(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】タイヤ加硫方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240410BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240410BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2020084068
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸久
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-285331(JP,A)
【文献】特開2008-126487(JP,A)
【文献】特開2020-001362(JP,A)
【文献】特開2004-130636(JP,A)
【文献】特開2009-006600(JP,A)
【文献】特開昭63-054212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置される複数のそれぞれのセクタモールドの外周面にセグメントを取付け、上側サイドモールドの上面に上部プレートを取り付け、下側サイドモールドの下面に下部プレートを取り付け、それぞれの前記セグメントの外周側にコンテナリングを配置して、前記下側サイドモールドにグリーンタイヤを横倒し状態で載置し、前記コンテナリングを加圧機構により下方移動させることにより、前記上部プレートと前記下部プレートの間で、それぞれの前記セクタモールドを環状に組み付けるとともに、これらセクタモールドを前記上側サイドモールドと前記下側サイドモールドとにより上下に挟んで、前記グリーンタイヤを内部に閉じ込めて閉型し、前記グリーンタイヤを加圧および加熱することにより加硫するタイヤ加硫方法において、
それぞれの前記セクタモールドと前記上側サイドモールドと前記下側サイドモールドとを閉型した状態で、前記加圧機構とは独立した上部閉型機構を作動させることにより、前記上側サイドモールドを、それぞれの前記セクタモールドが環状に組み付けられた状態を維持させながらそれぞれの前記セクタモールドの上面に押圧し、前記加圧機構とは独立した下部閉型機構を作動させることにより、前記下側サイドモールドを、それぞれの前記セクタモールドが環状に組み付けられた状態を維持させながらそれぞれの前記セクタモールドの下面に押圧することを特徴とするタイヤ加硫方法。
【請求項2】
前記コンテナリングを下方移動させることにより、それぞれの前記セクタモールドを環状に組み付ける時に、それぞれの前記セクタモールドの上面と、この上面に対向する前記上側サイドモールドの対向面とを非接触の状態に維持するとともに、それぞれの前記セクタモールドの下面と、この下面に対向する前記下側サイドモールドの対向面とを非接触の状態に維持しておき、前記上部閉型機構を作動させることにより、それぞれの前記セクタモールドの上面と、この上面に対向する前記上側サイドモールドの対向面とを接触させて、前記上側サイドモールドをそれぞれの前記セクタモールドの上面に押圧し、前記下部閉型機構を作動させることにより、それぞれの前記セクタモールドの下面と、この下面に対向する前記下側サイドモールドの対向面とを接触させて、前記下側サイドモールドをそれぞれの前記セクタモールドの下面に押圧する
請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項3】
前記下部閉型機構として、前記下部プレートの下面を支持して配置される平面視で円環状の1個のシリンダ機構を用いる請求項1または2に記載のタイヤ加硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ加硫方法に関し、さらに詳しくは、セクタモールドと上側や下側サイドモールドとの間にすき間が生じることを防止してタイヤ加硫用モールドをより確実に型閉めして、品質の優れたタイヤを製造することができるタイヤ加硫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造する際に使用されるセクショナルタイプのモールドは、上側サイドモールド、下側サイドモールドおよび複数のセクタモールドで構成されていて、それぞれが密着するように閉型される(例えば、特許文献1参照)。閉型する際には、それぞれのセクタモールドが取り付けられたセグメントは、下方移動するコンテナリングに押圧されて中心機構に対して近接移動してセクタモールドは環状に組付けられる。開型する際には、それぞれのセグメントは中心機構に対して離反移動する。
