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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】加圧電気化学バッテリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240410BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 50/112 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 50/138 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 50/529 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240410BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20240410BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240410BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240410BHJP
   H01M 10/054 20100101ALN20240410BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M50/107
H01M50/112
H01M50/138
H01M50/152
H01M50/529
H01M50/531
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/6568
H01M10/052
H01M10/054
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019155054
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2020064848
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P201830846
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】509037891
【氏名又は名称】トレース マルティネス, マヌエル
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】トレース マルティネス, マヌエル
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527691(JP,A)
【文献】特開2012-174341(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・複数のコネクタ(1、2)と、
・前記コネクタ(1、2)に接続された複数の電気エネルギーの集合部(5)を備えた少なくとも1つの電気化学セル(3)と、
・前記電気化学セル(3)に接して配置された少なくとも1つの変形可能なチャンバ(4)と、
を含み、前記電気化学セル(3)は、
○複数の電極シート(13)と、
○該電極シート(13)間に挿入された複数の固体電解質シート(14)と
を含み、それぞれの前記電極シート(13)は、分離により不連続であり、前記変形可能なチャンバ(4)には、前記電気化学セル(3)に圧力を加えるために前記チャンバ(4)を変形させる流体が供給され、前記電極シート(13)、前記固体電解質シート(14)及び前記変形可能なチャンバ(4)が同心円状に配置されることを特徴とする、加圧電気化学バッテリ。
【請求項2】
複数の電気化学セル(3)を含み、各セル(3)は2つの変形可能なチャンバ(4)の間に配置されて、その間で加圧されていることを特徴とする、請求項1に記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項3】
前記電気化学セル(3)は円筒形状を有し、同心分布に従って配置されることを特徴とする、請求項2に記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項4】
前記電気化学セル(3)のそれぞれが、複数の拡大用密閉部(12)を有する複数の側面カバー(11)によって両端が閉じられた、2つの変形可能なチャンバ(4)の間に定められたハウジング内に設置されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項5】
前記変形可能なチャンバ(4)は、流体供給の収集システム(8)に接続されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項6】
