(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】入院可能性推定システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20240410BHJP
【FI】
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2020153575
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520292718
【氏名又は名称】株式会社メビウスボックス
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159248
【氏名又は名称】齋藤 修
(74)【代理人】
【識別番号】100174850
【氏名又は名称】大崎 絵美
(73)【特許権者】
【識別番号】513035232
【氏名又は名称】株式会社N・フィールド
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159248
【氏名又は名称】齋藤 修
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 清
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-101901(JP,A)
【文献】特開2019-194807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神科の訪問看護の記録であり、訪問看護の際に作成される看護記録を患者ごとに取得する看護記録取得部と、
取得された前記看護記録に訪問月における入院の有無を示す目的変数を追加する目的変数追加部と、
前記目的変数が追加された前記看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して患者ごとの教師データを生成する教師データ生成部と、
前記教師データによってモデルを学習させて学習済みモデルを生成する学習部と、
前記看護記録取得部が別途取得した処理対象の前記看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して推論用データを生成する推論用データ生成部と、
前記推論用データを前記学習済みモデルに適用して前記処理対象の患者の入院可能性を推定する入院可能性推定部と、
を備える入院可能性推定システム。
【請求項2】
前記看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータは、
ADLについての備考、症状の内容、看護内容の備考、および看護内容の特記事項のうちから1種類以上選ばれる請求項1に記載の入院可能性推定システム。
【請求項3】
前記看護記録に、滞在時間、前回訪問日からの日数、および不在件数のうちから1種類以上選ばれる特徴量を追加する特徴量追加部をさらに備える請求項1に記載の入院可能性推定システム。
【請求項4】
前記看護記録に含まれるカテゴリー変数をエンコードするエンコーダをさらに備える請求項1に記載の入院可能性推定システム。
【請求項5】
前記カテゴリー変数は、
ADL基礎情報、看護内容、および訪問月のうちから1種類以上選ばれる請求項4に記載の入院可能性推定システム。
【請求項6】
看護内容を示すテキストデータに基づき、処理対象の患者の入院可能性を出力するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデルであって、
精神科の訪問看護の記録であり、訪問看護の際に作成される看護記録を患者ごとに取得し、取得した前記看護記録に訪問月における入院の有無を示す目的変数を追加した前記看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して生成した患者ごとの教師データにより学習されたものであり、
別途取得した
前記処理対象の前記看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して生成した推論用データの入力を受け付け、前記処理対象の患者の入院可能性を出力する処理を実行するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入院可能性推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
精神科医療の領域においては、病院が提供する医療サービスと連携した、患者に対する訪問看護サービスが行われている。この訪問看護サービスは、患者の自宅に看護師等が訪問して患者に対する種々のケアを行うものである。
【0003】
患者は病状が悪化すると病院に入院することとなる。そうすると、訪問看護サービスを提供している事業主体はサービスを提供することができなくなり、収益を圧迫する。従って、患者の病状の悪化を事前に察知し、入院が必要となる前に適切なケアを行ったり、患者の入院に備えたりすることが、患者へのサービスの向上の点からも、経営の安定化の点からも重要となる。
【0004】
