(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ベルト検査システムおよびベルト検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240410BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240410BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240410BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00
G06T7/00 350B
G06T7/00 610B
(21)【出願番号】P 2020092212
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】西沢 輝
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-311693(JP,A)
【文献】特開2002-214151(JP,A)
【文献】特開平06-281595(JP,A)
【文献】特開2015-021757(JP,A)
【文献】特開平07-282195(JP,A)
【文献】特開2019-066314(JP,A)
【文献】特開2020-041889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0107328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00-29/70
G03G 13/01-13/02
13/14-13/16
13/20
13/34
15/00-15/02
15/14-15/16
15/20
15/36
21/00-21/04
21/10-21/14
21/20
G06T 7/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の中間転写ベルトの画像としてのベルト画像から前記中間転写ベルトの異常部位としてのベルト欠点の候補を検出する欠点候補検出部を備え、
前記欠点候補検出部は、前記ベルト画像に存在する、テクスチャー模様状の背景雑音を低減する背景模様低減工程を実行し、前記背景模様低減工程によって生成された前記ベルト画像に基づいて前記候補を検出し、
前記背景模様低減工程は、前記ベルト欠点の典型的なサイズを基準とした特定のサイズの範囲によって前記ベルト画像に対して局所適応2値化処理を実行して2値化画像を生成し、前記ベルト画像から前記2値化画像を減算する工程であり、
前記2値化画像は、前記ベルト欠点の最も低い明度が変換される第1の値と、前記第1の値より大きい第2の値とを含むことを特徴とするベルト検査システム。
【請求項2】
前記第2の値は、前記ベルト画像の下位の特定の分位の明度と、前記ベルト画像の上位の特定の分位の明度との差を二等分した値であることを特徴とする請求項1に記載のベルト検査システム。
【請求項3】
前記欠点候補検出部は、前記ベルト欠点の標準的なサイズより小さい第1のサイズ以下のノイズと、前記標準的なサイズより大きい第2のサイズ以上のノイズとの双方を前記ベルト画像から除去する処理を前記背景模様低減工程の前に実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のベルト検査システム。
【請求項4】
前記欠点候補検出部は、暫定的な補正の角度としての暫定補正角度で前記ベルト画像を暫定的に剪断変形し、暫定的に剪断変形した前記ベルト画像におけるライン毎の明度の平均値および総和値のいずれかを算出し、算出した前記「平均値および総和値のいずれか」の、前記ベルト画像の全ての前記ラインにおける「最大値と、最小値との差分値」、「分散」および「標準偏差」のいずれかを算出し、複数の前記暫定補正角度のうち、前記「「最大値と、最小値との差分値」、「分散」および「標準偏差」のいずれか」が最大になる前記暫定補正角度を、前記ベルト画像における前記中間転写ベルトの部分の傾斜角度として特定する傾斜角度特定処理を実行し、
前記欠点候補検出部は、前記傾斜角度特定処理で特定した前記傾斜角度に応じて前記ベルト画像に対して剪断変形を実行し、
前記欠点候補検出部は、前記傾斜角度に応じて剪断変形を実行した前記ベルト画像の全ての前記ラインに対して、前記ラインにおける各ピクセルの明度から、このラインの明度の平均値を前記背景模様低減工程の前に差し引くことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のベルト検査システム。
【請求項5】
前記欠点候補検出部によって検出された前記候補に対し、前記中間転写ベルトの品質の合否を学習モデルによって判定する合否判定部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のベルト検査システム。
【請求項6】
前記欠点候補検出部によって検出された前記候補を用いて前記学習モデルを生成する学習モデル生成部を備えることを特徴とする請求項5に記載のベルト検査システム。
【請求項7】
画像形成装置の中間転写ベルトの画像としてのベルト画像から前記中間転写ベルトの異常部位としてのベルト欠点の候補を検出する欠点候補検出部をコンピューターに実現させ、
前記欠点候補検出部は、前記ベルト画像に存在する、テクスチャー模様状の背景雑音を低減する背景模様低減工程を実行し、前記背景模様低減工程によって生成された前記ベルト画像に基づいて前記候補を検出し、
前記背景模様低減工程は、前記ベルト欠点の典型的なサイズを基準とした特定のサイズの範囲によって前記ベルト画像に対して局所適応2値化処理を実行して2値化画像を生成し、前記ベルト画像から前記2値化画像を減算する工程であり、
前記2値化画像は、前記ベルト欠点の最も低い明度が変換される第1の値と、前記第1の値より大きい第2の値とを含むことを特徴とするベルト検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の中間転写ベルトの異常部位(以下「ベルト欠点」という。)を検出するためのベルト検査システムおよびベルト検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベルト検査システムとして、中間転写ベルトの表面を撮像装置によって光学的に読み取って、読み取り結果に基づいてベルト欠点を自動で検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のベルト検査システムにおいては、ベルト欠点を高精度に検出することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ベルト欠点の検出の精度を向上することができるベルト検査システムおよびベルト検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のベルト検査システムは、画像形成装置の中間転写ベルトの画像としてのベルト画像から前記中間転写ベルトの異常部位としてのベルト欠点の候補を検出する欠点候補検出部を備え、前記欠点候補検出部は、前記ベルト画像に存在する、テクスチャー模様状の背景雑音を低減する背景模様低減工程を実行し、前記背景模様低減工程によって生成された前記ベルト画像に基づいて前記候補を検出し、前記背景模様低減工程は、前記ベルト欠点の典型的なサイズを基準とした特定のサイズの範囲によって前記ベルト画像に対して局所適応2値化処理を実行して2値化画像を生成し、前記ベルト画像から前記2値化画像を減算する工程であり、前記2値化画像は、前記ベルト欠点の最も低い明度が変換される第1の値と、前記第1の値より大きい第2の値とを含むことを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明のベルト検査システムは、ベルト欠点の典型的なサイズを基準とした特定のサイズの範囲によってベルト画像に対して局所適応2値化処理を実行して2値化画像を生成し、生成した2値化画像を減算したベルト画像に基づいてベルト欠点の候補を検出するので、ベルト画像に存在する、テクスチャー模様状の背景雑音を低減することができ、その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【0008】
本発明のベルト検査システムにおいて、前記第2の値は、前記ベルト画像の下位の特定の分位の明度と、前記ベルト画像の上位の特定の分位の明度との差を二等分した値であっても良い。
【0009】
この構成により、本発明のベルト検査システムは、ベルト画像から減算する2値化画像のうちの大きい値が、ベルト画像の下位の特定の分位の明度と、ベルト画像の上位の特定の分位の明度との差を二等分した値であるので、ベルト欠点の最も低い明度よりも明度が高く、ベルト欠点の最も高い明度よりも明度が低い可能性が高いテクスチャー模様状の背景雑音を効果的に低減することができ、その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【0010】
本発明のベルト検査システムにおいて、前記欠点候補検出部は、前記ベルト欠点の標準的なサイズより小さい第1のサイズ以下のノイズと、前記標準的なサイズより大きい第2のサイズ以上のノイズとの双方を前記ベルト画像から除去する処理を前記背景模様低減工程の前に実行しても良い。
【0011】
この構成により、本発明のベルト検査システムは、ベルト欠点の標準的なサイズより小さい第1のサイズ以下のノイズと、ベルト欠点の標準的なサイズより大きい第2のサイズ以上のノイズとの双方をベルト画像から除去する処理を背景模様低減工程の前に実行するので、ベルト欠点の検出の精度を更に向上することができる。
【0012】
本発明のベルト検査システムにおいて、前記欠点候補検出部は、暫定的な補正の角度としての暫定補正角度で前記ベルト画像を暫定的に剪断変形し、暫定的に剪断変形した前記ベルト画像におけるライン毎の明度の平均値および総和値のいずれかを算出し、算出した前記「平均値および総和値のいずれか」の、前記ベルト画像の全ての前記ラインにおける「最大値と、最小値との差分値」、「分散」および「標準偏差」のいずれかを算出し、複数の前記暫定補正角度のうち、前記「「最大値と、最小値との差分値」、「分散」および「標準偏差」のいずれか」が最大になる前記暫定補正角度を、前記ベルト画像における前記中間転写ベルトの部分の傾斜角度として特定する傾斜角度特定処理を実行し、前記欠点候補検出部は、前記傾斜角度特定処理で特定した前記傾斜角度に応じて前記ベルト画像に対して剪断変形を実行し、前記欠点候補検出部は、前記傾斜角度に応じて剪断変形を実行した前記ベルト画像の全ての前記ラインに対して、前記ラインにおける各ピクセルの明度から、このラインの明度の平均値を前記背景模様低減工程の前に差し引いても良い。
