(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】金属パイプ及び金属パイプの成形方法
(51)【国際特許分類】
B21D 26/047 20110101AFI20240409BHJP
B21D 26/033 20110101ALI20240409BHJP
B21D 51/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B21D26/047
B21D26/033
B21D51/02
(21)【出願番号】P 2023094097
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2019060904の分割
【原出願日】2019-03-27
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 雅之
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150110(WO,A1)
【文献】特開2011-031265(JP,A)
【文献】米国特許第04170622(US,A)
【文献】特開2005-297060(JP,A)
【文献】特開2017-018963(JP,A)
【文献】米国特許第06158122(US,A)
【文献】米国特許第06209372(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033-26/047
B21D 51/02
B29C 49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプ材料を成形して金属パイプを製造する金属パイプの製造方法であって、
金属パイプ材料を加熱し、
前記金属パイプ材料を加熱した状態で複動金型を挿入し、
前記金属パイプ材料の内部に流体を供給し、
流体供給後に前記金属パイプ材料の内部が加圧された状態で、前記複動金型を退避させることで前記金属パイプ材料の内部に突出部を形成する、金属パイプの製造方法。
【請求項2】
一対の前記複動金型を前記金属パイプ材料に対して互いに対向する方向からそれぞれ挿入することで、前記金属パイプ材料の内部に一対の前記突出部を形成する、請求項1に記載された金属パイプの製造方法。
【請求項3】
前記金属パイプ材料の内部に前記流体を供給することで、前記金属パイプ材料の外側へ突出する外側フランジ部を更に形成する、請求項1に記載された金属パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属パイプ及び金属パイプの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形金型内で金属パイプ材料を膨張させることによって、パイプ部と当該パイプ部から外側に延びる外側フランジ部とを有する金属パイプを成形する装置が知られている。例えば、特許文献1には、パイプ部を成形するためのメインキャビティ部と、該メインキャビティ部に連通し、一対の外側フランジ部を成形するための一対のサブキャビティ部を形成する成形金型を備える成形装置が開示されている。この成形装置は、成形金型を閉じると共に、加熱された金属パイプ材料に気体を吹き込むことにより、メインキャビティ部及び一対のサブキャビティ部内で金属パイプ材料を膨張させ、パイプ部及び一対の外側フランジ部を有する金属パイプを成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置では、金属パイプに一対の外側フランジ部を形成することで金属パイプの剛性を高めている。しかしながら、外側フランジ付きの金属パイプは、外側フランジ部を有していない金属パイプと比較して、金属パイプの幅方向において外側フランジ部の分だけ外形寸法が大きいので、他の部材と干渉するなどして所定のスペース内に当該金属パイプを配置することができなくなる場合がある。
【0005】
そこで、本発明では、外形寸法の増加を抑制しつつ、高い剛性を有する金属パイプ及びその成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、一体成形品である鋼製の金属パイプが提供される。この金属パイプは、筒状の本体部と、前記本体部から該本体部の内側へ突出する内側フランジと、を備える。
【0007】
この態様では、内側フランジ部によって金属パイプの剛性を高めることができる。この内側フランジ部は本体部の内側へ突出しているので、金属パイプの外形寸法の増加を防止することができる。
【0008】
一実施形態では、フランジ部が、内側に折り畳まれた鋼材から構成されていてもよい。内側フランジ部を内側に折り畳まれた鋼材から構成することで、本体部と内側フランジ部とを一体的に構成することができ、その結果、金属パイプの剛性を高めることができる。
【0009】
一実施形態では、本体部から該本体部の内側へ突出する別の内側フランジ部を更に備え、内側フランジ部と別の内側フランジ部とが、本体部から互いに近づく方向に向けて突出していてもよい。互いに近づく方向に突出する内側フランジ部及び別の内側フランジ部を備えることで、金属パイプの剛性をより高めることができる。
【0010】
一実施形態では、本体部から該本体部の外側に突出する外側フランジ部を更に備えていてもよい。このような外側フランジ部を備えることによって金属パイプの剛性をより高めることができる。
【0011】
