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特許7469640タイヤ異常判定装置、タイヤ異常判定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】タイヤ異常判定装置、タイヤ異常判定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240410BHJP
   G01N 25/72 20060101ALI20240410BHJP
   B60C 23/20 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
G01M17/02
G01N25/72 J
B60C23/20
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020088171
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181960
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金成 大輔
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-283452(JP,A)
【文献】特開2016-003964(JP,A)
【文献】特開2005-351730(JP,A)
【文献】特開2016-061699(JP,A)
【文献】特開2004-220555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0099123(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
G01N 25/72
B60C 23/20
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、
を含み、
前記抽出手段は、前記取得された温度画像から地面と接触する物体の画像を認識し、前記物体の画像を前記タイヤの抽出画像として抽出する、
タイヤ異常判定装置。
【請求項2】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、
を含み、
前記画像取得手段は、車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像と、前記車両に装着された前記タイヤを含む可視画像とを取得し、
前記抽出手段は、前記可視画像に基づいて、前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する、
タイヤ異常判定装置。
【請求項3】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤのサイドウォールにおける温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、
を含み、
前記判定手段は、前記抽出されたタイヤのサイドウォールにおける周方向の温度の分布に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する、
タイヤ異常判定装置。
【請求項4】
両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得する画像取得手段と、
前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出する抽出手段と、
前記複数のタイヤの抽出画像に基づいて、前記複数のタイヤのいずれに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、
を含み、
前記判定手段は、前記複数のタイヤの抽出画像に基づいて当該複数のタイヤのそれぞれの温度を取得し、
前記判定手段は、前記複数のタイヤの取得された温度の相違に基づいて、前記複数のタイヤのいずれに異常が生じているか判定する、
タイヤ異常判定装置。
【請求項5】
両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得する画像取得手段と、
前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出し、前記車両に装着された複数のタイヤが隣接して並んでいるか否かを判定する抽出手段と、
前記抽出画像に基づいて、前記複数のタイヤのいずれかに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、
を含み、
前記判定手段は、前記複数のタイヤが隣接して並んでいると判定された場合に、前記複数のタイヤの温度と、前記並んでいる前記複数のタイヤのそれぞれの位置とに基づいて、前記複数のタイヤのいずれかに異常が生じているか判定する、
タイヤ異常判定装置。
【請求項6】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、
を含み、
前記判定手段は、前記車両が停止した後に、前記タイヤの抽出画像に基づいて当該タイヤの温度を繰り返し取得し、
前記判定手段は、前記繰り返し取得された前記タイヤの温度が示す温度上昇特性に基づいて前記タイヤに異常が生じているか判定する、
タイヤ異常判定装置。
【請求項7】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、
前記車両の種類を推定する種類推定手段と、を含み、