【0013】
この構成により、本発明のベルト検査システムは、傾斜角度に応じて剪断変形を実行したベルト画像の全てのラインに対して、ラインにおける各ピクセルの明度から、このラインの明度の平均値を差し引くので、各ライン間のギャップが低減され、中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状のノイズや筋状のノイズを消去または抑制することができ、その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【0014】
本発明のベルト検査システムは、前記欠点候補検出部によって検出された前記候補に対し、前記中間転写ベルトの品質の合否を学習モデルによって判定する合否判定部を備えても良い。
【0015】
この構成により、本発明のベルト検査システムは、検出の精度を向上した、ベルト欠点の候補に対し、中間転写ベルトの品質の合否を学習モデルによって判定するので、中間転写ベルトの品質の合否の判定の精度を向上することができる。
【0016】
本発明のベルト検査システムは、前記欠点候補検出部によって検出された前記候補を用いて前記学習モデルを生成する学習モデル生成部を備えても良い。
【0017】
この構成により、本発明のベルト検査システムは、中間転写ベルトの品質の合否の判定のための学習モデルを、検出の精度を向上した、ベルト欠点の候補を用いて生成するので、中間転写ベルトの品質の合否の判定の精度を向上することができる。
【0018】
本発明のベルト検査プログラムは、画像形成装置の中間転写ベルトの画像としてのベルト画像から前記中間転写ベルトの異常部位としてのベルト欠点の候補を検出する欠点候補検出部をコンピューターに実現させ、前記欠点候補検出部は、前記ベルト画像に存在する、テクスチャー模様状の背景雑音を低減する背景模様低減工程を実行し、前記背景模様低減工程によって生成された前記ベルト画像に基づいて前記候補を検出し、前記背景模様低減工程は、前記ベルト欠点の典型的なサイズを基準とした特定のサイズの範囲によって前記ベルト画像に対して局所適応2値化処理を実行して2値化画像を生成し、前記ベルト画像から前記2値化画像を減算する工程であり、前記2値化画像は、前記ベルト欠点の最も低い明度が変換される第1の値と、前記第1の値より大きい第2の値とを含むことを特徴とする。
【0019】
この構成により、本発明のベルト検査プログラムを実行するコンピューターは、ベルト欠点の典型的なサイズを基準とした特定のサイズの範囲によってベルト画像に対して局所適応2値化処理を実行して2値化画像を生成し、生成した2値化画像を減算したベルト画像に基づいてベルト欠点の候補を検出するので、ベルト画像に存在する、テクスチャー模様状の背景雑音を低減することができ、その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のベルト検査システムおよびベルト検査プログラムは、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係るベルト検査工程のフローチャートである。
【
図2】
図1に示す撮影工程において中間転写ベルトを撮影する撮像システムの一例を示す図である。
【
図3】
図2に示す撮像装置の、
図2に示す例とは異なる一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す撮影工程によって撮影されたベルト画像の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示すベルト画像の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【
図6】1台のコンピューターによって実現される場合のベルト検査システムのブロック図である。
【
図7】
図1に示す画像診断工程のフローチャートである。
【
図8】
図7に示す前処理工程のフローチャートである。
【
図9】
図8に示す基本下地処理工程のフローチャートである。
【
図10】
図4に示すベルト画像を明度レンジ予備補正工程によって補正して得られるベルト画像の一例を示す図である。
【
図11】
図10に示すベルト画像の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【
図12】
図8に示す撮像系明度不具合除去工程のフローチャートである。
【
図13】
図12に示す撮像系明度不具合除去工程の一例を示す図である。
【
図14】
図10に示すベルト画像を撮像系明度不具合除去工程によって処理して得られるベルト画像の一例を示す図である。
【
図15】
図14に示すベルト画像の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【
図16】(a)
図10に示すベルト画像における数ラインの信号レベルをプロットした図である。 (b)
図14に示すベルト画像における数ラインの信号レベルをプロットした図である。
【
図17】(a)ベルト欠点がある中間転写ベルトのベルト画像の明度信号の一例を示す模式図である。 (b)信号成分を分解した状態での、
図17(a)に示す明度信号を示す模式図である。 (c)
図17(a)に示す明度信号から微小ノイズの信号成分を除去した明度信号を示す模式図である。 (d)
図17(b)に示す信号成分のうち、明度ムラの信号成分を示す模式図である。
【
図18】(a)
図17(c)に示す明度信号から、
図17(d)に示す明度信号を差し引いた明度信号を示す模式図である。 (b)
図18(a)に示す明度信号にオフセット明度を与えた状態の明度信号を示す模式図である。 (c)ベルト欠点がある中間転写ベルトのベルト画像の明度信号から微小ノイズの信号成分を除去した明度信号から、明度ムラの信号成分を差し引いた明度信号の実態を示す模式図である。 (d)
図18(c)に示す明度信号にオフセット明度を与えた状態の明度信号を示す模式図である。
【
図19】
図8に示す基本下地処理工程によって処理して得られるベルト画像におけるベルト欠点の部分の画像の一例を示す図である。
【
図20】
図19に示す画像の明度を3次元グラフ的にプロットしたものを示す図である。
【
図21】
図19に示す画像から微小ノイズの信号成分を除去した後のベルト欠点の部分の画像の一例を示す図である。
【
図22】
図21に示す画像の明度を3次元グラフ的にプロットしたものを示す図である。
【
図23】
図12に示す撮像系明度不具合除去工程の一例であって、
図13に示す例とは異なる例を示す図である。
【
図24】
図8に示す剪断変形補正工程のフローチャートである。
【
図25】
図24に示す傾斜角度特定工程のフローチャートである。
【
図26】(a)
図25に示す傾斜角度特定工程において暫定補正角度が0.00°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。 (b)
図25に示す傾斜角度特定工程において暫定補正角度が-0.85°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。 (c)
図25に示す傾斜角度特定工程において暫定補正角度が-1.70°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。 (d)
図25に示す傾斜角度特定工程において暫定補正角度が-2.55°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。
【
図27】
図25に示す傾斜角度特定工程においてライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値を暫定補正角度毎にプロットした図である。
【
図28】(a)
図14に示すベルト画像を剪断変形工程によって処理して得られるベルト画像の一例を示す図である。 (b)
図14に示すベルト画像を剪断変形工程によって処理して得られるベルト画像の、
図28(a)に示す例とは異なる一例を示す図である。
【
図29】
図8に示すバンド状ノイズ除去工程のフローチャートである。
【
図30】
図28(b)に示すベルト画像をバンド状ノイズ除去工程によって処理して得られるベルト画像の一例を示す図である。
【
図31】
図8に示す背景模様低減工程のフローチャートである。
【
図32】
図30に示すベルト画像を背景模様低減工程によって処理して得られるベルト画像の一例を示す図である。
【
図33】
図32に示すベルト画像の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【
図34】
図7に示す合否判定工程において使用される学習モデルを生成する学習モデル生成工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
まず、本実施の形態に係る中間転写ベルトについて説明する。
【0024】
カラーの画像形成装置においては、帯電させたトナーを付着させる中間転写ベルトという部品が使われている。中間転写ベルトは、例えば、画像形成装置がA3機である場合には、幅がA3サイズの記録媒体の短手方向の長さである297mmより少し大きい例えば330mm程度である円筒形状であり、外周の長さがA3サイズの記録媒体の長手方向の長さである420mmの2倍より少し大きい例えば850mm程度である。
【0025】
中間転写ベルトは、いくつかの製造方法があるが、例えば、製造コストの観点などから押出成形によって製造される。また、同じく製造コストの観点から、中間転写ベルトは、樹脂にカーボンを分散させて半導体領域の電気抵抗に調節することによって、製造されることも多い。中間転写ベルトは、樹脂にカーボンを分散させて製造される場合、黒や、黒褐色などの明度的に暗い外観になることが多い。
【0026】
中間転写ベルトは、帯電させたトナーを付着させたり剥がしたりを繰り返す、電子的に非常にデリケートな部品であり、特に表面の突起や傷、変形に対しては非常にシビアである。例えば、中間転写ベルトの表面に、直径が数mmであって、高さが10数μmである変形が存在していても、トナーの付着状態に影響し、結果として、画像形成装置によって記録媒体に印刷される画像の質を低下させてしまう。
【0027】
したがって、中間転写ベルトの異常部位としてのベルト欠点を高精度に検出できることが望まれている。ここで、ベルト欠点は、直径が2~3mm程度であって、高さが10~30μm程度であることが多い。