一態様では、成形装置を用いて、筒状の本体部と、本体部から該本体部の内側へ突出する内側フランジとを備える鋼製の金属パイプを成形する成形方法が提供される。この成形装置は、上型及び下型を有し、上型と下型との間に金属パイプ材料を成形するためのメインキャビティ部を形成する成形金型と、メインキャビティ部内を上型と下型の対向方向に沿って進退動可能な複動金型と、メインキャビティ部内に配置された金属パイプ材料を加熱する加熱機構と、加熱された金属パイプ材料内に気体を供給する気体供給部と、を備えている。上型は、上型基部と、メインキャビティ部を介して離間して配置された一対の上側摺動部であり、互いの離間距離が変化するように上型基部に対して摺動可能な、該一対の上側摺動部と、を含み、下型は、下型基部と、メインキャビティ部を介して離間して配置された一対の下側摺動部であり、互いの離間距離が変化するように下型基部に対して摺動可能な、該一対の下側摺動部と、を含んでいる。上記成形方法は、複動金型をメインキャビティ部内に進入させて、メインキャビティ部内に配置された金属パイプ材料の第1の部分を対向方向から押し潰す工程と、一対の上側摺動部の離間距離、及び、一対の下側摺動部の離間距離を小さくなるように、一対の上側摺動部及び一対の下側摺動部を上型基部及び下型基部に対してそれぞれ摺動させる工程と、加熱された金属パイプ材料内に気体供給部から気体を供給しながら、複動金型をメインキャビティ部内から退避させることで、金属パイプの第1の部分を内側フランジ部に成形すると共に、金属パイプの第2の部分を本体部に成形する工程と、を含んでいる。
【0012】
上記態様に係る方法では、本体部及び内側フランジ部を備える金属パイプを成形することができる。したがって、金属パイプの外形寸法の増加を防止しつつ、金属パイプの剛性を高めることができる。
【0013】
一実施形態に係る成形方法では、成形金型が、一対の上側摺動部と一対の下側摺動部との間に、メインキャビティ部に連通し、本体部から該本体部の外側へ突出する外側フランジ部を成形するためのサブキャビティ部を更に形成し、加熱された金属パイプ材料内に気体供給部から気体を供給することによって、金属パイプ材料の第3の部分をサブキャビティ内で膨張させて外側フランジ部に成形してもよい。この実施形態では、外側フランジ部を更に備える金属パイプを成形することができるので、金属パイプの剛性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、外形寸法の増加を抑制しつつ、高い剛性を有する金属パイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る成形装置を示す概略構成図である。
【
図2】電極周辺の拡大図であって、(a)は電極が金属パイプ材料を保持した状態を示す図、(b)は電極に気体供給ノズルを押し付けた状態を示す図、(c)は電極の正面図である。
【
図4】第1実施形態に係る金属パイプの成形方法を説明する図である。
【
図5】一実施形態に係る金属パイプを示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る金属パイプの成形方法を説明する図である。
【
図7】実施例1~3及び比較例1,2に係る金属パイプを示す断面図である。
【
図8】実施例1~3及び比較例1,2に係る金属パイプの断面二次モーメント及び断面係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態の金属パイプの成形方法に用いられる成形装置について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。以下では、水平方向における一方の方向をX軸方向とし、水平方向においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向として説明する。
【0017】
〈成形装置の構成〉
図1は、本実施形態に係る成形装置の概略構成図である。
図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11からなる成形金型13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
【0018】
成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)16を備える。下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。
【0019】
更に、下型11の左右端(
図1における左右端)近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(下側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置されることで、下側電極17,18は、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14に接触する。これにより、下側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0020】
下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
【0021】
成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド81に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)24を備える。このキャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられる。
【0022】
上型12の左右端(
図1における左右端)近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(上側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置された状態において、上側電極17,18は、下方に移動することで、上型12と下型11との間に配置された金属パイプ材料14に接触する。これにより、上側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0023】
