(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/06 20060101AFI20240410BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20240410BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F04C29/06 B
F04B39/12 G
F04B39/00 101X
(21)【出願番号】P 2022056517
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 純幸
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 悟
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145732(JP,A)
【文献】特開2010-288330(JP,A)
【文献】特開2009-095184(JP,A)
【文献】特開平03-213681(JP,A)
【文献】特開2013-002288(JP,A)
【文献】特開2012-107587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/06
F04B 39/12
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長または縦長のケーシング(11)と、
前記ケーシング(11)内に収容される電動機(15)と、
前記電動機(15)により駆動され、冷媒を圧縮する圧縮機構(30)と、
前記ケーシング(11)の内周面と前記電動機(15)の外面との間に配置され、前記ケーシング(11)内に前記電動機(15)を支持する複数の支持部(5)とを備え、
前記ケーシング(11)内面と前記電動機(15)の外面との間に、前記支持部(5)により仕切られた所定空間(S)が複数形成される圧縮機であって、
前記ケーシング(11)内に設けられ、前記電動機(15)が運転することで複数の前記所定空間(S)の共鳴モードの励起を抑制する抑制機構(100)を有し、
前記抑制機構(100)は、前記ケーシング(11)の長手方向に直交する断面において、
複数の前記所定空間(S)が、前記ケーシング(11)の筒軸中心を通る対称面に関して非対称に形成される機構であり
、かつ、すべての前記所定空間(S)の容積を異ならせるように配置された複数の前記支持部(5)を備える
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記抑制機構(100)は、全ての前記所定空間(S)の容積を足した全容積のうち、半分
以上の容積を占める少なくとも1つの前記所定空間(S)の共鳴モードの励起を抑制する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記支持部(5)は、前記ケーシング(11)の内周面に形成される
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記電動機(15)によって回転駆動され、前記圧縮機構(30)に連結される駆動軸(19)をさらに備え、
前記駆動軸(19)は、前記ケーシング(11)の長手方向に沿って延び、
前記駆動軸(19)の軸心と前記ケーシング(11)の筒軸中心とが一致する
ことを特徴とする請求項1
~3のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項5】
前記抑制機構(100)において、複数の前記所定空間(S)のうち、少なくとも1つの径方向長さが他と異なる
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項6】
前記抑制機構(100)において、複数の前記所定空間(S)のうち、少なくとも1つの周方向長さが他と異なる
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項7】
前記抑制機構(100)において、複数の前記所定空間(S)のうち、少なくとも1つの前記ケーシング(11)の長手方向長さが他と異なる
ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項8】
前記抑制機構(100)は、前記所定空間(S)の長手方向に直交する断面形状が該長手方向に沿って変化させる第1部材(40)をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項9】
前記抑制機構(100)は、前記所定空間(S)に設けられる消音機構(50)をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~
8のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項10】
前記ケーシング(11)内に配置される複数の前記支持部(5)の個数は素数である
ことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項11】
前記支持部(5)は、長手方向に直交する断面形状が該長手方向に沿って変化するように形成される
ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項12】
前記支持部(5)は、長手方向に沿ってらせん状に形成される
ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項13】
前記支持部(5)は、前記ケーシング(11)周方向に隣り合う前記所定空間(S)の間を連通する連通路(60)を有する
ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項14】
前記電動機(15)は、周波数が可変に駆動される
ことを特徴とする請求項1~
13のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項15】
前記ケーシング(11)は、内部にシリンダ部(31)を有し、
前記圧縮機構(30)は、
前記シリンダ部(31)に挿通され、スクリュー溝(32a)が形成されたスクリューロータ(32)と、
前記スクリュー溝(32a)に噛み合うゲートロータ(33)とを備え、
前記シリンダ部(31)内部において、前記ゲートロータ(33)と前記スクリュー溝(32a)とにより圧縮室(35)形成される
ことを特徴とする請求項1~
14のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項16】
前記スクリュー溝(32a)は、3つである
ことを特徴とする請求項
15に記載の圧縮機。
【請求項17】
前記スクリュー溝(32a)は、6つである
ことを特徴とする請求項
15に記載の圧縮機。
【請求項18】
前記スクリューロータ(32)は、1つ、2つ、または3つである
ことを特徴とする請求項
15~
17のいずれか1つに記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷媒を圧縮する圧縮機構および圧縮機構を駆動する電動機を備えた圧縮機において、電動機はケーシング内に固定される。例えば、特許文献1では、ケーシング内壁の周方向に並んで形成される複数の締結部が、他の部分よりも肉厚に形成されることで、電動機をケーシング内に支持する。電動機とケーシング内壁との間には、締結部により仕切られた複数の空間が形成される。これらの空間は、圧縮機に吸入された冷媒が流通するガス流路を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のガス流路を構成する空間は電動機に接しているため、電動機の運転により振動が該空間内を伝達する。この振動伝達により、騒音が励起される周波数帯域が重複する空間が2以上あると、それらの間で共鳴して、圧縮機の振動および騒音が増大してしまう。
【0005】
本開示の目的は、圧縮機の運転により発生する騒音または振動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、
横長または縦長のケーシング(11)と、
前記ケーシング(11)内に収容される電動機(15)と、
前記電動機(15)により駆動され、冷媒を圧縮する圧縮機構(30)と、
前記ケーシング(11)の内周面と前記電動機(15)の外面との間に配置され、前記ケーシング(11)内に前記電動機(15)を支持する複数の支持部(5)とを備え、
前記ケーシング(11)内面と前記電動機(15)の外面との間に前記支持部(5)により仕切られた所定空間(S)が複数形成される圧縮機であって、
前記ケーシング(11)内に設けられ、前記電動機(15)が運転することで複数の前記所定空間(S)の共鳴モードの励起を抑制する抑制機構(100)を有する圧縮機である。
【0007】
第1の態様では、圧縮機の運転に起因して複数の所定空間(S)で励起される共鳴モードを抑制できる。その結果、圧縮機(10)から発生する騒音および振動を抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
前記抑制機構(100)は、全ての前記所定空間(S)の容積を足した全容積のうち、半分以上の容積を占める少なくとも1つの前記所定空間(S)の共鳴モードの励起を抑制する。
【0009】
第2の態様では、空間容積の大きいほど共鳴モードの励起による振動および騒音が大きくなるため、全容積の半分以上を占める所定空間(S)の共鳴モードを抑制することで、圧縮機の騒音および振動を抑えることができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記抑制機構(100)は、すべての前記所定空間(S)の容積を異ならせるように配置された複数の前記支持部(5)を備える。
【0011】
第3の態様では、すべての所定空間(S)の容積を異ならせることで、各所定空間(S)の周波数帯域が重複しないように周波数をシフトできる。その結果、圧縮機の騒音・振動を抑える効果を向上できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記支持部(5)は、前記ケーシング(11)の内周面に形成される。
【0013】
第4の態様では、支持部(5)は、ケーシング(11)と一体形成できるため、圧縮機の製造を容易化できる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記抑制機構(100)において、複数の前記所定空間(S)のうち、少なくとも1つの径方向長さが他と異なる。
【0015】
第5の態様では、所定空間(S)の空間容積を互いに異ならせることができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、
前記抑制機構(100)において、複数の前記所定空間(S)のうち、少なくとも1つの周方向長さが他と異なる。
【0017】
第6の態様では、複数の所定空間(S)の空間容積を互いに異ならせることができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、
前記抑制機構(100)において、複数の前記所定空間(S)のうち、少なくとも1つの前記ケーシング(11)の長手方向長さが他と異なる。
【0019】
第7の態様では、複数の所定空間(S)の空間容積を互いに異ならせることができる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、
