(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】心拍数検出装置、心拍数検出装置を備えたシート、及び心拍数検出方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20240410BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61B5/0245 200
A61B5/0245 100Z
A61B5/11 110
(21)【出願番号】P 2020102182
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相羽 智在
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513656(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154747(WO,A1)
【文献】特開2018-187129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0245
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍数検出装置であって、
測定対象にマイクロ波である送信波を照射すると共に前記送信波の反射波を受信し、前記送信波と前記反射波とに基づいて前記測定対象の速度に応じた周波数の情報を含むドップラー信号を出力するドップラーセンサと、
前記ドップラー信号に基づいて前記測定対象の心拍数を決定する信号解析装置とを有し、
前記信号解析装置は、
前記ドップラー信号を周波数スペクトルに変換する信号変換部と、
前記周波数スペクトルから、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が設定された基本周波数帯域における基本波スペクトルと、前記基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と前記基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルとを抽出するデータ抽出部と、
前記高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が前記基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように前記高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、前記基本波スペクトルに圧縮された前記高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、前記基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された前記高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成する合成スペクトル算出部と、
前記合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて前記心拍数を算出する心拍数決定部とを有する心拍数検出装置。
【請求項2】
前記信号解析装置は、前記基本周波数帯域の始点及び終点を変更する基本周波数帯域設定部を有する請求項1に記載の心拍数検出装置。
【請求項3】
複数の前記高調波周波数帯域は、前記基本周波数帯域の始点及び終点のそれぞれを2倍にした始点及び終点を有する2次高調波周波数帯域と、前記基本周波数帯域の始点及び終点のそれぞれを3倍にした始点及び終点を有する3次高調波周波数帯域とを少なくとも含む請求項1又は請求項2に記載の心拍数検出装置。
【請求項4】
前記合成スペクトル算出部は、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって前記高調波スペクトルを前記基本波スペクトルに重ね合わせる請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の心拍数検出装置。
【請求項5】
前記信号変換部は、ウェーブレット変換によって前記ドップラー信号を前記周波数スペクトルに変換する請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載の心拍数検出装置。
【請求項6】
前記合成スペクトル算出部は、前記基本波スペクトル及び複数の前記高調波スペクトルの信号強度に、それぞれに対応した係数を掛けた後に加算して前記合成スペクトルを生成する請求項1~請求項5のいずれか1つの項に記載の心拍数検出装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の心拍数検出装置を備えたシート。
【請求項8】
心拍数検出方法であって、
ドップラーセンサから、測定対象に照射されたマイクロ波である送信波と、前記送信波の反射波との間の周波数差を表わすドップラー信号を取得するステップと、
前記ドップラー信号を周波数スペクトルに変換するステップと、
前記周波数スペクトルから、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が予め設定された基本周波数帯域における基本波スペクトルと、前記基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と前記基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルとを抽出するステップと、
