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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20240410BHJP
   A47C 7/30 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/30 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022115183
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2021022936の分割
【原出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2022132540
(43)【公開日】2022-09-08
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2016154010
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】溝井 健介
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特許第7112005(JP,B2)
【文献】実開平01-133441(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/70
A47C 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションフレームと、
前記クッションフレームに支持され、着座者を支持する支持部材と、
前記支持部材を拘束する拘束部とを備え、
前記クッションフレームは、左右に離間して配置され、前後方向に延びる一対のサイドフレームを有し、
前記拘束部は、前記クッションフレームに掛けられた第1部位と当該第1部位よりも着座者の坐骨に近い第2部位とを有する一対の第3支持部材を含み、前記第2部位が、前記支持部材を支持し、
前記支持部材は、クッションパッドを支持しており、
前記支持部材は、第1支持部材と、前記第1支持部材の左右両側に配置され、変形可能な第2支持部材と、前記第1支持部材に連結された補強ワイヤと、を含み、
前記第3支持部材は、前記第2部位が前記第2支持部材を支持し、
前記補強ワイヤは、前記第3支持部材と平行に配置された部分を有し、
前記第3支持部材の後端部は、前記第1支持部材および前記第2支持部材と連結され、
前記第3支持部材の前端部は、前記第2支持部材と連結され、前記第1支持部材と連結されていないことを特徴とするシート。
【請求項2】
クッションフレームと、
前記クッションフレームに支持され、着座者を支持する支持部材と、
前記支持部材を拘束する拘束部とを備え、
前記クッションフレームは、左右に離間して配置され、前後方向に延びる一対のサイドフレームを有し、
前記拘束部は、前記クッションフレームに掛けられた第1部位と当該第1部位よりも着座者の坐骨に近い第2部位とを有する一対の第3支持部材を含み、前記第2部位が、前記支持部材を支持し、
前記支持部材は、クッションパッドを支持しており、
前記支持部材は、第1支持部材と、前記第1支持部材の左右両側に配置され、変形可能な第2支持部材と、前記第1支持部材に連結された補強ワイヤと、を含み、
前記第3支持部材は、前記第2部位が前記第2支持部材を支持し、
前記補強ワイヤは、前記第3支持部材と平行に配置された部分を有し、
前記クッションパッドには、上面に、下に凹み、前後方向に延びる溝が形成され、
前記第3支持部材は、上下方向から見て前記溝と重なることを特徴とするシート。
【請求項3】
クッションフレームと、
前記クッションフレームに支持され、着座者を支持する支持部材と、
前記支持部材を拘束する拘束部とを備え、
前記クッションフレームは、左右に離間して配置され、前後方向に延びる一対のサイドフレームを有し、
前記拘束部は、前記クッションフレームに掛けられた第1部位と当該第1部位よりも着座者の坐骨に近い第2部位とを有する一対の第3支持部材を含み、前記第2部位が、前記支持部材を支持し、
前記支持部材は、クッションパッドを支持しており、
前記支持部材は、第1支持部材と、前記第1支持部材の左右両側に配置され、変形可能な第2支持部材と、前記第1支持部材に連結された補強ワイヤと、を含み、
前記第3支持部材は、前記第2部位が前記第2支持部材を支持し、
前記補強ワイヤは、前記第3支持部材と平行に配置された部分を有し、
一対の前記第3支持部材は、互いに連結されていることを特徴とするシート。
【請求項4】
前記補強ワイヤは、前記第2部位と平行な部分を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシート。