前記収集システム(8)は、前記収集システム(8)への流入量を制御する供給システム(9)と、前記変形可能なチャンバ(4)内の圧力を調整する圧力調整器(10)とを有することを特徴とする、請求項5に記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項7】
各電極シート(13)は2層の活物質(131)と1層の導電性材料(132)とを含み、前記活物質の層(13)は前記導電性材料の層(132)の両面を部分的に覆い、前記導電性材料の層(132)の両端は、前記活物質の層(131)に対して突出していることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項8】
前記電極シート(13)は、同じ活物質のアノードのシートとカソードのシートとによって形成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項9】
前記電極シート(13)は、異なる活物質のアノードのシートとカソードのシートとによって形成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項10】
前記固体電解質が、ポリマー、セラミック又は複合材料で作られていることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項11】
前記加圧電気化学バッテリは導電体(7)を含み、該導電体(7)は前記集合部(5)を前記コネクタ(1、2)に接続し、前記導電体(7)が可撓性であることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項12】
シート(13、14)が、冷却特性を有する追加の流体の複数の流路を備えていることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の加圧電気化学バッテリの製造方法であって、該製造方法は、
・固体電解質シート(14)に重ねられた電極シート(13)を備えた第1のロール(16)の使用と、
・固体電解質の別のシート(14)に重ねられた別の電極シート(13)を備えた第2のロール(17)の使用と、
・変形可能なチャンバ(4)が配置された回転スピンドル(18)の使用と、
・前記固体電解質シート(14)を備えた前記電極シート(13)と前記別の固体電解質シート(14)を備えた前記別の電極シート(13)とを1つの前記変形可能なチャンバ(4)に交互に巻くことと、
・前記電極シート(13)と、前記固体電解質(14)と、前記変形可能なチャンバ(4)とで形成されたアセンブリを封入することと
を含む、製造方法。
【請求項14】
封入の前に、電極シート(13)と、固体電解質(14)と、変形可能なチャンバ(4)とによって形成された複数のアセンブリが巻かれ、同心円状の分布により前記アセンブリを互いに巻き付けることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
複数の電気エネルギーの集合部(5)を得るために、複数の回転する打ち抜き型(19)を使用して、前記電極シート(13)の端部を部分的に切断することを特徴とする、請求項13又は14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーの貯蔵システム、特に電気化学的手段によるエネルギー貯蔵システムに関し、構成要素間の接触を最適化し、それが耐えられるサイクル数と共に、バッテリの貯蔵及び放電能力を改善する、固体電解質を備えた加圧バッテリ並びにその製造方法を提案する。
【背景技術】
【0002】
電気化学バッテリの分野は、さまざまな技術及び用途を通して大きく発展した分野である。現在、主に単位質量当たりの大きなエネルギー蓄積能力と、複数の充電及び放電サイクルに対する耐性により、主要なバッテリ技術はリチウムイオンである。
【0003】
これらのバッテリは、構成要素の組で構成されている。これらのうち、主な構成要素は電極のアノード及びカソード、並びに電解質である。アノードは、通常は黒鉛などの活物質で構成され、カソードは酸化リチウムなどの別の活物質で構成されており、どちらも一般にシート形式である。これらの材料は、リチウム原子を渡すこと又は蓄積することを可能にする。電解質は、リチウムイオンがこの媒体を通過できる、通常は一定量のリチウム塩を含む材料である。これらのバッテリの作動原理は、アノードとカソードが異なる還元電位を生成することができる2つの活物質であり、両方の電極が接続されてリチウムイオンの移動を可能にする電解質を介して接した時の酸化還元反応により、電流の生成をもたらす。
【0004】
