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特許7469709位置合わせプログラム、位置合わせ方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】位置合わせプログラム、位置合わせ方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/36 20060101AFI20240410BHJP
   A61C 11/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61C13/36
A61C11/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022556871
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039459
(87)【国際公開番号】W WO2022085090
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半沢 克成
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 知宏
(72)【発明者】
【氏名】石塚 伸護
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0324605(US,A1)
【文献】特表2020-520269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0135931(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/36
A61C 11/00
A61C 19/04
A61C 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマーカ部が付加された上顎模型をスキャンして得られる第1のスキャンデータと、第2のマーカ部が付加された下顎模型をスキャンして得られる第2のスキャンデータとを取得し、
前記第1のスキャンデータに含まれる前記第1のマーカ部の領域と、前記第2のスキャンデータに含まれる前記第2のマーカ部の領域と、前記第1のマーカ部と前記第2のマーカ部の位置関係を定めた位置決め基準情報とに基づいて、前記第1のスキャンデータと前記第2のスキャンデータの位置関係を決定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする位置合わせプログラム。
【請求項2】
前記第1のマーカ部は、前記上顎模型の本体が設置される第1の模型台であり、前記第2のマーカ部は、前記下顎模型の本体が設置される第2の模型台である、ことを特徴とする請求項1に記載の位置合わせプログラム。
【請求項3】
前記位置決め基準情報は、位置決め治具に固定された、前記第1の模型台に対応する第3の模型台と、前記第2の模型台に対応する第4の模型台とを含む領域をスキャンして得られる第3のスキャンデータである、ことを特徴とする請求項2に記載の位置合わせプログラム。
【請求項4】
前記上顎模型の本体または前記下顎模型の本体は、咬合状態としたときの前記第1の模型台と前記第2の模型台の位置関係が、前記位置決め基準情報における前記第3の模型台の領域と前記第4の模型台の領域との位置関係と同じになるように、前記第1の模型台または前記第2の模型台との固定位置、または厚さが調整されている、ことを特徴とする請求項3に記載の位置合わせプログラム。
【請求項5】
前記第1のスキャンデータと前記第2のスキャンデータの位置関係を決定した後、前記第1のマーカ部の領域及び前記第2のマーカ部の領域のデータを削除する、処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の位置合わせプログラム。
【請求項6】
前記上顎模型または前記下顎模型は支台歯模型が抜かれた支台歯抜き模型であり、
前記位置決め情報では、前記第1のマーカ部または前記第2のマーカ部と、前記支台歯模型に付加された第3のマーカ部の位置関係が定められており、
前記コンピュータに、
前記第3のマーカ部が付加された前記支台歯模型をスキャンして得られる第4のスキャンデータを取得し、
前記第4のスキャンデータに含まれる前記第3のマーカ部の領域と、前記第1のマーカ部の領域または前記第2のマーカ部の領域と、前記位置決め基準情報とに基づいて、前記第1のスキャンデータまたは前記第2のスキャンデータと、前記第4のスキャンデータの位置関係を決定する、
処理を実行させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の位置合わせプログラム。
【請求項7】
前記第3のマーカ部は、前記支台歯模型の本体が設置される第5の模型台である、ことを特徴とする請求項6に記載の位置合わせプログラム。
【請求項8】
コンピュータが、
