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特許7469657鋼製被処理物の表面処理システムおよびそれを用いた表面処理方法
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  • 特許-鋼製被処理物の表面処理システムおよびそれを用いた表面処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】鋼製被処理物の表面処理システムおよびそれを用いた表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/02 20060101AFI20240410BHJP
   C23C 8/22 20060101ALI20240410BHJP
   C23C 8/26 20060101ALI20240410BHJP
   C23C 8/32 20060101ALI20240410BHJP
   G01N 9/08 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
C23C8/02
C23C8/22
C23C8/26
C23C8/32
G01N9/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020127076
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024461
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】園部 勝
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-085663(JP,U)
【文献】国際公開第2020/071224(WO,A1)
【文献】特開2019-001121(JP,A)
【文献】特開2018-038970(JP,A)
【文献】特開2020-097769(JP,A)
【文献】特開昭64-023119(JP,A)
【文献】特開2009-040608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/02
C23C 8/22
C23C 8/26
C23C 8/32
G01N 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、洗浄液を用いて内部で鋼製被処理物を洗浄する洗浄室と、前記洗浄室において前記洗浄液の液面までの距離を測定する液面検知部と、を含む洗浄装置および、前記鋼製被処理物の表面処理を行なう表面処理室と、前記表面処理室に設けられて外部からのガスを導入するガス導入口と、前記表面処理室内の前記ガスを外部へ排出するガス排出口と、を含む表面処理装置から構成されており、前記洗浄装置は、前記液面検知部により測定した距離に関する情報を収集する受信部と、前記受信部で収集した前記情報に基づいて前記液面までの距離の時間変化を演算処理する演算部と、前記演算部で演算処理された結果より前記被処理物の荷姿の状態を判定する判定部と、をさらに含んでいることを特徴とする鋼製被処理物の表面処理システム。
【請求項2】
前記液面検知部は、赤外線,超音波,LED,レーザ,フロートのいずれかを用いて前記液面の変化を検知する液面検知機器であることを特徴とする請求項1に記載の鋼製被処理物の表面処理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鋼製被処理物の表面処理システムを用いた表面処理方法であって、前記洗浄装置にて前記鋼製被処理物の荷姿の情報を取得する第1工程と、前記第1工程で取得された前記鋼製被処理物の荷姿の情報を前記表面処理装置へ送る第2工程と、前記第2工程で送られて来た前記鋼製被処理物の荷姿の情報に基づいて前記鋼製被処理物に表面処理を行う第3工程と、を有することを特徴とする鋼製被処理物の表面処理方法。
【請求項4】
前記表面処理は、浸炭処理,窒化処理,浸炭窒化処理のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の鋼製被処理物の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製の被処理物の表面に対して浸炭処理等の表面処理を行うシステムおよび同システムを用いた表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な鋼製部品(鋼製の被処理物)は、鍛造後または鋳造後に被処理物の表面に付着した油脂等の汚れを除去するために洗浄を行なう。その後に、被処理物の表面硬さを上げるために浸炭処理や窒化処理など各種の表面処理を行う(特許文献1および2参照)。
