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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】棒状化粧料繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/04 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A45D40/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020204703
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092117
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】垂水 博士
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-035197(JP,A)
【文献】特開2005-205063(JP,A)
【文献】実開昭58-084013(JP,U)
【文献】特開2004-350954(JP,A)
【文献】実開平05-070411(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料(1)を保持し下部側壁に突子(23)を径方向に突設した保持筒(2)と、該保持筒(2)を摺動自在に内装し下部側壁に保持筒(2)の突子(23)が貫通する案内溝(32)及び該案内溝(32)の下端より、案内溝(32)の周方向の幅(W11)よりも狭い誘導溝(33)を連続し下端に開溝して穿設したスリーブ(3)と、該スリーブ(3)の案内溝(32)及び誘導溝(33)を覆うように回動自在に保持し、内周壁に前記案内溝(32)を貫通した保持筒(2)の突子(23)が螺合するラセン溝(41)を上端を有して螺設し該ラセン溝(41)上端より連続し端部に開溝した侵入溝(412)を刻設したラセン筒(4)とが主な構成要素となる繰り出し構造部(A)を有し、
前記突子(23)は、周方向の幅(W2)が前記スリーブ(3)の誘導溝(33)の周方向の幅(W22)より僅かに狭く、前記保持筒(2)の側壁よりの高さ(H2)がスリーブ(3)の肉厚と同じか僅かに低く、薄い略直方体状に突出した突入突部(231)と、該突入突部(231)の径方向側壁(231a)より径方向に突出し前記ラセン筒(4)の侵入溝(412)よりラセン溝(41)に侵入螺合する螺合突部(232)と、突入突部(231)の周方向側壁(231c)の両側壁下端方向側壁(231b)方向に片寄って連設され周方向両端間の幅(W3)が案内溝(32)の周方向の幅(W11)よりも僅かに狭く、前記保持筒(2)の側壁よりの高さ(H3)は突入突部(231)の前記保持筒(2)の側壁よりの高さ(H2)と同じか僅かに低い一対の回り止め突部(233)と、回り止め突部(233)の上端方向側壁(233d)に連設され、前記保持筒(2)上端方向が先端となり高低差を有したくさび状スロープ(234)とが一体平面略凸字形状をしており、
前記突子(23)の突入突部(231)の上端方向側壁(231d)は組み立て時スリーブ(3)の誘導溝(33)に係合して保持筒(2)とスリーブ(3)の位置決めを行い、スロープ(234)は先端がスリーブ(3)の下端を押し広げて回り止め突部(233)をスリーブ(3)の案内溝(32)に係合させ、突入突部(231)の上端方向側壁(231d)が案内溝(32)の上部当接部(321)に当接して上昇限ストッパー(235)となり、回り止め突部(233)の下端方向側壁(233b)が案内溝(32)の下部当接部(322)に当接して下降限ストッパー(236)となり保持筒(2)の上下摺動を規制することを特徴とする棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項2】
前記スロープ(234)は、前記回り止め突部(233)の上端方向側壁(233d)に、前記保持筒(2)の側壁が先端となり径方向に高低差を有したくさび状斜面をしており、前記スリーブ(3)下端を径方向に押し広げて回り止め突部(233)が潜り込み、案内溝(32)に係合することを特徴とする請求項1記載の棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項3】
