(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ウレタン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 251/34 20060101AFI20240410BHJP
C07C 265/00 20060101ALI20240410BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20240410BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C07D251/34 D CSP
C07C265/00
C08G18/28 015
C08G18/00 C
(21)【出願番号】P 2022515372
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2021015176
(87)【国際公開番号】W WO2021210534
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】202010284458.X
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】山本 育男
(72)【発明者】
【氏名】南 晋一
(72)【発明者】
【氏名】周 斌
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-519653(JP,A)
【文献】特表2013-511574(JP,A)
【文献】特開2014-210882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、C07C、C08G、C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン化合物であって、
(A1)
ポリイソシアネートであるイソシアネート
から形成される単位、および
(A2)式:
HO-Z(Y-R)
n
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
Yは、それぞれ独立的に、
-O-、-NH-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-C
6H
4-、-NH-(CH
2)
m-NH-、-NH-(CH
2)
m-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NH-(CH
2)
m-O-C(=O)-、-NH-(CH
2)
m-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-O-C
6H
4-、-NH-S(=O)
2-、-S(=O)
2-NH-、-NH-(CH
2)
m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH
2)
m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH
2)
m-C(=O)-NH-、-NH-(CH
2)
m-NH-C(=O)-、-NH-(CH
2)
m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH
2)
m-O-C
6H
4-、-NH-(CH
2)
m-NH-C
6H
4-、-NH-(CH
2)
m-NH-S(=O)
2-、または-NH-(CH
2)
m-S(=O)
2-NH-(ただし、mは1~5の整数である。)であり、
Zは、直接結合、あるいは2
価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、
1である。]
で示される長鎖アルコール
から形成される単位を含んでな
り、
イソシアネート(A1)と長鎖アルコール(A2)とが反応してウレタン結合を形成している、ウレタン化合物。
【請求項2】
さらに、
(A3)ブロック剤、および
(A4)アルコール化合物、
から選択された少なくとも1種から形成される単位を含んでなる請求項1に記載のウレタン化合物。
【請求項3】
イソシアネート(A1)が、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、MDIオリゴマー、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジイソシアネートの付加物、アロファネート変性品、ビウレット変性品、イソシアヌレート変性品またはカルボジイミド変性品、およびウレタンプレポリマーから選択された少なくとも1種である請求項1または2に記載のウレタン化合物。
【請求項4】
長鎖アルコール(A2)が、
HO-(CH
2)
m-NH-C(=O)-R
HO-(CH
2)
m-C(=O)-NH-R
HO-(CH
2)
m-O-C(=O)-R
HO-(CH
2)
m-C(=O)-O-R
HO-(CH
2)
m-NH-C(=O)-O-R
HO-(CH
2)
m-O-C(=O)-NH-R、
HO-(CH
2)
m-NH-C(=O)-NH-R
HO-(CH
2)
m-NH-S(=O)
2-R、および
HO-(CH
2)
m-S(=O)
2-NH-R
[式中、Rは、炭素数12~30の炭化水素基であり、
mは1~5の整数である。]
から選択された少なくとも1種である請求項1~3のいずれかに記載のウレタン化合物。
【請求項5】
ブロック剤(A3)が、オキシム、フェノール、アルコール、メルカプタン、アミド、イミド、イミダゾール、尿素、アミン、イミン、ピラゾールおよび活性メチレン化合物から選択された少なくとも1種である請求項2~4のいずれかに記載のウレタン化合物。
