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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光増幅装置及び光増幅方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/35 20060101AFI20240410BHJP
   H04B 10/071 20130101ALI20240410BHJP
   H04B 10/291 20130101ALI20240410BHJP
   G02F 1/365 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G02F1/35 501
H04B10/071
H04B10/291
G02F1/365
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020102133
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021196469
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄作
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-057691(JP,A)
【文献】特開2003-218796(JP,A)
【文献】特開2004-279557(JP,A)
【文献】特開2014-106495(JP,A)
【文献】特開2003-107543(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0119931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/25-1/39
H01S 3/00-3/30
H04B 10/071
H04B 10/291
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方励起光を、伝送路に伝送される信号光と同一方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅する第1ラマン増幅器と、
後方励起光を、前記信号光と反対方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅する第2ラマン増幅器とを有し、
前記前方励起光の第1波長帯域は、前記後方励起光の第2波長帯域を含み、前記第2波長帯域より広く、
前記第1ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第1光フィルタと、
前記第1光フィルタを透過した第1透過光のパワーを検出する第1検出部とを有し、
前記第2ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第2光フィルタと、
前記第2光フィルタを透過した第2透過光のパワーを検出する第2検出部とを有し、
前記第1ラマン増幅器は、前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが第1閾値より高い場合、前記前方励起光の出力を停止し、
前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが第2閾値より低い場合、前記後方励起光の出力を停止することを特徴とする光増幅装置。
【請求項2】
前記第1ラマン増幅器は、
前記前方励起光を出力する前方励起光源と、
前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが前記第1閾値より高い場合、前記前方励起光源に前記前方励起光の出力を停止させる第1制御部とを有し、
前記第2ラマン増幅器は、
前記後方励起光を出力する後方励起光源と、
前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが前記第2閾値より低い場合、前記後方励起光源に前記後方励起光の出力を停止させる第2制御部とを有することを特徴とする請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが0になった場合、前記後方励起光の出力を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記第1ラマン増幅器は、前記前方励起光を前記伝送路に導き、前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光を前記第1光フィルタに導く第1導光器とを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光増幅装置。
【請求項5】
前記第2ラマン増幅器は、前記後方励起光を前記伝送路に導き、前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光を前記第2光フィルタに導く第2導光器とを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の光増幅装置。
【請求項6】
前記第2波長帯域は、前記信号光の波長帯域の短波長側に少なくとも前記信号光と同じ帯域幅を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の光増幅装置。
【請求項7】
第1ラマン増幅器により、前方励起光を、伝送路に伝送される信号光と同一方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅し、
第2ラマン増幅器により、後方励起光を、前記信号光と反対方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅し、
前記前方励起光の第1波長帯域は、前記後方励起光の第2波長帯域を含み、前記第2波長帯域より広く、
前記第1ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第1光フィルタと、