前記判定手段は、前記推定された種類と、前記抽出画像とに基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する、
タイヤ異常判定装置。
【請求項8】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得するステップと、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出するステップと、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定するステップと、
前記異常が生じているか否かの判定に応じた情報を出力するステップと、
を含み、
前記抽出画像を抽出するステップでは、前記取得された温度画像から地面と接触する物体の画像を認識し、前記物体の画像を前記タイヤの抽出画像として抽出する、
タイヤ異常判定方法。
【請求項9】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像と、前記車両に装着された前記タイヤを含む可視画像とを取得するステップと、
前記可視画像に基づいて、前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出するステップと、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定するステップと、
前記異常が生じているか否かの判定に応じた情報を出力するステップと、
を含むタイヤ異常判定方法。
【請求項10】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤのサイドウォールにおける温度分布を示す温度画像を取得するステップと、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出するステップと、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定するステップと、
前記異常が生じているか否かの判定に応じた情報を出力するステップと、
を含み、
前記判定するステップでは、前記抽出されたタイヤのサイドウォールにおける周方向の温度の分布に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する、
タイヤ異常判定方法。
【請求項11】
車両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得するステップと、
前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出するステップと、
前記複数のタイヤの抽出画像に基づいて当該複数のタイヤのそれぞれの温度を取得し、前記複数のタイヤの取得された温度の相違に基づいて、前記複数のタイヤのいずれに異常が生じているか判定するステップと、
前記異常が生じているか否かの判定に応じた情報を出力するステップと、
を含むタイヤ異常判定方法。
【請求項12】
車両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得するステップと、
前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出し、前記車両に装着された複数のタイヤが隣接して並んでいるか否かを判定するステップと、
前記抽出画像に基づいて、前記複数のタイヤのいずれかに異常が生じているか否かを判定するステップと、
前記異常が生じているか否かの判定に応じた情報を出力するステップと、
を含み、
前記異常が生じているか否かを判定するステップでは、前記複数のタイヤが隣接して並んでいると判定された場合に、前記複数のタイヤの温度と、前記並んでいる前記複数のタイヤのそれぞれの位置とに基づいて、前記複数のタイヤのいずれかに異常が生じているか判定する、
タイヤ異常判定方法。
【請求項13】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得するステップと、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出するステップと、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定するステップと、
前記異常が生じているか否かの判定に応じた情報を出力するステップと、
を含み、
前記異常が生じているか否かを判定するステップでは、前記車両が停止した後に、前記タイヤの抽出画像に基づいて当該タイヤの温度を繰り返し取得し、前記繰り返し取得された前記タイヤの温度が示す温度上昇特性に基づいて前記タイヤに異常が生じているか判定する、
タイヤ異常判定方法。
【請求項14】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得するステップと、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出するステップと、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定するステップと、
前記異常が生じているか否かの判定に応じた情報を出力するステップと、
前記車両の種類を推定するステップと、
を含み、
前記異常が生じているか否かを判定するステップでは、前記推定された種類と、前記抽出画像とに基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する、
タイヤ異常判定方法。
【請求項15】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させ
