(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240410BHJP
B65D 30/16 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D30/16 A
(21)【出願番号】P 2020110971
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林 寛之
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001550(JP,A)
【文献】特開2005-178068(JP,A)
【文献】特開2018-083640(JP,A)
【文献】特開2019-199259(JP,A)
【文献】特開2017-071424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 30/16
B65D 33/01
B65D 33/06
B31B 70/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の包装袋であって、
前記包装袋は、底面部と、前面部と、背面部を備え、
前記前面部と前記背面部は、互いに対向し、かつ前記底面部から立ち上げるように設けられ、
前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が互いに溶着されて前記袋状となり、
前記包装袋は、前記包装袋の左右方向における中央部の下端である中央部下端では、前記左右方向における側部の下端である側部下端よりも前後方向に大きく開くように構成され、
前記包装袋は、前記側部下端に後退部を備え、
前記後退部は、平面視において、前記中央部下端の縁部に沿った基準線に対して上側に後退した部位であり、
前記包装袋の下端での左右方向の長さをL1とし、前記後退部の左右方向の長さをLとすると、L/L1≧0.05であ
り、
前記包装袋の下端には、前記底面部と前記前面部、および前記底面部と前記背面部を溶着する下端溶着部が設けられており、
前記下端溶着部は、前記左右方向の中央に直線状に形成される中央部と、前記中央部の両端から上方へ勾配をつけて形成される勾配部とを備え、
前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値は30度以上であり、
前記長さLは、前記勾配部と前記中央部との境界から前記包装袋の端部までの長さL5に対して、L/L5≧0.5であり、
前記後退部の上下方向の長さHは、0.5cm~2cmである、包装袋。
【請求項2】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられている、包装袋。
【請求項3】
請求項2に記載の包装袋であって、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値よりも小さい、包装袋。
【請求項4】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たす、包装袋。
【請求項5】
請求項
1に記載の包装袋であって、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されている、包装袋。
【請求項6】
請求項
5に記載の包装袋であって、
前記後退部は、前記固定部と干渉しないように当該固定部よりも下側に形成されている、包装袋。
【請求項7】
請求項1~請求項6
の何れかに記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備える、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物、固形物、あるいはこれらの混合物からなるレトルト食品等の内容物を充填し、電子レンジ等で加熱される包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品等の内容物を充填した包装袋であって、電子レンジ等で自立させた状態で加熱することができる包装袋が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の包装袋は、自立安定性を有していることから、店頭での陳列効果に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、左右方向の側部において前面フィルムと背面フィルムとが溶着されており、中央部下端を前後方向に大きく開くことにより底部を形成して自立させるタイプの包装袋では、自立安定性に改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、中央部下端を前後方向に大きくことにより底部を形成して自立させるタイプの包装袋において、自立安定性を改善させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の包装袋であって、前記包装袋は、底面部と、前面部と、背面部を備え、前記前面部と前記背面部は、互いに対向し、かつ前記底面部から立ち上げるように設けられ、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が互いに溶着されて前記袋状となり、前記包装袋は、前記包装袋の左右方向における中央部の下端である中央部下端では、前記左右方向における側部の下端である側部下端よりも前後方向に大きく開くように構成され、前記包装袋は、前記側部下端に後退部を備え、前記後退部は、平面視において、前記中央部下端の縁部に沿った基準線に対して上側に後退した部位であり、前記包装袋の下端での左右方向の長さをL1とし、前記後退部の左右方向の長さをLとすると、L/L1≧0.05である、包装袋が提供される。
