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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/12 20060101AFI20240410BHJP
   B29C 51/26 20060101ALI20240410BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C51/26
B29C51/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020062043
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160124
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】南川 佑太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】丹治 忠敏
(72)【発明者】
【氏名】横井 慎司
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-343054(JP,A)
【文献】特開昭60-222214(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031286(WO,A1)
【文献】特開2004-9650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/12
B29C 51/26
B29C 51/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型ユニットを用いた構造体の製造方法であって、
前記金型ユニットは、開閉可能な第1及び第2金型と、不織布保持機構を備え、
第1金型は、凸部を有し、第2金型は、前記凸部を収容する凹部を有し、
成形工程を備え、
前記成形工程では、第1及び第2金型の間に不織布及び溶融状態の樹脂シートが配置された状態で第1及び第2金型を閉方向に移動させる閉動作を行って前記不織布及び前記樹脂シートを一体成形し、
前記成形工程では、前記閉動作が完了する前に第1及び第2金型が対向する領域において前記凹部を有するキャビティ面を取り囲むピンチオフ部の外側の位置で前記不織布保持機構を用いて前記不織布を保持し、その状態で第1及び第2金型をさらに前記閉方向に移動させる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記不織布保持機構は、第1及び第2金型の一方に設けられた突出機構を備え、
前記突出機構は、突出量が可変である突出部を備え、
前記不織布保持機構は、前記突出部の先端と、第1及び第2金型の他方又はこれに装着された部材とで、前記不織布及び前記樹脂シートを挟持することによって前記不織布を保持する、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記突出部の突出量は、前記不織布保持機構が前記不織布を保持した状態での第1及び第2金型の前記閉方向の移動に伴って減少する、方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の方法であって、
前記不織布保持機構は、複数の前記突出機構を備える、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記突出機構の数は、6以上である、方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の方法であって、
前記突出部は、前記先端に向かって先細りになっている、方法。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の方法であって、
前記不織布保持機構は、前記突出機構を第1金型に備える、方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載の方法であって、
前記不織布と第2金型の間に前記樹脂シートが配置される、方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか1つに記載の方法であって、
第2金型は、線展開率が1.2以上である、方法。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか1つに記載の方法であって、
前記不織布は、互いに直交する二方向について測定した30%伸び荷重の平均値が100N以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の金型を用いて不織布と樹脂シートが一体成形された構造体を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-111736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、不織布を予め加温することによって、一体成形の際に不織布に皺が発生することを抑制している。
【0005】