前記スロープ(234)は、前記回り止め突部(233)の上端方向側壁(233d)に、前記突入突部(231)の周方向側壁(231c)が先端となり周方向に高低差を有したくさび状斜面をしており、前記スリーブ(3)下端の誘導溝(33)周方向に押し広げて回り止め突部(233)が潜り込み、案内溝(32)に係合することを特徴とする請求項1記載の棒状化粧料繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性を向上させ、かつ歩留まりを向上させた口紅、スティックファンデーションなどの棒状化粧料繰り出し容器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料を保持した保持筒と、この保持筒を上下摺動自在に収納したスリーブと、このスリーブ外周に回動自在に配置し保持筒を上下動させるラセン筒とが主な構成要素となる棒状化粧料繰り出し機構を備えた容器は、保持筒に上方向ばかりでなく、下方向からもアクセスできることから、棒状化粧料の上方直接充填方法及び後方直接充填方法に対応する容器として数多く利用されていた。
【0003】
上記繰り出し機構に関して特許文献1に於いては、突子(ピン8)を設けた保持筒(中皿7)と、この保持筒を上下摺動自在に収納し下部側壁に前記突子が貫通する案内溝(縦孔6)を穿設したスリーブ(身筒5)と、このスリーブの下部に回動自在に保持し内側壁に案内溝を貫通した保持筒の突子が螺合するラセン溝(螺旋溝4)を螺設したラセン筒(螺旋筒3)とより成り、前記スリーブの案内溝を底部開口端に達するまで穿設し、ラセン筒の上端に切り欠き(切欠部9)を設け、この切り欠きからラセン溝の上端を結ぶ侵入溝(ピン案内通路10)を設けた棒状化粧品容器が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に於いては、突子(螺合ピン36)を設けた保持筒(受皿体35)と、この保持筒を上下摺動自在に収納し下部側壁に前記突子が貫通する案内溝(ガイド孔32)を穿設したスリーブ(内筒体29)と、このスリーブの下部に回動自在に保持し内側壁に案内溝を貫通した保持筒の突子が螺合するラセン溝(螺溝19)を螺設したラセン筒(螺筒体17)とより成り、ラセン溝がラセン筒上端に開溝し、前記案内溝の下端に溝幅の狭い(抜け止め突片33)誘導溝を介してスリーブ底部開口端に達するまで穿設した棒状化粧料容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-70411号公報
【文献】特開2004-350954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に於いては、突子を案内溝に挿入する際、及びラセン溝に挿入する際、案内溝はスリーブ下端に開溝しており、ラセン溝は侵入溝を介してラセン筒上端に開溝しているため、スリーブ下端より保持筒を挿入して、突子を案内溝に突入させた後、スリーブ下端をラセン筒上端より挿入して、保持筒の突子を侵入溝からラセン溝に突入させることができる。そして、保持筒の突子が案内溝の上端に当接して保持筒の上昇限となり、ラセン筒を止着したハカマ筒(袴筒1)の底面に保持筒の下端面が当接して保持筒の下降限となっていた。
【0007】
従って、組み立て時には、保持筒の突子に何ら応力が加わることなく、突子を損傷せずに組み立てることができた。しかし、保持筒の下降限の状態で、さらに繰下げ操作を行うと、保持筒の下端面がハカマ筒を押し下げ、ラセン筒とハカマ筒の止着が外れてしまう危険性があった(ジャッキアップ現象)。
【0008】
特許文献2に於いては、突子を案内溝に挿入する際、及びラセン溝に挿入する際、案内溝は誘導溝を介してスリーブ下端に開溝しており、ラセン溝はラセン筒上端に開溝しているため、スリーブ下端より保持筒を挿入して、誘導溝を押し広げて突子を案内溝に突入させた後、スリーブ下端をラセン筒上端より挿入して、保持筒の突子をラセン溝に突入させることができる。この時点で、ラセン筒によってスリーブ下端の広がりが押さえられ、スリーブより保持筒が脱落不能となる。そして、保持筒の突子が案内溝の上端に当接して保持筒の上昇限となり、案内溝の下端の誘導溝との接合部分に当接して保持筒の下降限となっていた。
