要がある。この回転角度を補正量εとすると、変位算出部は第二リンクの先端の変位δを補正する補正量εをさらに算出してもよい。補正量εは以下の式で表すことができる。
【0035】
【数8】
【0036】
ここで辺GOは辺EC’と辺C’Fの和である。△BC’Eに注目すると、辺EC’は以下の式で表すことができる。
【0037】
【数9】
【0038】
また△C’OFに注目すると、辺C‘Fは以下の式で表すことができる。
【0039】
【数10】
【0040】
式9、式10から補正量εを算出できることになる。
【0041】
図6は第一実施形態の制御システム1のブロック図である。制御システム1は、変位検出センサ20と、変位検出センサ20を取付けた複数のリンクを備える機械10と、機械10を制御する制御装置30と、を備えている。機械10は例えば垂直多関節ロボットである。機械10は複数のリンクのそれぞれの連結部にモータ13と変位検出センサ20を備えている。変位検出センサ20は例えばロータリエンコーダである。変位検出センサ20は複数のリンクのそれぞれの先端の変位δを検出可能にする。複数のリンクのそれぞれの先端の変位δを補正すれば機械10の先端の変位を補正できることになる。
【0042】
制御装置30は教示プログラムに従って機械10の動作指令を生成する動作指令生成部33を備えている。機械10の動作指令は例えばモータ13の位置指令、速度指令、トルク指令等を含む。動作指令生成部33は複数のリンクのそれぞれの先端の変位δに応じた補正量εに基づいて機械10の動作指令を生成する。動作指令生成部33は例えばモータ13を制御するコントローラ、アンプ等で構成される。
【0043】
制御装置30は、θ1、θ2、r1、r2、及びLを記憶するメモリ31と、θ1、θ2、r1、r2、及びLに基づいて複数のリンクのそれぞれの先端の変位δを算出する変位算出部32と、をさらに備えていてもよい。変位算出部32は例えばプログラムを実行するプロセッサ、メモリ、入出力部等を備えたコンピュータ装置であるが、プログラムを実行しないFPGA(field-programmable gate array)、ASIC(application specific integrated circuit)等の半導体集積回路で構成されてもよい。制御装置30に変位算出部32を設ける場合、変位検出センサ20に変位算出部を設ける必要はない。この場合、変位検出センサ20は機械10の先端で受けた外力に応じて二つのエンコーダで検出される二つの角度θ1、θ2を制御装置30に出力すればよい。
【0044】
変位算出部32は複数のリンクのそれぞれの先端の変位δを補正する補正量εをリンク毎にさらに算出するとよい。動作指令生成部33はこれら補正量εに基づいて機械10の動作指令を生成する。
【0045】
第一実施形態の変位検出センサ20、制御装置30、及び制御システム1の構成及び動作は一例であり、適宜変更できることに留意されたい。例えばベース部材23は、二つの検出器21b、22bを支持するのではなく、二つのスケール部材21a、22aを支持してもよい。つまりベース部材23の自由端23bにスケール部材21a、22aを取付け、第一リンク11に検出器21b、22bを固定してもよい。また、例えば変位検出センサ20がベース部材23を備えるのではなく、機械10がベース部材23を備えていてもよい。
【0046】
また第一リンク11と第二リンク12は、軸線O回りに回転可能に連結されるのではなく、軸線に沿って直進可能に連結されてもよい。つまり二つのエンコーダ21、22は、ロータリエンコーダではなく、リニアエンコーダでもよい。
【0047】
図7は第二実施形態の変位検出センサ20を示す機械10の側面図である。以下では、第一実施形態の変位検出センサ20とは異なる構成及び動作についてのみ説明する。第一リンク11と第二リンク12は例えば軸線Oに沿って直進可能に連結されている。エンコーダ21、22は例えば第一リンク11と第二リンク12の相対位置を検出するリニアエンコーダである。二つのスケール部材21a、22aは、例えば軸線Oから検出位置までの距離が異なる二つの線状部材であり、軸線Oの平行線上に配置される。一方、二つの検出器21b、22bは二つのスケール部材21a、22aにそれぞれ対向する位置に配置される。ベース部材23の自由端23bに検出器21b、22bが取付けられ、第一リンク11にスケール部材21a、22aが固定される。これにより、第二リンク12の先端で受けた外力に応じてスケール部材21a、22aと検出器21b、22bの位置関係が変化して二つのエンコーダ21、22で検出される二つの目盛りに差が生じる。
【0048】