しかし、一体成形の前に不織布を加温する工程を設けることは製造コストの増大に繋がるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、製造時に不織布を加温することなく不織布に皺が発生することが抑制可能な構造体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、金型ユニットを用いた構造体の製造方法であって、前記金型ユニットは、開閉可能な第1及び第2金型と、不織布保持機構を備え、第1金型は、凸部を有し、第2金型は、前記凸部を収容する凹部を有し、成形工程を備え、前記成形工程では、第1及び第2金型の間に不織布及び樹脂シートが配置された状態で第1及び第2金型を閉方向に移動させる閉動作を行って前記不織布及び樹脂シートを一体成形し、前記成形工程では、前記閉動作が完了する前に第1及び第2金型が対向する領域において前記凹部の外側の位置で前記不織布保持機構を用いて前記不織布を保持し、その状態で第1及び第2金型をさらに前記閉方向に移動させる、方法が提供される。
【0008】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、成形工程において、第1及び第2金型の閉動作が完了する前に第2金型に設けられた凹部の外側の位置で不織布保持機構を用いて不織布を保持し、その状態で第1及び第2金型をさらに閉方向に移動させることによって、不織布に弛みが生じることが抑制され、その結果、不織布に皺が発生することが抑制されることを見出し、本発明の完成に到った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記不織布保持機構は、第1及び第2金型の一方に設けられた突出機構を備え、前記突出機構は、突出量が可変である突出部を備え、前記不織布保持機構は、前記突出部の先端と、第1及び第2金型の他方又はこれに装着された部材とで、前記不織布及び前記樹脂シートを挟持することによって前記不織布を保持する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記突出部の突出量は、前記不織布保持機構が前記不織布を保持した状態での第1及び第2金型の前記閉方向の移動に伴って減少する、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記不織布保持機構は、複数の前記突出機構を備える、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記突出機構の数は、6以上である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記突出部は、前記先端に向かって先細りになっている、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記不織布保持機構は、前記突出機構を第1金型に備える、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記不織布と第2金型の間に前記樹脂シートが配置される、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、第2金型は、線展開率が1.2以上である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記不織布は、互いに直交する二方向について測定した30%伸び荷重の平均値が100N以下である、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の構造体1の製造方法で利用可能な成形機100の一例を示す。
図2図1中の第1金型21の左側面図である。
図3図1中のA-A断面図であり、第1及び第2金型21,22間に不織布3及び樹脂シート19が配置された状態を示す。
図4図3の状態から、金型21,22が近づくと共に、金型21に設けられた不織布保持機構23の突出機構24の突出部24bで不織布3及び樹脂シート19が押圧されて金型22に押し付けられた後の状態を示す。
図5図4の状態から、突出部24bの突出量が減少しながら金型21,22がさらに閉方向に移動して、金型21,22の閉動作が完了した後の状態を示す。
図6】金型21,22から成形体を取り出してバリ1aを除去した後の構造体1を示す。
図7】本発明の第2実施形態において、不織布保持機構23が不織布3を保持する前に金型21の凸部21aで不織布3及び樹脂シート19を押圧して変形させた後の状態を示す。
図8図7の状態から、不織布保持機構23の突出機構24の突出部24bで不織布3及び樹脂シート19が押圧されて金型22に押し付けられた後の状態を示す。
図9】本発明の第3実施形態において、金型22に設けられた不織布保持機構23の突出機構24の突出部24bで不織布3及び樹脂シート19が押圧されて金型21に押し付けられた後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.構造体1
図6に示すように、本発明の第1実施形態の構造体1は、樹脂シート成形体(好ましくは発泡樹脂シート成形体)2と不織布3が一体成形されて構成される。構造体1としては、ドアトリム、デッキサイドトリム、ドアポケットのような自動車内装部材が例示される。
【0013】
