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特許7469570抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/04 20060101AFI20240409BHJP
   H01C 1/142 20060101ALI20240409BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20240409BHJP
   H01C 7/02 20060101ALI20240409BHJP
   H01C 17/22 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01C7/04
H01C1/142
H01C7/00 110
H01C7/02
H01C17/22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023540265
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2022028612
(87)【国際公開番号】W WO2023013455
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2021129738
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390024729
【氏名又は名称】SEMITEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101834
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 順一
(72)【発明者】
【氏名】金森 真広
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135457(JP,A)
【文献】特開2018-139240(JP,A)
【文献】実開昭56-061002(JP,U)
【文献】特開昭55-085001(JP,A)
【文献】特開昭52-129960(JP,A)
【文献】特開2001-006903(JP,A)
【文献】実開昭63-187303(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/14
H01C 1/142
H01C 7/00
H01C 7/02
H01C 7/04
H01C 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板に形成された端子電極と、
前記絶縁性基板上に形成され、前記端子電極に接続されるとともに、抵抗値調整用パターンを有し、前記端子電極に近い領域のパターンが前記端子電極から遠い領域のパターンより低抵抗である下部電極と、
前記端子電極に近い領域のパターンを含んで前記下部電極上に形成された抵抗体と、
前記抵抗体上に形成され、前記下部電極と対向するように配置される上部電極と、
を具備することを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
前記抵抗体は、金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記抵抗体は、金属窒化物であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項4】
前記抵抗体は、金属皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記抵抗体は、薄膜サーミスタであることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項6】
上部電極は、前記端子電極に近い領域のパターンが前記端子電極から遠い領域のパターンより低抵抗であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項7】
前記下部電極における抵抗調整用パターンは、対となるように対向して配置された複数のラダー部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項8】
前記複数のラダー部の面積は、それぞれ異なっていることを特徴とする請求項7に記載の抵抗器。
【請求項9】
前記抵抗値調整用パターンにおける複数のラダー部と前記上部電極とは対向するように配置され、前記複数のラダー部と前記上部電極との対向面積の関係は、対向面積の最小面積をSとしnを整数とすると、対向面積Sは、S=S×2の関係となることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の抵抗器。
【請求項10】
請求項1に記載された抵抗器が備えられていることを特徴とする抵抗器を備えた装置。