上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材101がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材101は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータの可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80のスライド81側に保持されている。
【0024】
パイプ保持機構30の右側部分において、電極18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されていて(
図2(c)参照)、当該凹溝18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の右側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0025】
パイプ保持機構30の左側部分において、電極17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されていて(
図2(c)参照)、当該凹溝17aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の左側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0026】
図1に示されるように、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、上記スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
【0027】
図3は、
図1に示す成形金型13の断面図である。
図3(a)に示されるように、下型11は、下型基部110、第1の下側摺動部112a及び第2の下側摺動部112bを有している。また、上型12は、上型基部120、第1の上側摺動部122a及び第2の上側摺動部122bを有している。以下、特に区別する必要がない場合には、第1の下側摺動部112a及び第2の下側摺動部112bを一対の下側摺動部112と称し、第1の上側摺動部122a及び第2の上側摺動部122bを一対の上側摺動部122と称するものとする。
【0028】
下型11の上面には、下型11の中央のキャビティ16の底面を基準ラインLV1とすると、一対の下側摺動部112による段差が形成されている。キャビティ16の右側(
図3において右側、
図1において紙面奥側)には第1の下側摺動部112aが形成され、キャビティ16の左側(
図3において左側、
図1において紙面手前側)には第2の下側摺動部112bは形成されている。第1の下側摺動部112a及び第2の下側摺動部112bは、略矩形の断面形状を有しており、X軸方向(
図3の紙面方向)に沿って互いに平行に延在している。第1の下側摺動部112a及び第2の下側摺動部112bは、基準ラインLV1から上型12側に向けて突出している。第1の下側摺動部112aの基準ラインLV1からの突出量は、第2の下側摺動部112bの基準ラインLV1からの突出量と略同一である。
【0029】
一方、上型12の下面には、上型12の中央のキャビティ24の底面を基準ラインLV2とすると、一対の上側摺動部122による段差が形成されている。キャビティ24の右側(
図3において右側、
図1において紙面奥側)には第1の上側摺動部122aが形成され、キャビティ24の左側(
図3において左側、
図1において紙面手前側)には第2の上側摺動部122bは形成されている。第1の上側摺動部122a及び第2の上側摺動部122bは、略矩形の断面形状を有しており、X軸方向(
図3の紙面方向)に沿って互いに平行に延在している。第1の上側摺動部122a及び第2の上側摺動部122bは、基準ラインLV2から下型11側に向けて突出している。第1の上側摺動部122aの基準ラインLV2からの突出量は、第2の上側摺動部122bの基準ラインLV2からの突出量と略同一である。
【0030】
また、第1の下側摺動部112aは第1の上側摺動部122aと対向しており、第2の下側摺動部112bは第2の上側摺動部122bと対向している。これにより、上型12及び下型11が嵌合した際に、第1の下側摺動部112aの上面112a1と第1の上側摺動部122aの下面122a1とが当接すると共に、第2の下側摺動部112bの上面112b1と第2の上側摺動部122bの下面122b1とが当接する。このとき、上型12のキャビティ24と、下型11のキャビティ16との間には、メインキャビティ部MCが形成される(
図3(b)参照)。このメインキャビティ部MCは、上型12及び下型11が嵌合した際に、上型12のキャビティ24と、下型11のキャビティ16と、一対の下側摺動部112の対向する一対の側面112a2,112b2と、一対の上側摺動部122の対向する一対の側面122a2,122b2とによって画成される空間である。
【0031】
また、下型基部110の上面には、一対の下側摺動部112を駆動するための一対の下側駆動機構113が設けられている。一対の下側駆動機構113の各々は、枠体114を有している。枠体114は、断面コ字状(U字状)をなしており、一対の下側摺動部112に隣接して配置されるように下型基部110上に設けられている。枠体114は、下型基部110の上面と共に流体室115を画成している。
【0032】