前記抽出手段は、前記取得された温度画像から地面と接触する物体の画像を認識し、前記物体の画像を前記タイヤの抽出画像として抽出する、
プログラム。
【請求項16】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させ、
前記画像取得手段は、車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像と、前記車両に装着された前記タイヤを含む可視画像とを取得し、
前記抽出手段は、前記可視画像に基づいて、前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する、
プログラム。
【請求項17】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤのサイドウォールにおける温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させ、
前記判定手段は、前記抽出されたタイヤのサイドウォールにおける周方向の温度の分布に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する、
プログラム。
【請求項18】
車両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得する画像取得手段、
前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出する抽出手段、
前記複数のタイヤの抽出画像に基づいて、前記複数のタイヤのいずれに異常が生じているか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させ、
前記判定手段は、前記複数のタイヤの抽出画像に基づいて当該複数のタイヤのそれぞれの温度を取得し、
前記判定手段は、前記複数のタイヤの取得された温度の相違に基づいて、前記複数のタイヤのいずれに異常が生じているか判定する、
プログラム。
【請求項19】
車両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得する画像取得手段、
前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出し、前記車両に装着された複数のタイヤが隣接して並んでいるか否かを判定する抽出手段、
前記抽出画像に基づいて、前記複数のタイヤのいずれかに異常が生じているか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させ、
前記判定手段は、前記複数のタイヤが隣接して並んでいると判定された場合に、前記複数のタイヤの温度と、前記並んでいる前記複数のタイヤのそれぞれの位置とに基づいて、前記複数のタイヤのいずれかに異常が生じているか判定する、
プログラム。
【請求項20】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させ、
前記判定手段は、前記車両が停止した後に、前記タイヤの抽出画像に基づいて当該タイヤの温度を繰り返し取得し、
前記判定手段は、前記繰り返し取得された前記タイヤの温度が示す温度上昇特性に基づいて前記タイヤに異常が生じているか判定する、
プログラム。
【請求項21】
車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段、
前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段、
前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段、
前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、および、
前記車両の種類を推定する種類推定手段、
としてコンピュータを機能させ、
前記判定手段は、前記推定された種類と、前記抽出画像とに基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ異常判定装置、タイヤ異常判定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの温度を直接的に測定するセンサを用いてタイヤに異常が生じたか否かを監視するシステムがある。
【0003】
特許文献1には、タイヤのトレッド部の温度を赤外線温度計で測定し、走行距離に対する代表的な温度上昇曲線と、測定された温度および走行距離とに基づいて運転者に走行における異常を通知することが開示されている。特許文献2には、車両1にタイヤ3のそれぞれに設けられる圧力センサ13、温度センサ14の出力に基づいてタイヤ3の異常を判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5067287号
【文献】特許第6065027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの温度を直接的に計測するには、例えばタイヤが装着されるホイールにセンサを配置する必要があり、その計測の対象となる車両が限られる。またタイヤの温度は必ずしも一様でないため、例えばホイールに取り付けられたセンサで温度を測定しても異常が生じた個所の温度上昇を捉えられるとは限らず、タイヤの異常を判定することは容易でなかった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、不特定の車両のタイヤの異常を容易に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるタイヤ異常判定装置は、車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段と、前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段と、前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段と、を含む。