この点に関し、診療記録に記載されたテキスト情報を処理して記載タイミングとともに単語の頻度をベクトル化し、特定の症状を示す単語の発生頻度に基づいて特定の症状が起きている確率を算出する技術が提案されている(例えば、特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この技術では特定の症状の発生している確率を算出することはできるが、ある患者の入院可能性の推定はできない。このため、この技術によっては、ある患者が入院するかどうかの見極めは、複数の症状を総合して医師が判断する必要があり、上記問題を解決できない。
【0007】
従って、訪問看護によって得られた情報からその患者の入院可能性を推定する入院可能性推定システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、精神科の訪問看護の記録である看護記録を取得する看護記録取得部と、取得された前記看護記録に入院の有無を示す目的変数を追加する目的変数追加部と、前記看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して教師データを生成する教師データ生成部と、前記教師データによってモデルを学習させて学習済みモデルを生成する学習部と、前記看護記録取得部が別途取得した処理対象の前記看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して推論用データを生成する推論用データ生成部と、前記推論用データを学習済みモデルに適用して入院可能性を推定する入院可能性推定部と、を備える入院可能性推定システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、訪問看護によって得られた情報からその患者の入院可能性を推定する入院可能性推定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】入院可能性推定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】利用者情報ファイルのデータ構成を示す図である。
【
図3】看護記録ファイルのデータ構成を示す図である。
【
図4】教師データファイルのデータ構成を示す図である。
【
図5】推論用データファイルの構成を示す図である。
【
図6】入院可能性推定システムの制御部による、教師データの生成とモデルの学習プロセスの動作を示すフローチャートである。
【
図7】入院可能性推定システムの制御部による、推論プロセスの動作を示すフローチャートである。
【
図9】推論結果である入院リスクの出力例を示す図である。
【
図10】入院リスクの増減の出力例を示す図である。
【
図12】入院リスク統計の推移の出力例を示す図である。
【
図13】患者別入院リスク推移の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る入院可能性推定システムを詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の入院可能性推定システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、入院可能性推定システム1は、例えば、いわゆるサーバ装置やパーソナルコンピュータなどのコンピュータを用いて構成することができる。
【0013】
具体的には、入院可能性推定システム1は、制御部101と、記憶部102と、入出力部103と、通信部104と、を備える。
【0014】
制御部101は、CPU(central processing unit)などの演算装置を含む。
【0015】
記憶部102は、メモリ、ハードディスクドライブなどの記憶装置を含む。記憶部102は、利用者情報ファイル102A、看護記録ファイル102B、トランザクションファイル102C、教師データファイル102D、推論用データファイル102E、推論結果ファイル102F、トークナイザ102G、埋め込み層102H、及びモデル102Iを格納する。
【0016】
入出力部103は、キーボードなどの入力装置、マウスなどのポインティングデバイス、ディスプレイなどの表示装置、プリンタなどの印刷装置などを含む。
【0017】
通信部104は、ネットワーク装置などの通信装置を含み、インターネットなどの公衆通信回線網2などを介してクラウド3やクライアント端末4と通信する。
【0018】
図2は、利用者情報ファイル102Aのデータ構成を示す図である。利用者情報ファイル102Aは、利用者に関する情報を格納する。
【0019】
図2に示すように、利用者情報ファイル102Aは、利用者に固有に割り当てられる識別子である利用者IDと、利用者IDごとに利用者に関する情報である利用者情報と、を格納する。
【0020】
利用者情報は、例えば、氏名、生年月日、事業所、利用ステータス、療養費区分、などが挙げられる。
【0021】
図3は、看護記録ファイル102Bのデータ構成を示す図である。看護記録ファイル102Bは、利用者IDごとに精神科の患者への訪問看護の際に作成される看護記録の内容を格納する。
【0022】
図3に示すように、看護記録ファイル102Bは、利用者IDごとに、訪問基礎情報、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)基礎情報、バイタルサイン、及び看護内容を格納する。
