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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】建築物検査装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240410BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240410BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240410BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240410BHJP
   B64C 19/02 20060101ALI20240410BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20240410BHJP
   E04G 23/00 20060101ALI20240410BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20240410BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240410BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20240410BHJP
【FI】
G06Q10/20
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
B64C19/02
B64C13/20 Z
E04G23/00
E01D22/00 A
H04N7/18 B
G05D1/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020073745
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021170283
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591012680
【氏名又は名称】柳井電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】仲野 公敏
【審査官】太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100843(JP,A)
【文献】特開2017-087916(JP,A)
【文献】特開2017-163265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 47/08
B64C 19/02
B64C 13/20
E04G 23/00
E01D 22/00
H04N 7/18
G05D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦者による操作される操縦装置と、
前記操縦装置からの直接的な操縦装置無線信号による操縦を受けて飛行する親機となる無人航空機(以下、「親機」という)と、
前記親機からの親機無線信号による操縦を受けて飛行する子機となる無人航空機(以下、「子機」という)と、を備え、
前記親機は、前記操縦装置無線信号が到達する非死角領域を飛行可能であり、
前記子機は、前記操縦装置無線信号が到達困難な死角領域を飛行可能であり、
前記親機は、
前記子機を撮像する子機撮像部と、
前記子機撮像部での子機画像を、前記操縦装置に送信する画像送信部と、
を、備え、
前記子機撮像部は、範囲枠を含めて前記子機を撮像し、前記範囲枠と前記子機とを重畳した画像を、前記子機画像とし、
前記画像送信部は、前記範囲枠と前記子機とが重畳された前記子機画像を、前記操縦装置に送信し、
前記操縦装置は、前記子機画像に基づいて、前記子機が前記範囲枠から外れている場合には、前記親機に、前記子機を前記範囲枠に戻すための調整信号を含む前記操縦装置無線信号を送信し、前記親機は、当該操縦装置無線信号を前記親機無線信号に変換して、前記子機に送信し、
前記調整信号は、前記子機の位置、前記子機の飛行経路および前記子機の姿勢の少なくとも一つを調整する要素を含み、
前記子機は、前記親機無線信号に基づいて、前記子機の飛行位置を調整して、前記範囲枠に飛行位置を戻し
前記操縦装置は、前記親機を介して、前記子機を間接的に操縦可能である、建築物の外観を検査する建築物検査装置。
【請求項2】
前記親機および前記子機は、前記建築物の周辺を飛行し、
前記非死角領域は、前記建築物の周辺において、前記操縦装置無線信号が到達できる領域であり、
前記死角領域は、前記建築物の周辺において、前記操縦装置無線信号が到達困難な領域である、請求項1記載の建築物検査装置。
【請求項3】
前記親機および前記子機は、測位信号を受信可能であり、
前記死角領域は、前記測位信号を受信困難な領域であり、
前記子機は、この死角領域を、前記親機無線信号に基づいて飛行可能である、請求項1または2記載の建築物検査装置。
【請求項4】
前記建築物は、橋梁、鉄橋および屋外建築物の少なくとも一つを含み、
前記死角領域は、前記橋梁および前記鉄橋の底部、前記屋外建築物の裏側を含む、請求項1から3のいずれか記載の建築物検査装置。
【請求項5】
前記操縦装置は、前記子機の位置を調整する子機調整部を更に備え、
前記子機調整部は、前記範囲枠から前記子機から外れている場合に、前記子機を前記範囲枠内に戻すための前記操縦装置無線信号を自動で生成する、請求項記載の建築物検査装置。
【請求項6】
前記操縦装置は、操縦者によって操縦され、
前記操縦者は、前記範囲枠から前記子機が外れている場合に、前記子機を前記範囲枠内に戻すための操縦を行うことで、前記操縦装置無線信号を、前記親機に送信し、
前記親機は、受信した前記操縦装置無線信号を前記親機無線信号に変換して、前記子機に送信する、請求項記載の建築物検査装置。
【請求項7】
前記子機は、前記親機において前記操縦装置無線信号から変換された前記親機無線信号に基づいて、前記測位信号が無い状態であっても、位置を調整することができる、請求項3記載の建築物検査装置。
【請求項8】
前記子機は、前記親機無線信号により、前記操縦装置から間接的な操縦が可能である、請求項1から7のいずれか記載の建築物検査装置。
【請求項9】