地球の地殻におけるリチウム及び他の一般的なリチウム酸化物材料の不足は、供給の問題及び独占により、代替材料の研究を促している。リチウムと比較すると、最も単純な代替物は、非常に類似した構造を有するアルカリ金属のナトリウムであるが、リチウムとは異なり、地球上で最も豊富な材料の1つである。ナトリウムの使用は、リチウムと比較していくつかの調整要因(低い電力密度、より大きな原子サイズ、異なる活物質及び電解質など)を伴うが、作用原理は同じであるため、バッテリでの材料費を削減するための研究、特にバッテリの最終的な重量がモバイル用途ほど重要ではない据え置き用途については、おそらく最も興味深い方向と考えられる。
【0005】
上記の主要な構成要素に加えて、導電体として機能する一連の材料が通常はアノード及びカソードで使用され(アルミニウム、銅など)、活物質間の接触及び生成された電流のバッテリ外部への伝導を促進する。アノードとカソードの直接の接触はバッテリを損傷する化学反応を生じる可能性があるため、アノードとカソードの間の分離材料が通常は使用され、特に液体電解質を使用する場合に通常は使用される。この分離材料は、通常はイオンが通過できる微細な孔が開けられたポリマーである。
【0006】
バッテリの温度管理は、作動を最適化するには特定の作動温度を維持することが必要な場合があるので、重要な技術的側面である。更に、「熱暴走」として知られているものをもたらし得る制御されていない熱的状況、又はバッテリを損傷又は破壊さえする発熱反応が、防止されなくてはならない。
【0007】
電解質の分野では、通常は上述した液体電解質が使用され、それは一般的に一定量のリチウム塩を含有した有機溶媒をベースにする。しかし、このタイプの電解質は、接触並びに摩耗の点で、製造過程及びバッテリ使用中における一連の欠点を有し、それは低い性能や寿命の低下に繋がる。そのため、バッテリの分野では、これらの問題を解消する固体電解質の使用の検討が始められている。
【0008】
現在、固体電解質を使用するバッテリの開発に関連する1つの主要な問題がある。それは、活物質と電解質の間での良好な接触を生じる能力である。接触が良好でない場合、イオンが一方の電極から他方の電極に移動するのがより困難になるため、バッテリの充電及び/又は放電能力、更には電力密度さえも低くなる。
【0009】
更に、特にナトリウムイオンバッテリの場合、一方の電極から他方の電極へのイオンの移動には電極体積の大きな変化が伴い、それは一部の構成要素の変形や亀裂の問題を生じ、バッテリの損傷又は完全な喪失をもたらす。
【0010】
更に、現在のバッテリ分野では、製造方法は、限られた生産速度と半自動の製造方法での、小型セルの製造に焦点を当てている。これは、最終的な状況において、バッテリでのリチウムのコストが約2%であるのに対し、セルの推定される製造コストがバッテリの総コストの35%に相当し、セルが総コストの65%を占めることをもたらす。
【0011】
以下に、一例として、現在のバッテリ製造方法、つまり、主にリチウム、液体電解質、及び低い程度の自動化の製造方法を用いる現在のバッテリ製造方法を示す一連の文献を挙げる。
【0012】
特許文献1は、バッテリ製造方法を記載しているが、液体電解質をその構成要素に使用しており、これが関係する製造での複雑さ及びこれがもたらす使用中での性能への悪影響がある。
【0013】
特許文献2は、固体電解質バッテリの製造方法について記載しているが、リチウムをこの元素の不足にもかかわらず活物質に使用し、更に電解質と電極の間に加えられる圧力を制御するシステムを使用していない。
【0014】
特許文献3は、可逆的に作動するナトリウムイオンバッテリを記載しているが、その電解質は液体状態であるため、バッテリの製造方法の自動化を複雑にすると共にその寿命が短くなる。
【0015】
特許文献4は、最大限の性能を達成するために、電極と電解質の間の接触面積を最大化する固体電解質を備えたナトリウムバッテリについて記載しているが、バッテリの使用中にその接触を促進しかつその接触を調整できる追加の手段を用いていない。
【0016】
特許文献5は、ナトリウム金属のアノードと固体セラミック電解質のナトリウムイオン導体を備えたナトリウムイオンバッテリを記載するが、その効率は電極と電解質の間の接触の質に大きく依存し、更にそれは接触を促進又は最大化するためのいかなる追加のシステムも使用せず、正常な作動のために第2の電解質の追加が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2018/008682号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/219252号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/192553号明細書