【0028】
次に、中間転写ベルトを検査するベルト検査工程について説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係るベルト検査工程のフローチャートである。
【0030】
図1に示すように、中間転写ベルトの、画像による異常診断は、中間転写ベルトを撮影する撮影工程(S101)と、S101の撮影工程によって得られた、中間転写ベルトの画像(以下「ベルト画像」という。)に基づいて中間転写ベルトの異常を診断する画像診断工程(S102)とによって構成される。
【0031】
図2は、S101の撮影工程において中間転写ベルト10を撮影する撮像システム20の一例を示す図である。
【0032】
図2に示すように、撮像システム20は、中間転写ベルト10を撮影する撮像装置21と、撮像装置21に対して中間転写ベルト10を移動させるベルト移動装置22とを備えている。撮像装置21は、中間転写ベルト10の矢印10aで示す幅方向に対して平行に設置されていることが好ましい。撮像装置21は、撮像装置21の延在方向に延在していて中間転写ベルト10の表面に光を照射するための図示していない光源と、撮像装置21の延在方向に延在していて中間転写ベルト10の表面を撮影する例えばラインセンサーなどの図示していない撮像部とを備えている。撮像装置21は、中間転写ベルト10の表面に可能な限り近接して設置されることが好ましい。
【0033】
撮像装置の画角サイズは、通例、中間転写ベルトの幅よりも大きく設定するので、当然の様に中間転写ベルトの端部においては、ベルト部ではない非ベルト部も写り混むが、非ベルト部はベルト欠点の検査対象領域ではないので、切り落としたりマスクするなどして処理対象から外す。
【0034】
S101の撮影工程による中間転写ベルト10の撮影画像は、撮像装置21によって1ラインずつ撮影された画像が合成されることによって生成される。S101の撮影工程による中間転写ベルト10の撮影画像は、中間転写ベルト10の周方向に対応する方向の長さが中間転写ベルト10の1周分の長さより長くなっている。すなわち、撮影画像は、中間転写ベルト10の周方向に対応する方向における両端部に重複する部分が存在する。
【0035】
図3は、撮像装置21の、
図2に示す例とは異なる一例を示す図である。
【0036】
図3に示す撮像装置21は、撮像装置21の延在方向に延在していて中間転写ベルト10の表面に光を照射するための光源21aと、撮像装置21の延在方向に延在していて中間転写ベルト10の表面を撮影する例えばラインセンサーなどの撮像部21bとが、矢印10a(
図2参照。)で示す方向に直交する矢印10bで示す方向に互いに離れている点が、
図2に示す撮像装置21と異なる。光源21aは、撮像部21b側に向けて中間転写ベルト10の表面に非常に浅い角度で光を照射する。したがって、
図3に示すように、中間転写ベルト10の表面にベルト欠点10cが存在する場合には、光源21aによって照射された光がベルト欠点10cによって妨げられて影が生じる。そして、撮像部21bは、光源21a側に向けて中間転写ベルト10の表面を非常に浅い角度で撮影する。したがって、
図3に示すように、中間転写ベルト10の表面にベルト欠点10cが存在する場合には、撮像部21bは、光源21aによる光の照射によって生じた、ベルト欠点10cの影を撮影することになる。
【0037】
図4は、S101の撮影工程によって撮影されたベルト画像41の一例を示す図である。
図5は、ベルト画像41の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【0038】
図4および
図5に示すように、撮像装置から出力されただけの未加工のベルト画像41は、通常、明度自体が低く、明度のレンジも狭く、中間転写ベルトの表面のディテールが判然としない。
【0039】
図1に示す画像診断工程は、
図6に示すベルト検査システム30によって実行される。
【0040】
図6は、1台のコンピューターによって実現される場合のベルト検査システム30のブロック図である。
【0041】
図6に示すベルト検査システム30は、種々の操作が入力される例えばキーボード、マウスなどの操作デバイスである操作部31と、種々の情報を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部32と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部33と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部34と、ベルト検査システム30全体を制御する制御部35とを備えている。
【0042】
記憶部34は、ベルト欠点を検出するためのベルト検査プログラム34aを記憶している。ベルト検査プログラム34aは、例えば、ベルト検査システム30の製造段階でベルト検査システム30にインストールされていても良いし、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部の記憶媒体からベルト検査システム30に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からベルト検査システム30に追加でインストールされても良い。
【0043】
制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、制御部35のCPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部35のCPUは、記憶部34または制御部35のROMに記憶されているプログラムを実行する。
【0044】
制御部35は、ベルト検査プログラム34aを実行することによって、ベルト画像からベルト欠点の候補を検出する欠点候補検出部35aと、欠点候補検出部35aによって検出されたベルト欠点の候補に対し、中間転写ベルトの品質の合否を学習モデルによって判定する合否判定部35bと、欠点候補検出部35aによって検出されたベルト欠点の候補を用いて学習モデルを生成する学習モデル生成部35cとを実現する。
【0045】
なお、
図6においては、ベルト検査システム30は、1台のコンピューターによって実現されている。しかしながら、ベルト検査システム30は、複数台のコンピューターによって実現されても良い。
【0046】
図7は、
図1に示す画像診断工程のフローチャートである。
【0047】
図7に示すように、S102(
図1参照。)の画像診断工程は、ベルト欠点の候補の検出のための前処理をベルト画像に施す前処理工程(S121)と、S121の前処理工程において前処理が施されたベルト画像に基づいてベルト欠点の候補を検出する欠点候補検出工程(S122)と、S122の欠点候補検出工程において抽出されたベルト欠点の候補に対して合否を判定する合否判定工程(S123)とによって構成される。
【0048】
図8は、
図7に示す前処理工程のフローチャートである。
【0049】
図8に示すように、S121(
図7参照。)の前処理工程は、S101の撮影工程によって得られたベルト画像に対して以降の工程でベルト欠点を抽出するための基本的な下地処理を実行する基本下地処理工程(S141)と、中間転写ベルトの表面状態とは無関係に、S101の撮影工程における撮影時に混入してくると想定される、ベルト画像の明度に影響する成分をベルト画像から除去する撮像系明度不具合除去工程(S142)と、剪断変形しているベルト画像を逆補正する剪断変形補正工程(S143)と、中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズをベルト画像から除去するバンド状ノイズ除去工程(S144)と、中間転写ベルトの表面のうちベルト欠点の周囲の背景部の模様であるテクスチャーがベルト画像に及ぼす影響を低減する背景模様低減工程(S145)とによって構成される。
【0050】
図9は、
図8に示す基本下地処理工程のフローチャートである。
【0051】
図9に示すように、S141(
図8参照。)の基本下地処理工程は、例えば、アルファチャンネルおよびアルファチャンネルの影響をベルト画像から除去するアルファチャンネル除去工程(S161)と、フルカラー画像のベルト画像をモノクローム画像に変換するモノクローム変換工程(S162)と、撮像装置の撮影範囲の都合で上下端や左右端に入り込む非ベルト部や、
ベルト部のうち、周囲の非ベルト部の影響を受けている部分を切り落としたり、
切り落とした後の画像サイズを統一するべく、更に切り落としたり補填したりする不要周辺部除去工程(S163)と、
中間転写ベルトの表面の状態を人間が観察し易くしたり、微細な変化をベルト検査システム30が検出し易くしたりするために明度のレンジを予備的に補正する明度レンジ予備補正工程(S164)とによって構成される。
【0052】
なお、S163の不要周辺部除去工程において正確に非ベルト部が除去されていれば、S164の明度レンジ予備補正工程において明度のレンジを補正する際に、非ベルト部の明度が影響しない。
したがって、S164の明度レンジ予備補正工程において明度のレンジをより適正に補正するために、S163の不要周辺部除去工程は、S164の明度レンジ予備補正工程より先に実施する。
【0053】
S163の不要周辺部除去工程について説明する。
【0054】
中間転写ベルトの撮影においては、撮像装置の画角を中間転写ベルトの幅よりも広く設定する都合、画像の左右端に非ベルト部が映り込むことが多い。ベルト画像の明度を補正する処理において、非ベルト部を除去しないまま補正した場合、非ベルト部の面積や色値によっては、その影響を無視できないことが多い。そこで、非ベルト部は、事前に丁寧に切り落とすか、マスク処理を施して分析処理対象から外す。
【0055】
なお、ベルト画像毎に画像サイズが僅かながらも異なっていると何かと画像処理がしづらくなるので、これを避けたければ、規定サイズになるように画像端を更に切り落としたりパディング処理を行えば良い。例えば、パディング処理においては、不要部位を切り落とした後のベルト画像の最外殻のピクセルの明度を当てがったり、ベルト部の明度の平均値を当てたりすれば良い。
【0056】
ベルト画像のサイズの一例を示すと、撮像装置が2Kカメラである場合に、S163の不要周辺部除去工程の実行前に2048ピクセル×4792ピクセルであるとき、S163の不要周辺部除去工程の実行後には、1698ピクセル×4792ピクセルになっている。
【0057】
S164の明度レンジ予備補正工程について説明する。
【0058】
図4および