【0003】
鋼製の被処理物に対して表面処理を行う場合、専用の処理室内に炭化水素系ガスやアンモニアガス等の反応性ガスを導入して行ない、処理室内には反応性ガスを外部から導入する導入口と処理室内のガスを外部へ排出する排出口が設けられている。
【0004】
表面処理時において、処理室内に設置された被処理物と反応性ガスの接触状態によって各被処理物の表面処理の効率が大きく変化する。言い換えると、処理室内に設置された被処理物の大きさ,個数,積載形態等により反応性ガスと被処理物の間の接触状態が大きく左右されるので、結果として個々の被処理物間で表面処理の効果にバラつきが生じる。
【0005】
また、処理室内における被処理物の積載形態は、前工程の洗浄工程における被処理物がそのまま流用される場合が多く、洗浄工程における被処理物の大きさや個数を把握することで被処理物の積載形態は決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-112877号公報
【文献】特開2015-4111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、被処理物の積載形態(荷姿)が変化しても、表面処理時において処理室内の反応性ガスの流れはほとんど変化しない。そのため、反応性ガスの流路沿いにある被処理物は表面処理の効果が大きく、反応性ガスがほとんど通過しない場所に置かれた被処理物は必然的に表面処理の効果も小さくなる。つまり、被処理物の荷姿によって表面処理の効果にバラつきが生じる。
【0008】
そこで、本発明は、洗浄装置等の処理室内において被処理物の大きさや数量などの具体的な積載態様(荷姿)を正確に測定することで、後工程である表面処理時の処理効果のバラつきが低減できる表面処理システムおよびそれを用いた表面処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明である鋼製被処理物の表面処理システムは、大きく分けて洗浄装置と表面処理装置から構成される。洗浄装置は、少なくとも、内部で鋼製の被処理物を洗浄する洗浄室と、この洗浄室における液面までの距離を測定する液面検知部と、を備えている。また、表面処理装置は、鋼製の被処理物の表面処理を行なう表面処理室と、この表面処理室に設けられて外部からガスを導入するガス導入口と、表面処理室内のガスを外部へ排出するガス排出口と、を備えている。
【0010】
洗浄装置は、液面検知部により測定した距離に関する情報を収集する受信部と、受信部で収集した情報に基づいて液面までの距離の時間変化を演算処理する演算部と、演算部で演算処理された結果より被処理物の荷姿の状態を判定する判定部と、をさらに設けることができる。この液面検知部は、赤外線,超音波,LED,レーザ,フロートのいずれかを用いて液面の変化を検知する液面検知機器とする。
【0011】
次に、この鋼製被処理物の表面処理システムを用いた表面処理方法の発明については、前述の洗浄装置にて鋼製被処理物の具体的な荷姿の形態に関する情報を取得する第1工程と、第1工程で取得された鋼製被処理物の荷姿の情報を前述の表面処理装置へ送る第2工程と、第2工程で送られて来た鋼製被処理物の荷姿の情報に基づいて鋼製被処理物に表面処理を行う第3工程と、を有する表面処理方法とする。この表面処理については、浸炭処理,窒化処理,浸炭窒化処理のいずれかの処理形態を選択できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鋼製被処理物の表面処理システムは、例えば洗浄装置の洗浄室における洗浄液の液面変化を所定時間ごとに液面センサ等で計測し、液面の時間変化を演算処置(算出)する。算出された液面の時間変化から洗浄室内における高さ方向の断面変化を正確に把握し、鋼製被処理物の設置態様を推測できる。その結果を利用して、後工程である表面処理における鋼製被処理物間の表面処理効果のばらつきを抑制できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の表面処理システムを構成する洗浄装置10の正面図である
図2図1に示す洗浄装置10のX-X断面図である
図3図1に示す洗浄装置10に付帯する制御盤の操作画面の一例である。
