(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】熱分解装置
(51)【国際特許分類】
C10B 53/00 20060101AFI20240410BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20240410BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20240410BHJP
C10B 47/34 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C10B53/00 A
B09B3/40
B09B3/35
C10B47/34
(21)【出願番号】P 2019140301
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】320001237
【氏名又は名称】阿部 蒼志
(74)【代理人】
【識別番号】502442854
【氏名又は名称】阿部 荒喜
(73)【特許権者】
【識別番号】519277092
【氏名又は名称】東 周平
(72)【発明者】
【氏名】阿部 良博
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200538(JP,A)
【文献】特開2013-087279(JP,A)
【文献】特開平08-165478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/00
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波誘導加熱コイルを熱分解槽に巻き、熱分解槽を上部架構より支えて吊り下げ且つ熱により伸縮を自由にして槽下部は支えない熱分解槽装置であって、該熱分解槽内を内壁より支えたロストルで上下に仕切り、ロストル上に供給
した処理物を撹拌機アームによりロストル上に拡げ
て炭化とともにアームで破砕し、
細粉化した炭化片を熱分解槽下部の槽底排出弁を介して熱分解槽外に排出する熱分解装置。
【請求項2】
熱分解槽の外壁に断熱材を設け、該断熱材の外側に絶縁チューブ内に挿入した高周波加熱コイルを巻き付け、冷却水を絶縁チューブ内に送り込んで高周波加熱コイルを冷却する請求項1記載の熱分解装置。
【請求項3】
熱交換器と熱分解槽で生じたガスに含む粉塵を除塵する除塵機を設け、該除塵機で集塵されたガスが熱交換器に至る間に採菌装置を設けてなる請求項1又は請求項2記載の熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱を用いて感染症産業廃棄物(以下医療廃棄物)の殺菌工程で医療廃棄物を収容した収容容器(以下ベール缶という。)を熱分解させ、同時に副産物として油、塩酸、微粉炭(カーボン)と微粉炭に混入していた金属、ガラス、陶器などを分別する熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記医療廃棄物の処理方法は、焼却によるものと高圧蒸気を用いた殺菌法(以下オートクレープ)が一般的である。焼却による処理方法は、安価であるが問題もある。それは焼却後に多量の灰ができること、完全燃焼しない低温燃焼時には臭気が発生すること、またその時に煤煙やCO2やダイオキシンが排出されることなどである。
【0003】
焼却では、医療廃棄物を収容したペール缶が炉内の温度が低温のときに瞬時に燃焼できないため菌の一部が吸引ファンによって煙突から外部に排出されてしまう問題がある。煙突に流れるガスはダイオキシン発生を防止するため高温ガスを排出し、温暖化を助長する問題がある。
【0004】
医療廃棄物の透析ホースが塩ビのため空気と化合し、ダイオキシンの発生原因となる。また、塩ビが水蒸気となり多量の塩化水素ガスを空気中に飛散させ周辺の土壌を酸性化させる問題がある。
【0005】
焼却以外の処理方法に高温高圧で殺菌処理するオートクレープがある。
圧力空気に処理物を収容し、高圧蒸気と薬注を用いた処理をおこなう。その場合ペール缶を事前に破砕しないと容器内部の医療廃棄物の殺菌はできない。
【0006】
ペール缶内の処理物の含水率は50%を超え、殺菌処理後も水蒸気が冷えて液化することにより水分量は低下しないため二次処理の焼却工程では多量の燃料が必要となる。
【0007】
オートクレープの殺菌処理で高圧蒸気とともに用いる二次亜塩素酸ソーダは農作物に被害を与えるばかりか人体への悪影響も甚大である。
【0008】
前記の問題を解決して安全な処理を行うためには電磁誘導加熱を用いた処理方法が有効である。熱分解槽にペール缶を供給する際、事前にペール缶の破砕は行わない。また、供給時には槽内に空気を入れない。処理物が紙製の箱に梱包されている場合には処理中に多量の粉塵が発生するが、その粉塵をカーボンとして回収することは可能か。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許2009-201137