図5に示すように、撮像装置から出力された未加工のベルト画像41は、上述したように、通常、明度自体が低く、明度のレンジも狭く、中間転写ベルトの表面のディテールが判然としない。したがって、以後の処理がし易いように事前の予備処理として明度のレンジを補正する。
【0059】
例えば、次のように行えば良い。まず、撮像装置によって撮影されたベルト画像の明度を抽出し、続いて、明度毎にピクセル数を計数してヒストグラム分布を生成し、更には、それを累積して累積分布を計算する。この時、その頻度値または累積値においては全ピクセル数で割って正規化しておき、累積値が所定の暗側の閾値となる明度を、撮像装置によって撮影されたベルト画像の明度の分布の始点とし、累積値が所定の明側の閾値となる明度を、撮像装置によって撮影されたベルト画像の明度の分布の終点として定義する。ここで、暗側の閾値は、例えば、0.0025などと設定し、明側の閾値は、例えば、0.9975などと設定する。そうすると、撮像装置によって撮影されたベルト画像の明度の累積値が暗側の閾値となる明度、例えば
図5で言えば0.1付近の明度が明度の分布の始点の明度として定められ、撮像装置によって撮影されたベルト画像の明度の累積値が明側の閾値となる明度、例えば
図5で言えば0.22付近の明度が明度の分布の終点の明度として定められる。
【0060】
あるいは、単純に撮像装置によって撮影されたベルト画像の明度のヒストグラム分布から、十分に分布全体を覆う範囲を設定し、例えば
図5で言えば、明側の明度、すなわち、始点の明度を0.0とし、暗側の明度、すなわち、終点の明度を0.3として設定するなどすれば良い。
【0061】
続いて、明度の補正後の明度のレンジを設定する。例えば、次式にて変換を行う。
【0062】
after[i] = {(after[max]-after[min])}*{(before[i]-before[min])/(before[max]-before[min])}+after[min]+offset1
before[min]:撮像装置から出力された未加工のベルト画像の暗側の閾値に相当する明度
before[max]:撮像装置から出力された未加工のベルト画像の明側の閾値に相当する明度
after[min]:明度レンジ予備補正工程後のベルト画像の暗側の分布の始点に相当する明度
after[max]:明度レンジ予備補正工程後のベルト画像の明側の分布の終点に相当する明度
offset1:オフセット明度
【0063】
例えば、明度の補正後の明度のレンジの始点であるafter[min]には、0.3を、明度の補正後の明度のレンジの終点であるafter[max]には、0.9を設定すれば良い。更に、全体的に暗いので、視認性の向上のために、オフセット明度としてoffset1を与えて、明度の分布全体をシフトしても良い。
【0064】
なお、after[i]の値域は、基本的に、0.0~1.0を想定するが、暗側の閾値未満の明度や、明側の閾値超の明度は、明度の変換後に、0.0未満や1.0超になることがあるので、0.0や1.0になるようにクリップする。即ち、0.0未満の明度は0.0に、1.0超の明度は1.0に置換する。
【0065】
上述したように、入力画像の明度の分布の始点、終点に相当する明度のレンジを、線形変換して所定の明度のレンジにて出力画像を生成する。
【0066】
更に、after[i]は、視認性の向上のために、例えば次式のように変換しても良い。
f[i] = α*C[after[i]]^γ + offset2
α:ゲイン
γ:ガンマ補正指数
C:contrast補正関数
offset2:オフセット明度
すなわち、ゲインを与えたり、contrast関数を掛けて略S字にしたり、ガンマ指数を掛けたり、オフセットを与えても良い。
【0067】
なお、f[i]の値域も、after[i]の値域と同様に、基本的に、0.0~1.0を想定している。したがって、明度が0.0未満になるピクセルに関しては、明度が0.0になるようにクリップし、明度が1.0超になるピクセルに関しては、明度が1.0になるようにクリップする。
【0068】
図10は、
図4に示すベルト画像41をS141の基本下地処理工程によって処理して得られるベルト画像42の一例を示す図である。
図11は、ベルト画像42の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【0069】
図10に示すベルト画像42は、
図11に示すように、after[min]:0.3、after[max]:0.9を与えて変換したものである。
【0070】
図10に示すように、
ベルト画像42は、S141の基本下地処理工程によって、
中間転写ベルトの表面の状態のディテールはある程度、強調されて、様々なものが観測できるようになる。
しかしながら、
暗電流ノイズ、フォトンノイズなどのベルト欠点より微小なサイズのノイズ(以下「微小ノイズ」という。)や、
撮像装置のレンズの周辺光量落ち成分などによって生じる定常的なノイズ、
作業者の影の映り込み、
照明の照度のムラなどによって生じる非定常的なノイズ(以下「明度ムラ」という。)などの妨害により、
検出対象のベルト欠点は依然として観測しにくい。
【0071】
したがって、
図8に示すように、S141の基本下地処理工程の後、S142の撮像系明度不具合除去工程が実行される。
【0072】
図12は、
図8に示す撮像系明度不具合除去工程のフローチャートである。
【0073】
図12に示すように、S142(
図8参照。)の撮像系明度不具合除去工程は、
ベルト画像から微小ノイズの成分を除去する微小ノイズ除去工程(S181)と、
ベルト画像から明度ムラを除去する明度ムラ除去工程(S182)と、
中間転写ベルトの表面の状態を人間が観察し易くしたり、微細な変化をベルト検査システム30が検出し易くしたりするために明度のレンジを更に補正する明度レンジ追補正工程(S183)と
によって構成される。
【0074】
中間転写ベルトの表面のディテールを強調したベルト画像においては、定常的に撮像装置の光学系の蹴られなどによって画像周辺において光量落ちが発生している他に、中間転写ベルトの「うねり」や「寄り」、「皺」、あるいは、作業者の影の混入などによって発生する、中間転写ベルトの表面の状態とは関与の低い不定期な明度ムラが観察される。
【0075】
撮像装置の光学系の周辺光量落ちは中間転写ベルトの全幅に及ぶし、中間転写ベルトの「うねり」や「寄り」、「皺」、あるいは、作業者の影の混入などにより発生する、中間転写ベルトの表面の状態とは関与の低い明度ムラも、ベルト欠点の標準的なサイズ、すなわち、平均的なサイズに比して大きく、数倍~数十倍のサイズの差がある。
【0076】
暗電流ノイズなどの微小ノイズは、ベルト欠点の標準的なサイズ、すなわち、平均的なサイズに比して数分の1のサイズであり、ここにも数倍のサイズの差がある。
【0077】
図13は、
図12に示す撮像系明度不具合除去工程の一例を示す図である。
【0078】
図13に示すように、S164(
図9参照。)の明度レンジ予備補正工程によって予備的に明度のレンジを補正したベルト画像に対し、まず、微小ノイズを除去した画像を得る(S201)。例えば、ガウシャンフィルター等でぼかして滑らかにすれば良く、ベルト欠点の標準的なサイズ、すなわち、ベルト欠点の平均的サイズの数分の1程度のサイズをガウスカーネルにしてぼかす。例えば、ベルト欠点の半径が10ピクセル程度であれば、半径5ピクセル程度のガウスカーネルで畳み込んでフィルター適用した画像を得れば良い。S201の処理は、S181の処理に対応する。
【0079】
微小ノイズは、中間転写ベルトを複数回スキャンできる場合や長時間露光できる場合は多重または長時間露光して平均化して除去しても良い。
【0080】
また、S164の明度レンジ予備補正工程によって予備的に明度のレンジを補正したベルト画像に対しては、ベルト欠点の標準的なサイズ、すなわち、平均的なサイズの数倍のサイズをガウスカーネルにしてぼかし、ベルト欠点のサイズ程度の明暗変動など、明度ムラよりも数倍小さい明暗変動を均した画像を得る(S202)。例えば、ベルト欠点の半径が10ピクセル程度であれば、半径25ピクセル程度のガウスカーネルで畳み込んでフィルター適用した画像を得れば良い。
【0081】
続いて、S201において得た画像から、S202において得た画像を差し引くとともに、画像の明度の調整のためにオフセット明度を与える(S203)。
必要とあれば、視認性の向上のために、更にゲインを与えたり、contrastを与えたり、再度、オフセットを与えたりして画像の明度を調整する(S204)。
S203の処理と、S204の処理のうち、S201において得た画像から、S202において得た画像を差し引く処理とは、S182の処理に対応する。
また、S204の処理のうち、オフセット明度を与える処理と、S204の処理とは、S183の処理に対応する。
【0082】
S201において微小ノイズを除去した画像から、S202においてベルト欠点のサイズ程度の明暗変動を均した画像が差し引かれるとともに、そこにオフセット明度が重畳される(S203)ことによって、撮像装置の周辺光量落ちなどの明度ムラが除去されて、中間転写ベルト自体の表面の状態が一層明らかになって、ベルト欠点も鮮明に浮かび上がってくる。
【0083】
S204の処理の後、S204の処理によって出力された信号波形の状態をチェックする(S205)。
S205の処理において使用される、チェックの合否基準やパラメーターは、予め設定されている。
S205の処理の結果、ベルト画像においてベルト部内の背景画像の明度の一定性が特定の程度未満であることが確認されると、
S201におけるガウスカーネルのサイズと、
S202におけるガウスカーネルのサイズとを、
S205の処理の結果に応じて変更した上で、
図13に示す撮像系明度不具合除去工程をやり直す。
一方、
S205の処理の結果、ベルト画像においてベルト部内の背景画像の明度の一定性が特定の程度以上であることが確認されると、
図13に示す撮像系明度不具合除去工程は終了する。
【0084】
図14は、
図10に示すベルト画像42をS142の撮像系明度不具合除去工程によって処理して得られるベルト画像43の一例を示す図である。
図15は、ベルト画像43の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【0085】
図14に示すベルト画像43の視認性の向上のために明度を調整した結果、
図15に示すヒストグラム分布は、明度0.7付近をピークにするヒストグラム分布になっている。
図14および
図15に示すように、
S142の撮像系明度不具合除去工程によって処理して得られるベルト画像43では、
微小ノイズや明度ムラの要素がなくなっていることが分かる。
S142の撮像系明度不具合除去工程によって処理して得られるベルト画像43では、