【0003】
中心機構に対して近接移動および離反移動するそれぞれのセグメントの上面は上部プレートと摺動し、セグメントの下面は下部プレートと摺動する。この摺動によって摺動面が摩耗するため、閉型した時のそれぞれのセグメントの上下位置が経時的に変化する。これに起因して、閉型してグリーンタイヤを加硫する際に、セクタモールドと上側サイドモールドや下側サイドモールドとの上下に対向する対向面どうしの間にすき間が生じると、加硫したタイヤのサイド部に不要な段差が形成されてタイヤ品質が低下する。それ故、セクタモールドと上側や下側のサイドモールドとの間にすき間が生じることを防止してタイヤ加硫用モールドをより確実に型閉めして、品質の優れたタイヤを製造するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セクタモールドと上側サイドモールドや下側サイドモールドとの間にすき間が生じることを防止してタイヤ加硫用モールドをより確実に型閉めして、品質の優れたタイヤを製造することができるタイヤ加硫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のタイヤ加硫方法は、環状に配置される複数のそれぞれのセクタモールドの外周面にセグメントを取付け、上側サイドモールドの上面に上部プレートを取り付け、下側サイドモールドの下面に下部プレートを取り付け、それぞれの前記セグメントの外周側にコンテナリングを配置して、前記下側サイドモールドにグリーンタイヤを横倒し状態で載置し、前記コンテナリングを加圧機構により下方移動させることにより、前記上部プレートと前記下部プレートの間で、それぞれの前記セクタモールドを環状に組み付けるとともに、これらセクタモールドを前記上側サイドモールドと前記下側サイドモールドとにより上下に挟んで、前記グリーンタイヤを内部に閉じ込めて閉型し、前記グリーンタイヤを加圧および加熱することにより加硫するタイヤ加硫方法において、それぞれの前記セクタモールドと前記上側サイドモールドと前記下側サイドモールドとを閉型した状態で、前記加圧機構とは独立した上部閉型機構を作動させることにより、前記上側サイドモールドを、それぞれの前記セクタモールドが環状に組み付けられた状態を維持させながらそれぞれの前記セクタモールドの上面に押圧し、前記加圧機構とは独立した下部閉型機構を作動させることにより、前記下側サイドモールドを、それぞれの前記セクタモールドが環状に組み付けられた状態を維持させながらそれぞれの前記セクタモールドの下面に押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、それぞれのセクタモールドと上側サイドモールドと下側サイドモールドとを加圧機構を用いて閉型した状態で、加圧機構とは独立した上部閉型機構、下部閉型機構を作動させることで、環状に組付けられたそれぞれのセクタモールドを環状に組付けた状態を維持しつつ、その上面に上側サイドモールドを、その下面に下側サイドモールドを押圧することができる。そのため、型閉めした状態でそれぞれのセクタモールドと、上側サイドモールドや下側サイドモールドとの上下に対向する対向面どうしの間にすき間があったとしても、そのすき間を無くす、或いは、小さくできる。しかも、それぞれのセクタモールドの環状に組み付けられた状態は維持されるので、モールドを確実に型閉めした状態にするには有利になる。これに伴い、加硫されたタイヤのサイド部に不要な段差が形成されることが防止されるので品質の優れたタイヤを製造するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】開型している状態の本発明
に用いるタイヤ加硫装置の左半分を縦断面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1のセクタモールド、セグメントおよび上部閉型機構を平面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1の下側サイドモールドおよび下部閉型機構を平面視で例示する説明図である。
【
図4】
図1のコンテナリングを下方移動させてセグメントを下部プレートに載置した状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4のコンテナリングをさらに下方移動させてそれぞれのセクタモールドを環状に組み付けて型閉めた状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5の上部閉型機構および下部閉型機構を作動させてモールドを型閉めした状態を縦断面視で例示する説明図である。