【請求項6】
アルコール化合物(A4)が、モノオールまたはポリオールであり、
モノオールが、炭素数1~10の開始モノアルコールにC
2またはC
3アルキレンオキサイドを付加した化合物であり、
ポリオールが、ジオール及びヒドロキシル基を3個以上有するポリオールであり、低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオールから選択された少なくとも1種である請求項2~5のいずれかに記載のウレタン化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のウレタン化合物、ならびにポリイソシアネート(A1)、長鎖アルコール(A2)、ブロック剤(A3)およびアルコール化合物(A4)からなる群から選択された少なくとも1種を含むウレタン混合物。
【請求項8】
(A)請求項1~6のいずれかに記載のウレタン化合物、および
(B)水
を含んでなる水系ウレタン組成物。
【請求項9】
水系ウレタン組成物が水分散体である請求項8に記載の水系ウレタン組成物。
【請求項10】
水系ウレタン組成物が架橋剤または補助剤である請求項8または9に記載の水系ウレタン組成物。
【請求項11】
有機溶媒中でイソシアネート(A1)および長鎖アルコール(A2)を混合して反応させ、次いで、水と混合することを特徴とする、請求項8~10のいずれかに記載の水系ウレタン組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれかに記載のウレタン化合物を含む表面処理組成物で基材を処理することからなる、基材を処理する方法。
【請求項13】
請求項1~6のいずれかに記載のウレタン化合物が架橋物として被処理物に付着している、処理された繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウレタン化合物、およびウレタン化合物を含む水系ウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素撥剤および非フッ素撥剤などの撥剤において、高性能への要求がある。撥水性を補助するための添加剤として、架橋剤が挙げられる。主たる架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、例えば、ブロック剤に特徴を有するイソシアネート架橋剤である。
特許文献1(国際公開2006/038466号公報)は、特定化学式で示されるポリイソシアネートを必須成分とする水分散型ポリウレタン組成物を開示している。
特許文献2(日本特許公開2014-210882号公報)は、ポリイソシアネート単位、片末端水酸基であるポリエチレンオキサイド単位およびブロック剤単位を有してなり、アロファネート基/イソシアヌレート基の数比率が30/100~200/100である、ブロックポリイソシアネート組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2006/038466号公報
【文献】日本特許公開2014-210882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の架橋剤では必ずしも十分な撥水撥油性を補助できるとは言えず、より高性能な、洗濯耐久性を補助する架橋剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、炭素数7~40の炭化水素基を有する長鎖アルコールから形成されているウレタン化合物を提供する。
【0006】
本開示の好ましい態様は、次のとおりである。
態様1:
(A)ウレタン化合物であって、
(A1)イソシアネート、および
(A2)式:
HO-Z(Y-R)n
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
Yは、それぞれ独立的に、-O-、-NH-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-、-NH-(CH2)m-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-O-C6H4-、-NH-S(=O)2-、-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-O-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-(ただし、mは1~5の整数である。)であり、
Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示される長鎖アルコール
から形成される単位を含んでなるウレタン化合物。
【0007】
態様2:
さらに、
(A3)ブロック剤、および
(A4)アルコール化合物、
から選択された少なくとも1種から形成される単位を含んでなる態様1に記載のウレタン化合物。
態様3:
イソシアネート(A1)が、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、MDIオリゴマー、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジイソシアネートの付加物、アロファネート変性品、ビウレット変性品、イソシアヌレート変性品またはカルボジイミド変性品、およびウレタンプレポリマーから選択された少なくとも1種である態様1または2に記載のウレタン化合物。
態様4:
長鎖アルコール(A2)が、