検出することを予定していたベルト欠点以外の痕跡、例えば、中間転写ベルトの成形上のモールドラインなどの製造上の痕跡なども浮かび上がってくるし、
中間転写ベルトが表面加工された際にスプレーから中間転写ベルトの表面に吹き付けられて黒点化して発見し難かった塗物の塊なども容易に発見されるようになる。
【0086】
図16(a)は、
図10に示すベルト画像42における数ラインの信号レベルをプロットした図である。
図16(b)は、
図14に示すベルト画像43における数ラインの信号レベルをプロットした図である。
【0087】
図16(a)と、
図16(b)とにおいて、
同一の種類の線は、同一の位置のラインの信号レベルを表している。
ここで、ラインとは、ベルト画像における矢印L(
図10または
図14参照。)で示す方向、すなわち、中間転写ベルトの幅方向と略同一の方向に延在するピクセルの列である。
【0088】
図16(a)に示すように、
S141の基本下地処理工程によって処理して得られるベルト画像42において、
明度は、中央部付近は両端部よりも高くなっている。しかしながら、S142の撮像系明度不具合除去工程によって処理して得られるベルト画像43においては、
図16(b)に示すように、明度ムラが除去され、中間転写ベルトの幅の全域に渡り、概ね明度が一定になっていることが分かる。
【0089】
図17(a)は、ベルト欠点がある中間転写ベルトのベルト画像の明度信号の一例を示す模式図である。
図17(b)は、信号成分を分解した状態での、
図17(a)に示す明度信号を示す模式図である。
図17(c)は、
図17(a)に示す明度信号から、微小ノイズの信号成分を除去した明度信号を示す模式図である。
図17(d)は、
図17(b)に示す信号成分のうち、明度ムラの信号成分を示す模式図である。
図18(a)は、
図17(c)に示す明度信号から、
図17(d)に示す明度信号を差し引いた明度信号を示す模式図である。
図18(b)は、
図18(a)に示す明度信号にオフセット明度を与えた状態の明度信号を示す模式図である。
図18(c)は、ベルト欠点がある中間転写ベルトのベルト画像の明度信号から微小ノイズの信号成分を除去した明度信号から、明度ムラの信号成分を差し引いた明度信号の実態を示す模式図である。
図18(d)は、
図18(c)に示す明度信号にオフセット明度を与えた状態の明度信号を示す模式図である。
【0090】
図17(a)に示す明度信号には、
微小ノイズの信号成分と、明度ムラの信号成分とが混在している。
図17(a)に示す明度信号は、
図17(b)に示すように信号成分を分解することができる。
【0091】
S201の処理によって、
図17(a)に示す明度信号から、微小ノイズの信号成分を除去すると、
図17(c)に示す明度信号になる。
【0092】
S202の処理によって、
図17(a)に示す明度信号に対して、
微小ノイズの明度変動と、
ベルト欠点サイズの明度変動とを均して、
ベルト欠点より大きなサイズの明度変動を抽出すると、
図17(d)に示す明度信号になる。
すなわち、
図17(b)に示す信号成分のうち、
明度変化の低周波数成分、
すなわち、明度ムラの信号成分は、
図17(d)に示すようになる。
【0093】
S203の処理によって、
図17(c)に示す明度信号から、
図17(d)に示す明度信号を差し引くと、
図18(a)に示す明度信号になり、
図18(a)に示す明度信号に対して、
画像の明度の調整のためにオフセット明度を与えると、
図18(b)に示す明度信号になる。
図18(a)に示す明度信号で表されるベルト画像は、
ほぼ真っ暗になってしまっていてベルト欠点の箇所が発見し難いので、
図18(b)に示すように、
オフセット明度を与えてベルト画像全体の明度を上げることによって、
ベルト画像においてベルト欠点の発見を容易化することができる。
【0094】
なお、
図18(a)に示す明度信号は、理想的な信号である。
実際には、
図18(c)に示すように、若干の局在する明度ムラが補正仕切れず残留する。
したがって、
図18(c)に示す明度信号に対して、ベルト画像の明度の調整のためにオフセット明度を与えると、
図18(d)に示す明度信号になる。
【0095】
図19は、S141の基本下地処理工程によって処理して得られるベルト画像42におけるベルト欠点の部分の画像の一例を示す図である。
【0096】
図19に示すように、S141の基本下地処理工程によって処理して得られるベルト画像42におけるベルト欠点の部分の画像は、微小ノイズの影響でザラザラしている。
【0097】
図20は、
図19に示す画像の明度を3次元グラフ的にプロットしたものを示す図である。
【0098】
図20に示すように、微小ノイズを残したままにすると、針山のような状態になっている。
ベルト欠点自体による明度変化量に対し、
微小ノイズのレベルの方が大きいくらいで、
しかも微小ノイズの座標位置や高さがランダムなので、
微小ノイズを残留させたままの状態では、
テンプレートマッチングによってベルト欠点を検出するにしても、
機械学習によってベルト欠点を検出するにしても、
都合が悪い。
したがって、微小ノイズは、前述の方法などによって除去する。
【0099】
図21は、
図19に示す画像から微小ノイズの信号成分を除去した後のベルト欠点の部分の画像の一例を示す図である。
【0100】
図21に示すように、
図19に示す画像から微小ノイズの信号成分を除去した後のベルト欠点の部分の画像は、微小ノイズが除去されて、つるりとしている。
【0101】
図22は、
図21に示す画像の明度を3次元グラフ的にプロットしたものを示す図である。
【0102】
図22に示すように、
微小ノイズが除去されてベルト欠点自身の形状に則した明度変化が現れてくる。
ただし、
図22に示すように、
ベルト欠点の明度変動は、未だベルト欠点より大きなサイズの明度変動の上に乗っている。
したがって、
図22に示す明度変動からベルト欠点を抽出する場合、ベルト欠点を誤認する可能性がある。
したがって、上述したように、S202およびS203の処理によって、ベルト欠点より大きなサイズの明暗変動も除去する。
【0103】
なお、
図13に示す撮像系明度不具合除去工程においては、S202の処理の対象は、S164の明度レンジ予備補正工程によって予備的に明度のレンジを補正したベルト画像である。
しかしながら、
図13に示す撮像系明度不具合除去工程に代えて、
図23に示す撮像系明度不具合除去工程が採用されても良い。
図23に示す撮像系明度不具合除去工程においては、
S202の処理の対象は、S201において得た画像である。
【0104】
図14に示すように、
ベルト画像43においては、
S142の撮像系明度不具合除去工程によって、
例えば、中間転写ベルトの生成工程における押出し成型時の成形痕や、
中間転写ベルトの表面コーティング処理時などにおける中間転写ベルトと、
治具との擦過痕や、中間転写ベルトの加工痕などが観測できるようになる。
これらの成形痕、擦過痕または加工痕などは、
中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズとして観測されることがある。
中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズは、
中間転写ベルトの品質に対して、
多くの場合、無害であるが、
ベルト欠点として誤検出されてベルト欠点の検出精度を低下させることがあり、
結果として、中間転写ベルトの合否の判定制度を低下させる要因となる。
【0105】
したがって、
図8に示すように、
S142の撮像系明度不具合除去工程の後、
中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズを除去するため、
S143の剪断変形補正工程と、S144のバンド状ノイズ除去工程とが実行される。
【0106】
S101の撮影工程における撮像装置の設置において、
撮像装置が中間転写ベルトの幅方向に対して平行に設置されている状態、
すなわち、
正視状態であった場合には、
ベルト画像にベルト部が長方形の状態で含まれ、
その結果、
中間転写ベルトの幅方向に延在する成形痕、擦過痕または加工痕などは、
ベルト画像において、
矢印L(
図14参照。)で示す方向に延在するラインと平行に観察される。
しかしながら、
S101の撮影工程における撮像装置の設置において、
撮像装置が中間転写ベルトの幅方向に対して平行に設置されていない場合には、
ベルト画像にベルト部が剪断変形した状態、
すなわち、
長方形ではない平行四辺形の状態で含まれ、
その結果、
中間転写ベルトの幅方向に延在する成形痕、擦過痕または加工痕などは、
ベルト画像において、傾斜して観察される。
そこで、
S143の剪断変形補正工程によって、
ベルト画像を本来の正視状態の画像に補正する。
【0107】
図24は、
図8に示す剪断変形補正工程のフローチャートである。
【0108】
図24に示すように、
S143(
図8参照。)の剪断変形補正工程は、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度を特定する傾斜角度特定工程(S221)と、
剪断変形しているベルト画像を、
S221の傾斜角度特定工程において特定した傾斜角度に応じて逆方向に剪断変形させて、
本来、撮像装置が正確に設置されて正視した時と同等の状態に戻す剪断変形工程(S222)とによって構成される。
【0109】
図25は、
図24に示す傾斜角度特定工程のフローチャートである。
【0110】
図25に示すように、
欠点候補検出部35aは、
特定の角度の群から、
暫定的な補正の角度(以下「暫定補正角度」という。)として
傾斜角度特定工程において
未だ設定していない1つの角度を、
暫定補正角度として設定する(S241)。
ここで、
特定の角度の群は、
例えば-3°から+3°までの角度範囲など、
剪断変形を起こしていることが想定される角度を含む特定の角度範囲の角度のうち、
特定のピッチずつ離れている角度の群である。
【0111】
欠点候補検出部35aは、
S241の処理の後、S241において設定した暫定補正角度でベルト画像を暫定的に剪断変形する(S242)。
ここで、
欠点候補検出部35aは、
ベルト画像の剪断変形の方法として、例えばAffine変換を用いれば良い。
なお、
剪断変形の結果、ベルト画像のうち、ベルト部ではなくなった部分に関しては、
例えば、剪断変形前のベルト画像におけるベルト部の明度の平均値で塗り潰すと良い。
【0112】
欠点候補検出部35aは、
S242の処理の後、S242において剪断変形させたベルト画像においてライン毎のピクセルの明度の平均値を算出する(S243)。