【文献】韓国特許第101439080号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/250406号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、バッテリの活物質と電解質の間の接触の向上を可能にして、バッテリの性能及び充電能力を改善する、改善された構造を備えた電気化学バッテリに関する。本発明はまた、製造方法を自動化して高い生産速度を実現することを可能にする、電気化学バッテリの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の対象である加圧電気化学バッテリは、
・アノード及びカソードの複数のコネクタと、
・前記コネクタに接続された複数の電気エネルギーの集合部を備えた少なくとも1つの電気化学セルと、
・前記電気化学セルに接して配置された少なくとも1つの変形可能なチャンバとを含み、前記電気化学セルは、
○複数の電極シートと、
○該電極シート間に挿入された複数の固体電解質シートと
を含み、前記変形可能なチャンバには、前記電気化学セルに圧力を加えるために前記チャンバを変形させる流体が供給される。
【0020】
これは、流体が供給される変形可能なチャンバが、電気化学セルの異なるシート間の表面接触を調整及び制御し、バッテリ性能を最適化し、バッテリの貯蔵及び放電能力を改善し、バッテリがその寿命の間に耐えることができる充電サイクル数を増やすことを可能にすることを意味する。
【0021】
本発明の例示の実施形態によれば、バッテリは複数の電気化学セルを含み、各セルは2つの変形可能なチャンバの間で加圧されている。好ましくは、電気化学セルは円筒形状を有し、同心円状の分布により配置され、これによりバッテリが占めるスペースを最適化しかつその製造を簡単にすることを可能にする。
【0022】
変形可能なチャンバは、流体供給の収集システムに接続されているため、その流体によって、チャンバによって加えられる圧力が調整されることができ、バッテリを冷却することができ、それにより数ある要因の中でも特に、バッテリの貯蔵能力を改善する。
【0023】
好ましくは、その収集システムは、収集システムへの流入量を制御する供給システムと、変形可能なチャンバ内の圧力を調整する圧力調整器とを有する。
【0024】
各電極シートは、2層の活物質と1層の導電性材料とを含み、活物質の層は導電性材料の層の両面を部分的に覆い、導電性材料の層の両端は活物質の層に対して突出しており、集合部のための導電性材料の層の突出部分を使用してバッテリのコネクタに接続された電気化学セルから電気エネルギーを得る。
【0025】
例示の実施形態によれば、電極シートは、同じ活物質であるアノードのシートとカソードのシートとによって形成される。別の例示の実施形態によれば、電極シートは、異なる活物質のアノードのシート及びカソードのシートによって形成される。言い換えれば、複数の電極シートがアノードのコネクタに接続され、他の電極シートがカソードのコネクタに接続され、これらのシートは同じ材料又は異なる材料で作られることができる。
【0026】
好ましくは、固体電解質は、ポリマー、セラミック又は複合材料で作られる。
【0027】
本発明の別の対象は、加圧電気化学バッテリの製造方法であり、その方法は、
・固体電解質シートに重ねられた第1のシートである電極シートを備えた第1のロールの使用ステップと、
・固体電解質の別のシートに重ねられた第2のシートである別の電極シートを備えた第2のロールの使用ステップと、
・変形可能なチャンバが配置された回転スピンドルの使用ステップと、
・固体電解質シートを備えた第1の電極シートと別の固体電解質シートを備えた第2の電極シートとを1つの変形可能なチャンバに交互に巻くステップと、
・電極シートと、固体電解質と、変形可能なチャンバとで形成されたアセンブリを封入するステップと
を含む。
【0028】
これにより、自動化できる電気化学バッテリの製造方法が得られ、高い生産速度が実現されるため、バッテリの単位製造コストが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の好ましい実施形態による加圧電気化学バッテリの斜視図を示す。
図2】前図の加圧電気化学バッテリの一部の縦断面図を示す。
図3】固体電解質シートに配置された、電極シートを形成する層の概略図を示す。
図4】前図の電極シートの部分図を示す。
図5】連続電極シートによる図1、2の加圧電気化学バッテリの一部の断面図を示す。
図6】不連続電極シートによる図1、2の加圧電気化学バッテリの一部の断面図を示す。
図7図1、2の例示の実施形態に示されているような加圧電気化学バッテリの製造を実施するための機械の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施形態による加圧電気化学バッテリを示し、バッテリは円筒形状を有するが、この構成に限定されず、バッテリは本発明の概念を変更しない他の形状を採用してもよい。
【0031】