前記子機は、前記死角領域において、前記建築物の外観画像を撮像する撮像部を更に備える、請求項1から8のいずれか記載の建築物検査装置。
【請求項10】
前記子機は、前記外観画像を、前記親機に送信する、請求項記載の建築物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機を用いて建築物の死角領域の検査を行う建築物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁、鉄橋、屋外建築物など、様々な建築物が存在する。これらの建築物は、大きさも大きく形状や構造が複雑であることも多い。また、橋梁や鉄橋などは自然環境の中に建設されている。例えば、橋梁は河川の上、海上、渓谷の上などの自然環境の場所に建設されている。鉄橋も同様である。
【0003】
これら以外でも、屋外にあるショッピングセンターや工場などの建築物も多数ある。勿論、市内にあるオフィスビルや集合住宅などの建築物も、多数が存在している。
【0004】
これらの建築物においては、その大きさと相まって、その全体像や部分の詳細を近接距離から目視することが難しいことが多い。勿論、至近距離で、これらの建築物に手作業で何かの作業をすることは困難である。このような状況により、これらの建築物に係る作業においては困難が付きまとう。
【0005】
ここで、橋梁や鉄橋などの建築物は、定期的な検査やメンテナンスのための検査がなされることが必要である。検査においては、様々な方法に基づく検査があるが、外観検査による検査が重要である。外観検査による検査により、破損や損傷などの早期の発見につながるからである。破損や損傷の発見だけでなく、汚損などの発見にもつながることは、建築物のメンテナンスや建築物の寿命延伸に役に立つ。
【0006】
もちろん、超音波検査、触感検査など、種々の検査方法での検査が行われることも必要である。建築物内部における損傷や変性などが生じていることを検出できるからである。さらには、X線による内部検査を行うことも必要な場合がある。これらにより、建築物における問題を確実に発見できるからである。
【0007】
しかしながら、このような超音波検査や触感検査などの専用の装置を用いた検査は、屋外に建設されている建築物において実行することは難しい。その大きさにより難しい。加えて、河川や渓谷などに建設されていることから、作業の困難性が高いからである。
【0008】
このため、定期的なメンテナンスや簡易な検査、あるいは、詳細検査に移行する前段階での検査などにおいて、外観検査が行われることが必要となる。外観検査は、作業者が建築物に直接的に接触したり検査装置を建築物に接触させたりする必要が無いからである。大型(時に巨大)で、作業者が近付きにくい環境に建築物が建設されているからである。
【0009】
このような状況で、建築物の損傷や汚損など(あるいは、その兆候)を、外観検査により検査することが多く行われている。また、問題の早期発見のために、外観検査は必要となっている。このようにして、建築物の外観検査が多くの場所で行われている。
【0010】
一方で、外観検査といっても建築物は巨大であることが多く、上述したように作業者が近付きにくい環境に建設されていることが多い。河川や渓谷に建設されている橋梁や鉄橋などは、作業者が近付いて目視することや画像を撮像することが困難である。建築物への接触や検査装置の取り付けなどの作業が不要であっても、建築物の特性により、外観検査も困難である。
【0011】
このため、航空機などを用いた外観検査が行われている。特に、ドローンと呼ばれる無人航空機により外観検査が行われている。無人航空機は、小型でかつ小回りが利くことで、橋梁や鉄橋、その他の屋外建築物の周囲をくまなく飛行できるからである。このような無人航空機は、建築物の周囲を飛行しながら、建築物の外観画像を撮像する。この撮像された画像により、建築物の外観を検査することができる。
【0012】
ここで、屋外にある大きな建築物(橋梁、鉄橋など)は、裏側、底側などの死角となる部分がある。上述した無人航空機は、無線通信によって操作されたり予め組み込まれたプログラムと測位信号(GPS信号)とに基づいて自動飛行したりする。
【0013】
しかしながら、上述したような死角では、操作者による操作が困難である。操作者が無人飛行機を目視できないことに加えて、無線信号が無人航空機に到達できないからである。あるいは、測位信号を受けて自動飛行する場合でも、死角においては、この測位信号を無人航空機が受信できない問題もある。この場合にも、緯度経度などに基づく飛行プログラムが組み込まれていても、無人航空機が正確な飛行経路での飛行ができない問題がある。
【0014】
このような正確な飛行経路での飛行ができないと、建築物の死角において建築物の撮像や外観検査が困難となる問題がある。場合によっては、無人航空機が建築物と衝突してしまい、無人航空機の墜落や損傷、建築物の損傷などの問題にもつながってしまう。
【0015】
このようなことに対する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2018-144627号公報
【文献】特開2019-039236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1は、筐体の外形を構成する枠体と、駆動源を有し平行に配置された一対の車輪である駆動輪と、前記枠体内に配置された水平回転翼と、を備え、前記駆動輪は、該駆動輪の車輪径の少なくとも一部が、前記枠体よりも上方または側方に張り出しており、前記水平回転翼は、前記枠体の姿勢を保ったまま、所定の角度範囲内において回転面を傾斜可能であることを特徴とする無人航空機を開示する。筐体の外形を構成する枠体と、駆動源を有し平行に配置された一対の車輪である駆動輪と、前記枠体内に配置された水平回転翼と、を備え、前記駆動輪は、該駆動輪の車輪径の少なくとも一部が、前記枠体よりも上方または側方に張り出しており、前記水平回転翼は、前記枠体の姿勢を保ったまま、所定の角度範囲内において回転面を傾斜可能であることを特徴とする無人航空機
【0018】
特許文献2は、小型の回転翼機51を遠隔操作によって飛行させ、点検対象となる建造物の壁面Wに、回転翼機51に水平軸周りに回転自在に設けられた一対の車輪131を押し付け、そのまま回転翼機51を上下方向に移動させる。その間、車輪131の回転をロータリエンコーダによって検出し、打音診断装置151によって壁面Wを連続的に叩打してその際の打音を採取する。また車輪131と回転翼機51との間の変位を許容して弾性的に受け止めることによって、車輪131に対する回転翼機51の位置ずれを吸収する構造物の点検方法を、開示する。