【請求項11】
請求項1に記載の抵抗器の製造方法であって、
前記上部電極は複数のパターンが予め用意されていて、複数のパターンの前記上部電極から所望のパターンの前記上部電極を選択して抵抗値を調整する工程と、
前記下部電極の抵抗調整用パターンを切断して抵抗値を調整する工程と、
を含んでいることを特徴とする抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度抵抗器及び感熱抵抗器等の抵抗器、抵抗器の製造方法及び抵抗器を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業分野において、温度を検知するために感熱抵抗器としてサーミスタの温度センサが用いられている。しかしながら、感熱抵抗器としてのサーミスタの示す抵抗値は、サーミスタの構成材料や材料の混合比、製造条件及び大きさ等に依存している。そのため、サーミスタが示す抵抗値は、ばらつきが生じやすい。
【0003】
そこで、サーミスタが示す抵抗値のばらつきを補正して、ばらつきを少なくするため、レーザー照射やサンドブラスト法によって、サーミスタの電極面やサーミスタ本体の一部を削ってトリミングする方法が採られている。
また、高精度抵抗器等は高精度の電流センサ等に応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2889422号公報
【文献】特開2001-35705号公報
【文献】特開2003-1739901号公報
【文献】特開2017-92232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、医療分野において、小型で高精度の温度センサに用いられるサーミスタは、低い抵抗値のものが要求されている。この場合、低い抵抗値に起因してサーミスタに接続される配線パターンの抵抗が影響し、サーミスタの特性カーブがずれてしまうという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、小型で高精度であって、信頼性の高い抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態による抵抗器は、絶縁性基板と、前記絶縁性基板に形成された端子電極と、前記絶縁性基板上に形成され、前記端子電極に接続されるとともに、抵抗値調整用パターンを有し、前記端子電極に近い領域のパターンが前記端子電極から遠い領域のパターンより低抵抗である下部電極と、前記端子電極に近い領域のパターンを含んで前記下部電極上に形成された抵抗体と、前記抵抗体上に形成され、前記下部電極と対向するように配置される上部電極と、を具備することを特徴とする。
【0008】
かかる発明によれば、小型で高精度であって、信頼性の高い抵抗器を提供することができる。なお、抵抗器は、特性にかかわらず抵抗体を備えていればよく、単に電気的な抵抗を有するもの、負の温度係数又は正の温度係数を有するサーミスタ等が含まれる。
本発明の実施形態による抵抗器を備えた装置は、前記抵抗器が備えられていることを特徴とする。
【0009】
抵抗器は、医療分野、自動車等の車載機器や家電機器等の高精度の制御が必要な各種装置に好適に備えられ適用することができる。格別適用される装置が限定されるものではない。
【0010】
本発明の実施形態による抵抗器の製造方法は、前記上部電極は複数のパターンが予め用意されていて、複数のパターンの前記上部電極から所望のパターンの前記上部電極を選択して抵抗値を調整する工程と、前記下部電極の抵抗調整用パターンを切断して抵抗値を調整する工程と、を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、小型で高精度であって、信頼性の高い抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る抵抗器を示す平面図である。
図2図1中、X-X線に沿う断面図である。
図3】同抵抗器における下部電極を示す平面図である。
図4】同抵抗器における下部電極、抵抗体及び上部電極を示す平面図並びにこれらを重ね合わせて抵抗器を構成した場合を示す平面図である。
図5】同抵抗器における各部の温度を示すグラフである。
図6】同抵抗器における下部電極と上部電極との対向面積の関係を示す説明図である。
図7】同抵抗器における下部電極と上部電極との対向面積の変化による抵抗値の変化率を示すグラフである。
図8】同抵抗器における複数のパターンの上部電極を示す平面図である。
