(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】温度センサのリードフレーム構造
(51)【国際特許分類】
G01K 1/143 20210101AFI20240410BHJP
【FI】
G01K1/143
(21)【出願番号】P 2019127962
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】東森 勇季
(72)【発明者】
【氏名】児玉 将行
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131164(WO,A1)
【文献】特開2006-30134(JP,A)
【文献】特開2013-44693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14-1/143
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度測定対象物とホルダーとをねじ止め固定を行う為の貫通孔を有する端子部と、温度によって抵抗値が変化する特性を有する感温素子を充填材により保持する感温素子収容部を有した金属ケースと、一端が前記感温素子の端子に接続され、他端は
前記ホルダーに固定された回路基板に半田付け接続するための基板挿入部を有し、
前記ホルダーへ固定するための圧入突起部を有した、展延性の高い材料からなるリードフレームとを備える温度センサであって、前記リードフレームは前記圧入突起部より前記金属ケース側に少なくとも1個以上の曲げ構造を有することを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の温度を検出する温度センサの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の温度センサは、測定対象物の温度を検出するために、温度によって抵抗値が変化する特性を有する感温素子本体と、感温素子本体の一対のリード線に接続されるリードフレームと、感温素子本体とリードフレームの一部を収容し、測定対象物にねじ止め固定を行うと共に測定対象物に接触し熱を取り込む丸端子部を有する熱伝導率の高い金属ケースと、ケースに収容される感温素子本体とリードフレームの一部を覆いケースに保持する充填材で構成されている。(たとえば、特許文献1参照。)
また、特許文献1に記載される温度センサは、リードフレームにより温度を検出するための回路基板に電気的に半田付け接続され、ケースは回路基板への位置決め構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される温度センサを測定対象物にねじ止め固定を行う際に、測定対象物との固定箇所である丸端子を有するケースに応力が発生し、前記ケースに保持されるリードフレームを介し、回路基板との接続箇所へ応力が伝搬することによる接続不良が懸念される。
【0005】
また、回路基板との位置決め機能をケースに有していることで、例えば回路基板と測定対象物の距離がケースの長手形状より離れている場合、測定対象物へ伝熱面を接するためにケースの拡大、または回路基板を拡大する必要がある。
ケースを拡大する場合、ケースの拡大だけではなく、ケースに収容される感温素子本体の位置を測定対象物の近傍に配置するために、リード線もしくはリードフレームを延長する必要がある。これは、感温素子本体を測定対象物の近傍に配置しない場合、測定対象物の温度と感温素子本体の温度に差が生じ、温度検出の精度悪化が懸念されるためである。ケースの拡大だけではなく、リード線もしくはリードフレームの延長も必要であり、且つリード線やリードフレームをケースに保持するための充填材もリード線やリードフレームの延長分増量が必要なことから、経済的ではない温度センサ構成となる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、回路基板とリードフレームの接続箇所に応力が伝搬することを抑制可能な温度センサのリードフレーム構造、且つ測定対象物と回路基板の距離が離れた場合においても構成が簡素な温度センサ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温度センサは、温度測定対象物とホルダーとをねじ止め固定を行う為の貫通孔を有する端子部を有し、温度によって抵抗値が変化する特性を有する感温素子を充填材により保持する感温素子収容部を有した金属ケースと、一端が前記感温素子の端子に接続され、他端は前記ホルダーに固定された回路基板に半田付け接続するための基板挿入部を有し、前記ホルダーへ固定するための圧入突起部を有した、展延性の高い材料からなるリードフレームとを備える温度センサであって、前記リードフレームは前記圧入突起部より前記金属ケース側に少なくとも1個以上の曲げ構造を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、リードフレームを1回以上曲げて回路基板の前で固定することで、回路基板とリードフレームの接続箇所への応力伝搬が抑制され接続不良の防止が可能となり、かつ回路基板と測定対象物の距離が変更になった場合においても、リードフレームの長さを変更するだけの簡素な温度センサ構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】は本発明の実施の形態1における温度センサを示す斜視図である。