【0019】
特許文献1の無人航空機は、その外周を枠体で囲まれている。この枠体は、無人航空機そのものを保護している。この保護により、無人航空機が、建築物の周囲を飛行する場合に、航空機が建築物に衝突して損傷したり落下したりすることが防止されている。
【0020】
しかしながら、特許文献1の航空機を建築物の検査のために飛行させると、無線通信や測位信号が届かないエリアでは、遠隔操縦や自己飛行が困難となる。操縦者が遠隔操縦する場合には、操縦用の無線信号が航空機に届かないからである。また、組み込まれた飛行プログラムに従う場合でも、飛行プログラムは緯度や軽度で定義されている。死角となって測位信号を受信できなければ、組み込まれた飛行プログラムに定義される緯度経度を検出できず、自己飛行ができなくなるからである。
【0021】
このため、特許文献1は、建築物の死角となるエリアでの外観検査を行うことができない。また、飛行が不安定となることで、枠体が建築物に衝突することも考えられる。このようになると、建築物を損傷させることにもつながる問題がある。
【0022】
特許文献2は、建築物の外壁に沿って車輪による走行で建築物の周囲を移動しながら検査できる。
【0023】
しかしながら、車輪やこれに対応する駆動部などが増加することで、航空機の構造が複雑化する問題がある。また、同じ理由で航空機の重量が重くなってしまう問題もある。さらに、建築物の外壁が車輪により駆動できる平坦な部分以外を備えることも多い。このような部分では外壁に沿った移動ができず、外観検査ができない問題がある。
【0024】
もちろん、車輪による外壁に沿った移動でも、航空機を遠隔から操縦する遠隔操縦か組み込みプログラムと測位信号とを合わせた自己飛行が必要となる。特許文献2の場合でも、このような遠隔操縦や自己飛行が、信号の死角において困難となる問題がある。車輪と建築物の接触を検出するセンサーが備わっていても、位置を把握できないので、必要な範囲での飛行が保証されず、外観検査の保証がなされないからである。
【0025】
以上のように、従来技術での無人航空機では、橋梁、鉄橋、屋外建築物等、大型の建築物の外観検査に用いる場合に、死角となる部分の外観検査ができない問題があった。
【0026】
本発明は、無人航空機による建築物の外観検査において、無線信号や測位信号が受信できない死角となる部分でも、検査に必要となる飛行ルートを確実に飛行して検査を行える建築物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題に鑑み、本発明の建築物検査装置は、操縦者による操作される操縦装置と、
前記操縦装置からの直接的な操縦装置無線信号による操縦を受けて飛行する親機となる無人航空機(以下、「親機」という)と、
親機からの親機無線信号による操縦を受けて飛行する子機となる無人航空機(以下、「子機」という)と、を備え、
親機は、操縦装置無線信号が到達する非死角領域を飛行可能であり、
子機は、操縦装置無線信号が到達困難な死角領域を飛行可能であり、
親機は、
子機を撮像する子機撮像部と、
子機撮像部での子機画像を、操縦装置に送信する画像送信部と、
を、備え、
前記子機撮像部は、範囲枠を含めて前記子機を撮像し、前記範囲枠と前記子機とを重畳した画像を、前記子機画像とし、
前記画像送信部は、前記範囲枠と前記子機とが重畳された前記子機画像を、前記操縦装置に送信し、
前記操縦装置は、前記子機画像に基づいて、前記子機が前記範囲枠から外れている場合には、前記親機に、前記子機を前記範囲枠に戻すための調整信号を含む前記操縦装置無線信号を送信し、前記親機は、当該操縦装置無線信号を前記親機無線信号に変換して、前記子機に送信し、
前記調整信号は、前記子機の位置、前記子機の飛行経路および前記子機の姿勢の少なくとも一つを調整する要素を含み、
前記子機は、前記親機無線信号に基づいて、前記子機の飛行位置を調整して、前記範囲枠に飛行位置を戻し
前記操縦装置は、前記親機を介して、前記子機を間接的に操縦可能である、建築物の外観を検査する。

【発明の効果】
【0028】
本発明の建築物検査装置は、親機となる無人航空機と子機となる無人航空機の組み合わせに基づき、操縦者は、無線信号の到達する範囲で飛行する親機の操縦を通じて、死角領域にある子機を間接的に操縦できる。この子機の操縦により、死角領域でも、無人航空機を操縦して飛行させることができる。この操縦に基づく飛行によって、死角領域でも、無人航空機による外観検査が可能となる。
【0029】
また、親機は子機の動画を撮像しながら画像における所定領域から外れると、操縦者は、親機を介して子機の位置を所定領域内部に調整する。この調整だけで、死角領域にある子機を、適切な飛行ルートで飛行させることができる。この日鉱によって、死角領域での外観検査を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】建築物の一例としての渓谷に建設された橋梁の写真である。
図2】本発明の実施の形態1における建築物と建築物検査装置とを示す模式図である。
図3】本発明の実施の形態1における親機の内部ブロック図である。
図4】本発明の実施の形態1における子機の内部ブロック図である。
図5】本発明の実施の形態1における子機画像の模式図である。
図6】子機が範囲枠から外れている状態の子機画像の模式図である。
図7】本発明の実施の形態1における操縦装置の内部ブロック図である。
図8】本発明の実施の形態1における子機の内部ブロック図である。
図9】本発明の実施の形態2における操縦装置のブロック図である。
図10】本発明の実施の形態2における子機画像の模式図である。
図11】本発明の実施の形態2における子機画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1の発明に係る建築物検査装置は、操縦者による操作される操縦装置と、
操縦装置からの直接的な操縦装置無線信号による操縦を受けて飛行する親機となる無人航空機(以下、「親機」という)と、
親機からの親機無線信号による操縦を受けて飛行する子機となる無人航空機(以下、「子機」という)と、を備え、
親機は、操縦装置無線信号が到達する非死角領域を飛行可能であり、
子機は、操縦装置無線信号が到達困難な死角領域を飛行可能であり、
親機は、
子機を撮像する子機撮像部と、
子機撮像部での子機画像を、操縦装置に送信する画像送信部と、
