(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】2液硬化型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20240410BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240410BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/06
C09J175/08
(21)【出願番号】P 2020549493
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038406
(87)【国際公開番号】W WO2020067534
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018185940
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】木村 和資
(72)【発明者】
【氏名】山元 裕太郎
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135491(JP,A)
【文献】特表2013-527281(JP,A)
【文献】特開2006-291060(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006650(WO,A1)
【文献】特開2008-285582(JP,A)
【文献】国際公開第2006/115138(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0210132(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102272184(CN,A)
【文献】特開昭62-191076(JP,A)
【文献】特表2014-522426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液硬化型接着剤組成物であって、
ウレタンプレポリマー(a1)を含む主剤(A)と、
ポリオール化合物(b1)と、ポリアミン化合物(b2)と、を含む硬化剤(B)と、を有し、
前記ポリアミン化合物(b2)は、数平均分子量が500未満であり、分子内に、少なくとも2つのアミノ基と、少なくとも1つの芳香族基と、を有し、
前記2液硬化型接着剤組成物は、第三級アミン
の触媒を有しておらず、
前記ウレタンプレポリマー(a1)は、原料ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとを、前記ポリカーボネートポリオール中の水酸基に対する前記原料ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比を2.05以上として、前記ポリカーボネートポリオールのすべてが前記ウレタンプレポリマー(a1)の単量体単位となるよう反応させて得たものであり、
前記主剤(A)は、前記ウレタンプレポリマー(a1)のほか、前記ポリカーボネートポリオールと反応しなかった前記原料ポリイソシアネートの残部である残存ポリイソシアネート(a2)をさらに含み、
前記硬化剤(B)中の活性水素基に対する前記主剤(A)中のイソシアネート基の当量比が0.5~4であり、
可使時間が30秒~10分であることを特徴とする2液硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物(b1)中の活性水素基に対する前記ポリアミン化合物(b2)中の活性水素基の当量比は1.5~6である、請求項1に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は500以上である、請求項1又は2に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物(b1)の数平均分子量は500以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリオール化合物(b1)は、分子内に、ポリエチレングリコールの単量体単位及びポリプロピレングリコールの単量体単位の少なくとも一方を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
前記主剤(A)は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1から
5のいずれか1項に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
前記硬化剤(B)は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、可塑剤、及び数平均分子量が500未満の多価アルコール類からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1から
6のいずれか1項に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
前記2液硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物のJIS K6251に準拠した、引張強さは15MPa以上であり、切断時伸びは150%以上である、請求項1から
7のいずれか1項に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項9】
