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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】靴底洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 23/02 20060101AFI20240410BHJP
   A47L 23/26 20060101ALI20240410BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A47L23/02 A
A47L23/26
B08B3/04 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020084906
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178010
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391049150
【氏名又は名称】コトヒラ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】寺島 直道
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特許第6430175(JP,B2)
【文献】特開平10-155728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0115717(US,A1)
【文献】特開2003-235782(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107898423(CN,A)
【文献】特開2010-017705(JP,A)
【文献】特開2008-114141(JP,A)
【文献】実開昭55-084029(JP,U)
【文献】特開2010-082085(JP,A)
【文献】実開平02-059769(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-13/00
A47L 23/02
A47L 23/22
A47L 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽の内部において回転駆動されるベース板に毛束が所定配置で取付けられたブラシを備え、前記毛束に洗浄水を掛けながら前記ブラシを回転させた状態で靴底を前記毛束に接触させて洗浄を行う靴底洗浄装置であって、
前記ブラシは、前記ベース板上において軸心を一致させて回転可能に構成されることにより相対的に静止可能に構成されて、靴底を当接させるようにして足を置く足置き部を有し、
前記足置き部は、靴底を当接させる上部部材と前記ベース板に固定される下部部材とがスラスト軸受を介して連結された構成を備えていること
を特徴とする靴底洗浄装置。
【請求項2】
前記ブラシは、前記ベース板が水平面内で回転するように配設されていること
を特徴とする請求項1記載の靴底洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽は、左右両側に前記ブラシが配設されると共に、底面において左右両側の前記ブラシに挟まれた中央位置に下方に掘り下げたゴミ受け溝を有すること
を特徴とする請求項1記載の靴底洗浄装置。
【請求項4】
前記ブラシとして、前記洗浄槽の左側において前後方向に二つ並設され、共に同一方向に回転する左側ブラシと、前記洗浄槽の右側において前後方向に沿って二つ並設され、共に同一方向に回転する右側ブラシとが設けられており、
前記左側ブラシと、前記右側ブラシとは、相互に逆方向に回転するように構成されており、
前記洗浄槽は、前記洗浄槽内で前記ベース板の下面が浸る状態となるように前記洗浄水の貯留量が設定されていること
を特徴とする請求項3記載の靴底洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄槽は、前記左側ブラシが設けられる平面視矩形領域の四隅、および前記右側ブラシが設けられる平面視矩形領域の四隅、の全てもしくは一部の位置において、隅部を挟む二辺を結ぶように配置された流れ制御板を有すること
を特徴とする請求項4記載の靴底洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄槽は、前記左側ブラシの左側、前記左側ブラシと前記右側ブラシとの間、および前記右側ブラシの右側、の少なくとも三箇所に、平面視においてそれぞれの前記ブラシの径方向外縁部が所定寸法覆われる形状の飛散防止カバーを有すること