【0023】
訪問基礎情報は、例えば氏名、訪問時の年齢、療養費区分、事業所、訪問開始日時、訪問終了日時、不在であったことを示す不在フラグ、滞在時間、特別支持訪問であったことを示す特別指示訪問フラグ、退院後5週間以内の訪問であったことを示す退院後週5訪問フラグ、1日のうちに複数回訪問したことを示す複数回訪問フラグ、および複数名によって訪問したことを示す複数名訪問フラグが挙げられる。
【0024】
ADL基礎情報は、例えば摂食、睡眠、服薬、保清、環境整備、金銭管理、対人関係、食事、移動、排泄、着替、入浴、整容、摂食(備考)、睡眠(備考)、服薬(備考)、保清(備考)、環境整備(備考)、金銭管理(備考)、対人関係(備考)、食事(備考)、移動(備考)、排泄(備考)、着替(備考)、入浴(備考)、および整容(備考)等が挙げられる。ここで、上記の(備考)にはテキストデータが含まれうる。
【0025】
バイタルサインは、例えば体温、脈拍、最高血圧、及び最低血圧などが挙げられる。
【0026】
看護内容は、例えば傾聴、主治医・関係機関連携調整、与薬・注射、皮膚・褥瘡処置、受診援助、家人へ指導・相談、リハビリ、アドバイス、看護内容備考(テキスト)、症状の変化、症状の内容(テキスト)、および特記事項(テキスト)などが挙げられる。ここで、上記の(テキスト)と示した項目にはテキストデータが含まれうる。
【0027】
図4は、教師データファイル102Dのデータ構成を示す図である。教師データファイル102Dは、利用者IDごとにモデルを学習させるための教師データを格納する。
【0028】
図4に示すように、教師データファイル102Dは、利用者IDごとに、訪問情報、ADL情報、バイタルサイン、看護内容、訪問月、ベクトル化されたテキストであるベクトルテキスト、および目的変数を格納する。
【0029】
訪問看護情報は、例えば訪問時点の年齢、滞在時間、前回訪問からの日数、不在件数(過去14日間)、症状の変化、特別指示訪問フラグ、退院後週5訪問フラグ、複数回訪問フラグ、および複数名訪問フラグなどが挙げられる。
【0030】
ADL情報は、例えば摂食(規則)、摂食(不規則)、摂食(拒食)、摂食(過食)、摂食(その他)、睡眠(良眠)、睡眠(不眠)、睡眠(入眠困難)、睡眠(早期覚醒)、睡眠(中途覚醒)、睡眠(その他)、服薬(規則)、服薬(不規則)、服薬(拒薬)、服薬(怠薬)、服薬(過剰服薬)、服薬(その他)、金銭管理(自己管理)、金銭管理(他者管理)、金銭管理(浪費)、保清、環境整備、対人関係、食事、移動、排泄、着替、入浴、および整容などが挙げられる。
【0031】
バイタルサインは、例えば体温、脈拍、最高血圧、および最低血圧などが挙げられる。
【0032】
看護内容は、例えば傾聴、主治医・関係機関連携調整、与薬・注射、皮膚・褥瘡処置、受診援助、家人へ指導・相談、リハビリ、およびアドバイスなどが挙げられる。
【0033】
訪問月は、例えば1月から12月までの訪問月フラグ(1月)~訪問月フラグ(12月)が挙げられる。
【0034】
ベクトル化テキストは、看護記録に含まれる患者の状況又は看護内容を示すデータ、例えばADL備考、症状の内容、および看護内容備考・特記事項などが挙げられる。
【0035】
目的変数は、例えば入院の有無を示す変数である入院フラグが挙げられる。
【0036】
図5は、推論用データファイル102Eの構成を示す図である。推論用データファイル102Eは、学習済みモデルが推論に使用するデータを格納する。
【0037】
図5に示すように、推論用データファイル102Eは、利用者IDごとに、訪問情報、ADL情報、バイタルサイン、看護内容、訪問月、およびベクトル化されたテキストであるベクトルテキストを格納する。
【0038】
訪問看護情報は、例えば訪問時点の年齢、滞在時間、前回訪問からの日数、不在件数(過去14日間)、症状の変化、特別指示訪問フラグ、退院後週5訪問フラグ、複数回訪問フラグ、および複数名訪問フラグなどが挙げられる。
【0039】
ADL情報は、例えば摂食(規則)、摂食(不規則)、摂食(拒食)、摂食(過食)、摂食(その他)、睡眠(良眠)、睡眠(不眠)、睡眠(入眠困難)、睡眠(早期覚醒)、睡眠(中途覚醒)、睡眠(その他)、服薬(規則)、服薬(不規則)、服薬(拒薬)、服薬(怠薬)、服薬(過剰服薬)、服薬(その他)、金銭管理(自己管理)、金銭管理(他者管理)、金銭管理(浪費)、保清、環境整備、対人関係、食事、移動、排泄、着替、入浴、および整容などが挙げられる。
【0040】
バイタルサインは、例えば体温、脈拍、最高血圧、および最低血圧などが挙げられる。
【0041】
看護内容は、例えば傾聴、主治医・関係機関連携調整、与薬・注射、皮膚・褥瘡処置、受診援助、家人へ指導・相談、リハビリ、およびアドバイスなどが挙げられる。
【0042】
訪問月は、例えば1月から12月までの訪問月フラグ(1月)~訪問月フラグ(12月)が挙げられる。
【0043】
ベクトル化テキストは、看護記録に含まれる患者の状況又は看護内容を示すデータ、例えばADL備考、症状の内容、および看護内容備考・特記事項などが挙げられる。
【0044】
トランザクションファイル102Cは、作業途中のデータを格納する。
【0045】