前記2液硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の引張弾性率は50MPa以上である、請求項1から
8のいずれか1項に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
前記主剤(A)と前記硬化剤(B)の質量比は3:7~7:3である、請求項1から
9のいずれか1項に記載の2液硬化型接着剤組成物。
【請求項11】
2液硬化型接着剤組成物であって、
ウレタンプレポリマー(a1)を含む主剤(A)と、
ポリオール化合物(b1)と、ポリアミン化合物(b2)と、を含む硬化剤(B)と、を有し、
前記ポリアミン化合物(b2)は、数平均分子量が500未満であり、分子内に、少なくとも2つのアミノ基と、少なくとも1つの芳香族基と、を有し、
前記2液硬化型接着剤組成物は、第三級アミン
の触媒を有しておらず、
前記ウレタンプレポリマー(a1)は、原料ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとを、前記ポリカーボネートポリオール中の水酸基に対する前記原料ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比であって、JIS K6251に準拠した、前記2液硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の引張強さが15MPa以上、切断時伸びが150%以上となるよう調整した当量比で、前記ポリカーボネートポリオールのすべてが前記ウレタンプレポリマー(a1)の単量体単位となるよう反応させて得たものであり、
前記主剤(A)は、前記ウレタンプレポリマー(a1)のほか、前記ポリカーボネートポリオールと反応しなかった前記原料ポリイソシアネートの残部である残存ポリイソシアネート(a2)をさらに含み、
前記硬化剤(B)中の活性水素基に対する前記主剤(A)中のイソシアネート基の当量比が0.5~4であり、
可使時間が30秒~10分であることを特徴とする2液硬化型接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主剤と硬化剤とを有する2液硬化型接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディなどの構造体では、異種材料からなる部品同士が、接着剤を用いて接合される場合がある。接着剤を用いて接合することで、部品同士の熱膨張係数の差が大きくても、歪みや反りの発生が抑制される。一方、このような用途で用いられる接着剤には、硬化した状態での、破断強度、破断伸度等の引張特性が良好であることが求められている。
【0003】
破断伸度に優れた接着剤組成物として、ウレタンプレポリマーを含む主剤と、硬化剤と、を備える2液硬化型の接着剤組成物が知られている。2液硬化型の接着剤組成物では、一般に、主剤に含まれるイソシアネート基と、硬化剤に含まれるポリオール中の水酸基との当量比が1付近になるよう、主剤と硬化剤の配合比が調整される。しかし、イソシアネート基と水酸基とが等量に近いと、ウレタンプレポリマーの硬化速度が非常に遅い。このため、有機金属化合物、第三級アミン等の触媒を用いて、硬化速度を速めることが試みられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記触媒を用いて接着剤組成物の硬化を早くさせると、発泡を生じる場合があり、それによって、硬化物の引張特性が低下するという問題を生じる場合がある。また、主剤と硬化剤の混合比が設定した値からずれることによって、硬化物の所定の物性が発現せず、破断強度、破断伸度等の引張特性が低下することもある。
【0006】
本発明は、発泡が抑えられ、破断強度及び破断伸度に優れた硬化物が得られるとともに、主剤と硬化剤の混合比が設定した値からずれたときの硬化物の破断強度及び破断伸度に対する影響が少ない2液硬化型接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、2液硬化型接着剤組成物であって、
ウレタンプレポリマー(a1)を含む主剤(A)と、
ポリオール化合物(b1)と、ポリアミン化合物(b2)と、を含む硬化剤(B)と、を有し、
前記ポリアミン化合物(b2)は、数平均分子量が500未満であり、分子内に、少なくとも2つのアミノ基と、少なくとも1つの芳香族基と、を有し、
前記2液硬化型接着剤組成物は、第三級アミンの触媒を有しておらず、
前記ウレタンプレポリマー(a1)は、原料ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとを、前記ポリカーボネートポリオール中の水酸基に対する前記原料ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比を2.05以上として、前記ポリカーボネートポリオールのすべてが前記ウレタンプレポリマー(a1)の単量体単位となるよう反応させて得たものであり、
前記主剤(A)は、前記ウレタンプレポリマー(a1)のほか、前記ポリカーボネートポリオールと反応しなかった前記原料ポリイソシアネートの残部である残存ポリイソシアネート(a2)をさらに含み、
前記硬化剤(B)中の活性水素基に対する前記主剤(A)中のイソシアネート基の当量比が0.5~4であり、
可使時間が30秒~10分であることを特徴とする。
【0008】
前記ポリオール化合物(b1)中の活性水素基に対する前記ポリアミン化合物(b2)中の活性水素基の当量比は1.5~6であることが好ましい。
【0009】