前記高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が前記基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように前記高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、前記基本波スペクトルに圧縮された前記高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、前記基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された前記高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成するステップと、
前記合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて心拍数を決定するステップとを有する心拍数検出方法。
【請求項9】
前記基本周波数帯域の始点及び終点を設定するステップを更に有する請求項
8に記載の心拍数検出方法。
【請求項10】
前記合成スペクトルを生成するときに、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって前記高調波スペクトルを前記基本波スペクトルに重ね合わせる請求項8又は請求項9に記載の心拍数検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍数検出装置、心拍数検出装置を備えたシート、及び心拍数検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生体にマイクロ波を照射すると共にその反射波を受信し、生体の動きに関する情報を含むドップラー信号を生成するドップラーセンサを用いた心拍数検出装置が開示されている。心拍数検出装置は、ドップラー信号を周波数スペクトルに変換し、心拍(心臓の拍動)に起因する周波数を特定し、その周波数から心拍数を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心拍に起因する生体の表面の動きは比較的小さいため、例えば呼吸に伴う生体の動き等の他の動きと区別して、周波数スペクトルから心拍に起因する周波数を特定することが難しい。特許文献1に係る心拍数検出装置では、バンドパスフィルタ等のフィルタを用いて特定の周波数成分を除外し、心拍に起因する周波数を抽出している。しかし、心拍に起因する周波数と他の動きに起因する周波数との差が小さい場合、フィルタを用いて心拍に起因する周波数のみを抽出することが難しい。また、ドップラー信号は、生体の予期しない動きに起因する不特定のノイズを含む場合があり、フィルタによって心拍に起因する周波数のみを抽出することが難しい。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、ドップラーセンサを用いた心拍数検出装置において、心拍に起因する周波数を適切に取得することを課題とする。また、心拍数検出装置を備えたシートを提供することを課題とする。また、ドップラーセンサを用いた心拍数検出方法において、心拍に起因する周波数を適切に取得することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る心拍数検出装置(2)は、測定対象にマイクロ波である送信波を照射すると共に前記送信波の反射波を受信し、前記送信波と前記反射波とに基づいて前記測定対象の速度に応じた周波数の情報を含むドップラー信号を出力するドップラーセンサ(31)と、前記ドップラー信号に基づいて前記測定対象の心拍数を決定する信号解析装置(32)とを有し、前記信号解析装置は、前記ドップラー信号を周波数スペクトルに変換する信号変換部(51)と、前記周波数スペクトルから、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が設定された基本周波数帯域における基本波スペクトルと、前記基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と前記基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルとを抽出するデータ抽出部(52)と、前記高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が前記基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように前記高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、前記基本波スペクトルに圧縮された前記高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、前記基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された前記高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成する合成スペクトル算出部(53)と、前記合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて前記心拍数を算出する心拍数決定部(54)とを有する。