前記第1光フィルタを透過した第1透過光のパワーを検出する第1検出部とを有し、
前記第2ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第2光フィルタと、
前記第2光フィルタを透過した第2透過光のパワーを検出する第2検出部とを有し、
前記第1ラマン増幅器は、前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが第1閾値より高い場合、前記前方励起光の出力を停止し、
前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが第2閾値より低い場合、前記後方励起光の出力を停止することを特徴とする光増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、光増幅装置及び光増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラマン増幅器は、信号光が伝送される伝送路に、信号光より短波長側に波長帯域を有する励起光を出力することにより伝送路を増幅媒体として信号光を増幅する。例えば特許文献1には、伝送路を構成する光ファイバのコネクタ抜け及び断線(以下、「伝送路断」と表記)が検出された場合、光ファイバの障害箇所から光パワーが漏出することを抑制するため、ラマン増幅器の光出力を停止する自動光パワーシャットダウン(APSD: Automatic Power Shutdown)が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、ラマン増幅器から出力された励起光が伝送路断によりフレネル反射したときの反射光に基づき伝送路断を検出し、励起光を遮断する点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-93746号公報
【文献】特開2003-218796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号光をより効果的に増幅するため、信号光と同一方向に励起光(以下、「前方励起光」と表記)を出力する前方ラマン増幅器、及び信号光と反対方向に励起光(以下、「後方励起光」と表記)を出力する後方ラマン増幅器が、伝送路の上流側及び下流側にそれぞれ設けられる場合がある。
【0006】
伝送路断が発生していないとき、前方ラマン増幅器には後方ラマン増幅器から後方励起光が入力され、後方ラマン増幅器には前方ラマン増幅器から前方励起光が入力される。また、伝送路断が発生したとき、フレネル反射のため、前方ラマン増幅器には障害箇所から前方励起光の反射光が入力され、後方ラマン増幅器には障害箇所から後方励起光の反射光が入力される。
【0007】
前方ラマン増幅器には、後方励起光の波長帯域を遮断する光フィルタが設けられ、後方ラマン増幅器には、前方励起光の波長帯域を遮断する光フィルタが設けられる。このため、伝送路断が発生していないとき、前方ラマン増幅器及び後方ラマン増幅器は、後方励起光及び前方励起光によって伝送路断を誤検出して前方励起光及び後方励起光をそれぞれ遮断することがない。一方、伝送路断が発生しているとき、前方ラマン増幅器及び後方ラマン増幅器は、光フィルタを透過した前方励起光及び後方励起光の各反射光により伝送路断を検出して前方励起光及び後方励起光をそれぞれ遮断することができる。
【0008】
例えば前方励起光の波長帯域は、前方励起光のパワー変動によるRIN(Relative Intensity Noise)の信号光への影響を抑制するため、後方励起光の波長帯域を含む広い帯域幅を有している場合がある。
【0009】
この場合、伝送路断が発生したとき、後方ラマン増幅器の光フィルタは、前方励起光に応じた広い遮断帯域を有するため、障害箇所からの後方励起光の反射光を遮断してしまう。このため、後方ラマン増幅器は、反射光により伝送路断を検出することができず、後方励起光を遮断することができない。
【0010】
そこで本件は、前方励起光が後方励起光を含む広い帯域幅を有する場合でも前方励起光及び後方励起光を遮断することができる光増幅装置及び光増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様では、光増幅装置は、前方励起光を、伝送路に伝送される信号光と同一方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅する第1ラマン増幅器と、後方励起光を、前記信号光と反対方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅する第2ラマン増幅器とを有し、前記前方励起光の第1波長帯域は、前記後方励起光の第2波長帯域を含み、前記第2波長帯域より広く、前記第1ラマン増幅器は、前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第1光フィルタと、前記第1光フィルタを透過した第1透過光のパワーを検出する第1検出部とを有し、前記第2ラマン増幅器は、前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第2光フィルタと、前記第2光フィルタを透過した第2透過光のパワーを検出する第2検出部とを有し、前記第1ラマン増幅器は、前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが第1閾値より高い場合、前記前方励起光の出力を停止し、前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが第2閾値より低い場合、前記後方励起光の出力を停止する。
【0012】