【0008】
このような構成とすることにより、包装袋の下端において前後方向に広がっている部分が載置面と接触することとなり、自立安定性が改善される。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たす。
好ましくは、前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、前記後退部は、前記固定部より下側に形成されている。
好ましくは、前記後退部は、前記固定部と干渉しないように当該固定部よりも下側に形成されている。
好ましくは、前記包装袋の下端には、前記底面部と前記前面部、および前記底面部と前記背面部を溶着する下端溶着部が設けられており、前記下端溶着部は、前記左右方向の中央に直線状に形成される中央部と、前記中央部の両端から上方へ勾配をつけて形成される勾配部とを備え、前記中央部の上端に対する勾配部の角度θ1の値は30度以上である。
好ましくは、 前記長さLは、前記勾配部と前記中央部との境界から前記包装袋の端部までの長さL5に対して、L/L5≧0.5である。
好ましくは、 前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本発明の実施形態における包装袋1内に内容物が収容されて封止された状態の斜視図である。
図1Bは、開封された状態における包装袋1の斜視図である。
【
図3】
図3Aは、底面部2を構成する底部フィルム20aの斜視図である。
図3Bは、周壁フィルム20bの側面図である。
【
図4】
図4Aは、周壁フィルム20bの一部を切断し、切断箇所に底部フィルム20aを挿入した状態を示す図である。
図4Bは、周壁フィルム20bおよび底部フィルム20aを溶着して包装袋1を製造する様子を示す図である。
【
図5】
図5Aは、中央部下端を前後方向に大きく開いた状態での底面部2の拡大図である。
図5Bは、
図2における領域Dの拡大図である。
【
図6】
図6Aは、比較例としての包装袋Pを開封した状態で載置面Bに載置した様子を示す図である。
図6Bは、包装袋1を開封した状態で載置面Bに載置した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
<1.包装袋1の構成>
図1Aに示すように、本発明の実施形態における包装袋1は、可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の包装袋であり、電子レンジなどで加熱することができる。包装袋1は、底面部2と、底面部2から立ち上げるように設けられ、互いに対向する前面部3および背面部4を備える。底面部2は、前面部3および背面部4と溶着(ヒートシール)されている。前面部3および背面部4は、その左右方向の端部(以下、側端ともいう)において互いに溶着されており、包装袋1の周壁を形成する。前面部3には、合掌部10が設けられている。
【0013】
本開示では、
図2の上下左右を包装袋1の上下左右として説明する。具体的には、底面部2側を下側、前面部3(および背面部4)側を上側とする。また、前面部3を手前に配置したときの左右を、包装袋1の左右とする。さらに、前面部3側を前側、背面部4側を後側とする。
【0014】
図1Bに示すように、包装袋1は、上下方向における上側の切り取り部5と、下側の本体部6に分離可能に構成されている。切り取り部5と本体部6を分離することにより、開口7が形成される。これにより、本体部6は、包装袋1内に収容された内容物を食べる際の食器としても利用される。
【0015】
図2は、包装袋1を平面視において示す図である。平面視とは、包装袋1内に内容物が含まれていない状態で包装袋1を平たくし、その状態で包装袋1の前面部3に垂直な方向から見ることを意味する。
図2に示すように、包装袋1は、左右方向の中心線を基準として線対称となるように形成されている。
【0016】
包装袋1には、切り取り部5と本体部6との境界としての開封部9が設けられている。開封部9の側端には、切り欠け部8が形成されている。使用者は、切り欠け部8から包装袋1の背面部4と前面部3を開封部9に沿って切断することにより、切り取り部5と本体部6が分離され、包装袋1が開封される。ただし、開封部9の構成はこれに限定されるものではなく、開封シールを設けてもよいし、ハーフカットを施してもよい。また、単にハサミで切り取る部位を印刷することにより、開封部9を構成してもよい。
【0017】
包装袋1は、フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部10を備える。合掌部10は、切り取り部5に設けることが好ましいが、本体部6に設けてもよい。
【0018】
