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特許7469774鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20240410BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20240410BHJP
   B22D 17/30 20060101ALI20240410BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20240410BHJP
   F27B 3/20 20060101ALI20240410BHJP
   F27B 3/28 20060101ALI20240410BHJP
   B22D 17/28 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B22D17/32 Z
B22D45/00 B
B22D17/30 Z
F27D19/00 Z
F27B3/20
F27B3/28
B22D17/28 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020098242
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191580
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000141808
【氏名又は名称】株式会社宮本工業所
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 公俊
(72)【発明者】
【氏名】松井 仁嗣
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智治
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085081(JP,A)
【文献】特開昭60-009563(JP,A)
【文献】特開2018-015767(JP,A)
【文献】特開2005-226917(JP,A)
【文献】特開2008-089242(JP,A)
【文献】特開2005-076972(JP,A)
【文献】特開昭52-008907(JP,A)
【文献】特開2010-019474(JP,A)
【文献】実開昭60-050795(JP,U)
【文献】特開昭62-066086(JP,A)
【文献】特開2000-018843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
F27B 1/00- 3/28
F27D 17/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカストマシンと、
金属材料が投入される材料投入室、材料投入室内の金属材料を溶解して溶湯にする溶解バーナ、溶解バーナの出力を制御する溶解バーナ制御装置、材料投入室に通じると共に溶湯を保持する保持室、保持室に通じると共にダイカストマシンに供給される溶湯を収容する供給室とを含む溶解保持炉と、
供給室からダイカストマシンに溶湯を間欠的に供給する溶湯供給機構部、溶湯供給機構部による間欠的な供給動作を制御する供給動作制御装置を含む溶湯供給機とを備える鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法において、
供給動作制御装置と溶解バーナ制御装置とを含む制御システムは、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測し、予測結果に基づいて溶解バーナの出力を制御するもので、
供給動作制御装置は、供給動作を完了させる毎に供給動作完了信号を溶解バーナ制御装置に出力し、
単位時間当たりの将来の溶湯使用量は、時系列順に行われる複数回の供給動作完了信号のうち最新回よりも設定数前の回の供給動作完了信号と最新回の供給動作完了信号との間における実際の時間間隔と、当該設定数前の回の供給動作完了信号の後から最新回の供給動作完了信号までの間においてダイカストマシンに供給される実際の溶湯供給量とに基づいて溶解バーナ制御装置において算出されることを特徴とする鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法。
【請求項2】
単位時間当たりの将来の溶湯使用量は、時系列順に行われる供給動作完了信号のうち最新回の供給動作完了信号とその直前回の供給動作完了信号の間における実際の時間間隔と最新回の供給動作完了信号とその直前回の供給動作完了信号の間における実際の溶湯供給量とに基づいて溶解バーナ制御装置において算出されることを特徴とする請求項1に記載の鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法。