1つの態様では、光増幅方法は、第1ラマン増幅器により、前方励起光を、伝送路に伝送される信号光と同一方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅し、第2ラマン増幅器により、後方励起光を、前記信号光と反対方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅し、前記前方励起光の第1波長帯域は、前記後方励起光の第2波長帯域を含み、前記第2波長帯域より広く、前記第1ラマン増幅器は、前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第1光フィルタと、前記第1光フィルタを透過した第1透過光のパワーを検出する第1検出部とを有し、前記第2ラマン増幅器は、前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第2光フィルタと、前記第2光フィルタを透過した第2透過光のパワーを検出する第2検出部とを有し、前記第1ラマン増幅器は、前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが第1閾値より高い場合、前記前方励起光の出力を停止し、前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが第2閾値より低い場合、前記後方励起光の出力を停止する方法である。
【発明の効果】
【0013】
1つの側面として、前方励起光が後方励起光を含む広い帯域幅を有する場合でも前方励起光及び後方励起光を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】双方向ラマン増幅装置の比較例を示す構成図である。
図2】前方励起光及び後方励起光を示すスペクトル図である。
図3】伝送路断が発生したときの比較例の双方向ラマン増幅装置の動作例を示す図である。
図4】比較例における光フィルタの動作を示すスペクトル図である。
図5】双方向ラマン増幅装置の実施例を示す構成図である。
図6】伝送路断が発生したときの実施例の双方向ラマン増幅装置の動作例を示す図である。
図7】実施例における光フィルタの動作を示すスペクトル図である。
図8】前方ラマン増幅器の制御回路の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】後方ラマン増幅器の制御回路の動作の一例を示すフローチャートである。
図10】双方向ラマン増幅装置の他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(双方向ラマン増幅装置の比較例の構成)
図1は、双方向ラマン増幅装置80xの比較例を示す構成図である。双方向ラマン増幅装置80xは、送信装置91及び受信装置92の間を結ぶ伝送路3に接続されている。伝送路3には送信装置91から受信装置92に向かって信号光が伝送される。信号光は、例えば複数の波長光を含む波長多重信号光である。
【0016】
伝送路3には、例えば複数の光ファイバ及び光コネクタ(不図示)などが含まれる。光コネクタは、光ファイバ同士を接続する。
【0017】
伝送路3には、送信装置91側及び受信装置92の近傍にEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)81,82がそれぞれ接続されている。EDFA81,82は信号光をそれぞれ増幅する。双方向ラマン増幅装置80xはEDFA81,82の間に接続されている。
【0018】
双方向ラマン増幅装置80xは前方ラマン増幅器1及び後方ラマン増幅器2xを有する。前方ラマン増幅器1は、前方励起光を信号光と同一方向に伝送路3に出力する。前方励起光が伝送路3に入射することにより誘導ラマン散乱が生じて信号光がラマン増幅される。後方ラマン増幅器2xは、後方励起光を、信号光と反対方向に伝送路3に出力する。後方励起光が伝送路3に入射することにより誘導ラマン散乱が生じて信号光がラマン増幅される。
【0019】
前方ラマン増幅器1は、信号光の伝送方向において後方ラマン増幅器2xの上流側に設けられている。このため、前方ラマン増幅器1には、後方ラマン増幅器2xから後方励起光が入力され、後方ラマン増幅器2xには、前方ラマン増幅器1から前方励起光が入力される。
【0020】
前方ラマン増幅器1は、制御回路10、前方励起光源11、光カプラ12、WDM(Wavelength Divisional Multiplexing)カプラ13、光フィルタ14、及びPD(Photo Diode)15を有する。
【0021】
前方励起光源11は、例えばLD(Laser Diode)であり、前方励起光を出力する。光カプラ12は、前方励起光源11から入力された前方励起光をWDMカプラ13に導く。WDMカプラ13は、光カプラ12から入力された前方励起光を伝送路3に導き、伝送路3から入力された後方励起光を光カプラ12に導く。また、WDMカプラ13は、伝送路3から信号光を光カプラ12に入力させず、伝送路3を介して信号光及び前方励起光を後方ラマン増幅器2xに導く。
【0022】
光カプラ12は、WDMカプラ13から入力された後方励起光を光フィルタ14に導く。光フィルタ14は、後方励起光の波長帯域に該当する遮断帯域を有し、後方励起光を遮断する。光フィルタ14を透過した透過光はPD15に入力される。
【0023】
PD15は透過光のパワーPfを検出する。制御回路10はPD15の出力信号から透過光のパワーPfを取得する。伝送路断が発生していない場合、光フィルタ14が後方励起光を遮断するため、透過光のパワーPfは実質的に0となる。
【0024】
制御回路10は、透過光のパワーPfに基づいて前方励起光源11の光出力を制御信号Sfにより制御する。制御回路10は、透過光のパワーPfが閾値THfより高い場合、伝送路3の伝送路断が発生したと判定し、前方励起光源11をシャットダウンすることにより前方励起光を遮断する。このようにして、前方励起光源11は前方励起光の出力を停止する。
【0025】
本例では、透過光のパワーPfは実質的に0であるため、制御回路10は、透過光のパワーPbが閾値THf以下であるため、伝送路3の伝送路断が未発生であると判定し、前方励起光源11の出力を維持する。
【0026】
後方ラマン増幅器2xは、制御回路20x、後方励起光源21、光カプラ22、WDMカプラ23、光フィルタ24x、及びPD25を有する。
【0027】
