(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】浴槽用底板の昇降装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A61H33/00 310N
(21)【出願番号】P 2023142917
(22)【出願日】2023-09-04
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135398
【氏名又は名称】株式会社ヤエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】藤川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】新山 秀邦
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 勢
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-111813(JP,A)
【文献】特開平8-112212(JP,A)
【文献】特開平3-63055(JP,A)
【文献】実公昭61-24256(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板を浴槽内で昇降させる浴槽用底板の昇降装置であって、
矩形状の底板本体を有する底板と、前記底板の両側をそれぞれ支持部により支持して前記底板を昇降する昇降装置本体と、前記昇降装置本体を収容する空間部を有する収容部とを備え、
前記収容部は、前記空間部を浴槽内との間で仕切る変形可能な仕切部材を備え、前記支持部が前記仕切部材を介して前記底板を支持するように前記昇降装置本体を収容し、
前記底板は、前記底板本体の両側のそれぞれに、前記支持部との間で前記仕切部材を挟持する第1の係合部および第2の係合部を備えており、
前記第1の係合部は、前記支持部の上方に配置され、前記第2の係合部は、前記支持部の内方に配置される浴槽用底板の昇降装置。
【請求項2】
前記支持部、第1の係合部および第2の係合部は、回転軸が前記底板本体の両側縁部に沿うように回転自在に配置されたローラからなる請求項1に記載の浴槽用底板の昇降装置。
【請求項3】
前記支持部および第1の係合部の一方には、回転軸方向に隣接する部位よりも大径となる拡径部が形成され、前記支持部および第1の係合部の他方には、回転軸方向に隣接する部位よりも小径となる縮径部が形成されており、
前記拡径部と縮径部とが前記仕切部材を介して径方向に係合する請求項2に記載の浴槽用底板の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽用底板の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入浴装置として、昇降装置により上下動する底板を浴槽内に配置し、上昇位置において入浴者を車椅子ごと底板に搭載した後、底板を降下させることにより入浴者が入浴することができる昇降式入浴装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の昇降式入浴装置は、昇降装置が浴槽内に配置されるためにアクチュエータ等の水密性を確保する必要があり、昇降装置の製造コストや耐久性等に課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は、安価で耐久性に優れる浴槽用底板の昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、底板を浴槽内で昇降させる浴槽用底板の昇降装置であって、矩形状の底板本体を有する底板と、前記底板の両側をそれぞれ支持部により支持して前記底板を昇降する昇降装置本体と、前記昇降装置本体を収容する空間部を有する収容部とを備え、前記収容部は、前記空間部を浴槽内との間で仕切る変形可能な仕切部材を備え、前記支持部が前記仕切部材を介して前記底板を支持するように前記昇降装置本体を収容し、前記底板は、前記底板本体の両側のそれぞれに、前記支持部との間で前記仕切部材を挟持する第1の係合部および第2の係合部を備えており、前記第1の係合部は、前記支持部の上方に配置され、前記第2の係合部は、前記支持部の内方に配置される浴槽用底板の昇降装置により達成される。
【0007】
この浴槽用底板の昇降装置において、前記支持部、第1の係合部および第2の係合部は、回転軸が前記底板本体の両側縁部に沿うように回転自在に配置されたローラからなることが好ましい。この場合、前記支持部および第1の係合部の一方には、回転軸方向に隣接する部位よりも大径となる拡径部が形成され、前記支持部および第1の係合部の他方には、回転軸方向に隣接する部位よりも小径となる縮径部が形成されていることが好ましく、前記拡径部と縮径部とが前記仕切部材を介して径方向に係合することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安価で耐久性に優れる浴槽用底板の昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浴槽用底板の昇降装置の平面図である。
【
図3】
図1の他の要部を分解状態で示す斜視図である。
【
図8】
図4に示す要部の作動後の状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る浴槽用底板の昇降装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る浴槽用底板の昇降装置(以下、単に「昇降装置」という)の平面図である。また、
図2は、
図1に示す昇降装置の斜視図であり、一部を切り欠いて示している。
【0011】
図1および
図2に示すように、昇降装置1は、底板10と、底板10を昇降する昇降装置本体20と、昇降装置本体20を収容する収容部30とを備えており、底板10を浴槽50の内部で昇降させることができる。
