(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】飲料容器保護用の底部材
(51)【国際特許分類】
A45C 3/00 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A45C3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020000888
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-09-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正弘
(72)【発明者】
【氏名】並河 佑治
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-111026(JP,U)
【文献】特開2014-171517(JP,A)
【文献】特開2010-125784(JP,A)
【文献】特開2016-137040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 3/00
A45C 13/00-13/36
A47J 41/00-41/02
B65D 81/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯可能な飲料容器の底部を保護する飲料容器保護用の底部材であって、
上記飲料容器の底部形状に対応した受け皿構造をなし、上記飲料容器の底部を覆う、強度が高くて割れにくい硬質の合成樹脂材よりなる有底の筒体部と、
該有底の筒体部の底部外周面を覆う、
ゴムのようなしなやかな弾力性と
硬質の合成樹脂材のような強靭さを合わせ持
つ、耐衝撃性、耐摩耗性
、衝撃吸収性が高い
熱可塑性ポリウレタン樹脂材よりなる接地部とを備え、
上記接地部は、上記有底の筒体部の底面を覆う底壁部と、該底壁部外周の曲率の大きなアール面部と、該曲率の大きなアール面部から上記有底の筒体部の側壁部に沿って上昇する側壁部よりなり、
上記有底の筒体部の底部外周面に対し、その底面を覆う底壁部から、同底壁部外周の曲率の大きなアール面部、同曲率の大きなアール面部から上記有底の筒体部の側壁部に沿って上昇する側壁部に至る全体を、成型用の凹凸部を介して緊密、かつ強固に一
体成型してなる
、
飲料容器保護用の底部材。
【請求項2】
接地部は、有底の筒体部の底部外周面に対して2段階成型により成型されて一体化されている、
ことを特徴とする請求項1記載の飲料容器保護用の底部材。
【請求項3】
有底の筒体部を形成する合成樹脂材と接地部を形成する合成樹脂材は、相互に色彩を異にしている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の飲料容器保護用の底部材。
【請求項4】
接地部には、周方向に所定の間隔をおいて複数の開口部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1,2又は3記載の飲料容器保護用の底部材。
【請求項5】
底部材は、布製部材よりなる収納部本体の底部に設けられ、飲料容器収納用携帯用ポーチの底部を構成している、
ことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の飲料容器保護用の底部材。
【請求項6】
底部材は、飲料容器本体の底部に設けられ、飲料容器本体の底部を構成している、
ことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の飲料容器保護用の底部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、飲料容器保護用の底部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、断熱構造のステンレス容器をドリンクボトルやスープカップとして構成した携帯可能な各種の飲料容器が提供されている。このような飲料容器には、携帯時の損傷を保護し、また持ち運びを容易にするために、当該飲料容器の形状、寸法に応じた飲料容器収納用の携帯用のポーチ(水筒カバー)が用意されており、ユーザーは同ポーチに当該飲料容器を収納して携帯するのが一般的である。
【0003】