後方励起光源21は、例えばLDであり、後方励起光を出力する。光カプラ22は、後方励起光源21から入力された後方励起光をWDMカプラ23に導く。WDMカプラ23は、光カプラ22から入力された後方励起光を伝送路3に導き、伝送路3から入力された前方励起光を光カプラ22に導く。また、WDMカプラ23は、伝送路3から信号光を光カプラ22に入力させず、伝送路3を介して信号光及び後方励起光をEDFA82に導く。
【0028】
光カプラ22は、WDMカプラ23から入力された前方励起光を光フィルタ24xに導く。光フィルタ24xは、前方励起光の波長帯域に該当する遮断帯域を有し、遮断帯域に該当する光成分を遮断する。このため、光フィルタ24xを透過してPD25に入力される透過光は実質的にはない。
【0029】
PD25は透過光のパワーPbを検出する。制御回路20xはPD25の出力信号から透過光のパワーPbを取得する。伝送路断が発生していない場合、光フィルタ24xが前方励起光を遮断するため、透過光のパワーPbは実質的に0となる。
【0030】
制御回路20xは、透過光のパワーPbに基づいて後方励起光源21の光出力を制御信号Sbにより制御する。制御回路20xは、透過光のパワーPbが閾値Tb’より高い場合、伝送路3の伝送路断が発生したと判定し、後方励起光源21をシャットダウンすることにより後方励起光を遮断する。このようにして、後方励起光源21は後方励起光の出力を停止する。
【0031】
本例では、透過光のパワーPbは実質的に0であるため、制御回路20xは、透過光のパワーPbが閾値THb’以下であるため、伝送路3の伝送路断が未発生であると判定し、後方励起光源21の出力を維持する。
【0032】
(前方励起光及び後方励起光)
図2は、前方励起光及び後方励起光を示すスペクトル図である。図2において、横軸は波長を示し、縦軸はパワーを示す。符号H1は、後方励起光の波長帯域SPb及び信号光の波長帯域SPsを示す。符号H2は、前方励起光の波長帯域SPf及び信号光の波長帯域SPsを示す。
【0033】
本例において、信号光は波長λLs~λUsの波長帯域SPsを有する。信号光としては例えばCバンド帯の波長多重信号光が挙げられるが、これに限定されない。前方励起光及び後方励起光の各波長帯域SPf,SPbは、信号光の波長帯域SPsの短波長側に100(nm)の間隔をおいて設定されている。このため、前方ラマン増幅器1及び後方ラマン増幅器2xは、前方励起光及び後方励起光により適切に信号光をそれぞれラマン増幅することができる。
【0034】
後方励起光の波長帯域SPbは、一定の帯域幅を有する中心波長λ1,λ2,λ3,λ4の4つの不連続な領域に分かれている。なお、後方励起光の波長帯域SPbの領域数は、4つに限定されず、帯域設計に応じて適宜決定される。
【0035】
前方励起光の波長帯域SPfは、前方励起光のパワー変動によるRINの信号光への影響を抑制するため、後方励起光の波長帯域SPbを含む広い帯域幅を有している。前方励起光のパワーは、波長帯域SPfの中心に近いほど高く、波長帯域SPfの両端に近いほど低い。このような前方励起光を出力する前方励起光源11としては、例えば、以下の参考文献に記載された「i-pump」が挙げられる。「i-pump」は、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源のように広帯域の光を出力することができる。
・参考文献
“Co-Propagating Dual-Order Distributed Raman Amplifier Incoherent Pumping”, Masahito Morimoto et al., IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL.29, NO.7, APRIL 1, 2017
【0036】
このように、前方励起光の波長帯域は、後方励起光の波長帯域を含み、後方励起光の
波長より広い。また、後方励起光の波長帯域SPbは、信号光の波長帯域SPsの短波長側に少なくとも信号光と同じ帯域幅を有する。このため、後方ラマン増幅器2xは、後方励起光の波長帯域SPbが信号光の波長帯域SPsより狭い場合より効果的に信号光をラマン増幅することができる。なお、前方励起光の波長帯域は第1波長帯域の一例であり、後方励起光の波長帯域は第2波長帯域の一例である。
【0037】
(比較例における伝送路断の発生時の動作)
図3は、伝送路断が発生したときの比較例の双方向ラマン増幅装置80xの動作例を示す図である。図3において、図1と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
伝送路3において伝送路断が発生すると、前方励起光及び後方励起光は、障害発生箇所(×印参照)でフレネル反射する。前方励起光の反射光は、信号光とは反対方向に伝送路3を伝送してWDMカプラ13に入力され、後方励起光の反射光は、信号光と同一方向に伝送路3を伝送してWDMカプラ23に入力される。
【0039】
WDMカプラ13は前方励起光の反射光を伝送路3から光カプラ12に導く。光カプラ12は前方励起光の反射光を光フィルタ14に導く。
【0040】
また、光カプラ12は、前方励起光を伝送路3に導き、伝送路3から後方励起光、及び前方励起光の反射光を光フィルタ14に導く。このため、前方ラマン増幅器1は、前方励起光、後方励起光、及び前方励起光の反射光を、共通の導波路を介して伝送路3との間で入出力することができる。
【0041】
このように、光フィルタ14には、伝送路断が発生していないとき、伝送路3から後方励起光が入力され、伝送路断が発生しているとき、前方励起光の反射光が入力される。
【0042】
前方励起光の波長帯域は、後方励起光を包含する広い帯域幅を有する。このため、光フィルタ14は、前方励起光の反射光のうち、遮断帯域に該当する光成分を遮断するが、残りの光成分を透過する。光フィルタ14を透過した透過光、つまり反射光の一部はPD15に入力される。
【0043】
PD15は、光フィルタ14の透過光のパワーPfを検出する。制御回路10は、透過光のパワーPf、つまり前方励起光の反射光のパワーPfが閾値THfより高くなった場合、伝送路断が発生したことを判定し、前方励起光源11をシャットダウンする。
