(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】ワーク切断装置及びワーク切断方法
(51)【国際特許分類】
B26F 3/00 20060101AFI20240410BHJP
B26D 7/32 20060101ALI20240410BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B26F3/00 A
B26D7/32 A
B26D7/02 B
(21)【出願番号】P 2023503856
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008561
(87)【国際公開番号】W WO2022186188
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2021032505
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】林 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 賢輔
(72)【発明者】
【氏名】上田 渉
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-171628(JP,A)
【文献】特許第6706423(JP,B2)
【文献】特開2002-124183(JP,A)
【文献】特開昭62-257108(JP,A)
【文献】実公昭63-000667(JP,Y2)
【文献】特開2001-210931(JP,A)
【文献】特開平09-019918(JP,A)
【文献】特開2021-195266(JP,A)
【文献】特開2017-13208(JP,A)
【文献】特開2021-98292(JP,A)
【文献】国際公開第2020/22068(WO,A1)
【文献】特許第6969625(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/85052(WO,A1)
【文献】特開2020-4890(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100981(WO,A1)
【文献】特開2018-20953(JP,A)
【文献】特開2017-170757(JP,A)
【文献】特表2019-500299(JP,A)
【文献】特開2015-174209(JP,A)
【文献】特許第5494791(JP,B2)
【文献】特開2009-95901(JP,A)
【文献】特開平11-114895(JP,A)
【文献】特開平9-19918(JP,A)
【文献】登録実用新案第3029083(JP,U)
【文献】特許第2592029(JP,B2)
【文献】特開平1-147408(JP,A)
【文献】実公平5-4274(JP,Y2)
【文献】特開昭50-35775(JP,A)
【文献】米国特許第6269614(US,B1)
【文献】特表2011-506117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 3/00
B26D 7/32
B26D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のCFRP或いはGFRPの小片同士を継ぎ目によって部分的に連結して成るシート
状のワークを一方側ワーク及び他方側ワークに切断するワーク切断装置であって、
前記一方側ワークを固定する固定機構と、
前記他方側ワークを把持する把持機構と、
前記把持機構により把持された前記他方側ワークを前記一方側ワークとの間の境目を軸にして回動させる回動機構と、
前記回動機構による前記他方側ワークの回動動作により前記境目にできる脆弱部で前記一方側ワークと前記他方側ワークとを切り離す切り離し機構を、備えているワーク切断装置。
【請求項2】
前記固定機構による固定が解除された状態の前記一方側ワークを前記回動機構に向けて所定量移動させる送り機構を備えている請求項1に記載のワーク切断装置。
【請求項3】
前記切り離し機構は、前記脆弱部に薄板状の切離片を挿入して前記一方側ワークと前記他方側ワークとを切り離す切離片挿入機構である請求項1又は2に記載のワーク切断装置。
【請求項4】
前記切り離し機構は、前記他方側ワークを前記一方側ワークから離間する方向に移動させて前記脆弱部で該一方側ワークから切り離す駆動機構である請求項1又は2に記載のワーク切断装置。