前記抑制機構(100)は、前記所定空間(S)の長手方向に直交する断面形状が該長手方向に沿って変化させる第1部材(40)をさらに備える。
【0021】
第8の態様では、第1部材(40)を所定空間(S)に設けるだけで、該所定空間(S)と他の所定空間との空間容積を異ならせることができる。このように、予め全所定空間(S)の空間容積が同一に形成された圧縮機であっても、簡便に抑制機構(100)を設けることができる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、
前記抑制機構(100)は、前記所定空間(S)に設けられる消音機構(50)をさらに備える。
【0023】
第9の態様では、消音機構(50)により騒音抑制効果を向上させることができる。
【0024】
本開示の第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つにおいて、
前記ケーシング(11)内に配置される複数の前記支持部(5)の個数は素数である。
【0025】
第10の態様では、支持部(5)の数を素数とすることで、加振力を低減できる。
【0026】
本開示の第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか1つにおいて、
前記支持部(5)は、長手方向に直交する断面形状が該長手方向に沿って変化するように形成される。
【0027】
第11の態様では、所定空間(S)の長手方向に直交する空間断面の形状を、該長手方向に沿って変化させることができる。
【0028】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか1つにおいて、
前記支持部(5)は、長手方向に沿ってらせん状に形成される。
【0029】
第12の態様では、所定空間(S)を長手方向に沿ってらせん状に形成することができる。
【0030】
本開示の第13の態様は、第1~第12の態様のいずれか1つにおいて、
前記支持部(5)は、前記ケーシング(11)周方向に隣り合う前記所定空間(S)の間を連通する連通路(60)を有する。
【0031】
第13の態様では、連通路(60)により、所定空間(S)を長手方向に流れる冷媒ガスは、連通路にも分流する。このように冷媒ガスの流路を変化させることで消音効果の向上を図ることができる。
【0032】
本開示の第14の態様は、第1~第13の態様のいずれか1つにおいて、
前記電動機(15)は、周波数が可変に駆動される。
【0033】
第14の態様では、抑制機構(100)は、いずれの周波数にも対応可能に構成できるため可変周波数の電動機(15)においても騒音・振動抑制効果を発揮できる。
【0034】
本開示の第15の態様は、第1~第14の態様のいずれか1つにおいて、
前記ケーシング(11)は、内部にシリンダ部(31)を有し、
前記圧縮機構(30)は、
前記シリンダ部(31)に挿通され、スクリュー溝(32a)が形成されたスクリューロータ(32)と、
前記スクリュー溝(32a)に噛み合うゲートロータ(33)とを備え、
前記シリンダ部(31)内部において、前記ゲートロータ(33)と前記スクリュー溝(32a)とにより圧縮室(35)形成される。
【0035】
第15の態様では、抑制機構(100)をスクリュー圧縮機に適用できる。このことで、騒音および振動の抑制可能なスクリュー圧縮機を提供できる。
【0036】
本開示の第16の態様は、第15の態様において、
前記スクリュー溝(32a)は、3つである。
【0037】
第16の態様では、スクリュー溝1溝あたりの吸入冷媒または吐出冷媒による加振力(脈動周波数)を抑えることができるため、共振動を抑制できる。
【0038】
本開示の第17の態様は、第16の態様において、
前記スクリュー溝(32a)は、6つである
第17の態様では、スクリュー溝3溝にくらべ脈動周波数が短波長になる分、吸入冷媒または吐出冷媒による加振力が小さくなる。抑制機構(100)が加わることでさらに騒音・振動を抑えることができる。
【0039】
本開示の第18の態様は、第15~第17の態様のいずれか1つにおいて、
前記スクリューロータ(32)は、1つ、2つ、または3つである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスクリュー圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、スクリューロータとゲートロータの噛み合い状態を示す外観図である。
【
図3】
図3は、従来の圧縮機のケーシングの形状を示す断面図である。(A)は、ケーシング長手方向に直交する断面図である。(B)は、(A)のIII-III矢視断面を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の圧縮機のケーシングの形状を示す断面図である。(A)は、ケーシング長手方向に直交する断面図である。(B)は、(A)のIV-IV矢視断面を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例1の圧縮機のケーシングの長手方向に直交する断面形状を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例2の圧縮機のケーシングの長手方向に直交する断面形状を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例3の圧縮機のケーシングの形状を示す断面図である。(A)は、ケーシング長手方向に直交する断面図である。(B)は、(A)のVII-VII矢視断面を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例4の圧縮機のケーシングの形状を示す断面図である。(A)は、ケーシング長手方向に直交する断面図である。