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特許7469679スクロール圧縮機、および、それを備える冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機、および、それを備える冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20240410BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20240410BHJP
   F25B 1/04 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F04C29/12 A
F04C18/02 311Z
F25B1/04 Y
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022029846
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023125631
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 康夫
(72)【発明者】
【氏名】姫田 晃
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-017292(JP,A)
【文献】特開2018-189027(JP,A)
【文献】特開昭59-141793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 18/02
F25B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動スクロール(160)および固定スクロール(100)を有し、吐出口(101a)から冷媒ガスを吐出する圧縮機構(30)と、
前記圧縮機構を収容し、内部空間が前記圧縮機構によって第1空間(S10)と第2空間(S20)とに仕切られているケーシング(20)と、
を備え、
前記固定スクロールには、前記第1空間と前記第2空間とを連通する連通路(P1)が形成されており、
前記吐出口から吐出された前記冷媒ガスは、前記第1空間から前記連通路を介して前記第2空間へと流れ、
前記固定スクロールは、前記第1空間から前記連通路に流れる前記冷媒ガスの向きを変えるガイド部(105)を有し
前記固定スクロール(100)は、前記ケーシングに固定される第1の外周面(104a)と、前記第1の外周面の径方向内側に位置する第2の外周面(104b)を有し、
前記第1空間は、前記第2の外周面(104b)の径方向外側の環状の空間である環状空間(S12)を含み、
前記ガイド部(105)は、前記第2の外周面から径方向外側に突出する凸部であり、前記環状空間(S12)を時計回りの方向および反時計周りの方向に流れる冷媒ガスの流れの向きを前記連通路(P1)の近傍において変える、
スクロール圧縮機(7)。
【請求項2】
前記ガイド部(105)は、前記連通路の近傍において、前記固定スクロールの表面から突出する凸部である、
請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記ガイド部(105)は、前記固定スクロールの表面に一体的に形成されている、
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記固定スクロールの表面に装着されている、
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記第1空間(S10)は、前記吐出口に隣接する吐出空間(S11)をさらに含み、
前記ガイド部(105)は、前記吐出口から前記吐出空間に吐出された後に前記環状空間を周方向に流れる前記冷媒ガスが当たるガイド面(105a,105b)を有し、
前記ガイド面は、周方向に向いている前記冷媒ガスの流れが前記連通路に向かうように、前記冷媒ガスの向きを変える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記ガイド部(105)は、前記ガイド面として、前記環状空間を時計回りに流れる前記冷媒ガスが当たる第1のガイド面(105a)と、前記環状空間を反時計回りに流れる前記冷媒ガスが当たる第2のガイド面(105b)とを有する、
請求項5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記可動スクロールを駆動するモータ(50)、
をさらに備え、
前記ガイド面(105a,105b)は、前記モータの回転軸(50a)の方向視において、前記吐出口の中心と前記連通路の中心とを結ぶ第1の仮想直線(V1)に対して傾斜しており、且つ、前記第1の仮想直線に直交する第2の仮想直線(V2)に対して傾斜している、