図2の断面図は、図1の好ましい実施形態であるバッテリの内部構成を示す。バッテリは、複数のコネクタ(1、2)又は端子を備え、ここでそのコネクタは、アノードのコネクタ(1)及びカソードのコネクタ(2)であり、それらを通してバッテリに蓄えられる電気エネルギーが充電及び放電される。
【0032】
図2の好ましい例示の実施形態では、バッテリは電気化学セル(3)の組を含み、セル(3)のそれぞれは、流体を受け入れる2つの変形可能なチャンバ(4)の間に配置され、その流体によりチャンバ(4)の大きさの変更を可能にしてチャンバ(4)を変形させ、それにより電気化学セル(3)の構成要素を加圧して電気化学セル(3)での適切な接触を確保する。
【0033】
図2の電気化学セル(3)に示されている垂直方向の黒い矢印は、変形可能なチャンバ(4)がセル(3)に圧力をかける方向を示す。図2の他の黒い矢印は、チャンバ(4)が受け入れる流体の方向を示す。
【0034】
図1、2の好ましい実施形態では、電気化学セル(3)は円筒形状を有し、同心円状に配置されてスペースの占有を最適化することを可能にする。
【0035】
任意で、電気化学セル(3)のそれぞれは、個々に若しくはそれらのすべてのセットをまとめて、密封材料で覆われてもよく、又は密封カプセル内に配置されてもよい。
【0036】
また任意で、バッテリの電気化学セル(3)のそれぞれを分離する内部構成要素を備えてもよい。
【0037】
いずれの場合でも、その最も簡単な構成ではバッテリは単一の電気化学セル(3)を有し、その長辺の1つは変形可能なチャンバ(4)と接して配置され、反対側の長辺はバッテリの固定部分と接する。好ましくは、その単一のセル(3)は、2つの変形可能なチャンバ(4)の間に配置される。
【0038】
電気化学セル(3)は、複数の集合部(5)を、そのそれぞれの端に有する。集合部(5)は複数のフランジ(6)で固定され、複数の導電体(7)によってコネクタ(1、2)に接続されている。セル(3)の一端の集合部(5)はアノードのコネクタ(1)に電気的に接続され、セル(3)の他端の集合部(5)はカソードのコネクタ(2)に電気的に接続される。
【0039】
変形可能なチャンバ(4)のそれぞれは、チャンバ(4)に供給される流体が循環する収集システム(8)に接続された流体の流入口及び排出口を備えている。
【0040】
好ましくは、チャンバ(4)に供給される流体は冷却流体であり、それにより変形可能なチャンバが2つの機能を有し、1つは電気化学セル(3)に加えられる圧力を調整し、もう1つはバッテリを冷却する。
【0041】
したがって、チャンバ(4)は調整可能な温度と圧力の両方を有し、どちらもバッテリの特定の作動状態に応じて調整されることができる。温度と圧力は、充電、放電又は静止のバッテリの作動状態によって異なり得る。
【0042】
電気化学セル(3)を構成する要素間の接触を改善することに加えて、圧力は作動状態に基づいて変更されることができるため、バッテリは充電及び放電過程中に起こるイオン交換に反応したセル(3)の体積変化に適合する。
【0043】
好ましくは、収集システム(8)は、供給システム(9)及び圧力調整器(10)を有する。供給システム(9)は、収集システム(8)の流入口に位置し、収集システム(8)への流入量、そしてこれによりバッテリ温度を制御することを可能にする。一方で圧力調整器(10)は、変形可能なチャンバ(4)内の圧力、そしてこれによりセル(3)を構成する要素間の接触を調整することを可能にする。
【0044】
電気化学セル(3)は、バッテリ内の真空及び制御された雰囲気の状況下に配置される。したがって、電気化学セル(3)は、複数の側面カバー(11)によって両端が閉じられた、2つの変形可能なチャンバ(4)の間に定められたハウジング内に取り付けられる。その側面カバー(11)は、複数の拡大用密閉部(12)を有し、それは流体がチャンバ(4)を変形させる時に、電気化学セル(3)のハウジングの収縮を吸収することを可能にする。
【0045】
電気化学セル(3)は、複数の電極シート(13)と複数の固体電解質シート(14)とで構成され、電極シート(13)は固体電解質シート(14)の間に挿入される。
【0046】
図3に示されるように、各電極シート(13)は、2層の活物質(131)と1層の導電性材料(132)とを含む。活物質の層(131)は導電性材料の層(132)の両面に配置され、導電性材料の層(132)がその両端で活物質の層(131)に対して突出するようにして、導電性材料の層(132)を部分的に覆う。その両端は、コネクタ又は端子(1、2)に接続され、バッテリの設計で予想される電圧及び電流を取り出して生じさせる電気エネルギーの集合部(5)としての役割を果たす。
【0047】
また、図3に示されるように、電極シート(13)は固体電解質シート(14)に接して配置され、導電性材料(132)のシートの両端、つまり集合部(5)は、固体電解質シート(14)に対して突出する。
【0048】