図9】同抵抗器における上部電極のパターンを選択して抵抗値を調整する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る抵抗器について図1乃至図4を参照して説明する。図1は、抵抗器を示す平面図であり、図2は、図1中、X-X線に沿う断面図であり、図3は、抵抗器における下部電極を示す平面図である。図4は、下部電極、抵抗体及び上部電極を示す平面図並びにこれらを重ね合わせて抵抗器を構成した場合の平面図を示している。なお、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1及び図2に示すように、抵抗器10は、絶縁性基板1と、端子電極2と、下部電極3と、抵抗体6と、上部電極7とを備えている。抵抗器10は、絶縁性基板1上に下部電極3が形成され、下部電極3上に抵抗体6が積層され、抵抗体6上に上部電極7が積層されて構成されている。
【0015】
抵抗器10は、本実施形態においては、感熱抵抗器であり、薄膜サーミスタである。なお、抵抗器は、特性にかかわらず抵抗体を備えていればよく、単に電気的な抵抗を有するもの、負の温度係数又は正の温度係数を有するサーミスタ等が含まれる。
【0016】
抵抗器10は、略直方体形状に形成されており、横の寸法が0.8mm、縦の寸法が0.4mmであり、総厚寸法が50μm程度である。形状及び寸法は、特段制限されるものではなく、用途に応じて適宜選定することができる。
【0017】
絶縁性基板1は、略長方形状をなしていて、絶縁性のジルコニア、窒化ケイ素、アルミナ又はこれらの少なくとも1種の混合物等のセラミック材料を用いて形成されている。この絶縁性基板1は厚み寸法が100μm以下、具体的には、10μm~100μm、好ましくは80μm以下に薄型化されて形成されている。また、絶縁性基板1の一面(表面)上には、絶縁膜11が成膜されて形成されている。高感度の温度センサとして使用する場合は基板の厚みを薄くする必要があるが抵抗器として使用する場合はこの限りでない。
【0018】
端子電極2は、図示しないリード線が接続される略長方形状のパターンであり、絶縁性基板1上の一端側に一対形成されている。下部電極3が電気的に接続される部分であり、所定の間隔を有して対向するように配置されている。詳しくは、一対の端子電極2は、金属薄膜をスパッタリング法によって成膜して形成されるものであり、その金属材料には、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の貴金属やこれらの合金、例えば、Ag-Pd合金等が適用される。
【0019】
下部電極3は、図3を併せて参照して示すように絶縁性基板1上に形成された電極パターンとしての配線パターンであり、端子電極2に電気的に接続される。また、下部電極3は、第1の電極パターン4と、第2の電極パターン5とを備えていて、第1の電極パターン4及び第2の電極パターン5は、抵抗体6に電気的に接続される。
【0020】
第1の電極パターン4は、接続パターン41、主電極パターン42及び抵抗調整用パターン43を有している。接続パターン41は、端子電極2側に形成されて端子電極2に接続される略矩形状のパターンである。接続パターン41は、他端側へ延び主電極パターン42に電気的に接続されている。主電極パターン42は絶縁性基板1の幅方向、すなわち、長手方向と直交する方向に略矩形状に形成されたパターンであり、接続パターン41とともに比較的広い面積を有している。
【0021】
抵抗調整用パターン43は、トリミング用のパターンであり、レーザトリミングによってこのパターンを適宜カット(切断)して抵抗値を調整し、各抵抗器10が示す抵抗値のばらつきを小さくして補正する。
【0022】
抵抗調整用パターン43は、ラダー状に形成されており、主電極パターン42の両側から長手方向に向かって形成された支柱部431と、支柱部431から内側に幅方向に向かって形成された複数の横桟部(ラダー部)432とからなっている。具体的には、横桟部432は、片側4本ずつで合計8本設けられている。各横桟部432(432a~432h)は、対となるように対向して配置されており、また、各横桟部432は、長さ寸法や幅寸法が異なっており、その面積が異なるように形成されている。
【0023】
詳しくは、図示(図3)上、対向する左側の横桟部432(432a、432c、432e、432g)は、右側の横桟部432(432b、432d、432f、432h)より内側方向の長さ寸法が短く、さらに、左側の横桟部432及び右側の横桟部432における各側の長手方向の幅寸法が異なるように形成されている。つまり、全体的には端子電極2側から離れ、端子電極2から遠い横桟部432の領域の面積は、端子電極2側に近い横桟部432の領域の面積より狭くなるように形成されている。換言すれば、端子電極2側に近い横桟部432の領域の面積は、端子電極2から遠い横桟部432の領域の面積より広くなるように形成されている。また、横桟部432の領域の面積の変化は、端子電極2側に近い横桟部432の領域から、遠い横桟部432の領域に従い段階的に漸次狭くなるようになっている。例えば、横桟部432hの面積は、他の横桟部432の各面積より広く、横桟部432eの面積は、横桟部432a~432dの各面積より広く形成されている。
【0024】