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は500以上であることが好ましい。
【0010】
前記ポリオール化合物(b1)の数平均分子量は500以上であることが好ましい。
【0011】
前記ポリオール化合物(b1)は、分子内に、ポリエチレングリコールの単量体単位及びポリプロピレングリコールの単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0013】
前記主剤(A)は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0014】
前記硬化剤(B)は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、可塑剤、及び数平均分子量が500未満の多価アルコール類からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0015】
前記2液硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物のJIS K6251に準拠した、引張強さは15MPa以上であり、切断時伸びは150%以上であることが好ましい。
【0016】
前記2液硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の引張弾性率は50MPa以上であることが好ましい。
【0017】
前記主剤(A)と前記硬化剤(B)の質量比は3:7~7:3であることが好ましく、より好ましくは4:6~6:4である。
【0018】
前記2液硬化型接着剤組成物は、可使時間が30秒~10分であることが好ましい。
【0019】
本発明の別の一態様は、2液硬化型接着剤組成物であって、
ウレタンプレポリマー(a1)を含む主剤(A)と、
ポリオール化合物(b1)と、ポリアミン化合物(b2)と、を含む硬化剤(B)と、を有し、
前記ポリアミン化合物(b2)は、数平均分子量が500未満であり、分子内に、少なくとも2つのアミノ基と、少なくとも1つの芳香族基と、を有し、
前記2液硬化型接着剤組成物は、第三級アミンの触媒を有しておらず、
前記ウレタンプレポリマー(a1)は、原料ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとを、前記ポリカーボネートポリオール中の水酸基に対する前記原料ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比であって、JIS K6251に準拠した、前記2液硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物の引張強さが15MPa以上、切断時伸びが150%以上となるよう調整した当量比で、前記ポリカーボネートポリオールのすべてが前記ウレタンプレポリマー(a1)の単量体単位となるよう反応させて得たものであり、
前記主剤(A)は、前記ウレタンプレポリマー(a1)のほか、前記ポリカーボネートポリオールと反応しなかった前記原料ポリイソシアネートの残部である残存ポリイソシアネート(a2)をさらに含み、
前記硬化剤(B)中の活性水素基に対する前記主剤(A)中のイソシアネート基の当量比が0.5~4であり、
可使時間が30秒~10分である、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の別の一態様は、2液硬化型接着剤組成物の製造方法であって、
ウレタンプレポリマー(a1)を含む主剤(A)を作製するステップと、
ポリオール化合物(b1)と、ポリアミン化合物(b2)と、を含む硬化剤(B)を作製するステップと、を有し、
前記主剤(A)を作製するステップでは、原料ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとを、前記ポリカーボネートポリオール中の水酸基に対する前記原料ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比を2.05以上として、前記ポリカーボネートポリオールのすべてが前記ウレタンプレポリマー(a1)の単量体単位となるよう反応させることにより前記ウレタンプレポリマー(a1)を作製し、
前記主剤(A)は、前記ウレタンプレポリマー(a1)のほか、前記ポリカーボネートポリオールと反応しなかった前記原料ポリイソシアネートの残部である残存ポリイソシアネート(a2)をさらに含み、
前記硬化剤(B)中の活性水素基に対する前記主剤(A)中のイソシアネート基の当量比が0.5~4であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記態様の2液硬化型接着剤組成物によれば、発泡が抑えられ、破断強度、破断伸度に優れた硬化物が得られるとともに、主剤と硬化剤の混合比が設定した値からずれたときの硬化物の破断強度、破断伸度に対する影響が少ない硬化物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)~(c)は、接着剤組成物の硬化反応を概念的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態の2液硬化型接着剤組成物について説明する。本実施形態には、後述する種々の実施形態が含まれる。
【0024】
(接着剤組成物)
本実施形態の2液硬化型接着剤組成物(以降、単に接着剤組成物ともいう)は、主剤(A)と、硬化剤(B)と、を有する。
【0025】
(主剤(A))
主剤(A)は、ウレタンプレポリマー(a1)を含む。