【請求項3】
ダイカストマシンと、
金属材料が投入される材料投入室、材料投入室内の金属材料を溶解して溶湯にする溶解バーナ、溶解バーナの出力を制御する溶解バーナ制御装置、材料投入室に通じると共に溶湯を保持する保持室、保持室に通じると共にダイカストマシンに供給される溶湯を収容する供給室とを含む溶解保持炉と、
供給室からダイカストマシンに溶湯を間欠的に供給する溶湯供給機構部、溶湯供給機構部による間欠的な供給動作を制御する供給動作制御装置を含む溶湯供給機とを備える鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法において、
溶湯供給機構部に対して供給動作制御装置から溶湯の供給動作をするための指令信号が出力された場合には、その指令信号に基づいて溶湯供給機構部は溶湯供給動作を行うものであり、
供給動作制御装置と溶解バーナ制御装置とを含む制御システムは、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測し、予測結果に基づいて溶解バーナの出力を制御するもので、
供給動作制御装置は、供給動作を完了させる毎に供給動作完了信号と溶湯供給量信号を溶解バーナ制御装置に出力し、
単位時間当たりの将来の溶湯使用量は、時系列順に行われる複数回の供給動作完了信号のうち最新回よりも設定数前の回の供給動作完了信号と最新回の供給動作完了信号との間における実際の時間間隔と、当該設定数前の回の供給動作完了信号の後から最新回の供給動作完了信号までの間においてダイカストマシンに供給される溶湯供給量信号とに基づいて溶解バーナ制御装置において算出されることを特徴とする鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法。
【請求項4】
制御システムは、単位時間当たりの将来の溶湯使用量と溶解バーナの出力との対応関係を定めた関数式が予め記憶されており、当該関数式に基づいて溶解バーナの出力を制御することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ダイカストマシン(以下、多くの場合において「DCM」と称する。)は、金型のキャビティ内に金属の溶湯を充填して、所要形状の鋳造品を製造する自動機械である。そしてDCMに供給する溶湯を金属材料から生産するのが溶解保持炉であり、溶解保持炉の溶湯をDCMに供給するのが溶湯供給機である。本発明は、DCM・溶解保持炉・溶湯供給機を含む鋳造システムにおいて、溶解保持炉の溶解バーナの出力(燃焼状態)を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶解保持炉の一例としては、溶湯の湯面高さに基づいて溶解バーナの出力を制御することを前提とし、その上でDCMの稼働状態に基づいて溶解バーナの出力を制御するものが知られている(特許文献1)。なお溶解バーナの出力は、単位時間当たりの燃料使用量に対応する。ちなみに「DCM」のことを特許文献1では「鋳造機」と称する。また特許文献1での溶解バーナの出力制御方法の詳細は以下の通りである。
【0003】
1)DCMの鋳造中は、稼働状態信号としての稼働信号がDCM制御部から溶解バーナ制御部に出力され、溶解バーナ制御部では湯面が所定の高さ域(以下、「設定範囲」と称する。)よりも高い場合には溶解バーナの出力を標準よりも低くし(Low)、湯面が設定範囲よりも低い場合には溶解バーナの出力を標準よりも高くしている(Hi)。またDCMの鋳造中は、溶湯供給機がDCMに対し溶湯を定期的に一定量供給するという前提のもと、湯面が設定範囲の場合には溶湯温度・材料投入量・溶解室温度に基づいて溶解バーナの出力を2段階に(標準(Mid)と、Low)に切り替えている。
2)またDCMが待機中の場合には、稼働状態信号としての稼働停止信号がDCM制御部から溶解バーナ制御部に出力され、溶解バーナ制御部では湯面が設定範囲よりも高い場合には溶解バーナの出力を停止し(Stop)、湯面が設定範囲の場合には溶解バーナの出力をMidとし、湯面が設定範囲よりも低い場合には溶解バーナの出力をLowにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-76972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように上記した溶解バーナの出力制御方法は、溶解バーナの出力を複数の段階に制御するものなので、緻密な制御とは言い難い。そして上記した溶解バーナの出力制御方法は、設定範囲に対する湯面の位置・溶湯温度・材料投入量・溶解室温度の何れかが変化しない限り、溶解バーナの出力がDCMの次回の鋳造まで維持されることになる。その場合、溶解バーナがDCMの次回の鋳造までに金属材料を溶解させて生産した溶湯の量(以下「溶湯生産量」と称する。)と、DCMが次回の鋳造において使用する溶湯量(以下「溶湯使用量」と称する。)との間に通常であれば差が生じ、鋳造する毎に湯面高さが低下または上昇することになる。その結果、鋳造中に湯面高さが設定範囲から外れ、溶解バーナの出力はHiとLowを繰り返すことになる。このような溶解バーナの出力は、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の鋳造での溶湯使用量とが一致するような出力に比べて、溶解バーナの燃料が無駄になると言え、鋳造システム全体での稼働費用が嵩むことになる。