を特徴とする請求項4または請求項5記載の靴底洗浄装置。
【請求項7】
前記毛束は、複数本の単位束が、前記ベース板において前記載置台の配設領域を除いて中心から径方向外方へ向かう列状に配置され、且つ、前記列が周方向に5~8列配置された構成であること
を特徴とする請求項1記載の靴底洗浄装置。
【請求項8】
前記ベース板は、上面が中心から径方向外方へ向かって所定角度で下方に傾斜する形状に構成されていること
を特徴とする請求項7記載の靴底洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄槽は、前記毛束に掛ける前記洗浄水を送出する送出管を有し、
前記送出管は、それぞれの前記ブラシの側方位置において出水口を前記ベース板の中心方向に向けて配設されていること
を特徴とする請求項1記載の靴底洗浄装置。
【請求項10】
使用者が把持する手すりを前記洗浄槽に対して右側もしくは左側に設けることによって、前後方向に複数台連接可能で、且つ、連接された状態において前記使用者が前記洗浄槽の上を前後方向に移動可能に構成されていること
を特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の靴底洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底洗浄装置に関し、さらに詳細には、毛束が取付けられたブラシを回転させた状態で靴底に接触させて洗浄を行う靴底洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品の調理・加工を行う現場、農作業や土木作業を行う現場等、多様な場面において靴底の洗浄を行う靴底洗浄装置が用いられている。一例として、本願出願人の開発に係る靴底洗浄装置が開示されている(特許文献1:特許第6430175号公報参照)。この装置は、傾斜させて並設したブラシに洗浄水を掛けながら回転させると共に、当該ブラシに靴底を接触させて汚れを落とす構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6430175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願発明者が鋭意研究した結果、特許文献1に例示される靴底洗浄装置においては、ブラシの中央部に設けられる毛束は動作量が小さいため、洗浄能力が低く、靴底の汚れが付着したまま残留し易いことが判明した。このことに起因して、次の装置使用者の靴底に汚れが再付着し易い問題があった。さらに、中央部の毛束の根本(ベース板部分)に汚れが落下してしまうと、そのまま残留してしまい、不衛生となり易い問題があった。特に、複雑な靴底形状に対しては、洗浄力が低下してしまう問題があった。
【0005】
また別の観点では、回転するブラシに靴底を接触させる際に使用者の姿勢が安定しない問題があった。さらに、靴底でブラシの毛束を踏み込んでしまうことによって、毛束が変形してしまい、汚れを落とす効果が低減するばかりでなく、使用寿命が短くなる問題があった。
【0006】
さらに、片足ずつの洗浄を行う構成の場合、洗浄時間が長くなってしまう問題があった。これに対して、時間短縮を図るために両足での洗浄を行う構成とすると、両足共にブラシの上に乗らざるを得ず、使用者の姿勢が不安定になってしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の複合的な問題の解決を図るためになされたものであり、複雑化する靴底の形状に対しても洗浄力が高く、また、ブラシの毛束に靴底の汚れが付着したまま残留してしまうことを防止でき、次の使用者への汚れの再付着の防止および衛生面の向上を可能とし、さらに、使用者の姿勢の安定化およびブラシの使用寿命の長期化を可能とする靴底洗浄装置を実現することを目的とする。
【0008】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
開示の靴底洗浄装置は、洗浄槽の内部において回転駆動されるベース板に毛束が所定配置で取付けられたブラシを備え、前記毛束に洗浄水を掛けながら前記ブラシを回転させた