【0008】
本発明の一態様では、前記抽出手段は、温度画像と、前記温度画像に含まれるタイヤの抽出画像とを含む教師データにより学習された学習済モデルを含んでよい。
【0009】
本発明の一態様では、前記抽出手段は、前記取得された温度画像から地面と接触する物体の画像を認識し、前記物体の画像を前記タイヤの抽出画像として抽出してもよい。
【0010】
本発明の一態様では、前記画像取得手段は、車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像と、前記車両に装着された前記タイヤを含む可視画像とを取得し、前記抽出手段は、前記可視画像に基づいて、前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出してもよい。
【0011】
本発明の一態様では、前記判定手段は、前記抽出されたタイヤの周方向の温度の分布に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定してもよい。
【0012】
本発明の一態様では、前記画像取得手段は、車両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得し、前記抽出手段は、前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出し、前記判定手段は、複数のタイヤの抽出画像に基づいて当該複数のタイヤのそれぞれの温度を取得し、前記判定手段は、前記複数のタイヤの取得された温度の相違に基づいて、前記複数のタイヤのいずれに異常が生じているか判定してもよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記画像取得手段は、前記車両に装着された複数のタイヤを含む温度画像であって、前記複数のタイヤの温度分布を示す1または複数の温度画像を取得し、前記抽出手段は、前記1または複数の温度画像から前記複数のタイヤの抽出画像を抽出し、前記車両に装着された複数のタイヤのサイドウォールが隣接して並んでいるか否かを判定し、前記判定手段は、前記複数のタイヤのサイドウォールが隣接して並んでいると判定された場合に、前記複数のタイヤの温度と、前記並んでいる前記複数のタイヤのそれぞれの位置とに基づいて、前記複数のタイヤのいずれかに異常が生じているか判定してもよい。
【0014】
本発明の一態様では、前記判定手段は、前記車両が停止した後に、前記タイヤの抽出画像に基づいて当該タイヤの温度を繰り返し取得し、前記判定手段は、前記繰り返し取得された前記タイヤの温度が示す温度上昇特性に基づいて前記タイヤに異常が生じているか判定してもよい。
【0015】
本発明の一態様では、前記車両の種類を推定する種類推定手段をさらに含み、前記判定手段は、前記推定された種類と、前記抽出画像とに基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定してもよい。
【0016】
本発明の一態様では、前記出力手段は、前記タイヤに異常が生じていると判定された場合に、前記車両に応じた通知先へ異常を通知してもよい。
【0017】
本発明にかかるタイヤ異常検出方法は、車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得するステップと、前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出するステップと、前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定するステップと、前記判定手段の判定に応じた情報を出力するステップと、を含む。
【0018】
また、本発明にかかるプログラムは、車両に装着されたタイヤを含む温度画像であって、前記タイヤの温度分布を示す温度画像を取得する画像取得手段、前記取得された温度画像から前記タイヤの抽出画像を抽出する抽出手段、前記抽出画像に基づいて、前記タイヤに異常が生じているか否かを判定する判定手段、および、前記判定手段の判定に応じた情報を出力する出力手段、としてコンピュータを機能させる。
【0019】
本発明により、不特定の車両のタイヤの異常を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図2】タイヤを備える車両および撮像部の一例を模式的に示す側面図である。
図3図2に示される車両および撮像部の一例を模式的に示す上面図である。
図4】情報処理装置が実現する機能を示すブロック図である。
図5】情報処理装置の処理の概要を示すフロー図である。
図6】撮影されたタイヤのサイドウォールの可視画像の一例を示す図である。
図7】撮影されたタイヤのサイドウォールの温度画像の一例を示す図である。
図8】ナンバープレートの分類番号と車種との関係を示す図である。
図9】異常判定部の処理の一例を示すフロー図である。
図10】異常判定部の処理の他の一例を示すフロー図である。
図11】複輪の一例を示す図である。