ウレタンプレポリマー(a1)は、原料ポリイソシアネートと、ポリカーボネートポリオールと、を反応させて得たものである。すなわち、ウレタンプレポリマー(a1)は、ポリイソシアネートの単量体単位と、ポリカーボネートポリオールの単量体単位と有している。この反応は、具体的に、ポリカーボネートポリオール中の水酸基に対する、原料ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(以降、インデックスともいう)を2.05以上として、ポリカーボネートポリオールのすべてがウレタンプレポリマー(a1)の単量体単位となるよう行われる。
【0026】
インデックスを2.05以上とすることで、破断強度に優れた硬化物、具体的には、破断強度が15MPa以上の硬化物を得ることができる。本明細書において、破断強度は、JIS K6251に準拠した、引張強さを意味する。
また、インデックスを2.05以上とし、イソシアネート基を水酸基に対して大きく過剰にしたことで、ポリカーボネートポリオールと異なる成分、具体的には、後述するポリオール化合物(b2)を、残存するイソシアネート基と十分に反応させることができる。これにより、破断伸度に優れた硬化物、具体的には、破断伸度が150%以上の硬化物を得ることができる。すなわち、インデックスを2.05以上とすることで、破断強度15MPa以上で、かつ、破断伸度が150%以上の硬化物を得ることができる。本明細書において、破断伸度は、JIS K6251に準拠した切断時伸びを意味する。
なお、本実施形態の接着剤組成物によれば、ポリイソシアネートが、ポリカーボネートポリオールに付加した後に、硬化剤(B)のそれぞれの活性水素基と反応したものと、ポリカーボネートポリオールと反応せず残存した後に、硬化剤(B)のそれぞれの活性水素基と反応したものとが形成され、性質の異なるポリマー相が混在したポリマーブレンドを得ることができる。このポリマーブレンドは、ウレタンプレポリマー(a1)を島(分散相)、残存したイソシアネート基と硬化剤(B)とが反応してなるポリマーを海(連続層)とする海島構造を有している。
【0027】
当量比は、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。一方で、当量比が大きすぎると、破断伸度が低くなりすぎる場合がある。このため、当量比は、12以下であることが好ましく、10以下であることが好ましい。
【0028】
原料ポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。原料ポリイソシアネートには、従来公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。
原料ポリイソシアネートに使用されるポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI))、MDI(例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI))、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0029】
このようなポリイソシアネートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートであるのが好ましく、MDIであるのがより好ましい。
【0030】
ポリカーボネートポリオールは、両末端に1級水酸基を有し、繰り返し単位中にカーボネート構造を有するポリオールであり、従来公知のポリカーボネートポリオールを、特に制限されることなく用いることができる。
【0031】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は500以上であることが好ましい。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が500未満であると、硬化物の破断伸度が低下し、硬化物が硬くなりすぎる場合がある。また、後述する当量比(NCO基/活性水素比)を調整しても、硬化物の引張弾性率(以降、単に弾性率ともいう)を調整することが難くなる。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量の上限値は、例えば、3000である。
【0032】
ウレタンプレポリマー(a1)の数平均分子量は、1000以上15000以下であることが好ましく、1000以上10000以下であることがより好ましい。
ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した数平均分子量(ポリスチレン換算)であり、測定にはテトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として用いるのが好ましい。
【0033】
主剤(A)は、ウレタンプレポリマー(a1)のほか、さらに、残存ポリイソシアネート(a2)を含む。
残存ポリイソシアネート(a2)は、ポリカーボネートポリオールと反応しなかった原料ポリイソシアネートの残部である。主剤(A)に、残存ポリイソシアネート(a1)が含まれていることで、速やかに硬化剤(B)との反応を行うことができる。これにより、硬化時間を短くできるとともに、残存ポリイソシアネート(a1)が水分と反応し発泡することを抑制できる。
【0034】
(硬化剤(B))
硬化剤(B)は、ポリオール化合物(b1)と、ポリアミン化合物(b2)と、を含む。
【0035】