不織布3は、樹脂シート成形体2に一体成形されている。樹脂シート成形体2に不織布3を一体成形することによって、構造体1の断熱性や意匠性を向上させることができる。また、一体成形では、不織布3を樹脂シート成形体2に貼着する手間を省くことができると共に、接着剤を用いずにアンカー効果(樹脂が不織布3に滲み込むことによって不織布3が樹脂シート成形体2に固定される効果)によって不織布3を樹脂シート成形体2に固定することができる。また、一体成形の場合、樹脂シート成形体2と不織布3が強固に一体化されているので、不織布3が樹脂シート成形体2から剥がれることが抑制される。
【0014】
1-2.成形機100の構成
図1図4を用いて、本発明の第1実施形態の構造体1の製造方法の実施に利用可能な成形機100について説明する。成形機100は、樹脂供給装置10と、Tダイ18と、金型ユニット20を備える。樹脂供給装置10は、ホッパー12と、押出機13と、インジェクタ16と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0015】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。
【0016】
<インジェクタ16>
シリンダ13aには、シリンダ13a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ16が設けられる。原料樹脂11を発泡させない場合は、インジェクタ16は省略可能である。インジェクタ16から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、炭酸ガス、窒素ガスなどが挙げられる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ16から注入する代わりに、ホッパー12から投入してもよい。
【0017】
<アキュームレータ17、Tダイ18>
発泡剤が添加されている又は添加されていない溶融樹脂11aは、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて溶融樹脂11aをTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて樹脂シート19を形成する。溶融樹脂が発泡剤を含有する場合、樹脂シート19は、発泡樹脂シートとなる。
【0018】
<金型ユニット20>
図1図3に示すように、金型ユニット20は、開閉可能な第1及び第2金型21,22と、不織布保持機構23を備える。樹脂シート19は、第1及び第2金型21,22間に導かれ、金型21,22によって成形される。
【0019】
金型21は、凸部21aを有するキャビティ面21bと、キャビティ面21bを取り囲むピンチオフ部21cを有する。金型22は、金型21に対向する面に、凸部21aを収容する凹部22aを有するキャビティ面22bと、キャビティ面22bを取り囲むピンチオフ部22cを有する。金型21,22を閉じると、キャビティ面21b,22bの間に、構造体1の相補形状のキャビティが形成される。金型21,22は、好ましくは、多数の減圧吸引孔が設けられており、樹脂シート19を減圧吸引可能になっている。
【0020】
樹脂シート19に隣接した位置に樹脂シート19に重なるように不織布3を配置し、不織布3と樹脂シート19を金型21,22で挟むことによって不織布3と樹脂シート19を一体成形することができる。これによって、図6に示すように、樹脂シート成形体2に不織布3が一体成形された構造体1が得られる。
【0021】
ところで、金型22が深絞り部を有するものである場合には、構造体1の不織布3に皺が形成されやすい。「金型22が深絞り部を有する」とは、金型22の線展開率が1.2以上であると言い換えることができる。つまり、金型22の線展開率が1.2以上である場合に、不織布3に皺が形成されやすい。
【0022】
例えば、図3に示すように、キャビティ面22b上の2つの端点a,bを直線でつないだときの距離をE1とし、端点a,bをキャビティ面22bの表面に沿って結んだときの距離をE2とすると、線展開率は、E2/E1となる。線展開率の値は、端点a,bの位置に依存するが、線展開率の値が最大となる位置に端点a,bを設置したときの線展開率の値を金型22の線展開率とする。金型22の線展開率は、例えば、1.2~3であり、具体的には例えば、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
図3に示すように、不織布保持機構23は、金型21,22が対向する領域R(以下、「対向領域R」)において凹部22aの外側の位置で(本実施形態では、ピンチオフ部21c,22cの外側の位置で)不織布3を保持する機能を有する。
【0024】
不織布保持機構23は、好ましくは、金型21に設けられた突出機構24を備える。突出機構24は、ベース24aと、ベース24aからの突出量が可変である突出部24bを備える。突出機構24は、例えば、シリンダ機構によって構成することができる。
【0025】
図4に示すように、金型21,22の閉動作が完了する前に、突出部24bの先端24b1で不織布3及び樹脂シート19を押圧して金型22に押し付けることによって、先端24b1と金型22とで、不織布3及び樹脂シート19を挟持することによって不織布3を保持することが可能になっている。
