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  • 特許-金属製装身具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】金属製装身具
(51)【国際特許分類】
   A44C 27/00 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A44C27/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019150060
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021029379
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591043101
【氏名又は名称】株式会社内藤貴金属製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 大二
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-056720(JP,A)
【文献】国際公開第2012/150695(WO,A1)
【文献】特開2015-073556(JP,A)
【文献】特開2000-017303(JP,A)
【文献】実開平04-048810(JP,U)
【文献】特開平11-206427(JP,A)
【文献】特開平09-154608(JP,A)
【文献】登録実用新案第3099680(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状の表面形状を有するよう加工された板状本体を備え、当該板状本体の厚みを1.0mm以下、望ましくは0.3mm以下とするとともに、前記板状本体の波状の表面形状に、その幅を0.2mm以下、高さを0.2mm以下としてなる極めて微細な細線が形成されていることを特徴とする金属製装身具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板状本体を波状表面に形成するとともに、該波状表面に細線からなる凹凸模様を付されていて、低コストで美観に優れた装身具の用途に用いる金属製装身具を提供することを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なジュエリーパーツを鋳造、すなわち樹脂ワックスを使用するキャスト製法によって得ようとすると、鋳造製品では焼鈍(アニール)状態で完成品となるため、素材には十分な硬度がなく、薄板ものや、長尺ものは強度不足となってしまいがちであることから製品化が避けられている。
そのため、板状本体を一対の金型間で加圧するプレス製法でジュエリーパーツを得ようとする試みも行われてきている。例えば特開2003-25024号公報(特許文献1参照)には、対面させた一対の金型を互いに接近させて対面部間に1又は複数個の装身用パーツを圧挟したまま、少なくとも一方の金型を周方向に回転させて装身用パーツを金型間において転動させつつ、金型対面部に形成した多数の突起により、上記装身用パーツの表面に微細な凹凸模様を賦型するようにした装身用パーツの表面加工方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、鋳造では量産型段階で板状本体の表面の加工付加面に垂直な細線を設けておくことができるが、プレス製法では加工付加面に対して垂直に彫られる細線であれば後加工のみになってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-25024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のプレス製法による場合においては、装飾用小物部品に対する粗面化といっても、要するに「梨子地」加工といって、表面の光沢性を失わせる程度で、表面を粗面にするための凹凸がきわめて細かく、しかも粗面層形成が浅いために、加工工程の中で梨子地の模様等を賦しても、その後の仕上げ工程で部分的に消失することが多い。
また、あえてプレス製法を適用しようとした場合、プレス製法に際して使用するプレス型が高価なため、品質の良い金属製装身具を得るためには大幅なコストアップにつながってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明の金属製装身具は、波状の表面形状を有するよう加工された板状本体を備え、かつ前記板状本体の波状の表面形状に極めて微細な細線からなる凹凸模様が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の金属製装身具において、前記金属製装身具が、鋳造によって製作されていることをも特徴とするものである。
【0008】
本発明の金属製装身具において、前記金属製装身具を構成する板状本体が、その厚みを1.0mm以下、望ましくは0.3mm以下としたことをも特徴とするものである。
【0009】
本発明の金属製装身具において、前記板状本体の波状の表面形状に形成された凹凸模様を構成する極めて微細な細線が、その幅を0.2mm以下、高さを0.2mm以下としたことをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
次に、本発明の金属製装身具によって得られる効果を列記すると以下の通りである。
1)量産用型の製作費用が安価である。
すなわち、プレス型(抜き、絞り2型以上で成立)に対してインジェクション型1型のみ で製作可能なため、1/10程度で製作可能
2)板状本体を波状の表面形状を有するように形成することによって、鋳造によって得られた板厚の極めて小さい薄板であっても実用強度が得られる。
3)板状本体の波状の表面形状に細線状の凹凸模様を付加することによって、光反射強度が異なり、波状の表面形状のみの場合と比較してさらに表面に視覚的な奥行き(コントラスト差)が得られ、見栄えが良くなる。
4)原材料使用量が少ないため、安価な製品を製作することができる。
5)プレス工法に比較して、少ない工程数、短時間の作業で製品を製作できる。
6)鋳造で行うので、材料リサイクルのコストが低く、結果的に製品製造コスト全体を低く抑えることができる。すなわち、鋳造による素材リサイクルでは端材をそのまま使用するため、鋳造設備を所有 する工場内でリサイクル可能であるものの、プレス製法の素材リサイクルでは、ほとんど のメーカーが圧延専業業者に依頼しているためコストアップになる。