【0007】
この態様によれば、心拍以外の体動が存在する場合にも心拍に起因する周波数成分を特定することができ、心拍数を適切に決定することができる。心拍に起因する基本波を含む基本周波数帯域の周波数スペクトルと、基本波に対する高調波を含む高調波周波数帯域の周波数スペクトルを重ね合わせて加算することによって、心拍に起因する周波数が強調される。このとき、心拍以外の体動に起因するノイズは、高調波周波数帯域に存在しない場合があり、合成スペクトルにおいて心拍に起因する周波数よりも信号強度が小さくなり易い。
【0008】
上記の態様において、前記信号解析装置は、前記基本周波数帯域の始点及び終点を変更する基本周波数帯域設定部を有するとよい。
【0009】
この態様によれば、心拍数検出装置の使用環境に応じて基本周波数帯域を調節して、ノイズの影響を小さくすることができる。
【0010】
上記の態様において、複数の前記高調波周波数帯域は、前記基本周波数帯域の始点及び終点のそれぞれを2倍にした始点及び終点を有する2次高調波周波数帯域と、前記基本周波数帯域の始点及び終点のそれぞれを3倍にした始点及び終点を有する3次高調波周波数帯域とを少なくとも含むとよい。
【0011】
この態様によれば、心拍に起因する基本波の2次高調波及び3次高調波は、比較的大きな信号強度を有するため、2次高調波及び3高調波を含めて合成スペクトルを生成することによって心拍に起因する周波数成分を強調することができる。
【0012】
上記の態様において、前記合成スペクトル算出部は、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって前記高調波スペクトルを前記基本波スペクトルに重ね合わせるとよい。
【0013】
この態様によれば、高調波スペクトルを容易に基本波スペクトルに重ね合わせることができる。
【0014】
上記の態様において、前記信号変換部は、ウェーブレット変換によって前記ドップラー信号を前記周波数スペクトルに変換するとよい。
【0015】
上記の態様において、前記合成スペクトル算出部は、前記基本波スペクトル及び複数の前記高調波スペクトルの信号強度に、それぞれに対応した係数を掛けた後に加算して前記合成スペクトルを生成するとよい。
【0016】
この態様によれば、特定の高調波が合成スペクトルに与える影響を調節することができ、心拍に起因する周波数を強調することができる。
【0017】
本発明の他の態様は、上記の心拍数検出装置を備えたシート(1)である。
【0018】
この態様によれば、シートの着座者の心拍数を測定することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る心拍数検出方法は、ドップラーセンサから、測定対象に照射されたマイクロ波である送信波と、前記送信波の反射波との間の周波数差を表わすドップラー信号を取得するステップと、前記ドップラー信号を周波数スペクトルに変換するステップと、前記周波数スペクトルから、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が予め設定された基本周波数帯域における基本波スペクトルと、前記基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と前記基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルとを抽出するステップと、前記高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が前記基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように前記高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、前記基本波スペクトルに圧縮された前記高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、前記基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された前記高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成するステップと、前記合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて心拍数を決定するステップとを有する。
【0020】
この態様によれば、心拍以外の体動が存在する場合にも心拍に起因する周波数成分を特定することができ、心拍数を適切に決定することができる。
【0021】
上記の態様において、心拍数検出方法は、前記基本周波数帯域の始点及び終点を設定するステップを更に有するとよい。
【0022】
この態様によれば、心拍数検出装置の使用環境に応じて基本周波数帯域を調節して、ノイズの影響を小さくすることができる。
【0023】
上記の態様において、心拍数検出方法は、前記合成スペクトルを生成するときに、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって前記高調波スペクトルを前記基本波スペクトルに重ね合わせるとよい。
【0024】
