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  • -非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受 図1
  • -非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受 図2
  • -非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受 図3
  • -非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/80 20060101AFI20240410BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F16C33/80
F16C19/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019163212
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042776
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】堀越 大裕
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101696(JP,A)
【文献】特開2001-027253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/72-33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触シールを備えた非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受において、
前記非接触シールは導電性を有していて、
前記非接触シールの自由端にはフランジが形成されていて、
当該軸受の内輪または外輪のうち前記フランジと対向する肩部は、該フランジと平行に形成されていて、
前記フランジは、芯金と、該芯金の前記肩部と対向する面に被覆された導電性のゴムとからなり、
前記導電性のゴムには、前記肩部と対向する複数の凸部が形成されていて、
前記導電性のゴムと前記内輪または外輪の肩部が非接触に配置されていることを特徴とする非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズ対策に有効な非接触シール付き軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、EV車(electric car)やHV車(hybrid car)等の開発の進展もあり、一台の自動車に搭載される高電圧部品の数が増加しつつある。高電圧部品の数が増えると、部品同士の電磁気的干渉も大きくなる。電磁気的干渉は、車載ラジオなどの電子機器に伝搬すると、電磁ノイズとして機器の動作に悪影響を及ぼしかねない。そのため、現在、自動車における電磁ノイズ対策が要望されている。なかでも、本願発明者らによって、自動車の各所に設置される軸受を利用した電磁ノイズの除去が検討されている。
【0003】
ここで通電可能な軸受として、例えば特許文献1には導電性接触シールを備えた軸受が開示されている。この通電式転がり軸受は、主に転動体の電食防止を目的として、導電性接触ゴムシール5を備えている。導電性接触ゴムシール5は、カーボンブラックと導電性繊維を混入して成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-089579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の導電性接触シールを備えた軸受においては、抵抗値の低減が不十分であるため、電磁ノイズの抑制効果が薄いという問題がある。導電性接触シールにおいて抵抗値を低減させるためには、接触面積を大きくしたり接触圧力を高めたりすることが考えられるが、そのようにするとフリクションの増大を招いてしまう。また導電性接触シールでは摩耗により接触性が失われ、インピーダンスが増加するという問題がある。特に高速回転する軸受においては、摩耗の影響が顕著に表れるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、非接触シールを備えながらも電磁ノイズ対策に有効な軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受の代表的な構成は、非接触シールを備えた非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受において、非接触シールは導電性を有していて、非接触シールの自由端にはフランジが形成されていて、当該軸受の内輪または外輪のうちフランジと対向する肩部は、フランジと平行に形成されていることを特徴とする。
【0008】
電磁ノイズは高周波の交流である。直流電流の場合は導通させた上に電気抵抗(レジスタンス)を低くする必要がある。これに対し、交流である電磁ノイズの場合は導通していなくても(非接触であっても)インピーダンスを低減できれば通すことができる。そこで上記構成では、肩部およびフランジをコンデンサとして機能させる。これにより、交流時のコンデンサの周波数特性を利用してインピーダンスを低減することができ、インバータ等に起因する電磁ノイズを好適に抑制することが可能となる。
【0009】
上記フランジは、肩部と対向する面に、導電性のゴムが被覆されているとよい。かかる構成によれば、フランジと肩部との接触による金属粉の発生を好適に防ぐことができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受の他の構成は、外輪に固定されて内輪に接触しない外輪側シールと、内輪に固定されて外輪に接触しない内輪側シールとを備え、外輪側シールおよび内輪側シールは導電性を有していて、外輪側シールと内輪側シールとは非接触であって、かつ平行に形成されているとよい。かかる構成であっても、上述した電磁ノイズ対策軸受と同様の効果を得ることが可能である。
【0011】
上記外輪側シールおよび内輪側シールの対向する面にはそれぞれ1つまたは複数の円筒状のリブが立設されていて、外輪側シールのリブと内輪側シールのリブは接触しないよう交互に配置されているとよい。このような構成によれば、インピーダンスを更に低減することができ、上述した効果をより高めることが可能となる。
【0012】
上記外輪側シールおよび内輪側シールの対向する面のうち少なくとも一方に導電性のゴムが被覆されているとよい。かかる構成によれば、外輪側シールおよび内輪側シールとの接触を好適に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非接触シールを備えながらも電磁ノイズ対策に有効な軸受を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態にかかる非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受を説明する図である。