【0026】
ところで、先端24b1は、構造体1に含まれないバリ1a(図5に図示)となる部位に押し付けられる。バリ1aに含まれる樹脂シート19は、不織布3を剥がした後に再生樹脂として利用される。不織布3及び樹脂シート19が先端24b1で押圧されると、その部位(「押圧部位」)1bでは、不織布3と樹脂シート19が強固に一体化され、容易に剥離されなくなる。この傾向は、先端24b1の面積が大きいほど顕著である。従って、先端24b1の面積を小さくして、不織布3を樹脂シート19から剥離しやすくするために、突出部24bが先端24b1に向かって先細りであることが好ましい。突出部24bの全体の直径を小さくすることによって先端24b1の面積を小さくすることができるが、その場合、突出部24bの剛性が低下して突出部24bによる不織布3の保持力が低下してしまう虞がある。一方、突出部24bを先細りにすることによって、突出部24bの剛性低下を抑制しつつ、先端24b1の面積を小さくすることができる。なお、突出部24bの全体を先細りとしてもよく、突出部24bの先端24b1の近傍の一部のみを先細りとしてもよい。突出部24bは、断面が円形であることが好ましいが、その他の形状であってもよい。
【0027】
不織布保持機構23は、複数の突出機構24を備えることが好ましい。これによって、複数の位置で不織布3を保持することができるので、皺の発生をより確実に抑制することができる。突出機構24の数は、6つ以上が好ましい。この場合、皺の発生をさらに確実に抑制することができる。突出機構24の数は、例えば、1~20であり、好ましくは、4~8である。この数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。図2の例では、突出機構24の数は、6つであり、金型21の対角線上の4箇所(左上、左下、右上、右下)と、金型21の上下方向の中央(左中央、右中央)の2箇所に設けられている。
【0028】
1-3.構造体の製造方法
ここで、図3図6を用いて、本発明の一実施形態の構造体の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、成形工程を備える。
【0029】
成形工程では、図3に示すように、金型21,22の間に不織布3及び樹脂シート19が配置された状態で、図4図5に示すように、金型21,22を閉方向に移動させる閉動作を行って不織布3と樹脂シート19を一体成形して構造体1を製造する。閉方向とは、金型21,22の間の距離を短くする方向である。閉方向移動の際には、金型21,22の一方のみを移動させてもよいが、両方を移動(好ましくは対称に移動)させることが好ましい。
【0030】
成形工程は、好ましくは、部材配置工程及び型閉じ工程を備える。
【0031】
<部材配置工程>
部材配置工程では、図3に示すように、金型21,22の間に不織布3及び樹脂シート19を配置する。樹脂シート19を配置した後に不織布3を配置すると、不織布3を配置している間に樹脂シート19が冷えてしまう虞があるので、不織布3を金型21,22の間に配置した状態で、不織布3と金型22の間に樹脂シート19を配置することが好ましい。Tダイ18から樹脂シート19を金型21,22の間に押し出すことによって、樹脂シート19を金型21,22の間に配置することができる。
【0032】
不織布3は、好ましくは、幅方向の両端又は上下方向の両端が不織布把持ユニット(不図示)によって把持される。不織布把持ユニットは、金型21,22の開閉方向(図3の左右方向)に移動可能であり、不織布把持ユニットが不織布3を把持した状態で移動することによって、不織布3を金型21,22の開閉方向に移動させることができる。
【0033】
樹脂シート19は、好ましくは、幅方向の両端がシートエキスパンダ(不図示)によって把持され、エキスパンダが樹脂シート19を幅方向(図3の上下方向)に引っ張ることによって樹脂シート19に張力が加えられる。シートエキスパンダは、金型21,22の開閉方向に移動可能であり、シートエキスパンダが樹脂シート19を把持した状態で移動することによって、樹脂シート19を金型21,22の開閉方向に移動させることができる。
【0034】
<型閉じ工程>
型閉じ工程では、図3図5に示すように、金型21,22の間に不織布3及び樹脂シート19が配置された状態で金型21,22を閉じる。これによって、不織布3と樹脂シート19が一体成形される。
【0035】
金型21,22の閉動作を開始する前又は金型21,22を閉方向に移動しながら、不織布3及び樹脂シート19を金型22に向かって移動させることができる。
【0036】
不織布3は、不織布把持ユニットによって把持されているものの、不織布把持ユニットは金型21,22の対向領域Rの外側で不織布3を把持しているために、把持する位置が凸部21aから離れている。このため、凸部21aが不織布3を押圧しても不織布3に加わる張力が高まりにくく、不織布3が弛んだ状態で樹脂シート19に一体化されることによって、構造体1の不織布3に皺が発生してしまう場合がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、金型21,22の閉動作が完了する前に対向領域Rにおいて凹部22aの外側の位置で不織布保持機構23を用いて不織布3を保持し、その状態で、図5に示すように、金型21,22をさらに閉方向に移動させて、閉動作を完了するようにしている。このような構成によれば、凸部21aに比較的近接した位置で不織布3を保持するので、凸部21aが不織布3を押圧したときに不織布3に加わる張力が高まりやすく、その結果、構造体1の不織布3に皺が発生することが抑制される。なお、不織布保持機構23による不織布3の保持は、金型21,22が閉動作を開始した後に行ってもよく、開始する前に行ってもよい。
