(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】pH測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20240410BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G01N27/26 371C
G01N27/26 381Z
G01N27/26 391Z
G01N27/416 353Z
(21)【出願番号】P 2020072804
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】森川 範広
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 浩
(72)【発明者】
【氏名】石田 松文
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-161347(JP,A)
【文献】特開2004-163349(JP,A)
【文献】特開平06-242072(JP,A)
【文献】特開2009-236575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316397(US,A1)
【文献】特開昭60-205345(JP,A)
【文献】特開昭63-228055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の被測定液中に浸漬され、各々ガラス電極と比較電極を有する2つのpH検出器と、
前記2つのpH検出器の前記ガラス電極と前記比較電極の間で得られる起電力信号の各々が入力される変換器とを備え、
前記変換器は、前記2つのpH検出器
からの起電力信号の各々について、
有効か無効かの有効性判断を行い、
前記有効性判断の結果、前記2つのpH検出器の内、一方のpH検出器から入力される起電力信号が無効であるときは、他方のpH検出器からの起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力し、
前記有効性判断の結果、前記2つのpH検出器の双方から
入力される起電力信号が
有効であるときは、前記2つのpH検出器
の各々について校正時の起電力信号に基づいて健全性評価を行い、
前記健全性評価が高い方のpH検出器の起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力する、pH測定システム。
【請求項2】
前記変換器は、前記2つのpH検出器の各々について、校正時に得られた起電力信号に基づいて、pH7の起電力と、1pH当たりの起電力変化を求め、求めた前記pH7の起電力と前記起電力変化を評価指標として当該pH検出器の健全性評価を行う、請求項1に記載のpH測定システム。
【請求項3】
前記変換器は、前記pH7の起電力と前記起電力変化に加えて、校正時の起電力応答速度を評価指標として、前記2つのpH検出器の各々について健全性評価を行う、請求項2に記載のpH測定システム。
【請求項4】
前記変換器は、前記2つのpH検出器の洗浄履歴を記憶し、前記2つのpH検出器の健全性評価に差が認められないとき、直近に洗浄を行った方のpH検出器の起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力する、請求項1~3のいずれか一項に記載のpH測定システム。
【請求項5】
前記変換器は、前記2つのpH検出器の校正履歴を記憶し、前記2つのpH検出器の健全性評価に差が認められないとき、直近に校正を行った方のpH検出器の起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力する、請求項1~3のいずれか一項に記載のpH測定システム。
【請求項6】
前記変換器は、
前記有効性判断において、前記2つのpH検出器のいずれかが、校正中、洗浄中、またはエラー状態であるとき、当該pH検出器から入力される起電力信号は無効であると判断する、請求項1~5のいずれか一項に記載のpH測定システム。
【請求項7】
さらに、前記2つのpH検出器のいずれかの起電力信号が無効であること、または起電力信号が無効であったpH検出器が有効な起電力信号を出力できる状態に回復したことを前記変換器に入力する入力装置を備え、前記変換器は、当該入力装置からの入力信号を受信した際、前記入力信号に従って、当該pH検出器から入力される起電力信号の
有効性判断を行う、請求項1~6のいずれか一項に記載のpH測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH測定システムに関する。さらに詳しくは、重要な測定ポイントにおけるpH測定を高い信頼性を保持して継続するためのpH測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