図12】車両停止時からのタイヤ表面の温度変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。同じ符号を付された構成に対しては、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる情報処理システムは、情報処理装置1と、撮影装置22a,22bとを含む。情報処理装置1は、例えばパーソナルコンピュータなどのコンピュータである。図1に示すように情報処理装置1は、例えば、プロセッサ11、記憶部12、通信部13、入出力部14を含む。情報処理装置1は、撮影装置22aから離れた場所に配置されてもよい。
【0023】
プロセッサ11は、例えばCPUのように、記憶部12に記憶されたプログラムやデータに従って処理を実行する。またプロセッサ11は通信部13、入出力部14、を制御する。
【0024】
記憶部12は、RAMなどの揮発性メモリと、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリと、ハードディスクなどの記憶装置と、を含む。記憶部12は、上記プログラムを格納する。また、記憶部12は、プロセッサ11、通信部13、入出力部14から入力される情報や演算結果を格納する。上記プログラムは、インターネット等を介して提供されてもよいし、フラッシュメモリや光ディスク等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
【0025】
通信部13は、無線通信用の通信インタフェースを実現する集積回路等を含む。通信部13は、プロセッサ11の制御に基づいて、他の装置から受信した情報をプロセッサ11や記憶部12に入力し、他の装置に情報を送信する。
【0026】
入出力部14は、表示出力デバイス、音声出力デバイスおよび入力デバイスへのインタフェースにより構成される。表示出力デバイスは例えば液晶ディスプレイであり、音声出力デバイスは例えばスピーカであり、入力デバイスは例えばキーボードやマウスなどのユーザインタフェースである。入出力部14は、表示出力デバイス、音声出力デバイスおよび入力デバイスを含んでもよい。
【0027】
撮影装置22aおよび22bは、カメラなどの撮影デバイスであり、撮影によって生成される画像を情報処理装置1へ出力する。撮影装置22aは物体が放射する遠赤外線であって、その物体の温度を示す赤外線を受光し、温度画像を撮影する。さらに撮影装置22aは可視画像を撮影してもよい。撮影装置22bは車両30のナンバープレートの画像を含む可視画像を撮影するが、温度画像を撮影してもよい。
【0028】
図2は、タイヤ32を備える車両30および撮影装置22a,22bの一例を模式的に示す側面図である。図3は、図2に示される車両30および撮影装置22a,22bを模式的に示す上面図である。タイヤ32は空気入りタイヤであってよく、空気入りタイヤには空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【0029】
撮影装置22aは、タイヤ32を装着する車両30が停車する場所においてタイヤ32を撮影することが可能な場所に設置されており、撮影装置22bはその車両30のナンバープレートまたは全体形状の撮影が可能な場所に設置されている。例えば、撮影装置22a,22bは有料道路または駐車場の料金所に設置されており、車両30は、撮影される際にはその料金所において停車または徐行している。撮影装置22a,22bには撮像素子が設けられている。
【0030】
図2および図3に示すように、本実施形態では、撮影装置22aは、車両30の左後輪として装着されるタイヤ32の左側面が撮影可能な位置に配置される。図2および図3には左後輪が撮影される例を示しているが、右後輪および左右前輪など、車両30に装着される他のタイヤ32を撮影するための他の撮影装置22aが設けられてもよいし、撮影装置22aを車両30の左右に配置し、車両30の移動にあわせて一つの撮影装置22aが前輪および後輪を撮影してもよい。
【0031】
本実施形態では、撮影装置22aにより撮影された温度画像に基づいてタイヤ32の異常を判定する。以下では、この処理について説明する。
【0032】
図4は、情報処理装置1が実現する機能を示すブロック図である。情報処理装置1は、機能的に、画像取得部51、タイヤ抽出部52、種類推定部54、異常判定部57、通知部59を含む。これらの機能は、記憶部12に格納されるプログラムをプロセッサ11が実行し、さらにプロセッサ11が必要に応じて通信部13および入出力部14を制御することにより実装される。また、図4に示される機能は、複数のコンピュータにより実行されてもよい。
【0033】
画像取得部51は、例えばタイヤ32などの物体が放射する赤外線であって、その物体の温度を示す赤外線を検出する撮影装置22aから、撮影された領域内の各画素の温度を示す1または複数の温度画像を取得する。温度画像はタイヤ32の温度分布を示す領域を含んでいる。画像取得部51は撮影装置22aからタイヤ32の画像を含む1または複数の可視画像を取得してよい。また画像取得部51は撮影装置22bからナンバープレートなど車両30の識別および車両30の種類の推定に用いるための可視画像を取得する。
【0034】
タイヤ抽出部52は、画像取得部51により取得された1または複数の温度画像から、タイヤ32の温度を示す領域である1または複数のタイヤ32の温度画像(タイヤ温度画像)を抽出する。タイヤ抽出部52は、温度画像のみに基づいてタイヤ温度画像を抽出してもよいし、タイヤ抽出部52は撮影装置22aの可視画像に基づいてタイヤ32の領域を検出し、検出されたタイヤ32の領域に対応する温度画像の領域を抽出してもよい。
【0035】
