(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 43/25 20060101AFI20240410BHJP
A47J 43/046 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A47J43/25
A47J43/046
(21)【出願番号】P 2020127889
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】温 岩
(72)【発明者】
【氏名】亀井 大雅
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-085139(JP,A)
【文献】特開平04-138116(JP,A)
【文献】特開平10-085140(JP,A)
【文献】実開平04-021349(JP,U)
【文献】特開昭58-203723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/00-44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターにより回転する調理具取付部と、
前記調理具取付部に装着される調理具と、
を具える調理器であって、
前記調理具は、前記調理具取付部に対して周方向に第1遊びを有して装着され
るものであって、
前記調理具は、上面におろし刃が複数形成された円板状のおろし刃プレートを有するおろしカッターであり、
前記おろし刃プレートの前記上面には、回転中心から径方向外側に向けて放射状に前記おろし刃が複数形成された複数のおろし刃列が形成され、隣り合う前記おろし刃列は、前記おろし刃が径方向に重ならない位置に形成されており、前記おろし刃プレートは、前記おろし刃列の回転方向上流側に近接し、上下に貫通するスリットが開設されている、
調理器。
【請求項2】
モーターにより回転する調理具取付部と、
前記調理具取付部に装着される調理具と、
を具える調理器であって、
前記調理具は、前記調理具取付部に対して径方向に第2遊びを有して装着され、前記調理具取付部に対して傾斜可能である、
調理器。
【請求項3】
前記調理具は、前記調理具取付部に対して傾斜したときに、前記調理具取付部と当接して所定角度以上傾斜することを阻止する擦れ部が形成されている、
請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記調理具は、上面におろし刃が複数形成された円板状のおろし刃プレートを有するおろしカッターである、
請求項
2又は請求項
3に記載の調理器。
【請求項5】
前記おろし刃プレートの前記上面は、回転中心から径方向外側に向けて高くなる勾配を有する、
請求項4に記載の調理器。
【請求項6】
前記おろし刃プレートの前記上面には、回転中心から径方向外側に向けて放射状に前記おろし刃が複数形成された複数のおろし刃列が形成されており、隣り合う前記おろし刃列は、前記おろし刃が径方向に重ならない位置に形成されている、
請求項4又は請求項5に記載の調理器。
【請求項7】
前記おろし刃プレートは、前記おろし刃列の回転方向上流側に近接し、上下に貫通するスリットが開設されている、
請求項6に記載の調理器。
【請求項8】
前記おろし刃プレートの周面には1又は複数のリブが下向きに形成されている、
請求項4乃至請求項7の何れかに記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードプロセッサーのように回転する調理具を具えた調理器に関するものであり、より具体的には、調理具がおろしカッターである調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フードプロセッサーのような調理器では、回転する調理具によって食材のみじん切り、おろし、つぶし、刻み、或いは、撹拌などの調理を行なっている。調理の種類は、調理具によって決定され、大根やにんじんなどの食材のおろし調理では、上面におろし刃が形成されたおろしカッターを回転させ、食材をおろし刃に当てて切削し、細かい状態にすりおろしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