を、備え、
操縦装置は、子機画像に基づいて、子機が所定領域から外れている場合には、親機に、子機を所定領域に戻すための操縦装置無線信号を送信し、親機は、当該操縦装置無線信号を親機無線信号に変換して、子機に送信し、
子機は、親機無線信号に基づいて、その飛行位置を調整する。
【0032】
この構成により、死角領域でも無人航空機による建築物の外観画像を撮像できる。
【0033】
本発明の第2の発明に係る建築物検査装置では、第1の発明に加えて、親機および子機は、建築物の周辺を飛行し、
非死角領域は、建築物の周辺において、操縦装置無線信号が到達できる領域であり、
死角領域は、建築物の周辺において、操縦装置無線信号が到達困難な領域である。
【0034】
この構成により、死角領域で操縦装置からの信号が届かない場合でも、子機は親機によって適切な飛行ルートで飛行できる。
【0035】
本発明の第3の発明に係る建築物検査装置では、第1または第2の発明に加えて、親機および子機は、測位信号を受信可能であり、
死角領域は、測位信号を受信困難な領域であり、
子機は、この死角領域を、親機無線信号に基づいて飛行可能である。
【0036】
この構成により、死角領域で測位信号を受信できない場合でも、子機は親機によって適切な飛行ルートで飛行できる。
【0037】
本発明の第4の発明に係る建築物検査装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、建築物は、橋梁、鉄橋および屋外建築物の少なくとも一つを含み、
死角領域は、橋梁および鉄橋の底部、屋外建築物の裏側を含む。
【0038】
この構成により、橋梁などのように、死角領域ができてしまう建築物であっても、そのほぼ全ての外観画像を撮像することができる。
【0039】
本発明の第5の発明に係る建築物検査装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、子機撮像部は、所定領域の範囲を示す範囲枠を含めて子機を撮像し、範囲枠と子機とを重畳した画像を、子機画像とし、
画像送信部は、範囲枠と子機とが重畳された子機画像を、操縦装置に送信する。
【0040】
この構成により、子機の位置調整を、より容易かつ確実に行える。
【0041】
本発明の第6の発明に係る建築物検査装置では、第5の発明に加えて、操縦装置は、範囲枠から子機が外れている場合に、子機を範囲枠に戻すための操縦装置無線信号を、親機に送信する。
【0042】
この構成により、範囲枠と子機との位置対比に基づいて、子機をあるべき飛行ルートや位置に調整することができる。
【0043】
本発明の第7の発明に係る建築物検査装置では、第6の発明に加えて、操縦装置は、子機の位置を調整する子機調整部を更に備え、
子機調整部は、範囲枠から子機から外れている場合に、子機を範囲枠内に戻すための操縦装置無線信号を自動で生成する。
【0044】
この構成により、範囲枠を利用して、確実に子機をあるべき飛行ルートや位置に調整することができる。
【0045】
本発明の第8の発明に係る建築物検査装置では、第6の発明に加えて、操縦装置は、操縦者によって操縦され、
操縦者は、範囲枠から子機が外れている場合に、子機を範囲枠内に戻すための操縦を行うことで、操縦装置無線信号を、親機に送信し、
親機は、受信した操縦装置無線信号を親機無線信号に変換して、子機に送信する。
【0046】
この構成により、操縦装置の操縦により、子機の位置や飛行ルートを適切に調整できる。
【0047】
本発明の第9の発明に係る建築物検査装置では、第7または第8の発明に加えて、子機は、親機で操縦装置無線信号から変換された親機無線信号に基づいて、測位信号が無い状態であっても、位置を調整することができる。
【0048】
この構成により、飛行プログラムに基づいて飛行する子機が、測位信号を失う死角領域でも、子機をあるべき飛行ルートや位置に調整できる。
【0049】
本発明の第10の発明に係る建築物検査装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、子機は、親機無線信号により、操縦装置から間接的な操縦が可能である。
【0050】
この構成により、操縦者あるいは使用者は、操縦装置のみを操作や把握することで、子機も含めたコントロールを実現できる。
【0051】
本発明の第11の発明に係る建築物検査装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、子機は、死角領域において、建築物の外観外観を撮像する撮像部を更に備える。
【0052】
この構成により、子機は死角領域も含めた建築物の外観画像を撮像できる。
【0053】
本発明の第12の発明に係る建築物検査装置では、第11の発明に加えて、子機は、外観画像を、親機に送信する。
【0054】
この構成により、撮像された外観画像は、親機あるいはそれを介して操縦装置において受信できる。結果として、外観画像に基づいて、建築物の問題発見ができる。
【0055】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0056】
(建築物)
図1は、建築物の一例としての渓谷に建設された橋梁の写真である。建築物100には、様々なものがあるが、一例としてこのような橋梁110がありえる。橋梁110は、図1の写真のように、渓谷に建設されていることが多い。あるいは、河川や海上に建設されている。このため、非常に大型であると共に、複雑な構造や多数の構造部材から構成されている。
【0057】
建設場所の特性(渓谷や河川など)により、橋梁110を目視しようと思っても、足場がなく困難である。勿論、検査装置を取り付けることも難しい。目視ではなく、外観の画像を撮像しようと思っても、人的作業では危険である。足場もなくかつ表面、底面、側面、内部空間など、複雑な構造を有するからである。これらすべてを目視あるいは人的作業で撮像することは困難である。
【0058】
図1は、渓谷に建設された橋梁110を示しているが、鉄橋や自然環境の屋外に建てられたビル、観測施設、観光施設、宿泊施設、寺社仏閣なども同様である。これらの建築物も、屋外に建設されており目視観察、検査装置の取り付け、人的作業による外観撮像は困難である。
【0059】
一方で、これらの建築物の外観検査を行うことは、損傷や損耗を早期発見するために重要である。これらの早期発見は、建築物のメンテナンス、建替え、破損の早期検出に役立つからである。また、法律や規則により、定期的な検査が義務付けられている建築物も多い。特に、橋梁や鉄橋などの公共の用に供される建築物は、安全のために定期的な検査が義務付けられている。