【
図7】
図6のセクタモールドおよびセグメントを平面視で例示する説明図である。
【
図8】上部閉型機構および下部閉型機構の変形例を平面視で模式的に例示する説明図である。
【
図9】開型している状態の加硫装置の別の実施形態の左半分を縦断面視で例示する説明図である。
【
図10】
図9のコンテナリングを下方移動させてモールドを型閉状態にした加硫装置を縦断面視で例示する説明図である。
【
図11】
図10の上部閉型機構および下部閉型機構を作動させてモールドを型閉めした状態を縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤ加硫方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図3に例示する本発明
に用いるタイヤ加硫装置1(以下、加硫装置1という)の実施形態は、複数のセグメント6と、上部プレート2と、下部プレート4と、コンテナリング9と、コンテナリング9を上下移動させる加圧機構5と、下部プレート4の平面視の中心部に配置される中心機構10とを備えている。コンテナリング9の上端部には上下移動プレート3が接続されている。上下移動プレート3は上部プレート2の上方に配置されている。この加硫装置1はさらに、加圧機構5とは独立して作動する上部閉型機構7および下部閉型機構8を有している。
【0012】
この加硫装置1には、タイヤ加硫用モールド12(以下、モールド12という)が取り付けられる。モールド12は、円環状の上側サイドモールド12aと円環状の下側サイドモールド12bと複数のセクタモールド12cとで構成されている。グリーンタイヤTは横倒し状態で、下側サイドモールド12bに載置されてモールド12の中に配置される。
図1~
図3は、モールド12が開型している状態を例示している。
【0013】
中心機構10を構成する中心ポスト10aは、上側サイドモールド12aおよび下側サイドモールド12bの円環状の中心CLに配置されている。中心ポスト10aには上下に間隔をあけて円盤状のクランプ部11aが取り付けられている。それぞれのクランプ部11aには、円筒状の加硫用ブラダ11の上端部、下端部が把持されている。
【0014】
上部プレート2には、その下面に上側サイドモールド12aの上面が対向して取り付けられている。上側サイドモールド12aはその下面によって、横倒し状態のグリーンタイヤTの上側サイド部Suを加硫成形する。上部プレート2は上側サイドモールド12aとともに上下移動する。
【0015】
下部プレート4には、その上面に上側サイドモールド12bの下面が対向して取り付けられている。下側サイドモールド12bはその上面によって、横倒し状態のグリーンタイヤTの下側サイド部Sdを加硫成形する。
【0016】
それぞれのセグメント6は中心機構10(中心CL)を中心にして環状に配置されている。それぞれのセグメント6には、その内周側にセクタモールド12cの外周面が対向して取り付けられている。それぞれのセグメント6の外周面は、外周側から内周側に向かって上方に傾斜する傾斜を有している。セクタモールド12cはその内周面によって、横倒状態のグリーンタイヤTのトレッド部を加硫成形する。
【0017】
円環状のコンテナリング9は、中心機構10(中心CL)を中心にした環状体であり、環状に配置されているセグメント6の外周側で上下移動する。コンテナリング9が上下移動することにより、コンテナリング9の内周傾斜面とそれぞれのセグメント6の外周傾斜面とが摺動する。そして、閉型する際には下方移動するコンテナリング9の内周面によって、それぞれのセグメント6の外周面が押圧されることで、それぞれのセクタモールド12cがセグメント6とともに環状の中心CLに対して近接移動して環状に組付けられる。一方、開型する際には、コンテナリング9を上方移動させて、それぞれのセクタモールド12cをセグメント6とともに環状の中心CLに対して離反移動させる。
【0018】
加圧機構5としては油圧シリンダ等のシリンダ機構を用いることができる。加圧機構5のシリンダロッドの上下方向の進退移動によって上下移動プレート3とともにコンテナリング9を上下移動させることができる。
【0019】
上部閉型機構7は、この実施形態では上部プレート2と上下移動プレート3との間に配置されている。上部閉型機構7としては、油圧シリンダ等のシリンダ機構を用いることができる。上部閉型機構7は、そのシリンダロッドの上下方向の進退移動によって上部プレート2の上面と上下移動プレート3の下面を押圧することができる。