HO-(CH2)m-NH-C(=O)-R
HO-(CH2)m-C(=O)-NH-R
HO-(CH2)m-O-C(=O)-R
HO-(CH2)m-C(=O)-O-R
HO-(CH2)m-NH-C(=O)-O-R
HO-(CH2)m-O-C(=O)-NH-R、
HO-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-R
HO-(CH2)m-NH-S(=O)2-R、および
HO-(CH2)m-S(=O)2-NH-R
[式中、Rは、炭素数12~30の炭化水素基であり、
mは1~5の整数である。]
から選択された少なくとも1種である態様1~3のいずれかに記載のウレタン化合物。
【0008】
態様5:
ブロック剤(A3)が、オキシム、フェノール、アルコール、メルカプタン、アミド、イミド、イミダゾール、尿素、アミン、イミン、ピラゾールおよび活性メチレン化合物から選択された少なくとも1種である態様2~4のいずれかに記載のウレタン化合物。
態様6:
アルコール化合物(A4)が、モノオールまたはポリオールであり、
モノオールが、炭素数1~10の開始モノアルコールにC2またはC3アルキレンオキサイドを付加した化合物であり、
ポリオールが、ジオール及びヒドロキシル基を3個以上有するポリオールであり、低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオールから選択された少なくとも1種である態様2~5のいずれかに記載のウレタン化合物。
【0009】
態様7:
態様1~6のいずれかに記載のウレタン化合物、ならびにポリイソシアネート(A1)、長鎖アルコール(A2)、ブロック剤(A3)およびアルコール化合物(A4)からなる群から選択された少なくとも1種を含むウレタン混合物。
態様8:
(A)態様1~6のいずれかに記載のウレタン化合物、および
(B)水
を含んでなる水系ウレタン組成物。
態様9:
水系ウレタン組成物が水分散体である態様8に記載の水系ウレタン組成物。
態様10:
水系ウレタン組成物が架橋剤または補助剤である態様8または9に記載の水系ウレタン組成物。
【0010】
態様11:
有機溶媒中でイソシアネート(A1)および長鎖アルコール(A2)を混合して反応させ、次いで、水と混合することを特徴とする、態様8~10のいずれかに記載の水系ウレタン組成物の製造方法。
態様12:
態様1~6のいずれかに記載のウレタン化合物を含む表面処理組成物で基材を処理することからなる、基材を処理する方法。
態様13:
態様1~6のいずれかに記載のウレタン化合物が架橋物として被処理物に付着している、処理された繊維製品。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、撥水撥油剤などの表面処理剤の性能を向上させる補助剤として機能するウレタン化合物が得られる。ウレタン化合物は、表面処理剤が高い撥水撥油性を与えるのを補助する。ウレタン化合物によれば、高い洗濯耐久性が得られ、特に、撥水性について高い洗濯耐久性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、
(A)ウレタン化合物、および
(B)水
を含んでなる水系ウレタン組成物に関する。
【0013】
ウレタン化合物(A)は、
(A1)ポリイソシアネート、および
(A2)式:
HO-Z(Y-R)n
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
Yは、それぞれ独立的に、-O-、-NH-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-、-NH-(CH2)m-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-O-C6H4-、-NH-S(=O)2-、-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-O-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-(ただし、mは1~5の整数である。)であり、
Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示される長鎖アルコールから形成されている。すなわち、ウレタン化合物(A)は、ポリイソシアネート(A1)から形成された単位、および長鎖アルコール(A2)から形成された単位を有する。
【0014】
さらに、ウレタン化合物(A)は、
(A3)ブロック剤、および
(A4)アルコール化合物、
から選択された少なくとも1種から形成された単位を有してよい。ウレタン化合物(A)は、ブロック剤(A3)から形成された単位およびアルコール化合物(A4)から形成された単位の両方を有することが好ましい。
【0015】
ウレタン化合物(A)は、次の成分から形成されていてよい。
成分(A1)+成分(A2)
成分(A1)+成分(A2)+成分(A3)
成分(A1)+成分(A2)+成分(A4)
あるいは
成分(A1)+成分(A2)+成分(A3)+成分(A4)
【0016】
本開示において、ポリイソシアネート(A1)、長鎖アルコール(A2)、ブロック剤(A3)およびアルコール化合物(A4)のいずれかが、少なくとも部分的に未反応であってよい。したがって、本開示は、ポリイソシアネート(A1)、長鎖アルコール(A2)、ブロック剤(A3)およびアルコール化合物(A4)からなる群から選択された少なくとも1種、ならびにウレタン化合物(A)を含むウレタン混合物を提供する。
【0017】