【0012】
底板10は、矩形状の底板本体11と、底板本体11の両側のそれぞれに設けられた第1の係合部12および第2の係合部13とを備えている。底板本体11は平板状に形成されており、
図2に示すように、入浴者61が座るための椅子60を取り付けることができる。椅子60は、回転可能且つ着脱可能に設けることが好ましく、例えば、90度±15度の範囲で回動するように構成される。底板本体11には、椅子60を取り外して、入浴者を車椅子ごと搭載することも可能である。
【0013】
図1に示すように、第1の係合部12および第2の係合部13は、底板本体11の両側の長辺縁部における両端部近傍の2か所(合計4か所)にそれぞれ設けられている。第1の係合部12および第2の係合部13は、いずれも筒状のローラからなり、回転軸が長辺縁部に沿うように配置されて、回転自在に支持されている。
【0014】
図2に示すように、浴槽50は、内壁51と外壁53とが上縁部52において連結された形状を有している。内壁51と外壁53との間には全周にわたって隙間が形成されており、この隙間によって収容部30の空間部31が構成されている。空間部31には、後述する昇降装置本体20が収容される。
【0015】
収容部30の空間部31は、浴槽50内に面する側が内壁51によって画定される。空間部31は、水が浸入しないように密閉空間であることが好ましいが、水がかからない一部において外壁53の外部と連通してもよい。内壁51には、底板10の第1の係合部12および第2の係合部13に対応する箇所(
図1に示す合計4か所)に、仕切部材40が設けられている。
【0016】
図3に斜視図で示すように、仕切部材40は、上下に延びる帯状のシート体41の周縁に枠部42を備えており、浴槽50の内壁51に形成された切欠部54に枠部42を嵌め込むことにより、仕切部材40が切欠部54を水密状態で覆うように設けられている。仕切部材40は、底板10の昇降による第1の係合部12および第2の係合部13の上下方向の可動範囲全体にわたって設けられていればよく、本実施形態においては、内壁51の側部の下部から上縁部52にわたって設けられているが、内壁51の側部にのみに設けることも可能である。
【0017】
シート体41は、弛みをもたせることで、底板10の昇降に伴い変形可能とされている。シート体41は、変形を容易にするため、弾性変形可能な材料により形成されることが好ましく、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のゴム材により形成することができる。シート体41の表裏面には、摩擦係数を低減させるためにコーティング等を施してもよい。
【0018】
昇降装置本体20は、収容部30内において底板10の短辺方向両側にそれぞれ配置されており、
図2においては、収容部30の手前側の一部を切り欠くことで、一方の昇降装置本体20の全体を露出させた状態で示している。
図2に示すように、昇降装置本体20は、パンタグラフ式の公知の機構を備えており、水平方向に互いに平行に延びるベース部21と可動部22との間が、互いに交差する一対の連結部材23,24により連結されている。ベース部21および可動部22は、底板10の長辺縁部に沿って延びる断面コ字状のレール状の部材であり、連結部材23,24の一端側に設けられたガイドローラ231,241が、それぞれベース部21および可動部22に沿って往復動可能に設けられている。
【0019】
一対の連結部材23,24は、回動部25において互いに回動可能とされており、水圧シリンダ等からなるアクチュエータ26の作動によりガイドローラ231をベース部21に沿って進退させることで、可動部22を上下動させることができる。可動部22の昇降ストロークは、例えば45cm±20cm程度であり、任意の高さ位置で可動部22を停止させることができる。
【0020】
可動部22の上面側の両端部近傍には、底板10の第1の係合部12および第2の係合部13に対応する位置に、底板10を支持する支持部27が設けられている。支持部27は、筒状のローラからなり、回転軸が底板本体11の長辺縁部に沿うように配置されて、回転自在に支持されている。
【0021】
図4は、昇降装置1の収容部30の断面図である。
図4に示すように、第1の係合部12は支持部27の上方に配置されており、第2の係合部13は支持部27の内方に配置されている。第1の係合部12および第2の係合部13は、支持部27との間で仕切部材40を挟持する。
【0022】
図5は、
図4の要部拡大図である。また、
図6は
図5の側面図であり、
図7は
図6の平面図である。構成の理解を容易にするため、
図6および
図7においては、仕切部材40の図示を省略している。
図5から
図7に示すように、第1の係合部12および第2の係合部13は、軸方向の中央部が、底板本体11の長辺縁部から外方に張り出す平板状のブラケット14に、ベアリング(図示せず)を介して回転自在に支持されている。
【0023】
図6に示すように、第1の係合部12の軸方向両側には、第1の係合部12の両端部から中央部に向けてテーパ状に広がるテーパ部12a,12aがそれぞれ形成されており、第1の係合部12の回転軸方向の中央部に、隣接するテーパ部12a,12aの部位よりも小径となる縮径部12bが形成されている。第2の係合部13は、全体が円筒状に形成されている。
【0024】
支持部27は、軸方向の両端部が、可動部22の上面に固定されたベース部28から起立する一対の起立片28a,28aに、ベアリング(図示せず)を介して回転自在に支持されている。
図6に示すように、支持部27が第1の係合部12のテーパ部12a,12aと対向する位置には、支持部27の両端側から中央部に向けてテーパ状に窄まるテーパ部27a,27aがそれぞれ形成されており、支持部27の回転軸方向の中央部に、隣接するテーパ部27a,27aの部位よりも大径となる拡径部27bが形成されている。拡径部27bおよび縮径部12bは、