【0060】
一方で、図1の写真から分かるように、これらの建築物100は、作業者の足場環境が悪いだけでなく、底面や隠れた領域など、死角領域が存在する。死角領域は、例えば後述する無人航空機への操縦用の無線信号が到達しない領域であったり、いわゆるGPS信号である測位信号が到達できない領域であったりする。このような死角領域でも、外観検査は必要であり、従来技術で説明した無人航空機では、このような死角領域の外観検査が困難である状態があった。
【0061】
本発明の建築物検査装置は、このような死角領域も含めて外観画像の撮像を実現できる。
【0062】
また、建築物は、橋梁、鉄橋および屋外建築物などのいずれかである。後述する死角領域は、橋梁や鉄橋の底部であったり、屋外建築物の裏側などであったりする。
【0063】
(全体概要)
図2は、本発明の実施の形態1における建築物と建築物検査装置とを示す模式図である。図2は、建築物100を実際に検査するための外観撮像を行う建築物検査装置1を、建築物100との関係に合わせて示している。建築物検査装置1は、操縦装置2、操縦装置2からの直接的な操縦装置無線信号による操縦を受けて飛行する無人航空機(以下、「親機」という)である親機3と、親機3からの親機無線信号による操縦を受けて飛行する無人航空機である子機4とを、備える。
【0064】
図2では、建築物100の外観を撮像することで検査する建築物検査装置1が示されている。外観画像を撮像することで、撮像画像の解析により、建築物100の損傷や損耗、あるいは修理などの必要性に繋がる問題点を検出できるからだる。このため、図2では、親機3と子機4とが、建築物100の周囲を飛行している。
【0065】
親機3は、操縦装置2からの送信される操縦装置無線信号および測位信号を受信して飛行する。勿論、組み込まれている飛行プログラムに従って飛行してもよい。後者の場合でも、測位信号を受信することで、飛行プログラムに含まれる緯度経度情報を確認しながら飛行できる。勿論、飛行プログラムと操縦装置無線信号および測位信号のすべてに基づいて、親機3は飛行することができる。この場合には、操縦装置2が、親機3を操縦している状態とも言える。
【0066】
ここで、建築物100は、上述したように死角となる死角領域と、死角とはならない非死角領域を有する。死角領域は、操縦装置2からの操縦装置無線信号が到達しない(受信できない領域)領域である。また、死角領域は、測位信号が到達しない(受信できない領域)領域である。非死角領域は、この死角領域と逆となる領域、すなわち、操縦装置無線信号が到達し、測位信号が到達する領域である。すなわち、操縦装置2による操縦装置無線信号で操縦可能な領域であり、飛行プログラムあるいは操縦装置無線信号により飛行できる領域である。このとき、測位信号を受けて飛行位置を調整できる領域が非死角領域である。
【0067】
親機3は、この非死角領域を飛行する(もちろん、死角領域を飛行することを除外する意図ではない。飛行としては死角領域も可能であるが、建築物検査装置1としての検査を行うために、親機3は、非死角領域を飛行する)。
【0068】
子機4は、死角領域を飛行可能であり飛行する(もちろん、非死角領域も飛行可能であるが、建築物検査装置1としての検査を行うために、子機4は、死角領域を飛行する)。
【0069】
図2では、親機3が非死角領域を飛行し、子機4が死角領域を飛行して、後述するように建築物100の外観画像の撮像を、もれなく行えることを示している。すなわち、建築物検査装置1は、親機3と子機4とを備え、それぞれが建築物100の周辺を飛行している。
【0070】
図3は、本発明の実施の形態1における親機の内部ブロック図である。図3では、親機3の内部要素を分かりやすく図示するための表示の仕方をしている。親機3は、信号受信部31、信号変換部32、子機撮像部33、画像送信部34を備える。
【0071】
子機撮像部33は、子機4を撮像する。特に、図2のように親機3と子機4とが建築物100の周囲を飛行している状態で、子機撮像部33は、飛行している子機4を撮像する。画像送信部34は、子機撮像部33で撮像された子機画像を操縦装置2に送信する。信号受信部31は、操縦装置2からの操縦装置無線信号および測位信号を受信する。信号受信部31で受信された信号に基づいて、親機3は操縦されつつ飛行する。
【0072】
また、信号受信部31は、操縦装置2からの操縦装置無線信号であって後述するように子機4を所定領域に戻すための操縦装置無線信号を受信する。信号受信部31は、この調整信号を含む操縦装置無線信号(以下、「調整信号」という)を、信号変換部32に出力する。信号変換部32は、この調整信号を子機4の操縦に繋がる親機無線信号に変換する。さらに、この変換された親機無線信号を、子機4に送信する。
【0073】
ここで、所定領域とは、子機4が非死角領域を飛行している際に、飛行すべき領域である。子機4は、死角領域を飛行しているので、測位信号や操縦装置無線信号に基づいて詳細な位置検出をしながら自己の位置制御を自身で行えない。飛行プログラムに基づいて飛行するが、測位信号などの受信を失うことで、飛行位置が不正確となりえる。所定領域から外れている状態は、この飛行位置が不正確(不適切)である状態である。
【0074】
調整信号は、子機4がこの所定領域から外れている場合に、この所定領域に子機4を戻すための指示信号である。親機3が、この調整信号を親機無線信号に変換して子機4に送信する。子機4は、この親機無線信号に基づいて、その飛行位置を調整できる。調整することで、子機4は、あるべき飛行位置を飛行するようになる。
【0075】
ここで、子機4は、図4に示されるように撮像部43を備える。撮像部43は、飛行しながら、建築物100の外観を撮像する。この撮像によって、建築物の外観画像を得ることができ、建築物100の外観検査を行うことができる。このとき、子機4は、死角領域にある場合でも、調整信号によって適切な飛行位置を飛行しながら、建築物100の外観画像を撮像できる。非死角領域では、当然に建築物100の外観画像を撮像できる。
【0076】
これにより、子機4は、建築物100の外観画像を余すことなく撮像することができる。結果として、外観検査を全体的かつ確実に行うことができる。
【0077】
図4は、本発明の実施の形態1における子機の内部ブロック図である。図3の親機3の内部ブロック図と同様に、子機4の内部構成の要素を分かりやすく示している。