ポリイソシアネート(A1)の例は、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、MDIオリゴマー、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジイソシアネートの付加物、アロファネート変性品、ビウレット変性品、イソシアヌレート変性品またはカルボジイミド変性品、およびウレタンプレポリマーである。
【0018】
ポリイソシアネート(A1)はジイソシアネートであることが好ましい。
ポリイソシアネート(A1)は、式:
O=C=N-R0-N=C=O
[式中、R0は、2価の有機基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
R0は、ポリイソシアネートからイソシアネート基を除いた基である。R0は、例えば、炭素数3~30、例えば4~20または5~15の炭化水素基であってよい。
【0019】
長鎖アルコール(A2)において、Rは、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、12~30であることが好ましく、16~22であることがより好ましい。
【0020】
長鎖アルコール(A2)において、Yは、-O-、-NH-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-、-NH-(CH2)m-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-O-C6H4-、-NH-S(=O)2-、-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-O-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-
[式中、mは1~5、特に2または4である。]
であってよい。
【0021】
Yは、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-NH-S(=O)2-、-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-
[式中、mは1~5の整数、特に2または4である。]
であることが好ましい。Yは、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-であることがより好ましい。
【0022】
長鎖アルコール(A2)において、Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、直鎖構造を有しても、枝分かれ構造を有していてもよい。Zの炭素数は、2~4、特に2であることが好ましい。Zの具体例は、直接結合、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、枝分かれ構造を有する-CH2CH=、枝分かれ構造を有する-CH2(CH-)CH2-、枝分かれ構造を有する-CH2CH2CH=、枝分かれ構造を有する-CH2CH2CH2CH2CH=、枝分かれ構造を有する-CH2CH2(CH-)CH2-、枝分かれ構造を有する-CH2CH2CH2CH=である。Zは、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、または-CH2CH2CH2CH2-であることが好ましい。
Zは直接結合でないことが好ましい。
【0023】
長鎖アルコール(A2)の好ましい具体例は次のとおりである。
HO-(CH2)m-NH-C(=O)-R
HO-(CH2)m-C(=O)-NH-R
HO-(CH2)m-O-C(=O)-R
HO-(CH2)m-C(=O)-O-R
HO-(CH2)m-NH-C(=O)-O-R
HO-(CH2)m-O-C(=O)-NH-R
HO-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-R
HO-(CH2)m-NH-S(=O)2-R
HO-(CH2)m-S(=O)2-NH-R
[式中、Rは、炭素数7~40の炭化水素基であり、
mは1~5の整数である。]
【0024】
ブロック剤(A3)は、ポリイソシアネートのイソシアネート基をマスクして、イソシアネート基の反応を抑制する化合物である。ブロック剤(A3)の例としては、オキシム、フェノール、アルコール、メルカプタン、アミド、イミド、イミダゾール、尿素、アミン、イミン、ピラゾール、および活性メチレン化合物が挙げられる。ブロック剤(A3)の他の例には、ピリジノール、チオフェノール、ジケトンおよびエステルが挙げられる。ブロックされたポリイソシアネート(ブロックイソシアネート化合物)は、親水性基を有する化合物によって変性されていてもよい。撥水性および撥油性が高くなるので、ブロック剤(A3)としては、オキシム、ピラゾール、および活性メチレン化合物が好ましい。
ブロック剤が存在することにより、撥水性の洗濯耐久性が高くなる。
【0025】
オキシムの例としては、ホルムアミドオキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシムおよびシクロヘキサノンオキシムが挙げられる。
【0026】
フェノールの例としては、少なくとも1つの(好ましくは1つまたは2つの)C1-10アルキル基を場合により有していてもよいフェノールが挙げられる。フェノールの具体例としては、フェノール;モノアルキルフェノール(例えば、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノールおよびオクチルフェノール);ならびに、ジアルキルフェノール(例えば、ジエチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジプロピルクレゾール、ジブチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジオクチルフェノールおよびジノニルフェノール)。