この飲料容器収納用の携帯用ポーチは、一般に布製の筒状体構造よりなる飲料容器収納部と、該飲料容器収納部の下端にあって収納された飲料容器の底部を支持する同じく布製の皿状体構造よりなる飲料容器収納底部とからなっている。このような飲料容器収納用の携帯用ポーチは、例えばストラップを介して手で提げ、また肩に掛け、さらには鞄に収納するなどして持ち運ばれ、長期に亘って使用されるものであることから、形状の維持機能や、摩擦・衝撃などに強いことが求められる。そのため、外皮および内皮には比較的強度・剛性が高く、厚みのある布製部材(ポリエステル繊維等)が使用され、長期の使用に耐えるように構成されている。また、外皮および内皮の間には、ウレタンパッド等の弾性部材が介装されており、衝撃から飲料容器を保護するようになっている。
【0004】
しかし、大人は兎も角、子供たちの場合、寸法を長くしたストラップを持って、飲料容器の入った携帯ポーチを地面に接地した状態で引きずりながら歩くことも多く、そのような場合には、布材だけで構成されている場合、ポーチ底部(角部)の摩擦による損傷がひどくなる。このため、一部の製品では、上記携帯用ポーチの底部に合成樹脂材をモールドする立体成型構造を採用したものも提供されている。しかし、単に布製の底部に合成樹脂材をモールドしただけでは耐摩耗性の向上には限界があり、割れなども想定されるため、決して十分なものとは言えなかった。
【0005】
そこで、最近では、上記携帯ポーチを、上記布製部材よりなる筒状の収納部本体と、該収納部本体の底部に縫い付けられる合成樹脂材よりなる皿状の底部材との材質の異なる2つの部分から構成し、かつ合成樹脂材よりなる底部材をポリプロピレン等の硬質樹脂により構成することによってポーチ底部の強度を向上させたものが提案されている(たとえば、特許文献1の携帯用ポーチの構成を参照)。
【0006】
飲料容器収納用の携帯用ポーチにおいて、このような合成樹脂製の底部材構造を採用すると、布製の底部に合成樹脂材をモールドしただけの構成に比べると、より有効にポーチ底部の強度を向上させることができ、上述のような強度および耐摩耗性の問題はある程度解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の合成樹脂製の飲料容器保護用の底部材の場合、強度が高いとは言っても、ポーチ収納部本体底部への取り付け(縫い付け)のし易さを考慮してポリプロピレン等の単一の硬質合成樹脂材で成型しているだけである。したがって、ポーチ収納部本体底部に合成樹脂材をモールドしただけの製品に比べれば、有効に強度向上効果が得られているが、耐摩耗性、耐衝撃吸収性(クッション性)の点では、未だ十分ではない。
【0009】
上記断熱構造(特に真空断熱構造)を採用した飲料容器の場合、内容器および外容器よりなる容器本体の底部(外容器底部)に真空封止構造が採用されており(
図12の構成を参照)、金属製ではあっても、底部は必ずしも強度が高いわけではない。したがって、合成樹脂製の底部材の強度、耐摩耗性、耐衝撃吸収性(クッション性)を向上させることは、携帯用ポーチそのものの耐久性を向上させる趣旨だけでなく、飲料容器の保護機能を向上させる趣旨からも重要となる。
【0010】
また、上記のような飲料容器は、携帯用ポーチに収納して携帯され、同収納状態のまま使用される場合に限らず、実際の使用状態では携帯用ポーチから出して飲料容器単体で使用されることが多い。そのような場合、携帯用ポーチの底部材による保護効果はなく、必ずしも強度が高くない飲料容器の底部がそのまま硬い地面やテーブル面に強い衝撃を伴って直置きされることも想定される。そのようなケースを考えると、単に収納部材である携帯用ポーチの底部材を強化するだけでなく、飲料容器そのものの底部を保護、強化することも重要となる。
【0011】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、飲料容器の底部を保護する飲料容器保護用の底部材を、飲料容器の底部形状に対応した受け皿構造をなし、飲料容器の底部を覆う、強度が高くて割れにくい硬質の合成樹脂材よりなる有底の筒体部と、有底の筒体部の底部外周面を覆う、ゴムのようなしなやかな弾力性と硬質の合成樹脂材のような強靭さを合わせ持つ、耐衝撃性、耐摩耗性、衝撃吸収性が高い熱可塑性ポリウレタン樹脂材よりなる接地部により構成し、かつ接地部を所定の形状にして有底の筒体部の底部外周面に緊密、かつ強固に成型一体化することによって、強度、衝撃吸収性、耐摩耗性を有効に向上させた飲料容器保護用の底部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0013】