【0009】
従って、保持筒の繰り上げ下げ操作を行う場合、その応力は繰り出し機構以外に働かず、破損の危険性はなかった。しかし、組立作業中、突子は誘導溝を押し広げて案内溝に係合させているため、突子に若干の応力が加わり、それが原因で突子が損傷してしまう可能性はゼロではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の棒状化粧料繰り出し容器は、保持筒2とスリーブ3とラセン筒4とが主な構成要素となる繰り出し構造部Aを備えている。棒状化粧料1の下端を保持する保持筒2は、下部側壁に突子23を径方向に突設している。この保持筒2を上下摺動自在に内装したスリーブ3は、下部側壁に前記保持筒2の突子23が貫通する案内溝32、及びこの案内溝32の下端より、案内溝32の周方向の幅W11よりも狭い誘導溝33を連続し、スリーブ3下端に開溝して穿設する。このスリーブ3の案内溝32及び誘導溝33を覆うように回動自在に保持されたラセン筒4は、内周壁に案内溝32を貫通した保持筒2の突子23が螺合するラセン溝41を、ラセン筒4下端より上端を有して螺設し、このラセン溝41上端より連続した侵入溝412をラセン筒4上端に開溝して刻設する。
【0011】
前記保持筒2の突子23は、突入突部231と螺合突部232と回り止め突部233及びスロープ234を一体にした平面略凸字形状をしている。突入突部231は、周方向の幅W2が前記スリーブ3の誘導溝33の周方向の幅W22より僅かに狭く、前記保持筒2の側壁よりの高さH2がスリーブ3の肉厚と同じか僅かに低い、薄い略直方体形状をしている。螺合突部232は、突入突部231の径方向側壁231aより径方向に突出し、前記ラセン筒4の侵入溝412よりラセン溝41に侵入、螺合する。回り止め突部233は、前記突入突部321の周方向側壁231cの両側壁に、下端方向側壁231bがわに片寄って連設され、周方向両端間の幅W3は、前記スリーブ3の案内溝32の周方向の幅W11よりも僅かに狭くなっている。回り止め突部233の保持筒2の側壁よりの高さH3は、突入突部321の保持筒2の側壁よりの高さH2と同じか僅かに低くなっている。スロープ234は、前記回り止め突部233の上端方向側壁233dに連設し、前記保持筒2の上端方向が先端となり、高低差を有した斜面になっている。
【0012】
前記突子23の突入突部231の上端方向側壁231dは、組立時にスリーブ3の誘導溝33に係合して保持筒2とスリーブ3の周方向の位置決めを行う。スロープ234は、スリーブ3下端を押し広げて回り止め突部233をスリーブ3の案内溝32に係合させる。突入突部231の上端方向側壁231dは、案内溝32の上部当接部235に当接して上昇限ストッパー321となる。回り止め突部233の下端方向側壁233bは、案内溝32の下部当接部236に当接して下降限ストッパー322となる。この上昇限ストッパー321と下降限ストッパー322により保持筒2の上下摺動を規制する。
【0013】
前記スロープ234は、保持筒2の側壁が先端となり、径方向に高低差を有したくさび状斜面を、回り止め突部233の上端方向側壁233dに連設する。このスロープ234先端が、前記スリーブ3下端を径方向に押し広げて回り止め突部233が潜り込み、案内溝32に係合する。若しくは、前記突入突部321の周方向側壁231cが先端となり、周方向に高低差を有したくさび状斜面を、回り止め突部233の上端方向側壁233dに連設する。このスロープ234先端が、前記スリーブ3の誘導溝33を周方向に押し広げて、回り止め突部233が案内溝32に係合する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように、スリーブ3の案内溝32下端の下部当接部322とスリーブ3下端の間には、案内溝32の溝幅W11よりも狭い溝幅W22の誘導溝33を連設して、スリーブ3の案内溝32をスリーブ3下端に連続させている。更に、ラセン筒4のラセン溝41上端とラセン筒4の上端の間には、侵入溝412を刻設してラセン筒4のラセン溝41をラセン筒4の上端に連続させている。その結果、スリーブ3の下端より保持筒2を挿入して保持筒2の突子23を誘導溝33から案内溝32に突入係合させた後、スリーブ3の下部をラセン筒4の上端より挿入して保持筒2の突子23を侵入溝412よりラセン溝41へ侵入、螺合させることができる。しかも、スリーブ3をラセン筒4に装着した時点で、スリーブ3下端の広がりが押さえられ、保持筒2脱落不能に保持できる。