【請求項5】
前記補強ワイヤは、矩形形状を有し、
前記第3支持部材の前端部は、前後方向において前記補強ワイヤの前端部と同じ位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項6】
前記補強ワイヤは、
左右方向に延びる第1のワイヤと、
前記第1のワイヤと前後方向に並んで配置され、左右方向に延びる第2のワイヤと、を含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、互いに平行であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシート。
【請求項7】
前記クッションパッドは、表皮で覆われていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のシート。
【請求項8】
シートの前後方向において、前記補強ワイヤは、着座者の坐骨に対応した位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間座っても疲労感が少ないシートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートは、長時間座っても疲れないことが求められ、特に自動車等に採用されるシートにおいては、このような性能は重要である。一般に、自動車用のシートでは、シートクッションに複数のバネを前後または左右に掛け渡す構造が多く用いられる。このような構造では、例えば、スプリングは、同等のスプリングが左右に所定間隔で配置される(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
また、座席の前後方向に所定間隔で配置され、左右の側枠部に係止されるテンションスプリングを、着座ラインに沿って曲面上に成形されている樹脂プレートに埋設させた構造も提案されている(特許文献3)。
【0004】
また、シートフレームに面状バネをフックにより取り付けるとともに、面状バネの略中央に着座人体の体圧部位(坐骨結節部)を支持する樹脂製支持パネルを設ける構造のシートも提案されている(特許文献4)。
【0005】
また、体の曲線に沿った大きな浅い凹部をシートクッションを構成するパンフレームに設け、このパンフレームで臀部の周囲の荷重を支えようとするものもある(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-117406号公報
【文献】特開平3-7751号公報
【文献】実開平2-54445号公報
【文献】特開昭64-14053号公報
【文献】米国特許第5236247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、特許文献2のように、クッションフレームにスプリングを均一に配置しただけの場合、坐骨が下に突出していることから坐骨周辺ばかりを大きな荷重で支えることになり、着座者の坐骨周辺の血流が悪くなり、長時間座っていると疲労感が出てくるという問題がある。特許文献3や特許文献4のように、座骨とその近傍を下支えする樹脂製支持部材を設ける構成も同様の問題がある。
【0008】
また、特許文献5のように、変形しないパンフレームで座っている者の荷重を支える場合、座った感触が硬く底付き感が感じられるという問題がある。
【0009】
以上のような技術的背景に鑑み、座り心地がよく、長時間座っても疲労感が少ないシートを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
クッションフレームと、クッションフレームに支持され、着座者を支持する第1支持部材と、第1支持部材の左右両側に配置され、変形可能な第2支持部材と、各第2支持部材を、左右方向中央側よりも左右方向外側の方が下方へ沈みにくくするように拘束する拘束部とを備えるシートを提案する。シートは、好ましくは、拘束部により、着座者を支持する上側の支持面が、着座者が着座していないときに第1姿勢をとり、着座者が着座しているときに第1姿勢よりも左右方向内側を向く第2姿勢をとるように構成される。
【0011】
このような構成によれば、拘束部によって第2支持部材の左右方向外側部分が下方へ沈みにくくなるので、人が座った後に、第2支持部材の上面が左右方向内側を向いた第2姿勢になりやすい。すなわち、人がシートに座ると、第2支持部材が撓むことで第2支持部材の上側の支持面が第1姿勢から第2姿勢となり、第1姿勢よりも左右方向内側を向いて斜めになる。これにより、第2支持部材が着座者の臀部および大腿部の側部を外側から挟むように斜め上に支持するので、第2支持部材が斜めにならない場合に比較して着座者の臀部および大腿部の側部を強く支持する。この結果、相対的に坐骨の周辺の圧力が下がり、坐骨周辺と臀部および大腿部の全体でバランス良く着座者を支持する。このため、血行が悪くならないことで疲労感を少なくすることができる。