この態様によれば、高調波スペクトルを容易に基本波スペクトルに重ね合わせることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様に係る心拍数検出装置(2)は、測定対象にマイクロ波である送信波を照射すると共に前記送信波の反射波を受信し、前記送信波と前記反射波とに基づいて前記測定対象の速度に応じた周波数の情報を含むドップラー信号を出力するドップラーセンサ(31)と、前記ドップラー信号に基づいて前記測定対象の心拍数を決定する信号解析装置(32)とを有し、前記信号解析装置は、前記ドップラー信号を周波数スペクトルに変換する信号変換部(51)と、前記周波数スペクトルから、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が設定された基本周波数帯域における基本波スペクトルと、前記基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と前記基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルとを抽出するデータ抽出部(52)と、前記高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が前記基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように前記高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、前記基本波スペクトルに圧縮された前記高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、前記基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された前記高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成する合成スペクトル算出部(53)と、前記合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて前記心拍数を算出する心拍数決定部(54)とを有する。この態様によれば、心拍以外の体動が存在する場合にも心拍に起因する周波数成分を特定することができ、心拍数を適切に決定することができる。心拍に起因する基本波を含む基本周波数帯域の周波数スペクトルと、基本波に対する高調波を含む高調波周波数帯域の周波数スペクトルを重ね合わせて加算することによって、心拍に起因する周波数が強調される。このとき、心拍以外の体動に起因するノイズは、高調波周波数帯域に存在しない場合があり、合成スペクトルにおいて心拍に起因する周波数よりも信号強度が小さくなり易い。
【0026】
上記の態様において、前記信号解析装置は、前記基本周波数帯域の始点及び終点を変更する基本周波数帯域設定部を有するとよい。この態様によれば、心拍数検出装置の使用環境に応じて基本周波数帯域を調節して、ノイズの影響を小さくすることができる。
【0027】
上記の態様において、複数の前記高調波周波数帯域は、前記基本周波数帯域の始点及び終点のそれぞれを2倍にした始点及び終点を有する2次高調波周波数帯域と、前記基本周波数帯域の始点及び終点のそれぞれを3倍にした始点及び終点を有する3次高調波周波数帯域とを少なくとも含むとよい。この態様によれば、心拍に起因する基本波の2次高調波及び3次高調波は、比較的大きな信号強度を有するため、2次高調波及び3高調波を含めて合成スペクトルを生成することによって心拍に起因する周波数成分を強調することができる。
【0028】
上記の態様において、前記合成スペクトル算出部は、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって前記高調波スペクトルを前記基本波スペクトルに重ね合わせるとよい。この態様によれば、高調波スペクトルを容易に基本波スペクトルに重ね合わせることができる。
【0029】
上記の態様において、前記信号変換部は、ウェーブレット変換によって前記ドップラー信号を前記周波数スペクトルに変換するとよい。上記の態様において、前記合成スペクトル算出部は、前記基本波スペクトル及び複数の前記高調波スペクトルの信号強度に、それぞれに対応した係数を掛けた後に加算して前記合成スペクトルを生成するとよい。この態様によれば、特定の高調波が合成スペクトルに与える影響を調節することができ、心拍に起因する周波数を強調することができる。
【0030】
本発明の他の態様は、上記の心拍数検出装置を備えたシート(1)である。この態様によれば、シートの着座者の心拍数を測定することができる。
【0031】
本発明の他の態様に係る心拍数検出方法は、ドップラーセンサから、測定対象に照射されたマイクロ波である送信波と、前記送信波の反射波との間の周波数差を表わすドップラー信号を取得するステップと、前記ドップラー信号を周波数スペクトルに変換するステップと、前記周波数スペクトルから、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が予め設定された基本周波数帯域における基本波スペクトルと、前記基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と前記基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルとを抽出するステップと、前記高