(B)は、(A)のVIII-VIII矢視断面を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例5の圧縮機のケーシングの形状を示す断面図である。(A)は、ケーシング長手方向に直交する断面図である。(B)は、(A)のIX-IX矢視断面を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例6の圧縮機のケーシングの形状を示す断面図である。(A)は、ケーシング長手方向に直交する断面図である。(B)は、(A)のX-X矢視断面を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例7の圧縮機のケーシングの形状を示す断面図である。(A)は、ケーシング長手方向に直交する断面図である。(B)は、(A)のXI-XI矢視断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。また、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。断面図では、理解を容易にするために、一部の構成要素のハッチングを省略する場合がある。
【0042】
(1)圧縮機の全体構成
本実施形態の圧縮機(10)は、スクリュー圧縮機である。圧縮機(10)は、低圧のガス冷媒を吸入し、吸入したガス冷媒を圧縮する。圧縮機(10)は、圧縮した後の高圧のガス冷媒を吐出する。
図2に示すように、本例の圧縮機(10)は、1つのスクリューロータ(32)を有するシングルスクリュー型である。圧縮機(10)は、2つのゲートロータ(33,33)を有する2ゲート型である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)、電動機(15)、駆動軸(19)および圧縮機構(30)を備える。
【0043】
(1-1)ケーシング
ケーシング(11)は、横長の筒状に形成される。ケーシング(11)の内部には、低圧室(L)と高圧室(H)とが形成される。低圧室(L)は、圧縮機構(30)に吸入される低圧のガス冷媒が流れる空間である。低圧室(L)の圧力は、圧縮機構(30)に吸入されるガス冷媒の圧力に相当する。高圧室(H)は、圧縮機構(30)から吐出された高圧のガス冷媒が流入する空間である。高圧室(H)の圧力は、圧縮機構(30)から吐出されたガス冷媒の圧力に相当する。
【0044】
ケーシング(11)の長手方向の一端には、吸入カバー(12)が取り付けられる。ケーシング(11)の長手方向の他端には、開口部(11a)が形成される。開口部(11a)は、ケーシング(11)のうち高圧室(H)が形成される高圧側に設けられる。
【0045】
開口部(11a)は、固定板(13)によって閉塞される。固定板(13)は、厚みのある略円形状の板部材である。固定板(13)の軸心は、駆動軸(19)の軸心と概ね一致する。
【0046】
ケーシング(11)の長手方向の他端には、油分離器(14)が取り付けられる。油分離器(14)は、圧縮機構(30)から吐出された冷媒から油を分離する。油分離器(14)の下方には、油を貯留するための油貯留室(14a)が形成されている。油分離器(14)において冷媒から分離された油は、下方へ流れ落ちて油貯留室(14a)に貯留される。油貯留室(14a)に貯留された油は、冷媒の吐出圧力とほぼ等しく高圧圧力状態となっている。
【0047】
(1-2)電動機
電動機(15)は、ケーシング(11)に収容される。電動機(15)は、ステータ(16)とロータ(17)とを有する。ステータ(16)は、ケーシング(11)の内壁に固定される。ロータ(17)は、ステータ(16)の内部に配置される。ロータ(17)の内部には駆動軸(19)が固定される。
【0048】
電動機(15)は、回転速度が変更可能である。本例では、電動機(15)は、インバータ駆動式の電動機である。具体的には、電動機(15)には、インバータ装置(18)が接続されている。インバータ装置(18)は、交流電源の周波数を変更することにより、電動機(15)に回転速度を変更する。
【0049】
(1-3)駆動軸
駆動軸(19)は、ケーシング(11)に収容される。駆動軸(19)は、電動機(15)によって駆動される。駆動軸(19)の回転速度は、電動機(15)の回転速度の変化に伴って変化する。言い換えると、駆動軸(19)は、回転速度が変更可能である。駆動軸(19)は、電動機(15)と圧縮機構(30)とを連結する。駆動軸(19)は、ケーシング(11)の長手方向に沿って延びる。駆動軸(19)は、略水平方向に延びる。
【0050】
駆動軸(19)は、複数の軸受(20)によって回転可能に支持される。駆動軸(19)の中間部は、第1軸受(21)に支持されている。第1軸受(21)は、ベアリングホルダ(図示省略)を介してケーシング(11)に固定される。駆動軸(19)の吐出側の端部は、第2軸受(22)によって支持される。第2軸受(22)は、ベアリングホルダ(23)を介してケーシング(11)に固定される。ベアリングホルダ(23)は、第2軸受(22)の全周を囲む略円筒状に形成される。ベアリングホルダ(23)の吐出側の端面は、固定板(13)と当接している。
【0051】
(1-4)圧縮機構
圧縮機構(30)は、1つのシリンダ部(31)と、1つのスクリューロータ(32)と、2つのゲートロータ(33)とを有する。
【0052】
シリンダ部(31)は、ケーシング(11)の内部に形成される。スクリューロータ(32)は、シリンダ部(31)の内側に配置される。スクリューロータ(32)は、駆動軸(19)に固定される。スクリューロータ(32)は、駆動軸(19)の回転に伴って回転する。スクリューロータ(32)の外周面には、螺旋状の3つのスクリュー溝(32a)が形成される。
【0053】