7)プレス製法では別部品を製作してロー付けする後加工を行う必要のある石枠や丸環な どの付属的な装飾を、鋳造では原型にあらかじめ設置しておくことができるため少ない工 程数、短時間の作業で製品を製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の金属製装身具の実施の形態を示すものであり、ひし形形状の金属製装身具をフック式のイヤリングとして使用した場合の第1実施例の概略斜視図である。
図2図1に示した金属製装身具の概略正面図である。
図3】その概略側面図である。
図4】本発明の金属製装身具の別の実施の形態を示すものであり、ひし形形状の金属製装身具をフック式のイヤリングとして使用した場合の第2実施例の概略斜視図である。
図5】本発明の金属製装身具の別の実施の形態を示すものであり、リング形状の金属製装身具をフック式のイヤリングとして使用した場合の第3実施例の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の金属製装身具の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1ないし図4は本発明の金属製装身具の実施の形態を示すものであり、ひし形形状の金属製装身具11をフック式のイヤリングとして使用した第1実施例の場合を説明するものである。
すなわち、逆U字状のフック式のピン12の後端には丸環13が取り付けられている。他方、ひし形形状の金属製装身具11の上端にも丸環14が取り付けられていて、この丸環14を前記フック式のピン12に取り付けた丸環13を連結することにより、フック式のイヤリングとして使用するのである。
【0013】
前記ひし形形状の金属製装身具11は、波状の表面形状を有するよう加工された板状本体15を備え、かつ前記板状本体15の波状の表面形状16に極めて微細な細線17からなる凹凸模様が形成されている。
ちなみに、本発明においては前記金属製装身具11が鋳造、すなわち樹脂ワックスを使用するキャスト製法によって製作されていることをも特徴としている。
【0014】
前記金属製装身具11を構成する板状本体15が、その厚みを1.0mm以下、望ましくは0.3mm以下とすることが望ましい。すなわち、板状本体15を波状の表面形状16を有するように形成することによって、鋳造によって得られた板厚の極めて小さい薄板であっても実用強度が得られるのである。
【0015】
前記金属製装身具11において、前記板状本体15の波状の表面形状16に形成された凹凸模様を構成する極めて微細な細線17が、その幅を0.2mm以下、高さを0.2mm以下とすることができる。
このように、前記板状本体15の波状の表面形状16に、凹凸模様を構成する極めて微細な細線17を付加することによって光反射強度が異なり、波状の表面形状16のみの場合と比較してさらに表面に視覚的な奥行き(コントラスト差)が得られ、非常に見栄えが良くなる。
【0016】
なお、図1ないし図3の第1実施例においては、前記細線17を鉛直方向に直線とした形状を採用してあるが、このような形状に限らず、細線17を鉛直方向ではない斜線とすることも、細線17を直線形状ではない曲線とすることも可能である。もちろん、図4の第2実施例に示すとおり、前記細線17を前記板状本体15の波状の表面形状16の波状の稜線16aの長さ方向の向きと異なる方向に形成することも可能である。
【0017】
次に、図5は本発明の金属製装身具の別の実施の形態を示すものであり、リング形状の金属製装身具21をフック式のイヤリングとして使用した場合を説明するものである。
すなわち、逆U字状のフック式のピン22の後端には丸環23が取り付けられている。他方、リング形状の金属製装身具21の上端にも丸環24が取り付けられていて、この丸環24を前記フック式のピン22に取り付けた丸環23を連結することにより、フック式のイヤリングとして使用するのである。
【0018】
前記リング形状の金属製装身具21は、リング形状の幅方向の中央部分が突き出る波状の表面形状26を有するよう加工された板状本体25を備え、かつ前記板状本体25の波状の表面形状26に極めて微細な細線27からなる凹凸模様が形成されている。
本実施例においても、前記金属製装身具21が鋳造、すなわち樹脂ワックスを使用するキャスト製法によって製作されている。
【0019】
前記金属製装身具21を構成する板状本体25は、その厚みを1.0mm以下、望ましくは0.3mm以下とすることが望ましい。すなわち、板状本体25を波状の表面形状26を有するように形成することによって、鋳造によって得られた板厚の極めて小さい薄板であっても実用強度が得られるのである。
【0020】
前記金属製装身具21において、前記板状本体25の波状の表面形状26に形成された凹凸模様を構成する極めて微細な細線27が、その幅を0.2mm以下、高さを0.2mm以下とすることができる。
このように、前記板状本体25の波状の表面形状26に、凹凸模様を構成する極めて微細な細線27を付加することによって光反射強度が異なり、波状の表面形状26のみの場合と比較してさらに表面に視覚的な奥行き(コントラスト差)が得られ、非常に見栄えが良くなる。
【0021】
なお、本実施例においては、前記板状本体25の波状の表面形状26に形成された凸凹模様を構成する極めて微細な前記細線27を鉛直方向に直線とした形状を採用してあるが、このような形状に限らず、細線27を鉛直方向ではない斜線とすることも、細線27を直線形状ではない曲線とすることも可能である。もちろん、前記細線27を前記リング形状の板状本体25の波状の表面形状26の波状の稜線26aに沿うように形成(図示せず)することも可能である。
【0022】
図5において31は、リング形状の金属製装身具21の内周面に取り付けた宝石枠であり、この宝石枠31に設けた爪32によってダイヤ等の宝石33が取り付けられている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の金属製装身具は以上のように構成されており、その発明の要旨を変更しない限り種々の用途に適用できることはいうまでもない。
すなわち、上述において詳細に説明したイヤリングのみならず、ネックレスやブローチ、ブレスレットやその他の装身具にも難なく応用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
11 ひし形形状の金属製装身具
12 ピン
13 丸環
14 丸環
15 板状本体
16 波状の表面形状
16a 波状の稜線
17 細線
21 リング形状の金属製装身具
22 ピン
23 丸環
24 丸環
25 板状本体
26 波状の表面形状
26a 波状の稜線
27 細線
31 宝石枠
32 爪
33 宝石
図1
図2
図3
図4
図5