請求項5又は6に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記第1の外周面(104a)には、内側に凹む溝(104c)が形成されており、
前記連通路(P1)は、前記溝および前記溝を覆う前記ケーシングによって形成されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
前記可動スクロールを駆動するモータ(50)と、
少なくとも一部が前記環状空間に配置され、前記圧縮機構に吸入させる前記冷媒ガスが流れる吸入部(103)と、
をさらに備え、
前記モータの回転軸(50a)の方向視において、前記ガイド部(105)の中心は、前記吐出口の中心と前記連通路の中心とを結ぶ第1の仮想直線(V1)の両側のうち、前記第1の仮想直線の前記吸入部(103)側に位置している、
請求項5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機(7)と、
前記スクロール圧縮機から吐出され、前記スクロール圧縮機に吸入される冷媒が循環する冷媒回路(6)と、
を備える冷凍サイクル装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
スクロール圧縮機、および、それを備える冷凍サイクル装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1(特開2022-19554号公報)に開示されているような高圧ドーム型のスクロール圧縮機が知られている。このスクロール圧縮機では、圧縮機構からケーシング内の上部空間に吐出された高圧の冷媒ガスが、固定スクロールに形成されている溝を通って、圧縮機構の下方に位置するケーシング内の下部空間に流れる。スクロール圧縮機は、ケーシング内の上部空間および下部空間が高圧の冷媒ガスで満たされた状態で、冷媒を圧縮する運転を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような高圧ドーム型のスクロール圧縮機では、固定スクロールに形成されている溝に冷媒が入るときの圧力損失や、冷媒が溝を通るときの流路抵抗によって冷媒の圧力が下がり、スクロール圧縮機の効率が低下するという課題がある。流路抵抗を減らすために流路面積を大きくすることが考えられるが、他の部品を避けて流路を形成する必要があり、流路面積の拡大には制約が多い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点のスクロール圧縮機は、圧縮機構と、ケーシングとを備えている。圧縮機構は、可動スクロールおよび固定スクロールを有している。圧縮機構は、吐出口から冷媒ガスを吐出する。ケーシングは、圧縮機構を収容している。ケーシングの内部空間は、圧縮機構によって、第1空間と第2空間とに仕切られている。固定スクロールには、第1空間と第2空間とを連通する連通路が形成されている。吐出口から吐出された冷媒ガスは、第1空間から連通路を介して第2空間へと流れる。固定スクロールは、ガイド部を有している。ガイド部は、第1空間から連通路に流れる冷媒ガスの向きを変える。
【0005】
このスクロール圧縮機によれば、ガイド部が第1空間から連通路に流れる冷媒ガスの向きを変えることで、連通路に冷媒ガスが入るときの圧力損失を低減することができる。これにより、スクロール圧縮機の効率が向上する。
【0006】
第2観点のスクロール圧縮機は、第1観点のスクロール圧縮機であって、ガイド部は、連通路の近傍において、固定スクロールの表面から突出する凸部である。
【0007】
ここでは、第1空間を固定スクロールの表面に沿って流れる冷媒ガスの向きを、凸部によって連通路に向かう方向に変えることができる。
【0008】
第3観点のスクロール圧縮機は、第1観点のスクロール圧縮機であって、固定スクロールは、第1の外周面と、第2の外周面とを有している。第1の外周面は、ケーシングに固定される。第2の外周面は、第1の外周面の径方向内側に位置する。ガイド部は、第2の外周面から径方向外側に突出する凸部である。
【0009】
ここでは、第1空間を固定スクロールの第2の外周面に沿って流れる冷媒ガスの向きを、凸部によって連通路に向かう方向に変えることができる。
【0010】
第4観点のスクロール圧縮機は、第3観点のスクロール圧縮機であって、ガイド部は、固定スクロールの表面に一体的に形成されている。
【0011】
ここでは、ガイド部が固定スクロールと一体的に形成されているため、ガイド部として機能する部品を固定スクロールとは別に設けなくても、冷媒ガスの向きを変えることができる。
【0012】
第5観点のスクロール圧縮機は、第3観点のスクロール圧縮機であって、ガイド部は、固定スクロールの表面に装着されている。