(1)第1の課題解決手段
本願発明では、上記の課題を解決するための第1の課題解決手段として、携帯可能な飲料容器の底部を保護する飲料容器保護用の底部材であって、上記飲料容器の底部形状に対応した受け皿構造をなし、上記飲料容器の底部を覆う、強度が高くて割れにくい硬質の合成樹脂材よりなる有底の筒体部と、該有底の筒体部の底部外周面を覆う、ゴムのようなしなやかな弾力性と硬質の合成樹脂材のような強靭さを合わせ持つ、耐衝撃性、耐摩耗性、衝撃吸収性が高い熱可塑性ポリウレタン樹脂材よりなる接地部とを備え、上記接地部は、上記有底の筒体部の底面を覆う底壁部と、該底壁部外周の曲率の大きなアール面部と、該曲率の大きなアール面部から上記有底の筒体部の側壁部に沿って上昇する側壁部よりなり、上記有底の筒体部の底部外周面に対し、その底面を覆う底壁部から、同底壁部外周の曲率の大きなアール面部、同曲率の大きなアール面部から上記有底の筒体部の側壁部に沿って上昇する側壁部に至る全体を、成型用の凹凸部を介して緊密、かつ強固に一体成型して構成されている。
【0014】
このような構成の場合、携帯可能な飲料容器の底部を保護する飲料容器保護用の底部材部分が、上記飲料容器の底部形状に対応した受け皿構造をなし、上記飲料容器の底部を覆う、強度が高くて割れにくい硬質の合成樹脂材よりなる有底の筒体部と、該有底の筒体部の底部外周面を覆う、ゴムのようなしなやかな弾力性と硬質の合成樹脂材のような強靭さを合わせ持つ、耐衝撃性、耐摩耗性、衝撃吸収性が高い熱可塑性ポリウレタン樹脂材よりなる接地部との2つの特性の異なる合成樹脂材から構成されることになり、特に上記飲料容器の底部を覆う有底の筒体部の底部外周面を覆う接地部側の合成樹脂材は、ゴムのようなしなやかな弾力性と硬質の合成樹脂材のような強靭さを合わせ持つ、耐衝撃性、耐摩耗性、衝撃吸収性が高い熱可塑性ポリウレタン樹脂材により形成されている。
【0015】
したがって、同構成では、飲料容器の底部が、飲料容器の底部形状に対応した受け皿構造をなし、飲料容器の底部を覆う、強度が高くて割れにくい硬質の合成樹脂材よりなる有底の筒体部と同有底の筒体部の底部外周面を覆う、ゴムのようなしなやかな弾力性と硬質の合成樹脂材のような強靭さを合わせ持つ、耐衝撃性、耐摩耗性、衝撃吸収性が高い熱可塑性ポリウレタン樹脂材よりなる接地部との特性の異なる2つの合成樹脂材によって適切に保護されることになり、従来の底部材の構成に比べて、底部の強度、衝撃吸収性、耐摩耗性がより有効に向上し、耐久性が大きく向上する。
【0016】
たとえば、飲料容器の底部に対応する有底の筒体部を前述した従来同様の合成樹脂材により形成したとしても、同有底の筒体部をゴムのようなしなやかな弾力性と強靭さを合わせ持つ、耐衝撃性、耐摩耗性、衝撃吸収性が高い熱可塑性ポリウレタン樹脂材よりなる接地部でより有効に保護することができ、底部の強度、衝撃吸収性、耐摩耗性をより有効に向上させることができる。
【0017】
また、接地部にゴムのようなしなやかな弾力性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂材を使用していることから、接地時の音が低くなり、静粛性が高くなる。
【0018】
特に、以上の構成では、内側に位置して飲料容器の底部を覆う有底の筒体部は、飲料容器の底部の形状に対応して受け皿構造に形成されている一方、有底の筒体部の底部外周面を覆い、直接地面に接する可能性が高く、衝撃を受けやすい接地部は、有底の筒体部の底面を覆う底壁部と、同底壁部外周の曲率の大きなアール面部と、同曲率の大きなアール面部から有底の筒体部の側壁部に沿って上昇する側壁部との3つの部分で構成されており、引きずり状態などにおいて、特に地面からの衝撃を受けやすい底壁部外周部分は、全体として曲率の大きなアール面部に形成することによって、引きずり状態において凹凸のある地面との間で滑りやすく、衝撃を受けにくい構造としている。
【0019】
このため、接地部が、上述のように、ゴムのようなしなやかな弾力性と硬質の合成樹脂材のような強靭さを合わせ持ち、耐衝撃性、耐摩耗性、衝撃吸収性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂材により形成されている構成と合わせて、より有効に保護機能を向上させることができる。