第2の電極パターン5は、接続パターン51、主電極パターン52を有している。接続パターン51は、第1の電極パターン4の接続パターン41と対をなし、接続パターン41と同様に、端子電極2側に形成されて端子電極2に電気的に接続される略矩形状のパターンである。
【0025】
接続パターン51は、若干他端側へ延び主電極パターン52に電気的に接続されている。主電極パターン52は絶縁性基板1の幅方向に略矩形状に形成されたパターンであり、接続パターン51とともに比較的広い面積を有している。また、主電極パターン52は、第1の電極パターン4における主電極パターン42と所定の絶縁距離を有して対向していて、第1の電極パターン4の主電極パターン42と接続パターン41とによって囲まれるように配置されている。
【0026】
下部電極3は、金属薄膜をスパッタリング法によって成膜して形成されるものであり、その金属材料には、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の貴金属やこれらの合金、例えば、Ag-Pd合金等が適用される。
【0027】
以上のような下部電極3は、端子電極2に近い領域のパターンが端子電極2から離れた遠い領域のパターンより面積が広く、低い抵抗値となるように構成されている。つまり、端子電極2に近い領域のパターンは面積が広く低抵抗となっており、端子電極2から離れた遠い領域のパターンは面積が狭く高抵抗となっている。したがって、抵抗器10の特性において、下部電極3による配線抵抗の影響を抑制することが可能となる。
【0028】
図4は、下部電極3、抵抗体6及び上部電極7を重ね合わせて積層し、抵抗器10を構成した場合を示している。図4(a)は下部電極3のパターンを示し、(b)は抵抗体6のパターンを示し、(c)は上部電極7のパターンを示している。また、(d)はこれらを重ね合わせて積層して抵抗器10を構成した状態を示している。
【0029】
図1及び図2において、図4を併せて参照して示すように抵抗体6は、抵抗膜であり感熱薄膜である。具体的には、負の温度係数を有する酸化物半導体からなるサーミスタの薄膜である。抵抗体6は、略長方形状に形成されていて、前記下部電極3の上に、スパッタリング法によって成膜されている。詳しくは、第1の電極パターン4の主電極パターン42及び抵抗調整用パターン43を含み、第2の電極パターン5の主電極パターン52を含んで被覆するように積層されている。
【0030】
抵抗体6は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の遷移金属元素の中から選ばれる2種あるいはそれ以上の元素から構成され、スピネル構造を有する複合金属酸化物を主成分として含むサーミスタ材料で構成される。また、特性向上等のために副成分が含有されていてもよい。主成分、副成分の組成及び含有量は、所望の特性に応じて適宜決定することができる。
【0031】
なお、抵抗体の材料としては、金属酸化物(例えば、RuO2、SnO、ZnO、Cu2O、CuO、NiO等)、金属窒化物(TaN等)や金属皮膜(NiCr等)を用いることができる。
【0032】
サーミスタの材料としては、金属酸化物(例えばマンガン、ニッケル、鉄、コバルト、銅、シリコン、及びアルミニウム等の2種あるいはそれ以上の元素から構成される複合酸化物)、金属窒化物(例えばTa、Nb、Cr、Ti、Zr、Al及びSi等の金属窒化物及び2種あるいはそれ以上の元素から構成される複合窒化物を用いることができる。
【0033】
上部電極7は、電極パターンとしての配線パターンであり、下部電極3と対向するように抵抗体6の上に、スパッタリング法によって成膜され、下部電極3とで抵抗体6をサンドイッチ状態で挟むように形成されていて、抵抗体6に電気的に接続されている。また、上部電極7は、トリミングパターン71と、下部電極3の抵抗調整用パターン43と対向する対向パターン72とを備えている。トリミングパターン71は比較的広い面積を有しており、したがって、端子電極2に近いトリミングパターン71の領域が端子電極2から離れた遠い対向パターン72の領域より面積が広く、低い抵抗値となるように構成されている。
【0034】
詳しくは、上部電極7は、抵抗体6の略長方形状の領域内で対向するとともに下部電極3における第1の電極パターン4の主電極パターン42及び抵抗調整用パターン43を含み、第2の電極パターン5の主電極パターン52を含んで被覆するように積層されている。トリミングパターン71は、略四角形状であり、端子電極2側の一部(図4(c)上、右下側角部)が切欠かれたパターンとなっていて、下部電極3の第1の電極パターン4における主電極パターン42及び第2の電極パターン5における主電極パターン52に対向している。また、対向パターン72は、左右のパターンを有し、端子電極2から離れて遠くなる程、その領域の面積が狭くなるように階段状に形成されている。加えて、左右のパターンの面積は異なっていて、例えば、左側のパターンより右側のパターンの領域の面積が広くなるように形成されている。対向パターン72は、下部電極3の第1の電極パターン4における抵抗調整用パターン43に対向している。