【0006】
しかもDCMでは使用する金型によって溶湯使用量が異なるという実情や、DCMでの鋳造は稼働中であっても常に一定の時間ごとに行われるとは限らない、つまりDCMの稼働状態はDCMでの鋳造サイクルによって左右されるという実情が存在する。
ところが上記した溶解バーナの出力制御方法は、溶湯供給機がDCMに対し溶湯を定期的に一定量供給することを前提として設計されているので、このような実情の場合には対応できず、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の鋳造での溶湯使用量との差が明確に表れ、溶解バーナの出力が不適切になる。
【0007】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は溶解バーナの出力を適切なものとし、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の鋳造での溶解使用量とをできる限り一致させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ダイカストマシンと、金属材料を溶解して生産した溶湯を保持する溶解保持炉と、溶解保持炉からダイカストマシンに溶湯を供給する溶湯供給機を備える鋳造システムを前提とする。
【0009】
そして溶解保持炉は、金属材料が投入される材料投入室、材料投入室内の金属材料を溶解して溶湯にする溶解バーナ、溶解バーナの出力を制御する溶解バーナ制御装置、材料投入室に通じると共に溶湯を保持する保持室、保持室に通じると共にダイカストマシンに供給される溶湯を収容する供給室を含むものである。
【0010】
また溶湯供給機は、供給室からダイカストマシンに溶湯を間欠的に供給する溶湯供給機構部、溶湯供給機構部による間欠的な供給動作を制御する供給動作制御装置を含むものである。
【0011】
このような鋳造システムにおける本発明の溶解バーナの出力制御方法は、供給動作制御装置と溶解バーナ制御装置とを含む制御システムが、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測し、予測結果に基づいて溶解バーナの出力を制御する。
そして単位時間当たりの将来の溶湯使用量は、時系列順に行われる複数回の供給動作のうち最新回よりも設定数前の回の供給動作と最新回の供給動作との間における実際の時間間隔と、当該設定数前の回の供給動作の後から最新回の供給動作までの間においてDCMに供給される実際の溶湯供給量とに基づいて算出される。
【0012】
最新回よりも設定数前の回とは、設定数が1以上であれば良い。また設定数を1にすれば、最新回よりも1つ前の回の供給動作と最新回の供給動作との間における実際の時間間隔は、鋳造したばかり最新の鋳造サイクルである。そして同じ金型を用いて最新の鋳造サイクルで将来も鋳造される場合には、次のようにして(設定数を1にして)、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の溶湯使用量とをできる限り一致させることが望ましい。
すなわち単位時間当たりの将来の溶湯使用量は、時系列順に行われる供給動作のうち最新回の供給動作とその直前回の供給動作の間における実際の時間間隔と最新回の供給動作による実際の溶湯供給量とに基づいて算出されるようにする。
【0013】
実際の溶湯供給量は供給するごとに自動計測した値であっても良いが、DCMで使用する金型が分かっていれば、次のようにすることが制御を簡単にするには望ましい。
すなわち実際の溶湯供給量は予め記憶された値にすることである。
【0014】
鋳造サイクルが予め定められた複数種類に限られ、使用される金型が複数種類に限られている場合には、その複数種類の鋳造サイクルと複数種類の金型で使用する溶湯使用量とに対応させて、単位時間当たりの将来の溶湯使用量に基づいて溶解バーナの出力を、1対1の関係で選択するように、溶解バーナの出力値を予め記憶させておけば、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の溶湯使用量とをできる限り一致させられる。しかしながら想定していない時間間隔(鋳造サイクル)で鋳造が行われ、その鋳造サイクルで鋳造が続行される場合には、次のようにすることが、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の溶湯使用量とをできる限り一致させるには望ましい。