スクリューロータ(32)の歯先の外周面は、シリンダ部(31)に囲まれる。スクリューロータ(32)の軸方向の一端側(
図1における右側)は、低圧室(L)に面する。スクリューロータ(32)の軸方向の他端側(
図1における左側)は、高圧室(H)に面する。
【0054】
ゲートロータ(33)は、ゲートロータ室(34)に収容される。ゲートロータ(33)は、放射状に配置された複数のゲート(33a)を有する。ゲートロータ(33)のゲート(33a)は、シリンダ部(31)の一部を貫通し、スクリュー溝(32a)と噛み合う。
【0055】
図1および
図2に示すように、圧縮機構(30)には、吸入口と、圧縮室(35)とが形成される。吸入口は、スクリュー溝(32a)のうち低圧室(L)に開口する部分である。圧縮室(35)は、シリンダ部(31)の内周面と、スクリュー溝(32a)と、ゲート(33a)との間に形成される。圧縮機構(30)では、圧縮室(35)で圧縮された冷媒が、吐出口を通じて高圧室(H)へ吐出される。
【0056】
圧縮機構(30)は、スライドバルブ機構(図示省略)を有する。スライドバルブ機構は、圧縮室(35)と吐出口とを連通するタイミングを調節する。スライドバルブ機構は、駆動軸(19)の軸心方向に沿って前後に進退するスライド部材(スライドバルブ)を含む。スライド部材の一部は、高圧室(H)に位置する。
【0057】
(2)運転動作
図1および
図2を参照しながらスクリュー圧縮機(10)の運転動作について説明する。
【0058】
電動機(15)が駆動軸(19)を駆動すると、スクリューロータ(32)が回転する。スクリューロータ(32)の回転に伴いゲートロータ(33)が回転する。その結果、圧縮機構(30)では、吸入行程、圧縮行程、及び吐出行程が順に繰り返し行われる。
【0059】
1)吸入行程
圧縮機構(30)では、低圧室(L)に連通するスクリュー溝(32a)の容積が拡大する。このことに伴い低圧室(L)の低圧ガスが吸入口を通じてスクリュー溝(32a)に吸入される。
【0060】
2)圧縮行程
スクリューロータ(32)がさらに回転すると、スクリュー溝(32a)がゲートロータ(33)によって区画され、スクリュー溝(32a)内に圧縮室(35)が形成される。ゲートロータ(33)の回転に伴い圧縮室(35)の容積が縮小することで、圧縮室(35)の冷媒が圧縮される。
【0061】
3)吐出行程
スクリューロータ(32)がさらに回転すると、圧縮室(35)が連通する。圧縮室の冷媒は吐出口を通じて高圧室(H)に吐出される。
【0062】
以上の3つの行程が順に繰り返し行われることで、圧縮機構(30)から高圧室(H)へ
冷媒が周期的に吐出される。
【0063】
そして、インバータ装置(18)によって電動機(15)の回転速度が変化すると、駆動軸(19)を介して電動機(15)と連結されたスクリューロータ(32)の回転速度が変化する。
【0064】
(3)圧縮機の運転による課題
圧縮機の運転により生じる課題について、
図3を用いて説明する。なお、以下の説明において、上下および左右は、ケーシング(11)の長手方向に直交する断面を紙面方向から見た方向を指す。また、ケーシングの中心Cとは、ケーシング(11)の長手方向に直交する断面の中心を指す。
【0065】
スクリュー圧縮機のような横長のケーシング(11)を有する圧縮機において、ケーシング(11)内周面には、周方向に配置された突状の複数の支持部(5)が形成される。各支持部(5)は、ケーシング(11)の長手方向に延びるように形成される。電動機(15)は、各支持部(5)に支持されることで、ケーシング(11)内に固定される。電動機(15)とケーシング(11)内周面との間には、周方向に隣り合う支持部(5)によって仕切られた空間(音響空間)(S)が複数形成される。この音響空間(S)には、圧縮機(10)に吸入された冷媒が流通する。
【0066】
電動機(15)の設置の安定性や圧縮機の重量バランスの観点から、複数の支持部(5)は、左右対称および上下対称に配置されることが多い。6つの支持部(5)がケーシング(11)内周面に設けられる場合、ケーシング(11)内周面と電動機(15)との間には6つの音響空間(S)が形成される。6つの支持部(5)が左右対称に配置されることで、左右2つの音響空間(S)が面対称、および上下4つの音響空間(S)がそれぞれ面対称の形状となる。2つ以上の音響空間(S)の形状が互いに面対称にあることは、加振源が対称位置にあることを意味し、その結果、共振によりケーシング(11)の振動が大きくなると共に、ケーシング(11)外部への放射音が大きくなることから騒音値も上昇する。
【0067】
より詳細に説明すると、複数の音響空間(S)のうち、同じ空間形状(同じ容積)を有する2以上の音響空間(S)では、振動が励起される周波数帯域が重複するため、それらの音響空間(S)により共鳴モードが励起される結果、ケーシング(11)の加振を増大させる。特に、このような複数の音響空間(S)が上下方向および左右方向に対称に配置されると、ケーシング(11)の上下方向および左右方向の加振が大きくなる。このように、音響空間(S)の空間形状(容積)が同じで、かつ、音響空間(S)が面対称に配置されることにより、圧縮機の振動および騒音が増大するという知見が得られた。
【0068】
この課題に対して、本実施形態の圧縮機(10)では、複数の音響空間(S)の共鳴モードの励起を抑制する抑制機構(100)をケーシング(11)内に設けた。以下、具体的に
図4を用いて説明する。
【0069】
本実施形態の圧縮機(10)は、従来と同様に、電動機(15)をケーシング(11)内に固定する支持部(5)を有する。支持部(5)は、ケーシング(11)の内周面と電動機(15)の外面との間に配置される。具体的に、支持部(5)は、ケーシング(11)と一体に形成される。支持部(5)は、ケーシング(11)の長手方向に延びる。支持部(5)は、直線状に延びる突条に形成される。
【0070】