フェノールの追加の具体例には、スチレン化されたフェノール、ヒドロキシベンゾエートエステルが挙げられる。
【0027】
アルコールの例としては、C1-C30アルキル基を有する(好ましくは一価の)アルコール(特にアルカノール)が挙げられる。
アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、1-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシ-1-プロパノールおよび3-メチル-2-ペンテン-4-イン-1-オールが挙げられる。
メルカプタンの具体例としては、ブチルメルカプタンおよびドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0028】
アミド(好ましくは酸性アミド)の具体例としては、アセトアニリド、酢酸アミド、β-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ラウロラクタム、ステアロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタムおよびピロリジノンが挙げられる。
イミドの具体例としては、マレイン酸イミドおよびコハク酸イミドのような酸イミドが挙げられる。
【0029】
イミダゾールの具体例としては、イミダゾールおよび2-メチルイミダゾールが挙げられる。
尿素の具体例としては、尿素、チオ尿素およびエチレン尿素が挙げられる。
【0030】
アミンの具体例としては、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジエチルアミン、ジプロピルアミンおよびプロピルエチルアミンが挙げられる。
イミンの具体例としては、エチレンイミンおよびポリエチレンイミンが挙げられる。
【0031】
ピラゾールの具体例としては、2-メチル-ピラゾール、3-メチル-ピラゾール、4-メチル-ピラゾール、2,4-ジメチル-ピラゾール、2,5-ジメチル-ピラゾール、3,4-ジメチル-ピラゾール、3,5-ジメチル-ピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチル-ピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチル-ピラゾールが挙げられる。
活性メチレン化合物の例としては、マロネートエステル(例えば、C1-30-アルキルのマロン酸エステル)、アセト酢酸エステル(例えば、C1-30-アルキルアセト酢酸エステル)およびアセチルアセトンが挙げられる。
【0032】
ブロックイソシアネート化合物を形成するためのブロック剤は、ピラゾール化合物またはマロネートエステル化合物、特にピラゾール化合物であることが好ましい。
【0033】
ピラゾール化合物は、式:
[式中、それぞれのR
11は、同一または異なって、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、NO
2、ハロゲン原子または-C(=O)OR
12基(R
12は炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
nは0,1,2または3である。]
で示されるものであってよい。
【0034】
ピラゾール化合物の具体例としては、2-メチル-ピラゾール、3-メチル-ピラゾール、4-メチル-ピラゾール、2,4-ジメチル-ピラゾール、2,5-ジメチル-ピラゾール、3,4-ジメチル-ピラゾール、3,5-ジメチル-ピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチル-ピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチル-ピラゾールが挙げられる。
【0035】
マロネートエステル化合物は、マロン酸とアルコール(例えば、一価アルコール)との反応生成物(モノエステルまたはジエステル(好ましくは、ジエステル))である。一般に、アルコールは、水酸基に結合している1~30の炭素原子を有する炭化水素基を有している。炭化水素基は好ましくはアルキル基、特に1~4つの炭素原子を有するアルキル基である。
【0036】
マロネートエステルの具体例としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸メチル、マロン酸エチル、マロン酸プロピルおよびマロン酸ブチルが挙げられる。ジエステルが好ましい。マロネートエステルの好ましい具体例としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピルおよびマロン酸ジブチルが挙げられる。
【0037】
アルコール化合物(A4)は、モノオールまたはポリオールであってよい。
モノオールは、炭素数1~10の開始モノアルコール(メタノールなど)にC2またはC3アルキレンオキサイドを付加した化合物であることが好ましい。
ポリオールは、ジオール及びヒドロキシル基を3個以上有するポリオールであってよい。ポリオールは、低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、あるいは結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオールであってよい。