【請求項5】
前記ワークから切り離した前記他方側ワークを積層するための積層治具に該他方側ワークを移送して積層する移送機構を備えている請求項1~4のいずれか一つの項に記載のワーク切断装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一つの項に記載のワーク切断装置により
複数枚のCFRP或いはGFRPの小片同士を継ぎ目によって部分的に連結して成るシート
状のワークを一方側ワーク及び他方側ワークに切断するに際して、
前記固定機構により前記一方側ワークを固定する固定工程と、
前記把持機構により前記他方側ワークを把持する把持工程と、
前記把持機構により把持された前記他方側ワークを前記回動機構により前記一方側ワークとの間の境目を軸にして回動させる折り曲げ工程と、 前記折り曲げ工程により前記境目に形成された脆弱部において前記切り離し機構により前記一方側ワークと前記他方側ワークとを切り離す切り離し工程とを、含むワーク切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート状又は薄板状のワークを切断するのに用いるワーク切断装置及びワーク切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したようなシート状又は薄板状のワークを切断する装置としては、例えば、特許文献1~3に記載されているような装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、シート状成形体の切断装置であって、シート状成形体を載置する受け型に形成された刃部と、受け型の刃部に対して昇降する可動刃とを備え、刃部及び可動刃の両者の協働によりシート状成形体を切断するようになっている。
【0004】
特許文献2に記載されたものは、シートをミシン目に沿って切断するシートの切断装置であり、回転軸と、この回転軸を中心にして旋回する切断軸を備え、切断軸がシートのミシン目の位置に接触した状態において、シートに摩擦による引張り力を与えることで、ミシン目を介してシートを切断するようになっている。
【0005】
特許文献3に記載されたものは、平板状のワークをけがき線に沿って切断する押圧切断装置であって、ワークを支持する支持手段と、この支持手段に接触離間可能に対向配置された押圧面を有する押圧手段を備え、支持手段に支持されたワークを押圧手段の押圧面で折り取るように押圧することで、ワークをけがき線に沿って切断するようになっている。
【0006】
ここで、近年において自動車や航空機等の構成材料として広く用いられている軽量且つ高強度なCFRP(炭素繊維強化樹脂)やGFRP(ガラス繊維強化樹脂)の製造過程には、短冊状に形成した小片(CFRP或いはGFRPの小片)を複数枚積層してプレスする工程がある。
【0007】
この際、プレス工程までのハンドリングをし易くするために、複数枚の小片を互いに平行に並べて隣接する小片同士を部分的に連結してシート状のワークにしたうえで供給する手法が採用されており、プレス工程では、シートの状態で供給されるワークから小片を1枚ずつ引きちぎって型に積層する作業者による作業が行われている。
【0008】
当然のことながら、このシートの状態で供給されるワークから小片を分離する作業の自動化が求められており、部分的に連結した小片の切断の自動化を図るうえで、例えば、上記した特許文献1~3に記載されている各切断装置の採用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-006547号公報
【文献】特開2012-076381号公報
【文献】特開2004-209675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
部分的に連結した小片(CFRP或いはGFRPの小片)の継ぎ目を自動で切断する装置として、特許文献1に記載された刃部及び可動刃の両者の協働によりシート状成形体を切断する切断装置を採用した場合には、小片に寸法のばらつき等による位置決め誤差が生じると、刃部及び可動刃が継ぎ目の位置からずれてしまい、継ぎ目以外の箇所を傷付ける虞がある。
【0011】
また、特許文献2に記載されたシートに引張り力を与えてシートを切断する装置を上述した小片の継ぎ目の切断に採用した場合には、CFRP或いはGFRPの繊維の引張強度が大きいことから、小片に付与する引張力だけでなく、小片を把持する力を相当量大きくする必要があり、装置の大型化を招いてしまう。