図2】第2実施形態の軸受を説明する図である。
図3】第3実施形態の軸受を説明する図である。
図4】本実施例の軸受の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0016】
図1は、第1実施形態にかかる非接触シール付き電磁ノイズ対策軸受(以下、軸受100)を説明する図である。当該軸受100は、内輪102と外輪104との間に転動体として一列の玉106および保持器108を備えた、単列の深溝玉軸受である。軸受100は、導電性を有する非接触シール110を備えている。
【0017】
非接触シール110は、内外の軌道輪の間にて玉106を側方から覆っていて、潤滑油の漏洩や異物の侵入防止などを行いつつ、内輪102と外輪104との間で導電回路も形成している。非接触シール110は具体的には、ステンレス鋼などの金属板で形成されていて、導電性を有している。非接触シール110は外輪104の肩部に圧入されていて、金属嵌合となっており、非接触シール110と外輪104は電気的に導通している。
【0018】
図1に示すように、非接触シール110の自由端にはフランジ116が形成されている。フランジ116は、非接触シール110の自由端から玉106に向かって延びる芯金112と、芯金112の肩部102aと対向する面に被覆された導電性のゴム114とによって構成されている。そして、フランジ116は、内輪102の肩部102aと平行に形成されている。
【0019】
なお、非接触シール110が内輪に固定されている場合には、外輪104の肩部とフランジ116を平行にすればよい。すなわち、軸受100の内輪102または外輪104のうち、フランジ116と対向する肩部102aを、フランジ116と平行に形成する。
【0020】
これにより、肩部102aおよびフランジ116がコンデンサとして機能するため、交流時のコンデンサの周波数特性を利用してインピーダンスを低減することができフランジ116る。したがって、非接触であるにもかかわらず、インバータ等に起因する高周波の電磁ノイズを通し、電磁ノイズを好適に抑制することが可能となる。
【0021】
またフランジ116は、芯金112のうち肩部102aと対向する面が、導電性のゴム114によって被覆されている。これにより、フランジ116と肩部102aが接触したときに、摩耗により金属粉が発生することを防ぐことができる。
【0022】
図2は、第2実施形態の軸受200を説明する図である。図2に示すように、軸受200は、外輪側シール202および内輪側シール204を備える。外輪側シール202および内輪側シール204は、共にステンレス鋼などの金属板であって、導電性を有している。外輪側シール202は、外輪104に固定されて内輪102に接触せず、内輪側シール204は、内輪102に固定されて外輪104に接触しない。そして、外輪側シール202と内輪側シール204とは非接触であって、かつ平行に形成されている。
【0023】
かかる構成によれば、図1に示した構成よりも、外輪側シールおよび内輪側シールとの対向する面積を増やすことができる。したがって、インピーダンスをさらに低減させられるため、電磁ノイズをより抑制することが可能となる。また図1に示した構成と比較すれば、軸受のサイズアップを招くことがない。また外輪側シール202および内輪側シール204のいずれか一方(図2では202を例示)を導電性のゴム114によって被覆することにより、外輪側シール202と内輪側シール204が接触したときの金属粉の発生を好適に防ぐことが可能となる。
【0024】
図3は、第3実施形態の軸受300を説明する図である。図3に示すように、軸受300は、外輪側シール302および内輪側シール304の対向する面にそれぞれ複数の円筒状のリブ302a・304aが立設されている。そして、外輪側シール302のリブ302aと内輪側シールのリブ304aは接触しないよう交互に配置される。これにより、図1に示す軸受100および図2に示す軸受200よりも更に多い対向面積を確保することができ、上述した効果を更に高めることが可能となる。
【0025】
また図3に示すように、外輪側シール302および内輪側シール304の対向する面のうち少なくとも一方(図3では、外輪側シール302を例示)は、導電性のゴム114が被覆されている。これにより、外輪側シール302のリブ302aと内輪側シール304のリブ304aが接触したときの金属粉の発生を好適に防ぐことができ、軸受300の劣化を防止することが可能となる。外輪側シール302のリブ302aと内輪側シール304のリブ304aは、導電性のゴムだけで形成してもよい。
【0026】
なお、第3実施形態では、外輪側シール302および内輪側シール304が複数のリブ302a・304aを備える構成を例示したが、これに限定するものではなく、1つ以上のリブを有すれば上記と同様の効果を得ることが可能である。また第3実施形態では、外輪側シール302のリブ302aをゴム114によって被覆する構成を例示したが、これにおいても限定されず、内輪側シール304のリブ304aをゴム114によって被覆する構成としてもよい。
【0027】
図4は、本実施例の軸受の他の例を説明する図である。図1に示す軸受100では、ゴム114のうち、肩部102aと対向する面に凸部114aが形成されていたのに対し、図4(a)に示す軸受400aは、ゴム402のうち、肩部102aと対向する面が平坦である。このような構成によっても、上述した軸受100と同様の効果を得ることができる。
【0028】
図1に示す軸受100および図4(a)に示す軸受400aは、芯金112が肩部102aに対して平行であったのに対し、図4(b)に示す軸受400bでは、フランジ404の芯金406は、肩部102aに平行ではなく、肩部102aから離れる方向に傾斜している。そして、フランジ404の芯金406のうち肩部102aと対向する面を被覆するゴム408は、肩部102aと平行になっている。このような構成によっても、フランジ404と肩部102aが平行となるため、上述した軸受100と同様の効果を得ることが可能である。
【0029】
図1に示す軸受100のフランジ116が導電性のゴム114を有していたのに対し、図4(c)に示す軸受400cは、導電性のゴム114を有さず、非接触シールの自由端から玉106に向かって延びるフランジ410を有する。このとき、肩部102aとフランジ410とが平行であることにより、上述した軸受100と同様に、高周波の電磁ノイズを通し、電磁ノイズを好適に抑制することができる。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、電磁ノイズ対策に有効な非接触シール付き軸受として利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
100…軸受、102…内輪、102a…肩部、104…外輪、106…玉、108…保持器、110…非接触シール、112…フランジ、114…ゴム、116…フランジ、200…軸受、202…外輪側シール、204…内輪側シール、300…軸受、302…外輪側シール、302a…リブ、304…内輪側シール、304a…リブ、400a・400b・400c…軸受、402…ゴム、404…フランジ、406…芯金、408…ゴム
図1
図2
図3
図4