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が前記基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように前記高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、前記基本波スペクトルに圧縮された前記高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、前記基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された前記高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成するステップと、前記合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて心拍数を決定するステップとを有する。この態様によれば、心拍以外の体動が存在する場合にも心拍に起因する周波数成分を特定することができ、心拍数を適切に決定することができる。
【0032】
上記の態様において、心拍数検出方法は、前記基本周波数帯域の始点及び終点を設定するステップを更に有するとよい。この態様によれば、心拍数検出装置の使用環境に応じて基本周波数帯域を調節して、ノイズの影響を小さくすることができる。
【0033】
上記の態様において、心拍数検出方法は、前記合成スペクトルを生成するときに、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって前記高調波スペクトルを前記基本波スペクトルに重ね合わせるとよい。この態様によれば、高調波スペクトルを容易に基本波スペクトルに重ね合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図5】AD変換部から出力されたドップラー信号を示すグラフ
【
図7】基本波スペクトル、変換された2~5次高調波スペクトル、及び合成スペクトルを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明に係る心拍数検出装置、心拍数検出装置を備えたシート、及び心拍数検出方法について説明する。
【0036】
図1及び
図2に示すように、シート1は心拍数検出装置2を備えている。シート1は、例えば、自動車や鉄道等の車両において使用されるシートであってよい。本実施形態では、シート1は自動車において使用されるシート1である。シート1は、自動車の車室のフロアにスライドレール4を介して設けられたシートクッション5と、シートクッション5の後部に結合されたシートバック6と、シートバック6の上側に設けられたヘッドレスト(不図示)とを有する。
【0037】
シートクッション5は、骨格をなすシートクッションフレーム7を有する。シートクッションフレーム7にはパッドが支持され、パッドの外面には表皮材が被せられる。シートクッションフレーム7は、例えば前後に延びる左右のクッションサイドメンバ11と、左右に延び、左右のクッションサイドメンバ11の前端部のそれぞれに結合したフロントメンバ12と、左右に延び、左右のクッションサイドメンバ11の後端部のそれぞれに結合したリヤメンバ13とを有する。左右のクッションサイドメンバ11の後端部は、上方に傾斜して延びている。フロントメンバ12とリヤメンバ13との間には、前後に延びるS字ばね14が掛け渡されている。
【0038】
シートバック6は、骨格をなすシートバックフレーム15と、シートバックフレーム15に支持された受圧部材16(ランバーサポート)とを有する。シートバックフレーム15及び受圧部材16には、パッドが支持され、パッドの外面には表皮材が被せられる。シートバックフレーム15は、上下に延びる左右のバックサイドメンバ17と、左右に延び、左右のバックサイドメンバ17の上端部のそれぞれに結合したアッパメンバ19と、左右に延び、左右のバックサイドメンバ17の下端部のそれぞれに結合したロアメンバ21とを有する。
【0039】
受圧部材16は、着座者の背部を支持する板部材であり、シートバックフレーム15に弾性部材18を介して支持されている。受圧部材16は、可撓性を有する樹脂材料から形成されているとよい。弾性部材18は、弾性を有する金属ワイヤによって形成された線細工ばねであるとよい。
【0040】
図3に示すように、心拍数検出装置2は、ドップラーセンサ31と、ドップラーセンサ31から出力されるドップラー信号に基づいて測定対象の心拍数を決定する信号解析装置32とを有する。ドップラーセンサ31は、測定対象にマイクロ波である送信波を照射すると共に前記送信波の反射波を受信し、送信波と反射波とに基づいて測定対象の速度に応じた周波数の情報を含むドップラー信号を出力する。
【0041】
ドップラーセンサ31は、シート1に着座した、測定対象としての着座者の背部に向けて送信波を照射するべく、シートバック6に設けられているとよい。ドップラーセンサ31は、例えば、受圧部材16やシートバックフレーム15に設けられるとよい。本実施形態では、
図2に示すように、ドップラーセンサ31は、受圧部材16の後面に取り付けられている。ドップラーセンサ31は、受圧部材16側、すなわち前方に向けて送信波を照射する。ドップラーセンサ31から送信される送信波、及び着座者の背部の表面において反射した反射波は、マイクロ波であり、受圧部材16を透過する。
【0042】