【0044】
また、WDMカプラ23は後方励起光の反射光を伝送路3から光カプラ22に導く。光カプラ22は後方励起光の反射光を光フィルタ24xに導く。
【0045】
また、光カプラ22は、後方励起光を伝送路3に導き、伝送路3から前方励起光、及び後方励起光の反射光を光フィルタ24xに導く。このため、後方ラマン増幅器2xは、前方励起光、後方励起光、及び後方励起光の反射光を、共通の導波路を介して伝送路3との間で入出力することができる。
【0046】
このように、光フィルタ24xには、伝送路断が発生していないとき、伝送路3から方励起光が入力され、伝送路断が発生しているとき、後方励起光の反射光が入力される。
【0047】
光フィルタ24xは、前方ラマン増幅器1の光フィルタ14と比較すると、前方励起光の波長帯域に該当する広い遮断帯域を有する。このため、光フィルタ24xは後方励起光の反射光を遮断する。このため、光フィルタ24xを透過してPD25に入力される透過光は実質的にはなく、制御回路20xは、透過光のパワーから後方励起光の反射光の入力を検出することができない。したがって、制御回路20xは、伝送路断の発生を判断することができない。
【0048】
(比較例における光フィルタの動作)
図4は、比較例における光フィルタ14,24xの動作を示すスペクトル図である。図3において、横軸は波長を示し、縦軸はパワーを示す。
【0049】
符号G1aは、伝送路断の発生前の前方ラマン増幅器1の光フィルタ14の動作を示し、符号G1bは、伝送路断の発生前の後方ラマン増幅器2xの光フィルタ24xの動作を示す。
【0050】
本例において、前方ラマン増幅器1の光フィルタ14は、一定の帯域幅を有する中心波長λ1,λ2,λ3,λ4の4つの不連続な領域を含む遮断帯域Wfを有する。すなわち、前方ラマン増幅器1の光フィルタ14は、後方励起光の波長帯域SFbに一致する遮断帯域Wfを有する。
【0051】
また、後方ラマン増幅器2xの光フィルタ24xは、後方励起光の中心波長λ1,λ2,λ3,λ4の波長帯域SFbを包含する遮断帯域Wbを有する。すなわち、後方ラマン増幅器2xの光フィルタ24xは、前方励起光の波長帯域SPfに一致する遮断帯域Wbを有する。
【0052】
伝送路断が発生していないとき、前方ラマン増幅器1には後方ラマン増幅器2xから後方励起光が入力され、後方ラマン増幅器2xには前方ラマン増幅器1から前方励起光が入力される。前方ラマン増幅器1の光フィルタ14は遮断帯域Wfにより後方励起光を遮断し、後方ラマン増幅器2xの光フィルタ24xは遮断帯域Wbにより前方励起光を遮断する。
【0053】
このため、各光フィルタ14,24xの透過光のパワーPf,Pbは実質的に0となる。したがって、伝送路断が発生していないとき、制御回路10,20xは、後方励起光及び前方励起光によって伝送路断を誤検出して前方励起光及び後方励起光をそれぞれ遮断することがない。
【0054】
符号G2aは、伝送路断の発生後の前方ラマン増幅器1の光フィルタ14の動作を示し、符号G2bは、伝送路断の発生後の後方ラマン増幅器2xの光フィルタ24xの動作を示す。伝送路断が発生したとき、フレネル反射のため、前方ラマン増幅器1には障害箇所から前方励起光の反射光が入力され、後方ラマン増幅器2xには障害箇所から後方励起光の反射光が入力される。
【0055】
前方ラマン増幅器1の光フィルタ14の遮断帯域Wfは、中心波長λ1,λ2,λ3,λ4の近傍で部分的に前方励起光の反射光の波長帯域SPfrと重なるが、斜線で示されるように重ならない領域も存在する。このため、光フィルタ14は、前方励起光の反射光のうち、遮断帯域Wfと重ならない光成分を透過する。
【0056】
したがって、PD15は、透過光として前方励起光の反射光の一部のパワーPfを検出する。このため、制御回路10は、光フィルタ14の透過光のパワーPfが閾値THfより高くなった場合、伝送路断を検出して前方励起光を遮断することができる。
【0057】
後方ラマン増幅器2xの光フィルタ24xの遮断帯域Wbは、前方励起光の波長帯域SPfに合わせて広い帯域幅を有しているため、後方励起光の反射光の波長帯域SPbrを含む。このため、光フィルタ24xは、後方励起光の反射光を全く透過しない。
【0058】
このため、光フィルタ24xの透過光のパワーPbは実質的に0となり、閾値THb’以下となる。したがって、制御回路20xは、伝送路断が発生しているにも関わらず、伝送路断を検出できないため、後方励起光を遮断することができない。
【0059】
(双方向ラマン増幅装置の実施例の構成)
図5は、双方向ラマン増幅装置80の実施例を示す構成図である。図5において、図1と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。なお、以下に述べる実施例の双方向ラマン増幅装置80の動作は光増幅方法の一例である。
【0060】
双方向ラマン増幅装置80は、光増幅装置の一例であり、送信装置91及び受信装置92の間を結ぶ伝送路3に接続されている。なお、以下に述べる双方向ラマン増幅装置80の動作は光増幅方法の一例である。
【0061】
双方向ラマン増幅装置80は前方ラマン増幅器1及び後方ラマン増幅器2を有する。前方ラマン増幅器1は、第1ラマン増幅器の一例であり、前方励起光を信号光と同一方向に伝送路3に出力することにより信号光を増幅する。後方ラマン増幅器2は、後方励起光を、信号光と反対方向に伝送路3に出力する。後方励起光が伝送路3に入射することにより誘導ラマン散乱が生じて信号光がラマン増幅される。なお、後方ラマン増幅器2は、第2ラマン増幅器の一例である。
【0062】
前方ラマン増幅器1は、制御回路10、前方励起光源11、光カプラ12、WDMカプラ13、光フィルタ14、及びPD15を有する。前方ラマン増幅器1は、比較例と同様に動作する。ここで、光フィルタ14は第1光フィルタの一例であり、光フィルタ14を透過した透過光は第1透過光の一例である。PD15は、光フィルタ14を透過した透過光のパワーPfを検出する第1検出部の一例である。光カプラ12は第1導光器の一例である。
【0063】