【0035】
上部電極7は、下部電極3と同様に金属薄膜をスパッタリング法によって成膜して形成されるものであり、その金属材料には、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の貴金属やこれらの合金等が適用される。
【0036】
再び、図2に示すように抵抗体6が形成された領域を覆うように保護膜8が形成されている。保護膜8は、上部電極7、抵抗体6、下部電極3を覆うとともに、少なくとも下部電極3と端子電極2との接続部を覆うように形成されている。また、保護膜8は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等をスパッタリング法によって成膜して形成したり、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス及びホウケイ酸鉛ガラス等を印刷法によって形成したりすることができる。
【0037】
以上のような本実施形態よる抵抗器10は、抵抗器10が示す抵抗値のばらつきを補正して、その抵抗値を調整することができる。具体的には、抵抗器10における抵抗値の調整は、後述するように下部電極3と上部電極7との対向面積の調整によって行われる。また、上部電極7は複数のパターンが予め用意されている。したがって、抵抗値の調整は、抵抗調整用パターン43を適宜カットして抵抗値を調整すること、及び複数のパターンの上部電極7から所望のパターンの上部電極7を選択して抵抗値を調整することによって行われる。
【0038】
また、この場合、下部電極3において、端子電極2に近い領域のパターンが端子電極2から離れた遠い領域のパターンより面積が広く、低い抵抗値となるように構成されている。したがって、抵抗器10の特性において、下部電極3による配線抵抗の影響を抑制することができる。
【0039】
さらに、上部電極7においても端子電極2に近いトリミングパターン71の領域が端子電極2から離れた遠い対向パターン72の領域より面積が広く、低い抵抗値となるように構成されているので、抵抗器10の特性において、上部電極7による配線抵抗の影響を抑制することが可能となる。
【0040】
次に、本実施形態の抵抗器10の詳細な構成について製造方法、具体的にはトリミングによる抵抗値の調整方法を含めて図5乃至図9を参照して説明する。図5は、抵抗器の各部の温度を示すグラフであり、図6は、下部電極と上部電極との対向面積の関係を示す説明図であり、図7は、下部電極と上部電極との対向面積の変化による抵抗値の変化率を示すグラフである。また、図8は、複数のパターンの上部電極を示す平面図であり、図9は、上部電極のパターンを選択して抵抗値を調整する方法を示す説明図である。
【0041】
図5は、抵抗器10における端子電極2にリード線を接続し、通電して各部の温度抵抗特性を測定した結果から温度誤差を換算したデータを示している。横軸は測定温度[℃]を示し、縦軸は温度誤差[℃]を示している。「要求ΔT」は抵抗器の要求仕様による温度であり、「素子ΔTmax」は抵抗体の温度の最大値、「素子ΔTst」は抵抗体の温度の標準値、「素子ΔTmin」は抵抗体の温度の最小値である。また、「+配線ΔTmax」は配線パターンを考慮した抵抗器の温度の最大値、「+配線ΔTst」は同抵抗器の温度の標準値、「+配線ΔTmin」は同抵抗器の温度の最小値である。
なお、最大値及び最小値は特性のばらつきを考慮した換算値であり、このときのリード線等の配線抵抗の影響は無視している。
【0042】
この結果から、本実施形態の抵抗器10における抵抗体6の温度及び配線パターンを考慮した抵抗器6の温度は、略要求仕様による温度内に入っており、要求仕様による温度との誤差が少ないことが分かる。したがって、要求仕様による抵抗-温度の特性カーブとのずれが少なく高精度の抵抗器10が実現できることが確認できる。これは、端子電極2に近い領域の配線パターンが端子電極2から離れた遠い領域の配線パターンより面積が広く、低い抵抗値となるように構成されているので、抵抗体6の抵抗値に与える配線抵抗の影響を抑制することができることに起因していると考えられる。
【0043】
図6は、下部電極と上部電極との対向面積の変化における一例を示している。具体的には、下部電極3と上部電極7との対向面積は、下部電極3の横桟部432aの部位について最小面積Sとすると、横桟部432bの部位は最小面積Sの2倍、横桟部432cの部位は最小面積Sの4倍、横桟部432dの部位は最小面積Sの8倍、横桟部432eの部位は最小面積Sの16倍、横桟部432fの部位は最小面積Sの32倍、横桟部432gの部位は最小面積Sの64倍、横桟部432hの部位は最小面積Sの128倍となっている。つまり、最小面積Sに対し、2(n=1,2,3・・・)倍となるように下部電極3と上部電極7との対向面積が設定されている。この下部電極3の抵抗値調整用パターン43における複数の横桟部(ラダー部)と上部電極3との対向面積の関係を一般化すると、対向面積の最小面積をSとしnを整数とすると、対向面積Sは、S=S×2の関係となる。