すなわち制御システムは、単位時間当たりの将来の溶湯使用量と溶解バーナの出力との対応関係を定めた関数式が予め記憶されており、当該関数式に基づいて溶解バーナの出力を制御することである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法によれば、最新回を含む複数回の供給動作の実際の時間間隔と実際の溶湯供給量とに基づいて単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測し、予測結果に基づいて溶解バーナの出力を制御するので、次回の鋳造が予測結果に一致する態様で行われれば、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の鋳造での溶湯使用量とをできる限り一致させられる。
【0016】
また本発明の鋳造システムにおける溶解バーナの出力制御方法は、単位時間当たりの将来の溶湯使用量と溶解バーナの出力との対応関係を定めた関数式が予め記憶された制御システムを用いるものであれば、当該関数式に基づいて溶解バーナの出力を制御するので、想定していない時間間隔(鋳造サイクル)で鋳造が行われ、その鋳造サイクルで鋳造が実行される場合であっても、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の鋳造での溶湯使用量とをできる限り一致させられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用する鋳造システムの一例を示す説明図である。
図2】単位時間当たりの将来の溶湯使用量と単位時間当たりの将来の燃料使用量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を適用する第一実施形態の鋳造システムの一例は図1に示すように、溶解保持炉1と、ダイカストマシン(DCM)と、溶解保持炉1からDCMに溶湯を供給する溶湯供給機2とを含むものである。
【0019】
溶解保持炉1はタワー型と称されるものである。溶解保持炉1は図1に示すように金属材料および溶湯を収容するための複数の収容室を備えている。複数の収容室とは、金属材料が投入される材料投入室としてのタワー11と、タワー11に通じると共に溶湯を保持する保持室12と、保持室12に通じると共にDCMに供給される溶湯を収容する供給室13である。
【0020】
また溶解保持炉1は収容室に設置するための複数の設備装置を備えている。複数の設備装置とは、タワー11内の金属材料を溶解する溶解バーナ14と、タワー11内の室温を検知する温度センサ15と、保持室12内の溶湯を加熱して保温する保温装置としての保温バーナ16と、保持室12の室温を検知する温度センサ17と、供給室13の溶湯の湯面を設定範囲の上限位置と下限位置で別々に検知する上限センサ18および下限センサ19と、溶解バーナ14の出力および保温バーナ16の出力を制御する溶解保持炉制御装置3である。
【0021】
溶解保持炉制御装置3は、溶解バーナ14の出力を制御する機能と、保温バーナ16の出力を制御する機能を兼備するものなので、溶解バーナ制御装置31と保温バーナ制御装置32とを備える。
【0022】
タワー11は上下方向に延びる筒状である。このタワー11の下部に溶解バーナ14が設置されている。
保持室12は、溶湯を貯留する保持室本体12aと、保持室本体12aとタワー11の下部とを連絡する連絡路12bとを備える。連絡路12bは重力によって溶湯を保持室12に供給するように傾斜している。保持室本体12aには保温バーナ16が設置されている。
供給室13は保持室12に通じており、上面が開口部13aとなっている。そして開口部13aから溶湯をDCMに供給するのが溶湯供給機2である。
【0023】
溶湯供給機2は、供給室13からDCMに溶湯を間欠的に供給する溶湯供給機構部21と、溶湯供給機構部21による間欠的な供給動作を制御する供給動作制御装置4とを備える。
【0024】
溶湯供給機構部21は、ラドル22を初期位置から移動させて供給室13の開口部13a内に差し込んで溶湯を汲み、その後にラドル22を移動させてDCMの注湯口に溶湯を流し込み、初期位置に戻るという一連の動作を行う機械である。そして溶湯供給機構部21に対して供給動作制御装置4から溶湯の供給動作をするための指令信号が出力された場合には、その指令信号に基づいて溶湯供給機構部21は溶湯供給動作を行う。
【0025】
上記した鋳造システムに適用される本発明の第一実施形態の溶解バーナ14の出力制御方法は、供給動作制御装置4と溶解バーナ制御装置31とを一つの制御システムとして用いることを前提とする。
【0026】