後方ラマン増幅器2は、制御回路20、後方励起光源21、光カプラ22、WDMカプラ23、光フィルタ24、及びPD25を有する。光フィルタ24は、第2光フィルタの一例であり、比較例の光フィルタ24xとは異なる遮断帯域を有する。また、制御回路20は、比較例の制御回路20xとは異なり、光フィルタ24の透過光のパワーPb’が閾値THbより低くなった場合、後方励起光を遮断する。なお、光カプラ22は第2導光器の一例である。
【0064】
光フィルタ24には、前方ラマン増幅器1から前方励起光が入力される。光フィルタ24は、前方ラマン増幅器1の光フィルタ14と同様に、後方励起光の波長帯域に該当する遮断帯域を有する。前方励起光は、後方励起光を包含する広い波長帯域を有している。
【0065】
このため、光フィルタ24は、前方励起光のうち、遮断帯域に該当する光成分を遮断するが、残りの光成分を透過する。光フィルタ14を透過した透過光、つまり前方励起光の一部はPD15に入力される。なお、光フィルタ24を透過した透過光は第2過光の一例である。
【0066】
PD25は、光フィルタ24の透過光のパワーPb’を検出する。制御回路20は、透過光のパワーPb’が閾値THbより高い場合、伝送路断が未発生であると判定し、後方励起光源21をシャットダウンせず、後方励起光の出力を維持する。なお、PD25は、光フィルタ24を透過した透過光のパワーPb’を検出する第2検出部の一例である。
【0067】
(実施例における伝送路断の発生時の動作)
図6は、伝送路断が発生したときの実施例の双方向ラマン増幅装置80の動作例を示す図である。図6において、図5と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0068】
伝送路3において伝送路断が発生すると、前方励起光及び後方励起光は、障害発生箇所(×印参照)でフレネル反射する。前方励起光の反射光は、信号光とは反対方向に伝送路3を伝送してWDMカプラ13に入力され、後方励起光の反射光は、信号光と同一方向に伝送路3を伝送してWDMカプラ23に入力される。
【0069】
光フィルタ24には、伝送路3の障害発生箇所から後方励起光の反射光が入力される。光フィルタ24は、後方励起光の波長帯域に該当する遮断帯域を有する。このため、光フィルタ24は後方励起光の反射光を遮断する。このため、光フィルタ24を透過してPD25に入力される透過光は実質的にはない。したがって、透過光のパワーPb’は実質的に0となる。
【0070】
このように、実施例の光フィルタ24の透過光のパワーPb’は、伝送路断の発生前、光フィルタ24を透過した前方励起光のパワーと等しくなり、伝送路断の発生後、実質的に0となる。このため、透過光のパワーPb’の変化を検出することにより伝送路断の発生を判断することができる。これに対し、比較例の光フィルタ24xのパワーPb’は、伝送路断の発生の前後で常に実質的に0であるため、伝送路断の発生を判断することができない。
【0071】
制御回路20は、PD15により検出された透過光のパワーPb’が、光フィルタを透過する前方励起光のパワーから減少した場合、後方励起光の出力を停止する。透過光のパワーPb’は、伝送路断の前、光フィルタを透過する前方励起光のパワーに等しいが、伝送路断の後、実質的に0となる。このため、制御回路20は、透過光のパワーPb’が閾値THbより低くなった場合、伝送路断が発生したことを判定し、後方励起光源21をシャットダウンすることができる。
【0072】
図7は、実施例における光フィルタ14,24の動作を示すスペクトル図である。図7において、横軸は波長を示し、縦軸はパワーを示す。
【0073】
符号G3aは、伝送路断の発生前の前方ラマン増幅器1の光フィルタ14の動作を示し、符号G3bは、伝送路断の発生前の後方ラマン増幅器2の光フィルタ24の動作を示す。
【0074】
本例において、後方ラマン増幅器2の光フィルタ24は、一定の帯域幅を有する中心波長λ1,λ2,λ3,λ4の4つの不連続な領域を含む遮断帯域Wbを有する。すなわち、後方ラマン増幅器2の光フィルタ24は、後方励起光の波長帯域SFbに一致する遮断帯域Wbを有する。
【0075】
このため、光フィルタ24の遮断帯域Wbは、中心波長λ1,λ2,λ3,λ4の近傍で部分的に前方励起光の波長帯域SPfと重なるが、斜線で示されるように重ならない領域も存在する。このため、光フィルタ24は、伝送路断が発生していないとき、前方ラマン増幅器1から入力される前方励起光のうち、遮断帯域Wfと重ならない光成分を透過する。
【0076】
したがって、PD25は、透過光である前方励起光のパワーPb’を検出する。このため、制御回路20は、光フィルタ24の透過光のパワーPb’が所定の閾値THbより高い場合、伝送路断を検出せず、後方励起光の出力を維持する。
【0077】
また、前方ラマン増幅器1の光フィルタ14の遮断帯域Wfは、比較例と同様に、後方励起光の波長帯域SPbに一致するため、光フィルタ14は後方励起光を遮断する。このため、光フィルタ14の透過光のパワーPfは実質的に0となる。したがって、伝送路断が発生していないとき、制御回路10は、光フィルタ14の透過光のパワーPfが閾値THf以下である場合、伝送路断を検出せず、前方励起光の出力を維持する。
【0078】
符号G4aは、伝送路断の発生後の前方ラマン増幅器1の光フィルタ14の動作を示し、符号G4bは、伝送路断の発生後の後方ラマン増幅器2の光フィルタ24の動作を示す。伝送路断が発生したとき、フレネル反射のため、前方ラマン増幅器1には障害箇所から前方励起光の反射光が入力され、後方ラマン増幅器2には障害箇所から後方励起光の反射光が入力される。
【0079】
前方ラマン増幅器1の光フィルタ14は、比較例と同様に、前方励起光の反射光のうち、遮断帯域Wfと重ならない光成分(斜線部参照)を透過する。PD15は、透過光として前方励起光の反射光の一部のパワーPfを検出する。制御回路10は、光フィルタ14の透過光のパワーPfが閾値THfより高い場合、伝送路断を検出して前方励起光を遮断する。
【0080】