重要な測定ポイントでは、従来2台のpH計を並列運転して、片方が故障や点検などで測定が中断しても、もう片方が運転を続け欠測が生じないようにすることが行われている。
pH計により測定されたpHは、薬液注入などの制御や、水処理状況の監視等の目的で外部に出力される。そこで、2台のpH計を並列運転する場合、双方が正常に稼働しているときは、いずれの測定値に基づいてpHを出力するかを選択する必要がある。
【0003】
特許文献1では、洗浄や校正を行ったばかりのセンサに基づくpH出力を継続し、一定時間経過すると、他方のセンサの洗浄や校正を行ってから、他方のセンサに基づくpH出力に切り替えることが提案されている。
特許文献1では、洗浄や校正のタイミングで2つのセンサのいずれの測定値を利用するかを切り替えるので、直近に洗浄や校正を行った方のセンサの信号を利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、pH計の検出器は、経時により劣化する。また、通常の洗浄では解消できない汚れの蓄積等により性能が悪化する場合がある。そのため、直近に洗浄や校正を行った方の検出器の信号が、常に信頼性に優れる訳ではない。
そのため、特許文献1の方法では、信頼性の低いpH計の検出器の測定値を用いてしまう場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、重要な測定ポイントにおけるpH測定を高い信頼性を保持して継続するためのpH測定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]同一の被測定液中に浸漬され、各々ガラス電極と比較電極を有する2つのpH検出器と、
前記2つのpH検出器の前記ガラス電極と前記比較電極の間で得られる起電力信号の各々が入力される変換器とを備え、
前記変換器は、前記2つのpH検出器の各々について、校正時の起電力信号に基づいて健全性評価を行い、
前記2つのpH検出器の内、一方のpH検出器から入力される起電力信号が無効であるときは、他方のpH検出器からの起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力し、
前記2つのpH検出器の双方から有効な起電力信号が入力されるときは、前記2つのpH検出器の内、健全性評価が高い方のpH検出器の起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力する、pH測定システム。
[2]前記変換器は、前記2つのpH検出器の各々について、校正時に得られた起電力信号に基づいて、pH7の起電力と、1pH当たりの起電力変化を求め、求めた前記pH7の起電力と前記起電力変化を評価指標として当該pH検出器の健全性評価を行う、[1]に記載のpH測定システム。
[3]前記変換器は、前記pH7の起電力と前記起電力変化に加えて、校正時の起電力応答速度を評価指標として、前記2つのpH検出器の各々について健全性評価を行う、[2]に記載のpH測定システム。
[4]前記変換器は、前記2つのpH検出器の洗浄履歴を記憶し、前記2つのpH検出器の健全性評価に差が認められないとき、直近に洗浄を行った方のpH検出器の起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力する、[1]~[3]のいずれか一項に記載のpH測定システム。
[5]前記変換器は、前記2つのpH検出器の校正履歴を記憶し、前記2つのpH検出器の健全性評価に差が認められないとき、直近に校正を行った方のpH検出器の起電力信号に基づき、前記被測定液のpHに関する情報を出力する、[1]~[3]のいずれか一項に記載のpH測定システム。
[6]前記変換器は、前記2つのpH検出器のいずれかが、校正中、洗浄中、またはエラー状態であるとき、当該pH検出器から入力される起電力信号は無効であると判断する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のpH測定システム。
[7]さらに、前記2つのpH検出器のいずれかの起電力信号が無効であること、または起電力信号が無効であったpH検出器が有効な起電力信号を出力できる状態に回復したことを前記変換器に入力する入力装置を備え、前記変換器は、当該入力装置からの入力信号を受信した際、前記入力信号に従って、当該pH検出器から入力される起電力信号の有効性を判断する、[1]~[6]のいずれか一項に記載のpH測定システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明のpH測定システムによれば、重要な測定ポイントにおけるpH測定を高い信頼性を保持して継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1実施形態に係るpH測定システムの概略構成図である。
【
