(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】大便器洗浄システム
(51)【国際特許分類】
E03D 5/10 20060101AFI20240410BHJP
E03D 3/12 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
E03D5/10
E03D3/12
(21)【出願番号】P 2020061982
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高木 健
(72)【発明者】
【氏名】木塚 里子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】須山 博友
(72)【発明者】
【氏名】樋口 仁郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直哉
(72)【発明者】
【氏名】松井 春奈
(72)【発明者】
【氏名】大井 亮
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-190181(JP,A)
【文献】特開2001-214495(JP,A)
【文献】特開2003-074105(JP,A)
【文献】特開2000-008445(JP,A)
【文献】特開2006-078496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者から排泄された大便を受けるボウル部を備えた大便器と、
前記大便器に洗浄水を供給する洗浄装置と、
使用者から排泄された大便を光学的に検知する検知装置と、
前記検知装置による検知結果に基づき、大便の性状を判定する判定装置と、
前記洗浄装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記判定装置によって判定された大便の性状に基づき、前記洗浄装置が前記大便器に供給する洗浄水の水量を制御
し、
前記検知装置は、前記洗浄装置が前記大便器に洗浄水を供給した後に、前記ボウル部に残存する大便の有無を再検知するように構成され、
前記制御装置は、前記再検知の結果、ボウル部に大便が残存していないことが検知された場合、前記洗浄装置が前記大便器に供給する次回以降の洗浄水の水量を制御する大便器洗浄システム。
【請求項2】
前記再検知により前記ボウル部に大便が残存していることが検知された場合、前記制御装置は、再度、前記大便器に洗浄水を供給するように前記洗浄装置を制御する請求項1に記載の大便器洗浄システム。
【請求項3】
使用者から排泄された大便を受けるボウル部を備えた大便器と、
前記大便器に洗浄水を供給する洗浄装置と、
使用者から排泄された大便を光学的に検知する検知装置と、
前記検知装置による検知結果に基づき、大便の性状を判定する判定装置と、
前記洗浄装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記判定装置によって判定された大便の性状に基づき、前記洗浄装置が前記大便器に供給する洗浄水の水量を制御し、
前記検知装置は、前記洗浄装置が前記大便器に洗浄水を供給した後に、前記ボウル部に残存する大便の有無を再検知するように構成され、
前記再検知により前記ボウル部に大便が残存していることが検知された場合、前記制御装置は、再度、前記大便器に洗浄水を供給するように前記洗浄装置を制御す
る大便器洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、大便器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器内に排泄された排泄物の種類や量を判定し、その判定結果によって便器内を洗浄するために供給する洗浄水の水量を可変とする大便器自動洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された大便器自動洗浄装置は、便器内の水位の変化を検出する検出手段を備え、便器内の水位の変化量に基づいて排泄物の種類や量を推定することで、便器内を洗浄するために供給する洗浄水の水量を変えている。つまり、便器内に排泄された排泄物が小便であった場合、あるいは便器内に排泄された排泄物が少量の大便であった場合、便器に供給する洗浄水の水量を少なくし、便器内に排泄された排泄物が所定量を超える大便であった場合、便器に供給する洗浄水の水量を多くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大便を便器外へと排出するために必要な洗浄水の水量は、排泄された大便の性状に応じて大きく異なるという問題がある。具体的には、便器内の溜水に沈むような大便は、便器の洗浄開始直後に排水配管へと排出されるため、少ない水量で便器外へと排出可能であるのに対して、便器内の溜水に浮くような大便は、便器の洗浄終了間際まで排水配管へと排出されないため、便器外へと排出するために多くの水量を必要とするという問題がある。