また、後方ラマン増幅器2の光フィルタ24の遮断帯域Wbは、後方励起光の反射光の波長帯域SPbrと一致するため、光フィルタ24は後方励起光の反射光を透過しない。このため、光フィルタ24の透過光のパワーPfは実質的に0となる。したがって、伝送路断が発生したとき、制御回路20は、伝送路断の発生前の前方励起光のパワーからの光フィルタ24の透過光のパワーPfの減少に応じて、伝送路断を検出して、後方励起光を遮断することができる。
【0081】
このように、前方ラマン増幅器1は、PD15により検出された光フィルタ14の透過光のパワーPfが閾値THfより高い場合、前方励起光の出力を停止する。後方ラマン増幅器2は、PD25により検出された光フィルタ24の透過光のパワーが、光フィルタ24を透過する前方励起光のパワー(符号G3bの斜線部を参照)から減少した場合、後方励起光の出力を停止する。一例として、後方ラマン増幅器2は、光フィルタ24の透過光のパワーが閾値THbより低い場合、後方励起光の出力を停止する。
【0082】
したがって、前方ラマン増幅器1は、伝送路断の発生時、障害箇所から前方励起光の反射光の入力により光フィルタ14の透過光のパワーPfが増加したことに応じて伝送路断を検出して前方励起光を遮断することができる。また、後方ラマン増幅器2は、伝送路断の発生時、前方ラマン増幅器1からの前方励起光の入力停止に伴い、光フィルタ14の透過光のパワーPb’が伝送路断の発生前より減少したことに応じて伝送路断を検出して後方励起光を遮断することができる。
【0083】
(制御回路10,20の動作)
図8は、前方ラマン増幅器1の制御回路10の動作の一例を示すフローチャートである。制御回路10は、前方励起光源11に発光開始の制御信号Sfを出力することにより前方励起光の出力を開始する(ステップSt1)。
【0084】
次に制御回路10は、PD15の出力信号から光フィルタ14の透過光のパワーPfを検出する(ステップSt2)。次に制御回路10は、透過光のパワーPfを閾値THfと比較する(ステップSt3)。制御回路10は、透過光のパワーPfが閾値THf以下である場合(ステップSt3のNo)、伝送路断が発生していないと判定し、再び光フィルタ14の透過光のパワーPfを検出する(ステップSt2)。
【0085】
制御回路10は、透過光のパワーPfが閾値THfより高い場合(ステップSt3のYes)、伝送路断が発生していると判定し、前方励起光源11に発光停止の制御信号Sfを出力することにより前方励起光を遮断する(ステップSt4)。このようにして制御回路10は動作する。
【0086】
図9は、後方ラマン増幅器2の制御回路20の動作の一例を示すフローチャートである。制御回路20は、後方励起光源21に発光開始の制御信号Sbを出力することにより後方励起光の出力を開始する(ステップSt11)。
【0087】
次に制御回路20は、PD25の出力信号から光フィルタ24の透過光のパワーPb’を検出する(ステップSt12)。次に制御回路20は、透過光のパワーPb’を閾値THbと比較する(ステップSt13)。制御回路20は、透過光のパワーPb’が閾値THb以上である場合(ステップSt13のNo)、伝送路断が発生していないと判定し、再び光フィルタ24の透過光のパワーPb’を検出する(ステップSt12)。
【0088】
制御回路20は、透過光のパワーPb’が閾値THbより低い場合(ステップSt13のYes)、伝送路断が発生していると判定し、後方励起光源21に発光停止の制御信号Sbを出力することにより後方励起光を遮断する(ステップSt14)。後方励起光源21は、適切な閾値THbの設定により透過光のパワーPb’が0になったことを判断して後方励起光を遮断してもよい。
【0089】
これにより、制御回路20は、より高精度に伝送路断の発生を判断して後方励起光を遮断することができる。なお、伝送路断の発生の判定手段は、これに限定されない。制御回路20は、例えば透過光のパワーPfが、伝送路断の発生前から所定値以上減少したことを条件として伝送路断の発生を判定してもよい。このようにして制御回路20は動作する。
【0090】
このように、前方ラマン増幅器1の制御回路10は、PD15により検出された透過光のパワーPfが閾値THfより高い場合、前方励起光源11に前方励起光の出力を停止させる。また、後方ラマン増幅器2の制御回路20は、PD25により検出された透過光のパワーPb’が、光フィルタ14を透過する前方励起光のパワーから減少した場合、後方励起光源21に後方励起光の出力を停止させる。
【0091】
このため、前方ラマン増幅器1及び後方ラマン増幅器2は、後述するような外部の制御装置を用いずに、制御回路10,20により自律的に前方励起光源11及び後方励起光源21をそれぞれ制御して前方励起光及び後方励起光を遮断することができる。なお、制御回路10は第1制御部の一例であり、制御回路20は第2制御部の一例である。
【0092】
(双方向ラマン増幅装置の他の実施例の構成)
図10は、双方向ラマン増幅装置80aの他の実施例を示す構成図である。双方向ラマン増幅装置80aは前方ラマン増幅器1a及び後方ラマン増幅器2aを有する。
【0093】
前方ラマン増幅器1aは、前方ラマン増幅器1と異なる点として、制御回路10に代えて通信回路16を有する。また、後方ラマン増幅器2aは、後方ラマン増幅器2と異なる点として、制御回路20に代えて通信回路26を有する。通信回路16,26は、例えばLAN(Local Area Network)回線を介して制御装置7に接続されている。通信回路16,26は、PD15,25が検出した透過光のパワーPf,Pb’を制御装置7に通知する。
【0094】
制御装置7は、例えばネットワーク管理装置であり、前方ラマン増幅器1a及び後方ラマン増幅器2aを制御する。制御回路10は制御回路10,20の機能を有し、通信回路を介して制御信号Sf,Sbを前方励起光源11及び後方励起光源21にそれぞれ出力する。
【0095】
制御装置7は、透過光のパワーPf,Pb’に応じて、前方励起光源11及び後方励起光源21のシャットダウン制御を行う。制御装置7は、PD15により検出された透過光のパワーPfが閾値THfより高い場合、前方励起光源11に前方励起光の出力を停止させる。また、制御装置7は、PD25により検出された透過光のパワーPb’が、光フィルタ14を透過する前方励起光のパワーから減少した場合、後方励起光源21に後方励起光の出力を停止させる。