【0012】
また、このシートでは、第2支持部材が斜めに変形するため、シートクッションが着座者の臀部および大腿部の形状に沿った形状に近づくので、着座者の体型によらず快適な座り心地を実現することができる。
【0013】
前記したシートにおいて、各第2支持部材は、クッションフレームに前後方向に掛け渡された、左右方向に交互に屈曲しながら延びるSバネを含むものであってもよい。
【0014】
前記したシートにおいて、クッションフレームは、左右に離間して配置され、前後方向に延びる一対のサイドフレームを有し、拘束部は、それぞれ第1部位と当該第1部位よりも左右内側に位置する第2部位とを有する一対の第3支持部材を含み、各前記第3支持部材は、左右外側に位置する第1部位がサイドフレームに連結され、左右内側に位置する第2部位が第2支持部材を支持するよう配置されていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、第3支持部材が第1部位においてサイドフレームに連結されることで第1部位が下がらないように拘束され、第2部位において第2支持部材を支持することで、第2支持部材の当該連結された部位が下方に下がりにくくなる。これにより、人がシートに座ったときに、第2支持部材が第2姿勢をとりやすくなる。
【0016】
前記したシートにおいて、各第3支持部材は、対応する第2支持部材に対し、第2支持部材の左右方向中心位置よりも、左右外側の位置に連結されていることが望ましい。
【0017】
このような構成によれば、第2支持部材は、左右外側の部分が下方に下がりにくくなるので、人がシートに座ったときに、第2支持部材が第2姿勢をとりやすくなる。
【0018】
前記したシートにおいて、各第3支持部材は、バンド、樹脂のプレートまたは金属のワイヤからなっていてもよい。
【0019】
前記したシートにおいて、クッションフレームは、左右に離間して配置され、前後方向に延びる一対のサイドフレームを有し、各第2支持部材は、左右外側の端部が対応するサイドフレームに回転不能に固定された弾性変形可能な部材であり、拘束部は、第2支持部材をサイドフレームに回転不能に固定した部分であってもよい。
【0020】
この場合に、サイドフレームと第2支持部材は、一体の部材からなっていてもよい。
【0021】
前記したシートにおいて、第1支持部材は、クッションフレームに前後方向に掛け渡された、左右方向に交互に屈曲しながら延びるSバネを含むものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】シートの一例である車両用シートの斜視図である。
図2図1に示した車両用シートに内蔵されるクッションフレームおよびシートバックフレームの斜視図である。
図3】シートクッションを前後方向に沿って見た断面図であり、乗員が座る前(a)と、乗員が座った後(b)の図である。
図4】第2実施形態に係る車両用シートに内蔵されるクッションフレームおよびシートバックフレームの斜視図である。
図5】第2実施形態に係る車両用シートのシートクッションを前後方向に沿って見た断面図であり、乗員が座る前(a)と、乗員が座った後(b)の図である。
図6】第2実施形態の第1変形例に係る車両用シートのシートクッションを前後方向に沿って見た断面図である。
図7】第2実施形態の第2変形例に係る車両用シートのシートクッションを前後方向に沿って見た断面図である。
図8】第3実施形態に係る車両用シートに内蔵されるクッションフレームおよびシートバックフレームの斜視図(a)と、吊りバンドの拡大斜視図(b)である。
図9】第3実施形態に係る車両用シートのシートクッションを前後方向に沿って見た断面図である。
図10】第4実施形態に係る車両用シートに内蔵されるクッションフレームおよびシートバックフレームの斜視図である。
図11】第4実施形態に係る車両用シートのシートクッションを前後方向に沿って見た断面図であり、乗員が座る前(a)と、乗員が座った後(b)の図である。
図12】第5実施形態に係る車両用シートのクッションフレームおよびシートバックフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながらシートの一例としての車両用シートについて説明する。
[第1実施形態]
一実施形態の車両用シートは、例えば、図1に示すように、自動車の運転席に配置される車両用シートSとして構成されている。この車両用シートSは、ウレタンフォームなどのクッション材からなるクッションパッド51が合成皮革や布地などの表皮52(図3参照)で覆われたシートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を備えている。なお、以下の説明において、前後、左右の方向は、シートクッションS1に座った着座者の一例としての乗員を基準とする。