【0006】
ここで、便器内の溜水に浮くような大便は、密度が小さく質量が軽い大便であるため、便器内の溜水水位をあまり変化させない。そのため、便器内の溜水水位の変化量に基づいて便器に供給する洗浄水の水量を変化させる特許文献1に記載の大便器自動洗浄装置では、便器内の溜水に浮くような大便が排泄された場合に、便器に供給する洗浄水の水量を少なくすることにより、洗浄不良を引き起こしてしまうという課題が生じる。
【0007】
開示の実施形態は、上述した課題を解決するものであり、便器内に排泄された大便の性状に応じて、適切な洗浄水の水量を供給することが可能な大便器洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る大便器洗浄システムは、使用者から排泄された大便を受けるボウル部を備えた大便器と、大便器に洗浄水を供給する洗浄装置と、使用者から排泄された大便を光学的に検知する検知装置と、検知装置による検知結果に基づき、大便の性状を判定する判定装置と、洗浄装置を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、判定装置によって判定された大便の性状に基づき、洗浄装置が大便器に供給する洗浄水の水量を制御することを特徴としている。
【0009】
実施形態の一態様に係る大便器洗浄システムによれば、使用者から排泄された大便を光学的に検知する検知装置と、その検知装置による検知結果に基づき、大便の性状を判定する判定装置と、を備え、この判定装置によって判定された大便の性状に基づき、制御装置が、洗浄装置によって大便器に供給される洗浄水の水量を制御する。これにより、大便器内の溜水に沈むような性状を備えると判定された大便に対しては洗浄水の水量を少なくし、大便器内の溜水に浮くような性状を備えると判定された大便に対しては洗浄水の水量を多くすることができる。
【0010】
実施形態の一態様に係る大便器洗浄システムにおいて、検知装置は、洗浄装置が大便器に洗浄水を供給した後に、ボウル部に残存する大便の有無を再検知するように構成され、制御装置は、再検知の結果に基づいて、洗浄装置が大便器に供給する次回以降の洗浄水の水量を制御する。
【0011】
実施形態の一態様に係る大便器洗浄システムによれば、洗浄終了後にボウル部に残存する大便の有無を再検知すると共に、制御装置がその再検知の結果に基づいて、洗浄装置によって供給される次回以降の洗浄水の水量を制御する。これにより、使用者から排泄された大便の性状の応じた適切な洗浄水の水量を学習させることができる。
【0012】
実施形態の一態様に係る大便器洗浄システムにおいて、検知装置は、洗浄装置が大便器に洗浄水を供給した後に、ボウル部に残存する大便の有無を再検知するように構成され、再検知により前記ボウル部に大便が残存していることが検知された場合、制御装置は、再度、大便器に洗浄水を供給するように前記洗浄装置を制御する。
【0013】
実施形態の一態様に係る大便器洗浄システムによれば、洗浄終了後にボウル部に残存する大便の有無を再検知すると共に、その再検知の結果によりボウル部に大便が残存していることが検知された場合、制御装置が再度大便器に洗浄水を供給するように洗浄装置を制御する。これにより、洗浄不良を引き起こすことを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
実施形態の一態様によれば、使用者から排泄された大便の性状に応じて、便器に適切な洗浄水の水量を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る大便器装置の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る検知装置の構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る大便器洗浄システムの機能構成の一例を示す概念図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る大便器洗浄システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る大便器洗浄システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る大便器洗浄システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】大便の性状に関するデータ分析の一例を示す図である。