本実施形態の圧縮機(10)では、4つの支持部(5)が、ケーシング(11)の周方向に並んで設けられる。具体的に、紙面方向からみて、ケーシング(11)頂点付近に位置する第1支持部(5a)から、反時計回りに順に、第2支持部(5b)、第3支持部(5c)および第4支持部(5d)が配置される。各支持部(5)は、その基部(ケーシング内周面)から径方向内方へ伸びる2つの第1端面(P1)と、径方向内方端において該2つの第1端面(P1)を接続する1つの第2端面(P2)とを有する。第2端面(P2)は電動機(15)の外面に接する面である。
【0071】
4つの支持部(5)は、同一形状である。具体的に、各支持部(5)の周方向幅Wおよび径方向長さDは、すべての支持部(5)において同一である。周方向幅Wは、各支持部(5)の一方の第1端面(P1)から他方の第1端面(P1)に亘る周方向の長さである。より詳細には、周方向幅Wは、各支持部(5)の径方向外方端における一方の第1端面(P1)から他方の第1端面(P1)の周方向長さw1と、径方向内方端における一方の第1端面(P1)から他方の第1端面(P1)の周方向長さw3(第2端面(P2)の周方向長さ)との平均値である(
図4の破線で囲った拡大図を参照)。
【0072】
本実施形態では、音響空間(S)は4つ形成される。具体的に、第1音響空間(S1)は、第1支持部(5a)と第2支持部(5b)との間に形成される。第2音響空間(S2)は、第2支持部(5b)と第3支持部(5c)との間に形成される。第3音響空間(S3)は、第3支持部(5c)と第4支持部(5d)との間に形成される。第4音響空間(S4)は、第4支持部(5d)と第1支持部(5a)との間に形成される。各音響空間(S)の容積は、電動機(15)の長手方向の一端から他端までにおける隣り合う2つの支持部(5)に挟まれた空間の容積である。
【0073】
本実施形態の抑制機構(100)では、4つの音響空間(S1~S4)の空間容積を全て異ならせるように各支持部(5)が配置される。具体的に、ケーシング(11)の長手方向に直交する断面における中心Cと第1支持部(5a)の中央を通る第1直線と、中心Cと第2支持部(5b)の中央を通る第2直線との間の角度をθ1とする。第2直線と中心Cと第3支持部(5c)の中央を通る第3直線との間の角度をθ2とする。第3直線と中心Cと第4支持部(5d)の中央を通る第4直線との間の角度をθ3とする。第4直線と第1直線との間の角度をθ4とする。このとき、θ1、θ2、θ3およびθ4がすべて異なるように、各支持部(5)が配置される。このような配置により、4つの音響空間(S1~S4)は、互いに周方向長さが異なるため、4つの音響空間(S1~S4)の空間容積を全て異ならせることができる。
【0074】
この抑制機構(100)により、ケーシング(11)の長手方向断面において、面対称となる音響空間(S)は形成されない。さらに、4つの音響空間(S1~S4)の空間容積はすべて異なる。従って、電動機(15)の運転により複数の音響空間(S)で生じる周波数帯域の重複を回避でき、複数の音響空間(S)で励起される共鳴モードが抑制される。
【0075】
(4)特徴
(4-1)特徴1
本実施形態の圧縮機(10)は、ケーシング(11)内に設けられ、電動機(15)が運転することで複数の音響空間(S)(空間)の共鳴モードの励起を抑制する抑制機構(100)を有する。このように、電動機(15)の運転により複数の音響空間(S)に伝達する振動に起因して励起される共鳴モードを抑制できる。共鳴モードが抑制される結果、ケーシング(11)の加振が抑制され、圧縮機(10)から発生する騒音および振動を抑制できる。
【0076】
(4-2)特徴2
本実施形態の抑制機構(100)では、すべての音響空間(S)の空間容積が異なるように4つの支持部(5)が配置される。複数の音響空間(S)において、仮に空間容積が同一であると、振動が励起される周波数帯域が重複するため加振力が増大する(共鳴モード)。しかし、音響空間(S)の空間容積がすべて異なるように支持部(5)を配置することで、各音響空間(S)で発生する周波数が重複しないように周波数帯域をシフトできる。このことで、圧縮機の騒音・振動を抑える効果を向上できる。
【0077】
(4-3)特徴3
本実施形態の圧縮機(10)では、支持部(5)は、ケーシング(11)の内周面に形成される。このことにより、支持部(5)とケーシング(11)とを一体形成できるため、圧縮機(10)の製造を容易化できる。
【0078】
(4-4)特徴4
本実施形態の圧縮機(10)では、電動機(15)は、周波数が可変に駆動される。電動機(15)周波数が変更されると、音響空間(S)に伝達する振動周波数も異なる。しかし、本実施形態のすべての音響空間(S)の空間容積は異なるため、電動機(15)の周波数が変更されても、音響空間(S)同士で振動を励起する周波数帯域が重複することが抑制される。このように本実施形態の抑制機構(100)では、電動機(15)のいずれの周波数にも共鳴モードを抑制可能に構成されるため、騒音・振動抑制効果を発揮できる。
【0079】
(4-5)特徴5
本実施形態の圧縮機(10)は、ゲートロータ(33)とスクリュー溝(32a)とにより圧縮室(35)形成されるスクリュー圧縮機である。抑制機構(100)により振動および騒音が抑制されるスクリュー圧縮機(10)を提供できる。
【0080】
(4-6)特徴6
本実施形態のスクリュー圧縮機(10)では、スクリュー溝(32a)は3つである。スクリュー溝が3つであっても、本実施形態の抑制機構(100)により、1溝あたりの吸入冷媒または吐出冷媒による加振力(脈動周波数)を抑えることができる結果、共鳴モードを抑制できる。
【0081】
(5)変形例
上記実施形態は、以下のような構成としてもよい。以下では、上記実施形態と異なる構成のみを説明する。
【0082】
(5-1)変形例1