状態で靴底を前記毛束に接触させて洗浄を行う靴底洗浄装置であって、前記ブラシは、前記ベース板上において軸心を一致させて回転可能に構成されることにより相対的に静止可能に構成されて、靴底を当接させるようにして足を置く足置き部を有することを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複雑化する靴底の形状に対しても洗浄力の高い靴底洗浄装置が実現できる。また、ブラシの毛束に靴底の汚れが付着したまま残留してしまうことを防止できるため、次の使用者への汚れの再付着の防止および衛生面の向上を図ることができる。また、靴底の洗浄を行う際に、使用者の姿勢の安定化を図ることができる。また、ブラシの使用寿命の長期化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置の例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置の例を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置の洗浄槽の例を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置の洗浄槽における飛散防止カバーを取外した状態の平面図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置のブラシの例を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置のブラシの例を示す正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置のブラシの例を示す平面図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置を複数台連接させた構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1図2は本発明の実施形態に係る靴底洗浄装置1の例を示す概略図であって、図1は左上方から視た斜視図であり、図2は右上方から視た斜視図である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により靴底洗浄装置1の上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0013】
靴底洗浄装置1は、前述の通り、例えば、食品の調理・加工を行う現場、農作業や土木作業を行う現場等において、靴底の洗浄を行うために用いられる装置である。装置概要として、ブラシの毛束に洗浄水を掛けながら回転させた状態として、靴底を接触させることにより洗浄を行う構成となっている。以下、各構成について詳しく説明する。
【0014】
図1図2に示すように、本実施形態に係る靴底洗浄装置1は、本体部10に洗浄槽12を備えて構成されており、当該洗浄槽12の内部には、回転駆動されるブラシ20が設けられている。本体部10の内部には、ブラシ20を回転駆動させる駆動源14(例えば、電気モータ)および駆動等の制御を行う制御部16が設けられている。また、本体部10には、ブラシ20上に洗浄対象となる靴が配置されたことを検知するセンサ18(ここでは、赤外線センサ)が設けられている。その動作として、センサ18による靴が配置されたことの検知信号が制御部16に送信される。これを洗浄開始のトリガーとして、制御部16から駆動信号が送信され、あらかじめ設定された時間(例えば、15秒程度)、駆動源14が駆動されてブラシ20が回転駆動される共に、送出管22(後述)から洗浄水が送出される。なお、センサ18による自動起動に代えて、本体部10に起動スイッチを設けて使用者が起動およびその時間を操作する構成としてもよい(不図示)。
【0015】
なお、洗浄水として、水(水道水)が給水部42から装置内へ供給される。このとき、水の通流によるエジェクタ効果によって、液状の洗剤が洗剤供給部44から装置内へ吸引されて水(水道水)と混合される(ただし、水のみで洗浄を行う構成としてもよい)。あるいは、洗浄水として、水(水道水)に代えて、電解水(電解次亜水等)を使用することもできる。これにより、除菌効果を高めることができる。一方、洗浄に用いられて生じる排水は排水部46から装置外へ排出される。
【0016】
次に、洗浄槽12の概略図を図3図5に示し、ブラシ20の概略図を図6~9に示す。より詳しくは、図3は洗浄槽12の平面図であり、図4は洗浄槽12における飛散防止カバー24(後述)を取外した状態の平面図であり、図5図3におけるV-V線断面図である。また、図6はブラシ20の斜視図であり、図7はブラシ20の正面図であり、図8はブラシ20の平面図であり、図9図8におけるIX-IX線断面図である。
【0017】