アルコール化合物(A4)は、水酸基に加えて、親水基を有することが好ましい。親水基はウレタン反応によって消費されない。親水基の例は、C2またはC3アルキレンオキサイド基、アミノ基などである。
ウレタン化合物は、架橋により分子量が増加するので、アルコール化合物(A4)は、モノオールのみからなっていてもよい。
【0038】
ウレタン化合物は、ポリイソシアネート(A1)由来のR0基、長鎖アルコール(A2)由来の-Z(Y-R)n基を有しており、さらに、ブロック剤(A3)由来の基、アルコール化合物(A4)由来の基を有することが好ましい。
【0039】
長鎖アルコール(A2)およびアルコール化合物(A4)の合計量は、イソシアネートインデックス[アルコール中の活性水素基に対するポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比]が、2~0.5、好ましくは1.5~0.8、特に1.2~0.9になるような量であってよい。長鎖アルコール(A2)とアルコール化合物(A4)のモル比は、10:90~100:0または10:90~90:10、例えば20:80~80:20、特に30:70~70:30であってよい。
ブロック剤(A3)の量(当量比)は、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量に対して、1~50当量%、例えば2~30当量%、特に3~20当量%であってよい。
【0040】
水系ウレタン組成物は、ウレタン化合物(A)及び水(B)を含む。水(B)の量は、ウレタン化合物(A)の量が、水系ウレタン組成物に対して、0.1~70重量%、例えば1~50重量%となるような量であってよい。水系ウレタン組成物は、有機溶媒を含んでもよく、有機溶媒の量は、水(B)100重量部に対して、200重量部以下、例えば、1~50重量部であってよい。
【0041】
水系ウレタン組成物は水分散体であることが好ましい。水系ウレタン組成物は、自己乳化型であることが好ましい。水系ウレタン組成物は、(ウレタン化合物(A)100重量部に対して0.1~10重量部の量で)乳化剤を含んでもよいが、乳化剤を含まないことが好ましい
【0042】
ウレタン化合物(A)は、ポリイソシアネート(A1)に、長鎖アルコール(A2)、場合により、アルコール化合物(A4)を反応させ、さらに、必要により、ブロック剤(A3)を反応させることによって製造できる。
【0043】
水系ウレタン組成物は、有機溶媒中でポリイソシアネート(A1)および長鎖アルコール(A2)を混合して反応させ、次いで、水を添加することによって製造できる。あるいは、水系ウレタン組成物は、有機溶媒中でポリイソシアネート(A1)、長鎖アルコール(A2)およびアルコール化合物(A4)を混合して反応させ、さらにブロック剤(A3)を反応させて、次いで、水を添加することによって製造できる。水を添加した後に、有機溶媒を除去してもよい。
長鎖アルコール(A2)およびアルコール化合物(A4)をポリイソシアネート(A1)と反応させる温度および時間は、0~60℃および1分~24時間であってよい。ブロック剤(A3)を反応させる温度および時間は、30~120℃および1分~24時間であってよい。
【0044】
ウレタン化合物(A)(および水系ウレタン組成物)は、架橋剤または補助剤として働くことができる。「補助剤」とは、表面処理剤の性能を補助する薬剤(撥水撥油性、防汚性、汚れ離脱性、剥離性および/または離型性を向上させる薬剤、特に撥水撥油性を向上させる薬剤)、または被処理物を改質する薬剤(特に繊維製品を改質する薬剤、例えば繊維製品の風合いを向上する薬剤)、または表面処理剤処理時に安定的な加工を補助する薬剤、を意味する。
を意味する。
【0045】
水系ウレタン組成物と表面処理剤を混合することによって、表面処理組成物が得られる。
【0046】
ウレタン化合物(A)と混合される表面処理剤は、どのようなものであってもよく、フッ素系、ケイ素系、ウレタン系、アクリル系などであってよい。表面処理剤は、溶液、エマルション(特に、水性分散液)またはエアゾールの形態であってよいが、水性分散液であることが好ましい。表面処理剤の有効成分の例は、含フッ素重合体、含ケイ素重合体、ポリウレタン、非フッ素非ケイ素重合体などである。表面処理組成物において、ウレタン化合物(A)の量は、表面処理剤の有効成分100重量部に対して、1~100重量部、特に5~50重量部であってよい。
【0047】
表面処理組成物は、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ離脱剤、剥離剤および離型剤として使用できる。
【0048】
表面処理組成物は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、該処理剤を水(および/または有機溶媒)に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。キュアリングを行うことが好ましい。キュアリングの温度は、60~250℃、特に100~200℃であってよく、キュアリングの時間は、1秒~10分、特に10秒~3分であってよい。さらに、表面処理組成物に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液におけるウレタン含フッ素重合体の濃度は0.01~10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05~10重量%であってよい。
【0049】