変形例1の抑制機構(100)では、4つの支持部(5)のうち1つの支持部(5)の周方向幅Wと径方向長さDの比(W/D)が、他の3つの支持部(5)のそれと異なる。
【0083】
例えば
図5に示すように、第1支持部(5a)、第2支持部(5b)、第3支持部(5c)および第4支持部(5d)の周方向幅をそれぞれ、W1、W2、W3およびW4とし、径方向長さをそれぞれ、D1、D2、D3およびD4としたときに、W1/D1が、W2/D2、W3/D3およびW4/D4と異なるように、各支持部(5)が形成される。
【0084】
このように、θ1、θ2、θ3およびθ4が全て異なるように各支持部(5)を配置し、かつ、第1支持部(5a)のW1/D1が他の支持部(5)のそれと異なるように形成することで、4つの音響空間(S1~S4)において、空間容積および空間形状(
図5に示す紙面方向から見たときの音響空間の断面形状)を異ならせることができる。このことで、複数の音響空間(S)により励起される共鳴モードを抑制できる。
【0085】
(5-2)変形例2
図6に示すように、変形例2の抑制機構(100)では、θ1、θ2、θ3およびθ4が全て同一であり、かつ4つの支持部(5)のW/Dがすべて異なる。
【0086】
このように、θ1乃至θ4が同一であるため、第1音響空間(S1)乃至第4音響空間(S4)は、互いに面対称に配置されるが、4つの支持部(5)のW/Dが全て異なるため、第1音響空間(S1)乃至第4音響空間(S4)の空間容積および空間形状を互いに異ならせることができる。このことで、複数の音響空間(S)により励起される共鳴モードを抑制できる。
【0087】
(5-3)変形例3
図7に示すように、変形例3の抑制機構(100)は、音響空間(S)の長手方向に直交する断面形状が長手方向に変化させる第1部材(40)を備える。
【0088】
第1部材(40)は、少なくとも1つの音響空間(S)に配置される。第1部材(40)は、音響空間(S)の長手方向に延びるように形成された板状部材である。第1部材(40)は、例えば長手方向の一端から他端に向かって細くなる、または太くなるように形成される。第1部材(40)が配置された音響空間(S)では、第1部材(40)が空間を占める分空間容積が小さくなる。このように、第1部材(40)の形状を音響空間(S)の空間容積に応じて設計することで、第1部材(40)が配置された音響空間(S)の空間容積を、他の音響空間(S)の空間容積と異ならせることができる。
【0089】
このような第1部材(40)は、すべての音響空間(S)が面対称に配置され、かつ、空間容積がいずれも同一であるような圧縮機(10)にも適用できる。このような圧縮機(10)では、複数の音響空間(S)で共鳴モードが励起されるが、第1部材(40)を配置された音響空間(S)の空間容積を他の音響空間(S)の空間容積と異ならせることができる。この場合、複数の音響空間(S)のそれぞれに、形状の異なる第1部材(40)が配置されることが好ましい。このことで、音響空間(S)の空間容積を互いに異ならせることができる。
【0090】
また、第1部材(40)が配置された音響空間(S)では、長手方向の一端から他端に向かって、空間の断面面積が変化するように形成される。言い換えると、冷媒ガスの流れ方向に対する流路断面(空間断面)の面積が変化する。このような音響空間(S)では冷媒ガスの流速が変化するため、冷媒ガスの流速が一定の場合に比べて、圧縮機(10)の騒音および振動の抑制効果の向上を図ることができる。
【0091】
(5-4)変形例4
図8に示すように、変形例4の抑制機構(100)は、音響空間(S)に設けられる消音機構(50)をさらに備える。
【0092】
消音機構(50)は、音響空間(S)の長手方向に沿って設けられる板状の部材である。消音機構(50)が取り付けられた音響空間(S)では、音響空間(S)の一端から他端に至るまでの間に冷媒ガスが流通する主流路(52)から分岐する複数の副流路(53)が形成される。各副流路(53)は袋小路に形成される。このため、消音機構(50)が設けられた音響空間(S)では、ヘルムホルツ効果により、騒音が抑えられる。
【0093】
(5-5)変形例5
図9に示すように、変形例5の抑制機構(100)では、支持部(5)は、長手方向に直交する断面形状が長手方向に変化するように形成される。このように支持部(5)を形成することで、4つの音響空間(S1~S4)の空間容積を互いに異ならせることができる。
【0094】
例えば、上記実施形態の圧縮機(10)において、4つの支持部(5)を、θ1乃至θ4が同一となるように配置した場合でも、4つの支持部(5)を長手方向の一端から他端に向かって断面形状が変化するように形成すると共に、各支持部(5)の断面形状を互いに異なるよう形成することで、4つの音響空間(S1~S4)の空間容積を互いに異ならせる共に、音響空間(S)の長手方向に直交する断面の形状も一端から他端に向かって変化するように形成できる。
【0095】
圧縮機(10)に設けられる複数の支持部(5)のうち、本例の支持部(5)のように形成される支持部(5)は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0096】
(5-6)変形例6
図10に示すように、変形例6の抑制機構(100)では、支持部(5)は、長手方向にらせん状に形成される。このことで、音響空間(S)はらせん状の流路を形成し、冷媒ガスが直線状に流れる場合よりも、流路長を長く取ることができ、空間共鳴周波数を変調することができる。
【0097】
(5-7)変形例7
図11に示すように、変形例8の抑制機構(100)では、支持部(5)は、ケーシング(11)周方向に隣り合う音響空間(S)の間を連通する連通路(60)を有する。このことで、音響空間(S)の空間断面は、連通路(60)において広くなるため、音響空間(S)を流れる冷媒ガスは、連通路(60)において膨張する。このような連通路(60)を複数設けることで、音響空間(S)を流れる冷媒ガスは、膨張および収縮を繰り返す結果、騒音を抑制できる。