【0020】
図2に例示するように、この実施形態では上部閉型機構7として、平面視で中心部を中心機構10に位置決めされて配置された1個のシリンダ機構が採用されている。この上部閉型機構7は、上下にフランジ部7a、7bを有している。フランジ部7bに上部プレート2が固定されている。上部閉型機構7と上部プレート2との間には、加熱板や断熱板など適宜、必要な部品を配置することができる。
【0021】
下部閉型機構8は、この実施形態では下部プレート4とベース部Bに形成された凹部との間に配置されていて、下部プレート4とともに下側サイドモールド12bを支持している。下部閉型機構8としては、油圧シリンダ等のシリンダ機構を用いることができる。下部閉型機構8は、そのシリンダロッドの上下方向の進退移動によって下部プレート4の下面とベース部Bの上面を押圧することができる。
【0022】
図3に例示するように、この実施形態では下部閉型機構8として、平面視で中心部を中心機構10に位置決めされて、下部プレート4の下面を支持するように配置された円環状の1個のシリンダ機構が採用されている。この下部閉型機構8は、上下にフランジ部8a、8bを有している。下部閉型機構8と下部プレート4との間には、加熱板や断熱板など適宜、必要な部品を配置することができる。
【0023】
コンテナリング9はその内周面に、上部プレート2が直接的または間接的に係合する係合部9aを有している。この実施形態では、内周側に突出する係合部9aに、上部閉型機構7の下側フランジ部7bが係合している。この下側フランジ部7bの下面に上部プレート2が取付けられているため、上部プレート2は下側フランジ部7bを介して間接的に係合部9aに係合している。これにより、
図1に例示するモールド12の開型状態では、係合部9aを介して上部プレート2がコンテナリング9から吊り下げられている。コンテナリング9の係合部9aに係合している上部閉型機構7と上下移動プレート3との間には所定のすき間g1が形成されている。
【0024】
次に、この加硫装置1を用いて、グリーンタイヤTを加硫して空気入りタイヤを製造する方法の一例を説明する。
【0025】
グリーンタイヤTを加硫する際には、
図1に例示するようにモールド12を開型した状態で、横倒し状態のグリーンタイヤTを中心機構10に挿通させて、シェーピング圧力で膨張させた加硫用ブラダ11によってグリーンタイヤTを保持する。このグリーンタイヤTを下側サイドモールド12bに載置する。上部閉型機構7および下部閉型機構8は、それぞれのシリンダロッドを後退させて収縮状態にしておく。
【0026】
次いで、
図4に例示するように加圧機構5によって、上下移動プレート3を下方移動させることで、コンテナリング9、上部プレート2、上側サイドモールド12aおよび上部閉型機構7を一体的に下方移動させる。これにより、それぞれのセグメント6をベースBに載置する。この工程では、上部閉型機構7と上下移動プレート3との間には所定のすき間g1が維持されている。
【0027】
次いで、
図5に例示するように上下移動プレート3をさらに下方移動させて、下方移動するコンテナリング9の内周傾斜面によりそれぞれのセグメント6の外周傾斜面を押圧する。これに伴い、それぞれのセグメント6とともにそれぞれのセクタモールド12cを環状の中心CLに向かって移動させる。これにより、上部プレート2と下部プレート4の上下間で、それぞれのセクタモールド12cを環状に組み付ける。
【0028】
また、上下移動プレート3とともに、上部プレート2、上側サイドモールド12aおよび上部閉型機構7が一体的に下方移動するので、環状に組み付けられたそれぞれのセクタモールド12cが上側サイドモールド12aと下側サイドモールド12bとにより上下に挟まれて、モールド12はグリーンタイヤTを内部に閉じ込めて閉型した状態になる。
【0029】
ここで、上部プレート2とともに下方移動した上側サイドモールド12aがそれぞれのセクタモールド12cの上面に載置されると、係合部9aを介してコンテナリング9から吊り下げられていた上部プレート2の吊り下げ状態が解除される。これにより、上部閉型機構7と上下移動プレート3との間の所定のすき間g2の大きさは、当初の所定のすき間g1以下になる。
【0030】
閉型したモールド12の中では、グリーンタイヤTの内側で加硫用ブラダ11をさらに膨張させて、グリーンタイヤTに所定の内圧を付与するとともに、所定の温度で加熱して加硫を行う。グリーンタイヤTを所定時間、加硫することで空気入りタイヤが完成する。