推論結果ファイル102Fは、学習済みモデルが出力した入院可能性を日付ごと、利用者IDごとに格納する。
【0046】
図6は、入院可能性推定システム1の制御部101による、教師データの生成とモデルの学習プロセスの動作を示すフローチャートである。
【0047】
図6に示すように、ステップ601において、制御部101はデータの取得とコンバートを行う。素データが表計算ソフトのシートであった場合には、CSV(Comma Separated Value)形式にコンバートする。素データが電子カルテであった場合、データベースから看護記録ファイル102Bのデータ構成をCSV形式にて抽出する。生成されたCSV形式の各データは看護記録ファイル102Bに格納される。
【0048】
ステップ602において、制御部101は、看護記録ごとに目的変数を付与する。例えば、訪問した月内に入院していた場合には「1」を、入院していない場合には「0」を入院フラグにセットする。
【0049】
ステップ603において、制御部101は、特徴量を作成する。具体的には、制御部101は特徴量追加部によって、看護記録ファイル102Bの看護記録データに、滞在時間、前回訪問日からの日数、及び不在件数(過去14日間)のうちから1種類以上選ばれる変数をそれぞれ算出して追加する。
【0050】
次に、制御部101は、ADL基礎情報、症状の変化が欠損している看護記録を看護記録ファイル102Bから削除する。
【0051】
次に、制御部101は、ADL基礎情報のうち、カテゴリー変数をエンコーダによってエンコードする。
【0052】
次に、制御部101は、療養費区分が欠損していた場合には、同一利用者IDのほかの看護記録からコピーして補完する。
【0053】
次に、制御部101は、訪問月を訪問月フラグに変換して追加する。
【0054】
次に、制御部101は、バイタルサインが異常値の場合、その看護記録を看護記録ファイル102Bから削除する。
【0055】
次に、制御部101は、バイタルサインが欠損している場合には「-1」を補完する。
【0056】
次に、制御部101は、テキストデータに適宜補完や修正を加える。
【0057】
ステップ604において、制御部101は、看護記録ファイル102Bから教師データに適したデータを選択し、トランザクションファイル102Cに格納する。制御部101は、例えば、療養費区分が「精神」の看護記録のみを選択する。
【0058】
ステップ605において、制御部101は、トランザクションファイル102Cに格納されたデータに対し、看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータを単語埋め込みによってベクトルに変換し、得られたベクトルによって元のテキストデータを置き換えて格納する。
【0059】
看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータは、ADLについての備考、症状の内容、看護内容の備考、および看護内容の特記事項のうちから1種類以上選ばれる。
【0060】
制御部101は、単語埋め込みを次の手順により行う。
【0061】
制御部101は、トークナイザによって文章をベクトルに変換(位置埋め込み)する。トークナイザはその時点において最も優秀な公知のオープンソースを使用することができる。
【0062】
次に制御部101は、上記のベクトルをニューラルネットワークの埋め込み層に通してテンソルに変換(単語埋め込み)する。埋め込み層(embeddings レイヤー)はその時点において最も優秀な公知のオープンソースを使用することができる。
【0063】
制御部101は、例えば、1階:文章列、2階:位置埋め込み結果の数値列、3階:単語埋め込み結果の数値列のテンソルを生成する。
【0064】
さらに制御部101は、このテンソルの3階の平均値を算出してプーリングし(平均プーリング)、ベクトルに変換して埋め込みベクトルとする。
【0065】
制御部101は、得られたデータをトランザクションファイル102Cに格納する。
【0066】
ステップ606において、制御部101は、データサンプリングを行い、教師データ:テストデータ=8:2の割合に上記のトランザクションファイル102Cのデータを分割する。
【0067】
ステップ607において、制御部101は、生成された教師データからそれぞれモデルの学習に使用する特徴量を抽出する。制御部101は、少なくとも訪問情報、ベクトル化テキスト、および目的変数を抽出する。
【0068】
ステップ608において、制御部101は、抽出された特徴量を標準化してスケーリングし、得られたデータを教師データファイル102Dに出力する。
【0069】
ステップ609において、制御部101は、教師データファイル102Dから教師データを順次読みだして、モデルを学習させる。
【0070】
具体的には、モデルのトレーニング、損失の計算、およびモデルの保存をあらかじめ定められたエポック回数実行する。
【0071】
ステップ610において、制御部101は、損失の最も小さいエポックのモデルを学習済みモデルとして保存する。
【0072】
ここで、モデルはディープラーニングのモデルを用いることができるが、その時点においてさらに優秀なモデルがあれば、そのモデルを用いることができる。
【0073】