流体室115には、仕切板116が収容されている。この仕切板116によって、流体室115の内部は、第1の流体室115aと、当該第1の流体室115aよりも一対の下側摺動部112側に位置する第2の流体室115bとに区画されている。この仕切板116は、流体室115内でY軸方向に沿って摺動可能に構成されている。仕切板116がY軸方向に摺動することによって、第1の流体室115a及び第2の流体室115bの体積が変化する。仕切板116の一方の主面には、連結部材117の一端が接続されており、当該連結部材117の他端は、一対の下側摺動部112に接続されている。
【0033】
また、下型基部110には、作動流体用の流路である一対の第1の流路118a及び一対の第2の流路118bが形成されている。一対の第1の流路118aの一端は、一対の下側駆動機構113の第1の流体室115aにそれぞれ連通している。一対の第1の流路118aの他端は、配管119aを介して一対の流体供給装置105にそれぞれ接続されている。同様に、一対の第2の流路118bの一端は、一対の下側駆動機構113の第2の流体室115bにそれぞれ連通している。一対の第2の流路118bの他端は、配管119bを介して一対の流体供給装置105にそれぞれ接続されている。
【0034】
各流体供給装置105は、配管119a及び配管119bを介して、第1の流体室115a及び第2の流体室115bに作動流体を供給する装置である。また、流体供給装置105は、第1の流体室115a及び第2の流体室115b内の作動流体を回収することも可能である。
【0035】
一対の下側摺動部112は、Y軸方向(
図3の左右方向)に移動可能なように、下型基部110に対して取り付けられている。一実施形態では、下型基部110の上面には、左右方向に延在する溝が形成されている。一方、一対の下側摺動部112の下面には、当該溝に係合するレールが形成されている。したがって、例えば流体供給装置105から第1の流体室115a内に作動流体が供給されると、第1の流体室115a内の圧力が高まることにより、第1の流体室115aの体積が大きくなり、第2の流体室115bの体積が小さくなるよう、流体室115内で仕切板116がY軸方向に移動する。反対に、流体供給装置105から第2の流体室115b内に作動流体が供給されると、第2の流体室115b内の圧力が高まることにより、Y軸方向における第1の流体室115aの体積が小さくなり、第2の流体室115bの体積が大きくなるように、流体室115内で仕切板116がY軸方向に移動する。このように、流体室115内で仕切板116が移動することにより、仕切板116に連結された一対の下側摺動部112が、一対の下側摺動部112に形成されたレールと下型基部110に形成された溝とが係合した状態で、互いに近づく方向、又は、互いに離れる方向に移動する。一対の下側摺動部112のY軸方向の位置を個別に変化させることにより、一対の下側摺動部112のY軸方向の離間距離D1が調整される。
【0036】
また、上型基部120の下面には、一対の上側摺動部122を駆動するための一対の上側駆動機構123が設けられている。一対の上側駆動機構123の各々は、枠体124を有している。枠体124は、断面コ字状(U字状)をなしており、一対の上側摺動部122に隣接して配置されるように上型基部120の下面に取り付けられている。枠体124は、上型基部120の下面と共に流体室125を画成している。
【0037】
流体室125には、仕切板126が収容されている。この仕切板126によって、流体室125の内部は、第1の流体室125aと、当該第1の流体室125aよりも一対の上側摺動部122側に位置する第2の流体室125bとに区画されている。この仕切板126は、流体室125内でY軸方向に沿って摺動可能に構成されている。仕切板116がY軸方向に摺動することによって、第1の流体室115a及び第2の流体室115bの体積が変化する。仕切板126の一方の主面には、連結部材127の一端が接続されており、当該連結部材127の他端は、一対の上側摺動部122に接続されている。
【0038】
また、上型基部120には、作動流体用の流路である一対の第3の流路128a及び一対の第4の流路128bが形成されている。一対の第3の流路128aの一端は、一対の上側駆動機構123の第1の流体室125aにそれぞれ連通している。一対の第3の流路128aの他端は、配管129aを介して一対の流体供給装置105にそれぞれ接続されている。同様に、一対の第4の流路128bの一端は、一対の上側駆動機構123の第2の流体室125bにそれぞれ連通している。一対の第4の流路128bの他端は、配管129bを介して一対の流体供給装置105にそれぞれ接続されている。
【0039】
流体供給装置105は、配管129a及び配管129bを介して、第1の流体室125a及び第2の流体室125bに作動流体を供給し、或いは、第1の流体室125a及び第2の流体室125bから作動流体を回収することが可能である。
【0040】
一対の上側摺動部122は、Y軸方向(
図3の左右方向)に移動可能なように、上型基部120に対して取り付けられている。一実施形態では、上型基部120の下面には、左右方向に延在する溝が形成されている。一方、一対の上側摺動部122の上面には、当該溝に係合するレールが形成されている。したがって、例えば流体供給装置105から第1の流体室125a内に作動流体が供給されると、第1の流体室125a内の圧力が高まることにより、第1の流体室125aの体積が大きくなり、第2の流体室125bの体積が小さくなるように、流体室125内で仕切板126がY軸方向に移動する。反対に、流体供給装置105から第2の流体室125b内に作動流体が供給されると、第2の流体室125b内の圧力が高まることにより、第1の流体室125aの体積が小さくなり、第2の流体室125bの体積が大きくなるように、流体室125内で仕切板126が移動する。このように、流体室125内で仕切板126が移動することにより、仕切板126に連結された一対の上側摺動部122が、一対の上側摺動部122に形成されたレールと上型基部120に形成された溝とが係合した状態で、互いに近づく方向、又は、互いに離れる方向に移動する。一対の上側摺動部122のY軸方向の位置を個別に変化させることにより、一対の上側摺動部122のY軸方向の離間距離D2が調整される。