図4図1に示す洗浄装置10に付帯する制御盤の操作画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明である表面処理システムの形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の表面処理システムの一部を構成する真空脱脂洗浄装置10の正面図(図2のA矢視図)、図2図1に示す真空脱脂洗浄装置10のX-X線断面図である。図1および2に示す真空脱脂洗浄装置10は、多数の被処理物を内部で洗浄する洗浄室1、その洗浄室1内へ洗浄液を供給または排出する配管2A,2B、洗浄室1全体を下方から支える複数の脚部3,3、図示しない真空ポンプと接続して洗浄室2の内部を減圧雰囲気にする吸引配管4A,4Bおよび洗浄室1内の洗浄液の液面を検知する液面検知部5を備えている。
【0015】
液面検知部5は、洗浄室1内の洗浄液の液面を検知して、液面検知部5と液面までの距離を瞬時に測定することで洗浄室1内の洗浄液の充填量を算出できる。また、液面検知部5は洗浄室1の外部に設置される図示しない受信部,演算部,判定部に有線または無線による電気通信手段を介して接続して、これら一式で被処理物の荷姿に関する情報を測定できるシステムを構築することもできる。
【0016】
液面検知部5が液面センサである場合には、洗浄室1へ供給される洗浄液の液面とセンサ(液面検知部5)間の距離を測定できる。液面からセンサ(液面検知部5)間の距離の測定については、0.1秒毎や10秒毎など所定の時間ごとに液面までの距離を測定できる。液面検知部5により測定した液面までの距離に関する情報(データ)は、有線または無線により前述の受信部に一旦送られて、そこで測定結果が収集される。
【0017】
受信部に送られた測定距離の情報は、収集された距離に関する情報の時間変化(単位時間当たりの増加量)として前述の演算部によって演算処理される。演算部で演算処理された演算結果から洗浄室1における被処理物の荷姿の状態を前述の判定部にて判定(判別)する。
【0018】
次に、図1に示す真空脱脂洗浄装置10の付帯設備について図面を用いて説明する。本発明の表面処理システムの一部を構成する真空脱脂洗浄装置には、被処理物(ワーク)に関する情報を取得し、その情報を解析することで次の表面処理工程で活用する機能を有した設備が備わっている。図1に示す真空脱脂洗浄装置10に付帯する制御盤における操作画面の一例を図3および図4に示す。
【0019】
図3に示す操作画面20は、図1に示す真空脱脂洗浄装置10に取り付けられたCCDカメラ等の撮像センサから取得した被処理物に関する種々の情報を取得した画面例である。同図に示す画像21は、図1に示す真空脱脂洗浄装置10の洗浄室1内に充填される洗浄液および使用後の洗浄液や熱媒体油の循環状態をモニターしたものである。同図に示す画像22は、図1に示す真空脱脂洗浄装置10の洗浄室1上部に設置された撮像センサで被処理物全体を撮影した状態を表している。この撮像センサで撮像した画像から被処理物の縦列数,横列数,段数,個数,高さを専用のソフトウェアにより分析、計算することができる。
【0020】
同図の画像23は、画像22によって分析した被処理物に関する情報から計算した被処理物全体の重量、被処理物全体の表面積や表面積比率および体積比率を示す画像である。同図の画像24は、画像23で算出された被処理物全体の情報から図1に示す真空脱脂洗浄装置10の洗浄室1内における空荷時および満載時の洗浄液の給液時間等を示すものである。
【0021】
図4に示す操作画面30は、前述の撮像センサに加えて、図1に示す真空脱脂洗浄装置10に取り付けられた液面検知部5から取得した被処理物に関する情報を示す画面である。画像31は、真空脱脂洗浄装置10の洗浄室1内の洗浄液の給液状況(供給状況)を示す。画像32は、洗浄室1内の洗浄液の給液状況の時間変化を示し、給液開始から給液終了までの給液時間ごとに給液速度を算出した結果を示している。
【0022】
画像33は、画像32の分析結果から導出された給液時間,給液速度,被処理物の推定高さ,推定体積,推定重量,カサ密度,最大縦断面積,装着段数などを算出したものである。画像34は、給液開始から給液終了までの洗浄室1内における底面から液面までの高さと被処理物の断面積の変化を示すものである。
【0023】
なお、本発明の荷姿測定装置を構成する液面検知部は、図1で示した液面センサのほかに赤外線,超音波,LED,レーザなど種々の方式を用いたセンサ以外にフロートなどを用いた測定機器の様に液面検知部と液面までの距離が即時に測定できる機器であれば、これらの機器に限定されない。
【符号の説明】
【0024】
1 洗浄室
2A,2B 配管
3 脚部
4A,4B 吸引配管
5 液面検知部
10 真空脱脂洗浄装置
20 被洗浄物情報のモニター画面
21~24 被洗浄物情報のモニター画面の画像
30 洗浄条件情報のモニター画面
31~34 洗浄条件情報のモニター画面の画像

図1
図2
図3
図4