第1のマーカ部が付加された上顎模型をスキャンして得られる第1のスキャンデータと、第2のマーカ部が付加された下顎模型をスキャンして得られる第2のスキャンデータとを取得し、
前記第1のスキャンデータに含まれる前記第1のマーカ部の領域と、前記第2のスキャンデータに含まれる前記第2のマーカ部の領域と、前記第1のマーカ部と前記第2のマーカ部の位置関係を定めた位置決め基準情報とに基づいて、前記第1のスキャンデータと前記第2のスキャンデータの位置関係を決定する、
ことを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項9】
上顎模型に付加された第1のマーカ部と下顎模型に付加された第2のマーカ部の位置関係を定めた位置決め基準情報を記憶する記憶部と、
前記第1のマーカ部が付加された前記上顎模型をスキャンして得られる第1のスキャンデータと、前記第2のマーカ部が付加された前記下顎模型をスキャンして得られる第2のスキャンデータとを取得し、前記第1のスキャンデータに含まれる前記第1のマーカ部の領域と、前記第2のスキャンデータに含まれる前記第2のマーカ部の領域と、前記位置決め基準情報とに基づいて、前記第1のスキャンデータと前記第2のスキャンデータの位置関係を決定する処理部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置合わせプログラム、位置合わせ方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯科医療において、治療や技工作業の効率化などのため、CAD(Computer Aided Design)/CAM(Computer Aided Manufacturing)技術が用いられてきている(たとえば、特許文献1乃至4参照)。
【0003】
歯科医療において、CAD技術は、たとえば、インレー(詰め物)、クラウン(被せ物)、ブリッジ、義歯、インプラントなどの補綴物を設計する際に用いられる。このような補綴物を設計する際、まず、歯科医や歯科衛生士が採取した患者の口腔内の印象(歯型)をもとに、歯科技工士(以下技工士という)が歯列を含む上下顎の模型を製作する。そして、製作された模型が、3次元スキャナによってスキャンデータ(3次元データ)に変換され、コンピュータ上でそのスキャンデータを用いて補綴物が設計される。
【0004】
なお、上顎と下顎の一方の歯に設ける補綴物が、上顎と下顎の他方の歯に干渉しないように補綴物をCAD技術により設計するなどの理由のため、上顎と下顎とが咬み合わされた状態(咬合状態)をCAD上で再現することが行われる。たとえば、従来、上顎模型と下顎模型のそれぞれのスキャンデータとは別に取得した咬合状態の上下顎模型のスキャンデータに対して、上顎模型と下顎模型のそれぞれのスキャンデータを合わせる形で位置合わせを行い、咬合状態を再現していた。また、クラウンやブリッジなどの土台となる歯(支台歯)の模型のスキャンデータと顎模型のスキャンデータとの位置合わせも行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2020-526304号公報
【文献】特表2016-528020号公報
【文献】特開2009-101124号公報
【文献】特表2020-520269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の手法では、上顎模型と下顎模型のそれぞれのスキャンデータとは別に位置合わせ用のスキャンデータを用意しなければならないため、スキャン作業に時間がかかるという問題がある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、スキャン作業にかかる時間を短縮可能な位置合わせプログラム、位置合わせ方法及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様では、位置合わせプログラムが提供される。位置合わせプログラムは、第1のマーカ部が付加された上顎模型をスキャンして得られる第1のスキャンデータと、第2のマーカ部が付加された下顎模型をスキャンして得られる第2のスキャンデータとを取得し、第1のスキャンデータに含まれる第1のマーカ部の領域と、第2のスキャンデータに含まれる第2のマーカ部の領域と、第1のマーカ部と第2のマーカ部の位置関係を定めた位置決め基準情報とに基づいて、第1のスキャンデータと第2のスキャンデータの位置関係を決定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0009】
また1つの実施態様では、位置合わせ方法が提供される。
また1つの実施態様では、情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、本発明は、スキャン作業にかかる時間を短縮できる。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態の位置合わせ方法及び情報処理装置の一例を示す図である。
図2】情報処理装置のハードウェア例を示すブロック図である。
図3】位置決め基準情報の生成方法の一例を示す図である。