包装袋1には、蒸気抜きシール部11が形成されている。蒸気抜きシール部11は、合掌部10に設けられている。蒸気抜きシール部11は、他の溶着部よりも溶着強度が低い溶着部である。蒸気抜きシール部11では、包装袋1を加熱することにより内部に発生した蒸気によって包装袋1内の内圧が上昇すると、それに伴って蒸気流路が形成される。包装袋1内の蒸気は、蒸気抜きシール部11から外部へ排出される。
【0019】
切り取り部5の上下方向の長さH1は、たとえば6cm~10cmとすることができる。本体部6の上下方向の長さH2は、たとえば6cm~14cmであり、12cm以下が好ましく、10cm以下がさらに好ましい。これよりも大きくしすぎると、内容物を取り出すのが難しくなる。H1は、具体的には例えば、6、7、8、9、10(単位:cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。H2は、具体的には例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14(単位:cm)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
さらに、長さH2は、底部フィルム20aの中央線Eから下端までの長さH3よりも長いことが好ましく、H3より2cm以上長いことがさらに好ましい。H2-H3の値は、例えば2~8cmであり、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。H2-H3の値が2cm未満の場合には、包装袋1を開封した際の周壁の高さが低くなるため、内容物の量が制限されてしまう。
【0021】
包装袋1の側端には、前面部3と背面部4を溶着する側端溶着部12が設けられている。これにより、前面部3と背面部4は、前後方向に固定されている。さらに、包装袋1の下端には、底面部2と前面部3、および底面部2と背面部4を溶着する下端溶着部13が設けられている。なお、
図1Aに示すように、内部に内容物を収容した場合には、包装袋1の上端に上端溶着部30が設けられ、包装袋1が封止される。
【0022】
下端溶着部13は、中央線Eより下側の領域であって、包装袋1の側端および下端(
図2において、1点鎖線で囲まれた領域)において、底面部2と前面部3、および底面部2と背面部4を溶着している。
【0023】
図3Aに示すように、包装袋1は、中央線EにおいてV字形に折り曲げられた底部フィルム20aが、前面部3と背面部4との間に挿入されて製造されている。ここで、底部フィルム20aの中央線Eから下端までの長さH3は、3.0cm~6.0cmが好ましく、4.0cm以上がさらに好ましい。より具体的には、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば4.5cmとすることができる。上述したように、本体部6は、食器としても使用するため、この程度の大きさがあるのが好ましい。
【0024】
底部フィルム20aの両端には、半円状の切り欠けRが形成されている。なお、切り欠けRの形状は半円に限られず、例えば三角形状の切り欠けとしてもよい。切り欠けRは、包装袋1の底面部2における前後方向の広がりを制限しないように、側端溶着部12内に収まることが望ましい。
【0025】
底部フィルム20aの中央線Eから切り欠けRの下端までの長さr1は、1.0cm~5.0cmが好ましく、より具体的には、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば3.5cmとすることができる。
【0026】
切り欠けRの直径は、0.5cm~4.0cmが好ましく、より具体的には、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば1.5cmとすることができる。
【0027】
以下、
図3B~
図4Bを参照し、包装袋1の製造手順を簡潔に説明する。まず、
図3Bに示すように、1枚の周壁フィルム20bの端部を重ね合わせて溶着することで合掌部10を形成し、残りの部分で環Cを形成する。
【0028】
続いて、
図4Aに示すように、環Cの一端を切断し、V字形に折り曲げられた底部フィルム20aを挿入する。続いて、
図4Bに示すように、環Cの他端を切除するとともに底部フィルム20aおよび周壁フィルム20bを溶着することにより、包装袋1が製造される。
【0029】
ここで、底部フィルム20aおよび周壁フィルム20bは、基材層とシーラント層を有する積層フィルムであることが好ましく、基材層とシーラント層の間に接着層、印刷層を備えることがさらに好ましい。
【0030】
基材層は、包装袋1の外表面に露出するように配置され、シーラント層は、包装袋1の内表面に露出するように配置される。シーラント層同士が溶着(ヒートシール)されることによって、溶着部が形成される。
【0031】
基材層は、強度に優れて高い耐衝撃性を有する素材により形成されている。基材層としては、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリエステル等が用いられる。より具体的には、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、シリカ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、またはポリプロピレン/エチレンービニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム等を用いることができる。基材層を構成するフィルムとしては、MD方向(製造時においてフィルムが流れる方向)の直線カット性を有するものが好ましい。