本実施形態に係る洗浄槽12は、金属材料(例えば、ステンレス合金等)を用いて有底の箱状(すなわち、上面が開口する直方体状)に形成されている。一例として、洗浄槽12の左側において、ブラシ20が前後方向に二つ並設されており(左側ブラシ20L1、左側ブラシ20L2)、洗浄槽12の右側において、ブラシ20が前後方向に二つ並設されている(右側ブラシ20R1、右側ブラシ20R2)。
【0018】
ここで、ブラシ20(左側ブラシ20L1、左側ブラシ20L2、右側ブラシ20R1、右側ブラシ20R2)は、以下のように構成されている。具体的に、円盤状のベース板30の上面30aにおいて、径方向中心部の位置に軸心Cを一致させて足置き部32(後述)が設けられていると共に、足置き部32の配設領域を除く領域に毛束34が所定配置で取付けられている。
【0019】
このベース板30が、プーリ、チェーン等から構成される駆動機構(不図示)を介して、駆動源14により回転駆動される。これによれば、ベース板30上の毛束34を回転動作させる作用が得られ、当該毛束34の上部に靴底を接触させて洗浄すなわち汚れを落とすことができる。本実施形態においては、ベース板30が水平面内で回転するように配設されている。
【0020】
また、洗浄水を送出してブラシ20(ここでは、毛束34)に掛ける送出管22が、洗浄槽12に設けられている。具体的に、送出管22は、各ブラシ20(左側ブラシ20L1、左側ブラシ20L2、右側ブラシ20R1、右側ブラシ20R2)の側方位置において出水口22aをベース板30の中心方向に向けて配設されている。制御部16により洗浄水の送出量を適宜、制御することによって、当該洗浄水(図5中の破線で示す)を毛束34の所定位置(例えば、ベース板30における中心と外周との中間辺りの位置)に掛けることができる。これによれば、毛束34の先端(上端)に上方から洗浄水を供給することができる。したがって、洗浄水を先端に多く保持した状態で毛束34(先端)を靴底に接触させることができるため、洗浄効果をより一層、高めることができる。また、貯留水に浸漬させて行う洗浄ではなく、流水(掛け流し)による洗浄を行うことができるため、衛生面の向上を図ることができる。なお、各ブラシ20は、毛束34の先端位置の高さが全て同一となるように構成しているが、これに限定されるものではなく、高さが異なる構成としてもよい(不図示)。
【0021】
ここで、本実施形態に係るベース板30は、樹脂材料(例えば、塩化ビニル樹脂等)を用いて、外径150mm程度で、上面30aが中心(軸心C)から径方向外方へ向かって所定角度(例えば、3°程度)で下方に傾斜する形状(傾斜面)に構成されている。これによれば、ベース板30の中央部に足置き部32を設けて毛束34を取付けない構成と相まって、靴底に毛束34を接触させて落とした汚れが洗浄水と共に遠心力および重力の作用で傾斜面を流れ落ちてベース板30外へ排出され、ベース板30の中央部に残留しない効果が得られる。したがって、次の使用者への汚れの再付着の問題が解消でき、衛生面の向上を図ることができる。
【0022】
一方、毛束34は、樹脂材料(例えば、ポリプロピレン樹脂等)を用いて形成された全長40mm程度の毛(線状体)を複数本(例えば、10~20本程度)束ねた単位束としたうえで、当該単位束を、ベース板30上において足置き部32の配設領域を除いて中心から径方向外方へ向かう列状に配置させた構成となっている。一例として、この列が周方向に5~8列(本実施形態では、6列)配置された構成であることが好適である。本願発明者の研究によって、従来装置(特許文献1)における構成のように毛束が密集して配置されている場合、毛束がしならない状態となり、且つ、靴底が毛束の上に載ってしまう状態となり靴底の溝内に毛束が進入し難くなるため、洗浄効果が低くなることが判明した。これを解消するために、毛束を構成する毛を柔らかいものに変更する比較例を検討したところ、靴底の溝内に毛束が進入し易くなる反面、強固な汚れを落とす力が低くなり、結果として洗浄効果が低くなることが判明した。
【0023】
これに対して、上記の本実施形態に係る構成によれば、毛束34(ここでは、毛束34の列)の間隔を従来よりも広く設定することによって、毛束34のしなる空間を生み出すことができるため、毛束34のしなりを生じさせて洗浄作用を高めることができる。また、毛束34の密度が小さくなるため、靴底の溝内に毛束34が進入し易くなり、複雑な形状の靴底に対しても洗浄作用を高めることができる。さらに、毛束34に汚れが付着した場合であっても、毛束34のしなりが戻る際の勢いで飛ばされるため、毛束34に汚れが残留しない効果が得られる。したがって、次の使用者への汚れの再付着の問題が解消でき、衛生面の向上を図ることができる。