図4】上顎模型及び下顎模型の準備の一例を示す図である。
図5】位置合わせ処理の一例の流れを示すフローチャートである。
図6】スキャンデータの取得例を示す図である。
図7】各スキャンデータの位置合わせ例を示す図である。
図8】位置合わせ結果の出力例を示す図である。
図9】マーカ部の領域を削除した3次元モデルの一例を示す図である。
図10】位置合わせ用のスキャンデータの1つ目の例である。
図11】位置合わせ用のスキャンデータの2つ目の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の位置合わせ方法及び情報処理装置の一例を示す図である。
【0013】
第1の実施の形態の情報処理装置10は、上顎模型15のスキャンデータ17と下顎模型16のスキャンデータ18の位置合わせを行う。
情報処理装置10は、記憶部11及び処理部12を有する。
【0014】
記憶部11は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置、または、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置である。
記憶部11は、位置決め基準情報11aと、位置合わせ結果である3次元モデル11bを記憶する。
【0015】
位置決め基準情報11aは、上顎模型15に付加されるマーカ部と、下顎模型16に付加されるマーカ部の位置関係を定めた情報である。以下では、マーカ部の一例として、上顎模型15の本体15aが設置される模型台15b、下顎模型16の本体16aが設置される模型台16bを用いて説明を行うが、マーカ部はこれに限定されるものではない。マーカ部は、たとえば、上顎模型15の本体15aや下顎模型16の本体16aの決まった位置に付加される3つの所定の形状(たとえば三角)のマークであってもよい。
【0016】
位置決め基準情報11aは、たとえば、位置決め治具(後述の図3参照)に固定された2つの模型台を含む領域をスキャンしたスキャンデータであり、予め記憶部11に記憶されている。上記2つの模型台は、模型台15b,16bに対応するものであり、たとえば、形状及び大きさが模型台15b,16bと同じものである。位置決め基準情報11aにおける2つの模型台の領域では、たとえば、対向する面(本体15a,16aが接着される面)が平行で、面間の距離が50.0mmなどと、適切な位置関係となっている。
【0017】
3次元モデル11bは、スキャンデータの位置合わせ結果を示し、たとえば、上顎模型15と下顎模型16の咬合状態などを再現したものである。
処理部12は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアであるプロセッサにより実現される。ただし、処理部12は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの特定用途の電子回路を含んでもよい。プロセッサは、RAMなどのメモリに記憶されたプログラムを実行する。たとえば、位置合わせプログラムが実行される。なお、複数のプロセッサの集合を「マルチプロセッサ」または単に「プロセッサ」ということがある。
【0018】
処理部12は、上顎模型15と下顎模型16のそれぞれをスキャンして得られるスキャンデータ17,18を、たとえば、3次元スキャナ12aから取得する。なお、処理部12は、スキャンデータ17,18を図示しない他の情報処理装置や記憶装置からネットワークを介して取得(受信)してもよい。処理部12は、取得したスキャンデータ17,18を記憶部11に記憶させてもよい。
【0019】
上顎模型15の本体15aと下顎模型16の本体16aは、たとえば、患者ごとまたは症例ごとに製作されたものである。また、本体15a,16aは、ユーザによって咬合状態とされたときに、模型台15b,16bの位置関係が位置決め基準情報11aにおける領域11a1,11a2の位置関係と一致するように、厚みや模型台15b,16bとの固定位置が調整されていてもよい。この調整方法の例については、後述の第2の実施の形態において説明する。
【0020】
なお、図1の例では、下顎模型16は、支台歯模型が抜かれた支台歯抜き模型となっている。このため、処理部12は、支台歯模型のスキャンデータを取得し、上顎模型15または下顎模型16(支台歯抜き模型)のスキャンデータとの位置合わせを行ってもよいが、その例についても、後述の第2の実施の形態において説明する。
【0021】
そして、処理部12は、スキャンデータ17に含まれる模型台15bの領域17aと、スキャンデータ18に含まれる模型台16bの領域18aと、位置決め基準情報11aとに基づいて、スキャンデータ17,18の位置関係を決定する。
【0022】