【0031】
図5の閉型状態では、上部閉型機構7と上下移動プレート3との間に所定のすき間g2を設けているので、それぞれのセクタモールド12cは、コンテナリング9により強く押圧できる。そのため、周方向に隣り合うセクタモールド12cどうしは密着するように組み付けられて、互いの間にすき間が発生し難くなっている。一方、上部閉型機構7と上下移動プレート3との間に所定のすき間g2が存在しているため、加硫用ブラダ11をさらに膨張させてグリーンタイヤTに所定の内圧を付与すると、上側サイドモールド12aがそれぞれのセクタモールド12cの上面から離れてすき間g2だけ上方移動する可能性がある。
【0032】
そこで、このモールド12が閉型した状態で
図6に例示するように、加圧機構5とは独立して上部閉型機構7を作動させて、上部閉型機構7を上部プレート2と上下移動プレート3との間で伸長させて、上部プレート2の上面と上下移動プレート3の下面を押圧する。これにより、上側サイドモールド12aを、それぞれのセクタモールド12cの上面に押圧する。
【0033】
ただし、上部閉型機構7によって上側サイドモールド12aを、それぞれのセクタモールド12cの上面に対して過剰に押圧すると、その押圧力の反力が上下移動プレート3を上方移動させるように作用する。そのため、グリーンタイヤTの加硫中に、それぞれのセクタモールド12cが環状に組み付けられた状態を維持しながら、上側サイドモールド12aをそれぞれのセクタモールド12cの上面に押圧する。
【0034】
また、加圧機構5とは独立して下部閉型機構8を作動させて、下部閉型機構8を下部プレート4とベース部Bとの間で伸長させて、下部プレート4の下面とベース部Bの上面を押圧する。これにより、それぞれのセクタモールド12cが環状に組み付けられた状態を維持しながら、下側サイドモールド12bを、それぞれのセクタモールド12cの下面に押圧する。
【0035】
このように加圧機構5を用いてモールド12を閉型状態にした後で、上部閉型機構7および下部閉型機構8を作動させる。その結果、それぞれのセクタモールド12cと上側サイドモールド12aとの上下に対向する対向面どうしの間にすき間があったとしても、そのすき間を無くす、或いは、小さくすることができる。同様に、それぞれのセクタモールド12cと下側サイドモールド12bとの上下に対向する対向面どうしの間にすき間があったとしても、そのすき間を無くす、或いは、小さくすることができる。
【0036】
そして、上部閉型機構7、下部閉型機構8を作動させて、上側サイドモールド12a、下側サイドモールド12bをそれぞれのセクタモールド12cに押圧しても、それぞれのセクタモールド12cの環状に組み付けられた状態は維持される。したがって、周方向に隣り合うセクタモールド12cどうしの間にすき間が生じることも回避され、
図6、
図7に例示するように、モールド12を加硫中に確実に型閉めした状態にするには有利になる。
【0037】
その結果、製造されたタイヤの上側サイド部Su、下側サイド部Sdには、それぞれのセクタモールド12cと上側サイドモールド12aや下側サイドモールド12bとの上下に対向する対向面の間のすき間に起因して段差が形成される不具合を回避できる。即ち、加硫工程においてタイヤ両サイド部に不要な段差が生じ難くなり、品質の優れたタイヤを製造することが可能になる。
【0038】
この実施形態では、上部閉型機構7を上部プレート2と上下移動プレート3との間に配置することで、加硫装置1をコンパクトにし易くなっている。また、コンテナリング9の係合部9aに上部プレート2を直接的または間接的に係合して吊り下げるので、加硫装置1の構造を簡素にし易くなっている。
【0039】
上部閉型機構7、下部閉型機構8は、上記の実施形態に例示した構成に限定されず、種々の構成を採用することができる。例えば、上部閉型機構7として、上述した下部閉型機構8と同様に、平面視で中心部を中心機構10に位置決めして配置された1個の円環状のシリンダ機構を採用することもできる。
【0040】
図8に例示するように、上部閉型機構7を平面視で中心機構10(中心ポスト10a)を中心にして周方向に間隔をあけて配置された複数のシリンダ機構で構成することもできる。下部閉型機構8も同様に、平面視で中心機構10(中心ポスト10a)を中心にして周方向に間隔をあけて配置された複数のシリンダ機構で構成することもできる。上部閉型機構7と下部閉型機構8の少なくとも一方を、このような複数のシリンダ機構で構成することもできる。
【0041】
図9~