硬化剤(B)にポリオール化合物(b1)が含まれていることで、硬化物の破断伸度を高めることができる。また、ポリオール化合物(b1)は、ポリアミン化合物(b2)と比べ、ポリイソシアネートとの反応がゆっくりと進行するため、硬化時間が短すぎず、作業性の向上に寄与する。
【0036】
ポリオール化合物(b1)は、分子内に水酸基を2個以上有するものであれば、特に限定されず、従来公知のポリオール化合物を用いることができる。ポリオール化合物の具体例としては、低分子多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0037】
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3-または1,4-)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;ソルビトールなどの糖類;等が挙げられる。
【0038】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類として例示した化合物から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0039】
同様に、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類と、多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
ここで、上記縮合系ポリエステルポリオールを形成する多塩基性カルボン酸としては、具体的には、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、他の低分子カルボン酸、オリゴマー酸、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコール(もしくはプロピレングリコール)との反応生成物などのヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
また、上記ラクトン系ポリオールとしては、具体的には、例えば、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを適当な重合開始剤で開環重合させたもので両末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0040】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール;ポリブタジエンジオール;水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素-炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;等が挙げられる。
【0041】
ポリオール化合物(b1)は、以上で例示した種々のポリオール化合物を1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリオール化合物(b1)は、ポリカーボネートポリオールを含んでいてもよい。
【0043】
ポリオール化合物(b1)の数平均分子量は500以上であることが好ましい。ポリオール化合物(b1)の数平均分子量が500未満であると、硬化物の破断伸度が低下し、硬化物が硬くなりすぎる場合がある。
【0044】
ポリオール化合物(b1)は、ポリエチレングリコール、及び、ポリプロピレングリコールの少なくとも一方を含むことが好ましい。また、ポリオール化合物(b1)は、1級水酸基を末端に有するものの全ポリオール化合物(b1)中の割合が50%以上であることが好ましい。
【0045】
ポリアミン化合物(b2)は、ポリイソシアネートとの反応速度が速いため、残存ポリイソシアネート(a2)との反応が速やかに進行する。また、ポリアミン化合物(b2)と残存ポリイソシアネート(a2)との反応によって発熱することで、続くポリオール化合物(b1)と残存ポリイソシアネート(a2)との反応が促進される、これにより、硬化時間が短くなり、可使時間を短くする効果が得られる。
【0046】
ポリアミン化合物(b2)は、分子内にアミノ基を2個以上有するものであれば、特に限定されず、従来公知のポリアミン化合物を用いることができる。
【0047】
ポリアミン化合物(b2)としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD、デュポン・ジャパン社製)などの脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジエチルメチルベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、トリメチレンビス(4-アミノベンゾアート)、ビス(4-アミノ-2,3-ジクロロフェニル)メタンなどの芳香族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン;3-ブトキシイソプロピルアミンなどの主鎖にエーテル結合を有するモノアミン;サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148に代表されるポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC、三菱ガス化学社製)、1-シクロヘキシルアミノ-3-アミノプロパン、3-アミノメチル-3,3,5-トリメチル-シクロヘキシルアミンなどの脂環式ポリアミン;ノルボルナンジアミン(NBDA、三井化学社製)などのノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5-ジメチル-2,5-ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン、ポリプロピレングリコール(PPG)を骨格に持つサンテクノケミカル社製のジェファーミンD230、ジェファーミンD400;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