おろしカッターは、調理具取付部に装着される。特許文献1では、調理具取付部は、ベルトやプーリーなどの減速機構を介してモーターと連繋している。減速機構を採用すると、装置構成の複雑化、大型化、また、高騒音に繋がるため、調理具取付部をモーターにより直接駆動、すなわち、ダイレクトドライブの調理器が求められている。しかしながら、ダイレクトドライブでは調理具取付部を高速回転できないため、おろしカッターの回転数も低くなってしまう。その結果、食材がおろしカッターの上にへばり付いて一体に回転してしまい、おろし調理が上手く行なわれないことがある。
【0005】
本発明の目的は、おろしカッターに食材がへばり付くことを防止できるフードプロセッサー等の調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る調理器は、
モーターにより回転する調理具取付部と、
前記調理具取付部に装着される調理具と、
を具える調理器であって、
前記調理具は、前記調理具取付部に対して周方向に第1遊びを有して装着される。
【0007】
また、本発明に係る調理器は、
モーターにより回転する調理具取付部と、
前記調理具取付部に装着される調理具と、
を具える調理器であって、
前記調理具は、前記調理具取付部に対して径方向に第2遊びを有して装着され、前記調理具取付部に対して傾斜可能である。
【0008】
前記調理具は、前記調理具取付部に対して傾斜したときに、前記調理具取付部と当接して所定角度以上傾斜することを阻止する擦れ部が形成されていることが望ましい。
【0009】
調理具は、上面におろし刃が複数形成された円板状のおろし刃プレートを有するおろしカッターとすることができる。
【0010】
前記おろし刃プレートの前記上面は、回転中心から径方向外側に向けて高くなる勾配を有することが望ましい。
【0011】
前記おろし刃プレートの前記上面には、回転中心から径方向外側に向けて放射状に前記おろし刃が複数形成された複数のおろし刃列が形成されており、隣り合う前記おろし刃列は、前記おろし刃が径方向に重ならない位置に形成することが望ましい。
【0012】
前記おろし刃プレートは、前記おろし刃列の回転方向上流側に近接し、上下に貫通するスリットが開設されていることが望ましい。
【0013】
前記おろし刃プレートの周面には1又は複数のリブが下向きに形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調理器によれば、調理具は、調理具取付部に周方向の第1遊びを有して装着される。従って、モーターを駆動して、調理具取付部が回転しても、最初は調理具は、調理具取付部に従動せず静止したままであり、第1遊び分だけ遅れて回転を始める。すなわち、調理具が回転を開始するときには、調理具取付部は既に一定速度以上で回転を始めているから、調理具が調理具取付部に従動回転する際に、調理具は、調理具取付部に当たって衝撃を受ける。その反動によって、調理具に載置された食材は、たとえ静止時に調理具にへばり付いていたとしても、調理具から剥がされる。このため、食材が調理具にへばり付いたまま一体に回転してしまうことを防止でき、調理を効率よく行なうことができる。また、モーターを停止させるときも、調理具は、調理具取付部よりも第1遊び分だけ遅れて停止するから、先に回転停止した調理具取付部に当たって衝撃を受ける。その反動により、食材は調理具から剥がされるから、調理具への食材のへばり付きを効果的に防止できる。
【0015】
また、本発明の調理器によれば、調理具は、調理具取付部に径方向の第2遊びを有して装着される。すなわち、調理具は、調理具取付部に対して傾動可能に支持される。従って、食材が調理具に偏って載った場合には、その荷重により調理具は傾動し、揺れながら回転する。これにより、調理具上の食材は調理具から剥がれやすくなり、調理具へのへばり付きを防止でき、調理を効率よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るフードプロセッサーの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1を線II-IIに沿って垂直に断面し、矢印方向に見た断面図である。
【
図3】
図3は、おろしカッターと回転軸の斜視図である。
【
図4】