図2】本発明のpH測定システムにおけるpH検出器と洗浄校正装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[装置構成]
図1に示すように、本実施形態のpH測定システム1は、第1pH検出器11及び第2pH検出器12(2つの
図2に示すpH検出器10)と、変換器30を備えている。本実施形態のpH測定システム1は、さらに第1洗浄校正装置41及び第2洗浄校正装置42(2つの
図2に示す洗浄校正装置40)と入力装置50を備えている。
第1pH検出器11と第2pH検出器12は、いずれも同一の被測定液Wに浸漬されている。
【0011】
なお、同一の被測定液Wに浸漬されているとは、第1pH検出器11が浸漬されている被測定液Wと第2pH検出器12が浸漬されている被測定液Wとが、連続する液相を形成しており、かつ、各々の被測定液WのpHが同等であると見做せる程度に近接している状態を意味する。
【0012】
第1pH検出器11と第2pH検出器12は、各々少なくともガラス電極と比較電極を有している。本実施形態の第1pH検出器11と第2pH検出器12は、さらに、温度センサを有している。
第1pH検出器11からは、第1検出器信号21が変換器30に入力されるようになっている。また、第2pH検出器12からは第2検出器信号22が変換器30に入力されるようになっている。
第1pH検出器11及び第2pH検出器12は、各々ガラス電極、比較電極及び温度センサが一体化された複合電極であることが好ましい。
【0013】
第1検出器信号21は、少なくとも、第1pH検出器11のガラス電極と比較電極の間で得られる起電力信号を含んでいる。本実施形態では、さらに、第1pH検出器11の温度センサの信号を含んでいる。
第2検出器信号22は、少なくとも、第2pH検出器12のガラス電極と比較電極の間で得られる起電力信号を含んでいる。本実施形態では、さらに、第2pH検出器12の温度センサの信号を含んでいる。
【0014】
第1検出器信号21及び第2検出器信号22に含まれる起電力信号は、各々のガラス電極と比較電極の間で得られる起電力そのものの信号でもよいし、予めインピーダンス変換された信号でもよいし、さらに、標準温度(25℃)における起電力に換算した信号であってもよい。また、デジタル信号に変換されたものであってもよい。
また、第1検出器信号21及び第2検出器信号22に含まれる温度センサの信号は、温度センサから直接得られる抵抗値等であってもよいし、当該抵抗値を温度に変換したものであってもよい。また、デジタル信号に変換されたものであってもよい。
【0015】
変換器30は、第1検出器信号21に含まれる起電力信号または第2検出器信号22に含まれる起電力信号のいずれかに基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力信号33として出力する。いずれの検出器信号に基づき被測定液WのpHに関する情報を出力するかについては、後述する。
出力信号33には、被測定液WのpHに関する情報に加えて、その情報がいずれのpH検出器から得られた検出器信号に基づくのかについての情報、温度情報、各pH検出器についての校正や洗浄の履歴、その他の情報を含めることができる。
出力信号33は、アナログ信号でもデジタル信号でもよい。また、有線による出力でも無線による出力でもよい。
【0016】
pHに関する情報は、好ましくは、第1検出器信号21または第2検出器信号22に含まれる起電力信号から各々のpH検出器の検量線情報に基づき求めたpH値である。pHに関する情報は、第1検出器信号21または第2検出器信号22に含まれる起電力信号そのものと、当該pH検出器の検量線情報であってもよい。pHに関する情報が起電力信号そのものと検量線情報である場合、出力信号33を受信した外部コンピュータ等で、起電力信号から、検量線情報に基づいてpHを求めることができる。
【0017】
なお、検量線情報とは、起電力とpHとの関係を示す情報であって、校正によって取得され、変換器30に記憶される。変換器30が記憶する検量線情報は、検量線の式そのものであってもよいし、検量線の式を求めるための、各標準液校正時の標準液のpHとその時の起電力及び温度の情報であってもよい。
【0018】
第1洗浄校正装置41は変換器30からの第1洗浄校正信号31に基づき、第1pH検出器11に対して、洗浄または洗浄及び校正を自動的に行うようになっている。
第2洗浄校正装置42は変換器30からの第2洗浄校正信号32に基づき、第2pH検出器12に対して、洗浄または洗浄及び校正を自動的に行うようになっている。
【0019】
変換器30は、変換器30に予め記憶されたプログラムに基づいて、第1洗浄校正信号31及び第2洗浄校正信号32を出力するようになっている。
第1洗浄校正信号31及び第2洗浄校正信号32は、アナログ信号でもデジタル信号でもよい。また、変換器30と第1洗浄校正装置41、変換器30と第2洗浄校正装置42は有線で接続しても無線で接続してもよい。
【0020】
第1洗浄校正装置41と第2洗浄校正装置42の方式に特に限定はないが、