ポリアミン化合物(b2)は、残存ポリイソシアネート(a2)との反応速度を速くする観点から、数平均分子量が500未満であり、1分子中に、少なくとも2つのアミノ基と、少なくとも1つの芳香族基と、を有していることが好ましい。
【0049】
ポリオール化合物(b1)中の水酸基に対するポリアミン化合物(b2)中のアミノ基の当量比(以降、アミノ基/水酸基比ともいう)は1.5~6であることが好ましい。これにより、接着剤組成物の可使時間をより適切な長さとすることができる。上記当量比は、好ましくは2~6である。
【0050】
本実施形態の接着剤組成物において、硬化剤(B)中の活性水素基に対する主剤(A)中のイソシアネート基の当量比(以下、NCO基/活性水素基比ともいう)は0.5~4である。活性水素基とは、ポリオール化合物(b1)中の水酸基、及び、ポリアミン化合物(b2)中のアミノ基を意味する。主剤(A)中のイソシアネート基とは、ウレタンプレポリマー(a1)及び残存ポリイソシアネート(a2)中のイソシアネート基を意味する。
上記NCO基/活性水素基比を0.5~4の範囲内で変化させると、硬化物の破断強度及び破断伸度を大きく変化させることなく、弾性率を調整することができる。このため、用途に応じて、NCO基/活性水素基比を調整し、目標とする弾性率を得ることができる。一方で、このようにNCO基/活性水素基比を変化させても、硬化物の破断強度及び破断伸度は大きく変化しない。具体的には、主剤(A)及び硬化剤(B)を設定した値(例えば1対1)の混合比(質量比)で混合して作製される硬化物の破断強度及び破断伸度に対して、破断強度及び破断伸度の変化率は±20%以内に抑えられる。このように、主剤(A)及び硬化剤(B)の混合比が設定した値からずれていても、硬化物の破断強度及び破断伸度が大きく変化することがないので、高い破断強度及び破断伸度を維持しつつ、弾性率を調整することができる。
NCO基/活性水素基比が4を超えると、硬化物の弾性率が高くなる一方で、破断伸度が小さくなりすぎ、硬化物が過度に硬くなる。NCO基/活性水素基比が0.5未満であると、硬化物の破断伸度が高くなる一方で、弾性率が小さくなりすぎ、硬化物が過度に軟らかくなる。
【0051】
主剤(A)と硬化剤(B)の質量比は3:7~7:3であることが好ましい。本実施形態の接着剤組成物によれば、主剤(A)と硬化剤(B)の混合比が、1:1に対して、例えばこのような範囲内でずれていても、上述したように、硬化物の破断強度及び破断伸度への影響が極めて少ない。
【0052】
以上説明した主剤(A)及び硬化剤(B)は、それぞれ、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、フィラー、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有することができる。
具体的に、主剤(A)は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
具体的に、硬化剤(B)は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、可塑剤、及び数平均分子量が500未満の多価アルコール類からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。数平均分子量が500未満の多価アルコール類として、例えば、上述した低分子多価アルコール類を用いることができる。
【0053】
接着剤組成物は、有機金属化合物、第三級アミン等の触媒を備えなくてもよい。すなわち、一実施形態によれば、接着剤組成物は、有機金属化合物、第三級アミン等の触媒を含まないことが好ましい。
【0054】
ここで、
図1を参照して、接着剤組成物の硬化反応について説明する。
図1は、接着剤組成物の硬化反応を概念的に説明する図であり、2液の混合時点から、硬化反応の進行に伴い、主剤及び硬化剤がほぼ相溶した(a)に示す状態から、ミクロ相分離のような(c)に示す状態のいずれかの状態で、接着剤組成物は硬化する。(a)の状態は、ほぼ透明に近く、事実上の相溶状態であるが、ウレタンハードセグメントを中核とした球晶、ナノレベルの粒子が生成した状態も含まれる(符号a1で示す)。(c)の状態は、海島構造と称される相分離状態を模式的に示したもので、結晶性ポリオールであるポリカーボネートポリオールが相分離してミクロンレベルの微粒子3まで成長した状態を模式的に示している。なお、(b)の状態は、(a)の状態と(c)の状態の中間的な状態を示す。本実施形態の接着剤組成物は、多くの場合は、(a)の状態(或いは(b)の状態)から、硬化の進行に伴い、(b)の状態或いは(c)の状態に至るが、混合直後から概ね同じ状態を保つ場合もある。なお、
図1(c)では、海島構造の連続相を符号5で、硬化物を符号1で示す。
【0055】