【0096】
本例の前方ラマン増幅器1a及び後方ラマン増幅器2aは、制御回路10,20を有していないため、図1に示される前方ラマン増幅器1及び後方ラマン増幅器2より小規模な構成となる。
【0097】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【0098】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 前方励起光を、伝送路に伝送される信号光と同一方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅する第1ラマン増幅器と、
後方励起光を、前記信号光と反対方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅する第2ラマン増幅器とを有し、
前記前方励起光の第1波長帯域は、前記後方励起光の第2波長帯域を含み、前記第2波長帯域より広く、
前記第1ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第1光フィルタと、
前記第1光フィルタを透過した第1透過光のパワーを検出する第1検出部とを有し、
前記第2ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第2光フィルタと、
前記第2光フィルタを透過した第2透過光のパワーを検出する第2検出部とを有し、
前記第1ラマン増幅器は、前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが閾値より高い場合、前記前方励起光の出力を停止し、
前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが、前記第2光フィルタを透過する前記前方励起光のパワーから減少した場合、前記後方励起光の出力を停止することを特徴とする光増幅装置。
(付記2) 前記第1ラマン増幅器は、
前記前方励起光を出力する前方励起光源と、
前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが前記閾値より高い場合、前記前方励起光源に前記前方励起光の出力を停止させる第1制御部とを有し、
前記第2ラマン増幅器は、
前記後方励起光を出力する後方励起光源と、
前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが、前記第2光フィルタを透過する前記前方励起光のパワーから減少した場合、前記後方励起光源に前記後方励起光の出力を停止させる第2制御部とを有することを特徴とする付記1に記載の光増幅装置。
(付記3) 前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが0になった場合、前記後方励起光の出力を停止することを特徴とする付記1または2に記載の光増幅装置。
(付記4) 前記第1ラマン増幅器は、前記前方励起光を前記伝送路に導き、前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光を前記第1光フィルタに導く第1導光器とを有することを特徴とする付記1乃至3の何れかに記載の光増幅装置。
(付記5) 前記第2ラマン増幅器は、前記後方励起光を前記伝送路に導き、前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光を前記第2光フィルタに導く第2導光器とを有することを特徴とする付記1乃至4の何れかに記載の光増幅装置。
(付記6) 前記第2波長帯域は、前記信号光の波長帯域の短波長側に少なくとも前記信号光と同じ帯域幅を有することを特徴とする付記1乃至5の何れかに記載の光増幅装置。
(付記7) 第1ラマン増幅器により、前方励起光を、伝送路に伝送される信号光と同一方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅し、
第2ラマン増幅器により、後方励起光を、前記信号光と反対方向に前記伝送路に出力することにより前記信号光を増幅し、
前記前方励起光の第1波長帯域は、前記後方励起光の第2波長帯域を含み、前記第2波長帯域より広く、
前記第1ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記後方励起光、及び前記前方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第1光フィルタと、
前記第1光フィルタを透過した第1透過光のパワーを検出する第1検出部とを有し、
前記第2ラマン増幅器は、
前記伝送路から前記前方励起光、及び前記後方励起光の反射光が入力され、前記第2波長帯域を遮断する第2光フィルタと、
前記第2光フィルタを透過した第2透過光のパワーを検出する第2検出部とを有し、
前記第1ラマン増幅器は、前記第1検出部により検出された前記第1透過光のパワーが閾値より高い場合、前記前方励起光の出力を停止し、
前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが、前記第2光フィルタを透過する前記前方励起光のパワーから減少した場合、前記後方励起光の出力を停止することを特徴とする光増幅方法。
(付記8) 前記第2ラマン増幅器は、前記第2検出部により検出された前記第2透過光のパワーが0になった場合、前記後方励起光の出力を停止することを特徴とする付記7に記載の光増幅方法。
(付記9) 前記第2波長帯域は、前記信号光の波長帯域の短波長側に少なくとも前記信号光と同じ帯域幅を有することを特徴とする付記7または8に記載の光増幅方法。
【符号の説明】
【0099】
1,1a 前方ラマン増幅器
2,2a 後方ラマン増幅器
3 伝送路
7 制御装置
10,20,20x 制御回路
11 前方励起光源
21 後方励起光源
14,24,24x 光フィルタ
15,25 PD
80,80a,80x 双方向ラマン増幅装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10