図4は、おろしカッターを回転軸に装着した状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、おろしカッターを回転軸に装着した状態を斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、
図4の線VIII-VIIIに沿う断面図である。
【
図9】
図9は、
図4の拡大
図Cについて、おろしカッターが調理具取付部に従動している状態での取付凹みと取付リブの位置関係を示す説明図である。
【
図10】
図10は、
図4の線VI-VIに沿う断面図であって、
図4及び
図6の矢印X方向の荷重を受けておろしカッターが傾いた状態を示している。
【
図11】
図11は、
図4の線VII-VIIに沿う断面図であって、
図4及び
図7の矢印XI方向の荷重を受けておろしカッターが傾いた状態を示している。
【
図12】
図12は、隣り合うおろし刃列に形成されたおろし刃の径方向形成位置を示す断面図であって、食材をおろし調理している状態を示している。
【
図13】
図13は、スリットにより食材とおろし刃プレートに形成される水膜が破壊される状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の調理器について図面を参照しながら説明を行なう。なお、以下では、調理器としてフードプロセッサー10を例示し、調理具としておろしカッター60を挙げて説明を行なうが、調理具を回転させて食材の調理を行なう調理器であれば、フードプロセッサー10に限定されるものではない。また、調理具もおろしカッター60に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態によるフードプロセッサー10の全体構成を示す外観の斜視図、
図2は
図1を線II-IIに沿って断面し、矢印方向に見た断面図である。
【0019】
フードプロセッサー10は、概略構成として、
図1に示すように、本体20の上部に食材が投入される調理カップ30を載置して構成される。調理カップ30には、取っ手34が形成されており、上面は蓋体40で塞ぐことができる。
図2に示すように、本体20の内部には、モーター21が配備されており、モーター21の回転軸22は、本体20から上向きに突出している。回転軸22の先端には、一般的には樹脂製の軸カバー23が装着されており、軸カバー23には調理具取付部50が螺合等により着脱可能となっている。調理具取付部50は、本体20に調理カップ30を装着した状態で軸カバー23に取り付けられる。調理具取付部50には、同じく、本体20に調理カップ30を載置した状態で、調理具となるおろしカッター60が一体回転可能に装着される。図示では、モーター21による調理具取付部50の回転は、ダイレクトドライブであるが、減速機構を介して回転軸22と調理具取付部50を連繋しても構わない。
【0020】
本体20には、
図2に示すように、調理カップ30の取っ手34側にモーター21のスイッチ24が配備されており、スイッチ24は、調理カップ30の周面に内装された操作子33を、蓋体40の押圧により押し込んで操作される。モーター21はスイッチ24の操作により通電し、回転軸22を時計回りに回転させる。なお、モーター21の操作方法については本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
回転軸22は、上記のとおり、本体20から上向きに突出しており、先端には回転軸22と一体回転可能な軸カバー23が装着される。軸カバー23は、調理カップ30に設けられた筒状の軸通筒31を貫通する長さを有する。軸カバー23の外周には
図2に示すようにネジが切られており、おろしカッター60を装着するための調理具取付部50が螺合される。
【0022】
調理カップ30は、上面が開口し、内部に食材が投入されて調理を行なう容器である。図示の調理カップ30は、有底略円筒状の形態であり、中心には円筒状の軸通筒31が下面から上向きに突設されている。調理カップ30の上面開口は、蓋体40によって閉じられる。
【0023】
調理カップ30は、
図1に示すように、周面にやや厚みのある半円筒状の突出部32が縦方向に形成されており、突出部32の外周側には、ユーザーが掴む取っ手34が設けられている。突出部32の内部には、