信号解析装置32は、シート1に設けられてもよく、シート1から離れた位置に設けられてもよい。信号解析装置32は、配線によってドップラーセンサ31に接続されている。信号解析装置32は、例えばシートクッション5の下面に設けられるとよい。
【0043】
ドップラーセンサ31は、ドップラー効果を利用したセンサである。送信波を測定対象に照射し、反射波の周波数を計測すると、ドップラー効果により、測定対象の速度に応じて反射波の周波数が変化する。ドップラーセンサ31は、送信波と反射波とに基づいて、測定対象の速度に応じた周波数を有するドップラー信号を生成する。ドップラー信号を解析することによって、測定対象の速度及び振動と、測定対象の変位方向を知ることができる。本実施形態では、ドップラーセンサ31は着座者の背部の動きに応じたドップラー信号を出力する。着座者の背部の動きは、心拍に起因する動きを含む。
【0044】
図4に示すように、ドップラーセンサ31は、発振回路34と、送信側増幅器35と、送信アンテナ36と、受信アンテナ37と、受信側増幅器38と、90度移相器39と、第1ミキサ41と、第2ミキサ42と、第1ローパスフィルタ43と、第2ローパスフィルタ44とを有する。発振回路34から出力された送信波信号は、送信側増幅器35によって増幅され、送信アンテナ36から送信波として照射される。送信波は、例えば24GHzの正弦波のマイクロ波である。受信アンテナ37は、測定対象の表面で反射された反射波を受信する。反射波は、測定対象の動きに応じて、送信波に対してドップラーシフトが生じている。受信アンテナ37により受信された反射波信号は、受信側増幅器38によって増幅される。90度移相器39は、発信側増幅器によって増幅された送信波信号の位相を-90度ずらす。
【0045】
第1ミキサ41は、送信側増幅器35によって増幅された送信波信号と、受信側増幅器38によって増幅された反射波信号とをミキシングすることによって周波数の変動成分のみを取り出したI波を出力する。また、第2ミキサ42は、送信側増幅器35によって増幅された送信波信号の位相を-90度ずらした信号と、受信側増幅器38によって増幅された反射波信号とをミキシングすることによって周波数の変動成分のみを取り出したQ波を出力する。
【0046】
送信波TS(t)及び反射波RS(t)は、以下の式(1)、(2)によって表される。
【数1】
【数2】
ここで、A、A'は振幅、f
0は送信周波数[Hz]、f
rは受信周波数[Hz]である。受信周波数f
rは、ドップラー効果の式に基づいて送信周波数を用いて以下の式(3)ように表される。
【数3】
ここで、vは測定対象の速度[m/s]、cは光速[m/s]であり、測定対象の速度vは光速cに対して無視できるほどに小さい。I波I(t)及びQ波Q(t)は、送信波TS(t)及び反射波RS(t)に基づいて以下の式(4)、(5)のように表される。
【数4】
【数5】
I波は、第1ローパスフィルタ43によって高周波成分が除去され、以下の式(6)で表される。
【数6】
同様に、Q波は、第2ローパスフィルタ44によって高周波成分が除去され、以下の式(7)で表される。
【数7】
【0047】
ドップラー信号は、I波及びQ波の少なくとも一方を含む。ドップラーセンサ31は、I波及びQ波の一方をドップラー信号として出力してもよく、I波及びQ波の両方をドップラー信号として出力してもよい。本実施形態では、ドップラー信号はI波のみを含む。ドップラー信号は、時間と信号強度(電圧)との関係を表す。
【0048】
図3に示すように、信号解析装置32は、信号変換部51と、データ抽出部52と、合成スペクトル算出部53と、心拍数決定部54とを少なくとも有する。また、信号解析装置32は、信号処理部56と、AD変換部57と、基本周波数帯域設定部58とを有するとよい。
【0049】
信号処理部56は、ドップラー信号にフィルタ処理や増幅処理を行う。ドップラーセンサ31から出力されたドップラー信号は信号処理部56に入力される。フィルタ処理は、ローパスフィルタ処理、ハイパスフィルタ処理、及びバンドパスフィルタ処理の少なくとも1つを含むとよい。ドップラー信号がアナログ信号である場合、信号処理部56はアナログ信号処理回路であるとよい。ドップラー信号がデジタル信号である場合、信号処理部56はデジタル信号処理回路であるとよい。
【0050】
信号処理部56によって処理されたドップラー信号は、AD変換部57に入力され、デジタル信号に変換される。ドップラーセンサ31から出力されるドップラー信号がデジタル信号である場合、AD変換部57は省略するとよい。AD変換部57によってデジタル信号に変換されたドップラー信号は、
図5に示すように時間に対する信号強度(電圧)の数値データとして表される。
【0051】
AD変換部57によって数値データ化されたドップラー信号は、信号変換部51によって周波数スペクトル(周波数分布)に変換される。信号変換部51は、例えばドップラー信号に対してウェーブレット変換を行うことによってドップラー信号の周波数スペクトルを生成する。
【0052】
信号変換部51は、計算量を削減するために、数値データ化されたドップラー信号を周波数スペクトルに変換する前に、数値データ化されたドップラー信号のデータ量を削減してもよい。例えば、検出対象とする心拍数の最大値を120拍/分(2Hz)とし、心拍数の5次高調波まで心拍数の決定に使用する場合、必要最低限のサンプリング周波数(1秒間に取得するデータ数)は例えば20Hz(=2×5×2Hz)に設定されるとよい。
【0053】
図6は、ドップラー信号をウェーブレット変換することによって生成された周波数スペクトルのグラフである。