【
図2】は本発明の実施の形態1における温度センサユニットの平面図である。
【
図4】は本発明の実施の形態2における温度センサを示す斜視図である。
【
図5】は本発明の実施の形態2における温度センサユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1における温度センサ1の斜視図、
図2は温度センサ1と回路基板5、測定対象物6、固定ねじ7、ホルダー8との関係を示す温度センサユニットの平面図であり、
図3はその断面図である。
【0011】
図1において温度センサ1のケース2は熱伝導率の高い金属材料(例えばアルミ材)から成り、測定対象物へのねじ止め固定を行う為の貫通孔2bを有する丸端子部2a及び、温度によって抵抗値が変化する特性を有する感温素子(図示せず)を収容し充填材(図示せず)により感温素子を保持する感温素子収容部2cから成る。
第1のリードフレーム3及び第2のリードフレーム4は電気伝導度及び展延性の高い材料(例えば真鍮材もしくは銅材)から成り、感温素子の一対のリード線にそれぞれの端部が電気的に接続され、端部周辺を充填材により感温素子収容部2cに保持されている。第1のリードフレーム3及び第2のリードフレーム4のそれぞれは、第一水平部3a、4aと、第一水平部と繋がる第一垂直部3b、4bと、第一垂直部と繋がる第二水平部3c、4cと、第二水平部と繋がる第二垂直部3d、4dを有し第二垂直部の端部には回路基板に挿入し半田付けするための基板挿入部3e、4eを有し、第二水平部には樹脂成型品であるホルダー8に位置決め固定を行うための圧入突起部3f、4fを有する。また、第1のリードフレーム3及び第2のリードフレーム4の表面に表面処理(例えばめっき)が施されている。
図2及び
図3においてホルダー8は樹脂成型品であり温度センサ1の圧入突起部3f、4fを圧入し位置固定する二つの圧入穴部8aを有する。温度計測回路(図示せず)を有する回路基板5は第1及び第2のリードフレーム3、4の基板挿入部3e、4eを挿入し半田付けする為の二つの挿入孔5aを有する。カラー9は測定対象物6をホルダー8に固定するための金属製(例えば鉄鋼材)の中空円柱形状の部品であり、ホルダー8にインサート成形された一体構造またはホルダー8に圧入固定されている。
温度センサ1はリードフレーム3、4の圧入突起部3f、4fをホルダー8の圧入穴部8aに圧入しホルダー8に位置固定され、回路基板5は挿入穴5aに温度センサ1の基板挿入部3e、4eを挿入後基板固定ねじ10によりホルダー8にねじ止め固定され、基板挿入部3e、4e端部は回路基板5に半田付けされる。カラー9を含むホルダー8は固定ねじ7により温度センサ1のケース2を測定対象物6にねじ止め固定されることにより、温度センサ1のケース2は測定対象物6に接触する。
【0012】
このように構成された温度センサ1においては、測定対象物6の温度は丸端子部2aから感温素子収容部2cに伝わり、感温素子収容部2cに収容された感温素子に伝わる。感温素子の抵抗値は電気的に接続された第1及び第2のリードフレーム3、4を介し回路基板5の温度計測回路に伝わる。第1及び第2のリードフレーム3、4の形状を第一水平部3a、4aと第一垂直部3b、4bと第二水平部3c、4cで構成される曲げ構造のあるクランク形状とし、且つ、温度センサ1を保持するホルダー8へのリードフレーム3、4の位置決め固定を圧入突起部3f、4fにより回路基板5の前で行うことで、測定対象物6へのねじ止め固定時に発生する応力が回路基板5と第1及び第2のリードフレーム3、4の接続箇所へ伝搬することを抑制することが可能となる。
【0013】
また温度センサ1の位置決め固定を第1及び第2のリードフレーム3、4の圧入突起部3f、4fで行うことで、回路基板5と測定対象物6の距離が離れている場合においても、回路基板5の拡大や、測定対象物6と接する必要がある丸端子部2aを有するケース2の拡大を行うことなく、第1及び第2のリードフレーム3、4の長さを長くするだけで行うことができ経済的な構成となる。
また、回路基板5と測定対象物6の距離が変更となった場合においても第1及び第2のリードフレーム3、4の長さを変更するだけの簡素な変更で温度センサ1を構成することが可能となる。
なお測定対象物6との接触部分の丸端子部2aの形状を丸端子形状としたが、ねじ固定ができ熱を伝えられる形状であれば四角等の他の形状でもよく、固定できる形状であれば貫通孔2bは複数あってもよい。また、第1及び第2のリードフレームを水平、垂直に90度曲げた形状としたが、曲げ構造であれば曲げ角度は90度でなくてもよく、曲げ部分は円弧形状でもよい。
【0014】
実施の形態2