【0044】
このような下部電極4と上部電極7との対向面積の関係において、例えば、適宜横桟部432bをB-B線に沿ってカットして通電を遮断してトリミングしたり、横桟部432eをE-E線に沿ってカットして通電を遮断してトリミングしたりして、抵抗値を調整することができる。この場合、トリミングにより横桟部432をカットする態様の組み合わせは256通りとなり、256通りの抵抗値の調整が可能となる。
【0045】
このような抵抗値の調整において、図7を参照してトリミングによる抵抗値の変化率について説明する。図7は抵抗値の変化率を示すグラフであり、横軸は256通りの抵抗値の変化を変化率の小さい順にプロットするものであり、縦軸は抵抗値の変化率を示している。
【0046】
図7に示すように抵抗値の変化率が略直線状になることが確認できる。したがって、横桟部432をカットする態様の組み合わせにより、抵抗値の調整を直線的に行うことが可能となる。
【0047】
次に、図8を参照して上部電極7の複数のパターンについて説明する。図8は、上部電極7の複数のパターンの例を示している。この複数のパターンは予め用意されているスパッタリング法等による成膜パターンであり、抵抗値の調整のため複数のパターンの中から選択して形成する。
【0048】
図8(a)は上部電極7におけるトリミングパターン71の面積が広い態様を示し、(b)はトリミングパターン71の右下側角部の所定領域が切欠かれ面積が狭くなる態様を示し、(c)及び(d)に従い切欠かれた領域が狭くなりトリミングパターン71の面積が広くなる態様を示している。したがって、トリミングパターン71の面積が広い態様の順序は、図示上、図8(a)、(d)、(c)、(b)の態様の順となる。
このように上部電極7の面積の異なる複数のパターンから、選択的に成膜して上部電極7を形成することにより抵抗値の粗調整が可能となる。
【0049】
続いて、図9を参照して上部電極7の複数のパターンの中から選択して抵抗値を調整する方法について説明する。図9(a)は基準パターンの上部電極7が形成されている場合を示し(図8(c)相当のパターン)、図9(b)は基準パターンの上部電極7に対し、トリミングパターン71の面積が広いパターンが選択された場合を示し(図8(a)相当のパターン)、図9(c)は基準パターンの上部電極7に対し、トリミングパターン71の面積が狭いパターンが選択された場合を示している(図8(b)相当のパターン)。
【0050】
したがって、例えば、図9(b)のパターンでは、基準パターンに対し、抵抗値を20%低くすることができ、図9(c)のパターンでは、基準パターンに対し、抵抗値を10%高くすることができ、抵抗値を高い方向にも低い方向にも調整することができる。
【0051】
なお、上部電極7のパターンの選択は、図3を併せて参照して示すように、上部電極7を選択して形成する前に、端子電極2間の抵抗値、すなわち、下部電極3の第1の電極パターン4と第2の電極パターン5との間の抵抗値を測定し、上部電極7を形成した後の抵抗値を予測して行う。
【0052】
以上のような抵抗器10の抵抗値の調整方法は、上部電極7は複数のパターンが予め用意されていて、複数のパターンの上部電極7から所望のパターンの上部電極7を選択して抵抗値を調整する工程と、下部電極3の抵抗調整用パターン43を切断して抵抗値を調整する工程とを含んでいる。
【0053】
上記抵抗器10は、医療分野、自動車等の車載機器や家電機器等の高精度の制御が必要な各種装置に好適に備えられ適用することができる。格別適用される装置が限定されるものではない。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
また、本発明の抵抗器を電流センサとして適用する場合は、端子を4端子構造にするとより正確に電流値を計測可能となる。温度測定する場合も同様に端子を4端子構造にするとより正確に温度計測可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・絶縁性基板
11・・・絶縁膜
2・・・・端子電極
3・・・・下部電極
4・・・・第1の電極パターン
41・・・接続パターン
42・・・主電極パターン
43・・・抵抗調整用パターン
432・・横桟部(ラダー部)
5・・・・第2の電極パターン
51・・・接続パターン
52・・・主電極パター
6・・・・抵抗体
7・・・・上部電極
71・・・トリミングパターン
72・・・対向パターン
8・・・・保護膜
10・・・抵抗器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9