【0012】
さらに、特許文献3に記載されたワークをけがき線に沿って折り取る押圧切断装置を部分的に連結した小片の継ぎ目の自動切断に採用した場合には、折り曲げの角度を十分に大きく取る必要がある。加えて、折り曲げの角度を大きく設定したとしても、切断するためには折り曲げを複数回繰り返す必要があり、この必要な折り曲げの繰り返し回数は、小片の製造過程で発生する物性のばらつきなどにより大きく異なる。したがって、短冊状の小片毎に確実に切断し得る回数だけ折り曲げを繰り返し行う必要があり、切断作業に多くの時間を費やさなければならず、これらの問題を解決することが自動化を図るうえでの課題となっている。
【0013】
本開示は、上記したような従来の課題を解決するためになされたもので、例えば、複数枚の小片(CFRP或いはGFRPの小片)同士を部分的に連結してシート状にしたワークにおける小片の継ぎ目の切断に用いる場合において、継ぎ目以外の箇所を傷付けたり、装置の大型化を招いたりすることなく、短時間で確実に切断することができるワーク切断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様は、シート状又は薄板状のワークを一方側ワーク及び他方側ワークに切断するワーク切断装置であって、前記一方側ワークを固定する固定機構と、前記他方側ワークを把持する把持機構と、前記把持機構により把持された前記他方側ワークを前記一方側ワークとの間の境目を軸にして回動させる回動機構と、前記回動機構による前記他方側ワークの回動動作により前記境目にできる脆弱部で前記一方側ワークと前記他方側ワークとを切り離す切り離し機構を、備えている構成としている。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係るワーク切断装置では、例えば、複数枚の小片(CFRP或いはGFRPの小片)同士を部分的に連結して成るシート状のワークにおける小片の切断に用いる場合において、継ぎ目以外の箇所を傷付けたり、装置の大型化を招いたりすることなく、短時間で確実に小片を切断することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示のワーク切断装置により切断されるシート状のワークの一例を示す複数の短冊状の小片を部分的に連結して成るシート状のワークの説明図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るワーク切断装置を側面方向から見た断面説明図である。
【
図3】
図2におけるワーク切断装置の
図2A-A線に基づく断面説明図である。
【
図4】
図2におけるワーク切断装置の正面説明図である。
【
図6】
図2におけるワーク切断装置の移送機構を示す平面説明図である。
【
図7A】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断及び切断した小片の取り出しを行っている状況を示す動作説明図である。
【
図7B】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断及び切断した小片の取り出しを行っている状況を示す動作説明図である。
【
図7C】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断及び切断した小片の取り出しを行っている状況を示す動作説明図である。
【
図7D】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断及び切断した小片の取り出しを行っている状況を示す動作説明図である。
【
図7E】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断及び切断した小片の取り出しを行っている状況を示す動作説明図である。
【
図7F】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断及び切断した小片の取り出しを行っている状況を示す動作説明図である。
【
図7G】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断及び切断した小片の取り出しを行っている状況を示す動作説明図である。
【
図8】
図6におけるワーク切断装置を用いてシート状のワークの切断を行う際の一挙動を示す
図2の円内に相当する部位の拡大説明図である。
【