【0041】
一対の流体供給装置105は、後述する制御部70に接続されている。制御部70は、一対の流体供給装置105に制御信号を送出することにより、一対の下側摺動部112の左右方向の離間距離D1、及び、一対の上側摺動部122の左右方向の離間距離D2を制御する。このように離間距離D1,D2が調整されることにより、メインキャビティ部MCのY軸方向の幅が調節される。
【0042】
また、
図3(a),(b)に示すように、成形装置10は第1の複動金型130a及び第2の複動金型130bを更に備えている。第1の複動金型130a及び第2の複動金型130bは、板状をなしており、XZ平面に沿って設けられている。第1の複動金型130a及び第2の複動金型130bは、Y軸方向における下型11及び上型12の中心線を通るように、下型基部110及び上型基部120をそれぞれ貫通して延在している。以下、特に区別する必要がない場合には、第1の複動金型130a及び第2の複動金型130bを一対の複動金型130と称するものとする。
【0043】
一対の複動金型130は、Z軸方向(下型11と上型12との対向方向)に沿って移動可能に構成されている。第1の複動金型130aには、アクチュエータ134が接続されており(
図1参照)、このアクチュエータ134が作動することによって、第1の複動金型130aがZ軸方向に移動する。第2の複動金型130bには、アクチュエータ132が接続されており(
図1参照)、このアクチュエータ132が作動することによって、第2の複動金型130bがZ軸方向に移動する。
図3(b)に示すように、一対の複動金型130がZ軸方向に移動することによって、一対の複動金型130はメインキャビティ部MC内をZ軸方向に進退動する。
【0044】
再び
図1を参照する。
図1に示すように、加熱機構50は、電力供給部55と、電力供給部55と電極17,18とを電気的に接続するブスバー52と、を備える。電力供給部55は、直流電源及びスイッチを含み、電極17,18が金属パイプ材料14に電気的に接続された状態において、ブスバー52、電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能とされている。なお、ブスバー52は、ここでは、下側電極17,18に接続されている。
【0045】
この加熱機構50では、電力供給部55から出力された直流電流は、ブスバー52によって伝送され、電極17に入力される。そして、直流電流は、金属パイプ材料14を通過して、電極18に入力される。そして、直流電流は、ブスバー52によって伝送されて電力供給部55に入力される。
【0046】
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに合わさる形状に構成されている(
図2(a),(b)参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは
図2(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
【0047】
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14を膨張させるための作動圧力を有するガスを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。
【0048】
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、
図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、駆動機構80及び電力供給部55等を制御する。
【0049】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0050】
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、第1実施形態に係る金属パイプの成形方法について説明する。この方法は、
図1に示す成形装置10を用いて行われる。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。これにより、
図4(a)に示すように、金属パイプ材料14が下型11と上型12との間に配置される。
【0051】
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。このとき、金属パイプ材料14は、電極17,18に形成される凹溝17a,18a、及び絶縁材91,101に形成される凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。
【0052】
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50の電力供給部55を制御し電力を供給する。すると、ブスバー52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。すなわち、金属パイプ材料14は通電加熱状態となる。
【0053】
続いて、