図11に加硫装置1の別の実施形態を例示する。この実施形態では、
図9に例示するように、上下移動プレート3と上部プレート2との間に上部閉型機構7が配置されていて、上側のフランジ部7aが上下移動プレート3に固定され、下側のフランジ部7bが上部プレート2に固定されている。それぞれのセグメント6は、上下移動プレート3から吊り下げられていて、上下移動プレート3に対して水平方向に摺動する。コンテナリング9は、上下移動プレート3を覆うようにして上下移動プレート3の外周側に配置されている。コンテナリング9と上下移動プレート3とは独立して上下移動可能になっている。その他の構成は、先の実施形態と実質的に同じである。
【0042】
この実施形態では、
図9に例示するように、それぞれのセグメント6をベースBに載置する。上部閉型機構7および下部閉型機構8は、それぞれのシリンダロッドを後退させて収縮状態にしておく。この時、それぞれのセグメント6と上側サイドモールド12aとの閉型した際に上下に対向する対向面どうしの間にはすき間g3が確保されている。同様に、それぞれのセグメント6と下側サイドモールド12bとの閉型した際に上下に対向する対向面どうしの間にはすき間g4が確保されている。
【0043】
次いで、
図10に例示するように加圧機構5によってコンテナリング9をさらに下方移動させて、下方移動するコンテナリング9の内周傾斜面によりそれぞれのセグメント6の外周傾斜面を押圧する。これに伴い、それぞれのセグメント6とともにそれぞれのセクタモールド12cを環状の中心CLに向かって移動させる。これにより、上部プレート2と下部プレート4の上下間で、それぞれのセクタモールド12cを環状に組み付ける。環状に組み付けられたそれぞれのセクタモールド12cが上側サイドモールド12aと下側サイドモールド12bとにより上下に挟まれて、モールド12はグリーンタイヤTを内部に閉じ込めて閉型した状態になる。
【0044】
ただし、この工程では、すき間g3、g4が維持されている。即ち、それぞれのセクタモールド12cの上面と、この上面に対向する上側サイドモールド12aの対向面(下面)とが非接触の状態に維持されている。また、それぞれのセクタモールド12cの下面と、この下面に対向する下側サイドモールド12bの対向面(上面)とが非接触の状態に維持されている。
【0045】
次いで、
図11に例示するように、収縮状態の上部閉型機構7を作動させて伸長状態にすることにより、それぞれのセクタモールド12cの上面と、この上面に対向する上側サイドモールド12aの対向面(下面)とを接触させる。これにより、上側サイドモールド12aを、それぞれのセクタモールド12cが環状に組み付けられた状態を維持しながら、それぞれのセクタモールド12cの上面に押圧する。また、収縮状態の下部閉型機構8を作動させて伸長状態にすることにより、それぞれのセクタモールド12cの下面と、この下面に対向する下側サイドモールド12bの対向面(上面)とを接触させる。これにより、下側サイドモールド12bを、それぞれのセクタモールド12cが環状に組み付けられた状態を維持しながら、それぞれのセクタモールド12cの下面に押圧する。このようにしてモールド12を閉型した後は、先の実施形態と同様にグリーンタイヤTが加硫される。
【0046】
この実施形態では、上部閉型機構7を作動させた時だけ、それぞれのセクタモールド12cの上面と、この上面に対向する上側サイドモールド12aの対向面(下面)とが接触する。また、下部閉型機構8を作動させた時だけ、それぞれのセクタモールド12cの下面と、この下面に対向する下側サイドモールド12bの対向面(上面)とが接触する。即ち、加圧機構5を用いてモールド12を開閉する過程では、セクタモールド12cと上側サイドモールド12aや下側サイドモールド12bとの上下に対向する対向面どうしは接触しないので摩耗が生じない。そのため、モールド12の耐用期間を長くするには有利になる。これに伴い、モールド12を確実に型閉めするには益々有利になる。
【符号の説明】
【0047】
1 加硫装置
2 上部プレート
2a フランジ部
3 上下移動プレート
3a 貫通孔
4 下部プレート
5 加圧機構
6 セグメント
7 上部閉型機構
7a、7b フランジ部
8 下部閉型機構
8a、8b フランジ部
9 コンテナリング
9a 係合部
10 中心機構
10a 中心ポスト
11 加硫用ブラダ
11a クランプ部
12 モールド
12a 上側サイドモールド
12b 下側サイドモールド
12c セクタモールド
B ベース部
T グリーンタイヤ
Su 上側サイド部
Sd 下側サイド部
g1、g2、g3、g4 すき間