位置決め基準情報11aが、位置決め治具に固定された2つの模型台を含む領域をスキャンしたスキャンデータである場合、図1に示したように位置合わせが行われる。すなわち、位置決め基準情報11aにおける一方の模型台の領域11a1と、スキャンデータ17に含まれる模型台15bの領域17aの位置合わせが行われる。位置合わせは、たとえば、領域11a1と領域17aの形状が一致するように行われる。模型台15bに位置合わせ用の3つのマークが付加されている場合には、領域11a1と領域17aのそれぞれに含まれる3つのマークが一致するように位置合わせが行われる。位置決め基準情報11aにおける他方の模型台の領域11a2と、スキャンデータ18に含まれる模型台16bの領域18aの位置合わせについても同様に行われる。
【0023】
図1では、位置合わせの結果、上顎模型15と下顎模型16の咬合状態が3次元モデル11bにより再現されている。本体15a,16aにおいて、咬合状態のときの模型台15b,16bの位置関係が位置決め基準情報11aにおける模型台15b,16bの位置関係と一致するように厚みや模型台15b,16bとの固定位置が調整されている場合、咬合状態が再現される。
【0024】
処理部12は、3次元モデル11bを記憶部11に記憶するとともに、情報処理装置10の外部に出力してもよい。たとえば、処理部12は、情報処理装置10に接続された表示装置12bに3次元モデル11bを出力して表示させてもよい。
【0025】
上記のように、第1の実施の形態の位置合わせ方法及び情報処理装置10では、処理部12は、上顎模型15と下顎模型16をそれぞれスキャンして得られるスキャンデータ17,18を取得する。そして、処理部12は、スキャンデータ17,18に含まれる模型台15b,16bの領域17a,18aと、模型台15b,16bの位置関係を定めた位置決め基準情報11aに基づいて、スキャンデータ17,18の位置関係を決定する。これにより、上顎模型15と下顎模型16のそれぞれのスキャンデータ17,18とは別に位置合わせ用のスキャンデータ(たとえば、咬合状態の上下顎模型のスキャンデータ)を用意しなくても位置合わせを行うことが可能となる。このため、スキャン作業にかかる時間を短縮できる。
【0026】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を説明する。
図2は、情報処理装置のハードウェア例を示すブロック図である。
【0027】
情報処理装置20は、CPU21、RAM22、HDD23、画像信号処理部24、入力信号処理部25、媒体リーダ26及び通信インタフェース27を有する。上記ユニットは、バスに接続されている。
【0028】
CPU21は、プログラムの命令を実行する演算回路を含むプロセッサである。CPU21は、HDD23に記憶されたプログラムやデータの少なくとも一部をRAM22にロードし、プログラムを実行する。なお、CPU21は複数のプロセッサコアを備えてもよく、情報処理装置20は複数のプロセッサを備えてもよく、以下で説明する処理を複数のプロセッサまたはプロセッサコアを用いて並列に実行してもよい。また、複数のプロセッサの集合(マルチプロセッサ)を「プロセッサ」と呼んでもよい。
【0029】
RAM22は、CPU21が実行するプログラムやCPU21が演算に用いるデータを一時的に記憶する揮発性の半導体メモリである。なお、情報処理装置20は、RAM以外の種類のメモリを備えてもよく、複数個のメモリを備えてもよい。
【0030】
HDD23は、OS(Operating System)やミドルウェアやアプリケーションソフトウェアなどのソフトウェアのプログラム、及び、データを記憶する不揮発性の記憶装置である。プログラムには、たとえば、上顎模型と下顎模型のそれぞれのスキャンデータの位置合わせを情報処理装置20に実行させる位置合わせプログラムが含まれる。データには、たとえば、前述の位置決め基準情報11aが含まれる。なお、情報処理装置20は、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)などの他の種類の記憶装置を備えてもよく、複数の不揮発性の記憶装置を備えてもよい。
【0031】
画像信号処理部24は、CPU21からの命令にしたがって、情報処理装置20に接続されたディスプレイ24aに画像を出力する。ディスプレイ24aとしては、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)、有機EL(OEL:Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどを用いることができる。
【0032】
入力信号処理部25は、情報処理装置20に接続された入力デバイス25aや3次元スキャナ25bから入力信号を取得し、CPU21に出力する。入力デバイス25aとしては、マウスやタッチパネルやタッチパッドやトラックボールなどのポインティングデバイス、キーボード、リモートコントローラ、ボタンスイッチなどを用いることができる。また、情報処理装置20に、複数の種類の入力デバイスが接続されていてもよい。
【0033】
媒体リーダ26は、記録媒体26aに記録されたプログラムやデータを読み取る読み取り装置である。記録媒体26aとして、たとえば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク(MO:Magneto-Optical disk)、半導体メモリなどを使用できる。磁気ディスクには、フレキシブルディスク(FD:Flexible Disk)やHDDが含まれる。光ディスクには、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)が含まれる。