【0024】
図2に示すように、車両用シートSは、内部に図2に示すようなシートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1の骨格を構成するクッションフレームF1と、シートバックS2の骨格を構成するシートバックフレームF2を備えてなる。なお、図示は省略したが、ヘッドレストS3もその骨格を構成するヘッドレストフレームを内蔵している。
【0025】
クッションフレームF1は、左右に離間して配置され、前後方向に延びる一対のサイドフレーム21と、各サイドフレーム21の前端部同士を連結するフロントフレーム22と、各サイドフレーム21の後端部同士を連結するリアフレーム23とを備えてなる。
【0026】
各サイドフレーム21は、左右方向を向く側壁部21Aと、側壁部21Aの上端から左右内側へ延出する上フランジ21Bと、側壁部21Aの下端から左右内側へ延出する下フランジ21Cとを備えている。上フランジ21Bにおける前後方向中央よりも後ろ寄りには、後述する吊りワイヤ34を掛止するフック21Eが形成されている。
【0027】
フロントフレーム22は、金属板からなるフレーム、いわゆるパンフレームである。フロントフレーム22には、上側の面に、左右に離間して4つ並んで配置されたフック22Aが、フロントフレーム22を構成する板金を切り起こすことで設けられている。
リアフレーム23は、パイプからなるフレームである。リアフレーム23には、左右に離間して4つ並んで配置されたフック23Aが設けられている。
【0028】
クッションフレームF1には、フロントフレーム22とリアフレーム23に、左右方向に交互に屈曲しながら前後方向に延びる4本の弾性変形可能なSバネ、具体的には第1Sバネ31と第2Sバネ32が掛け渡されている。第1Sバネ31は、クッションフレーム
F1の左右方向中央に2本配置されている。第1Sバネ31は、乗員を支持する第1支持部材の一例であり、具体的には、乗員の坐骨の真下付近を通るように配置されている。第2Sバネ32は、第1Sバネ31の左右両側にそれぞれ1つずつ、計2つ配置されている。第2Sバネ32は、変形可能な第2支持部材の一例であり、乗員の坐骨の最も下方に突出している部分より、全体的に左右外側(各第2Sバネ32の左右方向中心位置が乗員の坐骨の最も下方に突出している部分の左右外側)に配置されている。このため、例えば、2つの第2Sバネ32の左右方向の中心位置同士の距離(ピッチ)D1は、21~27cm、望ましくは22~26cmとなっている。第1Sバネ31および第2Sバネ32の前端は、それぞれフック22Aに掛止され、第1Sバネ31および第2Sバネ32の後端は、それぞれフック23Aに掛止されている。
【0029】
また、クッションフレームF1は、2つの第1Sバネ31同士を連結する金属の補強ワイヤ33と、第1Sバネ31および第2Sバネ32の後端部同士を連結するとともに第2Sバネ32をサイドフレームに連結する、拘束部および第3支持部材の一例としての吊りワイヤ34とを備える。
【0030】
補強ワイヤ33は、平面視において矩形に屈曲形成されたワイヤであり、金属板からなるカシメ部材39により第1Sバネ31に固定されている。具体的には、補強ワイヤ33は、左側の第1Sバネ31の後端部における1つのS字形状部分と、右側の第1Sバネ31の後端部における1つのS字形状部分とを取り囲む大きさに形成され、各S字形状部分の後側と前側の計4箇所でカシメ部材39により第1Sバネ31に固定されている。
【0031】
吊りワイヤ34は、およそ、左右内側に開口するU字形状が向かい合って一部繋がった形状の金属のワイヤである。吊りワイヤ34は、左右外側に位置する第1部位(フック21Eに掛止された部分)においてフック21Eに掛止されることでサイドフレーム21に連結され、第1部位よりも左右内側に位置する第2部位(カシメ部材39Sの部分)において第2Sバネ32に連結されている。
【0032】
詳細には、吊りワイヤ34は、左右方向に水平に延びる左右連結部34Aと、左右連結部34Aの左右両端部から左右方向外側に斜め上に延びる後方吊り部34Bと、各後方吊り部34Bの左右両端部から前方に延びる前後延在部34Cと、前後延在部34Cの前端から左右方向内側の斜め下に延びるとともに左右方向内側に水平に延びる前方吊り部34Dとを含んでなる。
【0033】
吊りワイヤ34は、左右方向の伸びがほとんどなく、吊りワイヤ34の左右方向の弾性係数は、第2Sバネ32の前後方向の弾性係数よりも小さい。
【0034】
左右連結部34Aは、各第1Sバネ31および各第2Sバネ32の後端部における左右方向に延びる部分にカシメ部材39,39Sにより固定されている。