図6の横軸は、周波数[Hz]であり、縦軸は信号強度[V]である。周波数スペクトルの取得範囲は、例えば、検出対象とする心拍数の5次高調波を含むことができる範囲に設定されるとよい。例えば検出対象とする心拍数が0.5Hz以上2Hz以下(30拍/分以上120拍/分以下)である場合、周波数スペクトルの取得範囲は最大心拍数(2Hz)の5次高調波を含むことができるように、0.5Hz以上10Hz以下に設定されるとよい。
【0054】
基本周波数帯域設定部58は、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が設定された基本周波数帯域を設定する。基本周波数帯域は、例えば0.5Hz~3.0Hz、好ましくは0.85Hz~2.0Hzに設定されるとよい。また、基本周波数帯域設定部58は、基本周波数帯域の始点及び終点を任意に変更することができることが好ましい。信号解析装置32は、作業者が操作可能な入力装置61と着脱可能に接続されている。入力装置61は、例えばタッチパネルやキーボード等であってよい。基本周波数帯域設定部58は、作業者の操作に応じた入力装置61からの信号に基づいて基本周波数帯域の始点及び終点を変更するとよい。本実施形態では、基本周波数帯域は0.85Hz~2.0Hzに設定されている。基本周波数帯域設定部58は、基本周波数帯域の始点及び終点についての情報を含む信号をデータ抽出部52に出力する。
【0055】
データ抽出部52は、信号変換部51によって生成された周波数スペクトルから、基本周波数帯域における周波数スペクトルである基本波スペクトル、及び基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域におけるスペクトルである高調波スペクトルとを抽出する。複数の高調波周波数帯域は、基本周波数帯域の始点の2倍に設定された始点と基本周波数帯域の2倍に設定された終点とを有する2次高調波周波数帯域と、基本周波数帯域の始点の3倍に設定された始点と基本周波数帯域の3倍に設定された終点とを有する3次高調波周波数帯域とを少なくとも含む。また、本実施形態では、複数の高調波周波数帯域は、基本周波数帯域の始点の4倍に設定された始点と基本周波数帯域の4倍に設定された終点とを有する4次高調波周波数帯域と、基本周波数帯域の始点の5倍に設定された始点と基本周波数帯域の5倍に設定された終点とを有する5次高調波周波数帯域とを含む。データ抽出部52は、基本周波数帯域設定部58からの信号に基づいて、基本周波数帯域の始点及び終点を決定する。本実施形態では、一例として、基本周波数帯域が0.85Hz~2.0Hz、2次高調波周波数帯域が1.7Hz~4.0Hz、3次高調波周波数帯域が2.55Hz~6.0Hz、4次高調波周波数帯域が3.4Hz~8.0Hz、5次高調波周波数帯域が4.25Hz~10.0Hzに設定されている。
【0056】
合成スペクトル算出部53は、高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、基本波スペクトルに圧縮された高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成する。合成スペクトル算出部53は、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって前記高調波スペクトルを前記基本波スペクトルに重ね合わせる。すなわち、前記合成スペクトル算出部53は、それぞれの前記高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除することによって、それぞれの前記高調波スペクトルを周波数方向に圧縮すると共に、圧縮された高調波スペクトルを基本波周波数帯域に移動させる。
【0057】
それぞれの高調波スペクトルは、周波数と、周波数に対応した信号強度とのデータによって表される。それぞれの高調波スペクトルの周波数を対応する次数で除すると、それぞれの高調波スペクトルの始点及び終点の周波数は、基本波スペクトルの始点及び終点の周波数に一致する。例えば、2次高調波スペクトルの場合、2次高調波スペクトルの始点及び終点の周波数を次数の2で除すると、始点の周波数は0.85Hz(=1.7/2Hz)、終点の周波数は2.0Hz(=2.0/2Hz)となり、基本周波数帯域と一致する。3次以上の高調波は、2次高調波と同様に変換することができる。
【0058】
図7は、基本波スペクトル(1次)と、変換された2~5次の高調波スペクトルと、合成スペクトルとを示す。合成スペクトル算出部53は、基本周波数帯域における各周波数において、基本波スペクトルの信号強度と、圧縮され、かつ移動させられることによって変換された2~5次の高調波スペクトルのそれぞれの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成する。変換された2~5次の高調波スペクトルにおける心拍に起因するピークは、基本波スペクトルの心拍に起因するピークと重なる位置に配置される。これにより、合成スペクトルでは、心拍に起因する周波数の信号強度が互いに加算され、信号強度が大きくなる。
【0059】
合成スペクトル算出部53は、各周波数スペクトルの信号強度を加算するときに、信号強度のそれぞれに係数を掛けてもよい。これにより、特定の次数の周波数スペクトルが合成スペクトルに与える影響を大きくすることができる。例えば、2次高調波スペクトル及び3次高調波スペクトルの信号強度に掛ける係数は、基本波スペクトル、4次高調波スペクトル及び5次高調波スペクトルのそれぞれに掛ける係数よりも大きく設定されてもよい。