図4は本発明の実施の形態2における温度センサ11の斜視図、
図5は温度センサ11と回路基板5、測定対象物6、固定ねじ7、ホルダー81との関係を示す温度センサユニットの断面図である。
【0015】
図4において温度センサ11のケース21は熱伝導率の高い金属材料(例えばアルミ材)から成り、測定対象物へのねじ止め固定を行う為の貫通孔21bを有する丸端子部21a及び、温度によって抵抗値が変化する特性を有する感温素子(図示せず)を収容し充填材(図示せず)により感温素子を保持する感温素子収容部21cから成る。
第1のリードフレーム31及び第2のリードフレーム41は電気伝導度及び展延性の高い材料(例えば真鍮材もしくは銅材)から成り、感温素子の一対のリード線にそれぞれの端部が電気的に接続され、端部周辺を充填材により感温素子収容部21cに保持されている。第1のリードフレーム31及び第2のリードフレーム41のそれぞれは、第一水平部31a、41aと、第一水平部と繋がる第一垂直部31b、41bを有し第一垂直部の端部には回路基板に挿入し半田付けするための基板挿入部31e、41eを有し、第一垂直部には樹脂成型品であるホルダー81に位置決め固定を行うための圧入突起部31f、41fを有する。また、第1のリードフレーム31及び第2のリードフレーム41の表面に表面処理(例えばめっき)が施されている。
図5においてホルダー81は樹脂成型品であり温度センサ11の圧入突起部31f、41fを圧入し位置固定する二つの圧入穴部81aを有する。温度計測回路(図示せず)を有する回路基板5は第1及び第2のリードフレーム31、41の基板挿入部31e、41eを挿入し半田付けする為の二つの挿入孔5aを有する。カラー9は測定対象物6をホルダー81に固定するための金属製(例えば鉄鋼材)の中空円柱形状の部品であり、ホルダー81にインサート成形された一体構造またはホルダー81に圧入固定されている。
温度センサ11はリードフレーム31、41の圧入突起部31f、41fをホルダー81の圧入穴部81aに圧入しホルダー81に位置固定され、回路基板5は挿入穴5aに温度センサ11の基板挿入部31e、41eを挿入後基板固定ねじ10によりホルダー81にねじ止め固定され、基板挿入部31e、41e端部は回路基板5に半田付けされる。カラー9を含むホルダー81は固定ねじ7により温度センサ11のケース21を測定対象物6にねじ止め固定されることにより、温度センサ11のケース21は測定対象物6に接触する。
【0016】
このように構成された温度センサ11においては、測定対象物6の温度は丸端子部21aから感温素子収容部21cに伝わり、感温素子収容部21cに収容された感温素子に伝わる。感温素子の抵抗値は電気的に接続された第1及び第2のリードフレーム31、41を介し回路基板5の温度計測回路に伝わる。第1及び第2のリードフレーム31、41の形状を第一水平部31a、41aと第一垂直部31b、41bとで構成される曲げ構造のある形状とし、且つ、温度センサ11を保持するホルダー81へのリードフレーム31、41の位置決め固定を圧入突起部31f、41fにより回路基板5の前で行うことで、測定対象物6へのねじ止め固定時に発生する応力が回路基板5と第1及び第2のリードフレーム31、41の接続箇所へ伝搬することを抑制することが可能となる。
【0017】
また温度センサ11の位置決め固定を第1及び第2のリードフレーム31、41の圧入突起部31f、41fで行うことで、回路基板5と測定対象物6の距離が離れている場合においても、回路基板5の拡大や、測定対象物6と接する必要がある丸端子部21aを有するケース21の拡大を行うことなく、第1及び第2のリードフレーム31、41の長さを長くするだけで行うことができ経済的な構成となる。
また、回路基板5と測定対象物6の距離が変更となった場合においても第1及び第2のリードフレーム31、41の長さを変更するだけの簡素な変更で温度センサ11を構成することが可能となる。
なお測定対象物6との接触部分の丸端子部21aの形状を丸端子形状としたが、ねじ固定ができ熱を伝えられる形状であれば四角等の他の形状でもよく、固定できる形状であれば貫通孔21bは複数あってもよい。また、第1及び第2のリードフレームを垂直に90度曲げた形状としたが、曲げ構造であれば曲げ角度は90度でなくてもよく、曲げ部分は円弧形状でもよい。
【符号の説明】
【0018】
1、11:温度センサ
2、21:ケース(アルミ材)
2a、21a:丸端子部
2b、21b:貫通孔
2c、21c:感温素子収容部
3、31:第1のリードフレーム(真鍮材もしくは銅材)
4、41:第2のリードフレーム(真鍮材もしくは銅材)
3a、4a、31a、41a:第一水平部
3b、4b、31b、41b:第一垂直部
3c、4c:第二水平部
3d、4d:第二垂直部
3e、4e、31e、41e:基板挿入部
3f、4f、31f、41f:圧入突起部
5 :回路基板
5a:挿入孔
6 :測定対象物
7 :固定ねじ(鉄鋼材)
8、81:ホルダー(樹脂材)
8a、81a:圧入穴部
9 :カラー(鉄鋼材)
10:基板固定ねじ(鉄鋼材)