【0034】
媒体リーダ26は、たとえば、記録媒体26aから読み取ったプログラムやデータを、RAM22やHDD23などの他の記録媒体にコピーする。読み取られたプログラムは、たとえば、CPU21によって実行される。なお、記録媒体26aは、可搬型記録媒体であってもよく、プログラムやデータの配布に用いられることがある。また、記録媒体26aやHDD23を、コンピュータ読み取り可能な記録媒体ということがある。
【0035】
通信インタフェース27は、ネットワーク27aに接続され、ネットワーク27aを介して他の情報処理装置と通信を行うインタフェースである。通信インタフェース27は、スイッチなどの通信装置とケーブルで接続される有線通信インタフェースでもよいし、基地局と無線リンクで接続される無線通信インタフェースでもよい。
【0036】
(位置決め基準情報の生成方法)
以下、第1の実施の形態において説明した位置決め基準情報11aの生成方法の一例を説明する。
【0037】
図3は、位置決め基準情報の生成方法の一例を示す図である。
位置決め基準情報11aは、たとえば、図3のように位置決め治具30に固定された模型台31,32を含む領域33を、3次元スキャナでスキャンすることで得られる。
【0038】
模型台31,32は、対向する面が平行になるように位置決め治具30により固定されている。また、位置決め治具30は、模型台31,32の対向する面間の距離を調整可能である。面間の距離は、たとえば、50.0mmなどとされる。位置決め基準情報11aに含まれる模型台31,32に対応する領域11a1,11a2が位置合わせに用いられるマーカ部の領域となる。
【0039】
位置決め基準情報11aは、図1に示した記憶部11の一例であるHDD23などに予め記憶される。なお、ユーザが3次元スキャナ25bを用いて、上記のような方法により位置決め基準情報11aを作成してもよい。
【0040】
(上顎模型及び下顎模型の準備)
図4は、上顎模型及び下顎模型の準備の一例を示す図である。
まず、たとえば、患者または症例ごとに上顎模型の本体40と下顎模型の本体41とが石膏を用いて製作される。なお、上顎模型の本体40または下顎模型の本体41には、支台歯模型が組込まれていてもよい。支台歯模型は本体40,41から取り外すことができる。以下の例では、下顎模型の本体41には、支台歯模型が組込まれているものとするが、上顎模型の本体40に支台歯模型が組込まれていてもよい。
【0041】
位置決め治具30は、模型台35を設置する部分と、模型台36を設置する部分とに分離することができる。ユーザは、両部分を分離した状態で、たとえば、模型台36に対して下顎模型の本体41を接着させ固定させる。その後、ユーザは模型台31に接着する前の上顎模型の本体40を、下顎模型の本体41にのせ、本体40,41をユーザの所望の位置合わせ状態(咬合状態)とさせる。その状態で、ユーザは、位置決め治具30に設置された模型台35の接着面を上顎模型の本体40の上部に押し当てて接着させる。これにより、本体40,41と模型台35,36との接着位置(固定位置)は、咬合状態を反映したものとなる。
【0042】
なお、模型台35,36の対向する面間の距離が、位置決め基準情報11aにおける模型台31,32の当該面間の距離と異なる場合、本体40を模型台35に接着する前に、距離が同じになるように本体40上に石膏が追加され、本体40の厚さが調整される。
【0043】
このように本体40,41は、ユーザの所望の咬合状態としたときの模型台35,36の位置関係が位置決め基準情報11aにおける領域11a1,11a2との位置関係と同じになるように、模型台35,36との固定位置または厚さが調整されている。
【0044】
その後、位置決め治具30から、模型台35に設置(接着)された上顎模型の本体40と、模型台36に設置(接着)された下顎模型の本体41とが取り外される。また、下顎模型の本体41に組み込まれていた支台歯模型が本体41から取り外され、別の模型台に設置(接着)される。
【0045】
(位置合わせ処理の流れ)
図5は、位置合わせ処理の一例の流れを示すフローチャートである。図5の処理は、図2に示したCPU21が位置合わせプログラムを実行することで行われる。
【0046】
まず、CPU21は、前述のように準備された各種模型をスキャンして得られるスキャンデータを、たとえば、3次元スキャナ25bから取得する(ステップS10)。
図6は、スキャンデータの取得例を示す図である。
【0047】
図6の例では上顎模型(模型台35とそれに設置された本体40)、支台歯抜き下顎模型(模型台36とそれに設置された本体41a)、支台歯模型(模型台37とそれに設置された本体41b)がスキャン対象である。
【0048】