図1は、洗浄校正槽60にpH検出器を引き上げて、気相中で噴射装置70から洗浄水ないしは標準液を吹き付ける態様を示した。
図2に気相中で洗浄水ないしは標準液を吹き付ける具体的構成の一例を示す。
図2におけるpH検出器10は、
図1の第1pH検出器11または第2pH検出器12である。また、
図2における洗浄校正装置40は、
図1の第1洗浄校正装置41または第2洗浄校正装置42である。
【0021】
図2に示すように、pH検出器10は、電極ホルダ23の下端に取り付けられている。また、電極ホルダ23の下端側には、pH検出器10を保護する保護板24が設けられている。第1検出器信号21または第2検出器信号22を変換器30に入力するためのリード線25は、一端がpH検出器10に接続され、他端は電極ホルダ23の頂部から引き出され、変換器30に接続されるようになっている。
なお、第1検出器信号21または第2検出器信号22は、無線で変換器30に入力されるようにしてもよい。
【0022】
洗浄校正装置40は、洗浄校正槽60と洗浄校正槽60に取り付けられた噴射装置70と昇降装置80を備えている。噴射装置70は、第1標準液入口管71a、第2標準液入口管71b、洗浄水入口管72が設けられたノズル73と、図示を省略するポンプ等で構成されている。
【0023】
第1標準液入口管71aには、第1標準液(例えばpH7標準液)を収容したタンクが、送液ポンプを介して接続され、ノズル73から洗浄校正槽60内に引き上げられたpH検出器10に向かって、第1標準液を噴射できるようになっている。
第2標準液入口管71bには、第2標準液(例えばpH4標準液)を収容したタンクが、送液ポンプを介して接続され、ノズル73から洗浄校正槽60内に引き上げられたpH検出器10に向かって、第2標準液を噴射できるようになっている。
【0024】
洗浄水入口管72には、洗浄水の送液管が接続され、ノズル73から洗浄校正槽60内に引き上げられたpH検出器10に向かって、洗浄水を噴射できるようになっている。洗浄水としては水道水等を使用できる。薬液洗浄をする場合は、洗浄水入口管72の他に薬液を導入するための薬液入口管を設け、これに、薬液を収容したタンクを送液ポンプを介して接続することが好ましい。
【0025】
昇降装置80はエアシリンダ81とエアシリンダ81に取り付けられた把持部82で構成されている。把持部82は、電極ホルダ23を把持し、エアシリンダ81の動きに伴って、pH検出器10を電極ホルダ23と共に昇降させられるようになっている。
昇降装置80によって、pH検出器10が洗浄校正槽60内に引き上げられると、ノズル73から標準液や洗浄水をpH検出器10に向けて噴射できる。
昇降装置80によって、pH検出器10が洗浄校正槽60内から被測定液Wに降ろされると、被測定液WのpH測定を再開できる。
【0026】
洗浄校正装置40の方式は、
図1、
図2のものに限定されず、例えば、標準液を採取したカップにpH検出器10を移動させて校正を行う装置であってもよい。また、洗浄水を採取したカップにpH検出器10を移動させて洗浄を行う装置であってもよい。また、ブラシ洗浄や超音波洗浄を行うものでもよい。
また、自動洗浄装置と自動校正装置が個別に用意されたものであってもよい。pH測定システム1は、自動洗浄装置のみまたは自動校正装置のみを備えるシステムであっても、自動洗浄校正装置、自動洗浄装置、自動校正装置のいずれをも備えないものであってもよい。
【0027】
入力装置50からは、変換器30に対して入力信号51が入力されるようになっている。入力装置50の具体的態様に特に限定はなく、例えば、タッチパネル、キーボード等を採用できる。入力装置50は変換器30と一体的に構成することが好ましい。例えば変換器30の筐体の扉に設けたり、変換器30と同じ筐体内に収容したりすることができる。
入力装置50と変換器30とは、有線で接続されていても無線で接続されていてもよい。
また、pH測定システム1は入力装置50を備えなくてもよい。その場合、外部のコントローラ等から、変換器30に対して必要な情報を入力できるようにしてもよい。
【0028】
入力装置50は、第1pH検出器11または第2pH検出器12のいずれかの起電力信号が無効であること、または起電力信号が無効であった第1pH検出器11または第2pH検出器12について、手動洗浄や電極交換等の措置がとられ、当該pH検出器が有効な起電力信号を出力できる状態に回復したことを、入力信号51として変換器30に入力できるようになっている。
【0029】
入力装置50は、pH測定システム1を予め定めたプログラムと異なる態様で動作させるための信号、予め定めたプログラムや種々の設定値を変更する信号、手動校正や手動洗浄を行うための信号等、種々の信号を入力信号51として変換器30に出力できるようにしてもよい。
【0030】
[検出器信号の選択基準]
変換器30は、以下の3つの基準に従い、第1検出器信号21と第2検出器信号22のいずれかに含まれる起電力信号に依拠して被測定液WのpHに関する情報を出力するかを判断する。