【0024】
ここで、ベース板30上に設けられる足置き部32は、上部部材32Aと下部部材32Bとが軸受32C(例えば、樹脂材料からなるスラスト軸受)を介して連結された構成を備えている。すなわち、この軸受32Cにより、ベース板30に対して回転可能となっている。一例として、上部部材32Aは、樹脂材料(例えば、塩化ビニル樹脂等)を用いて、上端に平面部を有し、内部に円柱状の空間部を有する外径50mm程度の半球状に形成されている。また、下部部材32Bは、金属材料(例えば、ステンレス合金等)を用いて、大径の円柱部の中心から小径の円柱部が立設された形状に形成されている。また、軸受32Cは、上部部材32Aの下面と、下部部材32Bの上面とで挟持される構成となっている。また、上部部材32Aの空間部の内壁と、下部部材32Bの小径の円筒部の外壁との間には、樹脂材料からなるブッシュ32Dが配設され、位置決めおよび摺動作用をなす構成となっている。
【0025】
上記の構成によれば、足置き部32(ここでは、上部部材32A)が、ベース板30上において軸心Cを一致させて回転可能に構成される。したがって、ベース板30を回転駆動させた際に、靴底を足置き部32の上部部材32Aに当接させることにより、回転するベース板30に対して、足置き部32(ここでは、上部部材32A)を相対的に静止させた状態とすることができる。すわなち、ベース板30の回転中に足置き部32(ここでは、上部部材32A)を静止させて、その上に使用者が足を置くことができる。
【0026】
ここで、軸受32C、およびブラシ20全体に印加される荷重を受けて回転可能に支持する軸受36(例えば、金属材料からなるラジアル軸受)は、いずれも使用者の想定体重を分散支持(ここでは、左側ブラシ20L1、20L2および右側ブラシ20R1、20R2の計四箇所による分散支持)が可能に構成されている。さらに前述の通り、ベース板30が水平面内で回転するように構成されている。なお、本体部10には、使用者が把持して、身体を安定させるための手すり50が設けられている。本実施形態おいては、手すり50を洗浄槽12に対して右側(左側でもよい)に設けることによって、靴底洗浄装置1を前後方向に複数台連接可能で、且つ、連接された状態において使用者が洗浄槽12の上を前後方向に移動可能に構成される(詳細は後述)。
【0027】
これらの構成によれば、使用者が靴を履いた状態で靴底を足置き部32に当接させるようにして足を置いた状態、すなわち、足置き部32の上に立った状態で、当該靴底に回転するブラシ20の毛束34を接触させて洗浄を行うことができる。したがって、左右両側の靴底を同時に洗浄できるため、洗浄作業の時間短縮を図ることができる。また、足置き部32により使用者の体重を支持する構成によって、従来のように靴底でブラシの毛束を踏み込んでしまうことによる毛束の変形や、使用寿命の低下といった問題も解消できる。
【0028】
また、本実施形態においては、二つの左側ブラシ20L1および20L2は共に同一方向に回転するように構成し、二つの右側ブラシ20R1および20R2は共に同一方向に回転するように構成し、且つ、左側ブラシ20L1および20L2と、右側ブラシ20R1および20R2とは、相互に逆方向に回転するように構成されている。具体的には、左側ブラシ20L1および20L2が時計回りに回転し、右側ブラシ20R1および20R2が反時計回りに回転する構成である(図4中に矢印Rで示す)。あるいは、左側ブラシ20L1および20L2が反時計回りに回転し、右側ブラシ20R1および20R2が時計回りに回転する構成でもよい(不図示)。これによれば、使用者が靴を履いたまま足置き部32の上に立った状態で靴底の洗浄を行う際に、回転するブラシ20に接触することによって靴(靴底)が受ける力をバランスさせることができるため、足元がふらつかずに、両足で立つ姿勢を安定させることができる。すなわち、両足の同時洗浄を安定的に実現でき、洗浄時間の短縮を図ることができる。
【0029】
さらに、洗浄槽12には、少なくとも三箇所に飛散防止カバー24が設けられている。具体的に、左側ブラシ20L1、20L2の左側に飛散防止カバー24A、左側ブラシ20L1、20L2と右側ブラシ20R1、20R2との間に飛散防止カバー24B、右側ブラシ20R1、20R2の右側に飛散防止カバー24C、がそれぞれ設けられている。一例として、各飛散防止カバー24(24A、24B、24C)は、金属材料(例えば、ステンレス合金等)を用いた板状部材24Aa、24Ba、24Caの端部に、それぞれエラストマー材料(例えば、ゴム)を用いた細長い板状で且つ先端を斜めに垂下させた端部部材24Ab、24Bb、24Bc、24Cbが取付けられた構成となっている。