【0020】
また、それら3つの部分よりなる接地部は、上記有底の筒体部の底部外周面に対し、その全体を成型用の凹凸部を介して緊密、かつ強固に一体成型されている。したがって、底部材全体としても十分に強度が高いものとなる。
【0021】
(2)第2の課題解決手段
本願発明では、上記の課題を解決するための第2の課題解決手段として、上記第1の課題解決手段における接地部が、有底の筒体部の底部外周面に対して2段階成型により成型されて一体化されていることを特徴としている。
【0022】
このように、上記第1の課題解決手段における接地部が、有底の筒体部の底部外周面に対して2段階成型により成型されて一体化されるようになっている場合、まず第1段階として、所定の合成樹脂材を使用して従来同様の飲料容器の底部に対応した有底の筒体部を成型し、その後、第2段階として、同有底の筒体部の底部外周面に対して、当該有底の筒体部の合成樹脂材よりも硬度および弾力性が高い合成樹脂材を用いて接地部を一体状態に強固に成型固定することができる。
【0023】
(3)第3の課題解決手段
本願発明では、上記の課題を解決するための第3の課題解決手段として、上記第1又は第2の課題解決手段における有底の筒体部を形成する合成樹脂材と接地部を形成する合成樹脂材は、相互に色彩を異にしていることを特徴としている。
【0024】
このような構成によると、飲料容器の底部を保護する底部材の筒体部と接地部各々の2色成型が可能となり、デザイン性が向上すると共に、色分けされていることから、直接接地面に接触する接地部の損耗が分かりやすくなり、ユーザーに底部材部分の寿命の到来を認識させやすくなる。
【0025】
(4)第4の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第4の課題解決手段として、上記第1、第2又は第3の課題解決手段における接地部には、周方向に所定の間隔をおいて複数の開口部が設けられていることを特徴としている。
【0026】
このように、底部材における接地部部分に、周方向に所定の間隔をおいて複数の開口部を設け、部分的に中抜き部を形成した構成にすると、その分だけ接地部における合成樹脂材の使用量を少なくすることができ、製品コストを削減することができると共に、底部材の軽量化を図ることができる。また、同複数の開口部により接地部の接地面に周方向の凹凸部を形成することができ、野外等で接地面に凹凸があるような場合にも、それらを吸収してガタつきのない安定した状態に置くことができるようになる。
【0027】
(5)第5の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第5の課題解決手段として、上記第1、第2、第3又は第4の課題解決手段における底部材は、布製部材よりなる収納部本体の底部に設けられ、飲料容器収納用携帯用ポーチの底部を構成していることを特徴としている。
【0028】
このように、上記第1、第2、第3又は第4の課題解決手段の構成を採用した底部材が、布製部材よりなる収納部本体の底部に設けられ、飲料容器収納用携帯用ポーチの底部を構成している場合、飲料容器収納用携帯用ポーチの底部の強度、耐摩耗性、耐衝撃吸収性が有効に向上し、耐久性が大きく向上する。
【0029】
(6)第6の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第6の課題解決手段として、上記第1、第2又は第3の課題解決手段における底部材は、飲料容器本体の底部に設けられ、飲料容器本体の底部を構成していることを特徴としている。
【0030】
このように、上記第1、第2、第3又は第4の課題解決手段の構成を採用した底部材が、飲料容器本体の底部に設けられ、同飲料容器本体の底部を構成している場合、飲料容器底部の強度、耐摩耗性、耐衝撃吸収性が有効に向上し、耐久性が大きく向上する。
【発明の効果】
【0031】
以上の結果、本願発明によれば、布製の収納部本体を備えて収納、取り出し自由に飲料容器を収納する携帯ポーチを介して飲料容器の底部を保護する飲料容器保護用の合成樹脂製の底部材及び直接飲料容器本体の底部に一体に嵌合されて飲料容器本体を保護する合成樹脂製の底部材各々の強度、衝撃吸収性、耐摩耗性が有効に向上し、飲料容器を収納する携帯ポーチ及び飲料容器各々の耐久性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本願発明の飲料容器保護用の底部材を採用して構成した本願発明の実施の形態1にかかる飲料容器収納用の携帯用ポーチの構成を示す飲料容器収納状態における斜視図である。