【0098】
(6)その他の実施形態
圧縮機(10)は、ロータリ圧縮機またはスクロール圧縮機であってもよい。この場合、圧縮機(10)のケーシング(11)は縦長に形成される。
【0099】
上記実施形態および上記各変形例において、支持部(5)は、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。なお、支持部(5)の数は多い方が好ましい。支持部(5)の数が多いと、その分音響空間(S)の数も多くなる。音響空間(S)の数が増えると、各音響空間(S)で発生する周波数は高周波側にシフトする。高周波側にシフトすることで、その分ケーシング(11)が加振されることを抑制できる。
【0100】
上記実施形態および上記各変形例において、支持部(5)の数は、素数であることが好ましい。圧縮機の他の空間との連動を考慮すると、支持部(5)の個数を素数とすることで、加振力を低減できる。具体的に、スクリュー圧縮機の機能部品の数(スクリュー溝数、吸入または吐出ポート数、ベアリングを保持するスポーク数、支持部(5)の数など)が決まると、自ずとケーシング内に形成される空間のレイアウトが規定される。このとき、公約数の数を有する上記機能部品が存在すると、該機能部品が配置される空間同士が連動し、共鳴モードが励起されることとなる。その結果、共鳴モードによる加振力は、空間同士が連動しない場合に比べて増大する。従って、支持部(5)の数を素数とすることにより、空間同士の連動を抑えることができ、その結果同時多発的に各空間の励起を抑えることができる。
【0101】
上記実施形態において、支持部(5)は電動機(15)の外周面に設けられていても良い。すなわち、支持部(5)は、電動機(15)の外周面の一部を構成してもよい。
【0102】
上記実施形態において、抑制機構(100)は、複数の音響空間(S)のうち、少なくとも1つのケーシング(11)の長手方向長さが他と異なるとしてもよい。具体的に、4つの支持部(5)のうち、少なくとも1つが長手方向の長さが他と異なってもよい。例えば、第1支持部(5a)のケーシング(11)の長手方向の長さは、他の支持部(5)の長手方向の長さよりも短くてもよい。このように一部の支持部(5)の長さを変えることによって、音響空間(S)の空間容積を他の音響空間(S)の容積を異ならせることができる。
【0103】
上記変形例1において、周方向幅と径方向長さの比(W/D)の異なる支持部(5)は、2つあってもよい。また、すべての支持部(5)において、W/Dが異なっていても良い。
【0104】
上記変形例1の抑制機構(100)において、4つの音響空間(S1~S4)のうち、少なくとも1つの径方向長さが他と異なってもよい。例えば、第1支持部(5a)は、周方向幅W1が、他の3つの周方向幅(W2乃至W4)と同一、かつ、径方向長さD1のみが、他の3つの径方向長さ(D2乃至D4)と異なっていてもよい。
【0105】
上記変形例1の抑制機構(100)において、4つの音響空間(S1~S4)のうち、少なくとも1つの周方向長さが他と異なってもよい。例えば、第1支持部(5a)は、径方向長さD1が、他の3つの径方向長さ(D2乃至D4)と同一、かつ、周方向幅W1のみが、他の3つの周方向幅(W2乃至W4)と異なっていてもよい。
【0106】
上記変形例1の抑制機構(100)において、4つの音響空間(S1~S4)のうち、少なくとも1つの径方向長さおよび周方向長さが他と異なってもよい。例えば、第1支持部(5a)は、径方向長さD1が、他の3つの径方向長さ(D2乃至D4)と異なり、かつ、周方向幅W1が、他の3つの周方向幅(W2乃至W4)と異なっていてもよい。
【0107】
上記変形例2において、第1支持部(5a)乃至第4支持部(5d)は、4つの周方向幅(W1乃至W4)が同一、かつ、4つの径方向長さ(D1乃至D4)が互いに異なっていてもよい。また、第1支持部(5a)乃至第4支持部(5d)は、4つの径方向長さ(D1乃至D4)が同一、かつ、4つの周方向幅(W1乃至W4)が互いに異なっていてもよい。また、第1支持部(5a)乃至第4支持部(5d)は、4つの周方向幅(W1乃至W4)が互いに異なり、かつ、4つの径方向長さ(D1乃至D4)が互いに異なっていてもよい。
【0108】
上記実施形態および上記各変形例において、抑制機構(100)は、全ての音響空間(S1~S4)の容積を足した全容積のうち、半分以上の容積を占める少なくとも1つの音響空間(S)の共鳴モードの励起を抑制すればよい。音響空間(S)の空間容積の大きいほど共鳴モードの励起による振動および騒音が大きくなるため、全容積の半分以上を占める音響空間(S)の共鳴モードを抑制することで、圧縮機の騒音および振動を抑えることができる。
【0109】
上記実施形態において、スクリュー溝(32a)は6つであってもよい。3溝にくらべ脈動周波数が短波長になる分、吸入冷媒または吐出冷媒による加振力が小さくなる。抑制機構(100)が加わることでさらに騒音・振動を抑えることができる。
【0110】
上記実施形態において、圧縮機(10)は、スクリューロータ(32)を2つ備えるスクリュー圧縮機であってもよいし、スクリューロータ(32)を3つ備えるスクリュー圧縮機であってもよい。
【0111】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上説明したように、本開示は、圧縮機について有用である。
【符号の説明】
【0113】
5 支持部
10 圧縮機
11 ケーシング
15 電動機
30 圧縮機構
31 シリンダ部
32 スクリューロータ
32a スクリュー溝
33 ゲートロータ
35 圧縮室
40 第1部材
50 消音機構
60 連通路
100 抑制機構
S 所定空間(音響空間)