【0030】
また、各飛散防止カバー24(24A、24B、24C)は、平面視において各ブラシ20(20L1、20L2、20R1、20R2)の径方向外縁部が所定寸法(例えば、10~20mm程度)覆われる形状に形成されている。洗浄時においては、汚れが付着した毛束34が靴底から離れる際に、汚れの飛散が発生する。これに対して、上記の構成によれば、汚れの飛散が発生しても、ブラシ20(20L1、20L2、20R1、20R2)の径方向外縁部が、飛散防止カバー24(特に、端部部材24Ab、24Bb、24Bc、24Cb)によって覆われる構成を備えているため、飛散した汚れが洗浄槽12外へ出て、周囲を汚染してしまうことの防止が可能となる。また、従来装置のように靴に密着させて飛散防止を図るゴム部材等が省略もしくは削減できるため、次の使用者への汚れの再付着の問題が解消でき、衛生面の向上を図ることができる。
【0031】
これに加えて、飛散防止カバー24は、足振れ防止部材を兼ねることができる。すなわち、使用者が靴を履いたまま足置き部32の上に立った状態で靴底の洗浄を行う際に、回転するブラシ20に靴底が接触して、靴が横振れしても、飛散防止カバー24(特に、端部部材24Ab、24Bb、24Bc、24Cb)に当接して横振れが止まる作用が得られる。したがって、使用者が靴を履いたまま足置き部32の上に両足で立った状態で行う靴底の洗浄を安定的に実施することができる。
【0032】
さらに、洗浄槽12には、固定足置き部38が設けられている。具体的に、左側ブラシ20L1の前方に固定足置き部38L1、左側ブラシ20L1と20L2との間に固定足置き部38L2、左側ブラシ20L2の後方に固定足置き部38L3、がそれぞれ設けられている。また、右側ブラシ20R1の前方に固定足置き部38R1、右側ブラシ20R1と20R2との間に固定足置き部38R2、右側ブラシ20R2の後方に固定足置き部38R3、がそれぞれ設けられている。一例として、各固定足置き部38(38L1、38L2、38L3、38R1、38R2、38R3)は、金属材料(例えば、ステンレス合金等)を用いて、断面がL字状、コ字状、ロ字状、円環状等のように荷重支持可能な形状に形成されている。これによれば、使用者が靴を履いたまま足置き部32の上に立った状態で靴底の洗浄を行う際に、足置き部32と固定足置き部38とで身体を支持することができる。したがって、靴底が回転するブラシ20に接触しても、足元がふらつかずに、立つ姿勢を安定させることができる。なお、固定足置き部38は、一部もしくは全部を省略する構成としてもよい(不図示)。
【0033】
次に、前述の通り、ブラシ20は、ベース板30が水平面内で回転するように構成されている。本実施形態においては、各ブラシ20の各ベース板30の下面30bが同一の水平面内に配置されるように構成されている。さらに、各ベース板30の下面30bと対向する洗浄槽12の底面12xが略水平面として構成されている(ただし、底面12xの全面が水平面である必要はない)。ここで、左右両側のブラシ20、すなわち左側ブラシ20L1、20L2と右側ブラシ20R1、20R2との間に挟まれた平面視中央位置において、洗浄槽12の底面12xには下方に掘り下げたゴミ受け溝26が設けられている。一例として、ゴミ受け溝26は、左右方向の幅寸法が50mm程度で、上方に開口する断面がコ字状、U字状、V字状等の樋状に形成されている。
【0034】
これに加えて、洗浄槽12内でベース板30の下面30bが浸る状態(上面30aまでは浸らない程度)となるように洗浄水の貯留量が設定されている(図5中に設定水位を一点鎖線で示す)。具体的に、洗浄槽12は、オーバーフローによって水位が調整される構成を備えている。併せて、洗浄水の供給過多を防止するため、送出管22に連通する配管経路に流量調整部(例えば、定流量弁等)を設けることによって洗浄水の供給量に上限を設定している(不図示)。
【0035】
さらに、前述の通り、二つの左側ブラシ20L1、20L2は共に同一方向に回転するように構成し、二つの右側ブラシ20R1、20R2は共に同一方向に回転するように構成し、且つ、左側ブラシ20L1、20L2と、右側ブラシ20R1、20R2とは、相互に逆方向に回転するように構成されている。
【0036】
本実施形態においては、ベース板30が水平面内で回転するようにブラシ20を構成すること等によって、使用者が靴を履いたまま足置き部32の上に立った状態で靴底の洗浄が行えるという効果が得られる。しかし、その一方で、当該ブラシ20(ベース板30)の構成に対応させて、洗浄槽12の底面12xを略水平面として構成している。通常、洗浄槽12の底面12xが略水平面である場合、落下した汚れが滞留し易くなり、清掃に時間が掛かるのみならず、不衛生となり易い問題が生じる。