ここで、欠点候補検出部35aは、
S242において剪断変形させたベルト画像において、
各ラインに対して、このラインに所属する全てのピクセルの明度の総和値を求める。
また、その総和値をこのラインに所属する全てのピクセルの数で割ることによって、
ライン毎の明度の平均値を算出してもよいし、
あるいは、所属する全てのピクセルの明度に対して幾何平均を計算するなど、単純加算平均以外の方法によってライン毎の明度の平均値を算出しても良い。
【0113】
欠点候補検出部35aは、
S243の処理の後、S243において算出した平均値の最大値と、最小値との差分値を算出する(S244)。
【0114】
次いで、
欠点候補検出部35aは、
S241において設定した暫定補正角度と、
S244において算出した差分値との組み合わせを記録する(S245)。
【0115】
次いで、
欠点候補検出部35aは、
特定の角度の群において、今回の傾斜角度特定工程で暫定補正角度として未だ設定していない角度が存在するか否かを判断する(S246)。
【0116】
欠点候補検出部35aは、
特定の角度の群において、今回の傾斜角度特定工程で暫定補正角度として未だ設定していない角度が存在するとS246において判断すると、S241の処理を実行する。
【0117】
欠点候補検出部35aは、
特定の角度の群において、
今回の傾斜角度特定工程で暫定補正角度として未だ設定していない角度が存在しないとS246において判断すると、
S245において記録した全ての組み合わせのうち、
差分値が最大である組み合わせの暫定補正角度を、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度として特定する(S247)。
ここで、
中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズが、
ベルト画像のラインと平行である場合、
ベルト画像においてライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値が最大になる可能性が高いとともに、
ベルト画像においてライン毎のピクセルの明度の平均値の最小値が最小になる可能性が高い。
すなわち、
中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズが、
ベルト画像のラインと平行である場合、
ベルト画像においてライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、
最小値との差分値が最大になる可能性が高い。
したがって、
S247においては、
差分値が最大である組み合わせの暫定補正角度を、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度として特定する。
【0118】
欠点候補検出部35aは、
S247の処理の後、
図25に示す傾斜角度特定工程を終了する。
【0119】
図26(a)は、暫定補正角度が0.00°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。
図26(b)は、暫定補正角度が-0.85°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。
図26(c)は、暫定補正角度が-1.70°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。
図26(d)は、暫定補正角度が-2.55°である場合のベルト画像におけるライン毎の明度の平均値の一例を示す図である。
【0120】
なお、
図26に示す例においては、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度は-1.70°であるものとする。
【0121】
図26(a)に示すように、
暫定補正角度が0.00°である場合、すなわち、S242において実質的に剪断変形されない場合、ベルト画像におけるライン毎の明度の平均値は、ライン間で殆ど差異がない。
図26(b)に示すように、
暫定補正角度が-0.85°である場合、
すなわち、S242における剪断変形の量が不足している場合、
図26(a)に示すものと比較して、
ベルト画像におけるライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値は大きくなるが、最大ではない。
図26(c)に示すように、
暫定補正角度が-1.70°である場合、
すなわち、S242における剪断変形の量が最適である場合、
図26(b)に示すものと比較して、
ベルト画像におけるライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値は大きくなり、最大になる。
図26(d)に示すように、
暫定補正角度が-2.55°である場合、
すなわち、S242における剪断変形の量が過剰である場合、
図26(a)に示すものと比較して、ベルト画像におけるライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値は大きくなるが、最大ではない。
【0122】
なお、欠点候補検出部35aは、
図25に示す傾斜角度特定工程において、ベルト画像におけるライン毎のピクセルの明度の平均値をS243において算出する。
しかしながら、
欠点候補検出部35aは、
ベルト画像におけるライン毎のピクセルの明度の平均値に代えて、ベルト画像におけるライン毎のピクセルの明度の総和値を採用しても良い。
欠点候補検出部35aは、ベルト画像におけるライン毎のピクセルの明度の総和値を採用する場合、平均値を採用するよりも計算が単純な分、僅かながら高速に処理できる。
【0123】
欠点候補検出部35aは、
図25に示す傾斜角度特定工程において、ライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値をS244において算出しこれを用いて、
これが最大になる傾斜角度を検索し、その時の傾斜角度を最適角度として算出するが、
欠点候補検出部35aは、ライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値に代えて、ライン毎のピクセルの明度の平均値の分散または標準偏差を採用しても良い。即ち、剪断角度を徐々に変えながら、ライン毎のピクセルの明度の平均値の分散または標準偏差を求め、それが最大になる傾斜角度を、最適角度として算出しても良い。
【0124】
図25に示す傾斜角度特定工程において、特定の角度の群に含まれる角度のピッチは、例えば1/10°など、ベルト欠点の座標の特定における許容誤差を十分にカバーできる範囲で設定すれば良い。
【0125】
特定の角度の群に含まれる角度のピッチは、
細かくすることによって、
S247において特定される傾斜角度の精度を向上することが期待されるが、
その分、計算時間も要する。
したがって、
特定の角度の群に含まれる角度のピッチをやや粗めにし、
S245において記録した組み合わせからなる格子点間を補間することによって、
ライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値が最大である組み合わせの暫定補正角度を推測しても良い。
例えば、特定の角度の群に含まれる角度のピッチを1/4°にし、
S245において記録した組み合わせからなる格子点間を、
1/20°で内挿補間計算しても良い。
図27は、
ライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値を暫定補正角度毎にプロットした図である。
図27において、
黒丸で示す点は、特定の角度の群に含まれる、ピッチが1/4°である格子点を示している。
図27において、
白丸で示す点は、格子点間を1/20°で内挿補間計算して得られた点を示している。
図27に示すように、
ライン毎のピクセルの明度の平均値の最大値と、最小値との差分値が最大である組み合わせの暫定補正角度は、-1.70°であると推測される。
【0126】
通例、検査装置の撮影カメラはしっかりと固定されるから、
傾斜角度は中間転写ベルトによらず一定であり、その場合、
中間転写ベルトの撮像システム毎に固有の傾斜角度を有す事になるので、
中間転写ベルトの撮像システム毎に傾斜角度の特定工程は1度実施しておけば、頻繁に実施する必要はないし、例えば、中間転写ベルト毎に実施する必要はない。
しかしながら、中間転写ベルト毎に傾斜角度が変化する場合はその限りではない。
【0127】
なお、以上においては、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度をコンピューターによって算出する方法について説明している。
しかしながら、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度は、作業者が目視で計測しても良い。
例えば、ベルト画像を表示する表示部32上の画面に分度器状の傾斜線をオーバーレイ表示することによって、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度を作業者に目視で計測させても良い。
また、表示部32上の画面にベルト画像を表示しながら、
このベルト画像を徐々に剪断変形させ、
ベルト画像において中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズが表示部32上の画面の縁と平行になった段階で作業者に剪断変形を止めさせることによって、その時の傾斜角度をベルト画像におけるベルト部の傾斜角度として求めても良い。
【0128】
以上のようにして、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度が求まったら、
S222(
図24参照。)の剪断変形工程によって、
傾斜角度特定工程で特定した傾斜角度に応じてベルト画像に対して剪断変形を実行する。
【0129】
図28(a)は、
図14に示すベルト画像43を剪断変形工程によって処理して得られるベルト画像44の一例を示す図である。
図28(b)は、
図14に示すベルト画像43を剪断変形工程によって処理して得られるベルト画像44の、
図28(a)に示す例とは異なる一例を示す図である。
【0130】
図28(a)に示すベルト画像44は、
剪断変形によって生じた長方形との差分部分に対して黒色でパディング処理を行ったベルト画像である。
図28(b)に示すベルト画像44は、
剪断変形によって生じた長方形との差分部分に対してベルト部の平均明度の色でパディング処理を行ったベルト画像である。
S222の剪断変形工程によって、