【
図8】溜水に浮くような大便の一例を示す図である。
【
図9】溜水に沈むような大便の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する大便器洗浄システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、使用者から排泄された大便の性状を判定するための処理や、その処理を行うための構成について説明するが、最初に前提となる大便器装置の構成について説明する。
【0017】
<1.大便器装置の構成>
まず、実施形態に係る大便器装置の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る大便器装置の構成の一例を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、大便器装置2は、便座装置3と、洋式大便器(以下、「便器」と記載する)7とを備える。
図1に示すように、便器7は、トイレルームRの床面Fに設置される。また、トイレルームRの壁面Wには操作装置10が設けられる。なお、以下では、床面FからトイレルームRの空間内に臨む向きを上と記載する。
【0019】
便器7は、例えば、陶器製である。便器7には、ボウル部8が形成される。ボウル部8は、下方に凹んだ形状であり、使用者によって排泄された大便を受ける部位である。なお、便器7は図示のような床置き式に限られず、壁掛け式であってもよい。また、便器7の後方上部には、洗浄水を貯留する洗浄水タンクが設置されてもよいし、洗浄水タンクが設置されない、いわゆるタンクレス式であってもよい。
【0020】
また、便器7の上縁にはリム部9が形成される。リム部9の上面は、閉じられた状態の便座5の裏面と向き合う。そして、リム部9には、後述する洗浄装置によって供給される洗浄水をボウル部8内に吐水するリム吐水口(図示略)が設けられる。このリム吐水口から吐水される洗浄水により、ボウル部8の表面が洗浄されると共に、使用者から排泄された大便が便器7外へと排出される。
【0021】
便座装置3は、便器7の上部に取り付けられ、便蓋4と、便座5と、機能部6とを備える。なお、便座装置3は、便器7に対して着脱可能に取り付けられてもよいし、便器7と一体化するように取り付けられてもよい。
【0022】
図1に示すように、便蓋4及び便座5は、それぞれの一端部が機能部6に軸支され、機能部6の軸支部分を中心として回動可能(開閉可能)に取り付けられる。便蓋4は、閉じた状態において、便座4の上方を覆うことができる。なお、便蓋4は、便座装置3に必要に応じて取り付けられ、便座装置3は、便蓋4を備えていなくても構わない。
【0023】
<2.検知装置の構成>
次に、使用者から排泄された大便を光学的に検知するための検知装置の構成について
図2を参照して説明する。
図2は、実施形態に係る検知装置の構成の一例を示す斜視図である。
【0024】
検知装置12は、制御装置24(
図3参照)からの制御指示に応じて発光する発光部14と、発光部14により照射された光に対する使用者から排泄された大便からの反射光を受光する受光部16と、発光部14及び受光部16を支えるための筐体19とを備える。これらの構成により、検知装置12は使用者から排泄された大便を光学的に検知する。
【0025】
発光部14は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子(図示略)を備える。なお、発光部14が備える発光素子は、LEDに限らず種々の素子が用いられてもよい。また、発光部14から照射される光は、可視光線の波長を均等に有する白色光に限られず、特定の波長のみを有する有色光や、赤外線といった不可視光であっても構わない。
【0026】
受光部16は、レンズ18と、受光素子(図示略)とを備える。受光素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが並べられたラインセンサやエリアセンサによって形成される。また、受光部16は、分光フィルタ等の分光機能を有する構成であってもよい。