【文献】特開2007-24336
【文献】特願2011-245951
【非特許文献】
【0010】
【文献】工業反応装置 橋本健治
【文献】エレクトロヒートポンプシンポジウム 217 電気興業 波田圭太
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
熱分解槽内に空気を入れない。医療廃棄物収容容器を供給時に事前に容器を壊さずにそのまま投入する。熱分解時に発生するガスの出口を塞がない。発生ガス中の粉塵を集塵、捕集した粉塵の再利用熱の影響で伸縮する熱分解槽に対してその外周に伸縮の影響を受けないように加熱コイルを設置することは可能か。
【課題を解決するための手段】
【0012】
供給装置は、医療廃棄物収容容器の大きさに合わせたサイズであり大型である。熱分解槽にこの容器を供給する際、外気を同伴しないようにし、また除去した空気も液化して分離する。熱分解槽と槽内を仕切る水平ゲートの開閉の際、槽内のガスを吸引して液化する。
【0013】
熱分解槽の上蓋は充分な厚さを持ちさらに断熱処理を施す。その上に位置する医療廃棄物を供給する供給機は、上下二段に重なった構成で供給物を供給する際に同伴される空気を真空ポンプで吸引して外部に廃棄する機能を有する。さらに供給機の下部には熱分解槽からの上昇熱を防ぐための熱遮断ゲートを設ける。供給機の上部にはボックスコンベアがあり、医療廃棄物を収容箱ごと落下させて供給する。
【0014】
熱分解槽内はロストルで上下に仕切られており、ベール缶はロストル上に供給される。このペール缶は熱分解により撹拌機レーキの旋回によって破壊される。
【0015】
破壊した炭化物は、ロストルの溝より槽下部に落下し、更に進行する熱分解によって粉炭(カーボン)になる。
【0016】
排出ガスは除塵機群を通過することで湿りガス中に同伴する粉塵を除去する。除塵期の内部は、多数の円盤状の衝突板が整列した構造である。粉塵を含むガスがこの隙間をとおる際、ガス中の粉塵は衝突板表面に付着し、付着物は成長する。
【0017】
付着成長した粉塵は、当日作業終了後にダクトバンパー閉状態で衝突板を回転させることによって表面に付着堆積した粉塵をスクレーパーでそぎ落とす。落ちた粉塵は熱分解槽内へ落ちる。除塵機を通過したガスは、ダクトを通り熱交換器に入り冷却されて液体と残留ガスになる。
【0018】
熱分解槽の槽外の外壁に断熱材を巻き、さらにその外にコイルを巻きつける。コイルの線は絶縁チューブで被覆された状態である。コイルのピッチを確実に保持するための保持材を熱分解槽上部より吊り下げ、熱分解槽底で磁波の影響を受けない位置に円盤状の受け皿を設け、断熱材の温度熱によってずり下がることを防止する。
【0019】
熱分解槽を固定するための部材は、電磁誘導によって発熱しないように非磁性材で構成される。本体架構から熱分解槽上の厚板のフランジを吊り下げることで熱分解槽の熱による伸びを下方に逃がす構造である。このように熱分解槽の上部を固定し、熱による伸びを下方向に逃がすことで発熱による熱分解槽の伸びで熱分解槽とその架構の変形や破壊を防止する。医療廃棄物を熱分解する場合などでは、その内容物の大半が段ボール紙などでするため炭化せるためには400℃の温度が必用である。
【0020】
上部で架構より懸架された熱分解槽は、下方向に自由に伸びることができるため発熱による槽の伸びで槽底板に負担がかかり、自身が変形してしまうことを防止する。熱分解槽の下には残渣物冷却機があり、熱分解槽底とは立管で接合されるがグランドボックスとパッキンにより気密性を確保しながら熱分解槽は下方に伸びることができる。
【0021】
熱分解槽下には残渣物冷却機があり、熱分解槽内の残渣物を槽底のゲートを経由して残渣物冷却機へと落とす。このための排出直管は、固定された残渣物冷却機と熱によって下方向に伸びる槽底との距離の短縮を吸収する必要があるためその中間にグランドボックスを有し、その開口と直管の隙間をパッキンで埋めることにより、気密性を確保しながら直管を摺動運動させることができる。このようにして熱分解槽は、気密性を確保して外部空気の侵入を防止しながら熱により下方向に膨張することができる。
【0022】
熱分解時には、熱分解槽内は高温となるが、熱分解槽外壁側に巻かれるコイル内には冷却水を流してコイルの温度が40℃を超えないように保つ。冷却水は循環用であり外部のチラーによって冷却される。
【0023】
粉塵を乾式で除去したガスは、熱交換器を介して液化させる。除塵した粉体(カーボン)を熱分解槽に収容し、槽底の熱分解後のカーボンとともに活用する。
【0024】
除塵機後方ダクトに検菌装置を設ける。装置はダクト壁よりガスを取り出す配管で構成し、配管とダクト間にバルブを設け、その間にユニオンで接合する。ユニオンの内側に更にバルブを設けて採菌時はガス上流から下流間のバルブを全て閉め、ユニオンを緩めてユニオン間のパイプを取り出す。