図2に示すように、上記した操作子33が上向きに付勢された状態でスライド可能に配置されている。操作子33の上端は、塞ぐ蓋体40に形成された操作突起41と当接しており、取っ手34側の蓋体40を下方に押圧することで、操作突起41が操作子33を下方に押し込み、スイッチ24が操作される。
【0024】
調理カップ30内には、調理カップ30を予め本体20に載せた状態で、軸通筒31内から突出する軸カバー23に、調理具取付部50が装着される。調理具取付部50は、
図2に示すように軸カバー23に螺合するネジが内面に切られた内筒部51が形成されている。調理具取付部50は、
図2乃至
図8に示すように、内筒部51の上端から斜め下向きに拡径し、先端が下方に筒状に延びる傘部52を有する。傘部52は、調理カップ30の軸通筒31に被さっており、食材が軸通筒31に侵入することを阻止する。傘部52の下縁は、外周側に向けて突出したフランジ55が形成されている。
【0025】
調理具取付部50の傘部52は、筒状部分の周面に
図2乃至
図4に示すように、複数の取付リブ53が形成されている。取付リブ53は、おろしカッター60の取付凹み63と噛合し、おろしカッター60を調理具取付部50と一体に回転させるためのリブである。取付リブ53は、図示の実施形態では、縦長の突条であり、傘部52の周面に等間隔に形成することができる。取付リブ53の寸法は、
図3の丸囲み部拡大
図Aに示すように、幅がw、高さ(径方向)が傘部52の円筒外周からhであり、後述するおろし刃プレート61の取付凹み63に周方向及び/又は径方向に遊び(C1、C2:
図4の丸囲み部拡大
図C参照)をもって嵌まるようにしている。取付リブ53の数は、後述するおろしカッター60の取付凹み63と同数、又は、取付凹み63の数よりも少ない数、望ましくは約数とすることができる。取付リブ53の大きさ、数等の詳細は後述する。
【0026】
調理具取付部50には、調理具が装着される。本実施形態では、調理具はおろしカッター60である。
図2乃至
図8に示すように、おろしカッター60は、円板状のおろし刃プレート61の上面に複数のおろし刃66が形成されている。おろし刃プレート61は、回転することで、上面に載置された食材をおろし刃66に当てて切削し、細かい状態にすりおろす機能を有する。
【0027】
おろし刃プレート61の中央には、調理具取付部50の傘部52が貫通する取付孔62が開設されている。取付孔62の内面には、調理具取付部50の取付リブ53が嵌まる取付凹み63が複数形成されている。取付凹み63は、
図3の丸囲み部拡大
図Bに示すように、下方が斜めに広がった凹み(以下、誘導凹み65と称する)と、略中央よりも上側が平行な凹み(以下、支持凹み64)から形成することができる。
【0028】
支持凹み64は、
図3の丸囲み部拡大
図B、
図4の丸囲み部拡大
図Cに示すように、その幅Wが、取付リブ53の幅wよりも大きく形成されている。これらの差(W-w)はC1(以下、「第1遊び」と称する)である。なお、第1遊びC1の詳細は後述するが、丸囲み部拡大
図Cにおける支持凹み64と取付リブ53の左右の遊びの合計がC1である。
【0029】
誘導凹み65は、おろし刃プレート61を調理具取付部50に装着する際に、取付リブ53を支持凹み64に上手く案内するための凹みである。誘導凹み65は、支持凹み64の幅Wよりも幅広に形成することが望ましい。
【0030】
取付凹み63(支持凹み64と誘導凹み65)は、
図3の丸囲み部拡大
図Bに示す深さH(径方向:ただし、Hは取付リブ53の高さと同じ傘部52の円筒外周からの寸法である)が、丸囲み部拡大
図Aに示す取付リブ53の高さhよりも大きく形成されており、その差(H-h:
図4の丸囲み部C参照)はC2(以下「第2遊び」と称する)である。なお、第2遊びC2の詳細も後述するが、第2遊びC2により、おろしカッター60は、調理具取付部50に対して傾動可能に支持されることになる。これにより、後述するとおり、おろしカッター60は、揺れながら回転可能となり、食材のへばり付を防止するのであるが、おろしカッター60が所定角度以上傾かないように、後述する
図10、
図11に示すように、おろしカッター60が所定角度傾いたときに、おろしカッター60の取付孔62が、調理具取付部50の傘部52と擦れて、それ以上傾かないようにしている。たとえば、