【0027】
検知装置12は、大便の溜められた溜水に落下した後の大便の形状を検知するために、発光部14および受光部16を便器7内の溜水に向けて配置することが好ましい。
【0028】
なお、検知装置12は、便座装置3が備える機能部6や便座5の内部に配置され、便座装置3と一体となるように形成されてもよく、また、便器7のリム部9と便座5との間に引っ掛けて配置され、便座装置3と別体となるように形成されてもよい。
【0029】
<3.大便器洗浄システムの構成>
ここで、
図3~
図5を用いて、大便器洗浄システムの構成について説明する。まず大便器洗浄システムの機能構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、実施形態に係る大便器洗浄システムの機能構成の一例を示す概念図である。
【0030】
図3に示すように、大便器洗浄システム1は、大便器装置2と、検知装置12と、洗浄装置20と、判定装置22と、制御装置24とを備える。なお、
図3では、大便器洗浄システム1の機能ごとに装置を分けた構成を示すが、大便器洗浄システム1は、複数の機能を実現する装置により構成されてもよい。この点についての詳細は後述する。
【0031】
大便器装置1は、
図1中の便器7や便座装置3を備え、使用者が大便を排泄するための装置として用いられる。
【0032】
検知装置12は、
図2中の発光部14や受光部16を備え、使用者から排泄された大便を光学的に検知する装置として用いられる。
【0033】
洗浄装置20は、便器7に洗浄水を供給する機能を実現する。
洗浄装置20は、例えば、流体の流れを電磁的方法により制御する弁(バルブ)である電磁弁や流調弁等によって構成される。電磁弁は、例えば、便器7の後方上部に設置される洗浄水タンク内に設けられ、制御装置24からの制御指示に応じて開閉時間が制御される。また、流調弁は、例えば、便器7の下方から排水配管に向けて洗浄水を吐出するゼット吐水口(図示略)への単位時間当たりの洗浄水の水量を制御するために構成され、制御装置24からの制御指示に応じて弁開度が制御される。これらにより、便器7に供給される洗浄水の水量が制御される。
【0034】
判定装置22は、検知装置12による検知結果に基づき、大便の性状を判定する機能を実現する。判定装置22は、使用者から排泄された大便の性状が、便器7内の溜水に沈むような大便と、便器7内の溜水に浮くような大便のいずれであるかを判定する。判定装置22は、大便の性状を、便器7内の溜水に沈むような大便と、便器7内の溜水に浮くような大便に対応する少なくとも2種類の結果に分けて自動で判定する。
【0035】
判定装置22は、便器7内の溜水に沈むような大便と、便器7内の溜水に浮くような大便からなる2分類よりも更に細かい分類を判定してもよい。判定装置22は、使用者から排泄された大便を、ブリストルスケールの7種類の分類のいずれであるかを判定してもよい。なお、大便の性状を判定するために判定装置22が行う処理については、後述する。
【0036】
制御装置24は、各種構成や処理を制御する制御部として機能する。制御装置24は、検知装置12や洗浄装置20を制御する。制御装置24は、判定装置22によって判定された大便の性状に基づき、洗浄装置20が便器7に供給する洗浄水の水量を制御する。制御装置24は、発光部14の点灯や消灯を制御するための制御指示を検知装置12に送信する。
【0037】
制御装置24は、洗浄装置20によって便器7に供給する洗浄水の水量を決定する。制御装置24は、便器7に供給される洗浄水の水量に対応する制御指示を洗浄装置20に送信する。制御装置24は、判定装置22によって判定された大便の性状に基づき、洗浄装置20に送信する制御指示の内容を決定する。制御装置24は、洗浄装置20に対して制御指示を送信することで、便器7に洗浄水を供給する便器洗浄動作を実行する。
【0038】
制御装置24は、例えば、判定装置22によって判定された大便が、便器7内の溜水に浮くような性状を備えていた場合、判定装置22によって判定された大便が、便器7内の溜水に沈むような性状を備えていた場合に比して、洗浄装置20によって便器7に供給される洗浄水の水量が多くなるように制御する。
【0039】
制御装置24は、受光部16の電子シャッタの機能を制御するための制御指示を検知装置12に送信する。なお、受光部16の電子シャッタは、いわゆるレンズシャッタのような機械的なシャッタとは異なり、受光素子(撮像素子)を電子的に制御して露光を読み出すシャッタ方式である。すなわち、受光部16の電子シャッタは、いわゆる電子式シャッタや電子制御式シャッタである。制御装置24は、有線により検知装置12や洗浄装置20に制御指示を送信する。なお、制御装置24は、無線により、検知装置12や洗浄装置20に制御指示を送信してもよい。