制御システムでは、供給動作制御装置4と溶解バーナ制御装置31とが電気通信回線により接続されている。また供給動作制御装置4と溶解バーナ制御装置31は、入力ポート、出力ポート、記憶器、CPUを備えている。記憶器には第一実施形態の溶解バーナ14の出力制御方法を実施するためのプログラムや、プログラムを実行するために必要なデータや、計算結果が保存される。
【0027】
第一実施形態の溶解バーナ14の出力制御方法は、この制御システムが単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測し、予測結果に基づいて溶解バーナ14の出力を制御する。そして単位時間当たりの将来の溶湯使用量は、時系列順に行われる複数回の供給動作のうち最新回よりも1つ前の回の供給動作と最新回の供給動作との間における時間間隔と、最新回の供給動作による実際の溶湯供給量とに基づいて算出される。
また最新回の供給動作による実際の溶湯供給量とは、最新回よりも1つ前の供給動作の後から最新回の供給動作までの間においてDCMに供給される実際の溶湯供給量である。以下ではこの制御システムを構成する供給動作制御装置4と溶解バーナ制御装置31について詳述する。
【0028】
供給動作制御装置4には各回の溶湯供給量がデータとして予め記憶される。そして供給動作制御装置4には、供給動作を完了させる毎に、その完了時期を基準にして一定のタイミング(時間差)で溶湯供給量信号と供給動作完了信号を溶解バーナ制御装置31に出力する。
【0029】
溶解バーナ制御装置31は、供給動作制御装置4から入力される時系列順の2回の供給動作完了信号の時間間隔を、鋳造サイクルとして算出する。この例では鋳造サイクルの単位時間を1時間とする。したがって時系列順の2回の供給動作完了信号の時間間隔がX秒の場合、鋳造サイクルはX/3600(hr)となる。また単位時間当たりの将来の溶湯使用量の単位はkg/hrである。
そして溶解バーナ制御装置31は、鋳造サイクルと、時系列順の最新回である2回目の溶湯供給量信号とから、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を算出するように、次の計算式を用いている。なお溶湯供給量信号は、予め記憶された溶湯供給量を信号としたものなので、実際の溶湯供給量に一致する。
単位時間当たりの将来の溶湯使用量(kg/hr)=時系列順の2回目の実際の溶湯供給量(kg)/鋳造サイクル(hr)
【0030】
また溶解バーナ制御装置31には、単位時間当たりの将来の溶湯使用量(kg/hr)に基づいて溶解バーナ14による単位時間当たりの将来の燃料使用量を算出する関数式が予め記憶されている。単位時間当たりの将来の燃料使用量とは、この例ではガス使用量(m3/hr)であり、溶解バーナ14の出力に対応するガス使用量である。この関数式から描かれるグラフの一例が図2に示されている。図2では、横軸の変数を単位時間当たりの将来の溶湯使用量(kg/hr)とし、縦軸の変数を燃料使用量(ガス使用量(m3/hr))としてある。図2のグラフでは、単位時間当たりの将来の溶湯使用量(kg/hr)が所定の値よりも増加するにつれて単位時間当たりの将来の燃料使用量(m3/hr)も増加することが分かるようになっている。
【0031】
上記した制御システムは、第一実施形態の溶解バーナ14の出力制御方法を実施するためのプログラムを実行させると、DCMの鋳造中では以下のステップが行われる。
【0032】
1)溶解バーナ制御装置31は単位時間当たりの燃料使用量信号の初期設定値を溶解バーナ14に出力し、溶解バーナ14は燃料使用量信号に応じた燃料をアクチュエータを介して所定の空間に供給するように制御される。つまり溶解バーナ14の出力は、単位時間当たりの燃料使用量に一致するように制御される。
2)供給動作制御装置4は溶湯供給機構部21を駆動させ、ラドル22を使って供給室13の溶湯をDCMの注湯口に供給する。
3)供給動作制御装置4は供給完了後に一定のタイミングで溶湯使用量信号と供給動作完了信号を溶解バーナ制御装置31に出力する。
4)溶解バーナ制御装置31は、溶湯使用量信号と供給動作完了信号を保存する。
以上の2)~4)のステップは初回の鋳造だけでなく、DCMの鋳造中は繰り返される。
【0033】
また2回目以降の鋳造ステップでは、以下の5)~8)のステップが2)~4)のステップの他に行われる。
5)2回目の鋳造で上記した2)~4)のステップが行われると、溶解バーナ制御装置31は、初回と2回目の供給動作完了信号の時間間隔を鋳造サイクルとして算出し、その算出結果を保存する。
6)溶解バーナ制御装置31は、鋳造サイクルと2回目の実際の溶湯供給量信号と前記した計算式とから、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を算出し、その算出結果を保存する。
7)溶解バーナ制御装置31は、単位時間当たりの将来の溶湯使用量と前記した関数式とから、単位時間当たりの燃料使用量を算出し、その算出結果を保存する。