基準1:起電力信号の有効性
基準2:健全性評価
基準3:洗浄または校正の履歴等、その他の基準
これらの基準の内、基準1が最も優先度が高く、次に基準2の優先度が高い。すなわち、基準1で判断がつかない場合、基準2で判断し、基準2でも判断がつかない場合、基準3で判断する。
以下各基準について詳述する。
【0031】
[基準1:起電力信号の有効性]
変換器30は、第1検出器信号21と第2検出器信号22のいずれかに含まれる起電力信号の各々について、有効性を判断する。
変換器30は、いずれかのpH検出器が次のa~dのいずれかの状態の場合、当該pH検出器からの検出器信号に含まれる起電力信号は無効であると判断する。
a:洗浄中
b:校正中
c:エラー状態
d:無効であることを入力された場合
【0032】
変換器30は、第1pH検出器11と第2pH検出器12が同時に、aの洗浄又はbの校正の状態とならないよう、第1洗浄校正装置41に対する第1洗浄校正信号31と第2洗浄校正装置42に対する第2洗浄校正信号32とを時間をずらして出力する。
例えば、第1洗浄校正装置41に洗浄動作を指令する第1洗浄校正信号31を9時に出力したとすれば、第2洗浄校正装置42に洗浄動作を指令する第2洗浄校正信号32を例えば12時に出力するなどして、両pH検出器からの起電力信号が共に無効となることを回避する。
a又はbの状態は、洗浄または校正が終了することにより解消される。変換器30が予め定められたプログラムに従い第1洗浄校正信号31又は第2洗浄校正信号32を出力するようにすれば、変換器30は、洗浄または校正の終了を自ら判断できる。
【0033】
cのエラー状態は、変換器30によって自動的に判断されることが好ましい。エラー状態の自動判断は、公知の種々の判断手法に従って行うことができる。
校正時における判断手法としては、校正時の起電力信号から求められるpH7の起電力、1pH当たりの起電力変化、起電力応答速度に基づく判断が挙げられる。pH7の起電力、1pH当たりの起電力変化、及び起電力応答速度については、「基準2:健全性評価」の項において詳述する。
例えば、pH7の起電力の絶対値が予め定めた値以上となった場合に、エラー状態であると判断することができる。また、1pH当たりの起電力変化が予め定めた範囲外となった場合にエラー状態であると判断することができる。
【0034】
洗浄時における判断手法としては、例えば、酸性の薬液で洗浄している場合に、当該薬液のpHに相当する起電力から著しく外れた起電力を得た場合にエラー状態であると判断することができる。また、当該薬液のpHに相当する起電力に至るまでの応答時間が著しく長い場合にエラー状態であると判断することができる。
【0035】
cのエラー状態は、公知の手法を用いて通常の測定中に検知することもできる。
例えば、ガラス電極の異常に基づくエラー状態は、ガラス抵抗を測定する方法により検知できる。すなわち、正常なガラス電極の膜抵抗は数十~数百MΩであるが、クラックが生じたり割れたりした場合は0~数MΩとなるのでガラス電極の異常に基づくエラー状態であることが分かる。また、内部電極の電位をリードアウトするための導線に断線が生じた場合、ガラス電極の抵抗は無限大となる。
pH測定と平行してガラス電極の抵抗を直接測定する具体的な方法としては、特開平2-309240号公報に開示された交流電圧を印加してインピーダンスを求める方法がある。
【0036】
比較電極の異常に基づくエラー状態は、比較電極の抵抗を測定する方法により検知できる。すなわち、比較電極の塩化カリウム溶液等の内部液が枯渇したり、液絡部(ジャンクション)の汚れ、詰まりで内部液の流出が阻害されたりすると、抵抗は極めて大きくなる。逆に液絡部の割れや脱落があると抵抗は極めて小さくなる。
pH測定と平行して比較電極の抵抗を直接測定する具体的な方法としては、特開平2-309240号公報に開示された交流電圧を印加してインピーダンスを求める方法がある。
【0037】
pH検出器が温度センサを有する場合、サーミスタ等の温度センサの異常も、pH等の測定を継続しながら検知できる。具体的には、断線が生じると抵抗値が無限大となり、逆に白金を封止している樹脂中の不純物などの影響によりショートした場合は抵抗値が著しく低下するので、異常と判断できる。
【0038】
温度センサの異常を検出した場合、当該pH検出器の起電力信号は正常に温度補償等ができず無効であるとみなしてもよい。また、温度センサが異常であっても起電力信号自体は有効であるとして、温度センサの異常が検知されたpH検出器の起電力信号を、他方のpH検出器の正常な温度センサの信号に基づき温度補償等して使用してもよい。
温度センサの異常を検知した場合の取り扱いは、予め定めて、変換器30に記憶させておくことができる。
【0039】