図5に示す仕切部材40を介して、径方向に互いに係合する。
【0025】
上記の構成を備える昇降装置1は、
図4に示すように、底板10が上昇位置にある状態から、アクチュエータ26(
図2参照)の作動により可動部22を降下させると、
図8に示すように、可動部22に支持された底板10が下降位置まで下降する。可動部22が上昇位置と下降位置との間で移動する間は、仕切部材40の変形によって、第1の係合部12および第2の係合部13が支持部27との間で仕切部材40を挟持した状態が維持される。
【0026】
本実施形態の昇降装置1は、昇降装置本体20が収容される収容部30の空間部31が、変形可能な仕切部材40によって浴槽50内との間で仕切られているため、昇降装置本体20が浴槽50内の水に浸漬されるおそれがない。したがって、昇降装置本体20のアクチュエータ26等に対して高い水密性が要求されないため、昇降装置1の低コスト化、長寿命化を図ることができる。昇降装置本体20のアクチュエータ26は、水圧シリンダ以外に、電力や磁力等を動力源とするものであってもよく、例えば、ギヤドモータ、ソレノイド等を挙げることができる。また、昇降装置本体20を浴槽50の内壁51の外側に設けることで、浴槽50内の清掃や昇降装置本体20のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0027】
また、第1の係合部12が支持部27の上方に配置され、第2の係合部13が支持部27の内方に配置されて、第1の係合部12および第2の係合部13が支持部27との間で仕切部材40を挟持することにより、底板10の短辺方向両側にそれぞれ配置された昇降装置本体20の支持部27の間に、底板10を確実に保持することができるので、底板10の短辺方向の位置ずれを抑制しながら底板10を昇降させることができる。
【0028】
本実施形態においては、第1の係合部12の回転軸が支持部27の回転軸の直上に位置し、第2の係合部13の回転軸が支持部27の回転軸と同じ高さに位置することで、
図8に示す第1の係合部12および支持部27の軸重心を結ぶ直線L1と、第2の係合部13および支持部27の軸重心を結ぶ直線L2とが互いに直交するように構成されており、これによって、底板10の位置ずれ防止の効果を高めている。但し、直線L1,L2は必ずしも直交する必要はなく、例えば、直線L1は、鉛直方向から左右にそれぞれ約30度まで傾斜してもよく、直線L2は、水平方向から上下にそれぞれ約30度まで傾斜してもよい。
【0029】
支持部27、第1の係合部12および第2の係合部13は、本実施形態のように回転自在に配置されたローラであることが好ましく、これによって底板10のスムーズな昇降を促すことができる。但し、支持部27、第1の係合部12および第2の係合部13は、必ずしもローラである必要はなく、例えば、可動部22または底板本体11に回転不能に固定された円柱状等の部材であってもよい。
【0030】
また、縮径部12bと拡径部27bとが仕切部材40を介して径方向に係合する構成にすることで、底板10の短辺方向の位置ずれが規制されるだけでなく、底板10の長辺方向の位置ずれも規制されるため、底板10の昇降をより確実に行うことができる。本実施形態においては、第1の係合部12に縮径部12bを形成し、支持部27に拡径部27bを形成しているが、第1の係合部12に拡径部を形成し、支持部27に縮径部を形成してもよい。拡径部および縮径部の形成位置は、第1の係合部12および支持部27の軸方向中央部に限定されるものではなく、他の位置であってもよい。
【0031】
本実施形態の収容部30は、浴槽50の内壁51と外壁53との間に形成される空間部31に昇降装置本体20を収容する構成としているが、昇降装置本体20が浴槽50内の水に浸漬されることなく底板10を支持可能であれば、他の構成であってもよく、浴槽50の形状や大きさ、配置等に応じて適宜の位置に収容部30を設けることが可能である。空間部31は、浴槽50の内壁51によって画定されることが好ましいが、必ずしもこの構成には限定されない。例えば、
図9に示すように、底板10の両側縁部に沿って筐体状の収容部30を配置し、この収容部30内の空間部に昇降装置本体20を収容することもできる。なお、
図9において、
図1等と同様の構成部分には同一の符号を付している。
【0032】
本実施形態の仕切部材40は、底板10の側縁部に沿って複数設けられているが、単一であってもよい。また、本実施形態の昇降装置本体20は、底板10の短辺方向両側を支持するように配置しているが、底板10の長辺方向両側を支持する構成であってもよい。昇降装置本体20は、底板10の短辺方向両側を支持する代わりに、底板10の長辺方向両側を支持する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 浴槽用底板の昇降装置
10 底板
11 底板本体
12 第1の係合部
12b 縮径部
13 第2の係合部
20 昇降装置本体
27 支持部
27b 拡径部
30 収容部
31 空間部
40 仕切部材
50 浴槽
【要約】
【課題】 安価で耐久性に優れる浴槽用底板の昇降装置を提供する。
【解決手段】 底板10を浴槽内で昇降させる浴槽用底板の昇降装置1であって、矩形状の底板本体11を有する底板10と、底板10の両側をそれぞれ支持部27により支持して底板10を昇降する昇降装置本体20と、昇降装置本体20を収容する空間部31を有する収容部30とを備え、収容部30は、空間部31を浴槽50内との間で仕切る変形可能な仕切部材40を備え、支持部27が仕切部材40を介して底板10を支持するように昇降装置本体20を収容し、底板10は、底板本体11の両側のそれぞれに、支持部27との間で仕切部材40を挟持する第1の係合部12および第2の係合部13を備えており、第1の係合部12は、支持部27の上方に配置され、第2の係合部13は、支持部27の内方に配置される。
【選択図】
図4