図28に示すように、撮像装置が正確に設置された本来の状態、
すなわち、正視状態で撮影されたベルト画像と同等のベルト画像を得ることができる。
【0131】
図8に示すように、
正視状態で撮影されたベルト画像と同等のベルト画像がS143の剪断変形補正工程によって得られたら、
中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状または筋状のノイズを除去するため、
S144のバンド状ノイズ除去工程が実行される。
【0132】
図29は、
図8に示すバンド状ノイズ除去工程のフローチャートである。
【0133】
図29に示すように、
欠点候補検出部35aは、
S143の剪断変形補正工程によって得られたベルト画像の各ラインの明度の平均値を算出する(S261)。
ここで、
欠点候補検出部35aは、
S143の剪断変形補正工程によって得られたベルト画像のライン毎に、
このラインに所属する全てのピクセルの明度の総和値を計算する。
また、その総和値をこのラインに所属する全てのピクセルの数で割ることによって、
ライン毎の明度の平均値を算出してもよいし、
ライン毎の明度の平均値の算出においては
所属する全てのピクセルの明度に対して幾何平均を計算するなど、単純加算平均以外の方法によって算出しても良い。
【0134】
欠点候補検出部35aは、
S261の処理とともに、
S143の剪断変形補正工程によって得られたベルト画像の全体の明度の平均値を算出する(S262)。
【0135】
欠点候補検出部35aは、
S261の処理の後、
S143の剪断変形補正工程によって得られたベルト画像の全てのラインに対して、
ラインにおける各ピクセルの明度から、
このラインに関してS261において算出した、明度の平均値を差し引く(S263)。
ベルト画像は、
S263の処理によって、
各ライン間のギャップが低減され、
例えば、中間転写ベルトの全幅に渡るようなバンド状のノイズや筋状のノイズが消去ないし抑制される。
【0136】
欠点候補検出部35aは、
S262およびS263の処理の後、
S263において得られたベルト画像の各ラインの各ピクセルの明度に、
このベルト画像に関してS262において算出された、
明度の平均値を加算する(S264)。
ベルト画像は、
S264の処理によって、各ピクセルに基準明度、
すなわち、S262において算出された、明度の平均値が与えられる。
なお、欠点候補検出部35aは、
後の工程で作業がし易い明度になるように、
ベルト画像の明度の多少の増減をしても構わないし、
規定の明度オフセットを与えても構わないし、
ベルト画像に対してコントラスト操作やガンマ特性操作をしても構わない。
それら処理のパラメーターは、予め設定されている。
ただし、
コントラスト操作やガンマ特性操作をするに際して、通例、コントラスト値やガンマ値は、操作しないことが多い。すなわち、ガンマ値は、1.0、線形で与え、そのままにすることが多い。
【0137】
欠点候補検出部35aは、
S264の処理の後、
ベルト画像の明度の微調整をしたり、
ベルト画像の明度の群から画像へ形式を変換したりする仕上げ処理を実行し(S265)、
図29に示すバンド状ノイズ除去工程を終了する。
【0138】
図30は、
図28(b)に示すベルト画像44をバンド状ノイズ除去工程によって処理して得られるベルト画像45の一例を示す図である。
【0139】
図30に示すベルト画像45は、
図28(b)に示すベルト画像44に存在していたバンド状または筋状のノイズが除去されていることが分かる。
【0140】
S144のバンド状ノイズ除去工程によって得られたベルト画像には、全面に渡り、テクスチャー模様状の背景雑音が残っている場合がある。そして、この背景雑音は、S122の欠点候補検出工程においてベルト欠点の候補として誤検知される可能性がある。したがって、
図8に示すように、バンド状または筋状のノイズが除去されたベルト画像がS144のバンド状ノイズ除去工程によって得られたら、テクスチャー模様状の背景雑音がベルト画像に及ぼす影響を低減するため、S145の背景模様低減工程が実行される。
【0141】
図31は、
図8に示す背景模様低減工程のフローチャートである。
【0142】
図31に示すように、欠点候補検出部35aは、S144のバンド状ノイズ除去工程によって得られたベルト画像を構成する各ピクセルの周囲の特定のサイズの範囲における全ピクセルの明度の平均値を算出し、算出した平均値を局所の閾値としてベルト画像を2値化する局所適応2値化処理を実行する(S281)。具体的には、欠点候補検出部35aは、まず、S144のバンド状ノイズ除去工程によって得られたベルト画像を構成するピクセルのそれぞれを対象にし、対象のピクセルの周囲の特定のサイズの範囲における、対象のピクセルを含む全ピクセルの明度の平均値を算出する。そして、欠点候補検出部35aは、算出した平均値を局所の閾値として対象のピクセルの明度と比較し、対象のピクセルの明度と、閾値との大小関係に応じて、ベルト欠点の最も低い明度が0になるように2値化する。すなわち、欠点候補検出部35aは、対象のピクセルの明度が閾値より大きければ対象のピクセルの値を1とし、対象のピクセルの明度が閾値以下であれば対象のピクセルの値を0とする。ここで、特定のサイズは、ベルト欠点の典型的なサイズを基準としたサイズであり、例えば、ベルト欠点の典型的なサイズ程度でも良いし、ベルト欠点の典型的なサイズの2倍程度のサイズでも良い。ベルト欠点の典型的なサイズは、予め同様のベルト欠点のサンプルが複数採取されてサイズが計測されることによって、算出されても良い。ベルト欠点の典型的なサイズは、ベルト検査システム30の外部から入力されても良いし、予め計測された値をベルト検査システム30に記憶しておいて、記憶しておいた値が呼び出されても良い。ベルト欠点の典型的なサイズは、デフォルトではベルト検査システム30に記憶しておいた値が呼び出され、ベルト検査システム30の外部から入力されたものと適宜切り替え可能な構成でも良い。ベルト欠点の典型的なサイズは、例えば、ベルト画像が2000ピクセル程度のものであれば、25~30ピクセル程度で設定されても良い。
【0143】
欠点候補検出部35aは、S281の局所適応2値化処理の後、S281の局所適応2値化処理において2値化されたベルト画像をぼかすぼかし処理を実行する(S282)。ぼかし処理には、例えば、ガウシャンフィルターなどを使い、例えば、ベルト画像の幅が2000ピクセル程度なのであれば、カーネルサイズを3ピクセルほどに設定してぼかせば良い。
【0144】
一方、欠点候補検出部35aは、S144のバンド状ノイズ除去工程によって得られたベルト画像を構成する各ピクセルの明度を取り出して、明度毎に計数してヒストグラムを生成する(S283)。次いで、欠点候補検出部35aは、S283において生成したヒストグラムに基づいて、明度を昇順で累積することによって、累積ヒストグラムを生成する(S284)。次いで、欠点候補検出部35aは、S284において生成した累積ヒストグラムの各値を、累積最大値で正規化しておいて、入力した分位に対して、対応する明度を逆引きできるようにする(S285)。例えば、明度は、分位が0.015である場合に0.592であり、分位が0.985である場合に0.693であるように算出される。
【0145】
欠点候補検出部35aは、S285の処理の後、規定された下位および上位それぞれの分位時の明度を算出し、算出した2つの明度の差を二等分することによって、レンジ圧縮補正係数αを算出する(S286)。例えば、レンジ圧縮補正係数αは、下位の分位時の明度が0.592であり、上位の分位時の明度が0.693である場合、0.6425(=0.693-0.592/2)である。
【0146】
欠点候補検出部35aは、S282およびS286の処理の後、S282のぼかし処理によって得られた画像の全ピクセルのそれぞれの値に、S286において算出されたレンジ圧縮補正係数αを乗算した2値化画像を得る(S287)。すなわち、S287の処理は、0および1で2値化された画像の明度を圧縮して、0およびαで2値化された画像を生成する処理である。
【0147】
欠点候補検出部35aは、S287の処理の後、S144のバンド状ノイズ除去工程によって得られたベルト画像から、S287において0およびαで2値化された画像を減算する(S288)。ここで、S288の処理は、S144のバンド状ノイズ除去工程によって得られたベルト画像のピクセルのそれぞれの明度から、このピクセルの座標と同一の座標に存在する、S287において0およびαで2値化された画像のピクセルの値を減算する処理である。
【0148】
欠点候補検出部35aは、S288の処理の後、
図31に示す背景模様低減工程を終了する。
【0149】
図32は、
図30に示すベルト画像45をS145の背景模様低減工程によって処理して得られるベルト画像46の一例を示す図である。
図33は、ベルト画像46の明度のヒストグラム分布を示す図である。
【0150】
図32および
図33に示すベルト画像46は、
図30に示すベルト画像45に存在していた背景雑音が除去されていることが分かる。
【0151】
図7に示すように、欠点候補検出部35aは、
S121の前処理工程が終了すると、S122の欠点候補検出工程を実行する。
すなわち、欠点候補検出部35aは、典型的なベルト欠点の画像をテンプレートとして使用し、S121の前処理工程によって前処理が施されたベルト画像にて、画像の相関度を算出してベルト欠点の候補をベルト画像から検出する。
例えば、スライド・ウインドウ法や、セレクティブ・サーチ法などを用いれば良く、
スライド・ウインドウ法を使用するのであれば、
テンプレートの画像をスライドさせながら、
テンプレート画像とベルト画像との互いに対応するピクセル色値の差分の総和値を計算し、
その出力レンジにて正規化し、
規定の閾値以下になる座標を検出し、
基本、その位置がベルト欠点の候補となる。
尚、規定の閾値以下になる座標は、
大概は単独ピクセルになる事は少なく近傍の複数ピクセルに及ぶ。
すなわち、ある程度の領域面積を持つ事になる。
また、その面積はテンプレート画像との相関が高い部分ほどに大きくなるが、
その場合は、その領域の重心座標を算出し、それをベルト欠点の代表座標として検出すれば良い。
ちなみに、もしも、検査対象の中間転写ベルトに複数のベルト欠点の候補が存在する場合は、
前記、高相関の領域は複数存在することになるから、それぞれの領域で重心を計算してそれを各ベルト欠点の座標として検出する。
【0152】
なお、S122の欠点候補検出工程においては、
ベルト欠点の候補の検出のための閾値を、後述のS302の欠点候補検出工程における閾値と基本的には同値にする。しかしながら、ベルト欠点の候補の拾い漏らしを避けたい場合には、やや緩めにして、拾い漏らしの発生確率を下げても良い。