【
図2】同飲料容器収納用の携帯用ポーチの構成を示す飲料容器非収納状態における斜視図である。
【
図3】同飲料容器収納用の携帯用ポーチに収納される飲料容器の一例を示す斜視図である。
【
図4】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の上面側の構成を示す斜視図である。
【
図5】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の下面側の構成を示す斜視図である。
【
図6】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の上面側の構成を示す平面図である。
【
図7】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の底面側の構成を示す底面図である。
【
図8】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の構成を示す正面図である。
【
図9】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の構成を示す断面図(
図8のA-A)である。
【
図10】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の構成を示す側面図である。
【
図11】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の構成を示す断面図(
図9のB-B)である。
【
図12】同飲料容器収納用の携帯用ポーチにおける飲料容器保護用底部材の収納部本体に対する取り付け部の構成を示す要部の拡大断面図である。
【
図13】本願発明の飲料容器保護用の底部材を採用して構成した本願発明の実施の形態2にかかる飲料容器保護用底部材の飲料容器への取り付け状態における構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の
図1~
図13を参照して、本願発明の飲料容器保護用の底部材を採用して構成した本願発明の実施の形態1に係る飲料容器収納用の携帯用ポーチの構成及び作用、並びに本願発明の飲料容器保護用の底部材を採用して構成した本願発明の実施の形態2に係る飲料容器保護用底部材の構成及び作用について、それぞれ詳細に説明する。
【0034】
(1)本願発明の飲料容器保護用の底部材を採用して構成した本願発明の実施の形態1に係る飲料容器収納用の携帯用ポーチの構成及び作用(
図1~
図12)
この実施の形態1における飲料容器保護用底部材は、飲料容器収納用の携帯用ポーチ(以下、単に携帯用ポーチという)の底部に設けられており、同携帯用ポーチと一体になって飲料容器を保護するように構成されている。
【0035】
すなわち、いま
図1は、同携帯用ポーチの飲料容器収納部本体1中に飲料容器3を収納した状態、
図2は、同携帯用ポーチの飲料容器収納部本体1中から飲料容器3を取り出した非収納状態を示している。この実施の形態1における携帯用ポーチは、その基本的な構成部分として、布製部材よりなる上下方向に延びる円筒状の飲料容器収納部本体1と、該飲料容器収納部本体1の下端部1a側に設けられた後述する2種の合成樹脂材よりなる飲料容器保護用の底部材2とから構成されている。
【0036】
円筒状の飲料容器収納部本体1は、たとえば
図12に示すように、外皮11、中部材12、内皮13の3枚の部材よりなり、その下端部1a側から上端部1b側まで略等径の筒状体に形成されているが、上端部1b側開口部の周縁部分では、たとえば所定の幅の帯状の縫製テープ(ポリプロピレンテープなど)を使用し、同縫製テープを逆U字状に折り返し、その内外2枚の折り返し片間に上記外皮11、中部材12、内皮13の上端部(重合部上端)を挟みこんで、上下2箇所部分で縫い合わせることによって所定上下幅の補強帯部15を形成している。
【0037】
飲料容器収納部本体1を形成する外皮11や内皮13は、たとえば比較的剛性の高い撥水性のポリエステル繊維等よりなり、耐水性の高いものとなっている一方、中部材12は、たとえば弾性のある少し厚めのウレタンパッド等により形成され、飲料容器収納部本体1の剛性(形状)を維持するとともに上記収納された飲料容器3側面部への衝撃を有効に吸収緩和するようになっている。そして、同構造の飲料容器収納部本体1の上端部1b側から下部側にかけて、例えば所定長さの取っ手型ストラップ4が設けられている。