3次元スキャナ25bにより、上顎模型をスキャンすることでスキャンデータ50が得られ、支台歯抜き下顎模型をスキャンすることでスキャンデータ51が得られ、支台歯模型をスキャンすることでスキャンデータ52が得られる。
【0049】
なお、各模型のスキャン精度は異なっていてもよい。たとえば、クラウンやブリッジなどの土台となる支台歯の模型である支台歯模型については、他の模型よりも高い精度でスキャンされるようにしてもよい。
【0050】
また、支台歯模型が複数ある場合には、各支台歯模型についてのスキャンデータが取得される。
ステップS10の処理後、CPU21は、各スキャンデータに含まれるマーカ部の領域と位置決め基準情報11aに含まれるマーカ部の領域とが一致しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0051】
マーカ部の領域は、たとえば、位置決め基準情報11aと各スキャンデータに含まれる模型台に対応する領域である。図6に示した上顎模型のスキャンデータ50については、模型台35に対応した領域と、図3に示した領域11a1とが一致するか否かが判定される。図6に示した支台歯抜き下顎模型のスキャンデータ51については、模型台36に対応した領域と、図3に示した領域11a2とが一致するか否かが判定される。図6に示した支台歯模型のスキャンデータ52については、模型台37に対応した領域と、図3に示した領域11a2とが一致するか否かが判定される。
【0052】
CPU21は、たとえば、各模型台に位置合わせ用の3つのマークが付加されている場合、位置決め基準情報11aと各スキャンデータの各模型台に対応する各領域に現れる3つのマークを用いて、各領域が一致するか否かを判定する。たとえば、CPU21は、領域11a1に含まれる3つのマークと、上顎模型のスキャンデータ50に含まれる模型台31に対応した領域に含まれる3つのマークとの位置の誤差が所定値以内の場合、両領域が一致すると判定する。
【0053】
CPU21は、マーカ部の領域が一致しないと判定した場合、スキャンデータに含まれるマーカ部の領域が、位置決め基準情報11aに含まれるマーカ部の領域と一致するように、座標変換などによりスキャンデータを移動または回転させる(ステップS12)。その後、ステップS11からの処理が繰り返される。
【0054】
図7は、各スキャンデータの位置合わせ例を示す図である。
上顎模型のスキャンデータ50のマーカ部の領域(図6の模型台35に対応する領域50a)については、位置決め基準情報11aに含まれるマーカ部の領域11a1と一致するように位置合わせが行われる。支台歯抜き下顎模型のスキャンデータ51のマーカ部の領域(図6の模型台36に対応する領域51a)については、位置決め基準情報11aに含まれるマーカ部の領域11a2と一致するように位置合わせが行われる。支台歯模型のスキャンデータ52のマーカ部の領域(図6の模型台37に対応する領域52a)については、位置決め基準情報11aに含まれるマーカ部の領域11a2と一致するように位置合わせが行われる。
【0055】
ステップS11の処理で、各スキャンデータに含まれるマーカ部の領域と位置決め基準情報11aに含まれるマーカ部の領域とが一致していると判定した場合、CPU21は、位置合わせ結果を出力する(ステップS13)。
【0056】
図8は、位置合わせ結果の出力例を示す図である。
図8の例では、上顎模型と支台歯抜き下顎模型と支台歯模型による咬合状態が、位置合わせ結果である3次元モデル60により再現されている。CPU21は、たとえば、3次元モデル60を、ディスプレイ24aに出力して表示させる。
【0057】
その後、CPU21は、マーカ部の領域のデータを削除し(ステップS14)、処理を終了する。
図9は、マーカ部の領域を削除した3次元モデルの一例を示す図である。
【0058】
図9には、図8に示した3次元モデル60から、マーカ部である模型台の領域(図7の領域11a1,11a2,50a,51a,52a)のデータを削除したときの3次元モデル60aの例が示されている。模型台の領域のデータは、補綴物の設計には不要であるため、図9のように削除することが望ましい。
【0059】
なお、上記の処理順序は一例であり、適宜処理の順序を入れ替えてもよい。
上記のように、第2の実施の形態の位置合わせ方法及び情報処理装置20では、CPU21は、上顎模型、下顎模型(図6の例では支台歯抜き下顎模型)、支台歯模型をそれぞれスキャンして得られるスキャンデータ50,51,52を取得する。そして、CPU21は、スキャンデータ50~52に含まれる模型台35~37の領域50a,51a,52aと、位置決め基準情報11aに基づいて、スキャンデータ50~52の位置関係を決定する。これにより、たとえば、咬合状態の上下顎模型のスキャンデータや、支台歯模型を含む顎模型のスキャンデータを、位置合わせ用のスキャンデータとして用意しなくても位置合わせができる。
【0060】
図10は、位置合わせ用のスキャンデータの1つ目の例である。
図10には、上顎模型のスキャンデータ70と下顎模型のスキャンデータ71を、咬合状態が再現されるように位置合わせするための、咬合状態の上下顎模型のスキャンデータ72が示されている。スキャンデータ72は位置合わせのためだけに用いられるため、スキャンデータ70,71よりもスキャン精度が低くてもよい。