【0038】
不織布3の保持は、図4に示すように、突出部24bの先端24b1で不織布3及び樹脂シート19を押圧して金型22に押し付けることによって行うことができる。不織布3は、樹脂シート19を介して金型22に押し付けられる。このような方法では、不織布3が安定的に保持されるので、凸部21aが不織布3を押圧したときに不織布3に加わる張力が一層高まりやすい。
【0039】
突出部24bは、金型21,22が閉動作を開始する前の時点で図4のように突出した状態になっていてもよく、金型21,22の閉動作中に突出量を増大させてもよい。金型21,22が閉動作を開始する前の時点で突出部24bの突出量が大きい状態になっていると、部材配置工程において、金型21,22の間に不織布3を配置する際に、不織布3が突出部24bに当たってしまう虞があるので、好ましくない。また、不織布3が金型22に近接した位置に移動する前に突出部24bの突出量が大きい状態になっていると、金型21,22の閉方向に移動する際に突出部24bが不織布3に衝突して不織布把持ユニットから外れてしまう虞がある。従って、突出部24bは、不織布3を金型22に近接した位置に移動させた後に突出量を増大させることが好ましい。例えば、樹脂シート19が金型22に接触し、不織布3が樹脂シート19に接触した状態で、突出部24bの突出量を増大させることが好ましい。
【0040】
図4の状態から、金型21,22が閉方向にさらに移動する際に、それと同期して突出部24bの突出量を減少させる。これによって、図5に示すように、不織布保持機構23が不織布3を保持した状態で金型21,22を閉方向に移動させて、閉動作を完了させることができる。
【0041】
ところで、本実施形態では、不織布保持機構23によって凹部22aの外側の位置で不織布3を保持した状態で成形を行う。このため、不織布3が引き伸ばされにくいものである場合には、凸部21aで不織布3が押圧されたときに不織布3に過度な張力が加わって不織布3が損傷する虞がある。そこで、不織布3としては、引き伸ばされやすいものが好ましい。
【0042】
不織布3の引き伸ばされやすさの指標としては、30%伸び荷重が挙げられる。30%伸び荷重とは、不織布3を30%伸ばしたときの荷重であり、JIS L1096のグラブ法に準拠して測定可能である。
【0043】
不織布3は、互いに直交する二方向について測定した30%伸び荷重の平均値が100N以下であることが好ましく、50N以下であることがさらに好ましい。この値は、例えば1~100Nであり、具体的には例えば、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100Nであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。二方向は、MD方向とTD方向であることが好ましい。
【0044】
不織布3は、厚さが0.5~2.0mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることがさらに好ましい。不織布3が薄すぎると、不織布3を設けたことによる意匠性や断熱性の向上効果が不十分な場合があり、不織布3が不必要に厚すぎると、コスト増大や触感の悪化などに繋がる。
【0045】
図5に示すように、金型21,22が閉じた状態での金型21,22のキャビティ面21b,22b間の隙間は、樹脂シート19と不織布3の合計厚さの0.3~2倍が好ましい。この値が1未満の場合は、型閉じ工程で樹脂シート19と不織布3が圧縮される。この値が1よりも大きく、かつ樹脂シート19が発泡樹脂シートである場合、金型21,22による減圧吸引によって樹脂シート19が膨張される。この値は、具体的には例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0046】
<後処理工程>
後処理工程では、型閉じ工程で得られた成形体を金型21,22から取り出し、バリ1aを切除することによって、図6に示すように、樹脂シート成形体2に不織布3が一体成形された構造体1が得られる。
【0047】
バリ1aは、不織布3と樹脂シート19が積層されて構成されており、バリ1aから不織布3を除去して残った樹脂シート19を粉砕してリサイクルすることができる。突出部24bが先細りである場合、不織布3と樹脂シート19が強く溶着される部位(強溶着部位)1bの面積が小さくなるので、バリ1aから不織布3を除去することが容易になる。
【0048】
2.第2実施形態
図7図8を用いて、本発明の第2実施形態について説明している。本発明は、第1実施形態に類似しており、不織布保持機構23が不織布3を保持するタイミングの違いが第1実施形態との主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0049】