【0013】
ここでは、固定スクロールとは別にガイド部を設け、そのガイド部を固定スクロールの表面に装着するという構造を採っている。このため、ガイド部の形状や表面粗さなどを自由に決めることができ、冷媒ガスの向きを滑らかに変えることが可能になる。
【0014】
第6観点のスクロール圧縮機は、第3観点から第5観点のいずれかのスクロール圧縮機であって、第1空間は、吐出口に隣接する吐出空間と、第2の外周面とケーシングとの間の環状空間とを含む。ガイド部は、ガイド面を有する。ガイド面には、吐出口から吐出空間に吐出された後に環状空間を周方向に流れる冷媒ガスが当たる。ガイド面は、周方向に向いている冷媒ガスの流れが連通路に向かうように、冷媒ガスの向きを変える。
【0015】
第7観点のスクロール圧縮機は、第6観点のスクロール圧縮機であって、ガイド部は、ガイド面として、第1のガイド面と第2のガイド面とを有する。第1のガイド面には、環状空間を時計回りに流れる冷媒ガスが当たる。第2のガイド面には、環状空間を反時計回りに流れる冷媒ガスが当たる。
【0016】
ここでは、吐出空間から環状空間に流れる冷媒ガスが時計回り、反時計回りの両方に分かれて流れるような構造になっている場合にも、両方の冷媒ガスの向きを第1のガイド面および第2のガイド面によって連通路に導くことができる。
【0017】
第8観点のスクロール圧縮機は、第6観点又は第7観点のスクロール圧縮機であって、可動スクロールを駆動するモータをさらに備える。ガイド面は、モータの回転軸の方向視において、第1の仮想直線に対して傾斜しており、且つ、第1の仮想直線に直交する第2の仮想直線に対して傾斜している。第1の仮想直線は、モータの回転軸の方向視において吐出口の中心と連通路の中心とを結ぶ直線である。
【0018】
第9観点のスクロール圧縮機は、第3観点から第8観点のいずれかのスクロール圧縮機であって、第1の外周面には、内側に凹む溝が形成されている。連通路は、溝および溝を覆うケーシングによって形成されている。
【0019】
第10観点のスクロール圧縮機は、第6観点のスクロール圧縮機であって、可動スクロールを駆動するモータと、吸入部とをさらに備える。吸入部は、少なくとも一部が環状空間に配置されている。吸入部は、圧縮機構に吸入させる冷媒ガスが流れる。モータの回転軸の方向視において、ガイド部の中心は、吐出口の中心と連通路の中心とを結ぶ第1の仮想直線の両側のうち、第1の仮想直線の吸入部側に位置している。
【0020】
ここでは、周方向に冷媒ガスが流れる環状空間に、吸入部の少なくとも一部が配置されている。このため、環状空間のうち、連通路から見て、吸入部がある側の空間からの冷媒ガスの流れ込み量よりも、吸入部がない側の空間からの冷媒ガスの流れ込み量のほうが多くなる。これに鑑み、ここでは、ガイド部の中心を吸入部側に寄せている。
【0021】
第11観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第10観点のいずれかのスクロール圧縮機と、冷媒回路とを備える。冷媒回路では、冷媒が循環している。冷媒は、冷媒回路において、スクロール圧縮機から吐出され、スクロール圧縮機に吸入される。
【0022】
ここでは、スクロール圧縮機の効率の向上によって、冷凍サイクル装置の省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図2】スクロール圧縮機の縦断面図である。
図3】ケーシングの蓋部および円筒部を除くスクロール圧縮機の斜視図である。
図4】ケーシングの蓋部および円筒部を除くスクロール圧縮機の一部の拡大斜視図である。
図5】固定スクロールを斜め下方から見た斜視図である。
図6】固定スクロールの縦断面図である。
図7】ケーシングの蓋部を除くスクロール圧縮機を斜め上方から見た斜視図である。
図8】ケーシングの蓋部を除くスクロール圧縮機を上から見た図である。
図9】冷媒ガスの流れを破線の矢印で示す、図2のIX-IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)冷凍サイクル装置の構成
スクロール圧縮機7を備える冷凍サイクル装置1の概略構成を図1に示す。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、空気調和装置であり、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房および暖房を行う。図1に示されるように、冷凍サイクル装置1は、スクロール圧縮機7や冷媒回路6を備える。冷媒回路6は、室外ユニット2と室内ユニット3とが、液冷媒連絡管4およびガス冷媒連絡管5を介して接続されることによって構成されている。冷媒回路6には、R32等の単一冷媒、あるいは、R454Cのような混合冷媒が封入されている。冷媒は、冷媒回路6において循環しており、スクロール圧縮機7から吐出され、スクロール圧縮機7に吸入される。