タイヤ抽出部52は、温度画像または可視画像を機械学習モデルに入力した際の出力に基づいてタイヤ32の領域を検出し、検出されたタイヤ32の領域に対応する温度画像の領域を抽出してよい。抽出された領域がタイヤ温度画像となる。機械学習モデルに、温度画像または可視画像の全体が入力されてもよいし、温度画像または可視画像から同じピクセル数となるように切り出された複数の窓画像が入力されてもよい。
【0036】
機械学習モデルは、本実施形態では例えば、アダブースト、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン(SVM)、最近傍識別器、などの機械学習が実装された機械学習モデルである。機械学習モデルは、入力に応じて、例えば複数のピクセルについて、ピクセルごとにタイヤ32を示す領域であるか否かを示すビットを出力してもよい。
【0037】
機械学習モデルは、予め、学習入力画像と教師データとを含む学習データにより学習されている。この学習データには、タイヤ32が写る所定画素数の画像である学習入力画像と、当該学習入力画像に写るタイヤ32の領域を示す二値画像を示す所与の教師データと、が含まれている。学習入力画像のピクセル数は、例えば、撮影装置22aのピクセル数と同じであってもよいし、温度画像または可視画像の窓画像のピクセル数と同じであってもよい。前者の場合は撮影装置22aにより撮影される温度画像または可視画像と同じピクセル数の画像が学習済みモデルに入力され、後者の場合は温度画像または可視画像が切り出された窓画像が学習済みモデルに入力される。
【0038】
機械学習モデルの教師あり学習においては、例えば、学習入力画像が機械学習モデルに入力する処理、学習入力画像を機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、機械学習モデルを学習する処理が行われる。例えば、教師あり学習において、学習データに含まれる学習入力画像を機械学習モデルに入力した際の出力と、当該学習データに含まれる教師データと、の差が特定され、その特定される差に基づいて機械学習モデルのパラメータの値が更新されてよい。
【0039】
種類推定部54は、タイヤ32が装着される車両30の種類を推定する。種類推定部54は、より具体的には、車両30のナンバープレートの画像またはその車両30の画像に基づいて、車両30の種類を推定する。種類推定部54はナンバープレートに記載された情報をOCR認識により読み取り、その分類番号に基づいて車両30の種類を推定してもよい。また、種類推定部54は、車両30の画像と、その車両30の種類を示す教師データとにより学習された学習済モデルを含んでもよい。学習済モデルに入力される入力画像は撮影装置22bにより撮影された可視画像またはその可視画像を任意に拡大または縮小された画像であってもよい。
【0040】
異常判定部57は、タイヤ抽出部52により抽出された1または複数のタイヤ温度画像に基づいて、それぞれのタイヤ温度画像が示すタイヤ32に異常が生じているか判定する。
【0041】
異常判定部57は、タイヤ温度画像における、タイヤ32のサイドウォールにおける周方向の温度の分布に基づいて、そのタイヤ32に異常が生じているか否かを判定してよい。
【0042】
異常判定部57は、タイヤ32のタイヤ温度画像と、タイヤ32の異常の有無とを含む教師データを用いて学習された機械学習モデルを含んでよい。以上の判定においては、機械学習モデルが用いられてもよい。この場合、異常判定部57はタイヤ温度画像を予め定められたサイズに拡大または縮小した入力用画像を生成し、生成された入力用画像が入力された機械学習モデルからの出力を判定結果として出力してよい。また機械学習モデルは、予め定められたサイズに拡大または縮小されたタイヤ温度画像と、異常の有無とを含む教師データにより学習されてよい。
【0043】
異常判定部57は、タイヤ抽出部52により抽出された複数のタイヤ温度画像からタイヤ32の温度を取得し、取得された温度に基づいてタイヤの異常を判定してもよい。その場合、異常判定部57は、複数のタイヤ32のタイヤ温度画像に基づいてその複数のタイヤ32のそれぞれの温度を取得し、その複数のタイヤ32の取得された温度の違いに基づいて、その複数のタイヤ32のいずれに異常が生じているか判定してもよい。また異常判定部57は、その複数のタイヤ32の配置にさらに基づいて、タイヤ32の異常を判定してもよい。異常判定部57は、さらに車両30の種類に基づいてタイヤ32の異常を判定してもよい。
【0044】
撮影装置22a,22bが駐車スペースに配置されている場合には、異常判定部57は、車両30が停止した後に、タイヤ32のタイヤ温度画像に基づいてタイヤ32の温度を繰り返し取得し、その繰り返し取得される温度から温度上昇特性を算出し、算出された温度上昇特性に基づいてタイヤ32に異常が生じているか否かを判定してもよい。
【0045】
通知部59は、タイヤ32に異常が生じていると判定された場合に、その異常が生じていることを通知先へ通知する。通知部59は、タイヤ32に異常が生じていると判定された場合に、そのタイヤ32の修理または交換が可能な店舗を検索し、検索された店舗をその車両30へ通知してもよい。
【0046】
以下では、タイヤ32に異常が生じているか判定するための処理についてさらに説明する。図5は情報処理装置1の処理の概要を示すフロー図である。
【0047】
はじめに、画像取得部51は、車両30のタイヤ32を撮影可能な状態になるまで待機する(ステップS101)。車両30が移動する場合には、撮影可能な状態は、例えばタイヤ32のサイドウォールが撮影装置22aの撮影範囲に収まる状態であってよい。車両30が停車する箇所で撮影が行われる場合には、撮影可能な状態は、車両30が停車した状態、または停車から一定時間経過した状態であってもよい。