電極シート(13)の材料は、バッテリの最終的な化学的性質に依存する。リチウムの場合は、アノードの活物質は黒鉛に、カソードの活物質は酸化リチウム(LCO、LNO、NMO、NMCなど)にすることができる。ナトリウムの場合は、電極シート(13)はアノードにおいて硬質炭素などの活物質を使用することができ、カソードの活物質として酸化ナトリウム、プルシアンブルー、又は有機ベースの材料も使用することができる。どちらの場合にも、リチウム又はナトリウム金属もまた、アノードの活物質として考えられることができる。固体電解質(14)は、ポリマー材料、セラミック材料、又は複合材料で作られてもよい。
【0049】
更に、変形可能なチャンバ(4)は変形可能な材料で作られる。変形可能な材料には、エラストマーや、限られた厚さのフィルム状のアルミニウムなどの金属も含まれる。
【0050】
電極シート(13)は、図5に示されるように連続であってもよいが、図6に示されるように不連続であって、シート(13)が分かれていてもよい。これにより、シート(13)の変形にある程度の柔軟性がもたらされ、内部圧力の印加に応じてそれらの間でずれて、シートを損傷する可能性のある機械的応力を受けないことができる。
【0051】
同様に、アノードのコネクタ(1)に接続された電極シート(13)とカソードのコネクタ(2)に接続された電極シート(13)が同じ活物質で作られる場合、そのシート(13)での分離は、短絡を防ぐために好ましい。
【0052】
固体電解質シート(14)に関しては、電解質の材料の種類に応じて、図6に示されるように、制限された長さのシート配置を有する場合があるが、その機械的特性が可能であるならば、それらは図5に示されるように連続であって、加えられた圧力に応じて変形してもよい。
【0053】
好ましくは、シート(13、14)はバッテリの半径方向に複数の空洞を有し、それにより冷却特性を有する追加の流体のための複数の流路を備える。その空洞は、液体又は気体の流体を供給する追加のシステムに接続されることができ、それにより変形可能なチャンバ(4)を通って循環する流体に加えて、その流路を通って追加の流体を送ることを可能にする。空洞とチャンバ(4)の全体を通じて温度が制御された調節された流体を使用することは、バッテリの性能を向上させる熱管理を実現し、過熱に関連する問題を回避し、シート(13、14)の組でのより厚いバッテリの作成さえ可能にし、したがって蓄積能力が高くなる。
【0054】
図2に示される実施形態によれば、集合部(5)によって電気化学セル(3)を構成する電極シート(13)の組が1つにまとめられるように、集合部(5)は相互に接続されて、好ましくははんだ付けによって相互に接続されて、フランジ(6)によってまとめられる。これは、各コネクタ(1、2)に関して、各セル(3)に1つの接触領域があることを意味する。別の代わりの構成(図には示されない)では、導電性材料(132)の層の外側端のそれぞれに、各コネクタ(1、2)のための接触領域を備えることができる。
【0055】
好ましくは、集合部(5)をコネクタ(1、2)に接続する導電体(7)は、バッテリがその使用中に起こす様々な変形を許容しかつそれに適応するように、柔軟な材料で作られる。
【0056】
バッテリは、連続して配置されることがある異なるバッテリ間の障壁として機能する外部の封入材(15)を有するように設計されているため、その封入材(15)は、バッテリが隣接するバッテリと直接接触することを防ぐ。
【0057】
以下では、図1、2に示される好ましい実施形態である円筒形バッテリの製造手順について説明するが、説明された手順を用いて円筒形以外の形状のバッテリが得られることは当業者には明らかであり、このことは本発明の概念を変更するものでない。
【0058】
図7に示されるように、バッテリは、電極シート(13)及び固体電解質シート(14)が変形可能なチャンバ(4)に段階的に重ねられる巻き付け工程によって製造される。
【0059】
これを行うために、固体電解質シート(14)に重ねられた第1のシートである電極シート(13)を備えた第1のロール(16)と、固体電解質の別のシート(14)に重ねられた第2のシートである別の電極シート(13)を備えた第2のロール(17)が使用される。以下で説明されるようにして、第1のロール(16)のシート(13)はアノードのコネクタ(1)に接続され、第2のロール(17)の別のシート(13)はカソード(2)のコネクタに接続される。
【0060】
加えて、変形可能なチャンバ(4)は回転スピンドル(18)に配置され、第1及び第2のロール(16、17)のシート(13、14)は、所望の厚さの電気化学セル(3)がチャンバ(4)で得られるまで、変形可能なチャンバ(4)に交互に巻かれる。
【0061】
固体電解質シート(14)に重ねられた電極シート(13)は、図3に示されて上述されたような構成を有する。したがって、電極シート(13)は、2層の活物質(131)を含み、その間に導電性材料(132)の層が配置され、それは活物質(131)の層に対して突出する。