【0015】
しかも、スリーブ3の誘導溝33の溝幅W22は、案内溝32の溝幅W11よりも狭く、案内溝32下端の誘導溝33との接合部分には、誘導溝33の両側に案内溝32の下部当接部322が残存しているため、保持筒2の上下摺動時に突子23の回り止め突部233の下端方向側壁233bが案内溝32の下部当接部322に当接して下降限となる。そのため、保持筒2の下端がハカマ筒7に当接して繰り出し機構部Aを押上げてしまう様なジャッキアップ現象は起こり得ない。
【0016】
更に、保持筒3の突子23は、突入突部231、螺合突部232、回り止め突部233及びスロープ234から成る、複合的な一体形状をしている。突入突部231は、上端がスリーブ3の誘導溝33の下端に係合して保持筒2とスリーブ3の周方向の位置合わせを行う。スロープ234は、くさび状斜面の先端がスリーブ3を押し広げ、回り止め突部231が潜り込んで案内溝32に係合させる。なお、スロープ234が径方向に高低差を有するくさび状斜面の場合、スロープ234がスリーブ3の内側に潜り込んで押し広げ、回り止め突部231を案内溝32に係合させる。また、スロープ234が周方向に高低差を有するくさび状斜面の場合、スロープ234がスリーブ3の誘導溝33の下端を周方向に押し広げて、回り止め突部231を案内溝32に係合させる。螺合突部232は、ラセン筒4のラセン溝41に螺合して保持筒2を上下摺動させる。回り止め突部233は、スリーブ3の案内溝32に係合して保持筒2を回動不能に摺動させる。そして、スリーブ3の案内溝32の上部当接部321に、突子23の突入突部231の上端方向側壁231dが当接して保持筒2の上昇限ストッパー235となる。そして、スリーブ3の案内溝32の下部当接部322に、突子23の回り止め突部233の下端方向側壁233bが当接して保持筒2の下降限ストッパー236となる。
【0017】
この保持筒2の突子23の突入突部231の上部は、スリーブ3の誘導溝33の下端に係合して保持筒2とスリーブ3周方向の位置決めされる。この係合は回り止め突部233がスリーブ3下端を乗り越え、案内溝32に係合するまで続くため、スリーブ3内への保持筒2の組付けの際の無理入れを左右にぶれることなく安定的に行える。しかも、無理入れ時の影響(ダメージ)は突子23のスロープ234及びスリーブ3下端に限定されており、繰り上げ下げに関係した部位ではないため、繰り出し操作に影響を与えるようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の棒状化粧料収納時(保持筒の下降限時)の正面断面図である。
図2】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の棒状化粧料繰り出し時(保持筒の上昇限時)の正面断面図である。
図3図1の状態のスリーブと保持筒の状態説明図である。
図4図2の状態のスリーブと保持筒の状態説明図である。
図5】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器のラセン筒の正面断面図である。
図6】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の、スリーブと保持筒の組立時の斜視図である。
図7】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の保持筒の斜視図である。
図8】本発明その他の実施例の保持筒の斜視図である。
図9図7における突子の拡大斜視図である。
図10図8における突子の拡大斜視図である。
【実施例1】
【0019】
本発明実施例1を図1~7及び図9によって説明する。本説明は、特に記載のない限り、本発明棒状化粧料繰り出し容器を正立させた時、棒状化粧料1が出没する側を「上」、反対側を「下」として説明する。
【0020】
保持筒2は保持皿21及び脚筒22より成っている。保持皿21は、棒状化粧料1の下端を収嵌保持し、下端より脚筒22を垂下している。この脚筒22の下部外側壁には、突子23を径方向に突設している。