dの無効であることの入力は、操作者がpH検出器の手動洗浄、手動校正、あるいは交換作業等を行う際に、当該pH検出器からの起電力信号が無効となることを、入力装置50により変換器30に入力することにより行う。また、変換器30による自動的なエラー状態の判断が行われることなく、操作者がエラー状態またはその予兆を認識した場合に、当該pH検出器からの起電力信号が無効であることを、入力装置50により変換器30に入力することにより行う。
【0040】
c又はdの状態は、操作者が手動洗浄や電極交換等の措置をとり、当該pH検出器を有効な起電力信号を出力できる状態に回復させた際に、その旨を、入力信号51として変換器30に入力した際に解消する。
【0041】
変換器30は、第1検出器信号21と第2検出器信号22のいずれかに含まれる起電力信号の一方が有効で他方が無効である場合、有効である方の起電力信号に依拠して被測定液WのpHに関する情報を出力する。
変換器30は、第1検出器信号21と第2検出器信号22に含まれる起電力信号の双方が有効である場合、次の基準2に基づく判断を行う。
変換器30は、第1検出器信号21と第2検出器信号22に含まれる起電力信号の双方が無効である場合、被測定液WのpHに関する情報を出力しない。起電力信号の双方が無効となる確率は低いと考えられるが、そのような場合、pH測定システム1によるpH測定は欠測状態となる。
【0042】
[基準2:健全性評価]
本実施形態の変換器30は、各pH検出器について、校正時の起電力信号に基づいて健全性評価を行う。そして、第1pH検出器11と第2pH検出器12の双方から有効な起電力信号が入力されるときは、健全性評価の高い方のpH検出器の起電力に基づいて被測定液WのpHに関する情報を出力信号33として出力する。
健全性評価は、校正時の起電力信号から求められるpH7の起電力と1pH当たりの起電力変化を評価指標として行うことが好ましい。
【0043】
pH7の起電力とは、pH検出器を、pHに相当する液に浸漬した際に得られるガラス電極と比較電極との間の起電力である。ガラス電極の内部液には、通常pH7標準液(中性リン酸塩標準液)が使用される。その場合、pH7標準液で校正している際に得られる起電力がpH7の起電力となる。
【0044】
1pH当たりの起電力変化とは、二種類のpH標準液を用いて校正した際、それぞれの標準液校正で得られた起電力の差を、各々のpH標準液のpHの差で除した値である。
二種類のpH標準液としては、pH7標準液(中性リン酸塩標準液)とpH4(フタル酸塩)標準液の組み合わせ、またはpH7標準液(中性リン酸塩標準液)とpH9(ホウ酸塩)標準液の組み合わせを採用することが一般的であるが、これに限られない。
【0045】
なお、pH標準液のpHは温度に依存するため、温度センサで得られた温度におけるその標準液のpHに基づき二種類のpH標準液のpHの差を求めることが好ましい。pH7標準液、pH4標準液、pH9標準液等の温度に応じたpHは公知であり、これら公知の情報を変換器30に記憶させておくことにより、自動的にその時の温度におけるpHを用いてpHの差を求めることができる。
また、1pH当たりの起電力変化は、温度に依存するため、予め温度センサで得られた温度に基づき、標準温度(25℃)における起電力変化に換算することが好ましい。
【0046】
pH7の起電力を評価指標とする具体的な方法に特に限定はないが、新品のpH検出器のように絶対値の小さいpH7の起電力が得られた場合を健全性100%とし、エラーとなるぎりぎりの状態の起電力(エラー判定閾値)が得られた場合を健全性0%とし、その間の起電力を100~0%の間の数値で刻む方法が挙げられる。
【0047】
例えば、以下の式(1)を用いて健全性を求めると、エラー判定閾値である±AmVの健全性が0%となり、±BmVのときの健全性が100%となり、その間の起電力が100~0%の間の数値で刻まれる。
健全性計算値(%)=(A-|pH7の起電力|)÷(A-B)×100 ・・・(1)
【0048】
例えば、エラー判定閾値を±90mVとし、±10mVのときの健全性を100(%)とするには、A=90mV、B=10mVとすればよい。すなわち、式(1)は、式(1’)となる。
健全性計算値(%)=(90-|pH7の起電力|)÷0.8 ・・・(1’)
【0049】
種々の値のpH7の起電力について、この式(1’)で健全性計算値を求めた。計算値の1%の位の相違はpH電極の健全性を評価する上で有意の差とは言い難いため、得られた健全性計算値の1%の位を四捨五入してpH7の起電力に基づく健全性評価とした。
pH7の起電力の絶対値が10mV未満のときの健全性は100%とし、pH7の起電力の絶対値が90mVを超えるときの健全性は0%とした。結果を表1に示す。
AとBの値は、健全性を0%としたい範囲と100%としたい範囲に応じて変化するので、表1の結果は、あくまでpH7の起電力を評価指標とする健全性評価の一例である。
【0050】
【0051】
次に、1pH当たりの起電力変化の健全性の評価方法の一例を示す。25℃における1pH当たりの起電力変化(以下単に「起電力変化」という。)の理論値は約-59mV/pHである。