【0062】
複数の電気エネルギーの集合部(5)を得るために、複数の回転する打ち抜き型(19)によって、電極シート(13)の両端が部分的に切断される。これを行うために、電極シート(13)をその型(19)に通し、活物質(131)の層に対して突出する導電性材料(132)の層を部分的に切断する。
【0063】
図7に詳細に示されるように、第1のロール(16)のシート(13)の活物質の層(131)に対して突出する導電性材料の層(132)は、集合部(5)がアノードのコネクタ(1)への接続用にされるようにして、片側のみが切り取られる。加えて、第2のロール(17)のシート(13)の活物質の層(131)に対して突出する導電性材料の層(132)は、集合部(5)がカソードのコネクタ(2)への接続用にされるようにして、反対側のみが切り取られる。
【0064】
電気化学セル(3)を得た後、集合部(5)はフランジを付けられると共に互いにはんだ付けされ、次に複数の導電体(7)によって集合部(5)同士が電気的に相互に接続される。セル(3)の一端の集合部(5)はアノードのコネクタ(1)に電気的に接続され、セル(3)の他端の集合部(5)はカソードのコネクタ(2)に電気的に接続される。最後に、電極シート(13)、固体電解質(14)、及び変形可能なチャンバ(4)で形成されたアセンブリを、封入材(15)の中に入れる。
【0065】
図2に示されるような複数の電気化学セル(3)を有するバッテリを得るために、封入材に入れること及び集合部(5)を電気接続することの前に、電極シート(13)、固体電解質(14)及び変形可能なチャンバ(4)の複数のアセンブリが巻かれ、同心円状の分布によりそのアセンブリを互いに巻き付ける。
【0066】
ロール(16、17)を得るために、最初にアルミニウム、銅、又はリチウムアルミニウム合金などの別のより高度な材料などの導電性材料の層(132)が自動的に引き出され、導電性材料の層(132)を活物質の層(131)で覆うために、コーティングを施すためのシステムに送られる。
【0067】
その活物質の層(131)は、印刷システム、静電接着、又は層をコーティング又は下塗りするいずれかの他の方法によって施されることができ、リチウム又はナトリウム金属などの活物質の層(131)からなることもできる。このようにして、電極シート(13)が得られる。
【0068】
次に、固体電解コーティングが電極シート(13)に施され、そのコーティングは電極シート(13)の片面又は両面に施される。このようにして、固体電解質シート(14)を備えた電極シート(13)が得られる。好ましくは、固体電解質シート(14)は、固体電解質材料のロールから貼り付けられる。
【0069】
本発明の一構成では、電極シート(13)及び固体電解質シート(14)は、変形可能なチャンバ(4)に巻き取られる前に切断される。本発明の別の構成では、電極シート(13)は切断されるが、固体電解質シート(14)は切断されないままである。別の構成では、シート(13、14)は切断されず、そのため変形可能なチャンバ(4)に巻かれたシートは、限定された長さを有する代わりに連続している。
【0070】
ロール(16、17)の製造について説明した工程は、制御された雰囲気の設備で行なわれ、好ましくは相対湿度が0.01%未満で行なわれ、好ましくは内部への漏れを防ぐ加圧雰囲気で行なわれ、その結果として湿気が筺体に入る可能性を防ぐ。別の構成では、説明した工程は、適切な作業条件を実現するために強力な真空の設備で行われる。
【0071】
固体電解質の適用は、主として活物質を外部雰囲気から隔離し、したがってここでの工程は、活物質の場合に必要である制御された雰囲気のような特別な要件の雰囲気で行われる必要がない。
【0072】
回転スピンドル(18)は、任意でさまざまな同心状の変形可能なチャンバ(4)に適応できるように、拡張可能であるか又は可変の寸法を備えている。これは、1つのスピンドル(18)を使用して、異なる内径のセル(3)を有するバッテリを製造できることを意味する。
【0073】
製造工程の好ましい構成では、スピンドル(18)及び材料の温度は制御された方法で管理されるため、制御された熱膨張により、構成要素間の最終調整及び接触がより正確になる。
【符号の説明】
【0074】
1 アノードのコネクタ
2 カソードのコネクタ
3 電気化学セル
4 チャンバ
5 集合部
6 フランジ
7 導電体
8 収集システム
9 供給システム
10 圧力調整器
11 側面カバー
12 拡大用密閉部
13 電極シート
14 固体電解質シート
15 封入材
16 第1のロール
17 第2のロール
18 スピンドル
19 打ち抜き型
131 活物質
132 導電性材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7