各前後延在部34Cはサイドフレーム21のフック21Eにそれぞれ掛止されている。
各前方吊り部34Dは、各第2Sバネ32のS字形状のうち、左右連結部34Aよりも前の位置における左右方向に延びる部分にカシメ部材39Sにより固定されている。各前方吊り部34Dの左右内側の端部は、各第2Sバネ32の位置で途切れており、第1Sバネ31までは届いていない。前方吊り部34Dの前後方向の位置は、通常の着座者における坐骨の位置周辺か、それよりも少し前に位置している。
【0035】
左右連結部34Aが各第1Sバネ31および各第2Sバネ32を後端部で連結していることにより、4本のSバネ(第1Sバネ31および第2Sバネ32)の後端部は一体化して高い剛性を有している。
【0036】
一方、左右連結部34Aよりも前方の位置においては、2本の第1Sバネ31は補強ワイヤ33で連結されることで比較的高い剛性を有しているが、第2Sバネ32は、隣接する第1Sバネ31と連結されていないことで、比較的撓みやすくなっている。また、吊りワイヤ34は、第2Sバネ32の後部(ここでは、左右連結部34Aより前側の所定範囲の部分)を、左右方向外側に位置するサイドフレーム21に連結していることで、各第2Sバネ32を、左右方向中央側よりも左右方向外側の方が下方へ沈みにくくするように拘束している。この拘束により、後に詳述するように、第2Sバネ32は、乗員が着座していないときに乗員を支持する上側の支持面が第1姿勢をとり、乗員が着座しているときに支持面が第1姿勢よりも左右方向内側を向く第2姿勢をとるように構成されている。
【0037】
以上のように構成された車両用シートSの作用効果について図3を参照しながら説明する。
【0038】
シートクッションS1に乗員が座っていない状態においては、図3(a)に示すように、第1Sバネ31および第2Sバネ32は撓んでおらず、第2Sバネ32の支持面32Sは、真上を向いている(第1姿勢)。なお、第1Sバネ31の支持面31Sも真上を向いている。
【0039】
シートクッションS1に乗員Pが座ると、図3(b)に示すように、第1Sバネ31および第2Sバネ32が乗員Pの重みで撓んで下がる。このとき、第1Sバネ31は、支持面31Sが真上を向いたまま下に下がるが、第2Sバネ32は、吊りワイヤ34の前方吊り部34Dにより、第2Sバネ32の左右外側に位置するサイドフレーム21に連結されているので、左右方向内側よりも外側が下に沈みにくく、支持面32Sが真上よりも左右方向内側を向いて斜めになる(第2姿勢)。このため、第2Sバネ32は、乗員Pの臀部および大腿部の側部を外側から挟むように斜め上に支持するので、吊りワイヤ34の前方吊り部34Dにより拘束されていない場合に比較して、乗員Pの臀部および大腿部の側部を強く支持する。この結果、相対的に坐骨P1(正確には、坐骨P1の最も下に突出したところ。以下においても同様。)の周辺の圧力が下がり、坐骨P1の周辺と臀部および大腿部の全体でバランス良く着座者を支持する。こうして、本実施形態の車両用シートSによれば、乗員Pの臀部および大腿部の血行が悪くならないことで乗員Pの疲労感を少なくすることができる。
【0040】
また、第2Sバネ32は、乗員Pの重さおよび大きさに応じて支持面32Sが左右方向内側を向くように斜めに変形するので、シートクッションS1が乗員Pの臀部および大腿部の形状に沿った形状に近づき、乗員Pの体型によらず快適な座り心地を実現することができる。
【0041】
なお、本実施形態において、第1Sバネ31および第2Sバネ32は、フロントフレーム22およびリアフレーム23に対してフック22Aおよびフック23Aで取り付けられていたが、これらの取付け方法は特に限定されず、ねじ止めや溶接であってもよいし、他の取付け部品を用いてもよい。また、吊りワイヤ34は、サイドフレーム21に対して、フック21Eに掛止されることで連結されていたが、この連結方法も特に限定されず、ねじ止めやタイバンド等を用いても構わない。
【0042】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る車両用シートについて説明する。第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通の部分については図面に同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
図4に示すように、第2実施形態に係る車両用シートのクッションフレームF1は、吊
りワイヤ34に対応する第2補強ワイヤ134がサイドフレーム21に連結されておらず、代わりに、第3支持部材の一例としての樹脂性の支持プレート140がサイドフレーム21と第2Sバネ32を連結している。
【0044】