そこで、起電力変化が-59mV/pHを挟む-C~-DmV/pHのときの健全性を100%とする。
【0052】
次に、起電力変化の絶対値がCmV/pHより小さい場合について、以下の式(2)を用いて健全性を求める。この式により、エラー判定閾値である-EmV/pHの健全性が0%となり、-CmV/pHのときの健全性が100%となり、その間の起電力変化が100~0%の間の数値で刻まれる。
健全性計算値(%)=(-E+|起電力変化|)÷(C-E)×100 ・・・(2)
例えば、エラー判定閾値を-47.3mV/pHとし、-58mV/pHのときの健全性を100(%)とするには、C=58mV/pH、E=47.3mV/pHとすればよい。すなわち、式(2)は、式(2’)となる。
健全性計算値(%)=(-47.3+|起電力変化|)÷0.107 ・・・(2’)
【0053】
次に、起電力変化の絶対値がDmV/pHより大きい場合について、以下の式(3)を用いて健全性を求める。この式により、エラー判定閾値である-FmV/pHの健全性が0%となり、-DmV/pHのときの健全性が100%となり、その間の起電力変化が100~0%の間の数値で刻まれる。
健全性計算値(%)=(-F+|起電力変化|)÷(D-F)×100 ・・・(3)
例えば、エラー判定閾値を-63mV/pHとし、-60mV/pHのときの健全性を100(%)とするには、D=60mV/pH、F=63mV/pHとすればよい。すなわち、式(3)は、式(3’)となる。
健全性計算値(%)=(-63+|起電力変化|)÷(-0.03) ・・・(3’)
【0054】
起電力変化が-58~-60mV/pHの健全性を100%、起電力変化の絶対値が47.3mV/pHより小さい場合または63mV/pHより大きい場合の健全性を0とし、-47.3~-58mV/pHの健全性を式(2’)で求め、-60~-63mV/pHの健全性を式(3’)で求めた。計算値の1%の位の相違はpH電極の健全性を評価する上で有意の差とは言い難いため、得られた健全性計算値の1%の位を四捨五入した。結果を表2に示す。
C~Fの値は、健全性を0%としたい範囲と100%としたい範囲に応じて変化するので、表2の結果は、あくまで起電力変化を評価指標とする健全性評価の一例である。
【0055】
【0056】
本発明における健全性評価は、上記のpH7の起電力を評価指標とする健全性評価と起電力変化を評価指標とする健全性評価の総合評価とすることが好ましい。これら2つの指標による健全性評価を総合する方法としては、2つの指標による健全性評価を平均する方法、2つの指標による健全性評価の内悪い方の評価を採用する方法等が挙げられる。
【0057】
本発明における健全性評価は、上記のpH7の起電力と起電力変化に加えて、さらに、校正時の起電力応答速度を評価指標に加えてもよい。
起電力応答速度は、種々の基準で判定できるが、例えば、ある標準液に電極を浸漬した際、浸漬から、その標準液のpHに近いある値に到達するまでの時間により判定することができる。また、ある標準液に電極を浸漬した際、浸漬から、単位時間当たりの電位変化量が所定値以下となるまでの時間により判定することができる。
【0058】
本発明における健全性評価は、上記のpH7の起電力と起電力変化に加えて、さらに、校正時の起電力応答速度を評価指標に加えた場合、これら3つの指標による健全性評価を総合する方法としては、3つの指標による健全性評価を平均する方法、3つの指標による健全性評価の内最も悪い評価を採用する方法等が挙げられる。
【0059】
変換器30は、健全性評価を行い、両pH検出器の健全性評価に差が認められる場合は、健全性評価の高い方のpH検出器の起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
ただし、pH検出器から入力される起電力信号が、洗浄や校正作業中などの事由により無効である間は、基準1が優先され、有効な起電力信号を出力する方のpH検出器からの起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
【0060】
このように、変換器30は、一方のpH検出器の健全性評価が他方のpH検出器より高い場合、一方のpH検出器からの起電力信号が無効である間を除き、一方のpH検出器の起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。そして、いずれかのpH検出器について校正が行われ、両pH検出器の健全性評価の差が逆転した場合は、他方のpH検出器からの起電力信号が無効である間を除き、他方のpH検出器の起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
いずれかのpH検出器について校正が行われ、両pH検出器の健全性評価に差が認められなくなった場合、又は、当初から両pH検出器の健全性評価に差が認められない場合は、以下の取り扱いに従う。
【0061】