【0025】
室外ユニット2は、室外に設置される。室外ユニット2は、主として、冷媒回路6に組み込まれる機器を有する。冷媒回路6に組み込まれる機器は、スクロール圧縮機7、四路切換弁10、室外熱交換器11、膨張弁12、液側閉鎖弁13、ガス側閉鎖弁14、などである。室外ユニット2は、冷媒回路6に組み込まれない機器として、室外ファン15などを有する。
【0026】
室内ユニット3は、室内に設置される。室内ユニット3は、主として、冷媒回路6に組み込まれる室内熱交換器19を有する。
【0027】
冷媒回路6を構成する液冷媒連絡管4およびガス冷媒連絡管5は、冷媒が内部を流れる管である。液冷媒連絡管4の一端は、室外ユニット2の液側閉鎖弁13に接続され、液冷媒連絡管4の他端は、室内ユニット3の室内熱交換器19の液側の冷媒配管に接続される。ガス冷媒連絡管5の一端は、室外ユニット2のガス側閉鎖弁14に接続され、ガス冷媒連絡管5の他端は、室内ユニット3の室内熱交換器19のガス側の冷媒配管に接続される。
【0028】
なお、本実施形態では1つの室内ユニット3が1つの室外ユニット2に接続されている冷凍サイクル装置1を示しているが、複数の室内ユニットが1つの室外ユニットに接続されるような所謂マルチ式の冷凍サイクル装置であっても、本実施形態に係るスクロール圧縮機を採用することで効率を向上させることができる。
【0029】
(2)スクロール圧縮機の構成
スクロール圧縮機7は、高圧ドーム型の圧縮機である。図2に示すように、スクロール圧縮機7は、主として、ケーシング20と、圧縮機構30と、ハウジング40と、モータ50と、クランクシャフト60と、吸入管70と、吐出管80とを備える。スクロール圧縮機7では、吸入管70からケーシング20内に供給された低温低圧の冷媒が、圧縮機構30で圧縮され、高温高圧の冷媒が吐出管80から吐出される。
【0030】
(2-1)ケーシング
ケーシング20は、内部空間が気密に保たれる金属製の構造体であって、主として、圧縮機構30と、ハウジング40と、モータ50と、クランクシャフト60とを収容する。ケーシング20は、円筒部21と、蓋部22と、底部23とを有する。
【0031】
円筒部21には、吐出管80が取り付けられている。吐出管80は、円筒部21を貫通し、ケーシング20の気密性が確保されるように円筒部21に固定されている。
【0032】
蓋部22には、吸入管70が鉛直方向に延びるように取り付けられている。
【0033】
ケーシング20の内部空間は、図2に示すように、圧縮機構30によって、上部の第1空間S10と、下部の第2空間S20とに仕切られている。
【0034】
(2-2)圧縮機構
圧縮機構30は、冷媒ガスを圧縮して吐出口101aから高圧の冷媒ガスを吐出する機構であって、ハウジング40に支持、収容されている。圧縮機構30は、主として、固定スクロール100および可動スクロール160を有する。固定スクロール100は、ケーシング20の円筒部21の内周面に固着されており、固定側ラップ102などを有する。可動スクロール160は、円筒状のボス部161や可動側ラップ162を有する。圧縮機構30では、固定スクロール100の固定側ラップ102と、可動スクロール160の可動側ラップ162とが噛み合うように組み合わされることにより、圧縮室30aが形成される。圧縮室30aの容積は、可動スクロール160の旋回運動によって周期的に変化する。これにより、吸入管70から圧縮室30aに導入された冷媒ガスが圧縮される。圧縮室30aで圧縮された冷媒ガスは、ケーシング20の内部空間の上部の空間である第1空間S10に吐出される。
【0035】
固定スクロール100には、第1空間S10と第2空間S20とを連通する第1の連通路P1が形成されている。吐出口101aから吐出された冷媒ガスは、第1空間S10から第1の連通路P1および後述する第2の連通路P2を介して第2空間S20へと流れる。
【0036】
なお、第1の連通路P1の詳細や、固定スクロール100の吸入部103やガイド部105については、後に詳述する。
【0037】
(2-3)ハウジング
ハウジング40は、圧縮機構30の下方、かつ、モータ50の上方に配置されている。ハウジング40の外周面は、ケーシング20の内周面に接合されている。ハウジング40の内周部は、後述のクランクシャフト60の軸支する軸受となっている。ハウジング40の外周面40aには、内側に凹む溝40cが形成されている(図3および図4参照)。この溝40cと、溝40cを覆うケーシング20の円筒部21の内周面によって、第2の連通路P2が形成される。第2の連通路P2は、第1の連通路P1の真下に位置しており、冷媒ガスを第1空間S10から第2空間S20へと流す通路になる。
【0038】
(2-4)モータ