図10では、取付リブ53の周面(とくに取付リブ53の上縁側と下縁側)が、取付凹み63と擦れる擦れ部(図中丸囲み部54)を構成し、また、
図11では、傘部52の下端にフランジ55を形成し、当該フランジ55が取付凹み63と擦れる擦れ部を構成している。
【0031】
おろしカッター60は、おろし刃プレート61が、図示の実施形態では、上面が回転中心となる取付孔62から径方向外側に向けて高くなる逆傘状の勾配としている。
【0032】
また、おろし刃プレート61は、上面に取付孔62から径方向外側に向けて放射状に複数のおろし刃66が形成されたおろし刃列67を有する構成とすることができる。
図4に示すように、隣り合うおろし刃列67,67aのおろし刃66,66aは、符号L1、L2に示すように、周方向に隣り合うおろし刃66,66aどうしが径方向に重ならないように消している。具体的には、
図12に示すように、径方向に隣り合うおろし刃66,66どうしの間隔pは、おろし刃66(66a)の幅Pと同じ間隔とし、且つ、隣り合うおろし刃列67,67aのおろし刃66,66aどうしが径方向で重ならないように形成している。
【0033】
おろし刃プレート61には、取付孔62から径方向外側に延びる複数のスリットを貫通開設することができる。スリットは、基本的にはすりおろされた食材を通過させて調理カップ30の底側に落とす役割をなす。スリットは、たとえば
図4に示すように、2種類68,68aとし、一方は、後述する
図13に拡大して示すように、おろし刃列67の回転方向上流側に近接して形成されるスリット68、他方は、おろし刃列67の略中間位置に形成されるスリット68aとすることができる。
【0034】
さらに、おろし刃プレート61の周面には、
図3、
図5等に示すように、下向きに複数の突起を形成している。これら突起は、掻出しリブ69であり、おろし調理を続けたときに、できたおろしを調理カップ30の下方に押し下げると共に、調理カップ30内のおろしが、調理カップ30の側面を伝って登ってくることを防止する。掻出しリブ69は、
図5に示すうように、おろしカッター60の回転方向側(時計回り)の先端が回転方向下流側に向くよう傾斜させることで、おろしを調理カップ30の底側に向けて効果的に押し下げることができる。
【0035】
然して、上記構成のフードプロセッサー10について、
図1及び
図2に示すように、本体20の上に調理カップ30を載せる。調理カップ30は、
図2に示すように、本体20から上向きに延びる軸カバー23が軸通筒31を貫通するようセットし、調理具取付部50を軸カバー23に螺合することで装着する。
【0036】
続いて、調理具取付部50におろしカッター60を装着する。おろしカッター60は、
図2乃至
図8に示すように、取付孔62を調理具取付部50の傘部52に貫通させ、取付凹み63を取付リブ53に嵌めることで装着することができる。すなわち、おろしカッター60の装着には、取付凹み63と取付リブ53を垂直方向に位置合わせする必要がある。これらの位置が合っていない場合には、おろしカッター60を調理具取付部50に当てた状態で水平面内で回転させればよいが、取付凹み63及び取付リブ53の数が少ないと、回転させる角度が大きくなってしまい、位置合わせに手間が掛かる。一方で、取付凹み63と取付リブ53を細かい間隔で多数配置することにより、回転角度を小さくすることができるが、フードプロセッサー10は、食材を調理する装置であるため、多数の突起や凹みがあると、洗浄に手間が掛かる。そこで、位置合わせのためのおろしカッター60の回転角度を小さくしつつ、突起や凹みを減らすことが求められる。
【0037】
そこで、本実施形態では、取付凹み63は、
図3の拡大
図Bに示すように、支持凹み64に取付リブ53を案内する幅広の誘導凹み65を設けている。誘導凹み65を設けたことで、幅広の誘導凹み65と取付リブ53の位置が合えば、おろしカッター60の自重により、誘導凹み65の傾斜に沿って取付リブ53が支持凹み64に案内され、取付リブ53が支持凹み64に嵌まる。他方、誘導凹み65と取付リブ53の位置が合っていない場合であっても、誘導凹み65の幅を広くしているから、これらの位置合わせのために、おろしカッター60の水平面内での回転角度を小さくでき、おろしカッター60を容易に調理具取付部50に装着できるようにしている。
【0038】