表面処理組成物(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極およびガス拡散支持体)、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0050】
繊維製品は、繊維、布等の形態のいずれであってもよい。
【0051】
表面処理組成物は、基材の表面に、所望の剥離性を付与できる。したがって、基材の表面を、他の表面(該基材における他の表面、あるいは他の基材における表面)から容易に剥離することができる。
表面処理組成物を適用する基材の例は、繊維製品(例えば、不織布および織布)、紙、石材、皮革、樹脂、ガラス、金属などである。機材は、布または紙であることが好ましい。
表面処理組成物は、同様の基材(例えば、布と布、紙と紙)の間の剥離、または異なった基材(例えば、布と樹脂、布と金属、紙と布、紙とガラス)の間の剥離のために使用される。表面処理組成物は、粘着シート、粘着テープの粘着面の保護材、離型フィルム、離型紙、付箋紙の製造などにおいて使用できる。
【0052】
表面処理組成物は、内部離型剤あるいは外部離型剤としても使用できる。
【0053】
含フッ素重合体は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃~200℃で加熱される。
【0054】
あるいは、含フッ素重合体はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0055】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。本開示の含フッ素重合体は、セルロース系繊維(例えば、綿またはレーヨンなど)を疎油性および撥油性にすることにおいて特に効果的である。また、本開示の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。
【0056】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。含フッ素重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は紙であってもよい。含フッ素重合体を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0057】
「処理」とは、処理剤(表面処理組成物)を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
ウレタン化合物の架橋物(表面処理剤の有効成分とウレタン化合物との反応物)が、被処理物に付着する。
【実施例】
【0058】
次に、実施例および比較例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本開示を限定するものでない。
以下において、部、%または比は、特記しない限り、重量部、重量%または重量比を表す。
【0059】
以下において使用した試験方法は次のとおりである。
【0060】
シャワー撥水性試験
シャワー撥水性試験をAATCC試験法22-2010に準じて行った。
体積が少なくとも250mlであるガラス漏斗、および、250mlの水を20秒間~30秒間にわたって噴霧することができるスプレーノズルを使用する。試験片フレームは、直径が15cmの金属フレームである。サイズが約20cmx20cmである3枚の試験片シートを準備し、シートを試験片ホルダーフレームに固定し、シートにしわがないようにする。噴霧の中心をシートの中心に置く。室温の水(250mL)をガラス漏斗に入れ、試験片シートに(25秒~30秒の時間にわたって)噴霧する。保持フレームを台から取り外し、保持フレームの一方の端をつかんで、前方表面を下側にし、反対側の端を堅い物質で軽くたたく。保持フレームを180°さらに回転させ、同じ手順を繰り返して、過剰な水滴を落とす。湿った試験片を、撥水性が不良から優れた順で、0、50、70、80、90および100の評点(撥水性No.)をつけるために、湿潤比較標準物と比較する。結果を3回の測定の平均から得る。数字の後の表示「+」は、その数字よりも評価が高いことを示し、表示「-」は、その数字よりも評価が低いことを示す。
【0061】
撥油性試験
撥油性試験をAATCC試験法118-1992に準じて行った。
処理済み試験布を温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験布上に試験液0.05mlを静かに滴下し、30秒間放置後、液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥油性は、パスした試験液の最高点数とし、撥油性不良なものから良好なレベルまでFail、1、2、3、4、5、6、7および8の9段階で評価する。数字の後の表示「+」は、その数字よりも評価が高いことを示し、表示「-」は、その数字よりも評価が低いことを示す。
【0062】
【0063】
撥水撥油性の洗濯耐久性
JIS L-0217-103法による洗濯を5回、10回または15回繰り返して行い、その後の撥水撥油性を評価する(HL5、HL10またはHL15)。HL0は、洗濯を行わない初期の撥水撥油性である。
【0064】
合成例1
300mLフラスコに1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(NCO含量21.8%)32.5gとジプロピレングリコールジメチルエーテル30g、ステアリルアミドエチルアルコール4.85gを入れて窒素雰囲気化中攪拌下に室温から85℃まで内温を上げ、ジブチル錫ジラウレートを0.020g入れ2時間攪拌した。その後、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量1000)5gを入れて3時間攪拌し、さらにジメチルピラゾール14.3gを入れて2時間攪拌した。IRにてNCO基の消失を確認し、室温まで冷却した。冷却後、40℃の水を強攪拌下で添加し、10分攪拌、固形分20%の水分散体を製造した。