図4(b)に示すように、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対して成形金型13が閉じられる。これにより、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とが組み合わされ、下型11と上型12との間のメインキャビティ部MC内に金属パイプ材料14が配置密閉される。また、成形金型13が閉じられると同時に、アクチュエータ132,134が作動することによって、一対の複動金型130がZ軸方向に沿って移動して、メインキャビティ部MC内に進入する。一対の複動金型130がメインキャビティ部MC内に進入することにより、メインキャビティ部MC内に配置された金属パイプ材料14の一部(第1の部分)14a,14bが、Z軸方向の両側から押し潰される(金属パイプ材料の第1の部分を対向方向から押し潰す工程)。これにより、金属パイプ材料14の一部14a,14bが、金属パイプ材料14の他の一部(第2の部分)14cから内側に張り出し、当該金属パイプ材料14の径方向内側に折り曲げられる。
【0054】
次いで、流体供給装置105から作動流体が第1の流体室115a,125aに供給されることによって、
図4(b)に示すように、一対の下側摺動部112の側面112a2,112b2、及び、一対の上側摺動部122の側面122a2,122b2が金属パイプ材料14の外周面に接触するように、一対の下側摺動部112及び一対の上側摺動部122が移動する。すなわち、一対の下側摺動部112及び一対の上側摺動部122は、Y軸方向におけるメインキャビティ部MCの幅が狭くなるように下型基部110及び上型基部120に対してそれぞれ摺動する(一対の上側摺動部及び一対の下側摺動部を上型基部及び下型基部に対してそれぞれ摺動させる工程)。これにより、Y軸方向における一対の下側摺動部112の離間距離D1及び上側摺動部122の離間距離D2が小さくなる(
図3(a)参照)。
【0055】
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする(
図2(b)参照)。シール完了後、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込む。次いで、
図4(c)に示すように、高圧ガスを金属パイプ材料14に吹き込みながら、アクチュエータ132,134を作動することによって、一対の複動金型130をメインキャビティ部MC内から退避させる。
【0056】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。熱膨張したガスの圧力によって、加熱により軟化した金属パイプ材料14の一部14cはメインキャビティ部MCの形状に沿って成形される(第2の部分を本体部に成形する工程)。このとき、一対の複動金型130によって押し潰され、金属パイプ材料14の内側に折り曲げられた金属パイプ材料14の一部14a,14bは折り畳まれた状態で圧着され、金属パイプ材料14の内側に延びる内側フランジ部104に成形される(第1の部分を内側フランジ部に成形する工程)。
【0057】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0058】
上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行うことにより、金属パイプ100を得る。
【0059】
図5は、上述した実施形態に係る成形方法によって成形された金属パイプ100の断面図である。
図5に示すように、金属パイプ100は、一体成形品である鋼製の金属パイプであり、本体部102及び一対の内側フランジ部104を有している。本体部102は、筒状をなしており、その内部に空間Sを画成している。本体部102は、高圧ガスが金属パイプ材料14内へ吹き込まれ、金属パイプ材料14の一部14cがメインキャビティ部MCを画成する壁面の形状に沿って膨張することによって筒状に成形される。
【0060】
一対の内側フランジ部104は、本体部102から金属パイプ100の内側に突出している。すなわち、一対の内側フランジ部104は、本体部102から延び、空間S内に配置されている。これら一対の内側フランジ部104は、一対の複動金型130によって押し潰され、金属パイプ材料14の内側に折り曲げられた金属パイプ材料14(鋼材)の一部14a,14bの端部が、高圧ガスの圧力によって圧着されることにより形成される。
図5に示す実施形態では、一対の内側フランジ部104は、本体部102から互いに近づく方向に突出(延在)している。
【0061】
これら一対の内側フランジ部104を備えることで、金属パイプ100の剛性が高められる。一方、一対の内側フランジ部104は本体部102の内側へ突出しているので、金属パイプ100の外形寸法の増加は抑えられる。
【0062】
次に、第2実施形態に係る金属パイプの成形方法について説明する。本実施形態に係る方法は、
図1に示す成形装置10と略同一の構成を有する成形装置を用いて行われる。ただし、この成形装置は、成形金型13に代えて成形金型13Aを備えている。成形金型13Aは、第1の複動金型130aを備えていない点で成形金型13と異なっている。以下では、上述した第1実施形態に係る金属パイプの成形方法との相違点について主に説明し、重複する説明は省略する。
【0063】
本実施形態に係る方法では、最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。これにより、
図6(a)に示すように、金属パイプ材料14が下型11と上型12との間に配置される。
【0064】
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。
【0065】
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50の電力供給部55を制御し電力を供給する。すると、ブスバー52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。すなわち、金属パイプ材料14は通電加熱状態となる。