【0048】
画像取得部51は、撮影装置22a,22bの画像に基づいて撮影可能な状態を検知してもよいし、車両30の停車を検知するセンサを別に設け、そのセンサの出力に基づいて車両30の停車を検知してもよい。
【0049】
そして画像取得部51は撮影装置22aからタイヤ32およびその周囲が撮影された温度画像を取得する(ステップS102)。ここで画像取得部51は可視画像も取得してよい。また画像取得部51は撮影装置22bからナンバープレートを含む可視画像を取得してよい。
【0050】
図6は、撮影装置22aにより撮影されたタイヤ32のサイドウォールの可視画像の一例を示す図である。可視画像には、タイヤ32、タイヤ32が装着されるホイール36、そしてホイール36が装着される車両30が写っている。またホイール36の裏側には、図示しないブレーキが配置されている。
【0051】
図7は、撮影装置22aにより撮影されたタイヤ32(サイドウォール)の領域42を含む温度画像の一例を示す図である。図7の例においてタイヤ32より中心側にある高温の部分は、ブレーキにより生じる熱に起因している。またタイヤ32のサイドウォールにはタイヤ32の異常に伴って生じるホットスポット43が存在し、領域42の下方には地面に対応する領域47も存在する。
【0052】
例えば撮影装置22bの可視画像が取得された後に、種類推定部54は車両30の種類を推定する(ステップS103)。種類推定部54は、例えば、ナンバープレートに記載された分類番号を認識し、その分類番号に基づいて車種を推定してよい。
【0053】
図8は、ナンバープレートの分類番号と車種との関係を示す図である。図10に示される表に相当するテーブルは記憶部12に格納され、種類推定部54はナンバープレートから認識された分類番号と、そのテーブルとに基づいて車両30の種類(図8の車種ID)を取得する。例えば、分類番号が「351」の場合には、種類推定部54は推定された種類として、その分類番号を範囲に含む車種ID「3」を出力する。
【0054】
種類推定部54は、車両30の画像に基づいて種類を推定してもよい。この場合、車両30の画像と、車両30の種類を示す教師データとにより学習された学習済モデルを用いてよい。
【0055】
温度画像が取得されると、タイヤ抽出部52は温度画像からタイヤ温度画像を抽出するための処理を実行する。より具体的には、タイヤ抽出部52は温度画像においてタイヤ32が存在する領域42を特定し(ステップS104)、温度画像のうちその特定されたタイヤ32の領域42をタイヤ温度画像として抽出する(ステップS105)。
【0056】
ステップS105における領域42の特定には、機械学習モデルを用いてよい。この場合、タイヤ抽出部52は、機械学習モデルを用いて、可視画像に基づくタイヤ32が存在する領域を検出し、検出された領域に対応する温度画像の領域42を特定してよい。また、タイヤ抽出部52は、可視画像の代わりに温度画像に基づいてタイヤ32が存在する領域42を検出してもよい。領域42の特定に温度画像を用いるか可視画像を用いるかについては、機械学習モデルの精度に応じて選択してよい。
【0057】
また、機械学習モデルの代わりに、タイヤ抽出部52は温度画像から地面と接触する物体の画像を認識し、その物体の領域をタイヤ32の領域42として特定してもよい。より具体的には、タイヤ抽出部52は温度画像において地面の領域47を認識し、その地面の領域47に接しかつ温度が外気温と所定の値との和より高い領域をタイヤ32の領域42として認識し、温度画像におけるその領域42をタイヤ温度画像として抽出してもよい。
【0058】
タイヤ温度画像が抽出されると、異常判定部57は、抽出されたタイヤ温度画像に基づいて、タイヤ32に異常が生じているか否か判定する(ステップS112)。以上の判定の詳細については後述する。
【0059】
タイヤ32に異常が生じていると判定された場合には(ステップS113のY)、通知部59は、異常通知を車両30へ通知する(ステップS115)。通知部59は、撮影装置22a,22bが配置された場所の位置情報に基づいて、その場所に近いタイヤ交換または修理が可能な店舗を検索し、検索された店舗を含む異常通知を通知してもよい。通知部59は、車両30の外部に設置されるディスプレイまたはスピーカに対して情報を出力させることにより異常を通知してもよいし、車両30との無線通信により異常通知を送信することにより異常を通知してもよい。
【0060】
以下では異常判定部57の処理についてさらに詳細を説明する。図9は、異常判定部57の処理の一例を示すフロー図であり、異常判定部57がサイドウォールのホットスポット43の有無に基づいてタイヤ32に異常が生じているか否か判定する処理の一例を説明する。図9に示される処理はタイヤ32ごとに実行される。
【0061】
はじめに異常判定部57は、環状のタイヤ32の中心からの距離がある値である環状の部分領域において、周方向の温度変化を算出する。温度変化は、温度の最高値から最低値を引いた差であってもよいし、温度の分布の分散であってもよい。また、温度変化の算出の前に、隣り合う周囲の画素との温度差が大きいノイズ画素を排除するフィルタ処理が行われてもよい。また、環状の部分領域として、タイヤ32のサイドウォールのうちホイール36付近の領域を除いた部分について処理が行われてもよい。
【0062】