第2補強ワイヤ134は、左右方向に水平に延びる左右連結部134Aと、左右連結部34Aの左右両端部から前方に延びる前後延在部134Cと、前後延在部34Cの前端から左右方向内側に水平に延びる前側連結部134Dとを含んでなる。
【0045】
左右連結部134Aは、各第1Sバネ31および各第2Sバネ32の後端部における左右方向に延びる部分にカシメ部材39,39Sにより固定されている。
各前後延在部134Cは、第2Sバネ32の左右外側の端部に沿って前後方向に延びている。
【0046】
各前側連結部134Dは、各第2Sバネ32のS字形状のうち、左右連結部134Aよりも前の位置における左右方向に延びる部分にカシメ部材39Sにより固定されている。各前側連結部134Dの左右内側の端部は、各第2Sバネ32の位置で途切れており、第1Sバネ31までは届いていない。このため、第2補強ワイヤ134は、2つの第1Sバネ31と2つの第2Sバネ32の後端部同士を接続して当該後端部の剛性を高くしている。第2Sバネ32の後端部よりも前側の所定範囲では、前後延在部134Cがあることで、第2Sバネ32の左右外側部分の剛性が少し高くなっている。
【0047】
支持プレート140は、弾性変形可能な樹脂のプレートからなり、サイドフレーム21の上フランジ21Bの上に載った固定部141と、固定部141の左右方向内側の端部から斜め下に延びる延出部142と、延出部142の左右方向内側の端部から左右方向内側に水平に延びる支持部143とを含んでなる。
【0048】
固定部141は、クリップまたはネジなどからなる固定部材151によりサイドフレーム21の上フランジ21Bに固定されている。
【0049】
支持部143は、クリップまたはタイバンドなどからなる固定部材152により第2Sバネ32に固定されている。なお、支持部143は、図5(a)に示すように、固定部材152を通すための貫通孔143Aを有している。図4に戻り、固定部材152が配置された箇所、つまり、支持プレート140が第2Sバネ32に連結された箇所は、第2Sバネ32の左右方向中心位置よりも、左右外側に位置している。これにより、第2Sバネ32に乗員の重みが上から掛かった場合に、左右方向中心位置よりも左右外側が拘束されていることで、第2Sバネ32の支持面32Sが左右方向内側を向きやすくなっている。
【0050】
以上のように構成された車両用シートの作用効果について説明する。
シートクッションS1に乗員が座っていない状態においては、図5(a)に示すように、第1Sバネ31および第2Sバネ32は撓んでおらず、第2Sバネ32の支持面32Sは、真上を向いている(第1姿勢)。なお、第1Sバネ31の支持面31Sも真上を向いている。
【0051】
シートクッションS1に乗員Pが座ると、図5(b)に示すように、第1Sバネ31および第2Sバネ32が乗員Pの重みで撓んで下がる。このとき、第1Sバネ31は、支持面31Sが真上を向いたまま下に下がるが、第2Sバネ32は、支持プレート140により、第2Sバネ32の左右外側に位置するサイドフレーム21に連結されているので、左右方向内側よりも外側が下に沈みにくく、支持面32Sが真上よりも左右方向内側を向いて斜めになる(第2姿勢)。このため、第1実施形態の場合と同様に、坐骨P1の周辺の圧力が下がり、坐骨P1の周辺と臀部および大腿部の全体でバランス良く着座者を支持す
る。こうして、本実施形態の車両用シートによっても、乗員Pの臀部および大腿部の血行が悪くならないことで乗員Pの疲労感を少なくすることができる。
【0052】
また、第2Sバネ32は、乗員Pの重さおよび大きさに応じて支持面32Sが左右方向内側を向くように斜めに変形するので、シートクッションS1が乗員Pの臀部および大腿部の形状に沿った形状に近づき、乗員Pの体型によらず快適な座り心地を実現することができる。
【0053】
発明者は、第2実施形態の車両用シートのように支持プレート140を設けたシートと、第2実施形態の車両用シートから支持プレート140を外した比較例のシートとで、運転者の疲労感を比較した。具体的には、同じ経路を、同じ運転者で3時間かけて運転を行い、運転中の運転者の乳酸値を計測した。その結果、支持プレート140を設けた場合には、支持プレート140を設けない比較例に比較して、3時間運転後の乳酸値が約半分であった。
【0054】
なお、図4および図5に示したような樹脂のプレートを用いた支持プレート140は、クリップ等によりサイドフレーム21に固定する場合に限られず、例えば、図6のように構成してもよい。図6の支持プレート140は、固定部141の左右両端部から下方に延びる側壁部144と、側壁部144の下端部から内側に突出する係合爪145を有している。一方、サイドフレーム21の側壁部21Aは、係合爪145に対応した位置に係合孔21Fを有している。そして、係合爪145が係合孔21Fに係合することで支持プレート140がサイドフレーム21に連結されている。