8)溶解バーナ制御装置31は、算出された単位時間当たりの燃料使用量信号を溶解バーナ14に出力し、溶解バーナ14は燃料使用量信号に対応する燃料を供給するように制御される。つまり溶解バーナ14の出力は、算出された単位時間当たりの将来の燃料使用量に一致するように制御される。
【0034】
また3回目以降の鋳造では上記した2)~8)のステップが毎回繰り返されるが、次の事項に留意すべきである。6)のステップでは、最新回とその直前回の供給動作完了信号の時間間隔を最新の鋳造サイクルとして算出し、7)のステップでは、最新の鋳造サイクルと最新回の溶湯使用量信号と前記した計算式とから、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を算出することである。
【0035】
上記した第一実施形態の溶解バーナ14の出力制御方法は、最新回とその直前回の供給動作の実際の時間間隔(鋳造サイクル)と実際の溶湯供給量とに基づいて単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測し、予測結果に基づいて溶解バーナ14の出力を制御するので、次回の鋳造が予測結果に一致する態様で行われれば、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の鋳造での溶湯使用量とをできる限り一致させられる。
【0036】
また第一実施形態の溶解バーナ14の出力制御方法は、単位時間当たりの将来の溶湯使用量と溶解バーナ14の出力との対応関係を定めた関数式が予め記憶された制御システムを用いるものなので、当該関数式に基づいて溶解バーナ14の出力を制御することになり、想定していない時間間隔(鋳造サイクル)鋳造される場合であっても、次回の鋳造が予測結果に一致する態様で行われれば、つまり次回の鋳造サイクルが最新の鋳造サイクルと一致し、且つ溶湯使用量が同じ金型を次回の鋳造で用いる態様で行われれば、次回の鋳造までの溶湯生産量と次回の鋳造での溶湯使用量とをできる限り一致させられる。
【0037】
なお溶解バーナ制御装置31は、上記した制御とは別の制御として、溶湯の湯面の高さが上限センサ18の位置以上になった場合には、溶解バーナ14の出力を停止して、湯面高さが上限センサ18の位置を超え続けないように制御し、溶湯の湯面高さが下限センサ19の位置を下回った場合には、溶解バーナ14の出力を設定値になるように制御して、上限センサ18と下限センサ19の間でDCMの鋳造が行われるようにする。
【0038】
また溶解バーナ制御装置31は、さらに別の制御として、溶解バーナ14の出力を停止している間に、タワー11内の室温を検知する温度センサ15が設定温度未満になると、溶解バーナ14の出力を設定値になるように制御して、材料が溶湯になりやすい温度に維持する。
【0039】
その他に保温バーナ制御装置32は、保持室12の室温を検知する温度センサ17が設定温度未満になると、保温バーナ16の出力を設定値になるように制御して、溶湯が鋳造に適した温度になるように維持する。
【0040】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態の溶解バーナ14の出力制御方法では、溶湯供給動作のうち最新回の直前回の供給動作と最新回の供給動作との間における実際の時間間隔に基づいて鋳造サイクルを算出し、その鋳造サイクルと最新回の実際の溶湯供給量とに基づいて、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測するものであったが、本発明ではこれに限らず、最新回よりも設定数(例えば3)前の回と最新回の供給動作との間における実際の時間間隔に基づいて、3回の鋳造サイクルを合計し、その3回分の鋳造サイクルと、その3回の鋳造サイクル間に供給された実際の溶湯供給量とに基づいて、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測するものであっても良いし、3回の鋳造サイクルを平均した鋳造サイクルを算出し、その平均した鋳造サイクルと、その3回の鋳造サイクル間に供給された実際の溶湯供給量の平均値とに基づいて、単位時間当たりの将来の溶湯使用量を予測するものであっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 溶解保持炉
11 タワー
12 保持室
12a 保持室本体
12b 連絡路
13 供給室
13a 開口部
14 溶解バーナ
15 温度センサ
16 保温バーナ
17 温度センサ
18 上限センサ
19 下限センサ
DCM ダイカストマシン
2 溶湯供給機
21 溶湯供給機構部
22 ラドル
3 溶解保持炉制御装置
31 溶解バーナ制御装置
32 保温バーナ制御装置
4 供給動作制御装置
図1
図2