また、取付リブ53は、取付凹み63と同数とすることができるが、本実施形態では、取付リブ53は、取付凹み63の約数個とすることで、取付リブ53の数、すなわち突起数を減らすようにしている。図示の実施形態では、取付リブ53は60°毎に6個であるのに対し、取付凹み63は30°毎に12個設けている。取付凹み63を取付リブ53の倍数個設けたことで、おろしカッター60を調理具取付部50に装着する際に、おろしカッター60の水平面内での回転角度は、取付凹み63の間隔の半分以下、すなわち、本実施形態ではおろしカッター60を最大30°回転させるだけで、取付凹み63を取付リブ53に装着できる。なお、取付リブ53及び取付凹み63は、おろしカッター60の回転時バランスを保持する上で、少なくとも4個以上、すなわち、90°以下の間隔で設けることが望ましい。
【0039】
図2等に示すように、調理具取付部50におろしカッター60を装着した後、おろし調理すべき食材(図示せず)を調理カップ30に投入し、蓋体40を閉じる。そして、蓋体40を下方に押し込むことで、スイッチ24が操作されて、モーター21が回転する。モーター21の回転は、直接軸カバー23に伝達され、調理具取付部50を回転させる。
【0040】
おろしカッター60は、調理具取付部50の取付リブ53と取付凹み63の支持凹み64の内面が当たって、調理具取付部50と一体に回転する。おろしカッター60は、おろし刃プレート61の上面におろし刃66を多数形成しているため、食材がおろし刃66によって切削されず、おろし刃66に引っ掛かって、或いは、おろし刃プレート61に吸着し、おろし刃プレート61にへばり付いた状態で一体回転してしまうことがある。とくに、ダイレクトドライブを採用した場合、初期の回転数やトルクが小さいから、おろし刃プレート61にへばり付いた食材は振り落とされ難い。
【0041】
そこで、本実施形態では、
図2及び
図4(拡大
図C)に示すように、支持凹み64の幅Wを取付リブ53の幅wよりも大きくし、これらの差(W-w)だけ、おろしカッター60と調理具取付部50に周方向の第1遊びC1が形成されるようにしている。これにより、調理具取付部50が回転し始めたときに、最初はおろしカッター60は第1遊びC1があるから、調理具取付部50に従動せずに静止したままであり、調理具取付部50の回転(矢印R)によって、第1遊びC1がなくなり、
図9に示すように、支持凹み64が取付リブ53に当たるとおろしカッター60は調理具取付部50と一体に回転を始める。このとき、おろしカッター60は、取付リブ53が支持凹み64の内面(回転方向上流側)に当たって衝撃を受け、その反動により、おろし刃プレート61上の食材は、静止時にはたとえへばり付いていたとしても、おろし刃プレート61から剥がされる。これにより、食材を回転するおろし刃66により切削し、細かい状態にすりおろすことができる。第1遊びC1は、このように、おろしカッター60が衝撃を受け、食材が剥がれる程度の大きさに形成する。
【0042】
なお、第1遊びC1を設けたことで、モーター21を停止させるときにも、おろしカッター60は、調理具取付部50よりも第1遊びC1分だけ遅れて停止するから、先に回転停止している調理具取付部50の取付リブ53に支持凹み64の内面(回転方向下流側)が当たって衝撃を受ける。そして、その反動により、食材はおろし刃プレート61やおろし刃66から剥がされるから、おろしカッター60への食材やおろしのへばり付きを防止できる。
【0043】
また、本実施形態では、
図4の拡大
図Cに示すように、取付凹み63の深さHを、取付リブ53の高さhよりも大きくし、これらの差(H-h)だけ、おろしカッター60と調理具取付部50に径方向の第2遊びC2が形成されるようにしている。これにより、おろしカッター60は、調理具取付部50に対して、
図10及び
図11に示すように傾動可能となる。その結果、食材がおろし刃プレート61上で偏って配置され、
図4、
図10及び
図11に矢印X、XIで示す偏った荷重がかかったときに、その荷重によりおろしカッター60は荷重側が下側に移動するよう傾動し、揺れながら回転する(図中矢印F)。これにより、食材は、おろし刃プレート61から剥がれてへばり付きは解消され、剥がれた食材は分散して、重量バランスが整う。これにより、おろし刃66によるおろし調理を効率良く行なうことができる。なお、
図10、