本実施形態の接着剤組成物によれば、発泡が抑えられ、破断強度及び破断伸度に優れた硬化物が得られるとともに、主剤と硬化剤の混合比が設定した値からずれたときの硬化物の破断強度及び破断伸度に対する影響が少ない。具体的に、引張特性に優れた硬化物として、破断強度が15MPa以上であり、破断伸度が150%以上である硬化物が得られる。このような引張特性は、破断伸度が、従来のポリウレタン系接着剤と同等でありながら、破断強度が、エポキシ樹脂系接着剤の破断強度と同等あるいはそれに準じる大きさである。また、本実施形態の接着剤組成物によれば、弾性率が50MPa以上である硬化物が得られる。以上の引張特性を備える硬化物は、例えば、自動車のボディ等の構造体の部品同士を接合するのに適している。
【0056】
破断強度は、好ましくは20MPa以上であり、より好ましくは25MPa以上である。破断強度の上限値は、特に制限されないが、例えば、100MPa程度である。
破断伸度は、好ましくは200%以上であり、より好ましくは250%以上である。破断伸度の上限値は、特に制限されないが、例えば、500%程度である。
弾性率は、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは100以上である。弾性率の上限値は、特に制限されないが、例えば、450MPa程度である。
【0057】
なお、弾性率は、ひずみε1、ε2に関して、ε1=0%、ε2=2.0%とした点を除き、JIS K7161に準拠して引張弾性率(MPa)として求めることができる。具体的には、弾性率は、これら2点のひずみに対応する応力(MPa)をそれぞれσ1、σ2としたときの応力の差(σ2-σ1)をひずみの差(ε2-ε1)で除した値である。
【0058】
本実施形態によれば、接着剤組成物の可使時間が30秒~10分となる。可使時間が10分以内であることで、作業性に優れ、発泡を抑制できる。可使時間が30秒以上であると、硬化時間が短すぎず、作業性に優れる。可使時間とは、主剤(A)と硬化剤(B)を混ぜ始めてから、ハンドリングできなくなるまでの時間を意味する。
可使時間は、好ましくは7分以内であり、より好ましくは5分以内である。
【0059】
本実施形態の接着剤組成物によれば、硬化物の流動開始温度は130℃以上、好ましくは150℃以上であり、耐熱性に優れた硬化物が得られる。流動開始温度はフローテスタを用いて測定される。
【0060】
本実施形態の接着剤組成物は、例えば、自動車のボディに制限されず、種々の構造体の部品同士の接合に用いられる。また、本実施形態の接着剤組成物は、接着剤として用いるほか、例えば、塗料、防水材、床材、エラストマー、人工皮革、スパンデックスなどとして用いることができる。
【0061】
(接着剤組成物の製造方法)
一実施形態の接着剤組成物の製造方法は、主剤(A)を作製するステップと、硬化剤(B)を作製するステップと、を備える。
【0062】
主剤(A)を作製するステップでは、原料ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとを、原料ポリイソシアネート中のイソシアネート基がポリカーボネートポリオール中の水酸基よりも多く、ポリカーボネートポリオールのすべてがウレタンプレポリマー(a1)の単量体単位となるよう反応させてウレタンプレポリマー(a1)を作製する。これにより、ウレタンプレポリマー(a1)及び残存ポリイソシアネート(a2)を含む主剤(A)が作製される。ここで、原料ポリイソシアネート、ポリカーボネートポリオール、ウレタンプレポリマー(a1)、残存ポリイソシアネート(a2)は、それぞれ、上記説明した、原料ポリイソシアネート、ポリカーボネートポリオール、ウレタンプレポリマー(a1)、残存ポリイソシアネート(a2)と同様に構成される。
【0063】
ウレタンプレポリマー(a1)を作製する際のインデックスは、2液硬化型接着剤組成物を硬化させた硬化物のJIS K6251に準拠した、引張強さが15MPa以上、切断時伸びが150%以上となるよう調整される。すなわち、インデックスは、2.05以上に調整される。
【0064】
硬化剤(B)を作製するステップでは、ポリオール化合物(b1)と、ポリアミン化合物(b2)と、を含む硬化剤(B)を作製する。このとき、硬化剤(B)中の活性水素基に対する主剤(A)中のイソシアネート基の当量比は0.5~4に調整される。ここで、ポリオール化合物(b1)、ポリアミン化合物(b2)は、上記説明した、ポリオール化合物(b1)、ポリアミン化合物(b2)と同様に構成される。
以上の製造方法を用いて、上記説明した接着剤組成物を作製することができる。
【0065】
(実験例)
本発明の効果を調べるために、表1及び表2に示した配合量に従って接着剤組成物を作製し、破断強度、破断伸度、可使時間、及び発泡性を測定した
【0066】
下記要領でウレタンプレポリマー1~4を作製し、表中に示した添加剤を加え、主剤を作製した。また、表中に示した原料を混合して硬化剤を作製した。
【0067】
<ウレタンプレポリマー1の合成>
ポリカーボネートジオール100gと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート75g(インデックス3.0)を、窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマー1を合成した。
【0068】
<ウレタンプレポリマー2の合成>
ポリカーボネートジオール100gと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート100g(インデックス4.0)を窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマー2を合成した。
【0069】
<ウレタンプレポリマー3の合成>