【0021】
この棒状化粧料1及び保持筒2は、スリーブ3内に摺動自在に収納され、スリーブ3の先端31より棒状化粧料1が出没するようになっている。このスリーブ3は、金属製のパイプ製で、下部側壁には、保持筒2の突子23が貫通して保持筒2をスリーブ3内で回動不能に上下摺動自在に案内するスリット状の案内溝32を軸線方向に長く穿設している。この案内溝32の上端は上部当接部321、下端は下部当接部322となっている。この下部当接部322より連続して、スリーブ3の下端に達する誘導溝33を設け、この誘導溝33により、スリーブ3の下端が切り割れた状態となっている。この誘導溝33の溝幅W22は、前記案内溝32溝幅W11よりも幅狭になっており、案内溝32の下部当接部322は、誘導溝33の両側に残存し下降限ストッパー235となっている。
【0022】
保持筒2の突子23は図7図9に示したように、突入突部231、螺合突部232、回り止め突部233及びスロープ234から成り、一体に組み合わせ平面略凸字形状をしている。突入突部231は、前記保持筒2の側壁よりの高さH2が前記スリーブ3の肉厚とほぼ同じか僅かに低い高さで、周方向の幅W2が前記誘導溝33の溝幅W22よりも僅かに狭い、略直方体形状をしている。この突入突部231の径方向側壁231aに、円柱形状の螺合突部232を径方向に突設している。さらに、突入突部231の周方向側壁231cには両側に、下端方向側壁231b方向に片寄って、一対の回り止め突部233が突出している。この回り止め突部233の、保持筒2の側壁よりの高さH3は、前記突入突部231の、保持筒2の側壁よりの高さH2と同じか僅かに低くなっている。この両方の回り止め突部223の周方向の幅W3は、前記スリーブ3の案内溝32の溝幅W11よりも僅かに狭く構成している。なお、この回り止め突部223の下端方向側壁233bと突入突部231の下端方向側壁231bは一致した同一面となっている図9参照)。この回り止め突部223の上端方向側壁233dには、それぞれスロープ234を連設している。このスロープ234は、前記保持筒2の側壁が先端となり、径方向に高低差を有したくさび状斜面である
【0023】
本発明の保持筒2は前述した構成のため、スリーブ3が単体の状態で、スリーブ3の下端より保持筒2を挿入すると、保持筒2の突子23の突入突部231の上部がスリーブ3下端の誘導溝33の下端係合した状態、つまり、スリーブ3と保持筒2が周方向の位置決めされた状態で、突子23のスロープ234先端がスリーブ3の下端に当接する。ここで保持筒2に少し力を加えて押し込むと、スリーブ3の下部案内溝32及び誘導溝34により切り割られているため、スロープ234がスリーブ3の下端を押し広げて回り止め突部233が潜り込み、スリーブ3の下端を乗り越え、案内溝32に係合し組立てが完了する(図6参照)。この時、突子23の突入突部231は、誘導溝34に係合したまま挿入されるため、保持筒2の挿入時に、スリーブ3と保持筒2の周方向の位置が変わることがない。
【0024】
組立後、スリーブ3内の保持筒2は、突子23の回り止め突部233がスリーブ3の案内溝32に係合しているため、図6に示したように、回動不能な状態で上下摺動可能となっている。そして、突子23の突入突部231の上端方向側壁231dが、案内溝32の上部当接部321に当接して保持筒2の上昇が規制される上昇限ストッパー235となり、突子23の回り止め突部233の下端方向側壁233bが、案内溝32の下部当接部322に当接して下降が規制される下降限ストッパー236となり、保持筒2の上下摺動を規制している。また、突子23の螺合突部232は、スリーブ3の外壁よりも外径方向に突出している。
【0025】
スリーブ3の案内溝32の上方側壁には、第1突リブ34及び第2突リブ35を、上下に間隔を開けて、下側に第1突リブ34を、上側に第2突リブ35を外径方向に突出して設けている。第2突リブ35の位置は、保持筒2が下降限の時、保持筒2の保持皿21の上端よりも僅かに下になるよう設けている。そしてこのスリーブ3内の保持皿21の上方が棒状化粧料1を収容する収容部36となっている。
【0026】