【0060】
心拍数決定部54は、合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて心拍数を決定する。心拍数決定部54は、具体的には、合成スペクトル算出部53が生成した合成スペクトルから信号強度が最も大きい周波数を決定し、その周波数に60を掛けることによって1分当たりの拍動数である心拍数を算出する。例えば、心拍数決定部54は、信号強度が最も大きい周波数が1.2Hzである場合に、心拍数を72拍/分(=1.2Hz×60)に決定する。
【0061】
心拍数検出装置2は、以下に示す心拍数検出方法に基づいて心拍数を検出している。心拍数検出方法は、ドップラーセンサ31から、測定対象に照射されたマイクロ波である送信波と、送信波の反射波との間の周波数差を表わすドップラー信号を取得するステップと、ドップラー信号を周波数スペクトルに変換するステップと、周波数スペクトルから、心拍に起因する基本波を含むように始点及び終点が予め設定された基本周波数帯域における基本波スペクトルと、基本周波数帯域の始点の整数倍に設定された始点と基本周波数帯域の整数倍に設定された終点とを有する複数の高調波周波数帯域における高調波スペクトルとを抽出するステップと、高調波周波数帯域のそれぞれの始点及び終点が基本周波数帯域の始点及び終点に一致するように高調波スペクトルを圧縮すると共に移動させ、基本波スペクトルに圧縮された高調波スペクトルのそれぞれを重ね合わせ、基本波スペクトルの信号強度と複数の圧縮された高調波スペクトルの信号強度とを加算して合成スペクトルを生成するステップと、合成スペクトルに基づいて信号強度が最も大きい周波数を決定し、信号強度が最も大きい周波数に基づいて心拍数を算出するステップとを有する。また、心拍数検出方法は、基本周波数帯域の始点及び終点を設定するステップを更に有するとよい。
【0062】
信号解析装置32は、心拍数決定部54が算出した心拍数を、制御装置63に出力するとよい。制御装置63は、ディスプレイやスピーカ等の報知装置や、空調装置、シート1の位置や角度を調節する駆動装置を制御するとよい。
【0063】
心拍数検出装置2は、ドップラー信号から生成した周波数スペクトルから、基本周波数帯域における基本波スペクトルと、2~5次高調波周波数帯域における2~5次高調波スペクトルとを抽出し、基本波スペクトルと2~5次高調波スペクトルとに基づいて合成スペクトルを生成し、合成スペクトルに基づいて心拍数を決定する。合成スペクトルでは、心拍に起因する周波数の信号強度が加算されて強調されるため、心拍に起因する周波数の特定が容易になる。一方、周波数スペクトルに心拍以外の他の体動に起因するノイズが存在する場合でも、ノイズが基本周波数領域及び2~5次の高調波周波数領域のそれぞれにおいて存在する確率は低い。そのため、合成スペクトルにおいては、心拍に起因する周波数の信号強度がノイズの信号強度よりも大きくなり易い。
【0064】
図7に示すように、基本波スペクトルは、1.2Hz付近と、1.5Hz付近とにピークを有する。この場合、1.2Hzと1.5Hzのいずれが心拍に起因する周波数であるかを特定することができない。特に、1.5Hzの信号強度は1.2Hzの信号強度よりも大きいため、1.2Hzを心拍に起因する周波数であると特定することは難しい。しかし、基本波スペクトルに、周波数方向に圧縮かつ移動させた2~5次の高調波スペクトルを重ね合わせて加算することによって生成された合成スペクトルでは、心拍に起因する周波数の信号強度が強調される。これにより、合成スペクトルでは、1.2Hzの信号強度が1.5Hzの信号強度よりも大きくなる。そのため、合成スペクトルにおいて、信号強度が最も大きい周波数を心拍に起因する周波数として特定することが可能になる。
【0065】
心拍に起因する周波数が現れる基本周波数帯域は、おおよそ1.00Hz~1.67Hzであり、基本周波数帯域には呼吸に伴う体動に起因する周波数の高調波がノイズとして現れる場合がある。呼吸に伴う体動の基本周波数は、約0.3Hzであるため、その4次高調波(1.2Hz)や5次高調波(1.5Hz)が基本周波数帯域に現れる場合がある。しかし、心拍に起因する周波数に対して設定された基本周波数帯域に対して設定された2~5次高調波帯域では、呼吸に伴う体動に起因する周波数の高調波は6次以上の高調波となり、信号強度が低下し易い。そのため、心拍に起因する基本波スペクトルと、その高調波スペクトルに基づいて生成した合成スペクトルでは、呼吸に伴う体動に起因する周波数の信号強度は心拍に起因する周波数の信号強度よりも小さくなり易い。
【0066】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、ドップラー信号を周波数スペクトルに変換するときには、ウェーブレット変換に代えて高速フーリエ変換等のフーリエ変換が使用されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 :シート
2 :心拍数検出装置
5 :シートクッション
6 :シートバック
16 :受圧部材
31 :ドップラーセンサ
32 :信号解析装置
51 :信号変換部
52 :データ抽出部
53 :合成スペクトル算出部
54 :心拍数決定部
56 :信号処理部
57 :AD変換部
58 :基本周波数帯域設定部