【0040】
制御装置24は、発光部14による光の照射を制御する。制御装置24は、発光素子に対する通電、及び受光素子に対する電圧の印加を制御する。制御装置24は、受光素子に対して、電子シャッタを開く制御指示を送信し、発光素子に対して通電することで、大便からの反射光を受光可能とする受光制御を行う。
【0041】
また、制御装置24は、
図1に示すような便蓋4や便座5を制御する。制御装置24は、操作装置24から送信された制御指示に基づいて、便蓋4や便座5を制御する。制御装置24は、操作装置10から送信された便蓋開閉に関する制御指示の信号に基づいて、便蓋4を制御する。制御装置24は、操作装置10から送信された便座開閉に関する制御指示の信号に基づいて便座5を制御する。制御装置24は、有線により、便蓋4や便座5に制御指示を送信する。なお、制御装置24は、無線により、便蓋4や便座5に制御指示を送信してもよい。
【0042】
制御装置24は、上述した制御に関する演算を実行する演算処理装置25や、演算処理装置25が実行するための制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)26や、各種データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)27などの各種の構成を有する。
演算処理装置25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路等の種々の手段により実現される。
【0043】
<3-1.大便器洗浄システムの構成例>
次に、大便器洗浄システムの構成例について、
図4および
図5を参照して説明する。
図4および
図5は、実施形態に係る大便器洗浄システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0044】
図4に示す大便器洗浄システム1では、判定装置22の機能は、CPUなどの演算処理装置25を備える制御装置24により実現される。このように、複数の機能が1つの装置で実現されてもよい。
図4に示す大便器洗浄システム1では、洗浄装置20が大便器7に設けられ、検知装置12と制御装置24とが便座装置3に設けられる。そして、検知装置12および洗浄装置20は、電子回路を介して制御装置24に接続される。
【0045】
図4に示す大便器洗浄システム1において、検知装置12は、便座装置3に設けられた制御装置12からの制御指示に基づいて、使用者から排泄された大便を光学的に検知する。検知装置12によって検知されたデータは、電子回路(例えば、ADConverter等)を介してRAM27に一時的に格納される。つぎに、演算処理装置25は、ROM26に記憶された大便の性状を判定するためのプログラムに基づいて、RAM27に格納された検知データを解析する。そして、制御装置24は、解析された大便の性状に基づき、便器7に供給する洗浄水の水量に関する制御指示を洗浄装置20に送信する。これにより、
図4に示す大便器洗浄システム1は、使用者から排泄された大便の性状に応じて、適切な洗浄水の水量を便器7に供給することができる。
【0046】
図5に示す大便器洗浄システム1では、便座装置3と検知装置12は別体として構成される。検知装置12は、例えば、便座装置3のリム部9と便座5の間に引っ掛けられるようにして使用される。
図5に示す大便器洗浄システム1では、判定装置22は、トイレルームR外に設けられる。判定装置22は、例えば、演算性能やストレージ(記憶装置)の容量がスケーラブルな仮想サーバであるクラウドサーバなどによって実現される。
図5に示す大便器洗浄システム1では、検知装置12と便座装置3と判定装置22とは、それぞれ有線または無線からなる通信装置28によって接続される。
【0047】
図5に示す大便器洗浄システム1では、検知装置12は、それ自体に制御装置24を備え、その制御装置24からの制御指示に基づいて、使用者から排泄された大便を光学的に検知する。検知装置12によって検知されたデータは、通信装置28を介して、判定装置22であるクラウドサーバに送信される。つぎに、クラウドサーバは、大便の性状を判定するためのプログラムに基づいて検知データを解析し、通信装置28を介して解析結果を便座装置3が備える制御装置24に送信する。そして、制御装置24は、解析された大便の性状に基づき、便器7に供給する洗浄水の水量に関する制御指示を洗浄装置20に送信する。これにより、