[基準3:その他の基準]
本実施形態の変換器30は、健全性評価の結果、両pH検出器の健全性評価に差が認められない場合、その他の基準によりいずれかのpH検出器を選択し、そのpH検出器の起電力に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力信号33として出力する。
その他の基準としては、洗浄または校正の履歴、pH検出器を購入して使用開始してからの経過時間、校正開始から指示が安定して校正が終了するまでの所要時間(校正時間)等が挙げられるが、洗浄または校正の履歴に基づく基準を採用することが好ましい。
【0062】
洗浄に基づく基準を採用する場合、変換器30は、第1pH検出器11と第2pH検出器12のpH検出器の洗浄履歴を記憶する。洗浄に引き続いて校正を行う場合も洗浄をした履歴として記憶する。そして、直近に洗浄を行った方のpH検出器の起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
【0063】
例えば、両pH検出器の健全性評価に差が認められない場合で、第1pH検出器11の前回洗浄を終了したのが9時、第2pH検出器12の前回洗浄が終了したのが12時とすると、変換器30は、9時から12時までは第1pH検出器11からの起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力し、12時からは、第2pH検出器12からの起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
【0064】
ただし、pH検出器から入力される起電力信号が、洗浄に引き続いて行われる校正作業中などの事由により無効である間は、基準1が優先され、有効な起電力信号を出力する方のpH検出器からの起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
このように、いずれかのpH検出器からの起電力信号が無効である間を除き、いずれかのpH検出器について洗浄が行われる都度、pHに関する情報が依拠するpH検出器を切り替えることを繰り返す。この繰り返しは、いずれかのpH検出器について校正が行われ、両pH検出器の健全性評価に差が生じるまで継続する。
【0065】
校正に基づく基準を採用する場合、変換器30は、第1pH検出器11と第2pH検出器12のpH検出器の校正履歴を記憶する。そして、直近に校正を行った方のpH検出器の起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
【0066】
例えば、両pH検出器の健全性評価に差が認められない場合で、第1pH検出器11の前回の校正を終了したのが1日の12時、第2pH検出器12の前回の校正を終了したのが2日の12時とすると、変換器30は、1日の12時から2日の12時までは第1pH検出器11からの起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力し、2日の12時からは、第2pH検出器12からの起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
【0067】
ただし、pH検出器から入力される起電力信号が、洗浄作業中などの事由により無効である間は、基準1が優先され、有効な起電力信号を出力する方のpH検出器からの起電力信号に基づき、被測定液WのpHに関する情報を出力する。
このように、いずれかのpH検出器からの起電力信号が無効である間を除き、いずれかのpH検出器について校正が行われる都度、pHに関する情報が依拠するpH検出器を切り替えることを繰り返す。この繰り返しは、いずれかのpH検出器について校正が行われ、両pH検出器の健全性評価に差が生じるまで継続する。
【0068】
[作用]
本発明のpH測定システムによれば、両pH検出器が有効な起電力を出力できる状態の場合、健全性評価に基づきpHに関する情報が依拠するpH検出器を選択するので、より信頼性の高いpHに関する情報を出力することができる。
【0069】
本発明のように洗浄、校正工程を経て検出器の健全性評価によって信頼性の高い検出器を選択する方法は、pH測定システムに限定される技術ではなく、洗浄や校正を行って性能を維持する他の測定システム、例えば溶存酸素電極、電気伝導率セル、温度センサ、イオン電極、酸化還元電極を用いる測定システム、残留塩素計、濁度計などでも利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 pH測定システム
10 pH検出器
11 第1pH検出器
12 第2pH検出器
21 第1検出器信号
22 第2検出器信号
30 変換器
31 第1洗浄校正信号
32 第2洗浄校正信号
33 出力信号
40 洗浄校正装置
41 第1洗浄校正装置
42 第2洗浄校正装置
50 入力装置
51 入力信号
60 洗浄校正槽
70 噴射装置
W 被測定液