【0037】
この問題に対しては、上記の通り、洗浄槽12の底面12xにおいて、左右両側のブラシ20の中央位置にゴミ受け溝26を設ける構成とし、また、ベース板30の下面30bが浸る状態で洗浄水を供給する構成とし、さらに、二つの左側ブラシ20L1、20L2は共に同一方向に回転させ、二つの右側ブラシ20R1、20R2は共に同一方向に回転させ、且つ、左側ブラシ20L1、20L2と右側ブラシ20R1、20R2とは、相互に逆方向に回転する構成としている(なお、前述の通り、各ブラシ20を、それぞれ逆の方向に回転させる構成も可能である)。これによれば、洗浄槽12内において、底面12x上に滞留する洗浄水(排水)に水流(図4中の破線矢印で示す)を発生させることができる。したがって、この水流によって、洗浄水(排水)に含まれる汚れを誘導し、ゴミ受け溝26に落下させて集約することができるため、汚れの清掃作業を容易化することができる。また、洗浄槽12内、特に底面12x上の汚れを減少させて、衛生面の向上を図ることができる。
【0038】
このとき、洗浄槽12の底面12xにおいて、左側ブラシ20L1、20L2が設けられる平面視矩形領域の四隅12a~12d、および右側ブラシ20R1、20R2が設けられる平面視矩形領域の四隅12e~12h、においては、水流が滞って汚れが溜まり易い問題が生じる。これに対し、本実施形態に係る洗浄槽12は、図4に示すように、当該四隅12a~12hの一部の位置(12a~12cおよび12e~12g)において(なお、全部の位置としてもよい)、隅部を挟む二辺を結ぶように配置されて、底面12xから立設された板状の流れ制御板40a~40cおよび40e~40gが設けられている。
【0039】
この構成によれば、水流が滞って汚れが溜まり易い箇所に流れ制御板40a~40c、40e~40gを配設して、水流が滞らないように制御することができ、汚れの溜まり防止を図ることができる。したがって、洗浄槽12内(特に、底面12x上の隅部)の汚れを減少させることができるため、清掃作業を容易化することができ、衛生面の向上を図ることができる。
【0040】
さらに発展的な構成として、本実施形態に係る靴底洗浄装置1は、図10に示すように、前後方向に複数台(一例として二台の場合を図示しているが、これに限定されるものではない)、連接させることができる。これによれば、複数並設された状態となる洗浄槽12の上を、使用者が順次、前方(後方でもよい)へ移動しながら靴底の洗浄を行うことが可能となる。すなわち、洗浄槽12の上が通路として構成される。このとき、洗浄槽12においては、前後位置の外枠部分以外にできる限り段差が無い構造とすることによって、移動し易い構成が実現できる。例えば、一台設置の場合には、使用者が多い程、洗浄の待ち時間が長くなってしまう問題が生じ得る。しかし、上記の構成によれば、使用者を順次移動させて、待ち時間の短縮を図ることができる。さらに、使用人数や設置場所の状況に対して臨機応変に台数を増減させる構成が実現できる。このように、汚れがひどい状態から、洗浄度が高い状態へと段階的に遷移させるように、複数台を連接させる構成としてもよく、あるいは、汚れ落としを主とする装置と、除菌を主とする装置と、を連接させる構成等としてもよい。
【0041】
以上、説明した通り、本発明によれば、従来の靴底洗浄装置と比べて、複雑化する靴底の形状に対しても洗浄力が高く、且つ、清掃が容易な靴底洗浄装置を実現することができる。特に、ブラシの毛束に靴底の汚れが付着したまま残留してしまうことを防止できるため、次の使用者への汚れの再付着の防止および衛生面の向上を図ることができる。また、使用者が両足の靴底洗浄を同時に、且つ安定した姿勢で行うことができる。したがって、洗浄時間の短縮を図ることができる。さらに、ブラシの使用寿命の長期化を図ることができる。
【0042】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 靴底洗浄装置
10 本体部
12 洗浄槽
14 駆動源
16 制御部
18 センサ
20 ブラシ
22 送出管
24 飛散防止カバー
26 ゴミ受け溝
30 ベース板
32 足置き部
34 毛束
36 軸受
38 固定足置き部
40a~40c 流れ制御板
42 給水部
44 洗剤供給部
46 排水部
50 手すり
C 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10