【0066】
続いて、
図6(b)に示すように、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対して成形金型13が閉じられる。このとき、成形金型13は完全に閉じられず、第1の下側摺動部112aの上面112a1と第1の上側摺動部122aの下面122a1との間、及び、第2の下側摺動部112bの上面112b1と第2の上側摺動部122bの下面122b1との間に隙間が形成されるように、上型12が下型11側に移動する。
【0067】
このように、上型12が移動することにより、上型12のキャビティ24の底面(基準ラインLV1となる表面)と、下型11のキャビティ16の底面(基準ラインLV2となる表面)との間には、メインキャビティ部MCが形成される。また、第1の下側摺動部112aの上面112a1と第1の上側摺動部122aの下面122a1との間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部SC1が形成される。同様に、第2の下側摺動部112bの上面112b1と第2の上側摺動部122bの下面122b1との間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部SC2が形成される。サブキャビティ部SC1,SC2は、金属パイプに一対の外側フランジ部106を形成するための空間である。
【0068】
図6(b)に示すように、成形金型13が閉じられると同時に、アクチュエータ132が作動することによって、第2の複動金型130bがZ軸方向に沿って移動してメインキャビティ部MC内に進入する。第2の複動金型130bがメインキャビティ部MC内に進入することにより、メインキャビティ部MC内に配置された金属パイプ材料14の一部(第1の部分)14aが、上方(Z軸方向)から押し潰される。これにより、金属パイプ材料14の一部14aが、金属パイプ材料14の他の一部(第2の部分)14cから内側に張り出し、当該金属パイプ材料14の径方向内側に折り曲げられる。
【0069】
次いで、
図6(b)に示すように、一対の下側摺動部112の側面112a2,112b2、及び、一対の上側摺動部122の側面122a2,122b2が金属パイプ材料14の一部14cに接触するように、一対の下側摺動部112及び一対の上側摺動部122が移動する。すなわち、Y軸方向におけるメインキャビティ部MCの幅が狭くなるように、一対の下側摺動部112及び一対の上側摺動部122が下型基部110及び上型基部120に対して摺動する。これにより、Y軸方向における一対の下側摺動部112の離間距離D1及び上側摺動部122の離間距離D2が小さくなる。
【0070】
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする(
図2(b)参照)。シール完了後、金属パイプ材料14内へ低圧ガスが吹き込まれる。金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。これにより、金属パイプ材料14の一部14cは、メインキャビティ部MC内で凹部16,24に倣うように膨張すると共に、金属パイプ材料14の他の一部(第3の部分)14d,14eが、サブキャビティ部SC1,SC2内にそれぞれ入り込むように膨張する。
【0071】
次いで、
図6(c)に示すように、金属パイプ材料14内に低圧ガスを吹き込みながら、アクチュエータ132を作動することによって、第2の複動金型130bをメインキャビティ部MC内から退避させる。このとき、第2の複動金型130bによって押し潰され、金属パイプ材料14の内側に折り曲げられた金属パイプ材料14の一部14aは折り畳まれた状態で圧着され、金属パイプ材料14の内側に延びる内側フランジ部104が成形される。
【0072】
次いで、成形金型13が更に型閉じし、
図6(d)に示されるように、メインキャビティ部MC及びサブキャビティ部SC1,SC2が下型11と上型12との間でさらに狭められていく。また、金属パイプ材料14内に上述の低圧ガスよりも高圧の高圧ガスが吹き込まれる。これにより、
図6(d)に示すように、金属パイプ材料14はメインキャビティ部MCの形状に沿って成形されると共に、金属パイプ材料14の一部14d,14eが外側に折り畳まれた状態でそれぞれ圧着され、一対の外側フランジ部106が形成される。
【0073】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行うことにより、金属パイプ100Aを得る。
【0074】
第2実施形態に係る方法によって成形された金属パイプ100Aは、本体部102、内側フランジ部104及び一対の外側フランジ部106を有している(
図6(d)参照)。本体部102は、筒状をなしており、その内部に空間Sを画成している。本体部102は、高圧ガスが金属パイプ材料14内へ吹き込まれ、金属パイプ材料14がメインキャビティ部MCを画成する壁面の形状に沿って膨張することによって筒状に成形される。
【0075】
内側フランジ部104は、本体部102から金属パイプ100Aの内側に突出している。すなわち、内側フランジ部104は、本体部102から延び、空間S内に配置されている。この内側フランジ部104は、第2の複動金型130bによって押し潰され、金属パイプ材料14の内側に折り曲げられた金属パイプ材料14の端部が、圧着されることにより形成される。
【0076】
一対の外側フランジ部106は、本体部102から金属パイプ100の外側に突出している。一対の外側フランジ部106は、金属パイプ材料14の一部14d,14eがサブキャビティ部SC1,SC2内で折り畳まれた状態で圧着されることにより形成される。
図6(d)に示す実施形態では、一対の外側フランジ部106は、本体部102から互いに離れる方向に突出している。