ポリカーボネートジオール100gと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート150g(インデックス6.0)を窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマー3を合成した。
【0070】
<ウレタンプレポリマー4の合成>
ポリカーボネートジオール100gと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50g(インデックス2.0)を窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマー4を合成した。
【0071】
以上のウレタンプレポリマー1~4の作製に用いたポリカーボネートジオール及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートには、下記に示すものを使用した。
・ポリカーボネートジオール:
デュラノールT5651(重量平均分子量1000)、旭化成社製
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート:
ミリオネートMT(分子量250)、東ソー社製
【0072】
表中、ウレタンプレポリマー1~4の値は、ウレタンプレポリマー(a1)及び残存ポリイソシアネート(a2)の合計量を表す。表中に示したウレタンプレポリマー1~4以外の原料には、下記に示すものを使用した。表中、原料の量は、質量部で示される。
・カーボンブラック:200MP、新日化カーボン社製
・炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム、スーパーS、丸尾カルシウム社製
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル、ジェイプラス社製
・ポリオール:グリセリンに、PO(1,2-プロピレンオキサイド)-EO(エチレンオキサイド)-PO(1,2-プロピレンオキサイド)の順にブロック付加させたポリオール、サニックスGL-3000、三洋化成社製
・ポリアミン:ジエチルメチルベンゼンジアミン、DETDA、三井化学ファイン社製
・炭酸カルシウム2:軽質炭酸カルシウム、カルファイン200、丸尾カルシウム社製
・シリカ:レオロシールQS-102、トクヤマ社製
【0073】
表中、「主剤(A):硬化剤(B)」は、主剤と硬化剤の質量比を意味し、主剤および硬化剤の質量の合計を2とする比で表す。
【0074】
作製した主剤及び硬化剤を、表中に示した当量比(NCO基/活性水素基比)で混合し、下記要領で、破断強度、破断伸度を測定し、下記の破断強度指数、破断伸度指数を求めるとともに、作業性、発泡性を評価した。
【0075】
<破断強度、破断伸度>
ダンベル状3号形試験片とし、JIS K6251に準拠して引張試験を行い、温度20℃、クロスヘッドスピード(引張速さ)200mm/分の条件で、引張強さ(破断強度)および切断時伸び(破断伸度)を測定した。破断伸度測定用の標線は20mmの間隔で付けた。この結果、破断強度が15MPa以上であった場合を破断強度に優れ、破断伸度が150%以上であった場合を破断伸度に優れると評価した。
【0076】
<破断強度指数、破断伸度指数>
実施例3~5、比較例1~3の破断強度、破断伸度を、それぞれ、主剤(A)と硬化剤(B)を等量で混合した場合(実施例3、比較例1)を100とする指数で表した。指数は、実施例3、比較例1の破断強度、破断伸度に対する、実施例4,5、比較例2,3の破断強度、破断伸度の変化率(%)に100を加えて計算した。この結果、指数が80~120の間にある場合を、主剤(A)及び硬化剤(B)の混合比が1:1である場合の破断強度、破断伸度に対して、破断強度、破断伸度の変化率が±20%以内に抑えられている、すなわち、主剤(A)と硬化剤(B)の混合比が設定した値からずれていても、硬化物の破断強度、破断伸度への影響が極めて少ないと評価した。
【0077】
<可使時間>
可使時間は、主剤と硬化剤を混合後、ハンドリングできなくなるまでの時間、すなわち、接着剤として流動性が著しく失われるに至るまでの時間とした。可使時間が30秒~10分であるものを、使用に適している、すなわち、適切な可使時間であると評価した。
【0078】
<発泡性>
2mmの厚みの硬化物を作製し、発泡性として、硬化物の表面の気泡による膨れの有無、及び、硬化剤をカッターナイフで切断した断面を観察したときの気泡の有無を調べ、主剤と硬化剤とを混合した際の発泡性を評価した。目立った気泡がなかったものをA、気泡があったもののうち、明らかに多くの気泡があったもの若しくは直径1mmを越えるような大きな気泡を含むものをC、それ以外をB、と評価した。このうち、Aを、発泡が抑制されていると評価した。
【0079】
【0080】
【0081】
実施例1~5と比較例1~3の比較から、インデックスを2.05以上として作製したウレタンポリプレポリマー(a1)及び残存ポリイソシアネート(a2)を主剤に含むとともに、ポリオール化合物(b1)及びポリアミン化合物(b2)を硬化剤に含み、NCO基/活性水素基比を0.5~4とした接着剤組成物によれば、発泡が抑えられ、可使時間が適切な長さであるとともに、硬化物の破断強度、破断伸度が優れることがわかる。
また、実施例3~5と比較例1~3の比較から、インデックスを2.05以上とした場合は、NCO基/活性水素基比を0.5~4の範囲内で変化させても、硬化物の破断強度及び破断伸度への影響が極めて少ないことがわかる。
【0082】
以上、本発明の2液硬化型接着剤組成物について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
1 硬化物
3 微粒子
5 連続相