【0055】
このように、支持プレート140がサイドフレーム21の左右外側まで回り込んでサイドフレーム21に沿って設けられる場合には、支持プレート140は、固定梁のように左右両端部で回転しにくいので、左右内側の端部においては、支持プレート140と第2Sバネ32の固定を省略してもよい。
【0056】
また、図7に示す例のように、樹脂のプレートを用いた支持プレート140をさらに他の形状にしてもよい。図7の支持プレート140は、固定部141に対応する部分にフック146が設けられている。一方、サイドフレーム21の上フランジ21Bには、前後方向に延びるロッド21Gが上フランジ21Bに設けられている。そして、フック146をロッド21Gに係合させることで支持プレート140がサイドフレーム21に連結されている。
【0057】
このような構成によれば、支持プレート140を簡易な作業でサイドフレーム21に連結することができる。
【0058】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る車両用シートについて説明する。第3実施形態においては、第2実施形態と異なる点についてのみ説明し、第2実施形態と共通の部分については図面に同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
図8(a)、(b)に示すように、第3実施形態に係る車両用シートのクッションフレームF1は、第2Sバネ32をサイドフレーム21に連結する第3支持部材が、バンドにより構成されている。支持バンド240は、伸びの小さい帯状の布バンド241と、布バンド241の両端に固定されたフック242とを備えてなる。布バンド241の左右方向の弾性係数は、第2Sバネ32の前後方向の弾性係数より小さい。一方、サイドフレーム21には、第2実施形態の第2変形例と同様に、ロッド21Gが固定されている。そして、布バンド241の一方のフック242は、ロッド21Gに掛止され、他方のフック24
2は、第2補強ワイヤ134の前後延在部134Cに掛止されている。
【0060】
これにより、支持バンド240は、第2補強ワイヤ134を介して第2Sバネ32を支持している。第2補強ワイヤ134は、第2Sバネ32の後部のS字形状部を補強して剛性を高くしているので、支持バンド240が第2Sバネ32を支持する第2部分は、フック242と前後延在部134Cが係合している部分に相当する。
【0061】
このような構成によっても、支持バンド240を簡易な作業で組み付けることができる。また、図9に示すように、乗員Pが座ったときには、支持バンド240が第2Sバネ32の左右両端部が下がりにくいように拘束するので、第2Sバネ32の支持面32Sを左右方向内側に向けることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、第2補強ワイヤ134を介して支持バンド240で第2Sバネ32を支持したが、フック242を直接、第2Sバネ32に係合してもよい。この場合、第2Sバネ32の前後に延びる部分を連続的に円弧形状に屈曲させるのではなく、直線形状の部分を設けるようにするのが望ましい。
【0063】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る車両用シートについて説明する。第4実施形態においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通の部分については図面に同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
図10に示すように、第4実施形態に係る車両用シートのクッションフレームF1は、第2Sバネ32が無く、その代わりに、左右の端部がサイドフレーム21に固定された弾性変形可能な板バネからなる第2支持部材の一例としての側部支持部材340が設けられている。
【0065】
側部支持部材340は、サイドフレーム21の上フランジ21Bの上に載った固定部341と、固定部341の左右方向内側の端部から斜め下に延びる延出部342と、延出部342の左右方向内側の端部から左右方向内側に水平に延びる支持部343とを含んでなる。
【0066】
側部支持部材340は、前後方向において、乗員の坐骨の位置またはそれより少し前に位置している。
【0067】
固定部341は、上フランジ21Bに溶接などにより回転不能に固定されている。つまり、側部支持部材340は、サイドフレーム21に片持ち梁状に固定されている。この形態においては、側部支持部材340をサイドフレーム21に固定した部分(側部支持部材340の固定部341に対応する部分)が拘束部に相当する。
【0068】