【0038】
そして、同携帯用ポーチの飲料容器収納部本体1内には、
図1のように飲料容器3が挿入され、その上端側の栓本体33および蓋体34部分を飲料容器収納部本体1の開口部から外部に臨ませた状態で携帯可能に収納保持されるようになっている。
【0039】
この飲料容器3は、例えば
図3に示すように、有底筒状の容器本体31と、該容器本体31の上端側開口部に螺合固定された筒状の飲み口部(見えない)を有する飲み口部材32と、該飲み口部を有する飲み口部材32の上部側に飲み口部を上方に貫通させる形で嵌合一体化された栓本体33と、該栓本体33の上部にヒンジ部33を介して上下に開閉可能に設けられ、閉状態において、上記のみ口部の上部を覆うとともに、ロック解除用のロックレバー35を備えたロック機構によりロックされて閉状態に維持される蓋体34とからなっている。
【0040】
この飲料容器3の容器本体31部分は、例えば
図12に示すように、金属製の内容器311aと、同じく金属製の外容器311bとの2枚の金属製容器からなり、それらの間には真空の断熱空間311cが形成されている。そして、容器本体31の底部31a側、具体的には上記外容器311bの底部には、真空チャンバー内で上記真空の断熱空間311cを形成するための真空封止部311dが設けられている。
【0041】
ところで、上記飲料容器収納部本体1の下端部1b側に設けられている飲料容器保護用の底部材2は、皿状で深さの浅い有底の筒体部21と、該筒体部21の底部面側に一体に設けられた接地部(補強部)22との2つの部分から構成されている。
【0042】
有底の筒体部21は、収納される飲料容器3の底部形状に対応した受け皿構造を有し、その筒体部本体21aの側壁部上部側に飲料容器収納部本体1の下端部1a側を縫製連結するための薄壁部21bを形成している。この薄壁部21bは、筒体部本体21aの側壁部上部の外面側所定上下幅部分を削る形で形成されており、それにより同外面側には所定寸法の段差部が形成されている。
【0043】
有底の筒体部21全体は、たとえばポリエチレン(PE)にポリプロピレン(PP)を所定の混合比率でブレンドした、強度が高いが、縫製可能で、割れにくい硬質の合成樹脂材を用いて成型されている。そして、同有底の筒体部21の筒体部本体21aの側壁部および底壁部には、たとえば
図9および
図11に示すように、次に述べる接地部22を成型一体化するための成型溝(係合用凹部)a,a・・、a,a・・が所定個数設けられている。
【0044】
他方、接地部22は、たとえば熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)を用い、上記筒体部本体21aの底部に対して2段階成型することによって、例えば
図4~
図11に示すように一体に設けられている。この接地部22は、上記筒体部本体21aの底面を覆う底壁部と、同底壁部外周の曲率の大きなアール面部から上記筒体部本体21aの垂直な側壁部に沿って上昇する側壁部よりなり、同側壁部の上端22c部分が上記筒体部本体21aの底部寄り側壁部外周面の前後両側で低くなり、左右両側で高くなる、全体としてウエーブを描くような形で周方向に緩やかに連続しており、同側壁部の上端22c部分で上記筒体部本体21aの対応する形状の成型溝a,a部分に蜜に係合して極めて強固に成型一体化されている。このため、上記筒体部本体21aの側壁部内側には、同側壁部の上端22cに対応する小径の凸部21cが形成されている。
【0045】
また、同接地部22は、底壁部の上面部分でも、上記筒体部本体21a下面の対応する形状の成型溝a,a部分に蜜に係合して極めて強固に成型一体化されている。
図9及び
図11中の符号b,b・・、b,b・・は、それら各成型溝a,a・・、a,a・・部分に蜜に係合した接地部22の側壁部側内面及び底壁部側上面各々の成型凸部を示している。
【0046】
この実施の形態の場合、上記有底の筒体部21側壁部の上記飲料容器収納部本体1の下端部1aに対応する上端側所定の上下幅部分は、上述のように、その厚さ(壁厚)をそれよりも下側の筒体部本体21a部分よりも薄く形成することによって、工業用ミシンのミシン針が通る縫製可能な薄壁部21bとしており、該縫製可能な薄壁部21b部分で上記のように合成樹脂製の縫製テープ14を介して上記飲料容器収納部本体1の下部側所定高さ位置部分と縫着されている。