モータ50は、ハウジング40の下方に配置される3相ブラシレスDCモータである。モータ50は、ケーシング20の内部空間の下部の空間である第2空間S20に配置されている。モータ50は、主として、ステータ51と、ロータ52とを有する。
【0039】
モータ50は、クランクシャフト60を介して、圧縮機構30の可動スクロール160を駆動する。ロータ52が回転中心軸50aを回転中心として回転すると、クランクシャフト60の偏芯ピン61が可動スクロール160を旋回させる。
【0040】
(2-5)クランクシャフト
クランクシャフト60は、ロータ52の中心部を鉛直方向に貫通した状態で、ロータ52と一体化されている。クランクシャフト60の上端の偏芯ピン61は、可動スクロール160のボス部161に嵌め込まれている。これにより、クランクシャフト60の回転が可動スクロール160に伝達され、可動スクロール160が旋回する。
【0041】
(2-6)吸入管
吸入管70は、ケーシング20の上面(蓋部22の上面)を鉛直方向に貫通している。吸入管70の下部は、後述する固定スクロール100の吸入部103に接続される。吸入管70および吸入部103の内部空間は、圧縮室30aと連通している。ケーシング20の外部において、吸入管70は、四路切換弁10の第1のポート10aから延びる冷媒配管に接続される。
【0042】
(2-7)吐出管
吐出管80は、モータ50よりも少し高い位置において、ケーシング20の側面を略水平方向に貫通している。吐出管80の端部は、ケーシング20の第2空間S20に位置している。ケーシング20の外部において、吐出管80は、四路切換弁10の第2のポート10bから延びる冷媒配管に接続される。
【0043】
(3)スクロール圧縮機の固定スクロールおよびその周辺の詳細構造
固定スクロール100は、上述の固定側ラップ102のほかに、図2図9に示すように、円板状の鏡板部101と、吸入部103と、環状の外周部104とを有している。
【0044】
(3-1)鏡板部
鏡板部101は、固定側ラップ102とともに圧縮室30aを形成する部分であり、鏡板部101の下面は、圧縮室30aの上面となる(図6参照)。固定側ラップ102は、鏡板部101の下面から下方に突出するように形成されている。鏡板部101の中央には、吐出口101aが開けられている。
【0045】
(3-2)吸入部
吸入部103は、平面視(回転中心軸50aの方向視)において、鏡板部101および外周部104にまたがるように配置されている。吸入部103は、鏡板部101および外周部104の一部から上に延びる円筒状の部分である。図6に示す吸入部103の内周面103aに、図2に示すように、吸入管70の下端部が差し込まれる。吸入管70を流れてくる低圧の冷媒ガスは、吸入部103の中を通り、圧縮室30aに吸入される。
【0046】
(3-3)外周部
外周部104は、図6に示すように、鏡板部101の外周端部101bから下方に延びる環状の部分である。外周部104は、ケーシング20に固着される第1の外周面104aと、第2の外周面104bとを有している。第1の外周面104aは、図6図8に示すように、ケーシング20の円筒部21の内周面に固定される。第2の外周面104bは、第1の外周面104aの径方向内側に位置している。第2の外周面104bは、第1の外周面104aの上に位置し、図6に示すように、縦断面が滑らかな湾曲線を描いている。
【0047】
第1の外周面104aには、内側に凹む溝104cが形成されている。第1の連通路P1は、溝104cおよび溝104cを覆うケーシング20の円筒部21の内周面によって形成されている。
【0048】
図2および図6に示すように、圧縮機構30の上方の第1空間S10は、鏡板部101の上面よりも上に位置する吐出空間S11と、第2の外周面104bの径方向外側の環状の空間である環状空間S12とを含む。吐出空間S11は、吐出口101aに隣接する空間であり、吐出口101aから吐出された冷媒ガスは、図6の破線の矢印で示すように、まず吐出空間S11に流れる。環状空間S12は、固定スクロール100の第2の外周面104bとケーシング20との間の空間である。吸入部103は、その一部が、環状空間S12に配置されている。
【0049】
(3-4)ガイド部
固定スクロール100は、更に、ガイド部105を有している。ガイド部105は、第1空間S10から第1の連通路P1に流れる冷媒ガスの向きを変える。具体的には、吐出口101aから吐出空間S11に吐出され、図9において破線の矢印で示すように吐出空間S11から環状空間S12に流れて、第1の連通路P1に向かって環状空間S12を時計回りの方向および反時計周りの方向に流れる冷媒ガスの流れの向きを、第1の連通路P1の近傍において、ガイド部105が変える。ガイド部105は、第1のガイド面105aと第2のガイド面105bとを有する。第1のガイド面105aには、環状空間S12を時計回りに流れる冷媒ガスが当たる。第2のガイド面105bには、環状空間S12を反時計回りに流れる冷媒ガスが当たる。ガイド面105a,105bは、図9において破線の矢印で示すように、周方向に向いている冷媒ガスの流れが第1の連通路P1に向かうように、冷媒ガスの向きを変える。