図9】本開示の他の実施形態に係るワーク切断装置の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態では、本開示に係るワーク切断装置を
図1に示すシート状のワークW、すなわち、複数枚の小片(CFRP或いはGFRPの小片)Wp同士を継ぎ目Waによって部分的に連結して成るシート状のワークWの自動切断に用いる場合を示している。
【0018】
図2に示すように、本開示の一実施形態に係るワーク切断装置1は、上述したシート状のワークWを一方側ワークWR及び他方側ワークWLに切断する装置であり、この場合、「一方側ワークWR」とは、
図1においてシート状のワークWの左端に位置する小片Wpを除く複数枚の小片Wpが連なる右側部分全体を指し、「他方側ワークWL」とは、
図1左端の小片Wpのみを指す。つまり、後述するようにして、他方側ワークである
図1左端の小片Wpを切断した後は、
図1左端から2番目の小片Wpが他方側ワークとなる。
【0019】
本実施形態に係るワーク切断装置1は、送り機構2と、固定機構3と、把持・回動機構4と、切離片挿入機構(切り離し機構)5と、移送機構8を備えている。
【0020】
送り機構2は、シート状のワークWを載置するガイド板21と、ガイド板21にワークWの厚みとほぼ同じ間隔をおいて重ねて配置されたワーク座屈防止用の押え板22と、ガイド板21のワーク搬入端部側(
図2右端部側)からワーク切断端部側(
図2左端部側)にかけて配置されたレール23と、このレール23上を図示しない駆動源からの出力によって往復移動するスライダ24と、このスライダ24上に配置されたピン25を具備している。
【0021】
ガイド板21及び押え板22には、
図3にも示すように、ピン25が貫通する溝21a,22aがレール23に沿うようにしてそれぞれ形成されており、ピン25はスライダ24がレール23上を移動するのに伴って溝21a,22a内を移動するようになっている。ピン25は、ワーク送り動作時において所定量だけワークWをワーク切断端部側に押すべく所定のストロークで移動する。
なお、この送り機構2において、例えば、押え板22に代えて、ガイド板21に吸引孔を配置して真空吸着することでワークWを押さえるようにしてもよい。また、送り機構2の代替としてベルトコンベア等を採用してもよい。
【0022】
固定機構3は、ガイド板21におけるワーク切断端部の上方において鉛直方向に沿って配置されたエアシリンダ31と、このエアシリンダ31のシリンダロッド31aの先端に設けられて昇降する上押圧部32と、この上押圧部32とともにクランプを構成するガイド板21のワーク切断端部21bを具備している。この実施形態において、
図4にも示すように、エアシリンダ31及び上押圧部32は、ワークWの幅方向(
図3上下方向、
図4左右方向)に2組配置されており、固定機構3は、送り機構2により所定位置に移送されたワークWの一方側ワークWRを2組の上押圧部32とガイド板21のワーク切断端部21bとで挟持して固定するようになっている。
【0023】
把持・回動機構4は、ガイド板21のワーク切断端部21bよりもさらにワーク送り下流側(
図2,3左側)において鉛直方向に沿って配置されたエアシリンダ41と、このエアシリンダ41に固定された受け部42と、エアシリンダ41のシリンダロッド41aの先端に設けられて受け部42とともにクランプを構成する上押圧部43を具備している。この実施形態においても、クランプを構成する受け部42(エアシリンダ41)及び上押圧部43は、固定機構3の2組のエアシリンダ31及び上押圧部32と向き合うようにして2組配置されており、これら2組の受け部42及び上押圧部43は、送り機構2により所定位置に移送されたワークWの他方側ワークWL(ガイド板21のワーク切断端部21bから突出する小片Wp)を上下から挟持して固定するようになっている。
【0024】
また、把持・回動機構4は、ガイド板21のワーク切断端部21bに沿ってワークWの幅方向に配置したシャフト44と、ワークWの幅方向の
図3上端部(
図4左端部)に配置したロータリーエアシリンダ45を具備しており、シャフト44は、ロータリーエアシリンダ45の回転軸45aに対してオフセットさせた状態で連結されている。そして、このシャフト44には、ワークWの他方側ワークWL(小片Wp)を挟持固定する2組の受け部42及び上押圧部43が固定されている。つまり、把持・回動機構4では、ロータリーエアシリンダ45の回転軸45aとこの回転軸45aの延長線上に配置した軸受け46との間において、シャフト44と一体化させた2組の受け部42及び上押圧部43をロータリーエアシリンダ45の出力により回転軸45a周りに旋回させることができるようになっている。すなわち、固定機構3と把持・回動機構4との間に位置する一方側ワークWRと他方側ワークWLとの継ぎ目(境目)Waにおいて、把持・回動機構4の2組の受け部42及び上押圧部43に挟持固定される他方側ワークWLを上下に折り曲げる(回動させる)ことができるようになっている。