【0047】
この有底の筒体部21側壁部と上記飲料容器収納部本体1の下部側部分との縫着部は、
図12の拡大断面図に詳細に示すような構造になっている。すなわち、上記有底の筒体部21側壁部の上端側所定上下幅部分は、その外周面側を所定の厚さ薄く削ることによって、その下部側筒体部本体21a部分に比べて薄い薄壁部21bに形成されており、同薄壁部21bに、上記ポリプロピレン製等の合成樹脂製の縫製テープ(リボン状テープ)14がその幅方向中央部で内外両方向にU状に折り返されることによって当該薄壁部21bの内外両面を覆うように配設され、その下端部側第1、第2の縫合部16及び18部分で同折り返された内外両側片14a、14bをそれぞれ当該薄壁部21b部分に縫着することによって一体化している。
【0048】
この場合、上部側第1の縫合部16部分では、飲料容器収納部本体1も一緒に縫い合わされているが、下部側第2の縫合部18部分では、縫製テープ(リボン状テープ)14の内外両側片14a、14bのみが薄壁部21b部分に対して縫い合わされている。
【0049】
上記合成樹脂製の縫製テープ14は、比較的厚さが厚く、しかも比較的剛成の高いものとなっており、上記薄壁部21bに強固に縫合一体化された状態では、上記薄壁部21b内側の段差(削成による段差)が解消されて、薄壁部21bの外側に下部側筒体部本体21aの側壁面部分と面一な側壁面が形成されている。
【0050】
他方、上述のように、飲料容器収納部本体1は、外皮11、中部材(ウレタンパッド)12、内皮13の3重構造のものよりなり、その下端部1a部分は、上記内皮13の下端部を上記外皮11の下端部に対して第2の縫合部17で縫い合わせることによって、外皮11とともに中部材12を綴じこんでいる。
【0051】
接地部本体22aの底壁部および側壁部は、相互に面一な状態で連続し、全体として略同一の肉厚に成型されているが、その左右両側の底壁部外周部から側壁部にかけた曲率の大きな半円領域では、例えば
図4、
図5、
図7~
図11に示すように、周方向に所定の間隔をおいて、肉厚の成型壁のない各3組の開口部(中抜き部)22b,22b,22b、22b,22b,22bが設けられている。これら各3組の開口部22b,22b,22b、22b,22b,22bは、たとえば
図7から明らかなように、底壁部側から側壁部側にかけて(放射方向にかけて)、次第に開口幅が拡大する平面逆台形状のものとなっている。
【0052】
また、各開口部22b,22b,22b、22b,22b,22bの開口縁部(内縁部)は、それぞれ内側から外側にかけて開口面積が拡大する緩やかな傾斜角のテーパ面22eに形成されており、内側で上記筒体部本体21aの底壁面および側壁面に広面積で確実に当接(接面)し、飲料容器3を収納した携帯用ポーチの接地時(特にテーブルの上等に強い衝撃を伴う状態で置かれた時)に上記所定肉厚の成型壁部分(開口部22b,22b,22b、22b,22b,22b以外の部分)に作用する圧力を上記筒体部本体21aの底壁面および側壁面に向けて斜め方向に効果的に分散させて緩衝させるようになっている。
【0053】
また、このように各開口部22b,22b,22b、22b,22b,22bの開口縁部(内縁部)が、内側から外側にかけて開口面積が拡大するテーパ面22dに形成されていると、飲料容器3を収納した携帯用ポーチをテーブル上や道路上で引きずった時にも、同開口部22b,22b,22b、22b,22b,22bの開口縁部に対する係合力が小さくなり、滑らかに摺動するようになるので、同部分の耐久性が高くなる(損傷度合いが少ない)。また、ゴミなどが溜りにくく、ふき取りも容易になるので、メンテナンス性にも優れている。
【0054】
また、この実施の形態の構成では、このように接地部本体22aの周方向に複数の開口部22b,22b,22b、22b,22b,22bを設けると共に、さらに、その中央部22eの所定半径領域Aを上方側に窪ませることにより、同接地部本体22aの中央部22eの所定半径領域Aが携帯用ポーチ接地状態において、テーブル面等に直接当接しないようにしている。この結果、同構成では、長い期間に亘って当該携帯用ポーチを使用したとしても、傷等が生じるのは、接地部本体22aの底面部全体の内、直接接地される開口部22b,22b,22b、22b,22b,22b間の曲率の大きな凸面部分(半径方向のアール面部分)のみとなり(中央部22eのA領域の外側部分も緩やかではあるが、或る程度上方に窪んでいるので接地しない)、底面部の傷が殆ど目立たなくなる。