図11に示すように、おろしカッター60が所定角度傾いたときには、
図10では、丸囲みで示すように、取付リブ53の周面が擦れ部54となって取付凹み63と擦れ、また、
図11では、傘部52の下端のフランジ55が擦れ部となって取付凹み63と擦れることで、それ以上おろしカッター60が傾くことは阻止されるから、食材がおろしカッター60の外周から脱落したり、おろしカッター60自体が調理具取付部50から脱落してしまうこともない。
【0044】
上記により、食材は、おろしカッター60のおろし刃66によって切削され、細かい状態にすりおろされる。おろし刃66は、
図4及び上記のとおり、おろし刃プレート61上に放射状に形成されておろし刃列67を構成している。本実施形態では、隣り合うおろし刃列67,67aのおろし刃66、66aは、
図4に符号L1、L2、また、おろし刃66,66aの径方向形成位置を示す説明
図12に示すように、おろし刃66,66の間隔をおろし刃66の幅Pと同じピッチpとなる間隔とし、且つ、隣り合うおろし刃列67,67aのおろし刃66,66どうしが径方向で重ならないように形成しているから、各おろし刃66,66が効率的に食材90(
図12)を切削することができ、効率を高めることができる。
【0045】
さらに、おろし刃プレート61上の食材は、おろしカッター60の回転により外周方向の遠心力を受けて調理カップ30の内面に付着してしまい、上手くおろし調理できないことがある。しかしながら、本実施形態では、おろし刃プレート61は、
図2等に示すように、上面が回転中心となる取付孔62から径方向外側に向けて高くなる逆傘状(すり鉢状)の勾配としている。これにより、食材に作用する径方向の力の一部がおろし刃プレート61の勾配に傾斜方向に作用することで、おろし刃66により切削させることができ、食材が調理カップ30に付着することを低減できる。
【0046】
そして、食材90がすりおろされたおろし91は、
図13に示すようにおろし刃プレート61のスリット68,68aを通過し、また、おろし刃プレート61の外周と調理カップ30との間から落下する。
【0047】
おろし刃プレート61には、径方向外側のスリット68,68aを貫通開設しているから、おろし91は、スリット68,68aを通過して、調理カップ30の底側に落ちる。本実施形態ででは、スリット68は、
図13に拡大して示すように、おろし刃列67の回転方向上流側に近接して形成している。食材90は、水分を含んでいるからおろし刃プレート61との間に水膜92が形成され、吸着していることがあるが、おろし刃66に向かう食材が、おろし刃列67の回転方向上流側に近接して形成されたスリット68上を通過することで、水膜92が破壊され、食材90が浮き上がるので、おろし刃66により効率良くおろし調理することができる。
【0048】
おろし刃プレート61のスリット68,68aを通過したおろし91は、おろし刃プレート61の裏面に付着したまま遠心力により外周側に向かう。また、おろし刃プレート61の外周と調理カップ30との間を通過したおろしは、調理カップ30の側面を伝って落下する。しかしながら、おろし調理を続けると、これらおろしが、調理カップ30の側面を伝って登ってくることがある。本実施形態では、おろし刃プレート61の外周に下向きの掻出しリブ69を形成しており、掻出しリブ69がおろしカッター60の回転により調理カップ30の内面に沿って移動し、付着したおろしを掻き出して下方に押し下げるから、おろしが調理カップ30の側面を伝って登ってくることを防止できる。
【0049】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0050】
たとえば、調理具は、おろしカッター60に限定されず、切削ブレードを有するみじん切り用調理具、へらを有する撹拌用調理具等であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 フードプロセッサー(調理器)
20 本体
21 モーター
22 回転軸
23 軸カバー
30 調理カップ
50 調理具取付部
52 傘部
53 取付リブ
54 擦れ部
55 フランジ(擦れ部)
60 おろし刃カッター(調理具)
61 おろし刃プレート
63 取付凹み
64 支持凹み
65 誘導凹み
66 おろし刃
67 おろし刃列
68 スリット
69 掻出しリブ