図7は、入院可能性推定システム1の制御部101による、推論プロセスの動作を示すフローチャートである。
【0074】
図7に示すように、ステップ701において、制御部101は、処理対象のデータのデータ取得とコンバートを行う。データ取得とコンバートの方法は、ステップ601の方法と同様である。
【0075】
ステップ702において、制御部101は、特徴量を作成する。処理の方法はステップ603の処理の方法と同様である。
【0076】
ステップ703において、制御部101は、単語埋め込みを行う。処理の方法はステップ605の処理の方法と同様である。
【0077】
ステップ704において、制御部101は、特徴量の選択を行う。処理の方法はステップ607の処理の方法と同様である。
【0078】
ステップ705において、制御部101は、スケーリングを行う。処理の方法はステップ608の処理の方法と同様である。
【0079】
ステップ706において、制御部101は、得られた処理対象のデータを学習済みモデルに適用して推論を行い、入院可能性(入院リスク)を出力させる。推論結果である入院可能性は、確率(%)などの数値のほか、大、中、小などのレベルなとによって出力することができる。
【0080】
ステップ707において、制御部101は、推論結果の入院可能性を入出力部に出力する。
【0081】
図8は、単語埋め込みの流れを示す図である。
図8に示すように、制御部101は入力テキストをトークナイザによってトークン化(最小単位の単語列へ変換)する。
図8において、「トークン化」が示す区切られた単語の一つ一つはトークンである。
【0082】
次に制御部101は、得られたトークンに対して位置埋め込みを行い、トークンの列をベクトル化する。
図8において、「位置埋め込み」が示す数値は、それぞれ各トークンに固有に割り当てられる識別子であるIDである。
【0083】
次に制御部101は、ベクトル化された各トークンに対して単語埋め込みを行い、ベクトルをテンソルに変換する。
図8において、「単語埋め込み」が示す数値の列は、それぞれトークンに固有に割り当てられたベクトルである。
【0084】
次に制御部101は、得られたテンソルの3階(単語埋め込みの結果の数値列)に対して平均プーリングを行って整形し、埋め込みベクトルを得る。
図8において、「平均プーリング」が示す数値の列は、平均プーリングによる整形後の埋め込みベクトルである。ここでは、128個の特徴量に整形されている。
【0085】
図9は、推論結果である入院リスクの出力例を示す図である。
図9に示すように、制御部101は、患者ごとに入院リスク(%)と、前月比(%)を入院リスク画面901に出力する。
【0086】
図10は、入院リスクの増減の出力例を示す図である。
図10に示すように、制御部101は、患者ごとに入院リスク増減(%)を入院リスク(%)とともに入院リスク増減画面1001に出力する。
【0087】
図11は、入院リスク統計の出力例を示す図である。
図11に示すように、制御部101は、入院リスクの度合いの度数を集計し、円グラフ1101に出力する。
【0088】
図12は、入院リスク統計の推移の出力例を示す図である。
図12に示すように、制御部101は、入院リスクの度合いの度数を集計し、その推移を柱状グラフ1201に出力する。
【0089】
図13は、患者別入院リスク推移の出力例を示す図である。
図13に示すように、制御部101は、患者ごとに入院リスクの推移を折れ線グラフ1301に出力する。
【0090】
以上述べたように、本実施形態の入院可能性推定システム1は、精神科の訪問看護の記録である看護記録を取得する看護記録取得部(ステップ601)と、取得された看護記録に入院の有無を示す目的変数を追加する目的変数追加部(ステップ602)と、看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して教師データを生成する教師データ生成部(ステップ605)と、教師データによってモデルを学習させて学習済みモデルを生成する学習部(ステップ609、ステップ610)と、看護記録取得部が別途取得した処理対象の看護記録に含まれる患者の状況または看護内容を示すテキストデータをベクトル化して推論用データを生成する推論用データ生成部(ステップ701、ステップ703)と、推論用データを学習済みモデルに適用して入院可能性を推定する入院可能性推定部(ステップ706)と、を備える。
【0091】
従って、本実施形態によれば、訪問看護によって得られた情報からその患者の入院可能性を推定する入院可能性推定システムを提供することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0092】
1 入院可能性推定システム
2 公衆通信回線網
3 クラウド
4 クライアント端末
101 制御部
102 記憶部
102A 利用者情報ファイル
102B 看護記録ファイル
102C トランザクションファイル
102D 教師データファイル
102E 推論用データファイル
102F 推論結果ファイル
102G トークナイザ
102H 埋め込み層
102I モデル
103 入出力部
104 通信部
901 入院リスク画面
1001 入院リスク増減画面
1101 円グラフ
1201 柱状グラフ
1301 折れ線グラフ