【0055】
また、このように周方向に所定の間隔で部分的に配置された半径方向に大きな曲率を有するアール面の凸部によって接地状態の支持を行うようにすると、磨耗による損傷度が低いだけでなく、野外などの凹凸のある地面に飲料容器を収納した携帯用ポーチを置く時にも、容易に安定したガタつきのない状態で接地することができるようになる。
【0056】
しかも、この実施の形態では、上記接地部本体22aは、たとえば熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)を用い、上記筒体部本体21aの底部に対して2段階成型することによって、
図4~
図11に示すように一体に設けられている。熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)は、ゴムのようなしなやかな弾力性と硬質プラスチックのような強靭さを合わせ持つ高分子化合物であり、耐衝撃性、耐摩耗性が非常に高く、しかもゴム弾性・柔軟性に優れ、防振効果も高い。また、耐水性、耐寒性にも優れている。
【0057】
したがって、上記所定の成型肉厚を有する接地部本体22aは、ポリエチレン(PE)にポリプロピレン(PP)をブレンドした、強度が高いが、縫製可能で、割れにくい硬質の合成樹脂材よりなる上記有底の筒体部本体21aに比べて、遥かに耐衝撃性、耐摩耗性に優れたものとなり、しかも硬質ゴムのようなクッション性を発揮するようになる。その結果、従来のポリエチレン(PE)にポリプロピレン(PP)をブレンドした硬質プラスチックに比べて、大きく耐久性が向上する。また、衝撃吸収性(ダンピング特性)に優れたものとなるので、接地時の静粛性も高い。
【0058】
しかも、この実施の形態では、同接地部本体22aは、上記筒体部本体21aの底部に対して2段階成型することによって一体化されている。つまり、この実施の形態の飲料容器保護用の底部材2は、直接飲料容器3の底部3aを収納し、保護する有底の筒体部21と、該有底の筒体部21の底部を保護する接地部22との2つの部分からなり、有底の筒体部21と接地部22が異なる2種の合成樹脂材により形成されている。
【0059】
したがって、底部材2の筒体部21部分と接地部22部分の色を変えることが可能となり(例えば、筒体部21を青、接地部22を赤のように)、携帯用ポーチデザインのバリエーションが大きく拡大される。また、筒体部21部分と接地部22部分とが色分けされていると、ユーザーが接地部22部分の損耗状態、損耗レベルを認識しやすくなる。
【0060】
(2)本願発明の飲料容器保護用の底部材を採用した本願発明の実施の形態2に係る飲料容器保護用底部材の構成及び作用(
図13)
この実施の形態2における飲料容器保護用底部材は、上記実施の形態1のように、飲料容器収納用の携帯用ポーチを用いることなく、上記実施の形態1のものと同様の構成の底部材2を上記実施の形態1のものと同様の飲料容器3の底部3a部分に直接成型一体化して設けたものである。したがって、上記実施の形態1のように、筒体部本体21aの側壁部上部に縫製用の薄壁部21bは設けられておらず、同側壁部の肉厚は下端から上端まで全体に亘って一定である。
【0061】
このような構成による場合にも、上記実施の形態1の構成の底部材2の接地部22の高強度、耐摩耗性、耐衝撃性の高さ、クッション性の高さを生かした、有効な飲料容器3の底部3aの保護が可能であり、有効に機能する。
【0062】
すなわち、同様の飲料容器3は、必ずしも携帯用のポーチに入れたまま使用するとは限らず、携帯用ポーチから取り出して使用することも多い。その様な場合、使用時において、飲料容器3本体がテーブル等に強い衝撃を伴う状態でぞんざいに置かれることも考えられる。そのような場合にも、この実施の形態2のように、飲料容器3の容器本体31の底部31a部分に上記同様の底部材2を設けておくと、接地時の衝撃が有効に吸収緩和され、上述のような真空封止部311dを有する飲料容器本体31の底部31aが有効に保護されるとともに、接地時の静粛性が確保される。
【符号の説明】
【0063】
1は飲料容器収納部本体
2は底部材
3は飲料容器
21は有底の筒体部
21aは有底の筒体部本体
21bは薄壁部
22は接地部
22aは接地部本体
22bは開口部