第二リンク12の先端の変位δに応じて検出器21b、22bとスケール部材21a、22aの位置関係が変化して二つのエンコーダ21、22で検出される二つの目盛り、即ち二つの位置P1、P2に差が生じている。二つの位置P1、P2は外力作用前後の位置変化である。変位検出センサ20は二つの位置P1、P2に基づいて第二リンク12の先端の変位δを検出可能にしている。
【0049】
変位検出センサ20は、二つの位置P1、P2に加え、軸線Oから二つのスケール部材21a、22aの検出位置C、Dまでの異なる二つの距離r1、r2と、第二リンク12の先端(ベース部材23の固定端23a)からスケール部材22aの検出位置Cまでの距離Lと、に基づき、第二リンク12の先端の変位δを算出する変位算出部(図示せず)をさらに備えるとよい。r1、r2はそれぞれ軸線Oからスケール部材21a、22aの検出位置C、Dまでの距離であり、Lは外力作用前のベース部材23の固定端23aからスケール部材22aの検出位置Cまでの距離であるため、r1、r2、Lは既知の値である。
【0050】
図8はリンク先端の変位δの算出例を示す幾何学図である。先ず、変位検出センサ20は既知の値であるr1、r2、Lと外力作用前の二つのエンコーダ21、22の目盛りとをメモリに記憶しておく。そして、変位検出センサ20は外力作用後の二つのエンコーダ21、22の目盛りを取得して二つの位置P1、P2を取得する。
【0051】
図8において、外力作用前の第二リンクの先端の位置A(ベース部材の固定端の位置)とスケール部材の検出位置Cを結ぶ線分ACに平行であり且つ外力作用後のスケール部材の検出位置C’を通る線分EFを引き、さらに外力作用後のベース部材の固定端の位置Bから線分EFへ垂線BEを引き、線分ACと垂線BEの交点をGとし、線分EGの長さをL2とし、垂線BEの長さをL3とすると、第二リンクの先端の変位δは以下の式で表すことができる。
【0052】
【数11】
【0053】
また、外力作用後のベース部材の角度∠BC’Eをβとし、ベース部材の固定端の位置Bからスケール部材の検出位置C’までの辺BC’の長さをL’とすると、L3は以下の式で表すことができる。
【0054】
【数12】
【0055】
L’に関し、外力作用後はスケール部材と検出器との間の距離が微小変化するため、この変化量をΔLとすると、辺BC’の長さL’はL’=L+ΔLと表される。ここでΔLはLに対して十分に小さいため、L’=Lと近似できる。よって、L3はさらに以下の式で表すことができる。
【0056】
【数13】
【0057】
一方、L2は、スケール部材の検出位置Cから検出位置C’までの長さに等しいため、以下の式で表すことができる。
【0058】
【数14】
【0059】
式13、式14から既知の値でないβを求めれば、第二リンクの先端の変位δを求められることになる。ここで△C’FD’に注目すると、βは以下の式で表すことができる。
【数15】
【0060】
ここでr1、r2、P1、P2は既知であるため、第二リンクの先端の変位δを求められることになる。
【0061】
また第二リンクの先端の変位δを補正する場合、位置Bから位置Aまで軸線Oに沿って第二リンクを直進させる必要がある。この直進位置を補正量εとすると、変位算出部は第二リンクの先端の変位δを補正する補正量εをさらに算出してもよい。補正量εは、変位δに等しいため、以下の式で表すことができる。
【0062】
【数16】
【0063】
以上の実施形態によれば、機械10の先端の変位を精度良く検出できる。また種々のリンク連結構造に応じて機械10の先端の変位を精度良く補正できる。
【0064】
なお、前述のプロセッサで実行されるプログラムは、コンピュータ読取り可能な非一時的記録媒体、例えばCD-ROM等に記録して提供してもよいし、或いは有線又は無線を介してWAN(wide area network)又はLAN(local area network)上のサーバ装置から配信して提供してもよいことに留意されたい。
【0065】
本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0066】
1 制御システム
10 機械
11 第一リンク
12 第二リンク
13 モータ
14 減速機
20 変位検出センサ
21、22 エンコーダ
21a、22a スケール部材
21b、22b 検出器
23 ベース部材
23a 固定端
23b 自由端
30 制御装置
31 メモリ
32 変位算出部
33 動作指令生成部
O 軸線
δ 変位
ε 補正量
L ベース部材の固定端からスケール部材の検出位置までの距離
r1、r2 軸線からスケール部材の検出位置までの距離
θ1、θ2 二つのエンコーダによって検出された二つの角度
P1、P2 二つのエンコーダによって検出された二つの位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8