【0078】
子機4は、信号受信部41、調整部42、および撮像部43を備える。撮像部43が、上述したように、子機3が飛行しながら建築物100の外観を撮像する機能を実行する。勿論、建築物検査装置1としての機能の場合には、撮像部43は建築物100の外観画像を撮像するが、それ以外の場合には、他を撮像する機能を発揮してかまわない。
【0079】
信号受信部41は、親機3からの親機無線信号を受信する。この親機無線信号は、上述した調整信号でもあり、信号受信部41は、調整信号を受信する。信号受信部41は、受信した親機無線信号を調整部42に出力する。調整部42は、調整信号である親機無線信号に基づいて、子機4の位置を調整する。このとき、調整信号である親機無線信号は、子機4が所定領域内部に位置するように子機4の位置を調整する指示を含む信号である。これにより、調整部42は、子機4が所定領域内部にあるように調整できる。
【0080】
このとき、子機4の位置、子機4の飛行経路、子機4の姿勢など、子機4があるべき所定領域内での飛行を行うように、必要となる種々の要素が調整されればよい。これらの調整により、子機4は、予定している飛行ルートを飛行することができる。この予定している飛行ルートは、子機4が建築物100の死角領域での必要となる外観画像を撮像するために必要となるルートである。
【0081】
この飛行ルートから外れた場合でも、親機3からの調整信号によりその飛行ルートが調整される。これにより、子機4は、測位信号や操縦装置無線信号を受信できない状態でも、予定された飛行ルートを飛行できる。この結果、子機4は必要となる外観画像をもれなく撮像することができる。
【0082】
なお、子機4の信号受信部41は、非死角領域においては操縦装置2からの操縦装置無線信号や測位信号を受信することが可能である。この受信に基づいて、子機4は、操縦装置2により飛行したり、飛行プログラムに基づいて飛行したりすることもできる。
【0083】
(親機と子機の飛行)
親機3と子機4は、図2のように建築物100の周囲(周辺)を飛行する。建築物検査装置1は、親機3と子機4とをセットとして飛行させて、死角領域のある建築物100の全体をもれなく外観画像を撮像する。親機3は、子機4を制御する。子機4は、死角領域での建築物100の外観画像を撮像する。勿論、子機4は、非死角領域での建築物100の外観画像を撮像する。ただ、建築物検査装置1としては、非死角領域では親機3が外観画像を撮像して、死角領域では子機4が外観画像を撮像するように役割分担してもよい。勿論、子機4が、死角領域および非死角領域のいずれにおいても、外観画像を撮像することでもよい。
【0084】
建築物検査装置1は、このように親機3と子機4とがセットになっている。セットになることで、操縦装置2による操縦ができない、あるいは測位信号を受信できないことで死角領域が生じる建築物100に対しても、外観画像の撮像を実現できる。
【0085】
ここで、非死角領域は、建築物100の周辺において、親機3や子機4のような無人航空機にとって操縦装置2からの操縦装置無線信号が到達できる領域である。また、無人航空機に測位信号が到達できる領域である。この非死角領域においては、親機3でも子機4でも、操縦装置2による操縦での飛行や、測位信号を利用して飛行プログラムによる飛行が可能である。
【0086】
死角領域とは、建築物100の周辺において、親機3や子機4のような無人航空機にとって、操縦装置2からの操縦装置無線信号が到達できない領域である。また、無人航空機に測位信号が到達できない領域である。このため、操縦装置2からの操縦装置無線信号によって、正確な飛行ルートを制御されることができない。また、飛行プログラムが組み込まれていても、測位信号を受信できないことで正確な飛行ルートでの飛行が困難である。
【0087】
建築物検査装置1を構成する親機3は、非死角領域を飛行して操縦装置2からの操縦を確実に受けることができる。子機4は、死角領域を飛行して、死角領域での建築物100の外観画像を撮像する。上述したように、子機4は、親機3からの親機無線信号に含まれる調整信号を受けて、死角領域であっても、飛行すべき飛行ルートでの飛行を実現・維持できる。
【0088】
(親機)
親機3は、上述したように、操縦装置2からの操縦を受けつつ非死角領域を飛行する。このとき、非死角領域を飛行しつつ死角領域を飛行する子機4を制御できるような飛行ルートで飛行する。これは、操縦装置2からの操縦によってもよいし、あらかじめ組み込まれた飛行プログラムによってもよい。あるいは、飛行プログラムに従って飛行しつつも、操縦装置2による操縦も併せて受けて飛行ルートを飛行することでもよい。
【0089】
信号受信部31は、操縦装置無線信号および測位信号を受信する。この受信により、上述のように飛行ルートを正確に飛行できる。勿論、親機3が飛行中に風を受けたりして、本来の飛行ルートを外れることもあり得る。この場合には、操縦装置2からの操縦装置無線信号により、その飛行ルートや位置を修正することができる。
【0090】
親機3は、セットとして飛行している子機4を撮像する子機撮像部33を備える。子機撮像部33は、図5のように所定領域の範囲を示す範囲枠50を含めて子機4を撮像する。この範囲枠50と子機4とを重畳した画像を、子機画像60として、子機撮像部33は、撮像する。撮像された子機画像60は、画像送信部34を介して、操縦装置2に送信される。
【0091】
図5は、本発明の実施の形態1における子機画像の模式図である。
【0092】
画像送信部34は、図5に示さるように、子機4と範囲枠50とが重畳した子機画像60を送信する。このため、操縦装置2は、この範囲枠50も合わさった子機画像60を受信できる。
【0093】
この範囲枠50は、子機4が本来飛行してほしい飛行ルートを示すものである。範囲枠50内部に子機4が収まっていない場合には、子機4が飛行ルートから外れている状態を示す。すなわち、範囲枠50から子機4が外れている子機画像60は、子機4が適切な飛行ルートから外れている状態を示している。
【0094】
図6は、子機が範囲枠から外れている状態の子機画像の模式図である。
【0095】
子機4が本来の飛行ルートから外れた場合には、この図6のような子機画像60が操縦装置2に送信される。この子機画像60を受信した操縦装置2は、子機4が飛行ルートから外れたことを把握できる。
【0096】
(操縦装置)