【0065】
比較合成例1
300mLフラスコにジフェニルジイソシアネート(NCO含量21.8%)32.5gとジプロピレングリコールジメチルエーテル30g、を入れて窒素雰囲気化中攪拌下に室温から85℃まで内温を上げ、ジブチル錫ジラウレートを0.020g入れ2時間攪拌した。その後、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量1000)5gを入れて3時間攪拌し、さらにメチルケトオキシム14.3gを入れて2時間攪拌した。IRにてNCO基の消失を確認し、室温まで冷却した。冷却後、40℃の水を強攪拌下で添加し、10分攪拌、固形分20%の水分散体を製造した。
【0066】
比較合成例2
300mLフラスコに1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(NCO含量21.8%)32.5gとジプロピレングリコールジメチルエーテル30g、ステアリルアルコール4.05gを入れて窒素雰囲気化中攪拌下に室温から85℃まで内温を上げ、ジブチル錫ジラウレートを0.020g入れ2時間攪拌した。その後、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量1000)5gを入れて3時間攪拌し、さらにジメチルピラゾール14.3gを入れて2時間攪拌した。IRにてNCO基の消失を確認し、室温まで冷却した。冷却後、40℃の水を強攪拌下で添加し、10分攪拌、固形分20%の水分散体を製造した。
【0067】
合成例2
1000mLオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(Cl)=CH2 (n=2.0)(13FClA)65.1g、CF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOCH=CH2 (n=2.0)(13FA)65.1g、ステアリルアクリレート30.9g、純水400g、水溶性グリコール系溶剤56g、塩化アルキルジメチルアンモニウム1.56g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル16.1g、を入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)61.2gを圧入充填し、アゾ基含有水溶性開始剤0.4gを添加し、60℃で20時間反応させ、含フッ素重合体の水性分散液(含フッ素撥水撥油剤)を得た。重合体の組成は、仕込みモノマーの組成にほぼ一致した。
【0068】
合成例3
500mLオートクレーブにステアリルアクリレート=45g、イソボロニルメタクリレート=5g、純水=145g、トリプロピレングリコール=15g、ソルビタンモノオレエート=1.5g、ポリオキシエチレン(EO:18)2級アルキル(C12-14)エーテル=2g、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド=1.5gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。オートクレーブ内を窒素置換後、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩=0.5gを添加し、60℃で3時間反応させ、非フッ素重合体の水性分散液を得た。更に純水で固形分濃度を30%に調整した。生成重合体の単量体組成は、単量体仕込み組成にほぼ一致した。
【0069】
実施例1
合成例2で得た含フッ素撥水撥油剤(C6パーフルオロアルキル基を有する含フッ素アクリル重合体を有効成分とする撥水撥油剤)を水で希釈して4%にし、合成例1で得た水分散体を1%になるように添加して均一に攪拌した。10枚のNylon織布(500mm x 200mm)、綿布(500mm x 200mm)をこの試験液に連続的に浸し、マングルに通し、170℃で1分間、ピンテンターで処理した。その後Nylon織布および綿布のそれぞれの生地についてシャワー撥水性試験、撥油性試験およびその洗濯耐久性試験に付した。結果を表Aに示す。
【0070】
比較例1および2
合成例1で得た水分散体に代えて、比較合成例1(比較例1)または比較合成例2(比較例2)で得た水分散体を用いる以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表Aに示す。
【0071】
実施例2
合成例2で得た含フッ素重合体の水分散体に代えて、合成例3で得た非フッ素重合体の水分散体を用いる以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表Aに示す。
【0072】
比較例3および4
合成例1で得た水分散体に代えて、比較合成例1(比較例3)または比較合成例2(比較例4)で得た水分散体を用いる以外は、実施例2と同様の手順を繰り返した。結果を表Aに示す。
【0073】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示のウレタン組成物は、架橋剤または補助剤として使用できる。本開示のウレタン組成物は、表面処理剤とともに使用でき、表面処理剤の効能を高め、効能の耐久性(特に洗濯耐久性)を向上できる。