【0061】
図11は、位置合わせ用のスキャンデータの2つ目の例である。
図11には、支台歯模型のスキャンデータ80,81の位置合わせのため、支台歯模型を含む下顎模型のスキャンデータ82が示されている。スキャンデータ82は位置合わせのためだけに用いられるため、スキャンデータ80,81よりもスキャン精度が低くてもよい。
【0062】
図10図11に示すような位置合わせ用のスキャンデータ72,82は、たとえば、患者や症例ごとに用意することになるため、スキャン作業に時間がかかる。これに対して、第2の実施の形態の位置合わせ方法及び情報処理装置20では、位置合わせ用のスキャンデータが不要である。このため、スキャン作業にかかる時間を短縮できる。
【0063】
また、上記の位置合わせ方法によれば、以下の理由により、これまで実現することが困難であった各種模型のスキャン作業の自動化を実現することが容易になる。
上顎模型及び下顎模型のスキャンデータ、位置決め用の上下顎模型のスキャンデータ、支台歯模型のスキャンデータを取得する場合、たとえば、以下の順序で処理が行われる。まず、上顎模型のスキャン(作業1)、下顎模型のスキャン(作業2)が行われ、上顎模型と下顎模型を咬合状態にするように位置決め(作業3)したのち、咬合状態の上下顎模型がスキャン(作業4)される。その後、上顎模型または下顎模型から支台歯以外が抜かれ(作業5)、支台歯模型のスキャンが行われる(作業6)。
【0064】
上記の作業1~6のうち、作業3,5は自動化が困難な作業である。第2の実施の形態の位置合わせ方法では、位置合わせ用の上下顎模型のスキャンデータが不要であるため、スキャン作業の途中に上顎模型と下顎模型を咬合状態にするように位置決めする作業3は発生しない。また、第2の実施の形態の位置合わせ方法では、図6に示したように、上顎模型や下顎模型のスキャンの際に支台歯模型についても用意されているため、スキャン作業の途中に上顎模型または下顎模型から支台歯以外を抜くという作業5は発生しない。
【0065】
残る作業1,2,4,6は、ユーザが3次元スキャナ25bのステージに模型を設置する設置作業を含むが、設置作業はロボットアームにより実施させることが可能である。設置作業をユーザが行う場合でも、作業3~5が不要になるため、スキャン作業にかかる時間は、作業1~6が全て行われる場合よりも短縮できる。
【0066】
なお、従来、口腔内スキャナで得た上顎と下顎のそれぞれのスキャンデータで表される歯の形状や特徴に基づいて、システムが自動で上顎と下顎のそれぞれのスキャンデータの位置合わせを行い、咬合状態を再現する手法があった(たとえば、特許文献4参照)。
【0067】
しかしながら、上顎と下顎のそれぞれのスキャンデータで表される歯の形状や特徴に基づいて、上顎と下顎のそれぞれのスキャンデータの位置合わせを行うと、ユーザ(たとえば、技工士)が求める位置合わせ結果が得られない場合がある。
【0068】
第2の実施の形態の位置合わせ方法では、図4に示したように、上顎模型の本体40または下顎模型の本体41は、模型台35,36との固定位置、または厚さが調整されている。すなわち、ユーザが本体40,41を咬合状態としたときの模型台35,36の位置関係が、位置決め基準情報11aにおける模型台31,32の領域との位置関係と同じになるように、これらが調整されている。したがって、得られる上顎模型のスキャンデータと下顎模型のスキャンデータの位置合わせ結果は、ユーザが指定した咬合状態を反映するものとなり、ユーザが求める位置合わせ結果が得られる。
【0069】
なお、前述のように、上記の処理内容は、情報処理装置20にプログラムを実行させることで実現できる。
プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(たとえば、記録媒体26a)に記録しておくことができる。記録媒体として、たとえば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどを使用できる。磁気ディスクには、FD及びHDDが含まれる。光ディスクには、CD、CD-R(Recordable)/RW(Rewritable)、DVD及びDVD-R/RWが含まれる。プログラムは、可搬型の記録媒体に記録されて配布されることがある。その場合、可搬型の記録媒体から他の記録媒体(たとえば、HDD23)にプログラムをコピーして実行してもよい。
【0070】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0071】
10 情報処理装置
11 記憶部
11a 位置決め基準情報
11a1,11a2,17a,18a 領域
11b 3次元モデル
12 処理部
12a 3次元スキャナ
12b 表示装置
15 上顎模型
15a,16a 本体
15b,16b 模型台
16 下顎模型
17,18 スキャンデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11