【0032】
接着層は、基材層とシーラント層を互いに積層するように接着するための層である。接着方法として例えばポリエチレン等を接着層として用いた押し出しラミネートでもいいし、接着材としてポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤等を用いたドライラミネートでもよい。
【0033】
シーラント層は、溶着性に優れた樹脂で形成可能である。シーラント層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂で形成することができ、より具体的には、無延伸ポリプロピレンや直鎖状低密度ポリエチレンを用いることができる。シーラント層を構成するフィルムとしては、MD方向の直線カット性を有するものが好ましい。
【0034】
一例として、本実施形態では、基材層:延伸ナイロン(25μm)/印刷層/接着層(ドライラミネート)/シーラント層:LLDPE(60μm)といった構成となっている。なお、基材層とシーラント層との間には、中間層を設けてもよい。中間層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレンープロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のフィルム、あるいはこれらにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルムないしは酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物の蒸着を施したフィルム、あるいはポリ塩化ビニリデン等のフィルムなどを用いることができる。
【0035】
図5Aに示すように、包装袋1は、左右方向における中央部の下端(以下、中央部下端ともいう)では、左右方向における側部の下端(以下、側部下端ともいう)よりも前後方向に大きく開くように構成されている。これは、底部フィルム20aに形成された切り欠けR(
図3A参照)において、前面部3と背面部4が直接溶着されることとなり、前面部3と背面部4を前後方向に固定する固定部15が構成されているためである。なお、中央部下端が前後方向に開くことにより、底面部2の中央線Eは包装袋1の下側に引っ張られる。
【0036】
図5Bに示すように、下端溶着部13は、1対の勾配部13aと、中央部13bを備える。勾配部13aは、包装袋1の側端から中央部下端に向けて、勾配をつけて(斜めに)溶着されている箇所である。このように、勾配部13aを設けることにより、中央線Eからの下端溶着部13までの距離が、側端から左右方向中央部に向かうにつれて徐々に大きくなる(W1<W2)。このような構成とすることにより、側部下端においてピンホールが発生することを防ぐことができる。
【0037】
中央部13bは、1対の勾配部13aの間に設けられ、直線状に形成されている。中央部13bを直線状に設けることにより、本体部6を食器として使用しやすくなる。
【0038】
勾配部13aの外側には、エアポケット14が設けられている。エアポケット14は三角形状に形成され、下端溶着部13における溶着で外部に排出しきれなかった空気が残留する空間である。エアポケット14を設けることにより、下端溶着部13内の残留空気がエアポケット14に集まることとなり、溶着の強度が向上する。
【0039】
包装袋1の側部下端には、後退部16が1対設けられている。後退部は、平面視において、包装袋1の中央部下端の縁部17に沿った基準線Sに対して上側に後退した部位である。
【0040】
本実施形態では、後退部16は、包装袋1の中央部下端の縁部17と、側端の縁部18とを結ぶ直線状に形成されているが、この形態に限定されることはない。たとえば、後退部16を円弧状に形成してもよいし、または、包装袋1の側部下端の角を切り取るように段差を形成することで、後退部16を形成してもよい。
【0041】
包装袋1の下端での左右方向の長さL1は、15~25cmが好ましく、18cm以上がさらに好ましい。より具体的には、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば20cmとすることができる。25cmより大きくしすぎると、電子レンジのターンテーブルに収まらなくなる可能性がある。ただし、フラットタイプの電子レンジ向けの包装袋であれば、この限りではない。
【0042】
勾配部13aの左右方向の長さL2は、3cm~6cmが好ましく、より具体的には、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば4cmとすることができる。これよりも小さくしすぎると、中央部下端を前後方向に完全に開くのが難しくなる。
【0043】
中央部13bの左右方向の長さL3は、5cm~15cmが好ましく、8cm以上がさらに好ましい。より具体的には、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば10cmとすることができる。このように、L3の値を設定することにより、底面部2が前後方向に広がった際に、前面部3と背面部4が前後方向の距離が大きくなり、開口7を大きくすることができる。