このスリーブ3の、第1突リブ34より下方は、ラセン筒4内に上方より挿入されている。このラセン筒4内周壁の、スリーブ3の案内溝32に相対した部位にはラセン溝41を螺設している。このラセン溝41は、ラセン筒4の下端に開溝しており、上端411は案内溝32の上部当接部321と相対する位置に達している。このラセン溝41には、前記スリーブ3を貫通した保持筒2の突子23の螺合突部232が螺合している。また、ラセン筒4の外周壁全周には、軸線と平行の縦リブ44を等間隔で複数条設けている。このスリーブ3にラセン筒4を装着する事により、スリーブ3下端の変形が抑えられ、突子23が案内溝32より乗り越え不能となり、保持筒2が脱落不能になる(図5参照)。
【0027】
このラセン筒4の、ラセン溝41を螺設した部位より上方は、連結部42となっている。この連結部42の上端よりは、全周に軸線方向に切り欠いた複数の切り欠き421を等間隔で設け、切り欠き421の間に舌片422を構成している。この切り欠き421の一つは、前記ラセン溝41の上端411の直上方に設けている。このラセン溝41の上端411よりは、軸線方向に侵入溝412を刻設している。この侵入溝412の上端は、前記ラセン溝41の直上方に設けた切り欠き421の下端に達し、開溝している。その結果、保持筒2の突子23の螺合突部232が侵入溝412からラセン溝41に螺合可能となり、保持筒2を組み込んだスリーブ3下部を、螺合突部232とラセン筒4の侵入溝412を周方向位置合わせすることにより、ラセン筒4に挿入、組付けできる。
【0028】
また、舌片422の内周壁には、スリーブ3の第1突リブ34に回動自在に係合する凹溝423を刻設している(図5参照)。このラセン筒4の凹溝423は、スリーブ3の第1突リブ34係合した際、スリーブ3の下端よりラセン筒4の下端のほうが僅かに下方に突出した状態で保持する位置に設ける(図1,2参照)。この舌片422の上端とスリーブ3の第2突リブの間には隙間があり、Oリング5を脱落不能に保持する保持部43を構成している。この保持部43の上下方向の幅(スリーブ3の第2突リブ35下面とラセン筒4の舌片422上端の間隔)は、Oリング5に対して余裕があり、何ら応力が加わっていない。
【0029】
以上、保持筒2、スリーブ3、ラセン筒4及びOリング5により、繰り出し構造部Aを構成している。この繰り出し構造部Aは、スリーブ3を保持してラセン筒4を回転操作すると、保持筒2の突子23がスリーブ3の案内溝32を貫通して回転しない状態で、回転するラセン筒4のラセン溝41に螺合しているため、螺合作用により保持筒2及びこの保持筒2に保持された棒状化粧料1が、保持筒2の突子23が上部当接部321と下部当接部322が当接する範囲で上下摺動する。そして、棒状化粧料1がスリーブ3の先端31より出没する。
【0030】
次に、前記繰り出し構造部Aを装着する外装体Bについて説明する。外装体Bは、キャップ6、ハカマ筒7及び中筒8とより成っている。この外装体Bは、合成樹脂により成形され、商品を差別化するための独自のデザイン、加飾が施されている。
【0031】
このハカマ筒7の上端よりは、繰り出し構造部Aのラセン筒4が挿入されている。ハカマ筒7の内側壁全周には、前記ラセン筒4外周の縦リブ44と回動不能に係合する縦溝71が、縦リブ44に対応して軸線と平行に複数条刻設している。その結果、ハカマ筒7内でラセン筒4は回動不能に保持され、ハカマ筒7の回転をラセン筒4に伝達できるようになっている。このハカマ筒7の上端には、中筒8を超音波溶着、アンダーカット係合、接着などの手法により止着している。
【0032】
この中筒8は、下部がハカマ筒7上端内壁に止着される止着部81となり、上部はハカマ筒8より突出してキャップ6が抜脱可能に嵌合する嵌合部82となっている。この中筒8の嵌合部82より繰り出し構造部Aのスリーブ3が外部に突出している。この中筒8の内周壁には、前記繰り出し構造部Aのスリーブ3の第2突リブ35が当接する段部83を設けている。その結果、スリーブ3の第2突リブ35と中筒8の段部83が当接し、ラセン筒4下端がハカマ筒7底面に当接する事によって、外装体B内で繰り出し構造部Aが保持されている。しかも、繰り出し構造部Aのラセン筒4は前述したように外装体B内に回動不能に保持されており、スリーブ3はラセン筒4及び外装体Bの中筒8に回動自在に保持されているため、スリーブ3を保持してハカマ筒7を回転操作する事により棒状化粧料1を繰り上げ下げ可能になっている。また、Oリング5は、中筒8の内壁に当接し、スリーブ3外壁と中筒8の間で弾性を有して当接しているため、繰り出し操作時にスリーブ3と中筒8が相対回転する事により良好な摺動抵抗を付与する。