そして、異常判定部57は、温度変化が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS302)。異常判定部57は、車両30の種類に応じて閾値を選択し、選択された閾値と比較してよい。温度変化が閾値を超えている場合には(ステップS302のY)、異常判定部57はタイヤ32に異常が生じていると判定する(ステップS303)。
【0063】
ここで、図9に示される処理の代わりに、機械学習モデルを用いて処理が実行されてもよい。この場合には、タイヤ32のタイヤ温度画像と、タイヤ32の異常の有無とを含む教師データを用いて学習された機械学習モデルが用いられ、異常判定部57はタイヤ温度画像を所定のサイズに拡大または縮小し、拡大または縮小されたタイヤ温度画像を機械学習モデルに入力する。また異常判定部57は機械学習モデルの出力を判定結果として取得する。
【0064】
異常判定部57は、他のタイヤ32との温度差に基づいてタイヤ32の異常を判定してもよい。図10は、異常判定部57の処理の他の一例を示すフロー図である。以下では、複輪の場合におけるタイヤ32の温度の相違に基づく以上の判定について説明する。
【0065】
図11は、複輪の一例を示す図である。図11の例では、車両30に装着されたタイヤ32a,32bのサイドウォールが隣接して並び、タイヤ32c,32dのサイドウォールが隣接して並んでいる。複輪に関して異常を判定する場合、撮影装置22aは車両30の前または後ろからタイヤ32を撮影できる位置に配置されている。
【0066】
図10に示される処理が開始される前に、タイヤ抽出部52は、車両30に装着された複数のタイヤ32のサイドウォールが隣接して並んでいるか否か(複輪であるか否か)判定する処理を実行し、さらに、複輪であると判定された場合に図10に示す処理が実行されるものとする。
【0067】
図10に示される処理において、はじめに、異常判定部57は、複数のタイヤ32のそれぞれについて抽出されたタイヤ温度画像から複数のタイヤ32の温度を取得する(ステップS351)。例えば、異常判定部57は、タイヤ温度画像のそれぞれの各画素が示す温度のうち最も高い温度をタイヤ32の温度として取得する。
【0068】
タイヤ32の温度が取得されると、異常判定部57はタイヤ32の位置に応じて温度を補正する(ステップS352)。複輪においては、走行時の風による冷却のむらにより、例えば、内側にあるタイヤ32b,32cの温度が外側にあるタイヤ32a,dより高くなる。そこで、予め位置の違いに応じた補正値を記憶部12に格納しておき、異常判定部57は位置に応じた補正値を取得し、その補正値を加算又は減算することによりタイヤ32の温度を補正する。
【0069】
異常判定部57は、補正された複数のタイヤ32の温度差を算出する(ステップS353)。例えば、異常判定部57は、複数のタイヤ32のそれぞれの補正された温度と、他のタイヤ32の補正された温度との温度差を算出する。
【0070】
異常判定部57は、タイヤ32のそれぞれについて、他のタイヤ32との温度差が閾値を超えるタイヤ32が存在するか否か判定する(ステップS357)。異常判定部57は、タイヤ32のそれぞれについて、他のタイヤ32のいずれかより温度が高く、かつ温度差が閾値を超える場合に(ステップS357のY)、そのタイヤ32が異常であると判定する(ステップS358)。ステップS357およびS358の処理はタイヤ32のそれぞれについて行われる。異常判定部57は、この閾値として、記憶部12から車両30の種類に関連付けて格納される値を取得してもよい。
【0071】
なお、ステップS353の補正は行われなくてもよい。代わりに、ステップS357において外側のタイヤ32の異常を判定する際に、内側のタイヤ32との温度差の閾値を補正値に相当する分大きくすればよい。また内側のタイヤ32の異常を判定する際に、外側のタイヤ32との温度差の閾値を補正値に相当する分小さくすればよい。
【0072】
図10に示される処理は複輪以外に対しても応用できる。例えば4輪の車両30の場合、タイヤ32の間の温度差に基づいて異常が判定されてもよい。また、走行風の影響により前輪と後輪とで温度が異なるため、予め位置の違いに応じた補正値を記憶部12に格納しておき、異常判定部57は位置に応じてタイヤ32の温度を補正してよい。
【0073】
異常判定部57は、車両30の停止時からの温度上昇の特性に基づいてタイヤ32の異常を判定してもよい。この場合、異常判定部57は、車両30が停止した後に、タイヤ32について抽出されたタイヤ温度画像からタイヤ32の温度を取得することを繰り返し行う。そして、異常判定部57は、繰り返し取得されたタイヤ32の温度が示す温度上昇特性に基づいてタイヤ32に異常が生じているか判定する。
【0074】
図12は車両停止時からのタイヤ32の表面の温度変化の一例を示す図である。例えば、異常判定部57は繰り返し取得されたタイヤ32の温度をフィッティングさせることにより温度変化のカーブを推定し、推定されたカーブがタイヤ32の温度の速い上昇を示す場合に、タイヤ32に異常があると判定する。異常判定部57は繰り返し取得されたタイヤ32の温度の上昇速度を算出し、その上昇速度が判定閾値より大きい場合に異常があると判定してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 情報処理装置、11 プロセッサ、12 記憶部、13 通信部、14 入出力部、22,22a,22b 撮影装置、30 車両、32,32a,32b,32c,32d タイヤ、36 ホイール、42,47 領域、43 ホットスポット、51 画像取得部、52 タイヤ抽出部、53 車両識別部、54 種類推定部、57 異常判定部、59 通知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12