【0025】
電磁誘導加熱は、層内全体を均一にむらなく加熱できるのが特徴であるが一方で金属製の槽が熱の影響で伸縮するのが問題であった。そのために支持方法を片持支持として槽の伸びを下側に逃がすようにした。
【0026】
槽が熱の影響で伸縮する影響を受けないように槽の外周に配置する銅管を固定するためにこれを槽上部フランジから吊り下げる方法で固定した。槽が熱の影響で伸びてもその外周の同館はそのままの位置で固定されたまま留まる。
【0027】
熱分解完了後に残る残渣物はカーボンであり、槽底に接合した残渣物排出バルブを開けることによって取り出す。
【発明の効果】
【0028】
本発明の装置は、感染性産業廃棄物や一般市中で発生する混在廃プラスチックを事前に選別や破砕することなく処理することができる。また医療廃棄物については投入時に供給装置内に同伴される空気を抜気することで医療廃棄物を収容したペール缶ごと投入し、これを処理することができる。投入されたペール缶及びその内部の医療廃棄物は熱分解によって炭化破壊し、その処理中有害な細菌が外部に漏れることはない。
殺菌による熱分解において発生する油、塩酸水副産物の粉炭と粉炭に混入する金属、非鉄金属、ガラスや陶器を処理工程において分別することができる。
【0029】
熱分解工程で最終的に外部に排出されるガスは無害で外気温度まで冷却された状態である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
感染症医療廃棄物を収容箱のまま熱分解槽に供給する。熱分解槽の温度、発生する高温ガスや水蒸気、油蒸気、酸蒸気によって殺菌を確実化する。
【実施例1】
【0031】
図1は本実施例の側面図断面である。上部供給機で処理物を受け入れ次に下部供給機に受け渡し、更に下部に水平ゲートが開いて処理物は槽内ロストル上に落ちる。撹拌機が適宜可動して供給された処理物はロストル上に拡がる。
【0032】
槽内温度上昇によって無酸素状態で熱分解されると撹拌機のレーキが旋回し、固形物は炭化が進み、箱は破壊され破片はロストルより槽下部に落下する。槽下部に落下したこの破片と箱の内容物は熱分解が続きガス化する。
【0033】
ガス化の順序として先に水分が水蒸気となり、さらに温度が上がると油ガスと酸ガスが発生する。発生したガスは熱分解槽外へ持ち出されるがその際木片、紙などから発生する粉塵もガスと一緒に槽外へ出てしまう。そこで、4.衝突版を利用した除塵機2基によってこのガス中の粉塵を集塵する。集塵した粉塵はすべて真空ポンプによって吸引され熱分解槽へ返される。
【0034】
集塵を終えたガスはダクト内に熱分解槽へ流れる。除塵機と熱交換器の間に殺菌確認のための採菌器を設ける採菌器はダクトのガス上流より入気させガス下流側で本流のダクトにかえる。ガスの一部はこのバイパスを常時流れる。
【0035】
採菌装置はダクト外部に設ける。ダクト壁にガス流口を設け、ガスの流れを遮断するバルブともう1個バルブを接続し、その2個のバルブの間に脱着可能にユニオンを入れた機構を同種同機能でガスの流れ下流ダクト壁面に接続する。
【0036】
4個のバルブの内側2個のバルブに挟まれた短管が採菌部で、採菌作業は外バルブを閉め、次に内側のバルブ2個を閉め、バルブ間のユニオンを緩めて短管を取り外して行う。
【0037】
その後ガスは熱交換器に入り冷却されて液化する。熱分解工程を終えてガス発生のない時、除塵機は内部の衝突版を回転させて付着した粉塵を熱分解槽へスクレーパーによってそぎ落す。
【0038】
落下した粉体と熱分解後に槽底に残る残渣物は残渣物排出バルブから排出する。熱分解槽は銅管に流す高周波の電流によって目標温度の470℃まで電磁誘導加熱される。本発明は、熱分解装置と機器を使用して感染性産業廃棄物の殺菌と処理後品の残渣物や油の処理に関するもので以下の説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この装置によって医療廃棄物の殺菌と採油が出来、カーボンの残渣物も再利用することができる。さらに熱分解工程によってできる副産物である塩酸も再利用できる。医療廃棄物や廃プラ以外にも生ごみや汚泥を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【符号の説明】
【0041】
1 上部供給機
2 殺菌確認装置
3 下部供給機
4 衝突版
5 水平ゲート
6 撹拌機
7 除塵機
8 除塵機
9 銅管
10 熱分解槽
11 残渣物排出バルブ
12 ロストル
13 破砕アーム
14 採菌装置
15 熱交換器
16 攪拌レーキ
17 伸縮管
18 ダクト
19 ダクトガス流入口
20 ダクトガス戻し口
21 ユニオン
22 外締切りバルブ
23 内締切りバルブ
24 細菌管