操縦装置2は、親機3を操縦すると共に、子機4が所定領域から外れている場合に、子機4の位置や飛行ルートを調整する。親機3を操縦するために、操縦装置無線信号を送信する。これは、親機3の飛行ルートを制御するための信号である。親機3は、信号受信部31でこの操縦装置無線信号を受信することで、適切な飛行ルートを飛行し続けることができる。
【0097】
また、操縦装置2は、子機4の調整を操縦することができる。操縦装置2は、親機3から図5図6に示すような子機画像60を受信することができる。このとき、図5のように、範囲枠50内部に子機4が収まっている場合には、操縦装置2は、子機4を調整する必要はない。これに対して、図6のように、範囲枠50内部から子機4が外れている場合には、操縦装置2は、子機4を範囲枠50内部(すなわち、所定範囲)に戻すための調整信号を含む操縦装置無線信号を生成して親機3に送信する。すなわち、親機3は、調整信号を受信する。
【0098】
上述したように、親機3は、信号変換部32において調整信号を、子機4を制御するための親機無線信号に変換する。親機無線信号は、あたかも親機3が子機4を操縦制御しているかのように、子機4の飛行ルートや位置を制御できる。言い換えれば、操縦装置2は、親機3を介して間接的に子機4を操縦している(制御している)状態である。
【0099】
図7は、本発明の実施の形態1における操縦装置の内部ブロック図である。操縦装置2の備える要素を示している。操縦装置2は、受信部21、子機調整部22、送信部23、操縦部24を備える。
【0100】
受信部21は、親機3が送信する子機画像60を受信する。受信部21は、受信した子機画像60を、子機調整部22に出力する。子機調整部22は、図5図6などの子機画像60を認識できる。子機画像60は、図5図6に示されるように、子機4と範囲枠50とが重畳されている。
【0101】
子機調整部22は、この子機画像60に基づいて、子機の位置を調整する調整信号を生成する。子機調整部22は、図6のように子機4が範囲枠50から外れている場合に、子機4を範囲枠50の内部に戻すための調整信号を自動で生成する。図6の場合には、子機4が範囲枠50の右側にはみ出している。この場合、子機調整部22は、子機4を左側に移動させる調整信号を生成する。
【0102】
この調整信号は既述したように、子機4を調整するための操縦装置無線信号である。すなわち、子機調整部22は、この操縦装置無線信号を自動で生成する。子機調整部22は、生成した調整信号(操縦装置無線信号)を、送信部23に出力する。送信部23は、この調整信号を親機に操縦装置無線信号として送信する。勿論、送信部23は、親機3を操縦するための操縦装置無線信号も、親機3に送信する。
【0103】
送信部23が送信した調整信号は、親機3で親機無線信号に変換されて子機4に送信される。これにより、操縦装置2は、親機3を介して子機4を操縦できる。操縦装置2は、子機調整部22での調整信号を含む操縦装置無線信号を自動生成することで、子機4の飛行ルートや位置を、親機3を介して自動調整できる。
【0104】
ここで、操縦装置2は、操縦者による操縦を受け付けるデバイスであってもよい。この場合には、操縦装置2は、操縦者によって操縦される。操縦装置2には、無人航空機の飛行ルートや位置を制御する操縦部24が備わっている。例えば、操縦者は、操縦部24を介して、X軸、Y軸、Z軸などを操作する。操縦者は、この制御部24を操作することで、無人航空機を操作する。
【0105】
この操縦部24は、操縦装置2により親機3を操縦する。あわせて、子機4に対する調整信号を生成することでの子機4を間接的に操縦する。すなわち、受信部21で受信された子機画像60を操縦者が目視で確認する。このとき、図6のように、範囲枠50から子機4が外れていれば、操縦者は操縦部24を操縦する。図6の場合には、子機4を左側に移動させるように、操縦者は操縦部24を操縦する。
【0106】
操縦部24は、この操縦者の操縦を受けて、調整信号を生成する。この調整信号は、子機4の飛行ルートや位置を調整する操縦装置無線信号である。自動生成する場合と同意味の調整信号が生成されるが、操縦者による操縦部24の操縦により調整信号が生成されるパターンである。
【0107】
送信部23は、この操縦部24で生成された調整信号を含む操縦装置無線信号を送信する。これにより、子機4は、その飛行ルートや位置を調整される。すなわち、子機4は、範囲枠50の内部に戻ることになり、所定領域の飛行に戻ることができる。このとき、親機3は、調整信号を含む操縦装置無線信号を、子機4を制御する親機無線信号に変換して、子機4に送信する。
【0108】
このように、操縦装置2は、自動での調整信号の生成を行って親機3に操縦装置無線信号を送信してもよいし、操縦部24が操縦者によって操縦されて調整信号が生成されて親機3に操縦装置無線信号が送信されてもよい。いずれの場合でも、調整信号である操縦装置無線信号を受信した親機3は、これを親機無線信号に変換して子機4に送信する。この親機無線信号を受けた子機4は、適切な飛行ルートや位置に調整する。
【0109】
(子機)
子機4は、親機3で操縦装置無線信号から変換された親機無線信号に基づいて、自身の位置や飛行ルートを所定領域内に調整する。子機4が死角領域を飛行して、操縦装置無線信号を受信できない状態であっても、親機無線信号に基づいて、その位置や飛行ルートを調整できる。あるいは、子機4が死角領域を飛行して測位信号を受信できない状態であっても、親機無線信号に基づいて、その位置や飛行ルートを調整できる。
【0110】
すなわち、子機4は、操縦装置2からの操縦装置無線信号や、飛行プログラムに対応する測位信号を受信できない状態でも、親機3からの親機無線信号で適切な飛行ルートでの飛行を行える。子機4が死角領域にあっても、親機3とは通信可能な位置にある。これにより、子機4は、親機3を介して操縦装置2からの間接的な操縦が可能である。
【0111】
図4に示すように、子機4は、撮像部43を備える。子機4は、建築物100の周辺を飛行しながら、建築物100の外観画像を撮像する。このとき、子機4は、死角領域のみの外観画像を撮像し、非死角領域においては、親機4が外観画像を撮像してもよい。あるいは、子機4が、死角領域および非死角領域のすべてで外観画像を撮像してもよい。
【0112】
親機3の子機撮像部33は、親機3が非死角領域での外観画像を撮像する場合に、この撮像のために用いられればよい。勿論、親機3が、外観画像を撮像する別の撮像部を備えていることでもよい。
【0113】