【0153】
合否判定部35bは、
S122の欠点候補検出工程の終了後、S123の合否判定工程を実行する。
すなわち、
合否判定部35bは、
S122の欠点候補検出工程において検出されたベルト欠点の候補に対し、
合否判定用の学習モデルによって合否を判定する。
【0154】
合否判定部35bは、
図7に示すようにS123の合否判定工程を終了することによって画像診断工程を終了し、
図1に示すようにS102の画像診断工程を終了することによって
図1に示すベルト検査工程を終了する。
【0155】
次に、S123の合否判定工程において使用される学習モデルを生成する学習モデル生成工程について説明する。
【0156】
図34は、S123の合否判定工程において使用される学習モデルを生成する学習モデル生成工程のフローチャートである。
【0157】
図34に示すように、
学習モデル生成工程は、
ベルト欠点の候補の検出のための前処理をベルト画像に施す前処理工程(S301)と、
S301の前処理工程において前処理が施されたベルト画像に基づいてベルト欠点の候補を検出する欠点候補検出工程(S302)と、
S302の欠点候補検出工程によって検出されたベルト欠点の候補に合否のタグを付けるタグ付け工程(S303)と、
合否判定用の学習モデルを生成する学習モデル生成工程(S304)とによって構成される。
【0158】
図34に示す、
S301の前処理工程と、
S302の欠点候補検出工程とは、
それぞれ、
図7に示す、
S121の前処理工程と、S122の欠点候補検出工程と同様の工程であるが、
S121の前処理工程と、S122の欠点候補検出工程とは異なり、
複数の中間転写ベルトに対して実行される。
【0159】
S302の欠点候補検出工程においては、
欠点候補には真に欠点である欠点候補と、欠点候補にはあがっても真の欠点ではないものが混ざっている。
都合、閾値は過ぎても不足しても不都合を生じる。
即ち、
不足すれば、真の欠点を拾い漏らしかねず、
過ぎれば、真の欠点ではない欠点候補を拾い過ぎてしまい処理速度を無用に遅くしてしまう。
よって、程良い閾値を設定する事が肝要になるが、
ベルト欠点の候補の検出のための最適な閾値を敢えて極端に厳格に求めず、やや緩めに設定し、すなわち、無駄なく効率良く検出することよりも、ベルト欠点らしき箇所をベルト欠点の候補として漏らさずに拾うことを優先し、真の欠点ではない部位も候補として抽出する。
また、
同時に、閾値を緩めに設定する事で、機械学習用の真の欠点画像と非欠点画像の双方の採取を行う。
即ち、
閾値を敢えて緩めに設定する事は、
ベルト欠点らしき箇所をベルト欠点の候補として、
相関があるものの真のベルト欠点ではない箇所と
真のベルト欠点箇所の双方の画像を採取できる様にし、
すなわち、
真陽性のベルト欠点の箇所の画像と、
偽陽性のベルト欠点の箇所の画像の双方を十分に採取する
効果をもたらす。
【0160】
S302の欠点候補検出工程が終了したら、
S303のタグ付け工程を実施する。
すなわち、
S302の欠点候補検出工程によって複数の中間転写ベルトから検出された多くのベルト欠点の候補のそれぞれに対して、合否のタグを付ける。
このタグは、中間転写ベルトの合否判定の技術を保有する検査員による中間転写ベルトの目視および触診結果に基づいて付されても良い。
【0161】
S303のタグ付け工程が終了すると、
S304の学習モデル生成工程が実行される。
すなわち、
学習モデル生成部35cは、
S303のタグ付け工程において合否のタグが付けられた、
ベルト欠点の候補を機械学習することによって、合否判定用の学習モデルを生成する。
なお、
真陽性のベルト欠点の画像と、偽陽性のベルト欠点の画像との双方の画像をS302の欠点候補検出工程において十分に確保しておくことによって、
真陽性のベルト欠点と、偽陽性のベルト欠点とを適切に分離することができる学習モデルがS304の学習モデル生成工程において生成することができる。
【0162】
S304の学習モデル生成工程においては、
例えば、LogisticRegression、RandomForest、
support Vector Machineなどの既存の方式を使用しても良いし、勿論、更に高度な学習モデルを用いても良い。
しかしながら、真陽性のベルト欠点と、偽陽性のベルト欠点との境界を見つけ、真陽性のベルト欠点と、偽陽性のベルト欠点とのいずれに所属するのかという程度の判定であれば、簡便な機械学習でも実用的に十分なことも少なくない。むしろ、簡便な機械学習の方が、学習時間や追加学習の面で生産ラインにおいては都合がよく、パラメーターの調整や更新の容易さでも生産ライン向きであるという事が少なくない。
【0163】
以上に説明したように、ベルト検査システム30は、ベルト欠点の典型的なサイズを基準とした特定のサイズの範囲によってベルト画像に対して局所適応2値化処理を実行して2値化画像を生成し(S281~S287)、生成した2値化画像をS288において減算したベルト画像に基づいてベルト欠点の候補を検出するので、ベルト画像に存在する、テクスチャー模様状の背景雑音を低減することができ、その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【0164】
ベルト検査システム30は、ベルト画像から減算する2値化画像のうちの大きい値が、ベルト画像の下位の特定の分位の明度と、ベルト画像の上位の特定の分位の明度との差を二等分した値であるので、ベルト画像ベルト欠点の最も低い明度よりも明度が高く、ベルト欠点の最も高い明度よりも明度が低い可能性が高いテクスチャー模様状の背景雑音を効果的に低減することができ、その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【0165】
なお、S281~S287において生成される2値化画像は、本実施の形態において、ベルト欠点の最も低い明度が変換される第1の値が0であり、第1の値より大きい第2の値がαである。しかしながら、2値化画像のうちの第1の値は、0より大きい値でも良い。また、2値化画像のうちの第2の値は、α以外の値でも良い。
【0166】
ベルト検査システム30は、
ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度を特定する(S221)ので、
ベルト画像上のベルト部におけるベルト欠点の座標位置に基づいた、
実物の中間転写ベルトにおけるベルト欠点の位置の特定を容易化することができる。
【0167】
ベルト検査システム30は、
ベルト画像におけるベルト部分の傾斜角度に応じてベルト画像に対して剪断変形を実行する(S222)ので、
ベルト画像を撮影した撮像装置が中間転写ベルトの幅方向に対して平行に設置されていなかったことによってベルト画像上の中間転写ベルトが剪断変形していたとしても、
撮像装置を中間転写ベルトの幅方向に対して平行に設置するように調整することなく、
撮像装置を中間転写ベルトの幅方向に対して平行に設置した場合と同等のベルト画像を得ることができる。
【0168】
ベルト検査システム30は、
傾斜角度に応じて剪断変形を実行したベルト画像の全てのラインに対して、
ラインにおける各ピクセルの明度から、このラインの明度の平均値を差し引く(S263)ので、各ライン間のギャップが低減され、中間転写ベルトの幅方向に延在するバンド状のノイズや筋状のノイズを消去ないし抑制でき、その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【0169】
各ピクセルの明度から、各ピクセルの所属ラインの明度の平均値を差し引いてしまうと、明度の値は略0.0前後になり、画像的には、ほぼ真っ黒であり、作業性が良くない。また、明度の値が略0.0前後になるという状態は、負値も発生しており、コンピューター的には処理可能でも、画像的には表示できないか、表示されていても何が描画されているのか判らないので、作業性が良くない。しかしながら、ベルト検査システム30は、各ピクセルの明度から、各ピクセルの所属ラインの明度の平均値を差し引いた(S263)後、各ピクセルの明度に特定の値を付与する(S264)ので、作業性を向上することができる。この時、各ピクセルの明度に付与する値は、例えば、中間転写ベルトの全画面の平均値や、検査員が目視確認し易い明度とし、その場合、例えば、黒から白の全レンジを1.0とした場合の0.7程度のグレーに設定しても良い。
【0170】
ベルト検査システム30は、
暗電流ノイズ、フォトンノイズなど、
ベルト欠点の標準的なサイズより小さい第1のサイズ以下のノイズと、
レンズ光量落ちや面内ムラなど、
ベルト欠点の標準的なサイズより大きい第2のサイズ以上のノイズとをベルト画像から除去する処理(S201~S203)を傾斜角度特定処理(S221)の前に実行するので、ベルト画像におけるベルト部の傾斜角度の特定の精度を向上することができる。
【0171】
ベルト検査システム30は、
暗電流ノイズ、フォトンノイズなど、
ベルト欠点の標準的なサイズより小さい第1のサイズ以下のノイズと、
レンズ光量落ちや面内ムラなど、
ベルト欠点の標準的なサイズより大きい第2のサイズ以上のノイズとを
S201~S203において除去したベルト画像からベルト欠点の候補を検出する(S122およびS302)ので、
ベルト欠点の候補の検出の精度を向上することができ、
その結果、ベルト欠点の検出の精度を向上することができる。
【0172】
ベルト検査システム30は、
暗電流ノイズ、フォトンノイズなど、
ベルト欠点の標準的なサイズより小さい第1のサイズ以下のノイズと、
レンズ光量落ちや面内ムラなど、
ベルト欠点の標準的なサイズより大きい第2のサイズ以上のノイズとをベルト画像から除去する処理(S201~S203)を背景模様低減工程(S145)の前に実行するので、ベルト欠点の検出の精度を更に向上することができる。
【0173】
ベルト検査システム30は、
検出の精度を向上した、ベルト欠点の候補に対し、
中間転写ベルトの品質の合否を学習モデルによって判定する(S123)ので、
中間転写ベルトの品質の合否の判定の精度を向上することができる。
【0174】
ベルト検査システム30は、
中間転写ベルトの品質の合否の判定のための学習モデルを、検出の精度を向上した、
ベルト欠点の候補を用いて生成する(S304)ので、
中間転写ベルトの品質の合否の判定の精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0175】
10 中間転写ベルト
30 ベルト検査システム(コンピューター)
34a ベルト検査プログラム
35a 欠点候補検出部
35b 合否判定部
35c 学習モデル生成部