【0033】
次に、本発明実施例の棒状化粧料繰り出し容器の組立方法について説明する。まず、スリーブ3の第1突リブ34と第2突リブ35の間にOリング5を装着する。そして、スリーブ3の下端より保持筒2の保持皿21を挿入し、脚筒22の突子23の突入突部231の上端を、スリーブ3の下端の誘導溝33開溝部分に合わせて押し込む。その結果、保持筒2は誘導溝33と突入突部231が係合して位置合わせされた状態で突子23のスロープ234がスリーブ3下端を押し広げ、回り止め突部233がスリーブ3下端より潜り込み、案内溝32に係合させ、スリーブ3と保持筒2の組付けが完了する。
【0034】
上記保持筒2を組付けたスリーブ3の下端を、ラセン筒4の上端より挿入する。この時点でスリーブ3の広がりがラセン筒4の内壁により押さえられ、保持筒2の突子23の誘導溝33への再突入、保持筒2の脱落を防げる。スリーブ3の外側壁より突出した保持筒2の突子23の螺合突部232を、ラセン筒4上部の連結部42の切り欠き421から、侵入溝412を通ってラセン溝41に螺合させる。ラセン筒4の連結部42の舌片422の凹溝423と、スリーブ3の第1突リブ34を係合する。この時点で、ラセン筒4とスリーブ3の上下位置が固定する。そして、保持筒2は、案内溝32の範囲で上下摺動可能となり、突子23の螺合突部232の侵入溝412への再侵入、ラセン溝41からの脱落を防げる。Oリング5は、ラセン筒4先端に押され、スリーブ3の第2突リブ35とラセン筒4先端の間の保持部43に収まる。以上で、繰り出し構造部Aが完成する。
【0035】
この繰り出し機構部Aのラセン筒4をハカマ筒7の上方より挿入、ラセン筒4の縦リブ44とハカマ筒7の縦溝71を係合させる。ハカマ筒7の上端に中筒8を止着すると、中筒8内壁の段部83が、スリーブ3の第2突リブ35に当接して、繰り出し機構部Aを外装体B内に脱落不能にする。同時に、Oリング5の外周が中筒8の内壁に弾性を有して摺接し、結果その摺動抵抗が良好な回転操作感に調整する。中筒8の嵌合部82にキャップ6を嵌合させて、本発明実施例棒状化粧料繰り出し容器が完成する。
【実施例2】
【0036】
本発明実施例1についての説明以上である。本発明実施例1の保持筒2の突子23のスロープ234は、保持筒2の側壁が先端となり、径方向に高低差を有したくさび状斜面を、回り止め突部233の上端方向側壁233dに連設している。この場合、スリーブ3に保持筒2を組付ける際、スロープ234先端がスリーブ3内側に潜り込んでスリーブ3下端を押し広げ、保持筒2の突子23をスリーブ3の案内溝32に係合させる。これに対し、本発実施例2は、図8及び図10に示すように、保持筒2の突子23のスロープ234は、突子23の突入突部231の周方向壁面231cが先端となり、周方向に高低差を有したくさび状斜面を、回り止め突部233の上端方向側壁233dに連設している。この場合、スリーブ3に保持筒2を組付ける際、スロープ234先端がスリーブ3下端の誘導溝33の下端当接し、誘導溝33を周方向に押し広げ、保持筒2の突子23をスリーブ3の案内溝32に係合させる。
【符号の説明】
【0037】
1 棒状化粧料
2 保持筒
3 スリーブ
4 ラセン筒
23 突子
32 案内溝
33 誘導溝
41 ラセン溝
231 突入突部
231a 突入突部の径方向側面
231b 突入突部の下端方向側面
231c 突入突部の周方向側面
231d 突入突部の上端方向側面
232 螺合突部
233 回り止め突部
233b 回り止め突部の上端方向側面
233d 回り止め突部の下端方向側面
234 スロープ
235 上昇限ストッパー
236 下降限ストッパー
321 上部当接部
322 下部当接部
412 侵入溝
A 繰り出し構造部
H2 突入突部の保持筒側壁よりの高さ
H3 回り止め突部の保持筒側面よりの高さ
W2 突入突部の周方向の幅
W3 回り止め突部の周方向の幅
W11 案内溝の周方向の幅
W22 誘導溝の周方向の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10