図5に示す大便器洗浄システム1は、使用者から排泄された大便の性状に応じて、適切な洗浄水の水量を便器7に供給することができる。
【0048】
なお、大便器洗浄システム1の構成は、上述した
図4、
図5の構成例に限定されることなく、例えば、制御装置24が便座装置3ではなく、便器7内に組み込まれる構成や、検知装置12に設けられた通信装置28が、便座装置3を介することなくトイレルームR外の判定装置22(クラウドサーバ)に対して、検知データを直接送信するような構成であっても構わない。
【0049】
<4.大便器洗浄システムの処理>
ここから、
図6を用いて、大便器洗浄システムの処理フローについて説明する。
図6は、大便器洗浄システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0050】
図6に示すように、大便器洗浄システム1は、便器7内に排泄された大便を検知する(ステップS101)。大便器洗浄システム1は、検知装置12により、使用者から便器7内に排泄された大便を検知する。
【0051】
大便器洗浄システム1は、検知装置12による検知結果から大便の性状を判定する(ステップS102)。大便器洗浄システム1は、検知装置12による検知結果から、大便の性状を判定装置22により判定する。
【0052】
大便器洗浄システム1は、判定装置22による判定結果から洗浄水の水量を決定する(ステップS103)。大便器洗浄システム1は、判定装置22による判定結果から、洗浄装置20により便器7に供給する洗浄水の水量を決定する。
【0053】
大便器洗浄システム1は、便器洗浄動作を実行する(ステップS104)。大便器洗浄システム1は、制御装置24は洗浄装置20を制御し、前工程(ステップS103)にて決定された洗浄水の水量を便器7内に供給する。
【0054】
大便器洗浄システム1は、便器7内に排泄された大便を再検知する(ステップS105)。大便器洗浄システム1は、検知装置12により、使用者から便器7内に排泄された大便を再検知する。
【0055】
大便器洗浄システム1は、検知装置12による再検知の結果から、ボウル部8に残存する大便の有無を判定する(ステップS106)。大便器洗浄システム1は、検知装置12による再検知の結果から、ボウル部8に残存する大便の有無を判定装置22により判定する。
【0056】
大便器洗浄システム1は、検知装置12による再検知の結果、ボウル部8に大便が残存していることが検知された場合(ステップS106、No)、ステップS102に戻り、ボウル部8に残存している大便の性状を判定した後、適切な洗浄水量を決定し、便器洗浄動作を実行する。これにより、洗浄不良を引き起こすことを防止することができる。なお、便器7内に異物が投入された場合、便器洗浄動作が延々と繰り返されるおそれがある。そのため、所定回数(例えば、2回など)を超える便器洗浄動作を行っても、ボウル部8に異物が残存していることが検知された場合、外部に便器詰まりを報知する態様にしてもよい。
【0057】
大便器洗浄システム1は、検知装置12による再検知の結果、ボウル部8に大便が残存していないことが検知された場合(ステップS106、Yes)、判定装置22により判定された大便の性状に関する判定結果と、その大便を便器7外へと排出するまでに使用した洗浄水の水量を合わせて記憶する(ステップS107)。
【0058】
大便を便器7外へと排出するまでに必要な洗浄水の水量(単位時間当たりの水量を含む)は、大便の性状だけでなく、便器の形状などによっても変化する。ステップS107によれば、使用者の使用毎に、検知装置12が設けられた所定の形状を有する便器7において、判定装置22によって判定された大便の性状に対する最適な洗浄水の水量(必要最小限な水量)を制御装置24が学習し、次回以降の洗浄水の水量の制御にフィードバックすることができる。すなわち、制御装置24に機械学習を行わせることによって、大便器洗浄システム1を、使用者から排泄された大便の性状の応じた必要最小限の水量を便器7に供給可能なように最適化させることができる。
【0059】
<5.判定装置によるデータ分析>
ここから、
図7~
図9を用いて大便の性状に関するデータ分析について説明する。
図7は、大便の性状に関するデータ分析の一例を示す図である。
図8は、溜水に浮くような大便の一例を示す図である。
図9は、溜水に沈むような大便の一例を示す図である。
【0060】