【0025】
この際、
図5に示すように、他方側ワークWLの回動中心でもあるシャフト44と一体化させた2組の受け部42及び上押圧部43の旋回中心Oは、固定機構3と把持・回動機構4との間における幅wの隙間のほぼ中心に位置させることが望ましい。また、送り機構2によりガイド板21上のワークWを所定位置に移送する際に、ワークWの端部が上記隙間に引っかからないようにするために、固定機構3側のワーク切断端部21bに対して把持・回動機構4側の受け部42を低くするべく両者間に僅かな段差hができるようにすることが望ましい。
【0026】
切離片挿入機構5は、ガイド板21におけるワーク切断端部の上方において鉛直方向に沿って配置されたエアシリンダ51と、このエアシリンダ51のシリンダロッド51aの先端に設けられたホルダ52と、このホルダ52に支持されてホルダ52とともに昇降する薄板状の先端が鋭利な切離片53を具備している。この切離片挿入機構5は、把持・回動機構4による他方側ワークWLの折り曲げ動作(回動動作)によって継ぎ目Waにできた脆弱部に対して、エアシリンダ51のロッド押し出し動作により切離片53を挿し通すことで、他方側ワークWL(小片Wp)を一方側ワークWRから切り離すようになっている。なお、図示はしないが、エアシリンダ51にはオートスイッチが装備されており、切離片53がワークWの継ぎ目Waを通過したか否かを検知可能となっている。
なお、この切離片挿入機構5において、切離片53は、先端が鋭利なものに限定しない。また、ホルダ52と切離片53との間に、ワークWの継ぎ目Waに切離片53を導くガイドやばねを設けてもよい。
【0027】
移送機構8は、
図6に示すように、把持・回動機構4の近傍に配置されたロボットアームであり、このロボットアームは、先端に複数個の真空吸着部8bを有するハンド8aを具備している。この際、ロボットアームの周囲には、ワークWの小片Wpに設けられた孔Whの位置を認識するための画像センサ9と、ワークWの小片Wpを積層するガイドブロック11及び位置決めピン12で構成されるワーク積層用治具10が配置されている。この移送機構8は、切離片挿入機構5により一方側ワークWRから切り離された短冊状の小片Wpをハンド8aの真空吸着部8bに吸い付けて把持・回動機構4から取り出して、ワーク積層用治具10まで移送して積層するようになっている。
【0028】
次に、本実施形態のワーク切断装置1を用いてシート状のワークWの切断及び切断した他方側ワークWL(小片Wp)の取り出し要領を説明する。
まず、
図7(a)に示すように、送り機構2の図示しない駆動源からの出力によってピン25が所定のストロークだけ移動し、ガイド板21及びワーク座屈防止用の押え板22の間にセットされたワークWを所定量だけガイド板21のワーク切断端部側に押圧して、一方側ワークWR及び他方側ワークWLを固定機構3及び把持・回動機構4の部位にそれぞれ位置させる。
【0029】
この状態で、
図7(b)に示すように、固定機構3のエアシリンダ31が作動して一方側ワークWRをクランプして固定するのに続いて、把持・回動機構4のエアシリンダ41が作動して他方側ワークWLをクランプして固定する(固定工程及び把持工程)。この際、一方側ワークWRから先に固定するのは、他方側ワークWL側からクランプすると、ワークW全体を引っ張って位置ずれを生じさせてしまう虞があるからである。
【0030】
固定機構3及び把持・回動機構4でワークWが固定されると、
図7(c)に示すように、把持・回動機構4のロータリーエアシリンダ45が作動して、受け部42及び上押圧部43を正逆方向に順次旋回させる、すなわち、固定機構3と把持・回動機構4との間に位置する一方側ワークWRと他方側ワークWLとの継ぎ目(境目)Waにおいて、受け部42及び上押圧部43で挟持固定している他方側ワークWLを上下に90°ずつ複数回折り曲げる(折り曲げ工程)。
【0031】
次いで、