【0044】
包装袋1の内側における左右方向の長さL4は、10cm~23cmが好ましく、より具体的には、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、例えば18cmとすることができる。
【0045】
中央線Eから中央部13bの上端までの長さW2は、2cm~5cmが好ましく、より具体的には、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば4.0cmとすることができる。なお、長さW2は、勾配部13aの左右方向の長さL2と同じ長さとするのがより好ましい。
【0046】
なお、中央部13bの左右方向の長さL3は、中央線Eから中央部13bの上端までの長さW2に対して、2≦L3/W2≦3であることが好ましく、より具体的には、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0のいずれかの値、または、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内とすることが好ましい。このようにすることで、底面部2を前後方向に広げた際に、載置面に接する底面を広く設けることができる。
【0047】
さらに、中央線Eから中央部13bの上端までの長さW2は、勾配部13aの左右方向の長さL2に対して、0.5≦W2/L2≦1.7であることが好ましく、より具体的には、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7のいずれかの値、または、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは、0.8≦W2/L2≦1.2であり、さらに好ましくは、0.9≦W2/L2≦1.1である。W2/L2が小さいと、開封時の開口7において、前面部3と背面部4が近くなりやすくなり食器として利用する際の利便性が低下する。一方、W2/L2が大きいと、底面部2を前後方向に広げた際に、勾配部13aよりも内側で折り目が発生し、内容物の取り出しに支障をきたしてしまう。
【0048】
後退部16の左右方向の長さLは、包装袋1の下端での左右方向の長さをL1に対して、L/L1≧0.05であることが望ましい。好ましくは、0.4≧L/L1≧0.05であることが望ましく、より具体的にはL/L1の値は、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
また、長さLは、勾配部13aと中央部13bの境界13cから包装袋1の端部までの長さL5に対して、L/L5≧0.5であることが望ましい。好ましくは、1.0≧L/L5≧0.5であることが望ましく、より具体的にはL/L5の値は、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。このように、後退部16の左右方向の長さを確保しておくことにより、包装袋1を食器として使用する際に内容物が少なくなった場合、後退部16が上方へ浮き上がることで包装袋1の自立が不安定になることを抑止することが可能となる。
【0050】
後退部16の上下方向の長さHは、0.5cm~2cm以下が好ましく、より具体的には、0.5、1.0、1.5、2.0(単位:cm)のいずれかの値であり、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば1cmとすることができる。ここで、後退部16は、固定部15よりも下側に形成されていることが好ましい。このように固定部15と干渉することなく後退部16を形成することにより、前面部3と背面部4を前後方向に確実に固定することが可能となる。
【0051】
中央線Eから固定部15の上端までの高さH4は、中央線Eから下端までの長さH3に対して、H4/H3≧0.2であることが望ましい。好ましくは、0.5≧H4/H3≧0.2であることが望ましく、より具体的にはH4/H3の値は、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。このように、中央線Eから固定部15までの高さH4を確保することにより、開口7を前後方向に確実に開きつづけておくことが可能となる。
【0052】
中央部13bの上端に対する勾配部13aの角度θ1の値は、30度~60度とすることが好ましく、40度~50度とすることがさらに好ましい。より具体的には、30、35、40、45、50、55、60(単位:度)のいずれかの値であり、またここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、より好ましくは45度とすることができる。このように、勾配部13aの角度θ1を30度よりも大きくすることにより、後退部16の近傍領域N2間における前後方向の幅Wnを確保することができ、包装袋1の底面を大きく確保できるため、包装袋1の自立安定性が向上する(
図5A参照)。同時に、開封部9を前後方向に広く開口した状態にできるため、食器として利用する際の利便性が向上する。
【0053】