【0077】
次に、
図7を参照して上記実施形態に係る金属パイプ100,100Aの作用・効果について説明する。
【0078】
図7は、実施例1~3及び比較例1,2に係る金属パイプを示す断面図である。
図7に示す金属パイプSA1は、比較例1に係る金属パイプであり、筒状の本体部102と、本体部102から外側に延びる一対の外側フランジ部106とを有している。この本体部102は、y方向に46mmの幅を有しており、x方向に28mmの高さを有している。一対の外側フランジ部106は、本体部102からy方向に17mm突出している。
図7に示す金属パイプSA4は、比較例2に係る金属パイプであり、筒状の本体部102のみから構成されている。この本体部102は、y方向に46mmの幅を有しており、x方向に28mmの高さを有している。
【0079】
図7に示す金属パイプSA2及びSA3は、それぞれ実施例1及び実施例2に係る金属パイプである。金属パイプSA2及びSA3は、筒状の本体部102と、本体部102から内側に突出する一対の内側フランジ部104を有している。これらの本体部102は、金属パイプSA1及び金属パイプSA4の本体部102と同じ寸法を有している。また、金属パイプSA2の一対の内側フランジ部104は、金属パイプSA3の一対の内側フランジ部104よりも長くなっている。
【0080】
図7に示す金属パイプSA5は、実施例3に係る金属パイプであり、筒状の本体部102と、本体部102から内側に突出する内側フランジ部104と、本体部102から外側に突出する一対の外側フランジ部106とを有している。金属パイプSA5の本体部102は、金属パイプSA1及び金属パイプSA4の本体部102と同じ寸法を有している。金属パイプSA5の外側フランジ部106は、金属パイプSA1の外側フランジ部106と同じ寸法を有している。
【0081】
図8は、金属パイプSA1~SA5の断面二次モーメント及び断面係数を示している。なお、
図8中のIxは、
図7に示すx方向に沿った曲げに対する断面二次モーメントを示しており、Iyは、y方向に沿った曲げに対する断面二次モーメントを示している。同様に、
図8中のZxは、x方向に沿った曲げに対する断面係数を表しており、y方向に沿った曲げに対する断面係数を表している。
【0082】
図8に示す結果から、実施例1及び実施例2に係る金属パイプSA2及びSA3(一対の内側フランジ部付きの金属パイプ)は、比較例2に係る金属パイプSA4(本体部のみを有する金属パイプ)と比較して高い断面二次モーメントIy及び断面係数Zyを有しており、高い剛性を有していることが確認された。なお、金属パイプSA2と金属パイプSA3を比較すると、内側フランジ部104の長さが長い金属パイプSA2の方が、金属パイプSA3よりも高い断面二次モーメントIy及び断面係数Zyを有することが確認された。
【0083】
一方、金属パイプSA2及びSA3の断面二次モーメントIy及び断面係数Zyは、比較例1に係る金属パイプSA1の断面二次モーメントIy及び断面係数Zyよりも低いことが確認された。しかしながら、金属パイプSA2及びSA3のy方向における外形寸法は、金属パイプSA1のy方向における外形寸法よりも小さかった。これらの結果から、実施例1及び実施例2に係る金属パイプSA2及びSA3は、外形寸法の増加させることなく、高い剛性を確保することができることが確認された。
【0084】
また、実施例3に係る金属パイプSA5(内側フランジ部及び一対の外側フランジ部付きの金属パイプ)は、金属パイプSA2及びSA3と比較して高い断面二次モーメントIy及び断面係数Zyを有しており、より高い剛性を有していることが確認された。
【0085】
以上、種々の実施形態に係る金属パイプ及びその成形方法について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0086】
例えば、
図5に示す金属パイプ100は、一対の内側フランジ部104を有しているが、金属パイプ100は、任意の数の内側フランジ部を有することができる。例えば、金属パイプ100の空間S内に3つ以上の内側フランジ部が配置されていてもよい。同様に、金属パイプ100Aは、1つの外側フランジ部106のみを有していてもよいし、3つ以上の外側フランジ部106を有していてもよい。
【0087】
また、内側フランジ部の形状は、上述の実施形態のものに限定されず、様々な形状を採用することができる。例えば、内側フランジ部が、金属パイプ100の長手方向に沿って連続的に延びていてもよいし、複数の内側フランジが金属パイプ100の長手方向に沿って配列されていてもよい。
【0088】
さらに、
図5に示す金属パイプ100は、断面が矩形状の本体部102を有しているが、本体部102は、円形等、異なる断面形状を有していてもよい。また、
図3に示す実施形態では、一対の流体供給装置105が設けられているが、一実施形態では、1つの流体供給装置105が、一対の流体室115及び一対の流体室125に対して作動流体を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10…成形装置、11…下型、12…上型、13,13A…成形金型、14…金属パイプ材料、14a,14b…金属パイプの一部(第1の部分)、14c…金属パイプの一部(第2の部分)、14d,14e…金属パイプの一部(第3の部分)、17,18…電極、40…気体供給機構、50…加熱機構、55…電力供給部、60…気体供給部、100,100A…金属パイプ、102…本体部、104…内側フランジ部、106…外側フランジ部、110…下型基部、112…下側摺動部、113…下側駆動機構、120…上型基部、122…上側摺動部、123…上側駆動機構、130…複動金型、D1,D2…離間距離、MC…メインキャビティ部、SC1,SC2…サブキャビティ部。