図7(d)に示すように、把持・回動機構4の受け部42及び上押圧部43を動作前の元の位置に戻し、把持・回動機構4による折り曲げで継ぎ目Waにできた脆弱部に対して、切離片挿入機構5のエアシリンダ51が作動して切離片53を刺し通す(切り離し工程)。この際、図示しないエアシリンダのオートスイッチにより、切離片53がワークWの継ぎ目Waを通過したか否かを検知し、通過を検知した場合は切断完了と判断し、一方、通過を検知しなかった場合は、切断できていないと判断して、再度、把持・回動機構4による他方側ワークWLの折り曲げを行なう。
【0032】
切断完了と判断された場合は、
図7(e)に示すように、把持・回動機構4の受け部42及び上押圧部43で挟持固定した他方側ワークWLを下に90°折り曲げ、続いて、移送機構8であるロボットアームが作動してハンド8aの真空吸着部8bを一方側ワークWRから切り離された他方側ワークWL(短冊状の小片Wp)に吸着させる。
【0033】
このハンド8aの真空吸着部8bによる他方側ワークWLの吸着が完了した後、
図7(f)に示すように、把持・回動機構4の受け部42及び上押圧部43による他方側ワークWLの挟持固定を解除し、移送機構8であるロボットアームが把持・回動機構4の受け部42及び上押圧部43間から他方側ワークWLを取り出す。
【0034】
この後、
図7(g)に示すように、把持・回動機構4の受け部42及び上押圧部43が動作前の元の位置に復帰し、次の他方側ワークWL(
図1左端から2番目の小片Wp)の切断を行うべく送り機構2が作動を再開して所定量だけワークWをワーク切断端部側に押す。
【0035】
このとき、移送機構8であるロボットアームは、ハンド8aの真空吸着部8bで吸着した他方側ワークWL(短冊状の小片Wp)を画像センサ9の近傍に搬送し、小片Wpにあけられた孔Whの位置を画像センサ9により検出する。そして、検出結果に基づいてロボットアームの教示点の補正を行ない、ワーク積層用治具10のガイドブロック11内において位置決めピン12に孔Whを通して真空吸着部8bによる吸着を解除する。
【0036】
上記したように、本実施形態のワーク切断装置1では、一方側ワークWRと他方側ワークWLとの継ぎ目(境目)Waにおいて、把持・回動機構4によりワークWの他方側ワークWLに折り曲げ動作を行わせた後、この折り曲げ動作で継ぎ目Waにできた脆弱部に対して、切離片挿入機構5の切離片53を刺し通すようにしている。
【0037】
つまり、ワークWの他方側ワークWLの折り曲げ動作後における脆弱部に僅かな切れ残り(切断されていない繊維)があったとしても、切離片53の挿し通しにより切れ残りの部分が除去されるので、この切れ残りのあるなしにかかわらず、切離片挿入機構5の切離片53を折り曲げ動作の後の脆弱部に挿し通すことで、ワークWの他方側ワークWLの確実な切断が可能である。
【0038】
したがって、本実施形態のワーク切断装置1では、ワークWの他方側ワークWLの折り曲げ動作の回数を最小限に抑えることができ、切断に要する時間を短縮することが可能である。
【0039】
また、本実施形態のワーク切断装置1では、切離片挿入機構5の作動源としてエアシリンダ51を採用しているので、ワークWの継ぎ目Waが所定位置から多少ずれていたとしても、
図6に示すように、切離片挿入機構5のエアシリンダ51が有する遊び及び薄板である切離片53自身の撓みにより、固定機構3の上押圧部32と把持・回動機構4の上押圧部43との間に切離片53が継ぎ目Waに倣って挿入されることから、ワークWの継ぎ目Wa以外の箇所を傷付けることが少なく抑えられることとなる。
【0040】
加えて、本実施形態のワーク切断装置1では、把持・回動機構4によりワークWの他方側ワークWLに折り曲げ動作を行わせた後、この折り曲げ動作で継ぎ目Waにできた脆弱部に対して、切離片挿入機構5の切離片53を刺し通すようにしているので、従来の切断装置と比較して、ワークWを強い力で引っ張ったり、大きな力で把持したりする必要がない。したがって、把持や切断の作動源として小型のエアシリンダを使用することができるので、装置全体の小型化も実現できる。
【0041】
さらに、本実施形態のワーク切断装置1では、固定機構3による固定が解除された状態の一方側ワークWRを把持・回動機構4に向けて所定量移動させる送り機構2を備えている構成としているので、複数枚の小片(CFRP或いはGFRPの小片)Wp同士を継ぎ目Waによって部分的に連結して成るシート状のワークWの切断において、複数枚の小片Wpを連続して円滑に切断し得ることとなる。
【0042】
図9は、本開示の他の実施形態に係るワーク切断装置を示しており、この実施形態においても、本開示に係るワーク切断装置を