基準線Sに対する後退部16の角度θ2の値は、5度~30度とすることが好ましく、より具体的には、5、10、15、20、25、30(単位:度)のいずれかの値であり、またここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、より好ましくは20度とすることができる。ここで、角度θ2を角度θ1よりも小さくすることにより、下端溶着部13においてエアポケット14の領域を確保することができ、下端溶着部13における溶着が確実となる。
【0054】
なお、底部フィルム20aは、温度上昇に伴って引張弾性率が低下するものが好ましい。この場合、包装袋1を加熱した際にフィルムが軟化して包装袋1の中央部下端が前後方向に開きやすい。ここで、底面部2を構成するフィルムの23.5℃及び100℃でのTD方向(包装袋1の前後方向に対応)の引張弾性率をそれぞれM1,M2とする。引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して引張試験を行うことによって求めることができる。引張の試験速度は、50mm/minとし、試験用のダンベル形状は5号形とする。
【0055】
M1は、600~1400MPaが好ましく、800~1200MPaがさらに好ましい。M1は、具体的には例えば、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0056】
M2は、200~600MPaが好ましく、300~500MPaがさらに好ましい。M2は、具体的には例えば、200、250、300、350、400、450、500、550、600MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0057】
M1/M2の値は、例えば、1.2~4であり、1.5~3が好ましい。この値は、具体的には例えば、1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0058】
周壁フィルム20bは、底部フィルム20aと同じ物性を有するものを用いてもよく、異なる物性を有するものを用いてもよい。
【0059】
<2.包装袋1の使用態様>
図5Aおよび
図5Bを参照し、包装袋1の使用態様を説明する。
図5Aには、比較例として、側部下端C1およびC2に後退部16を備えない包装袋Pが示されている。
図5Aに示すように、後退部16を備えない包装袋Pの場合、開封した状態で載置面Bに載置すると、中央部下端において載置面Bと接触していない非接触領域Mが発生する。
【0060】
すなわち、包装袋Pを開封して中央部下端を前後方向に開くと、本体部のフィルム(
図6Aにおいてその高さをHpで示す)が左右方向の中央部では傾斜することとなる。そのため、開口中央部Fに斜め上方に引っ張られる形となり、中央部下端が上に持ち上げられる。しかし、包装袋Pの側部下端C1は、載置面Bと接触したままであるため、中央部下端に非接触領域Mが発生する。
【0061】
ここで、載置面Bと接触している側部下端C1およびC2では、前面部と背面部が前後方向に固定されている。そのため、包装袋Pは、前後方向において、載置面Bに対して側部下端C1およびC2における2点で支持されることとなるため、前後のがたつきが発生する。特に、食事がすすんで内容物が減少してきた場合に、がたつきが顕著になる。
【0062】
これに対して、
図6Bに示すように、本実施形態における包装袋1では、側部下端に後退部16を備えているため、中央部下端を前後方向に開いた状態で載置面Bに載置すると、後退部16の近傍領域N1およびN2が載置面Bと接触する。
【0063】
ここで、近傍領域N1およびN2においては、前面部3と背面部4とは前後方向に開いている。そのため、包装袋Pは、前後方向において、載置面Bに対して近傍領域N1およびN2における4点で支持されることとなり、包装袋1の自立安定性が改善される。
【0064】
<3.他の実施形態>
以上、実施形態について説明してきたが、本開示における技術的思想は、以下の態様においても採用することができる。
【0065】
・上記実施形態では、固定部15は、底面部2に形成された半円状の切り欠きRで構成されているが、この形態に限定されることはない。たとえば、接着剤を用いて底部フィルムの対向する面同士を接着することや、ステープラー等の係止手段によって前面部3と背面部4とを前後方向に固定してもよい。
・上記実施形態では、底面部2はV字形に折り曲げられたフィルムで構成されているが、この形態に限定されることはなく、たとえばW字形に折り曲げられたフィルムで構成されていてもよい。
・包装袋1は、蒸気抜きシール部11を備えていてなくてもよい。その場合は、例えば袋を少しだけ開封して加熱の際に発生した蒸気を排出することができる
・包装袋1は、合掌部10を備えていなくてもよい。
・蒸気抜きシール部11は、合掌部10以外の部分に設けられていてもよい。
・包装袋1の製造方法は、上記実施形態で説明した方法に限定されることはない。
【符号の説明】
【0066】
1 :包装袋
2 :底面部
3 :前面部
4 :背面部
5 :切り取り部
6 :本体部
7 :開口
8 :切り欠け部
9 :開封部
10 :合掌部
11 :蒸気抜きシール部
12 :側端溶着部
13 :下端溶着部
13a:勾配部
14 :エアポケット
15 :固定部
16 :後退部
17 :中央部下端の縁部
18 :側端の縁部
20 :フィルム
20a:底部フィルム
20b:周壁フィルム
30 :上端溶着部