以下では、便座装置3が備える制御装置24が大便の性状に関するデータ分析の処理を実行する場合を一例として説明する。なお、このデータ分析は、
図5に示すように、トイレルームR外に設けられ、便座装置3と通信で接続されるクラウドサーバによって行われても構わない。
【0061】
図7中の対象物OB1は、検知対象とする大便を模式的に示し、対象物OB1を一例として、どのように大便の性状が測定されるかの概要を説明する。なお、以下の説明では、対象物OB1の長手方向を上下方向とし、長手方向と直交する方向(短手方向)を横方向として説明する。
【0062】
各測定結果RS1~RS3は、各画素と、その反射率の関係を示すグラフである。各測定結果RS1~RS3は、対象物OB1の上下方向の各位置に対応する測定結果を示す。測定結果RS1は、対象物OB1の上端部に対応する測定結果を示す。測定結果RS2は、対象物OB1の上下方向における中央部に対応する測定結果を示す。測定結果RS3は、対象物OB1の下端部に対応する測定結果を示す。
【0063】
制御装置24は、受光素子が受光した各画素の反射率の有無を検知する。制御装置24は、反射があった画素の中からピーク値を求める。各測定結果RS1~RS3では、中央部分がピーク値となる。例えば、制御装置24は、測定結果RS2では、画素X0がピーク値を有する画像であると特定する。
【0064】
制御装置24は、ピーク値を有する画素と隣り合う画素の反射率の差分を比較して所定値以上または所定値以下の反射率が確認された場合、大便からの反射光であると推定する。
【0065】
制御装置24は、大便からの反射光であると確認された場合、さらにその画素に対して隣り合う画素に同様の処理を行う。これによって、制御装置24は、大便の端を見極め、大便の幅を推定する。例えば、制御装置24は、測定結果RS2では、画素X1から画像X2までの範囲が排泄物であると推定する。制御装置24は、測定結果RS1では、測定結果RS2中の画素X1から画像X2までの範囲よりも狭い幅Lを大便の幅であると推定する。制御装置24は、各測定結果RS1~RS3等を積層することで、大便の形状を分析する。
図7の例では、制御装置24は、測定結果RS2に対応する部分(中央部)が最も幅が広く、測定結果RS1に対応する部分(上端部)や、測定結果RS3に対応する部分(下端部)に向かうにつれて幅が狭くなる形状であると分析する。
【0066】
上述した処理により、検知装置12は、使用者から排泄された大便(対象物OB1)を検知する。そして、判定装置22は、例えば、RS2に対応する中央部の面積が小さい大便が検知されたとき、すなわち体積が小さい大便が検知されたとき、
図8に示すような便器7の溜水に浮くような大便であると判定する。一方で、判定装置22は、例えば、RS2に対応する中央部の面積が大きい大便が検知されたとき、すなわち体積が大きい大便が検知されたとき、
図9に示すような便器7の溜水に沈むような大便であると判定する。
【0067】
また、判定装置22によって行われる判定は、上述した内容のみに限られず、RS2部に対応する中央部の輪郭が真っ直ぐである場合には、棒状のしっかりした大便であるために、便器7の溜水に沈むような大便であると判定し、RS2部に対応する中央部の輪郭が不定形である場合には、水状の緩い大便であるために、便器7の溜水に浮くような大便であると判定してもよい。
【0068】
他にも、検知装置12によって検知された範囲内において検出された大便が所定数以上ある場合には、便器7の溜水に着水した時の衝撃でバラバラになるような、密度の低い溜水に浮くような大便であると判定してもよい。このように、検知装置12によって検知される大便の形状は無数に存在する。そのため、判定装置22に対して、大便の性状を厳密に判定するように機械学習させるのではなく、大便を便器7外へと排出しきるまでに使用した洗浄水の水量と合わせて大便の性状を機械学習させることが好ましい。これにより、使用者から排泄された大便の性状に応じて、便器に適切な洗浄水の水量を供給することができる判定装置へと成長させることが容易となる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・大便器洗浄システム
2・・・大便器装置
3・・・便座装置
4・・・便蓋
5・・・便座
6・・・機能部
7・・・便器
8・・・ボウル部
9・・・リム部
10・・操作装置
12・・検知装置
14・・発光部
16・・受光部
18・・レンズ
19・・筐体
20・・洗浄装置
22・・判定装置
24・・制御装置
25・・演算処理装置
26・・ROM
27・・RAM
28・・通信装置