図1に示すシート状のワークW、すなわち、複数枚の小片(CFRP或いはGFRPの小片)Wp同士を継ぎ目Waによって部分的に連結して成るシート状のワークWの自動切断に用いる場合を示している。
【0043】
図9に示すように、このワーク切断装置1Aが、先の実施形態に係るワーク切断装置1と相違するところは、切離片53を具備した切離片挿入機構5に代えて、切り離し機構として、他方側ワークWLを図示上方(一方側ワークから離間する方向)に移動させて脆弱部で一方側ワークから切り離す駆動機構6を採用した点にあり、他の構成は先の実施形態に係るワーク切断装置1と同じである。
【0044】
この実施形態に係るワーク切断装置1Aの切り離し機構としての駆動機構6は、先の実施形態に係るワーク切断装置1の把持・回動機構4におけるロータリーエアシリンダ45側及び軸受け46側にホルダ62を介してそれぞれ固定された昇降シリンダ61,61と、これらの昇降シリンダ61,61の各ロッド61a,61aの先端に配置されたアダプタ63,63を具備している。
【0045】
この実施形態では、駆動機構6のアダプタ63,63間にシャフト44が掛け渡してあり、把持・回動機構4における他方側ワークWLの折り曲げ動作後において、昇降シリンダ61,61の作動により把持・回動機構4のクランプ部分全体を上昇させて、継ぎ目Waで他方側ワークWLを引きちぎることで切断するようになっている。
【0046】
この場合には、把持・回動機構4のクランプ部分の把持力が小さい場合には、他方側ワークWLや一方側ワークWAに位置ずれ等が生じる虞があるので、把持力の設定に注意が必要である。
【0047】
この実施形態において、昇降シリンダ61の作動ストロークによって、他方側ワークWLの切断の判断を下す仕組みを加えてもよい。
【0048】
本開示に係るワーク切断装置の構成は、上記した実施形態に限られるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
また、上記した実施形態では、本開示に係るワーク切断装置をシート状のワークの切断に採用した場合を示しているが、本開示に係るワーク切断装置を薄板状のワークの切断に採用することも可能である。
【0049】
(本開示の態様)
本開示の第1の態様は、シート状又は薄板状のワークを一方側ワーク及び他方側ワークに切断するワーク切断装置であって、前記一方側ワークを固定する固定機構と、前記他方側ワークを把持する把持機構と、前記把持機構により把持された前記他方側ワークを前記一方側ワークとの間の境目を軸にして回動させる回動機構と、前記回動機構による前記他方側ワークの回動動作により前記境目にできる脆弱部で前記一方側ワークと前記他方側ワークとを切り離す切り離し機構を、備えている構成としている。
【0050】
また、本開示の第2の態様は、前記固定機構による固定が解除された状態の前記一方側ワークを前記回動機構に向けて所定量移動させる送り機構を備えている構成としている。
【0051】
さらに、本開示の第3の態様において、前記切り離し機構は、前記脆弱部に薄板状の切離片を挿入して前記一方側ワークと前記他方側ワークとを切り離す切離片挿入機構である構成としている。
【0052】
さらにまた、本開示の第4の態様において、前記切り離し機構は、前記他方側ワークを前記一方側ワークから離間する方向に移動させて前記脆弱部で該一方側ワークから切り離す駆動機構である構成としている。
【0053】
さらにまた、本開示の第5の態様は、前記ワークから切り離した前記他方側ワークを積層するための積層治具に該他方側ワークを移送して積層する移送機構を備えている構成としている。
【0054】
一方、本開示の第6の態様は、上記第1の態様~第4の態様のいずれかに記載のワーク切断装置によりシート状又は薄板状のワークを一方側ワーク及び他方側ワークに切断するに際して、前記固定機構により前記一方側ワークを固定する固定工程と、前記把持機構により前記他方側ワークを把持する把持工程と、前記把持機構により把持された前記他方側ワークを前記回動機構により前記一方側ワークとの間の境目を軸にして回動させる折り曲げ工程と、前記折り曲げ工程により前記境目に形成された脆弱部において前記切り離し機構により前記一方側ワークと前記他方側ワークとを切り離す切り離し工程とを、含む構成としている。
【符号の説明】
【0055】
1,21A ワーク切断装置
2 送り機構
3 固定機構
4 把持・回動機構
5 切離片挿入機構(切り離し機構)
6 駆動機構(切り離し機構)
8 移送機構
53 切離片
W ワーク
Wa 継ぎ目(境目)
WL 他方側ワーク
WR 一方側ワーク