第1実施形態では、図4に示すように、凸部21aが不織布3を押圧する前に、不織布保持機構23が不織布3を保持している。一方、本実施形態では、図7に示すように、凸部21aで不織布3及び樹脂シート19を押圧して変形させた後に、図8に示すように、不織布保持機構23で不織布3を保持している。図8の状態からは、第1実施形態と同様に、金型21,22を閉方向にさらに移動させると共に突出部24bの突出量を減少させることによって、図5に示すように、金型21,22を閉方向に移動させて、閉動作を完了させることができる。
【0050】
本実施形態においても、図8の状態から金型21,22を閉方向に移動させる際に不織布3に強い張力を加えることができるので、第1実施形態と同様に、構造体1の不織布3に皺が発生することを抑制することができる。
【0051】
第1実施形態の構成では、不織布3が引き伸ばされにくいものであったり、金型22の線展開率が非常に大きいものであったりする場合には、不織布3に加わる張力が過度に大きくなりすぎて不織布3に損傷が生じる場合がある。一方、本実施形態では、不織布3を不織布保持機構23で保持させない状態で、不織布3及び樹脂シート19を、図7に示すようにある程度変形させるので、第1実施形態に比べて不織布3に加わる最大張力が低減されることにより、不織布3の損傷が抑制される。
【0052】
3.第3実施形態
図9を用いて、本発明の第3実施形態について説明している。本発明は、第1実施形態に類似しており、突出機構24が金型22に設けられているが主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0053】
本実施形態では、不織布3の保持は、図9に示すように、金型22に設けられた突出機構24の突出部24bの先端24b1で不織布3及び樹脂シート19を押圧して金型21に押し付けることによって行うことができる。これによって、突出機構24の突出部24bの先端24b1と、金型21とで不織布3及び樹脂シート19が挟持される。不織布3及び樹脂シート19を金型21に押し付ける際に、図9に示すように、不織布3及び樹脂シート19が凸部21aに押し付けられて変形して、ある程度、凸部21aに沿った形状となるが、完全には追従していない。
【0054】
次に、図9の状態からは、第1実施形態と同様に、金型21,22を閉方向にさらに移動させると共に突出部24bの突出量を減少させることによって、金型21,22を閉方向に移動させて、閉動作を完了させることができる。
【0055】
本実施形態においても、図9の状態から金型21,22を閉方向に移動させる際に不織布3に強い張力を加えることができるので、第1実施形態と同様に、構造体1の不織布3に皺が発生することを抑制することができる。
【0056】
また、第2実施形態と同様に、不織布3を不織布保持機構23で保持させない状態で、不織布3及び樹脂シート19を、図9に示すようにある程度変形させるので、第1実施形態に比べて不織布3に加わる最大張力が低減されることにより、不織布3の損傷が抑制される。
【0057】
4.その他の実施形態
本発明は、以下の形態でも実施可能である。
・不織布3と樹脂シート19は、上記実施形態とは逆向きに配置してもよい。例えば、第1実施形態において、不織布3と金型21の間に樹脂シート19を配置してもよい。
・上記実施形態では、金型21,22の一方に設けた突出機構24の突出部24bの先端24b1と、金型21,22の他方とで不織布3及び樹脂シート19を挟持しているが、金型21,22の一方に設けた突出機構24の突出部24bの先端24b1と、金型21,22の他方に装着された部材とで不織布3及び樹脂シート19を挟持してもよい。例えば、金型21,22の他方にも突出機構24を装着し、一対の突出機構24の突出部24bの先端24b1同士で不織布3及び樹脂シート19を挟持してもよい。
・上記実施形態では、不織布保持機構23は、閉動作が完了するまで不織布3を保持しているが、閉動作が完了する前に不織布3の保持を解除してもよい。例えば、不織布保持機構23が不織布3を保持した後、その状態で金型21,22を閉方向に移動させることによって、不織布3と樹脂シート19を一体化し、その後に、金型21,22の閉動作が完了する前に不織布保持機構23による保持を解除してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :構造体
1a :バリ
1b :押圧部位
2 :樹脂シート成形体
3 :不織布
10 :樹脂供給装置
11 :原料樹脂
11a :溶融樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
16 :インジェクタ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
19 :樹脂シート
20 :金型ユニット
21 :第1金型
21a :凸部
21b :キャビティ面
21c :ピンチオフ部
22 :第2金型
22a :凹部
22b :キャビティ面
22c :ピンチオフ部
23 :不織布保持機構
24 :突出機構
24a :ベース
24b :突出部
24b1 :先端
25 :連結管
27 :連結管
100 :成形機
R :対向領域
a :端点
b :端点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9