このような構成によれば、シートクッションS1に乗員が座っていない状態においては、図11(a)に示すように、第1Sバネ31および支持部343は撓んでおらず、支持部343の上面である支持面343Sは、真上を向いている(第1姿勢)。なお、第1Sバネ31の支持面31Sも真上を向いている。
【0069】
シートクッションS1に乗員Pが座ると、図11(b)に示すように、第1Sバネ31および側部支持部材340が乗員Pの重みで撓んで下がる。このとき、第1Sバネ31は、支持面31Sが真上を向いたまま下に下がるが、側部支持部材340は、左右方向外側の端部がサイドフレーム21に固定されているため、左右方向内側よりも外側が下に沈みにくく、支持面343Sが真上よりも左右方向内側を向いて斜めになる(第2姿勢)。こ
のため、支持面343Sは、乗員Pの臀部および大腿部の側部を外側から挟むように斜め上に支持するので、乗員Pの臀部および大腿部の側部を強く支持する。この結果、相対的に坐骨P1の周辺の圧力が下がり、坐骨P1の周辺と臀部および大腿部の全体でバランス良く着座者を支持する。こうして、本実施形態の車両用シートによれば、乗員Pの臀部および大腿部の血行が悪くならないことで乗員Pの疲労感を少なくすることができる。
【0070】
また、側部支持部材340は、乗員Pの重さおよび大きさに応じて支持面343Sが左右方向内側を向くように斜めに変形するので、シートクッションS1が乗員Pの臀部および大腿部の形状に沿った形状に近づき、乗員Pの体型によらず快適な座り心地を実現することができる。
【0071】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係る車両用シートについて説明する。第5実施形態においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通の部分については図面に同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
第1実施形態においては、補強ワイヤ33が2つの第1Sバネ31を連結し、吊りワイヤ34も、2つの第1Sバネ31を連結していた。しかし、図12に示すように、補強ワイヤ133が、各第1Sバネ31の後端部を補強するものの、2つの第1Sバネ31を連結しない構成であってもよい。また、吊りワイヤ134も、2つの第1Sバネ31を連結しない構成であってもよい。このように、2つの第1Sバネ31の後端部をワイヤで連結しない構成にすることで、第1Sバネ31が撓みやすくなり、坐骨の直下に位置する第1Sバネ31の支持力を小さくすることができる。第1Sバネ31の支持力が小さくなることで、第2支持バネ32の支持力は大きくなり、乗員を、坐骨の直下のみでなく、臀部から大腿部の全体でバランス良く支持し、坐骨を支持する圧力を小さくすることができる。これにより、血行が悪くならないことで疲労感を少なくすることができる。
【0073】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
【0074】
例えば、第4実施形態において、側部支持部材340は、サイドフレーム21に溶接等により固定されていたが、側部支持部材340は、サイドフレーム21と一体の部材から構成されていてもよい。
【0075】
また、車両用シートSは、シートクッションS1とシートバックS2とヘッドレストS3とが一体に構成されたバケットタイプの車両用シートとして構成することもできる。
【0076】
さらに、本発明のシートは、車両以外の乗物用のシートであってもよいし、乗物用以外のシートであってもよい。
【0077】
前記実施形態において、第1支持部材および第2支持部材は、直接シートクッションフレームに支持されていたが、第1支持部材および第2支持部材は、直接には、シートクッションフレームに支持されていなくてもよい。例えば、第1支持部材および第2支持部材は、直接にはシートクッションパッドに支持され、シートクッションパッドを介してシートクッションフレームに支持されていてもよい。
【0078】
第1支持部材および第2支持部材は、Sバネ以外のスプリングであってもよい。
また、拘束部は、サイドフレームに連結される場合に限らず、左右のサイドフレームを連結するパイプ等の連結部材を設け、この連結部材に、第2支持部材の一部を支持する部材を拘束部として設けてもよい。例えば、左右のサイドフレームを連結するパイプに、上
方に突出する拘束部材を固定し、拘束部材の上端が第2支持部材の左右方向外寄りの部分に下から当接可能になるように構成することもできる。
【0079】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
図1
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図6
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