【0050】
具体的に、ガイド部105は、第1の連通路P1の近傍において、固定スクロール100の外周部104の第2の外周面104bから径方向外側に突出する凸部である。本実施形態では、ガイド部105は、固定スクロール100の表面に一体的に形成されている。
【0051】
ガイド面105a,105bは、図9に示すように、平面視(回転中心軸50aの方向視)において、第1の仮想直線V1に対して傾斜しており、且つ、第2の仮想直線V2に対して傾斜している。第1の仮想直線V1は、平面視において、吐出口101aの中心と第1の連通路P1の中心とを結ぶ直線である。第2の仮想直線V2は、第1の仮想直線V1に直交する直線である。平面視において、ガイド部105の中心は、図9に示すように、第1の仮想直線V1の両側のうち、第1の仮想直線V1の吸入部103の側に位置している。
【0052】
(4)特徴
(4-1)
スクロール圧縮機7では、ガイド部105が第1空間S10から第1の連通路P1に流れる冷媒ガスの向きを変える。具体的には、第1空間S10の環状空間S12を固定スクロール100の第2の外周面104bに沿って流れる冷媒ガスが、第2の外周面104bから径方向外側に突出している凸部に形成されたガイド面105a,105bに当たり、冷媒ガスの向きが第1の連通路P1に向かう方向に変わる。これにより、第1の連通路P1に冷媒ガスが入るときの圧力損失を低減することができている。したがって、スクロール圧縮機7の効率が向上し、冷凍サイクル装置1の省エネルギー化が実現している。
【0053】
(4-2)
スクロール圧縮機7では、ガイド部105が固定スクロール100の一部として、ガイド部105が固定スクロール100の各部と一体的に形成されている。具体的には、第2の外周面104bから径方向外側に突出している凸部がガイド部105となっている。このため、ガイド部として機能する部品を固定スクロールとは別に設ける必要がなく、固定スクロール100の表面に形成されたガイド部105によって冷媒ガスの向きを変えることができている。
【0054】
(4-3)
スクロール圧縮機7では、吐出空間S11から環状空間S12に流れる冷媒ガスが時計回り、反時計回りの両方に分かれて流れるような構造になっている。これらの周方向の両方の冷媒ガスの流れを、ここでは、第1のガイド面105aおよび第2のガイド面105bによって、第1の連通路P1へと導くことができている。
【0055】
(4-4)
スクロール圧縮機7では、周方向に冷媒ガスが流れる環状空間S12に、吸入部103の一部が配置されている。このため、図9を参照すると分かるように、環状空間S12のうち、第1の連通路P1から見て、吸入部103がある側の空間からの冷媒ガスの流れ込み量よりも、吸入部103がない側の空間からの冷媒ガスの流れ込み量のほうが多くなる。この第1の連通路P1への冷媒ガスの流れ込み量の違いに鑑み、スクロール圧縮機7では、ガイド部105の中心を、吸入部103の側に寄せている。これにより、第1の連通路P1に冷媒ガスが入るときの圧力損失を更に低減することができている。
【0056】
(5)変形例
(5-1)変形例1A
上記の実施形態のスクロール圧縮機7では、ガイド部105が、固定スクロール100の各部と一体的に形成されている。
【0057】
この構成に代えて、ガイド部を、固定スクロールとは別に用意し、固定スクロールの表面に装着してもよい。このように構成する場合、固定スクロールの形状や表面粗さに拘束されることなく、ガイド部の形状や表面粗さなどを自由に決めることができる。
【0058】
(5-2)変形例1B
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0059】
1 冷凍サイクル装置
6 冷媒回路
7 スクロール圧縮機
20 ケーシング
30 圧縮機構
50 モータ
50a 回転中心軸(モータの回転軸)
100 固定スクロール
101a 吐出口
103 吸入部
104a 第1の外周面
104b 第2の外周面
104c 溝
105 ガイド部
105a 第1のガイド面
105b 第2のガイド面
160 可動スクロール
P1 第1の連通路
S10 第1空間
S11 吐出空間
S12 環状空間
S20 第2空間
V1 第1の仮想直線
V2 第2の仮想直線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【文献】特開2022-19554号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9