また、建築物検査装置1は、操縦装置2に加えて、親機3と子機4との組み合わせである。ここで、親機3と子機4は、既述したような役割の違い、機能や要素の違いを備えている。しかしながら、それぞれの備える要素は、親機3および子機4のそれぞれが共通して備えていてもよい。すなわち、同じ機能や要素を備える無人航空機が、建築物検査装置1として使用される際に、一方が親機3として他方が子機4として取り決められれば良い。
【0114】
子機4は、撮像部43で撮像した外観画像を、図8のように送信部44を介して親機3に送信できる。図8は、本発明の実施の形態1における子機の内部ブロック図である。
【0115】
子機4は、送信部44を備える。この送信部44は、撮像部43で撮像された建築物100の外観画像を親機3に送信する。親機3に送信されることで、子機4が撮像した建築物100の外観画像を最終的に操縦装置2に送信することができる。これにより、操縦装置2を操縦している操縦者が、建築物100の外観画像を視認することができる。
【0116】
例えば、操縦装置2に表示画面が備わる。この表示装置は、受信した建築物100の外観画像を表示する。外観画像は、静止画でも動画でもよい。この表示装置に表示される外観画像を操縦者あるいは検査作業者が目視することで、建築物100の損傷や損耗の検査を行える。あるいは、表示装置において、種々の画像処理(色補正、周波数補正、波長変換画像への変換など)した外観画像が表示されてもよい。
【0117】
このような画像処理された外観画像の表示を観察することにより、建築物100の問題点を、より確実に発見することができるようになる。
【0118】
あるいは、親機3に送信された外観画像、あるいは親機3から操縦装置2に送信された外観画像を記憶装置が記憶することでもよい。例えば、ハードディスクドライブ、磁気記憶装置、半導体記憶装置などの電子的、磁気的、光学的な機構により、受信された外観画像が記憶される。
【0119】
このように記憶されることで、別の場所で外観画像の視認検査や画像処理検査を行うこともできる。このようにすれば、建築物検査装置1による親機3などの飛行による撮像作業と、撮像された外観画像の実際の確認作業とを別に行うことができる。これにより、作業効率が向上し、作業精度も向上する。
【0120】
また、親機3や操縦装置2から、ネットワーク接続されたサーバーに、外観画像が送信されることでもよい。この場合には、サーバーに外観画像が蓄積される。この蓄積された外観画像を、視認検査や画像処理検査など行うことができる。これにより、建築物100の損傷や損耗などの問題を高い精度で検出できる。また、メンテナンスなどにつなげることもできる。
【0121】
以上の様に、実施の形態1における建築物検査装置1は、死角領域のある建築物であっても、確実にその外観画像を得ることができる。
【0122】
(実施の形態2)
【0123】
次に、実施の形態2について説明する。
【0124】
(判定部)
【0125】
図9は、本発明の実施の形態2における操縦装置のブロック図である。図9の操縦装置2は、判定部25を更に備えている。受信部21は、子機画像に加えて、子機4が撮像した建築物100の外観画像も受信できる。判定部25は、受信部21が受信した外観画像に基づいて建築物100の問題点を判定する。
【0126】
例えば、判定部25は、外観画像に建築物のクラックや剥離などが含まれていることを検出する。さらに、この検出結果に基づいて、判定部25は、建築物100に問題があることを判定する。クラックや薄利であれば、損傷や将来的な破損に繋がる問題点を判定する。あるいは、メンテナンスが必要であるとの判定を行う。あるいは、早期の補修が必要であるとの判定を行う。
【0127】
このように、判定部25が操縦装置2に備わることで、検査の目的である問題点の検出判定も行える。
【0128】
(具体的な子機調整の例示)
実施の形態1で説明したように、調整信号である操縦装置無線信号が親機無線信号に変換されて、死角領域で飛行する子機4の飛行ルートや位置が調整される。ここでは、その具体的な調整についての一例を説明する。
【0129】
図10は、本発明の実施の形態2における子機画像の模式図である。図10の子機画像60では、子機4が範囲枠50の右側に外れて範囲枠50からはみ出している。このような場合には、操縦装置2は(操縦部24での操縦者による操縦でも、子機調整部22での自動調整であっても)、子機4を矢印Aのように左側に移動させるように調整信号を生成する。
【0130】
図11は、本発明の実施の形態2における子機画像の模式図である。図11の場合には、子機4が範囲枠50の左斜め上にはみ出している。この場合には、操縦装置2は、子機4を矢印Bのように右斜め下方向に移動させるように調整信号を生成する。
【0131】
範囲枠50と子機4とが重畳された子機画像60であることにより、操縦装置2は、いずれの方向に子機4を調整すればよいかを確実かつ即座に判断できる。これにより、子機4の飛行ルートや位置の調整が即座にかつ確実に行われる。また、不要な調整飛行を抑制できるので、子機4の飛行でのふらつきを防止できる。この防止により、子機4の想定外の落下や衝突などを防止できる。
【0132】
また、ふらつきなどの防止により、子機4が撮像する建築物100の外観画像のピンとずれや撮像範囲のずれが生じることを低減できる。
【0133】
このように、範囲枠50と子機4とがセットで撮像されて、重畳した子機画像60であることで、操縦装置2は最適かつ最短で、子機4の飛行ルートや位置を調整することができる。また、範囲枠50との相対的位置関係で調整すればよいので、子機4が測位信号を受けることができなくても、必要な位置調整が実現できる。
【0134】
以上の様に、実施の形態2における建築物検査装置1は、建築物100の外観画像からの問題点も判定できる。また、確実かつ容易に位置調整を行える。
【0135】
なお、実施の形態1~2で説明された建築物検査装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0136】
1 建築物検査装置
2 操縦装置
21 受信部
22 子機調整部
23 送信部
24 操縦部
25 判定部
3 親機
31 信号受信部
32 信号変換部
33 子機撮像部
34 画像送信部
4 子機
41 信号受信部
42 調整部
43 撮像部
44 送信部
50 範囲枠
60 子機画像
100 建築物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11